乱入者
山を疾走する俺はシエルを探し回る。大声を出しながら走り回っているが、先程から生徒を誰一人も見ていない。一体どうなっているんだと不穏に思う。シエルは無事なのだろうかと言う不安が大きくなって来る。
自分は奴隷でありシエルの護衛なのに、一体何をしているのだと自分を責める。しかし、今更どうこう言っても仕方が無い。一刻も早くシエルを見つけ出さねば。
「シエルゥゥウ! どこだああああああ、どこにいるぅううう!!」
一向に反応が無い。これだけの大声なら近くの生徒が気付いてもおかしく無いのに、それすら反応が無い。あまりの違和感に不気味さを覚える。
再び山の中を疾走する。しかし、どんなに山を駆け回っても敵どころか生徒すら、いや、生物の反応、気配が一切無いのだ。
「くそっ!! どうなってやがる!!」
悪態をつくが状況が変わるわけでは無い。しかし、悪態をつきたくもなる。何故ならば、どんなに山を駆け回っても人っ子一人いないのだから。
「……何が起きてるんだよ!」
◇◆◇◆
「なんですって?乱入者が現れたんですか!?」
現在アンナはサバイバルの為、森、山、草原を行き来している。その時に戦闘不能になった生徒を保護して治療していたら乱入者が現れたという報告を耳にする。
この地は学園の教師達が結界を貼ってあるはず。それを突破して侵入することはまず不可能。理由としては神級を撃たれたとしても耐えれる程の結界を貼ってある。しかし、いくつかは例外がある。それは地面からの侵入だ。
地面にまでは結界は届いてない。故に地面に穴を掘り結界を越えることは可能である。そして、もうひとつは空間属性を持つ者がいれば容易く結界を突破できる。
つまり、この二つ以外の侵入はほぼ不可能なはず。なのに、乱入者が現れたとの報告が入っている。
「その乱入者は何人ですか?」
「三人組だと聞いてます。顔は黒い布で覆われている為素性が全く分かりません」
「そうですか。被害の方は?」
「乱入者は山に現れたようで山にいた生徒はほぼ戦闘不能になってます」
「現在残ってる生徒数は?」
「二百人程度かと」
「わかりました。私は乱入者を捕縛しに山へと行きます。ここは任せてもよろしいでしょうか?」
「わかりました。お任せ下さい」
「ありがとうございます。では!」
アンナは身体強化を施すと山へと駆けて行く。
山に辿り着くと一人の少年の声が聞こえてくる。この声はシエル・クラインの奴隷にして護衛の冒険者。
「アンナ先生! どうしてここに!?」
「貴方こそ、どうしてですか?」
「俺はシエルを助けにです」
「シエルさんは捕まってるのですか!!」
「いや、わかりませんがどこを探しても見つからないんです」
「……私も一緒に探します」
「わかりました。それと気をつけてください。ミカエルさんを撃ち落とした敵が何処かに潜んでいます」
「それは知ってます」
「えっ、見てたんですか?」
「いえ、私が来た理由は乱入者がここに現れたとの報告を受けたからです」
「乱入者です、か」
「ええ、何か心当たりが?」
「いや、わからないです。ただ、その乱入者がミカエルさんを撃ち落としたとしたらかなりの実力者ですよ」
「ええ、わかってますよ」
「そう、ですか……俺は行きます」
「気をつけてくださいね」
「先生こそ」
ショウはアンナと別れると来た方向とは別の方向には走り去って行く。アンナはショウが消えると自分も探しに山の中を駆け回る。
◇◆◇◆
ふむ、乱入者か……
それにしても、汗かいたアンナ先生エロかったな……!
いかんいかん!!
今は変なこと考えてる場合じゃない。早くシエルを見つけなきゃならんのに。てか、乱入者ってなんだ。確か結界貼ってある筈で神級をも防ぐ程の結界だ
それが壊れたら先生達が焦る筈だし、それすら無いとしたら敵は地面でも掘って来たのか。もしくは別の方法があるのか。
無性に腹が立って来た!
「糞がああああああああああああああああ!!!」
俺は魔力を全開で放出する。木々が震え地面が揺れる。山全体が揺れているのではと錯覚してしまうほどに。
「がっは……」
腹に激痛が走る。いや、正確には腹では無く、脇腹に激痛だ。そこを見てみるとナイフが刺さっている。どこから飛んで来たか分からないが、そこには確かにナイフが深く刺さっており血が流れている。
どこから……?
ナイフを引き抜き周りを見渡す。しかし、誰もいない。それどころか生物の気配が無い。じゃあ、このナイフはどこから飛んで来たというのだ。
それがわかれば苦労はしないのだが、どこにも生物の気配が無いのでそれすらわからない。何もわからない。これでは乱入者どころかシエルを見つけることも。
「……ぐっ、エクスカリバー、儚き我が神幻郷」
エクスカリバーも魔法の鞘を取り出し傷を完治させる。傷を治すとそのままエクスカリバーを装備して辺りを警戒する。
「ふっ!」
再びナイフが飛んで来たがそれを受け止めることに成功して、投げられたであろう方向にナイフを投げ返す。しかし、ナイフを投げ返したが何の反応も無かった。
「そうか。そういうことか。まさか、空間属性の乱入者だったとはな」
気付いたからと言っても乱入者の姿はまだつかめていない。それに敵は好きな所から攻撃が出来る。正直、俺にとってはやり辛い相手だろう。
しかし、空間属性だとわかっただけでも良しとしよう。
さあ、ここからは本気で行かせて貰うぞ!!
改訂済み




