表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/684

現状の確認

 目が覚めたら、一番最初に目に映ったのは知らない天井だった。背中からは冷んやりとした大理石の感触が伝わって来ている。どうやら、俺は寝転がっているようだ。首だけを動かして周りの状況を確かめてみると、目を覚ましているのは俺だけのようだ。



 今なら、スカートの中とか覗いてもバレないよな?



 いや、流石にそれはまずい。もし、目が覚めたりでもしたら俺の人生お先真っ暗になる。それだけは避けたい。しばらく、ボケ〜ッと天井に目を向けてたが、眠たくなって来たので寝ることにした。



 再び、目を覚ますと何人かは起き上がっていた。グループで固まってて話し込んでいる。俺にはあんな風に話せる友達がいないので寝たフリをする事にした。



 次々とクラスメイト達が目を覚まして起き上がって行くのを見て、俺も起き上がる事にした。とりあえずは状況の確認をしなければ。



 まず、ここがどこなのかと言われたら分からない。部屋は石造りで壁には蝋燭が何本も立てられてあり、それがこの部屋の明かりとなっている。ただ、一つ気になるのは俺達をこの部屋、もしくは異世界に召喚した奴がいない事だ。普通なら神官とかお姫様とかがいるはずなのに。



 冷静に分析するが小説の知識ではここらが限界だ。それに元々俺は頭良くないし。学力テストでも真ん中の少し上辺りだからな。良くもなく悪くもなくってね。



 俺は部屋の事や今の状況の確認を止めて、クラスの連中に視線を向けてみる。やはり、パニックになってる奴が大半だ。俺と同じで冷静に周りを見てるのはリア充軍団と福田君くらいだ。



 福田君はなんか顎に手を当ててブツブツと喋ってる。多分こういう状況が書かれた小説とか読んでたんだろうな。俺よりも知識は豊富そうだし当たり前か。



 その時、パンと手を叩く音が聞こえてくる。クラスメイト達が一斉に音の鳴った方に顔を向けると我らが担任陣内鉄也が手を合わせていた。



「よしっ! 落ち着けお前ら。まずは現状の確認だ。誰か、誰でもいい。何か覚えてる事があったら言ってくれ」


「はぁーい、先生! いきなり足元が光ったと思ったらここに来てましたー!」


「ふむ、まるでSF映画だな。他には何かないか?」



 そこはファンタジー映画では? とツッコミを入れたくなったが胸の奥にしまっておく。



「それ以外はわかりませーん」


「うーむ。やはり、誰もわからんか…………むっ、お前ら携帯持ってるか? 持ってるなら外部に連絡を――」


「圏外ですよ先生」


「ぬっ…………これは困ったな。現状何も分からないままだし、携帯は使えない。仕方ない、私があの扉から出て外を確認してくる。お前達は待機だ。もしもだ、もしも私が30分経っても戻って来なかったらその時は――」



 鉄人が指を指していた扉が勢い良く開かれる。いきなりの事でこの部屋にいる全員がビクリと肩を震わせる。そして、扉の方へと顔を向けたら煌びやかなドレスを身に纏った美少女が立っていた。



 その美少女はゆっくりとこちらへと歩いて来る。まあ、十中八九俺達を呼び出した奴だろう。格好からしてもかなり身分が高い。いや、お姫様だと思われる。



「初めまして、勇者の皆様」



 ドレスの両端を持ち上げて片足を一歩後ろに下げてペコッとお辞儀をしてくる。よく洋画で見る貴族の挨拶だ。確かカーテシーとか言われてる挨拶だったな。まあ、そんな事はどうでもいいか。



「これはご丁寧にどうも」



 鉄人もお辞儀をする。クラスの男子達は美少女に釘付けでヒソヒソと話している。ちなみにリア充軍団も同じ内容を話している。可愛いね、綺麗だね、お姫様かな? とかだ。見りゃわかんだろ。まあ、さすがに見ただけでは何者かは分からないけど。



「あの、ところで君は?」


「申し遅れました。私の名はクリス・オルランドです」


「外国の方ですか。私は陣内鉄也と言います。そして、こちらの子達は私の教え子です。それで、少しお聞きしたいことがあるのですが」


「はい。何なりとお答えしますよ」



 そこからは質問攻めだった。鉄人が根掘り葉掘りと今の状況についてのことを質問をした。返ってきた返答がどれもぶっ飛んでてさすがに面を食らってたが。



 ****



 数十分にも及ぶ質疑応答が終わる。俺としてはネット小説と同じような内容だったのでさして驚きはしないが、やはり現実だと知ったら不安が胸中を渦巻く。



 そりゃネット小説のようにチートがあれば話は別なんだろうが。現状俺は喧嘩を数回しかした事のない弱輩ものだ。いきなり、戦場に立てと言われたら絶対にお断りするレベルだ。



「信じられるか!!!!」



 急に鉄人が怒鳴った事でクラスメイト達が驚く。俺も驚いたが、その反応は確かなものだ。あのような内容を信じろと言われて信じる奴がいるかと。



「ここが異世界で私達が勇者? しかも、魔族と争う為に呼んだ? こんな話をどう信じろと言うのだ君は!?」


「信じられない事でしょうが、全て事実なのです」


「仮にこれが事実だとしても、私は認めん!! この子達に戦争などには絶対に参加させん!!」


「し、しかし、それでは国が」


「酷な話だが私達にはどうしようもない。さあ、早く私達を元の世界に帰してくれ」


「…………出来ません」


「なっ!! そうまでして戦争に参加させたいのか!」


「ちっ、違います! その元の世界にはもう帰れないのです」


「そ、そんな馬鹿な話があってたまるか! こちらの世界へと呼べたのなら戻す事だって可能だろう!?」


「いえ、この召喚魔法はこちらの世界へと呼ぶことしか出来ないのです。そして、互いの世界の矛盾を防ぐ為に勇者様達がいた世界では勇者様達は元から存在しなかった存在になってしまうのです」


「で、では、私達は元からこの世界の住人だという事になるのか……」


「はい……」



 それなら送還魔法とか使えるんじゃね?



「ふざけるなッッッ!!!!」



 鉄人が一際大きな声で怒鳴りを上げる。俺達もここまで本気で怒鳴った所を見た事が無かった為に驚き目を見開いてしまう。



「いいか? 貴方がした行為は誘拐に等しいんだぞ! それにこの子達から未来を奪った! この子達には家族がいて友がいたのに、それを無理矢理奪ったんだ!! 争いのない平和な世界で幸せに暮らせる筈だったのに、それなのに……貴方達の勝手な都合で!!!」



 鉄人………


 もっと言ってやれ!


 自分が何をしたのか分からせてやるんだ!!



「ご……ごめん……なさい……」


「私も熱くなりすぎてしまった。だが、私は間違った事を言ったつもりはない」



 うむ、確かにその通りだ。



「うっ……うぅ………」



 嗚咽を漏らしてるけど、泣きたいのはこっちだからな!



 クリスが蹲り嗚咽を漏らしていたら、リア充軍団の四人が駆け寄り励ましている。お前ら人よすぎ。てか鉄人の説教を無駄にする気かよ。



 なんとか立ち直ったお姫様が再び口を開く。



「納得しては貰えないでしょうが、これから勇者様達にはある事をしてもらいます」


「この子達に何をする気だ!」


「ひぅ……」


「先生!! クリスちゃんが怯えています!!」


「むっ、しかしな、清水。私としても君達に何かあったらいても立ってもいられないのだ」


「先生の気持ちは嬉しいですけど今はクリスちゃんの事を信じてあげて下さい」


「むっ、むぅ……生徒に言われてしまってはな。わかった。今は信じよう」



 色々あったが、この後する事に俺は大興奮となる。

改訂しました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ