奴隷として
朝、目が覚めるとベットの上では無く、物置でした。硬い床の上に布団が一枚だけしいてある中に俺は寝泊りしている。
あの糞メイド!!!
昨日、毒舌メイドに案内された場所は屋敷の外れにある小さな物置小屋だった。そこに、置いて行かれてメイドが戻ってくると布団を一枚だけくれたのだ。
今はスキルも魔力も封じられる首輪のせいで仕返しもできない。
いやはや、悲しい限りです。
奴隷だからって扱い酷くね?
本当頭に来ちゃうよ!!
まあ、いいや。さっさと出よ。
物置から外へと出る。物置は屋敷の外なので、今俺は庭に立っている。凝り固まった身体をほぐす様に全身伸びをする。
「う〜ん。朝日が眩しいぜ……」
首輪がなけりゃ最高なんだがな……
健康の為にラジオ体操をする。しばらくラジオ体操をしていたら、昨日の糞メイドが歩いてきた。
「あら、豚がストレッチしてますね?」
誰が豚じゃ!!
「朝食の用意が出来たので呼びに来ました。さっさとしないと残飯にしますよ」
「すぐ行きます!」
なんてメイドだ!!!
「何か?」
心の声が聞こえるのか!?
「そんなに目を見開いて驚いている所を見る限り何か失礼な事を考えていたんでしょう」
このメイド……
怖い……!
何も考えないでおこう。
俺はメイドに連れられて食堂へと向かう。食堂へと着くと男性と昨日出会った赤髪の女性が座っている。
「やあ。君がジェーンが買ってきた奴隷君かい?」
男が片手を上げて気軽に挨拶をしてくる。
「そうです」
「そうか。ジェーンからは聞いている。レベル520なんだって? 凄いな。何をしたらそんなに強くなるんだい?」
「自分より強いモノと戦っただけです」
「へぇ~まあ、朝食にしようか」
俺をテーブルへと案内する。テーブルには、豪華な朝食が並んである。しかし、よく見るともう一人の分も用意されていた。一体誰のだろうかと周りを見てみる。
メイドのか?
周りを見て見るが俺を連れてきたメイド以外にもメイドはいる。つまり、もう一人家族がいるようだ。でも、どこにも姿は見えない。まだ、寝ているのか?
「そういえば、自己紹介がまだだったね。僕の名前はセイジだ。よろしくね」
「えっ、ああ。俺はショウです。こちらこそよろしくお願いします」
俺がもう一人の朝食の分を気にしてたらセイジさんが話しかけて来た。すると、ジェーンさんがメイドに話しかける。
「あの子を呼んで来て」
「畏まりました。奥様」
メイドは頭を下げると食堂から出て行く。
あの子?
やはり、もう一人家族がいたんだな。
「ショウ。昨日、貴方に話があると言ったわね?」
「えっ、はい」
「これから、私達の娘を連れてくるからその時に全て話すわ」
「わかりました」
娘さんか……
ジェーンさんが美人だから相当な美少女だろうな!!
セイジさんもイケメンだし!!!
俺達が、しばらく待っていると食堂の扉が開かれる。そちらへ目を向けると車椅子に乗っている少女がいた。メイドが車椅子を押してくる。
ん?
まだ寝てんのか?
車椅子に乗っている少女はまだ、目を瞑ったままだった。
「おはようございます。お父様、お母様」
少女は目を瞑ったまま、二人に頭を下げて挨拶をする。
なんで、目を開けないんだ?
俺が疑問に思ってるとジェーンさんが俺に話しかけてくる。
「ショウ、娘のシエルよ」
「へっ、あっ、奴隷のショウです」
シエルに向かって挨拶をする。シエルは首をこちらに向けるが、やはり、目を開けない。
「えっと、ショウさんと言うのですか?」
「あっはい」
「私の名前はシエルと言います。えっと、奴隷なんですよね?」
「はい。そうですけど?」
「なんで、奴隷なんかに?」
「奴隷商に捕まってしまって」
俺はありのままを答えるとジェーンさんが驚いて俺に話しかけてくる。
「貴方、レベル520もあったのに捕まったの?」
「いやー、眠らされてしまって……」
「ぷっ……不様ですね」
「そんな理由だったの……」
「ハハッ。なんともマヌケだね。君は!」
毒舌メイドが馬鹿にしたように鼻で笑い、ジェーンさんは呆れてセイジさんは面白おかしく笑っている。
何が面白いのかさっぱりわからない。
「それで、俺に話ってなんすか?」
ジェーンさんに聞いてみる。ジェーンさんは急に真面目な顔つきに変わった。横で笑っていたセイジさんも真面目な顔になり、急に雰囲気が変わる。
なんで?
「話と言うのはだな………」
ゴクリと生唾を飲み込んでしまう。あまりにも雰囲気が変わり過ぎて逆に怖い。
「シエルと学園に通ってもらいたいんだ!」
セイジさんがあっけらかんと言う。俺はその言葉にずっこけそうになる。今時、そんなボケが通じるか!!
「学園ってなんでですか?」
「まあ、シエルはね………盲目なんだ。しかも、足の神経もダメらしく足が動かないんだ……」
「なっ!! それって!」
マジかよ…
だから、さっきから目を開けないのか。
「そこで今回奴隷を買おうと思ったんだ。まあ、まさか君みたいな奴隷がいるとは思ってもいなかったがね」
あらま、運が良かったのね、俺は。
「でも、それならメイドさん達に頼めば良かったんじゃないんすか?」
「そうしようとしたんだが、みんな卒業してしまってるんだよ」
なるほど、出来ないわけだ。
「でも、学園に通うだけなら俺は必要ないんじゃないんすか?」
「貴方はバカですか?」
なんだと、このメイドめ!
「いいですか? お嬢様は足も不自由な上に目も見えないんですよ。そんな状態でどうやって学園に通えと言うんですか?」
うぐっ……
言われてみればそうだ。足だけなら車椅子で通えるが目も見えないときたら無理だろう。
「理解しましたか? この豚!」
「はい……」
くっ……何も言い返せない。
「あの、ショウさんが嫌なら無理にとは言いませんが」
そんな時シエルがおずおずと言ってくる。シエルさん、そんな事を言っても奴隷の俺に拒否権は無いんだよね。
「お嬢様。この豚めは奴隷です。お嬢様の好きな様に扱って構わないんですよ」
「で、でも……」
「迷う必要はありません。家畜と思えば良いのです」
「それは言い過ぎなんじゃ……」
「そんなことはありません!」
「は、はいぃ……」
シエルさん、押しに弱いな……
「まあ、そう言うことだ。明日からシエルと学園に通ってもらうよ。手続きの方は終わらしてある。それと、首輪の制限は解除したからね。スキルと魔力が使えるようにしたけど、他の機能は残ってるから」
おっマジか!?
そのあとは朝食を食べて食堂を出た。
改訂済み




