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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第一章

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共闘? 戦線

「グガアアアアアアアアア!!」



 ウル・キマイラが咆哮を上げると、尻尾を振り回してくる。咄嗟に回避することが出来たが当たってたらと思うとゾッとする。



 危ねえ!


 また吹き飛ばされるところだった。


 てか、これ逃げた方が良くね??


 やばいよね!


 絶対!!


 だって!


 ステータス値75000だろ??


 勝てる訳がない……!



 桐谷の解析で分かっているステータス値を改めて思い出して心が折れそうになる。そんな時、追い打ちを掛けるようにウル・キマイラが空を飛んだ。



 えええええっ!!


 飛ぶのかあああああっ!?



「うおっ!!」



 飛び上がったウル・キマイラが空から体当たりをしてくる。体当たりを俺は寸前のところで避けることに成功する。



 なんとか避けれたけど、マジでキツイ。


 てか、ライオンみたいな身体に羽は生えてるし尻尾は蠍ってどういうことだよ!



「グオオオオオオオオオオ!!!」



 余計なこと考えてる場合じゃないか……



「みんな! ここは逃げた方が良い!!」


「そうだな! 大輝の言う通りだ」


「でも、大くん逃げられるの?」


「そうですよ! 大輝さん!敵の方が何倍も速いんですよ?」


「大丈夫だ! みんなで協力すれば逃げられる!!」



 相変わらず四人がコントを続けている。四人のコントを脇目に俺は懸命に戦う。



 ぜやあああああああああ!!!



 気合の篭った斬撃が決まる。ウル・キマイラの固い皮膚を切り裂いた。



「ガオアアアアアアアアア!!」



 よし!斬れた!!


 てか、てめえら俺が戦ってる最中に逃げる作戦かよ!



「山本が善戦してるようだが、いつまで持つかわからんな……」


「ああ、そうだな」


「じゃあ、どうするの??」


「彼も含めて俺達でなんとか奴の機動力を削る! 幸いなことにここのフロアは一本道みたいだから!」


「いつの間に調べてたんですか!?」



 もっともな突込みだよ!! 


 いい加減、手伝えよ!!



 心の中で桐谷の行動に悪態を吐きながら、ウル・キマイラと応戦しているとボキリと剣が折れた。一瞬何が起きたか理解が出来なかった。



 は?


 嘘だろっ!?


 剣が折れた!!


 ッッ!


 まずっ……



「グルアアアアアアアアアアアアア!!!」



 剣が折れたことで思考が停止し、動きも止まってしまった。戦いの最中に致命的な隙を見せた俺はウル・キマイラに前足で吹き飛ばされてしまう。



「ガッハッッ!!!」



 思い切り吹き飛んだ俺は物凄いスピードで壁に激突した。思わず身体がバラバラになるんじゃないかというくらいの衝撃に大量の息を吐いた。



 くそったれ……


 また派手に吹き飛ばされたな……


 痛ぇ……


 あー、やべ意識が……


 ダメだ。


 こりゃちょっとシャレになんねえや……



「だ、大丈夫!!??」



 意識が朦朧としている時、誰かが話しかけてきた。目だけで確認すると清水が俺の元に近寄っていた。



「だ……大……丈夫に……見え……るか?」


「今回復させるからね!! 天女の慈悲!!」



 清水が俺に手の平を向けてスキル名を唱えると、傷が治っていく。朦朧としていた意識もはっきりとして身体に力が満ちるのを感じる。



 おお!


 これが完全回復スキルか!



「ありがとう。助かったよ」


「よかったぁ! これでまた戦えるね!」



 鬼畜な発言に俺は仰天する。さっきまで必死に四人の分まで戦っていたのに褒める事も応援する事もなく、ただ戦えという清水に俺は言葉が出なかった。



 マジか…


 まあ戦力は多い方がいいからな。




「山本! 回復したなら貴様も手伝え!」



 んだよ!


 俺が一人でどれだけそいつを抑えてたと思ってんだよ!



 会長の物言いに少し怒りを覚えながらも参戦しようとしたらお嬢様にも怒鳴られる。



「早くしてください!」



 あー、桐谷大輝には優しいのになー


 なんで女ってこう勝手なんだんろうなー



 人のやる気を削ぐような態度に俺は全部投げ出して逃げ出したくなる。



「山本! 回復したばかりで悪いけど俺達と一緒に奴の機動力を削ってくれ!」


「……わかった」



 渋々であるが俺はスキルである《武具創造》を使い、剣を2本造った。



 よーし!


 結構魔力を注ぎ込んだからさっきの剣よりは頑丈だぜー!



「ガアアアアアアアアア!!!」



 いざ、これからという時にウル・キマイラが大きな口を開けると火を吐いてきた。



 火を吐いたあああああああ!!!



「みなさん私の後ろに!! 《拒絶の防壁》」



 お嬢様がスキルを使い、三人を守るが俺は含まれていない。薄情者のお嬢様に俺は失望しながらも諦めずに火を防ぐ方法を考える。



 くそったれ!!



「アイギスの盾!!」


 この盾は昔したゲームで出て来たんだが、神話にもある盾でありとあらゆる邪悪、厄災を払う魔除けの能力がある!



 ぐううううう!!


 防ぎ切ったか……



 なんとか防ぐ事が出来た俺は盾をしまい、四人のほうに顔を向ける。



「みなさん! お怪我はありませんか??」


「ああ! ありがとう! 留美!」


「ありがと留美ちゃん!」


「助かったぞ! 留美」


「よかったです!」



 もう、あいつらくたばらないかな……


 俺あいつらほっといて逃げよかな……



 四人だけの世界なので俺はもう放って置いてしまいたくなる。このまま、こっそり逃げてもバレないのではと本気で思う。



 しかし、ウル・キマイラが一人だけ見逃すなんてしないだろうと考えて一つ思い浮かぶ。俺が作ったチート武器を出して戦おうと。だが、そうすると、四人の存在が邪魔であるので声を掛ける事にした。



「でも、どうします?正直このままだとやられてしまいますよ」


「そ、それならひとつだけ方法があります」


『えっ!?』



 なんだよ!


 その反応は!


 俺が話かけちゃいけないのかよ!



「その方法って?」


「俺が囮になってその隙に四人が逃げることです」


「な! そんなこと出来ないよ! 君一人を見捨てる訳にはいかないよ!」


「そうだ! 大輝の言う通りだ! それに私は生徒会長だ!! 生徒一人を見捨てるなんて出来る訳がない!」



 その割には俺一人に任せてたよなあ!



 心の中で会長を責めながら話を続ける。




「でも、このままだと全滅してしまいますよ??」


「そ、それは!!」


「早く決めてください。もう私の魔力が持ちません。このままだと《拒絶の防壁》が消えてしまいす!」


「大くん!どうするの?」


「大丈夫っすよ! ここで俺一人が犠牲になるだけで四人は助かるんすから!!」


「だ、だけど…」



 早く決めろよ!


 この馬鹿!!



「ガアアアアアアアアア!!!!」



 くそっ!


 迷う必要なんてないだろ!!


 俺達はただのクラスメイトなだけなんだから!!


「大輝……山本が覚悟を決めているんだ。君も覚悟を決めるんだ」


「楓……」


「大くん……」


「もう、持ちません!!」



 さぁどうすんだ?


 桐谷大輝よ?



「くっ……わかった。山本君の言う通りにしよう!」


「了解っす」



 よし、これでこいつらがいなくなった後でアレを出せばいいな。



「神田さん! スキルを解いて」


「わかりました!」


「ゴアアアアアアアアアアアア!!!」



 《拒絶の防壁》がなくなったおかげで奴が突っ込んでくる。俺は剣を構える。


 さぁ! 


 来いよ!!


 こっからが本番だぜ!!


改訂しました


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