アクシデント発生
うーむ、見事なまでに快進撃ですなぁ……
しかし、シエルが意外と魔法で援護しているのが驚きだ。あんなに魔法が上手だったなんて予想もしなかった。アンナ先生とマンツーマンの授業してからかな。
今回のダンジョンは四十五層までしかないから、めちゃくちゃ強い奴が出るわけではないので安心してもいいだろう。アクシデントが起こらない限り。
今は一つ目のチェックポイントを通過した所だ。チェックポイントと言うのは先生達が待っている場所だ。そこを通過したら評価される。
三段階評価で十五層ずつにいる。つまり俺達のパーティーは現在十五層をクリアした所だ。さてさて、この快進撃のまま行けるのでしょうか。
それにしても中々の連携だ。俺がいない時に練習したのかな。まあ、そんな事はどうでもいいか。連携が良く出来てると言っても会長の指示が良いからか。
これなら何か無い限り俺の出番は無いなぁ……
順調にダンジョンを進んでいくと、後ろから息を切らした学生達と険しい表情を浮かべている冒険者が走ってくる。
その様子を見ると何かが起こったことは間違いない。俺は近付いて来る冒険者に話を聞くことにした。
「何があった?」
「上の層ではぐれが出たんだ。四十層にいた俺達は学生を連れて避難している」
「はぐれだと!?」
一応驚いている反応を見せるが、はぐれというものを知らない俺はどのくらいの脅威があるのか分かっていない。
だが、Aランクの冒険者が険しい表情を見せて学生達を連れて避難するくらいだから相当な脅威と見ていいだろう。
冒険者から、ある程度の情報を得た俺達は避難する事を決める。しかし、何を血迷ったのかキースがとんでもない事を言う。
「俺達ではぐれを倒そうぜ!」
なんてバカなことを言っているキース君。
やめたまえ。君の実力では無理だ。
「いや、ダメだ。話を聞く限りではAランク冒険者達も一人では太刀打ち出来ない相手と聞いている。今の私達では到底敵わないだろう」
「一人では、だろ? なら俺らとあんたが一緒に戦えば余裕だろ!」
何を無茶なことを。
俺の依頼は監視役でもあるが護衛も兼ねているのだ。無事に学生を守りきるのがお仕事なのに、敢えて危険に晒すような真似は出来るわけがない。
「キースさん。幾ら何でも無謀過ぎますよ!」
「シエルの言うとおり」
「何を言ってんだよ! もし、倒せたらこの先の学園生活最高だぜ?」
アホか……
そんなくだらない事の為にやってんのかこいつは。
とりあえずここは俺が避難させなきゃ!
「残念だが俺は君達を守りながら戦うのは無理だ。だから今は大人しく避難するぞ」
「はあ!! ふざけんなよ! 折角の――」
キースが何か言いかけたが俺は殺気を放ちキースを黙らせる。
「これ以上、文句を言うなら少し手荒な方法に出るぞ?」
「うっ……」
キースが黙ったので避難をさせることにする。流石のキースも俺が放った殺気に耐えられなかったようだ。おかげで、素直に言う事を聞いてくれる。
「よしっ! 後三層で魔法陣まで辿り着く。一気に駆け抜けるぞ!!」
『はい』
全員の声が重なる。俺達は一気に四十五層まで駆け抜けた。
改訂済み
短め




