春到来!?
今日はセラさんが休みだから、依頼は自分で探さないといけない。早速、依頼が張り出されている掲示板の元へと向かう。
どれどれ?
へぇーいろいろあるなぁ。
ちなみに俺は現在Bランクへと昇格している。その為、Aランクの依頼を受ける事も可能なのだがソロという理由でセラさんに止められている。
まぁ危険だからね!
それでもBランクの依頼を受けているおかげで、ちょっとした金持ちである。そんな事はどうでもいいか。依頼を探そうと掲示板を見回す。
おっ!
これがいいや!
これにしようっと!
『あっ……!』
掲示板に張られている依頼書を取ろうとしたら美人のお姉さんと手が重なる。突然始まるラブストーリーみたいな展開に胸をときめかせるとかはない。もしかして狙っていた依頼を横取りしようと思われているのか、こっちをずっと見てくる。
やべ!
なんかめっちゃ見てくるんですけど!?
「あの、それいいですよ?」
勇気を振り絞って話し掛ける。他にも魅力的な報酬の依頼はあるので譲る事にする。
俺、紳士!!
「いいの?」
「いいっすよ! 俺別のにしますから」
「……ありがと」
そう言って彼女はカウンターの方へと歩いていった。その後、掲示板の方に張ってある依頼書を眺めていたら後ろから声を掛けられる。
「ねぇ」
「はい?」
振り返ると、そこには先程の依頼を譲った美人なお姉さんが立っていた。どうやら俺に声を掛けてきたのは彼女のようだ。
「もしかしてソロなの?」
「そうっすけど……?」
「……」
「えっと?」
「私と組まない?」
「はい?」
「だから私と組まないかって?」
「あなたとですか?」
「やっぱり嫌??」
「いや、別に構いませんけど?」
「本当? 嬉しい! 私の名前ラナ。よろしくね!!」
「あっショウです。よろしく」
突然の提案に思わず返事をしてしまった。いきなりパーティを組む事になり頭の中が混乱状態である。何せ、誘ってきたのは彼女でしかも美人なのだから。
えっ、えっ、ナニコレ!?
俺にも春到来!?
来たこれ!!
やっとこんな俺にも!!
春が来たんだあああ!!
「ねえ!」
「あっはい?」
「さっき譲ってもらった依頼を受けに行きましょ」
「了解っす!」
「じゃ行きましょ!」
そう言って俺たちは受付に向かい依頼を受けてからギルド出る。今回の依頼はガブラスと言う魔物の討伐である。説明を聞いた限りではファンタジー版のコモドドラゴンらしい。あれがもう少しでかくなって、毒吐くようになっただけであるから大した魔物ではない。
早速、依頼書にあった森へ行くと説明で聞いたとおりの姿をしたガブラスを発見する。
「あ、あれ! ガブラスよ!」
「本当っすね! 早速倒しに行きます?」
「ええ、行くわよ!」
いいねぇ!
こういうの!!
こう、パートナーって感じで!!
俺はガブラスに近付き適当に剣で倒して行く。胴体を切り裂き、一撃でガブラスを倒す。
「キュオー……」
ふん!
楽勝だぜ!!
簡単にガブラスを倒した俺は相棒のラナに顔を向ける。ラナは魔法でガブラスに攻撃していた所だった。
「風刃!!」
風の音と共にガブラスの首が飛んでいく。首が無くなったガブラスの身体はズシンと横に倒れる。二人で無双してたらいつの間にか、ガブラスは全滅していた。
「じゃ証明部位のトサカを持って帰りましょう」
「ういっす!」
倒したガブラスの証明部位である全部のトサカを剥ぎ終えた俺達はギルドへと帰る。その途中、ラナに呼び止められる。
「ねえ……?」
「はい?」
「ちょっとこっちに来てくれない?」
「えっ!」
色めかしく誘ってくるので、雄の本能に抗えずふらふらとラナに近付いていく。
俺にもとうとう春が!!
母よ父よ!
私は男になります!
しかし、ラナに近付いていくと木の陰に複数の気配を感じ取る。最初は魔物かと思ったが集中すると人の気配だと分かった。
なんだ?
「どうしたの。ほらこっちよ?」
途端に心が冷えるのを感じる。こんなおいしい展開あるわけないと。俺は、そこから一歩も動かずラナを突き放す。
「もういい……」
「何を言ってるの?」
「演技はもういい」
「わけのわからないことを言わないで!」
「いるんだろ、仲間が!! 出てこいよ!」
俺は周りに隠れているであろうラナの仲間に叫ぶ。すると、先程までは俺を魅了していたラナの顔はスッと真顔になる。
「そう……気付いていたのね。ふふっ、流石だわ」
その言葉と同時に茂みに隠れてたラナの仲間と思われる人達がぞろぞろと出てくる。下卑な笑みを浮かべながら俺を見てくる。
「へへっバカな野郎だぜ!」
「報酬は俺達が貰ってやるよ!」
なるほど、そう言うことかと理解した。女でソロの冒険者を釣って依頼を達成したら報酬だけ横取りする計画だったのだろう。
クズどもが!!
「どうしたの? 怖くて声も出ないの?」
「そりゃそうだろ! 三人に囲まれてんだからな!」
「情けねえなぁ。こりゃ仕事が楽そうだわ!」
「……」
怒りに震えて言葉が出てこない。ただ、今はこの怒りをどうやって目の前にいる三人の屑にぶつけてやろうかと考えている。
ぶっ潰す……
こいつらに絶望を味合わせてやる!
俺の純情を弄びやがって!
地獄を見せてやる!
「さーてと、有り金と証明部位のトサカを置いて消えな!」
「抵抗すると、どんな目に合うかわかってんのか! ああん?」
「あんまりいじめちゃ可哀想でしょー」
挑発する為に近付いてきた男の腹部を殴り上げる。何が起きたのか理解できていない男の声だけが聞こえた。
「はっ……?」
そして、男が派手に吹き飛ぶ。何本もの木々をへし折りながら、最後にはゴロゴロと地面を転がって起き上がることは無かった。
「は?」
もう一人の男は何が起こったか理解できずに惚けた顔を晒している。
「な、何をしたの!?」
「何をした? ただ腹を殴っただけだ」
「嘘言いなさい! 殴っただけであそこまで派手に吹き飛ばないわよ!」
「黙れ屑女……」
「ひっ……!」
睨みつけながらラナを黙らす。殴り飛ばした男の方からラナのほうに身体を向けたら小さく悲鳴を上げている。その時、状況を理解したもう一人の男が逆上して魔法を撃ってくる。
「てめえ、くらえや! 火槍!!」
「そんな魔法が俺に当たるか!!」
「なっ! 躱しやがった!?」
「俺の純情弄びやがって……くたばれ!」
男の魔法を避けた俺は懐に飛び込み、がら空きになっている腹部を殴りつける。怒りと悲しみの分だけ殴り倒した。
「げぼおぁっ……」
嘔吐して倒れる男を横目に俺はラナの方へと指を差す。
「さて、屑女!!」
「ひっ……た、助け」
「てめえは、万死に値する!! おらあっ!」
逃げ出そうとするラナの飛び掛り怒りの鉄拳を叩きつける。だが、流石に殺すのは不味いと思い横の地面を粉砕してクレーターを作り上げてみせた。
「あ……あ……」
「次に会ったらこれをてめえの綺麗な顔にお見舞いするぞ??さっさと、失せろおお!」
「ひっ……ああ……ごめんなさいぃぃぃ」
チッ!
胸糞悪い!
ラナは男達を置いて一人逃げ去った。ラナの背中が見えなくなって俺はようやく落ち着く。さっさとギルドに帰ろうと一人帰路に着く。
はぁ〜いつになったら彼女出来るんだろうか。
改訂しました




