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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第二章

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のどかな日々

 今、俺は相当凹んでいる。大した理由ではないのだが落ち込んでしまっている。



「あの、そう落ち込まなくても……」



 セラさん。そうは言いますけど!


 でも、そんなの無理だあああ!!



「仕方がありませんよ。まさか私達も知らなかったんです。依頼されていたオーガが何者かに倒されてたなんて」



 セラさんに言われた通り、俺が受けた依頼は何者かに達成されていたのだ。俺が村に行った時にはすでに倒されたと報告を受けたのだ。



 一体どこのどいつが!



 本当かどうかを確かめる為にオーガのいた洞窟まで行ったら燃やされた痕があった。誰がやったのかはさておき相当な実力者だったに違いない。



 ちくしょう!


 俺の獲物を横取りしやがって!



「でも、他にも依頼がありますから!」


「はい……」



 セラさんに励まされた俺は一旦忘れて新しい依頼を受ける事にした。



「えっと、じゃあこのオークキング討伐の依頼お願いします」


「はい! わかりました」



 早速、新しい依頼を受けた俺は指定された場所へと向かう。指定されてた場所に辿り着くと、そこにはイケメンが待っていた。



 なんだ?


 俺の方を見て来て?


 さては俺のファンかや!?



「君が依頼を受けてくれたのかい?」


「あっはい」



 いきなり話しかけてきたイケメンはどうやら依頼主だった。イケメンというだけで敵認定している俺は依頼主を睨む。



「僕の顔に何か?」


「いえなんでも」


「そうかい??」



 衝動的に殴ってしまいそうになるが、なんとか堪えて話を聞く。



「依頼の方なんだけど最近森にオークが現れてね。オークくらいなら倒せると思ってたんだけど、まさかオークキングまで居るとは思わなくてね。それでどうしようもないからギルドに依頼ってわけさ」


「はあ……」


「ところで君一人かい?」


「そうですけど?」


「えっ、君みたところ僕と同い年くらいじゃないか? しかも、なんだか弱そうだし、本当に大丈夫かい!?」



 言いたい放題言われても俺は我慢した。煮え滾るこの怒りはオークにぶつけようと決めた。



「ええ……まあ。今まで一人で依頼受けてたので大丈夫ですよ」


「なんなら僕も一緒に行こうか?」


「結構です」


「わかった! 共にオークキングを倒そう!」



 あれ、耳おかしいのかな?


 俺断った筈だけど??



 何故か断っているのに着いて来ると豪語する依頼主。もう一度はっきりと断ろうと試みる。



「いえ、依頼主の方を戦わせる訳には……」


「安心してくれ! こう見えても剣の腕はなかなかのもだからね!」


「いや、そういうことじゃ」


「そうと決まれば、こうしちゃいられない! 少し待っててくれ。僕も戦う準備をして来るから!」


「あっ、あの!!!」



 俺が断りの言葉を述べようとする前に依頼主が暴走気味に話して結論を出した。そしたら、俺の制止も聞かずに走り去ってしまった。



 どないしよ!!


 大変なことになってしもうた!


 絶対あいつ弱いだろ!!


 どうするどうする!?



 混乱している俺は追いかけることもせずに、ただ頭を抱えて待っている事しか出来なかった。数十分程経った頃に依頼主が装備を整えて帰ってきた。しかも、女連れで。



「やあ! 待たせたね!」


「あの、クルトをお願いします!」



 誰だよ!?


 彼女か!?


 めっちゃ美人じゃねえか!?


 くそっ、こいつリア充かよ!!



「大丈夫だよ、リジー! 僕の剣の腕前は知っているだろう? 負けはしないさ!」



 どこから、そんな自信が沸いて来るのかと問い質したくなる。彼女の前で格好つけたいだけだろうと決め付ける。



 頭にウジ虫湧いてんじゃねえのか?


 頭の中空っぽだろ!



「でも……」


「安心してくれ! きっと君の元へと帰る。約束だ!」


「クルト……」



 目の前で繰り広げられるラブコメに俺は怒りの炎を鎮められそうにない。このままではオークではなく目の前のバカップルを駆逐してしまうかもしれない。



 張り倒すぞ!


 てめぇら!!


 くそっ、もういい!



「えっと、それじゃ行きますか?」


「ああ、行こう!」


「クルト死なないでね!」



 むしろ俺が殺すかもしれねぇ……



 仄暗い感情に蝕まれた俺とクルトという名前の依頼主はリジーという彼女に背を向けてオークがいる森へと旅立った。



 森へと辿り着くと、早速オークが三匹も現れた。クルトが勇ましく剣を抜き放ち、オークに向かって声高らかに叫ぶ。



「さぁ、剣の錆にしてやるぞ。豚共!」


「ブヒッ? ブギィィ!」


「くっ!なんの!!」



 オークは棍棒や斧といった武器を持っており、今は一匹がクルトと戦っている。クルトは口先だけではなかったらしくオークと互角に渡り合っていた。



 しかし、オークは一匹だけではない。三匹もいるのだ。だから、一匹ばかりに集中しているクルトは横から攻撃されて吹き飛んだ。



「ゴハッ!!」



 吹き飛んでいくクルトを見て、思わず吹き出しそうになってしまう。だが、依頼主だという事を思い出して笑ってる場合ではないと急いでクルトを助けに向かう。



 やべ~。


 笑ってる場合じゃねかったわ!




「お、おい、大丈夫か?」


「ぼ、僕はここまでのようだ。あ……後は……た……頼む」



 転がっているクルトを抱えて起こすと三文芝居みたいなやり取りを行う。



 そうか!


 良し任せろ!



 そう心の中で答えると俺はクルトを放り投げる。放り投げられたクルトから苦しそうな声が聞こえたが空耳の間違いだろうと無視した。



「ブギイイイ!!」



 押し寄せてくるオーク達に俺は驚く。いつの間にこんな近くまで来ていたのかと。



 なんかめっちゃ来てる!


 でも俺は強いぜぇ!!



「くたばれ、豚共!! ブラストショット!」



 俺は黒い装飾銃を取り出しオーク達に連射する。青白い閃光と共に弾丸が放たれ、目にも止まらぬ速さでオーク達を貫く。そしてオークたちの体内に止まった弾丸が爆発した。



 うひょーー!!


 最高だね!!



「ふっ! 汚え花火だぜ!」



 某漫画の台詞をパクッた俺はあることに気付く。それは、依頼されていたオークキングの姿が見当たらない事にだ。



 あれ、オークキングがいない?


 どこだ!?



「う、うわあああ!助けてくれえ!」



 俺がオークキングを探していたら、クルトの悲鳴が聞こえてくる。オークに襲われてるかもしれないから助けに向かう。



 くそっ、投げ飛ばすんじゃなかった!



「プギイイイアアアアア!!」


「は、早く助けてくれ!」



 クルトの元に向かったら、先程倒したオークよりも大きなオークにクルトは足を掴まれて振り回されているところだった。



 よく生きてんな……


 てか、感心してる場合じゃなかったわ!!



「すぐ助けます!」



 面白い光景に目を奪われていたが、目的を思い出して助けに向かう。すると、その時オークがクルトを俺に向かって放り投げてきた。



 ん?



「うおおおおわあああああ!!!」



 物凄い勢いで飛んでくるクルトに驚く。急な事だったので慌てて振り返り逃げ出した。



 こっちに来るなああああ!!


 ひえええええええ!!



 悲しい事に逃げ切れることは出来ず、飛んできたクルトが背中に直撃した。



「ゴフッ!」


「ブホッ!」



 痛い!!



 なんでこんな目にと俺はワナワナと怒りに震える。そして、遂に堪忍袋の緒が切れた俺はオークに向かって叫んだ。



「ぶっ殺す、クソ豚が!! 今更謝ったところで、許しはしねぇ!! 後悔しながら、あの世に行きやがれ!!」



 俺は異空間から取り出した、ガトリングを構える。そして、忌々しきオークに照準を合わせると声を張り上げる。



「ファイアアアアア!!」



 ズドドドッとガトリングから銃弾の嵐がオークに向かって放たれる。カラカラと音を立てながら薬莢が転がり硝煙の匂いが広がる。



「プギャアアアアアア」



 オークが悲鳴を上げながら蜂の巣になっていく。俺はそんな光景を見ながら興奮が最高潮に達した。



 アッーハッハハハハハハハ!!


 ざまあみやがれ!



「うっ……」



 恐らくオークキングと思われるオークを倒した時、気絶していたクルトが目を覚ました。なので、一応声を掛けてみる。



「大丈夫っすか?」


「大丈夫な訳あるか!」


「そうですよねー」


「なんで僕がこんな目に!」


「そうっすねえ」


「ふざけているのか!」


「いえ、全く」


「くそっ、豚共め!」


「そろそろ帰ります?」


「そうだな。リジーに会いたいから帰るか」



 帰る時もクルトはブツブツと文句を言っていた。それも仕方ないだろう。折角格好つけて来たのに散々な目に遭ったのだから。街に帰ると真っ先にクルトの彼女リジーのところへと向かった。



「クルト!」


「リジー!」


「無事だったのね!?」


「ああ! 無事さ!」


「よかったぁ!」


「聞いてくれ、リジー! 僕の活躍を!」



 へっ?


 活躍してたっけ?



 クルトがどう活躍していたかさっぱり分からないリジーにクルトは盛大に話を盛って大袈裟な動きをしたりして説明した。



「凄い! クルト、やっぱりあなたは素敵!」



 嘘だと知らないリジーはクルトの話を信じて抱き着いた。眼前でイチャイチャを見せられている俺はなるべく穏便に済ませようとクルトに声を掛ける。



「えっと、クルトさん?」


「ん? あー君か? まだいたんだね」


「いえ、俺はこれで失礼しても?」


「ああ構わない。ちゃんと報酬は出すから、さっさと消えてくれ」



 最早止まる事の出来なかった俺は二人に気付かれないようにクルトの後頭部の髪の毛を消し去った。その後二人がどうなったのかは知らないが後頭部の禿げた男が女に泣きついてるという噂を聞いた。



 翌日、俺はギルドマスターことルドガーさんに追い掛け回されていた。



「貴様ああああ!!!」


「うわああああああ!!!」



 どうしてこうなったかと言うと時間は遡り、マリーさんの買い物を手伝う事になったのが発端だった。



「ねぇ、ショウ付き合って」


「へっ、俺っすか?」


「そうよ。他に誰かいるの?」



 マジか!!


 いつの間にフラグが!?



「買い出しに行きたくて人手が欲しいの!」



 そういうことね……



 童貞である俺はすぐ勘違いしちゃうから止めて欲しい。予想は出来ていたが、心のダメージが無いというわけではないのだ。



「わかりました」


「ありがと!」



 マリーさんの買い物を手伝う事になり、商店街を回り大量の荷物を抱えている俺はマリーさんに話しかける。



「マリーさんって結構買うんですね」


「そう? 普通じゃないかな?」



 いやいや、俺結構持ってるよ?



 もしかして見えていないのかな、と思いつつ進んでいると何やら怪しい雰囲気の通りを歩いていた。具体的に言うと十八禁とだけ。



「あのここは?」


「へっ、ここ? 大人の街だけど?」



 なんかそれらしきホテルやお店がいっぱいなのだ。こんな所をルドガーさんに見られでもしたら俺は一巻の終わりである。



 まぁそうそうないよな!


 そんな展開、アニメや漫画だけだもんな!



「なんでこんな所に来たんすか?」


「ここって近道になるから」


「へえーそーなんすか」


「そっ。セラとかも通るわよ?」


「へえー。こんな所ルドガーさんに見られでもしたら俺殺されちゃいますね!」


「お父さんはお母さん一筋だからこんな所絶対通らないから大丈夫よ」


「そうだといいんすけど」



 そう言って出口の方へと向かった。そしたら、ルドガーさんらしき人を見掛ける。あれは、幻覚かと目を疑い二度見した。



 いや違う!


 本物だ!!



「あぁ、あのあの、あれって!?」


「あちゃーお父さんね」


「こっちに来てますよ!」


「これは逃げた方が良いかもね。じゃないとショウ殺されちゃうよ?」



 ひえええええええええええええ!!!



 俺は荷物を素早くその場にゆっくりと置いて逃げ出した。鬼のような形相でこちらに全力疾走してくるルドガーさんに追いかけられる。



「待てええええええええ!」



 うおおおおおおおおおお!!!!


 速い!!


 なんて速さだ!!


 俺も全速力だぞ!?


 どんだけ本気なんだあの人は!?


 捕まったら殺される!!


 なんとしてでも逃げきらないと!!




「塵すら残さずこの世から消し去ってやる!!!! 覚悟しろおおおおおお!!!」


「嫌だああああ!!」



 ガチだ!!


 あの人ガチだ!


 本気で俺を消す気だ!!


 なんとか先に宿に着かないと!


 宿に着けばセリカさんがいる。ルドガーさんを唯一止めてくれる最強の人がいるのだ。先にそこへ辿り着いてしまえば生き残れる。



 なんとしてでも辿り着かねば!!



 一心不乱に走り続けて、視線の先に宿が見えた。やった、無事に明日を迎えることが出来る、と喜んだ瞬間鬼が現れた。



「待っていたぞ、小僧!!」


「嘘だああああああ!!!」



 先回りされていた!


 いつの間に!完全に蒔いたと思ったのに!


 なんで!?



「バカめ! 貴様よりこの街には詳しいのは当たり前だろうが!!貴様より先回りするなど造作もないことよ!」


「そ、そんな……バカな!」


「覚悟しろ……私の娘に手を出したことを!! 後悔しながら逝け!」



 殺される、そう思い目を閉じていたらいつまで経っても攻撃が来ないので目を開けるとそこには救いの女神が降臨していた。



「ルドガー、仕事はどうしたの。ねぇ??」



 だけど、救いの女神は阿修羅に一瞬でクラスチェンジしてしまった。ルドガーさんに詰め寄る姿は恐ろしいものとなっている。



 あばばばばばばば!


 阿修羅がおられる。



 ルドガーさんの顔が世紀末のような顔をしておられる。決して救う事の出来ないルドガーさんは必死に生き残ろうと言い訳を始めた。



「いや、これには深い訳がだな……」


「そう……深い訳が」


「そ、そうなんだ! 深い訳が!」


「死にたいの?」


「今すぐに仕事へ戻ります!」



 そう言ってルドガーさんは瞬く間に姿を消し去った。恐るべしセリカさんに畏怖と尊敬の念を抱いた。



「おかえりなさい。ショウ君」


「は、ははい。ただいまです」



 それから俺はマリーさんを迎えに行き、晩飯食べてマルコと少し遊んでから風呂に入って眠りに就いた。

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