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それでも君は救われたことに気づかなかった

作者: 小雨川蛙

 屋上で一人ぼっち。


 浮かんだ空が虚しかった。

 落ちていった君が滑稽だった。


 君は僕の前で何事か喚いていた。

 それが言葉であったと認識するのは難しかった。


 いや、事実として僕には君の苦しみがわからない。


 ただ、なんとなしに。

 泣き叫んでいるのだから苦しいのだろうな、と感じた。


 ただ、なんとなしに。

 いつも一人は寂しかったろうな、と思った。


 音がした。

 僕は下を覗いた。


 遥か眼下に広がる君だったもの。

 実に無惨だ。

 ここからでもわかるほど。


 直に悲鳴が聞こえるだろう。

 救急車も無意味に来るだろう。


 全てが無意味だ。

 何せ、君が苦しんでいる時に誰も気づかなかったのだから。


『こんな世界になんかいたくない』


 少し前に聞こえた音を思い出す。

 発したのは君だろうか?

 あるいは僕の脳が適当に言葉を選んだのだろうか。


 もし。

 もしも、君が口にしていたのだとしたら。


 階下の君を見つめてぽつりという。


「救われてよかったね」


 君は気づかなかったかもしれない。

 だけど、君はようやく苦しみから解放されたんだと僕には思えてならなかった。

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