ラブレター
「食事中に悪いが話があるんだ」
いきなり生徒会長が真面目な顔をして喋り出すものだから、ルネとキースは二人して喉を詰まらせていた。
「まあ、話と言ってもそんなに大層なことじゃ無い。二日後のダンジョン探索があるだろう? 君たちはもうパーティを組んだのか?」
まあ、俺は聞いてるから別にどうでもいいが……
「まだ組んでは無い」
キースが答える。同様に他の二人も頷く。当然と言えば当然だろう。
「そうか。提案なんだが私と組むのはどうかな?」
「えっ?」
三人が同時にハモる。見事に同じリアクションだ。無理もない、まさかあの生徒会長が自分からパーティを組まないかと提案をしているのだから。
しかも、まだそんなに面識が無いのにも関わらずだ。
「あんた何か企んでんのか? ファラ・シュタイン」
キースが急に態度が大きくなって生徒会長に質問し始めた。なんで、そんな態度なんだ。相手は一応年上なのに。
「いや、私は純粋に君達とパーティを組みたいと思っただけだよ。キース・ベガ」
そういや、よくよく考えるとアルツェイルの三大貴族がここに集まってた。クライン家、ベガ家、シュタイン家。見事に集まってるわ。むしろ、俺とルネは場違いかもしれない。
「二人とも落ち着いて下さい。でも、組むとしても私達は四人いるんですよ。誰か一人を仲間外れにするのは……」
「あっ、そのことなんだけど、俺はシエルさんの奴隷ってことでダンジョン探索に参加出来ないんだよ」
俺がそう言うとシエルも気付いたらしくフォローしてくれる。
「そうでした。ショウさんは私とダンジョン探索の成績が一緒になるんです。それで主人の私が参加するようになってました。だから、私とルネとキースの三人で組みませんか?」
良い流れだ。このままいけば三人が組んで生徒会長が残りの一枠に入り四人一組のパーティの完成だ。
「そんなの初耳だぞ。なんでそれを先に言わなかったんだよ」
「忘れてたんだ。すまん」
「はあ、まあ俺は良いけどよ」
キースは了承するとルネの方を見る。ルネはフルーツ牛乳をちびちびと飲んでいた。会話に参加しないと思ったらそんなの飲んでたのか。
「私もOK」
これで三人は決まった。後は生徒会長だが、まあ答えは決まっているだろう。
「よし、それじゃ私とルネとキース、シエルの四人で組もう! 異論は無いな?」
「はい」
「ああ」
「……」
フルーツ牛乳飲むのやめんか!
まあ頷いてるので異論は無いんだろう。こうして二日後のダンジョン探索に向かうパーティが決定した訳だ。
俺も監督員として参加することはシエル以外は知らないだろうな。ちなみに俺は学園で雑用することになっている。そう言う話になっている。
昼休みが終わり午後の授業に入る。俺は全ての授業を寝て過ごした。
放課後になり帰ろうとしたら、鞄に見覚えの無い物が入っていた。なんだろうかと思い手にとってみると手紙のような物だった。
これは俗に言うラブレターというヤツですね!
うひょおおお!!!
俺の時代が来たああああああ!!!
早速俺は手紙を読んでみる。
『ショウ様へ
私は貴方の事が入学した時よりずっと気になっておりました。
そして、私は日に日に貴方への思いが増して行き、それはいつしか恋となっておりました。貴方が奴隷であろうと構いません。
私は貴方が好きです。
今日の放課後に第三校舎の空き教室で待ってます』
ふっふっふっ……!
ついについに!!
俺にラブレターが!!
これが青春ってもんだろう!!
早速シエルに用事があるって言ってこよう。善は急げというやつだ。
「シエルさん。すいませんが俺用事で残らないといけないんです」
「そうなんですか? それなら待ってますよ」
「いえ、少し遅くなるかもしれないんで」
「少しくらい平気ですよ」
ぐっ、手強い!!
「いや、しかし」
「シエル様。こんな奴隷など置いて帰りましょう。どうせ用事と言ってもロクな事では無いですから」
「そうなんですか、ショウさん?」
うっ……ロクな事では無くはない。
俺に惚れてる女の子に会いに行くだけなんだ。男にとってはこれが大事な事なんだ。
でも、ブサイクだったらどないしよ!?
そりゃ俺も人の事は言えないけど……
でも、やっぱり付き合うなら可愛くて優しい子が良いよね!!!
「ま、まあ。大した事では無いですから」
「……わかりました。ミカエルと先に帰りますね。あんまり遅くならないで下さいね」
「はい!」
うっし!
待っててね!!
俺に恋しちゃった女の子よ!!
今会いに行きますからねー!!
手紙に書いてあった第三校舎の空き教室へと着いた。早速、中に入ると女子生徒らしき人が後ろを向いて立っていた。
「あ、あの」
とりあえず話しかけてみる。後ろを向いて立っていた女子生徒はこちらに振り返る。
うーむ、顔は悪く無いな!!
「あっ、来てくれたんですね」
「えっと、はい……」
「よかったぁ……来ないんじゃ無いかと思ったんですよ?」
「すいません」
「じゃあ本題に入るね……」
俺は緊張のあまり生唾を飲み込んでしまう。告白されるなんて人生で初めての体験だ。
いや、正確に言えば三度目か……
一度目は……いや、思い出したくない。
二度目はソニアさんだったな……
「えっとね――」
女子生徒が何かを喋りかけた時、後頭部に衝撃が走った。背後から頭を攻撃されたのだ。その衝撃により前のめりに倒れる。
なんとか意識を失うことはなかった。首を捻り後ろを見てみると鉄パイプのような物を持った生徒が複数いた。
まさか……?
俺は首を戻して女子生徒の方を見てみる。すると女子生徒は口の端を上げて笑い始める。
「アハハハハハ!! バッカじゃないの? 誰があんたみたいな奴を好きになるかっての!」
なるほど俺は騙された訳か……
ああーくっそ……
マジで最悪だなぁ……
改訂済み




