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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第四章

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シエルの過去

 午後の授業は基本的に座学だったので眠っていた。眠っていたのだがシエルに叩き起こされる。その横では何故かルネが寝ている。



 キースはあれから俺達の元へと来てはいない。流石に喧嘩してしまったせいで気まずいのだろう。



 シエルは教科書が読めないので基本俺が読み上げている。図とかの説明も俺がしている。ルネを見てみると気持ち良さそうに眠っている。俺も眠りたい。



 しかし、シエルがそれを許さない。



 ようやく最後の授業が終わり帰ることになる。俺とシエルとルネは帰る支度をして帰ろうとする。教室を出ようとしたらキースが絡んでくる。



「おい、待て」


「何ですか?」


「……あの時は言い過ぎた。すまなかった」



 なんと、キースが頭を下げて謝ってきたのだ。これは俺も驚き目を見開く。シエルも驚いているようだが、すぐにキースに頭を上げるように言う。



「いえ、私はもう気にしていません」


「そうか……それと、ルネと言ったな?」



 ルネは名前を呼ばれたので首を傾げている。



「すまないな」


「別にいい。三大貴族に逆らった私が悪いから」


「それでもだ」



 キースはそれだけ言うと教室から出て行き帰って行く。



「……三大貴族って何?」


「そんなのも知らないの?」


「ショウさん。三大貴族と言うのはこのアルツェイルに古くから存在する貴族のことですよ。三つあってベガ家、クライン家、シュタイン家の三つになります」


「へぇ~」


「ショウ、常識」


「知らなかった」


「ショウさんが知らなくても無理ありませんよ。この国に来たのが初めてなんですから」


「そうなの?」


「そうですよ。ショウさんは旅人だったんですから!」



 何故かシエルが胸を張りながら旅人だったと言うことを教える。



 俺達は帰ることにして学園から出る。道中ルネが俺に旅の事を聞いてくる。それを全てシエルが俺の代わりに答える。



 ルネは興味を持ったのかどんどんと質問して聞いてくる。シエルはそれに答える。俺が以前シエルに聞かれたことを。



「あっ、私こっちの方だから。また明日」



 ルネはそう言うと手を振りながら帰って行った。



 ふむ……無愛想な奴だが可愛いな……!



 俺とシエルはルネと別れると屋敷へと帰る。屋敷へと帰るとアニスさんが門の前に立っていて俺達を、正確に言えばシエルだけ出迎えてくれていた。



「おかえりなさい。シエル」


「はい。ただいま姉様」



 ちくせう。


 俺にもおかえりなさいって言ってくれても良いじゃないか!



「さあ、中に入りましょう」



 アニスさんはそう言うとシエルを連れて中へと入る。俺もその背を追うようにして中に入る。



 俺はいつも通り夕食を食べ終わると皿洗いをする。皿洗いが終わり庭の方へと出て修行に励む。



 うーむ……


 まだまだ、武神状態の俺には程遠いかな。


 ルネと戦った時もあんまり良くなかったし。


 本気を出せば勝てたとは思うが……



 正直ルネ相手に本気になってるようじゃこの先勝てない。その為には通常の状態でもルネくらいは余裕で勝てるようにならなくては。俺はその後も修行を続ける。



 深夜を過ぎたので寝ることにしようと思ったが汗を流したくて風呂に向かう。



 俺は服を脱ぎ風呂に入る。相変わらずの大浴場だなと思って入っている。すると、大浴場の扉が開かれる。



 あれ?



 こんな時間に誰がと思いそちらを見てみるとセイジさんが立っていた。



 くそっ!!


 普通ならアニスさんかジェーンさんのパターンだろうが!!!


 なんでセイジさんなんだよ!!



「ん? ショウくんも入ってたのか」


「ええ、はい」



 俺は上がろうとしたらセイジさんに止められた。


「ああ、いいよ。まだ入っていても」


「いや、でも……」


「いいさ。ちょうど話し相手が欲しかったしね……」



 そう言うとセイジさんは湯に浸かる。



 何を話せばいいのか……



「学園はどうだい?」


「普通ですかね……」


「そうか。シエルは上手くやってるかい?」


「ええ。同性の友達も出来ましたから」


「それはよかった。正直不安だったんだよ。シエルは目も見えない足も動かない。そんな子に友達なんて出来るかなって……」


「……」


「まあ、友達が出来て本当に良かったよ」


「はあ……」


「ショウ……僕はね出来ることならこの目を娘にあげてやりたいんだ……もちろん足もだよ。僕は充分に人生を楽しんだからね」


「充分にってまだそんなには……」


「いいや、充分さ。綺麗な妻が居て可愛い娘がいる。それだけで充分に幸せだったんだ……」


「セイジさん……」


「君には、どうしてシエルの足と目が不自由になったかを話しておくよ。

 昔ね、私達家族でピクニックに行ったんだよ。アニスも含めてね。それでジェーンとシエルが散歩してたんだ。シエルは花を見つけたらしくそこに駆け寄ったんだ……

 そこはね……崖だったんだよ。もちろんジェーンが危ないから戻って来なさいと言って連れ戻そうとしたんだよ。その時不幸にもシエルの足場が崩れ落ちて、シエルは崖下に真っ逆さまさ……

 その時、私達はもうダメだと思ってたよ。でもね、シエルは生きていたんだ。でも、頭を強く打ったせいで脳に障害が残って今の状態になったんだ……」


「そんな事があったんですか…」


「ああ……僕もジェーンも後悔しているよ。いや、僕よりジェーンの方がか。今もジェーンは自分を責めているんだよ」


「でも、それは……」



 その先を言うことが出来ない。ジェーンさんのせいじゃ無いと言っても気休めにもならない。当事者でもない俺が口出しして言い問題じゃないんだ。



「だから少しでも普通の子のように生活させてあげたいと思って学園に入学させたんだ」


「そうですか……」


「本当に君には感謝してるよ。ありがとね、これからも娘をよろしく頼むね」



 そう言うとセイジさんは風呂から上がり出て行った。俺も上がり物置へと帰る。これが物置じゃなかったらどれだけ良かったか。



 ……なんとかシエルを治してやりたい。



 そう思いながら、眠るのであった。

改訂済み

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