ショウ達がいない時間
魔力反応が弱まった場所へと辿り着いたは良いが、周りを見渡しても草木しか無い。もう一度魔力感知をして周りを歩き回り魔力反応を探す。かなり微弱な反応だが近くで魔力を感知した。その場所へと歩いて行くとリューネとラニが倒れておりそのすぐ側にフーが地面に横たわっていた。慌てて駆け寄りリューネ達を起こそうと手を伸ばしたら結界の様なものに阻まれた。
「くっ! この!!」
「だ……だめ……」
結界を壊そうと拳に魔力を纏わせて殴り付けようとした時、弱々しい声が止める。声を出したのはフーのようで横たわりながら俺の方を見上げていた。
「ショウ、その結界は壊せない……その結界は禁忌級の不破の守護方陣」
「禁忌級だと!? お前がやったのか? それでこれの代償は?」
「代償は………私の命」
「なっ!! 今すぐにこれを消せ!! ここには俺しかいない!!」
「ごめんね……これ消せないの……私が死んだら勝手に消えるから」
「ふざけんなよ!! なんで、なんでこんな魔法をつかったんだよ!!」
「二人を守る為なの……ごめんね……私が強かったらこんな魔法を使わなくてよかったんだけど……」
「………誰だ……誰が来たんだ」
「わからないの………ただ、魔族でも人間でもなかった………見た目は人間だったけど」
「詳しく聞かせてくれ……」
「うん……」
ポツリポツリとフーは俺たちが居なかった間のことを語り始める。
♦︎♢♦︎♢
sideフー
ショウ達が出掛けた後私達はそれぞれ城の中に戻りショウ達が帰るまで時間を潰すことにした。私とラニとリューネはリーシャお姉ちゃんの所に行き本を読んで貰っていた。本が終盤辺りに差し掛かる時に城に誰かが来た。ショウ達が帰って来るには早すぎるのでは無いかと思い玄関の方へと向かうとヴォルフさんが出ていた。玄関を開けてみるとそこにいたのはショウ達では無く黒いフードを深くかぶった二人組だった。
「クフフフ。こちらにリーシャ姫とリューネ姫はいますか?」
「何者だ貴様?」
「クフフフ……貴方が知る必要はありませんよ」
「ッッッ!!」
ヴォルフさんが急に後ろに飛んだ。よく見ると黒いフードをかぶっている二人組の一人がヴォルフさんに向かって手を翳していたのだ。そしてヴォルフさんが立っていた所が、まるで重たい鉄球が落ちたように凹んだのだ。
「クフフフフフ。流石人狼族の長ですね。見事な反射神経です」
「貴様、殺されたいのか!?」
「クフフフフフ。少し遊んであげましょう」
「おい、我等は遊びに来た訳では無い。目的を達成して帰るぞ」
「釣れませんね〜。少しは柔軟に対応したらどうですか?」
「貴様が柔軟過ぎるのだ」
「お喋りとは随分と余裕なのだ、な!!!!」
二人組が何か口論をしている時にヴォルフさんが目にも止まらぬ速さで二人組に襲い掛かり爪を振り下ろす。しかし、ヴォルフさんの爪は当たらずに空を切る。そして、ヴォルフさんのすぐ後ろに二人組が現れる。
「むっ!?」
「ホラ、貴方が無駄話をするから」
「貴様、我の所為にするか」
「グルァア!!!」
再度ヴォルフさんが二人組に爪を振り下ろそうとした時ヴォルフさんが突然吹き飛び壁に激突する。
「向こうも構って欲しいみたいですよ?」
「勝手にしろ。我は先に行く」
「ええ、どうぞ。それでは、私は少しワンちゃんと戯れてきますね」
二人組は別々に別れてこちらへと歩いて来る。リューネは震えてリーシャのスカートの裾を握り締めている。ラニも同様に震えておりリーシャの手を握り締めている。リーシャも動けずにいたがヴォルフの一声で走り出した。
「リーシャ様、お逃げ下さい!! 早く!!!」
「ヴォルフ!!」
「私の事は心配いりません! さあ、早くリューネ様達とお逃げ下さい!!」
「わかりました!!」
リーシャはラニとリューネの手を取り城の中へと走り出し逃げる。私もリーシャ達の後を追いかける。チラリとヴォルフの方を見る。ヴォルフの動きは最早目に映る事が出来ない程の速度で敵と戦っていた。
「どこへ逃げようと逃げられはせぬ」
私達は城の中を走り逃げ回る。外へ出ようにも外へと繋がる扉が固く閉ざされており外に逃げる事も叶わない。奴らの魔法だろう、リーシャとリューネを確実に捕らえるために結界を張ってあるのだろう。どこかに隠れようと扉を開けた先に奴が立っていた。いつの間に先に回り込んだのか分からないがこのままでは捕まると覚悟した時ザードが現れた。
「お嬢様方には一切触れさせませんよ」
「小賢しい、トカゲめ」
「お嬢様!! ここは私がガハッ!!」
ザードが私達に何か言おうとしたら奴に胸を貫かれる。ザードは貫かれた胸に刺さっている奴の手を握り締めてこちらへと向き叫ぶ。
「ゴフッ………私は死んでもこの手を離しませんよ!! お嬢様方、今の内です、お逃げ下さい!!」
「ザード!!」
「私の事は構いません!! さあ、早く!!!!」
「くっ!! 離せ!!」
「ゴハッ!! 言ったはずですよ………死んでも離さないと!!」
「トカゲ風情がぁああ!!!」
リーシャはラニとリューネの手を取り駆け出す。リューネとラニは泣いている。リーシャを見てみるとリーシャは泣いてはいないが唇を噛み締め過ぎて血が出ている。
どれほど走ったのかわからない。後ろを振り返って見ても奴は見えない。だが油断は出来ない。私達は城の中にいるのだから。奴から逃げ切ることなど不可能だろう。無我夢中で走ってたせいでどうやら行き止まりに着いてしまった。引き返そうと振り返った時、奴が立っていた。
「悪足掻きもここまでだ。リーシャ姫、リューネ姫、大人しく付いてきてもらうぞ。大人しくしていればそのダークエルフとフェアリーは助けてやる。だが、歯向かうならそのダークエルフとフェアリーを殺す」
私達はジリジリと後ろに下がるが後ろは壁。もう逃げられない。そう思ったリーシャが1人前にでる。
「私が付いて行きます。だからこの子達は見逃して」
「それは無理だ。貴様とリューネ姫が必要なのだ」
「どうして?」
「話す理由は無い。グダクダ言うならその2人を殺すぞ」
「くっ……」
「イッーヒッヒッヒッヒッ!!!」
奴の背後に斧を振りかざしているミックが現れた。ミックはそのまま斧を振り下ろして奴を両断したはずだったが奴は消えてミックがこちらに吹き飛んで来た。
「流石に無理でしたか」
「まだ、いたのか」
「お嬢様方、もう安心して下さい。私が来たからにはもう大丈夫です!」
「ふん、ミイラに何が出来る?」
「イッーヒッヒッヒッヒッ!! ミイラだからと言って油断していると足元すくわれますぞ?」
「どういう意味だ?」
「イッーヒッヒッ!! とくと御覧あれ!! 私の最終奥義を!!」
ミックが両手を広げた途端に光り始める。あまりの眩しさに目を閉じてしまう。一体何が起きるのか?
不定期更新ですがよろしくお願いします。
昨日はすいません。
では次回を!




