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記憶が無いんですが、起きたら婚約者とその浮気相手がぶっ倒れていました。どうしてこうなった

作者: 忍者の佐藤
掲載日:2026/08/24

 

 その日、王城では舞踏会が開かれていた。

 主催者はディートリヒ・ブランデンブルク第三王子。彼は音楽をこよなく愛し、個人で楽団を所有するほどだ。今日会場で曲を演奏しているの彼の楽団だった。



 その華やかな音色の揺らぐ会場の隅で、ロザリエ・ウェルズリー伯爵令嬢は所在なさげに立っていた。周りから好奇の視線に晒されている。


 彼女にはボリス・ポーフォートという婚約者がいる。今日の舞踏会も彼と共に参加した、はずだった。

 だがボリスは彼女の隣に居ない。

 彼はロザリエの視線の先で、仲睦まじげに一人の女性と話していた。ギゼラ・スペンサーという男爵令嬢だ。



 ***



 ボリスとギゼラは幼馴染という間柄である。

 ボリスは親の決定でロザリエと婚約したものの、心はずっとギゼラに向いていたらしい。


 ロザリエとボリス、そしてギゼラは成人する前、3人とも同じ王立学園に通っていたのだが、そこでボリスがギゼラと一緒に居る時間は、ロザリエと一緒に居る時間よりずっと長かった。



 ロザリエがどんなにコミュニケーションを取ろうと試みても、彼の態度は素っ気ないものだった。一緒に居る時も心あらずといった様子だった。


 代わりにギゼラと一緒に居る時は、ロザリエが見たことのない笑顔で、楽しそうに過ごしていた。


 これは政略結婚。多少の事でへこたれてはならないと自分に言い聞かせていたロザリエだが、王立学園で過ごした3年間はとても辛いものだった。




 二人の幼馴染同士の恋は、ある視点から見れば恋愛小説のようにドラマティックだ。そして割って入ろうとするロザリエは、さながら二人の恋を引き裂こうとする悪役令嬢と捉えられなくもない。


 ボリスたちの恋は一部の令嬢たちから応援されていた。そしてギゼラは彼女たちの期待に応えるように、悲劇のヒロインのように振る舞っていた。



 ***



 ため息をつくロザリエ。

 惨めだった。どうして、婚約者と参加したはずのこのパーティーの場で、こんな気持ちにならなければいけないのだろう。自分に何か非があったなら受け入れられるが、そうではない。



 もう怒りは無かった。

 このまま消えてなくなりたい。せめて、会場を出て帰りたいと思った。


 だがそれは出来ない。この後、ロザリエは主催者であるディートリヒ王子に挨拶をしなければならない。せっかく呼ばれたのに、お礼の一つも言わずに帰るのは礼を失した行為だ。

 ロザリエは緊張をほぐそうと、グラスに入った果実水を一気に飲んだ。

 ぐにゃん、と視界が動いた。足がふらふらする。おかしい、精神的に弱っているからめまいを引き起こしてしまったのだろうか……。



 この時、彼女はまだ知らなかった。自分がまさに今、悪辣な企みに巻き込まれていることを――。







 ◆




 ボリスは元からロザリエのことがあまり好きではなかった。成績が優秀で背も高く、体のラインがはっきりしていた。ギゼラと全く逆の女性だ。


 とはいえ両家が取り決めた婚約相手。自分が「ギゼラと結婚したいからロザリエとの婚約を解消したい!」なんて言っても通らない。分が悪いことは彼にも分かっていた。


 だからこそ、今日の舞踏会でボリスはある計画を立てていた。

 ロザリエに王子の前で失態を犯させるのだ。


「ほら、よりにもよって王太子主催の舞踏会で、ロザリエはこんな醜態を晒しました!」と言って、婚約破棄を彼女の有責で行うのである。

 この日のためにボリスは、会場で給仕する執事を買収したり、不測の事態に備えて強硬手段を取れるようにもしてある。勿論ギゼラも計画に加担していた。

 二人の愛を成就させるための計画なのだ。



 ボリスがこの計画を思いついたのは、義務的に行っていた二人の茶会の時だった。

「私、お酒が本当に駄目なのです」

 ロザリエの提供した話題にボリスは珍しく興味を持った。

「そんなに弱いのか」

「はい。ほんの少し舐めただけでも酔いが回ってしまって……」

「泥酔状態になると?」

「そうですね、呂律が回らなくなったり……その、とても人前で見せられる姿ではなくなるのです」

 少し恥ずかしそうにロザリエは言った。

「成績優秀なお前にも弱点はあるもんだねぇ」とその時は流していたのだが……。


 そう、計画と酒に酔わせてベロンベロンにさせることである。


 この舞踏会で出席者は必ずディートリヒ王子に挨拶しなければならなず、それはロザリエも例外ではない。

 だから彼女が挨拶する前、買収した執事を使って、飲み物をアルコールの入った物とすり替えるのだ。ほんの少し混ぜれば気付かれないだろうし、酒に激よわなロザリエはたちまち酔っぱらうだろう。


 酔っぱらった状態で王子に挨拶すれば、呂律は回っていないし、足元もふらふらなはずである。

 傍から見れば「「自己管理も出来ないだらしない令嬢」「酔っぱらったまま王子に挨拶する失礼な女」に見える。噂は急速に広まるだろう。


 証人はこの会場の全ての参加者。これだけの人間の前で醜態を晒せば、婚約破棄の理由に十分。

 そうして手に入れた慰謝料をギゼラとの結婚資金に当てれば良いと考えていた。



 まさに今、遠くでボリスたちが見ている中、ロザリエがすり替えられたグラスに、口を付けた。

 喉が渇いていたのか一気に飲み干している。


 ボリスたちはそれを確認してほくそ笑んだ。




 ちょうどその時、会場を回って参加者たちと会話を楽しんでいた第三王子ディートリヒが、ついにロザリエに話しかけた。

 ボリスたちはさり気なく近づいて様子を伺う。

「やぁ、ロザリエ嬢。今日は来てくれて嬉しいよ」


 ディートリヒはにこやかに挨拶をした。男のボリスから見ても眩しい笑顔だ。

 彼は妾腹の子であり、王位継承権争いとは無縁のためか、自由奔放に育った。音楽を愛し、文学を好み、母親譲りの甘い美貌から繰り出される笑顔は、この世の淀みなど一切知らないかのようだ。



 ロザリエはカーテシーをする。が、いつも完璧な彼女が左によれた。顔が赤らんでいるのは離れている場所からも分かるほどだ。

「で、ディートリヒ殿下……お目? オメめ、めめにかかれて光栄でございましゅ」

 ロザリエは回らない舌で言った。

 よし、酔っているぞ! ボリスは小さくガッツポーズをした。

 ロザリエは顔を左右にぶんぶん振ってから、仕切り直しとばかりに再び話し始める。

「こ、ここの舞踏会……ゆ、ゆ夢のよう……な、夢? 夜でしゅて……おま、おまままお招き頂きありがとうございましゅ」

 声はかすれ、喋る音程が上に下に外れまくっている。

 彼女が酩酊しているのは誰の目にも明らかだった。


「ロザリエ嬢、どうしたんだ?」

 ディートリヒの顔が険しくなった。ロザリエの肩に手をやる。

 顔が真っ赤になっていたはずのロザリエは青ざめ、凄い勢いで頭を下げた。

「ご、ごめんなしゃいいいい!」


 そのまま回れ右すると、おぼつかない足取りで右に左に蛇行しながら会場の外に走り出て行ってしまった。会場の参加者たちは呆気に取られた表情で彼女の遠ざかる背を見ている。


 作戦は成功した! 予定通りロザリエは王子に醜態を晒し、その姿を沢山の参加者たちに見られた。

 ボリスは顔がにやけるのを止められなかった。あまりにも思い通りにことが運んだ。


 呆然としているディートリヒの元に、ギゼラと一緒にすすすーっと寄って行く。

「これはこれはディートリヒ王太子殿下。先ほどはうちの婚約者が失礼致しました」


 ボリスはあくまで丁寧に頭を下げた。



「どうやら彼女は酒に酔ってしまっていたようです。全く、あれほど『殿下への挨拶はしっかりするんだぞ』と言い聞かせていたのにも関わらず、勝手に酒を飲んで……」

「そんなはずはない」

 断定的にディートリヒが言った。思いのほか強い口調に、ボリスは驚いて言葉を切る。

 ディートリヒの口は堅く引き結ばれ、眉間には深い溝が出来ている。先ほどまでの笑顔からは考えられない鋭利な表情だ。

「ロザリエ嬢とは以前何度か話したことがある。彼女はいつも酒を口にしないよう、細心の注意を払っていた。その彼女が、よりにもよってこの場で、自分の意志によって飲酒をするわけがない」

「そ、それは……!」

 ボリスの目は激しく泳いだ。まだ自分が飲ませたのだと看破されたわけでもないのに、王子の迫力に圧倒され、あっという間にがけっぷちに追いやられた気分だった。

 お気楽な王子だと思って舐めていたら、意外に鋭い。


「それにもし本当にロザリエ嬢が飲酒したならば、君はどうして彼女を止めなかった。婚約者だろう」

 いつの間にか会場中の注目が自分に集まっている。ボリスの全身から汗がダラダラ流れていた。


「そ、そ、そ、それは、その、ロザリエが私の目に届かないところで飲んでいまして……」

 ボリスは全く酔っていないのに呂律が怪しかった。


「何? どうしてだ。婚約者なのに何故今、別の女性と一緒に居る。それはロザリエ嬢を放っておいてやることなのか?」

「ひ、ひぃいいい」(訳:申し訳ございません。)


 ディートリヒの口調はどんどん強くなっていく。逆にボリスはどんどん縮こまってく。

 今すぐここから消えたかった。せめて会場から逃げたいと思った。

「何より、ロザリエがああなった時点で、いの一番に君は介抱に向かわねばならなかったのでは……」

「い、今すぐ介抱してきますうううううううううう!」


 ボリスは会場の外に向かって全力で突っ走った。





 ◆




 庭の隅でボリスとギゼラは息を整えていた。

 会場からは小さくなった、楽団のチェロの音が重苦しく、暗闇に響いている。


「くそったれ! あの女のせいで恥をかいた!」

 ボリスは庭に落ちていた石を蹴っ飛ばした。

 完全に自分のせいなのだが、彼の中ではロザリエのせいでこうなったのだと変換されていた。

 このままでは自分は笑いものになったままだ。婚約破棄出来たとしても自分の有責になる。

 それは何としても避けなければならない。

「こうなったら実力行使だ」


 ボリスが指を鳴らすと、暗い生垣の向こうから十人余りの男たちがぞろぞろと出てきた。


「お前ら、向こうを見ろ。あそこに居るのがロザリエだ」


 ボリスが指さす方には池がある。その前にロザリエが、こちらに背を向けてうずくまっていた。

 落ち込んでいるのか全く動かない。近くに人の気配は無い。今がチャンスだ。



「あいつに婚約破棄を受け入れさせろ。あくまで『自分が醜態を晒し、不甲斐なかったせいで婚約を破棄したい』と、言うことを約束させるんだ。同時に『このことを口外したら痛い目を見るぞ』と脅せ。そうすれば大抵言うことを聞くだろう」

「もし抵抗して来たら?」

 男の一人が聞いた。

「その時は、本当に少し痛い目を見てもらえ」


 ボリスのセリフに男たちは笑った。笑い声が、響いてくるクラリネットの音色と交じって、かなり不気味に響いていた。


「さあ行け! 早くしないと誰か来ちまうぞ」


 ボリスにけしかけられ、男たちはぞろぞろとロザリエに向かっていく。彼らの足音はまるでティンパニーの連打のようだった。


 ロザリエは振り返らなかった。自分に近づいてくる足音も聞こえないくらい酩酊しているのだろう。



 仕事は終わりだ、と思いボリスはロザリエから目を切った。


「さ、俺達はあっちで楽しもう」


 ギゼラの肩に手を掛け、その場を離れようとしたその時。



 バシーン!

 けたたましく打ち鳴らされたのは、楽団のシンバルだった。


 と、同時に大きな黒い物体が飛んできて、近くの生垣にサクーッと突っ込んだ。

「うわっ! な、何だ!?」

 よく見るとそれは人だ。生垣に頭から突入して、下半身がぐったり地面に垂れている。服装から見て先ほど脅しに行った男の一人で間違いない。


 ぎょっとして池の方を振り返る。男たちは半円状に広がり、誰かを包囲しているようだ。

 取り囲まれて中心に立っているのはロザリエだった。


 だが何か様子をおかしい。大男に取り囲まれていながら動じる様子が無いのだ。


 というか、手も頭もぶらりと前に垂らし、左右に不規則に揺れている。

「お、お前らどうした! 早く脅せ!」



 ボリスの声と同時に、一番左端に居た男が、ロザリエへ覆いかぶさるように迫った。


 ふわり、彼女の身体が左足を軸に回転する。艶やかなヒールが、暗闇の中にギラリと光を曳き、男の顎を捉えた。

 スパァン! 乾いた音。男は突進してくる牛にぶち当たったかのような勢いで池に吹っ飛んだ。


「う、後ろ回し蹴り、だと……!?」


 見舞い違いかと思った。いや、未だに見間違いだと半分くらいは思っていた。確かにロザリエは背が高い。だが女性にしてはであり、あんな大男を遠くまで蹴り飛ばすなんて男でも不可能に近い。


 硬直している残りの男たち。

 ロザリエはその一人の男の方へツカツカ間合いを詰めていくと、いきなり掌底しょうていを、バコーンと腹のあたりにぶち込んだ。


「アイヤー!」

 男は甲高い悲鳴を上げながら、地面と平行にどこまでも吹っ飛んでいく。しばらくしてゴーォンという荘厳な鐘の響きが起こった。

 どうやら教会の方まで滑空していたらしい。


「み、見間違いではない。何だこのパワー! 戦闘能力! 何者なんだこの女は!?」


 ロザリエはまるでカマキリのように両手を曲げて構えつつ、重心を低く保って左右に揺れている。ボリスには自分たちを挑発するような動きにも見えた。


「あ、あれは……酔拳!?」

 ※酔拳……千鳥足や不規則な動きで相手を翻弄する武術




「ボス、どうするんですか!?」


 男の一人が指示を求めてボリスを見た。あの揺れから見ても、相手は確実に酔っている。幾らパワーが凄くても、注意力が散漫になっていれば必ず隙が生まれるだろう。


「しょうがない! もうその女をぶちのめして運ぶんだ!」


 バレるくらいなら、さっさと意識を飛ばして持ち帰り、脅していた証拠を隠滅するべきだと思ったのだ。



 楽団の演奏はビルドアップ(緊張感が高まる場面)に差し掛かっている。

 弦楽器たちが鋭く、16分音符の和音を激しく刻み、クライマックスに達しようとしている。


「やっちまえ!」

「ほああああああああああ!!」


 ボリスの掛け声とロザリエの咆哮はほぼ同時に響いた。


 5人の男たちがまとめて向かってきた。各々が棒を振り回したり、両手を広げて掴みかかろうとしたり、全員が攻撃態勢に入っている。


 しかし男たちの攻撃が一つも当たらない。


 低い体勢のまま、まるで風のように体の軸を変えつつ、攻撃をかいくぐっているのだ。

 その時、ロザリエはぬるりと一人の懐に入り込み、男の腰に両手を回した。

「ふんぬぁあああ!!!!」


 気合いと同時に、男の身体を持ち上げ、ブリッジするように頭から地面に突き落とした。

 ズドン、と鉄球が落ちて来たのかと思うほどの轟音、そして地面が揺れるほどの衝撃が辺りに走る。


「あ、あれはバックドロップ!? あの子、酔拳の使い手じゃなかったのか?!」

「おいおい、あの体格差、体重差で、あんな大技を決めるとは……これはもう、おいおいだぜ」

 恐らく舞踏会の参加者でもない男二人が、離れたところで彼女の戦いを吟味していた。


 ドロップされた男は頭から地面に突き刺さり、メッセージ性の強い生け花のようになっている。


「くっ、ぜ、全員で行けえっ!」


 ボリスはやけくそになって叫んだ。

 残った男たちも決死の覚悟でロザリエに向かって行く。彼女を取り囲むように、その包囲網を縮め、一気に飛び掛かった。

 同時に、会場の方からピアノのグリッサンドが華やかに響き渡る。



 ロザリエ、まるで謝罪のように地面に両手をつく。


 と、次の瞬間、旋風が起こった。

 軸となった頭を中心に、美しく長い脚が車輪の如く回りながら、男たちを次々に薙ぎ倒していく。


「あ、あれはカポエイラ!?」

「おいおい! あの少女、カポエイラも使えるというのか! おいおいおいおい!」


 短い悲鳴が次々に響いた後、男たちはあっという間には池で浮かぶか、地面に植えられるか、空の旅に出かけるかの三択で、全員倒されてしまった。



「あ、ああ……!」

 ボリスとギゼラは少しづつ後退する。


 その時ロザリエの目がぎょろりとボリスたちを捉えた。獲物を狙う肉食獣のような視線だ。

「ひっ!」


 その時二人は悟った。自分たちは狩る側ではなく、最初から、狩られる側だったのだと。


「く、来るな! 来るなぁああああああああ!!!」


 ボリス、ギゼラは我先にと逃げだして行く。

 そこに向かってロザリエは叫んだ。


「酔拳ビーム!!!!!!!」


 その瞬間、ロザリエの目から虹色の光線が出て、ボリスたちに直撃した。



「んばばばばばばばばっ!!」


 二人は電撃を受けたように痙攣した後、その場に倒れ伏せた。

 ボリスはうつぶせに倒れたまま、一度顔を上げ

「す、酔拳ビームって、何……?」

 と言って、ガクリと力尽きた。


 管楽器が高らかにファンファーレを奏でている。

 次の曲が始まったらしい。




 ◆




 ロザリエには戦士の血が混じっていた。ただの戦士ではない。世界最強の戦士一族の血を、ロザリエは色濃く受け継いでいた。

 普段は隠して生活しているのだが、酒を飲むとリミッターが外れてしまう。

 それが分かってから、彼女は絶対酒を飲まないようにしていた。

 ボリスはまさに墓穴を掘ったのだ。


 そのボリスだが、あれだけ派手に戦闘が起これば誰も気付かないわけはない。結局彼とギゼラの悪だくみは白日の下に晒されることになった。





 酒に弱い令嬢に酒を飲ませて恥をかかせようとしたのみならず、襲おうとしたのだから、罪はかなり重い。

 ボリスは爵位の継承権を失うのみならず、投獄されることになった。

 ギゼラも同様だった。彼女はボリスよりは早めに出所出来るかも知れないが、そのまま修道院直行が決まっているという。




 そしてロザリエ。

 勿論のことながらボリスとの婚約は解消された。これで良かったと思う反面「あんな姿をさらしてしまって、もう嫁ぎ先など見つかるはずが無い」と落ち込んでいた。


 しかし彼女の元に縁談の話が届いたのは、婚約が解消されて1か月も経たない時だ。相手は何と、第三王子のディートリヒだった。


 ディートリヒはあの日、呂律が回らず、頭も回っていないであろう中で、必死に挨拶をしようとするロザリエに好印象を持った。


 それだけではない。実は彼は、音楽や文学のみならず、武道も嗜んでいる。

 あの時ディートリヒは泥酔したロザリエが気にかかり、ボリスより少し遅れて外に出た。

 その時、ロザリエが男たちを相手に大立ち回りを演じている場面をちょうど目撃したのだ。

 強く、しなやかな彼女の姿は美しく、心を射抜かれたのだという。




 弱弱しい女性が好きな男も居れば、その逆も居るということらしい。

 ロザリエ本人は恥ずかしいと思っていたその一面を、受け入れてくれる男性が居たことが、とても嬉しかった。


 そして今日、あの騒動後初めてディートリヒと顔を会わせることになっている。

 この前は酔ってまともに話せなかったけれど、今日はばっちり目も頭も冴えわたっている。

 彼との会話をしっかり楽しんで来ようと思う。今度こそ、素面で。



 ロザリエはディートリヒの待つ貴賓室を前にして、小さく気合をいれるのだった。




 おわり

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― 新着の感想 ―
酔拳ビームって何だろう? はともかくとして(笑) ディートリヒは王太子なのか王位から遠い妾腹の王子なのかどっちなのでしょうか?(作中に両方の記載があったので気になって)
酔拳ビームってなんだよ! 面白かったです。実写で見たい。
酔っ払って挨拶後に走り去った辺りで、ロザリアが酔拳の使い手だったらボリスを即ボコボコに出来たのに…!って思いながら読み進めたら酔拳の使い手だったwww しかも酔拳だけじゃなかったし最後はビームって!w…
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