お化けの話し相手
とりあえずこの幽霊のお話を聞いてやろう。それに、丁度話し相手が欲しかったからな。いつもならクロがいるんだけど何故かいないし。
「さて、それでお前の名前は?」
「私の名は……………あれ? なんでしたっけ?」
「………光属性の魔法なら消せるかな?」
「わっわっ! 待って下さいよ! 本当に忘れたんです〜〜!!」
「自分の名前だぞ? 普通忘れるか?」
「ううっ、それがどうしても思い出せないんです〜〜」
ううむ、シュールだなぁ。
普通なら頭を抱えて悩む女の子は可愛いと思うんだがいかんせん、こいつには足が無いし。そもそも、透けてるから向こう側の景色が見えている、
「なんか失礼な事考えてませんか〜〜?」
「透け透けやなぁって……」
「なっ! エッチ! スケベ! 変態!」
「てめぇ! 除霊してやろうか!! お前の身体が透け透けなんだろうが!!」
「あっ、そっち〜!?」
「何を想像したんですか〜〜?変態幽霊は〜?」
「な、何も想像なんかしてませんよ!」
「本当かよ? 変態幽霊さん」
「むかっ! 貴方の方がよっぽど変態じゃいないですか!」
「ほう? 具体的に説明してみろよ?」
「そ、それは、え〜〜っと…………」
「ふん、説明出来ないくせに人を変態呼ばわりしてんじゃねえよ」
「うぅっ」
勝った!!
てか、そもそも勝負なんてしてないんだけどね。
それよりも、この変態幽霊はこの城が出来てからいると言ったな。もしかしたら、この変態幽霊は魔王だったのではないか? いや、しかし、この変態幽霊はどう見てもただの人間にしか見えない。
聞いてみるか。
「おい、変態幽霊」
「なんで、変態幽霊なんですか!!」
「そんなことより、お前は人間なのか?」
「貴方の目は飾りですかあ〜? どこから見ても人間にしか見えないでしょう〜?」
激しくウザい言い方をする変態幽霊はその場でクルリと回転する。確かにどう見ても人間にしか見えない。でも、幽霊だ。
「お前が人間なのはわかったが、死因はなんだ?」
「さあ? それすらも分かりません」
「変態以外の情報は無し、か」
「だから、変態じゃないですって〜!!」
なんか、知らんが怒ってる幽霊を放っておいて考える。こいつはもしかしたら記憶が無いのかもしれない。いや、若しくは、ただ単に忘れているだけかもしれない。
ふうむ、何か役にたつかと思ったがダメみたいだな。
ちょっとクロを呼んでみよう。
「来い、クロ」
「何の用だ?」
「わっ! 黒猫ちゃんです〜!!」
「うおっ! なんだ、この幽霊は?」
「ただの変態だ。無視しとけ」
「だから変態じゃないですってば!!」
「そうか、お前と同類か」
「こんな奴と同類なんて嫌だ!!」
「わ、私だってこんな人と同じなんて嫌です〜!」
クロに変態幽霊と同類呼ばわりされたので言い返すと、変態幽霊も俺と同類呼ばわりされたのが嫌だったようでクロに反論している。クロは聞く耳持たずで素知らぬ顔をしている。
どう考えても俺がこんな変態幽霊と同じなわけがない!
「それより、なんで呼んだんだ?」
「ん、ああ、忘れてた。お前って幽霊の過去も見れるのか?」
「いや、生きてる奴限定だ」
「そうか……」
「なんか気になんのか?」
「実はこいつ、記憶が無いんだよ」
「成る程な、だから俺様を呼んだのか」
「そういうわけだ」
しかし、困った。クロの能力は幽霊には効かないのか。つまり、変態幽霊の正体がわからずじまいというわけだ。いや、分かることはこの変態幽霊は魔王城が出来た当時には既に存在していたこと。そして、人間であること。それ以外は一切不明。
本当何なんだよ……。
しばらく黙って考えていたが何も思い浮かばないので考える事をやめることにした。月を見ようと空を見上げると、変態幽霊が話しかけてきた。
「あの〜〜」
「ん? なんだ、変態」
「だ、だから変態じゃないって何回言えば……うぅっ……グスッ……」
こいつ、すぐ泣くな。
「悪い悪い、で、なんか用か?」
「グスッ……あのですね………その、これからも話し相手になっては貰えないでしょうか?」
「別に構わないけど、なんでだ?」
「実は私、何度もこの城の皆さんに話しかけたんですけど誰も認知してくれなくて………」
「まさか、ずっとか?」
「はい……でも、貴方は私を見る事も出来て話せる事も出来ますから………」
「まあな」
「うぅっ……実はずっと寂しくて悲しかったんです。認知され無いって事が。どれだけ呼んでも振り向いてくれないのはとても辛かったです」
「まあ、これからは俺が話し相手になってやるよ、変態幽霊」
「だ、だから変態じゃないって〜〜……うぅっ……グスッ……うえっ……」
なんだか分からないが変態幽霊の話し相手になることが決まった。
待てよ?
一つ確認したいことがある。
「なあ、俺がお前と話す時ってまさか空気と話してる訳?」
「そうなりますね。クロ猫ちゃん以外には頭おかしい人に見られます」
「やっぱりお前の話し相手辞める」
「そ、そんなのあんまりです〜〜〜〜!!」
満月の夜に木霊する変態幽霊の泣き声。その日は別れを告げてリューネの眠る部屋へと戻り再び寝ることにした。
とりあえず、あの変態幽霊は昼間も現れるのか気になったが睡魔が襲って来たので考えるのをやめた。
不定期更新ですがよろしくお願いします。
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では次回!




