冒険者ギルドに
「やっと!! 街に来たあああああ!!」
ようやく、俺はダンジョンを出てから街に辿り着いたのだ。とても苦労した。ダンジョンから街までの道が分からなかったからだ。
それに加えて俺が出て来てから十分後にはクラスの奴らが出て来たから焦った。だって、なんか団長がめっちゃ真面目な顔で走ってるのを見たから。本当あの時木の陰に隠れて正解だったと思う。
「多分、まぁ、うん、あれだな!桐谷が報告したんだろう! ウル・キマイラくそ強かったし! でも、俺のが強い! まぁ武器の性能の勝利ですけども……」
でも、それを造った俺が強いんだ!
昔、神話を調べてて良かった!
最高だぜ!
それにどうやら《武具創造》ではアニメや漫画、小説なんかに出てくる武器する創れるんだから無敵感半端ない。しかも、今のところ代償は払ってないしな。
マジでチート!!
ひゃっほう!
しかも持ってるのは俺だけみたいだし!!
ん?
なんか街が騒がしいな……
何かあったのかと思い、近くで話してる人達の会話に耳を傾ける。
「おい! 聞いたか? なんかダンジョンにウル・キマイラが出たんだってよ! それに2人の勇者が今行方不明らしいぜ!」
「ま、まじか! そりゃ大変だな!」
っべ!
俺のことだわ!
しかも、2人って?
ああ!
福田君!!
まだ、見つかってない事に心配する。出来るなら無事に見つかって欲しい。もし、死んでたりしたら後味悪いから。
もしかして彼は復讐型の主人公になったりしてるかもしれない。そうなったらきっとかなりのチート持っているに違いない。大体いっぺん死んで復活する奴って何故か姿が変わるんだけど意味あったりするのだろうか。
「それより冒険者ギルドに行って登録しよ! 資金がないと旅は始まらないぜ!」
「ねぇ、なんでさっきから一人で喋ってるの?」
「えっ!? あ、あははは……な、なんでもないよ」
俺がずっと独り言を続けていたら、いつの間にかすぐ側まで近寄っていた子供に指摘されてしまう。
うおおおおお!!!
恥ずかしいいいい!!
なるべく声に出さないようにしようと改めて思った。子供から離れると冒険者ギルドを目指して歩き出す。
あっ!
冒険者ギルドがどこにあるのか知らない!!
くそっ!
ここに来てこれかよ!
とんでもない失敗に気が付き足を止める。誰かに冒険者ギルドの場所を聞けばいいのだが、知らない人に話し掛ける勇気がない。
でも、いつまでもこのままじゃいけないよな。
しかし、そこで俺は閃いた。ギルドというくらいだからデカイ建物に違いないと。早速、大きな建物を探していく。
あるぇー!
おかしい!!
大きな建物をしらみつぶしに探したが、どれも冒険者ギルドではなかった。いきなり、躓いてしまった俺は困り果てる。
どういうこっちゃ!!
説明せんかい!?
やっぱり人に聞いた方がいいか……
やはり、誰かに聞いたほうが無難だと思うが、あまり気が進まない。俺は思わず愚痴を零してしまう。
「でもなぁ、やっぱりやだなぁ」
「何が??」
「うおっ!? なっ、さっきのクソガキじゃないか!?」
「クソガキじゃない! マルコって名前がある!」
「へっ!? あー、ごめん。マルコ」
「うむ! 許そう!」
何故か大きな態度で許される。自分よりも遥かに年下の癖にと腹が立ってしまい思わず殴ってしまいたくなる。
「さっきからこの辺ウロウロしてるけど何か捜してるの?」
「えっ? あ、ああ、ギルドをね」
「それなら僕知ってるよ!」
「はっ? マジ?」
「うん! ついて来て!」
ひゃっほう!!
さっきは殴るとか思ってごめんよう!
マルコの後ろを着いて行き、冒険者ギルドへと向かう。
「ここだよ!」
辿り着いた場所は酒場だった。どうして、酒場なのかと混乱してしまう。
「えっ、えっ!? ここって酒場じゃないの??」
「うん! 酒場の中にギルドはあるんだよ?」
「嘘! それ本当?」
「うん! 冒険者はねーお酒大好きだからもうギルドと酒場を一緒にしちゃおうってなってこうなったの!」
「へぇー知らなかった」
よくよく思い出してみると、小説の中だと冒険者ギルドは酒場と一体化していた。どうして、気が付かなかったのだろうか。
デカイ建物だけしか視野に入れてなかったからな……
早速、中に入ろうと意気込む。いざ、中に入ろうと足を前に出したらマルコが話しかけてくる。
「それよりお兄さんは冒険者になりに来たの?」
「へっ? ああ、そだよ?」
「ふーん……強いの?」
「いや、めっちゃ弱いよ?」
「えっ!? 強く無いのに冒険者になるの?」
「うん」
「だって冒険者は皆強いんだよ?大丈夫なの??」
「なんとかなるさ!」
まんまと俺の嘘に騙されるマルコに対して俺は心の中で盛大に自慢する。
俺はつおい!!
今度こそ中に入ろうとしたらマルコに引き止められる。
「やめた方がいいよ!! 強く無かったらすぐに魔物に殺されちゃうよ!?」
「いいか、マルコ! 男にはな、負けると分かっていても戦わなくちゃいけない時があるんだ! それが今だ!」
「わけわかんないよ!」
「うるせっ!」
「もういい! わかった。なら中に入れば?」
「当たり前だ!」
マルコは納得していないが離してくれたので、ようやく冒険者ギルドに入る事が出来る。ここから俺の伝説が始まるのだと思うと興奮が収まらない。しかし、いざ中に入ると酒を飲んでいた冒険者と思われる屈強な男達が睨みつけてきた。
めっちゃ睨まれる……
怖いお……
僕がなにしたの?
受付、受付はどこだ??
挙動不審になりながら受付を探し回る俺にマルコが話しかけてきた。
「ねぇ、突っ立ってないで早くカウンターに行けば??」
「ファっ?? なんでいる?」
「僕も用があって来たんだもの」
「そ、そうか。カウンターってどこ?」
「はぁ……ついて来て」
呆れたのか盛大に溜息を吐かれてしまう。俺の方が大人なのにと内心怒り狂うが態度には出さない。それこそが大人ってものだからだ。
マルコに連れて行かれた場所には美人なお姉さんが受付と思われるところに立っていた。マルコはお姉さんを見つけると駆け出していく。
「あっ、お姉ちゃん!!」
「マルコ!?」
「来たよー!」
「どうしてここに? ここへは来ちゃいけないって言ってるでしょ?」
「お姉ちゃんに会いたかったから……」
「はぁ……この子は……ん? そちらの方は?」
「このお兄さんは冒険者になりに来たんだって!」
後ろで緊張に固まっていたらマルコがお姉さんに俺のことを伝える。あまりの緊張に震えて声が出ないでいると先に声を掛けられる。
「初めまして! 冒険者ギルドにようこそ!」
「あっ、えっと、はい……」
しどろもどろな俺の返事に受付のお姉さんが首をか傾げている。俺は上手く話せなくて、早く話を進めてくれと願うばかりであった。
「えっと本日は登録をされに来たのですよね??」
「あっ、はい……」
「かしこまりました。では、本日は私セラが登録について説明しますね」
「あっ、お願いします」
「では、冒険者ギルドでは――」
ざっくり説明すると死んでも責任とらない。仕事を投げ出したら罰金が発生。15歳からなら誰でも登録可能。簡易ステータスの提示をしなければならない。
ランクがFEDCBASとあってSが一番上。ランクアップは仕事をこなして行くことで昇格する。ただしAランクは他のAランク冒険者の推薦が必要でSランクはさらに国が認可するまではなれない。あとは、素材などを換金出来る。
。
ってところか?
まぁ追い追い分かってくるだろ!
「ではこちらの書類にサインをお願いします」
「あっ、はい」
どうしても、あっが付いてしまう。意識してるんだけど治らない。ついつい、無意識にやってしまう。いい加減治せねばならないと思いながらも咄嗟だと出てしまう。
俺は簡易ステータスというものが分からず、戸惑っているとセラさんが説明してくれた。
「簡易ステータスというのは年齢と名前、性別、称号しか表示しないものです」
「えっと? どうしたらいいんです?」
「念じるだけでいいですよ?」
「あっ、わかりました」
言われた通りにしてみると、ステータスにはセラさんが言っていた項目が映し出されていた。
◆◆◆◆
山本 翔 男 17歳[称号]異世界人
◆◆◆◆
おおっ!!
本当にこれだけ!便利だなぁ!
待て!異世界人ってやばくね??
ふっ、焦ることはない!
俺には《武具創造》がある!!
「では拝見いたしますね」
セラさんに見せる前に武具創造でステータスプレートを改造して渡した。
◆◆◆◆
山本 翔 男 17歳[称号]一般人
◆◆◆◆
「では、少々お待ちください。ステータスプレートを登録して来ますので」
「あっ、はい……」
また、返事をする前にあっと言ってしまった。そんな俺の返事を聞いたのかは分からないがセラさんは奥のほうへと引っ込んでいった。待っている間、暇だなと思っていたらマルコが話しかけてきた。
「ねぇ?」
「ん? まだいたのか?」
「いたよ! さっきから!」
「わりぃ。静かだったから帰ったのかと思ってたわ」
「それより僕とお姉ちゃんとの態度が違うよ!!」
「当たり前じゃボケ! 丁寧に教えて貰ってんだから違うに決まってんだろうが!」
「贔屓だ! 僕だってここまで案内してあげたのに!」
「それに関しては感謝してるって、だがそれとこれとは話しが別だ!」
「うぅっ!」
ふっ!
子供と美人なお姉さんで態度が変わるなんて男なら当たり前なのさ。
マルコとそんなやり取りをしていたら、セラさんが丁度タイミングよく戻ってきた。
「お待たせしました。これで冒険者ギルドに登録されました。ステータスプレートの称号も変わってると思うので確認をお願いします」
「あっ、はい」
◆◆◆◆
山本 翔 男 17歳[称号]異世界人・冒険者
◆◆◆◆
言われた通り確認してみると称号の欄に冒険者というのが加わっていた。これで、今日から俺は冒険者となったのだろう。
ようし、これから冒険者として頑張りますか!
改訂済み




