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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第五章

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残された者達

「ふむ、行ったか……」



 ヴァイスは泣いている自分の娘リューネをあやしながら呟く。その顔はとても寂しそうなものだった。英雄としての彼では無く友としてのショウと別れる日が来るとは。今生の別れでは無いが彼はまだ見ぬ未開の地へと旅立ったのだ。いつ帰ってくるかも分からない。もしかしたら戻ってこないかもしれない。そう思うと寂しく感じてしまうヴァイスであった。



「魔王よ、これからやる事は山程あるぞ」


「魔王では無い。ヴァイスと呼べ」


「わかった、ヴァイスよやる事は山程あるが大丈夫か?」


「フゥハハハハハハハ、我が輩を誰だと思っておる? 魔王であり英雄の友であるぞ」


「ふふ、頼もしい限りだ」



 ヴァイスは新たなる友リュードと笑い合う。リュードとヴァイスはひとしきり笑い合った後各々の種族に告げた。それは1人の英雄が大陸を救い旅に出た事を。そしてこれから国に帰り人魔和平協定が締結されたことを大々的に発表する事と同時に人魔が協力してパレードを行う事を。



「さて、我が輩は帰るぞ。お主はどうするのだ?」


「私は彼女達の所へ行こう。他の者達も行ってるみたいだからな」


「そうか、それが良いだろう。では、また会おうぞ」



 ヴァイスはそう言うとリューネとラニを連れて魔国へと帰って行く。リュードはヴァイス達を見送ると彼女達の元へと向かう。彼女達は今もまだ泣いている。



「ふぐっ………ひぐっ……」


「ぐすっ………」



 やはり思い人にあの様な言い方をされれば泣いてしまうのも無理は無いだろう。確かに彼がやった事は褒めるべき事では無いがそれでも悪では無い。戦場に立てば女も子供も関係無いのだ。彼がやった行為は下劣ではあったがあの場面ではあれこそが最善の策だった思う。しかし、やはり彼女達にとっては思い人がその様な事をしているのを見ていられなかったのと初代魔王が泣いてるのを見て我慢が出来なかったのであろう。



 しかし、それでもだ。それでも彼女達が彼にした仕打ちはあまりにも酷過ぎた。彼からすれば味方だと思っていた者達から背後からの強襲、そして敵を庇うという行為。裏切りという名の行為、いくら彼が優しいからといって許容出来ないものだ。多分、いや、誰しもが同じ事を思うだろう。



 彼女達は自分達が仕出かした行為についてキチンと理解しているからこそ、自分達がした行為が思い人を傷付けた事を理解しているから泣いているのだ。そして、彼が最後に言った言葉が彼女達の胸に刺さったのだろう。



 これは彼女達の問題であって他人が口を出すべきではない事だ。故に彼女達を慰めようとする者達はいない。彼女達自身が己を省みて誤ちを正していけることを願おう。



「私……ずっと甘えてた………ショウならショウなら何をしても許してくれるって……」


「私もです。ショウさんなら笑って許してくれるだろうと……」


「私達って結局、ショウちゃんの優しさに甘えてたんだよね………」


「そうで………ですね………私達はショウさんに自分の理想を押し付けてたんですね………」


「そうだと思う………私達ってショウの事を好きだって言いながら全く理解してなかった………ショウだって同じ人間なのに………怒って当然よね……私達のした事は」



 彼女達はお互いにポツリポツリと胸の内を明かして行く。



「そうだよね………御伽話の勇者や英雄じゃ無いのにね。あんな事されて平気な人はいないのに」


「無理も無い話ですね……」


「許してくれるかしら」



 許してくれる、その一言を言うと皆が一斉に下を向き黙り込んでしまう。不安なのだろう。彼が許してくれるかどうかが。現に彼は別れる時には許せませんと言っていた。それを聞いていた彼女達はきっと許して貰えないだろうと考えててしまっているのだろう。彼女達が俯き言葉に詰まっていると1人の女性が話し掛ける。



「ショウさんなら許してくれますよ!」



 その言葉に一斉に反応する女性陣。一体何を根拠に彼女、初代魔王アイリスはそう言っているのだろうか。



「どうして、どうしてそう思えるの?」


「それは私が少しの間だけですけどショウさんと共に過ごしたからです!!」


「一つ質問いいかな〜? 性格変わってない?」


「ああ、そうですね。少し説明します」



 ソフィの質問に対してアイリスはこの場にいる人間全てに自身の事について説明を始める。



「えっと性格が変わったと言うよりは元に戻ったの方が正しいんですかね? いや、元々はあっちが正しいのかな?? まあ、何でもいいですかね! 実は私は幽霊だったんです。それでまあ色々あってショウさんに取り憑いていてたんです。少しの間だけですけどショウさんの事なら分かります。これは皆さんも知っての通りショウさんはアホな程お人好しで優しいです! それとついでにとってもスケベでエッチです!! もうすんごいスケベです!」



 彼が居たなら余計な事は言うなと怒りそうだ。しかし、彼は居ないからアイリスはそのまま話を続ける。



「コホン。ええとつまりショウさんもやっぱり男の子なんですよ。そして同じ人間なんです。傷付きもしますし怒りもしますよ。でも人を許し人を咎める事も出来ます。それにショウさんは言いましたよね? もし好きな人が出来たら優しくするようにと、それってつまりショウさんも優しくされたいって事だと思うんです。だから、ショウさんが帰ってきた時に優しく、いえ、まずは今までの謝罪ですね。その後にうんと優しくしてあげれば良いんですよ! だから泣き止みましょう!! それになんだかんだ言ってショウさんってチョロいですからね」



 最後の言葉が無ければ完璧であったであろうに。つくづく残念な元変態幽霊である。



「………そうね。泣いてるばかりじゃ無いわね」


「そうですね。許す許されないでは無くまずは反省ですね」


「ですね。今度会う時は成長した姿を見せないといけませんね」


「あはは〜、確かにショウちゃんってチョロそうだもんね」


「そうです! その意気です!!」



 彼女達が立ち直れたかはわからないが彼女達が泣き止み再び立ち上がる事が出来た。そして今度彼に会う時までに自分達は成長するという目標も出来た。これなら大丈夫だろう。きっと大丈夫だ。

なんと言うか………

うーむ



では次回を!

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