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運命のミオ  作者: 鎌月
61/64

ルーシャス2

アイリス、ルーシャスがお互い体を寄せ合い眠りに落ちる。そして寝ぼける龍が尊の膝に座りながら目を擦る。

「あの裸体の王様は…」

「手前が気にいることしたからだろ」

尊がうんざりとし、龍が欠伸をする。

「言っておきますけど俺は普通に」

「その普通が奴にとっては新鮮だったんだろう?あと、お前ら本当に偶然に来たのか?」

「はい」

「ああ。そうしたらいたんだ。しかし、ランカスター」

「なんだ?」

「彼女は依頼主か?」

ランカスターが鼻を鳴らす。

「そうだよ」

「…」

シンがはっと笑う。

「尻に敷かれてるな」

ランカスターが苛立ち、尊が話す。

「はい。そこまで。龍は名前は?」

『まだ考え中』

龍がアイリスを指差すと尊が頷く。

「分かった」

『うん。ところで、そっちはルーシャスとかなんか言われてる?』

「探している。ダリス殿がな」

「枢機卿を辞任すると聞いたが?」

ランカスターが尋ね、尊が頷く。

「はい。後任はまた。辞任理由としては責任取りです」

「ああ。だが世間体ではルーズヴェル国の問題を受け手の責任取りで本心は違うんだろう?」

「その通りです。まあ、今後についてはダリス殿が決めていきます。あと、ルーシャスについては王宮内外で心配される声をよく聞きます。やって来たことについては些細な事ですから」

『学園でのことが些細なの?』

「退学は免れない事だが、殺しはしていない。暴行はしていない。薬に関してと生徒の操りに関してくらいだが、その操られた生徒達もあの場にいたからこそ全員助かった」

『あー、王の見境ない攻撃ね』

「学園都市の学校内も相当な広さだからな」

「ええ。まあ、何はともあれ助かったのは事実ですから。ちなみにそれが美化してますからね」

「助けた王子様ってやつか」

「その通りです」

『まあ薬についても本人が摂取しても中毒性のない惚れ薬だったからなあ』

「話を聞いたのか?」

龍が頭を振る。

『寝てる時に記憶を見た』

尊がやれやれとし頷く。

「分かった。まあだが、違法薬物に違いないし問題も起こしたから退学ではある。だが、だとしても、擁護する声と、行方を探す人たちの声が多いな。国民からの支持と厚かった王子のようだったしな」

『農地開拓。水資源の確保。新たな道路の計画とかしてたからねえ。ルーシャスの頭の中はとにかく人のため世のための考えばかりだよ。今は病んでるからそれどころじゃないけどね』

「裸体の王様もだが、ミオと、家族の問題だな。話じゃ父親からの扱いも酷かったようだしな。婚約者からしてそうだ」

『だねー。ミオに婚約を請求したのは今までの婚約者と比べて魅了されたのもあるね。そして、学園生活での圧迫。国からの圧迫で心が病み切って最終的にミオに執着する事で安堵感を得ていたけど、ダリスが来ちゃったもんだから悲壮感。嫉妬とか。病んだ心に追い討ちかかって問題起こしたんだよね。自分の心臓刺すくらい苦しかったわけだ』

「悪魔の儀式ですか」

『そう。まあでもその悪魔も正式な悪魔じゃないから浄化はされないよ』

「正式な悪魔じゃない?」

「人が悪魔にされたやつだよ。教会の本に書かれていた」

「人が魔人にされたように悪魔にもなっているんです。救う手立ては解き放つ事だけ」

「呪縛からと言うことか。ときはなった後は?」

「分かりません」

シンが頷き、龍が話す。

『今までにないことだからね。まあ、兎にも角にもかな。尊達の頑張りもあってルーシャスの心臓も問題なく動くからね。生きることができたわけだ。まあでもまだ無理は禁物だけど。でしょ?』

「ああ。完全に心臓の傷は塞がってはいない。負担をかけないよう体の配慮も必要だ」

『うん』

「裸体の王様が負担かけさせてたんだろ?」

『まあね』

「はあ。ええ」

「ああ」

「ロナウド…」

尊がアイリスを振り向くとアイリスが僅かに顔を歪める。

「ロナウド…」

龍がアイリスの頭に触れ撫でながら尊を見る。

『溺愛してた弟。ギャングに殺されたんだよ』

「ギャング?」

「あちらの世界の凶悪な不届者達の事です」

『そう。その後家族もだよ。アイリスの暮らしていたところは危険な街だったみたい』

「ああ」

龍が落ち着いたアイリスから離れる。

『母親がそいつらに攫われて安否不明。後の家族はみんなアイリスを残して死んだんだって』

「そうか」

「その後すぐに売り飛ばされて変態王のところらしい」

「その変態王は?」

『まだ生きてるよ。拷問されてるけど』

「お前を痛めつけたからか?」

『そう。そしてあからさまな盟約違反でだよ。他の連中は?』

「拘束中。ただ、ルーズヴェルトも終わりになる。アストレイに吸収されるか、上や国を改めて初めからやり直すからになる」

『どっちも大変そう』

「ああ。ただ、初めからやり直す方がまだいい。ただし、主君次第だ」

『そうだね』

「ああ。ところで気になることが一つ」

『なに?』

「魔獣が来ないのはなぜ?」

尊が尋ねアイリスを示す。

「彼女か?」

『あたり。ルーズヴェルトにいた時は私の力の方が圧倒的に強かったからやって来てたけどね』

「そうか」

『うん。で、アイリスは地下の暗いところにもいたから力が弱まってたのもあるよ。今は元通りになったから強くなってる』

「分かった。なら、ランカスターさん達はこれからどこに行かれます?」

「雇い主の指示のままだ」

『そう。オーブ探しもしててさ。私が感知できるから感知した国に向かう。次はここから北にあるラダウィンだ』

「ラダウィンか。目立つかもな」

『海の魔獣たちでしょ?』

「ああ」

『まあでもいくよ。本来の目的のオーブさえ手に入ったらすぐおさらばする予定』

ひゅっと音がなると立て続けに風切り音がなる。そしてランカスターが張った結界に矢が弾かれ落ちる。

『うええ』

龍が嫌そうにし武器を手にした男達が姿を見せ近づく。その中に折れた腕を吊り下げた斧を持つ男がいた。

「こりねえやつ」

『やだなーもう』

尊がやれやれとする。

「何かようか?」

「異界人。てめえも仲間か」

「知人だ。あと、誰を追って来たんだ?」

「元王子だ。どこにいやがるどこに隠した!!」

ランカスターがやれやれとし尊がギルドの認証を見るとうんざりとため息をする。

「山賊かと思えばギルドか……」

「ああ?だったらどうしたっ」

「よーし分かった」

尊が両手を上げる。

「手を出すなよ」

「なに?」

「さっきの矢嵐は見逃す。これ以上は1人も出すな」

「出すって分かってるから言ってるだろ?」

ランカスターが面倒臭そうに告げると斧を持つ男がその斧を振り翳す。

「ふざけんじゃねえ!!」

男が尊へとむけ斧を投げると斧が向かうが突然凍りつく。

「は?」

「なんだ…」

「さ、さみいい」

周囲に凍てついた風が流れると尊がポケットから認証を見せる。

「は?」

「お前らこのまま連行」

氷の獅子が四体現れると龍がおおと目を輝かせる。

『流石エスランカー』

「ちなみにティーチより最速取得って話だ」

「いや嘘でしょ?」

「こ、氷の貴公子かっっ」

「なあっ」

「魔術師が良かったんだがな。連れてけ」

獅子達が一斉に動く。そして動きながら別れていくと一体が1人、また一体が1人と噛みつきそのまま奥へと走り去る。

「どこまで連れてくんだ?」

「近いところでロクザウェルです。あそこのギルド長は厳しですからちょうどいいです」

斧を投げた男もまた加えられる。

「無抵抗のものに対して斧を投げた。報告するからな」

「ま、まああっっ」

男が叫びながら奥へと消えると辺り一面しんと静まり返る。

『いやあ、すっきりすっきり』

龍がホクホクとし尊がやれやれと座る。

「最速取得はあいつでしょ?」

「あいつは最年少って話だ」

『いやあ。だとしても凄いよ。流石王様が目をつけたのはあるよなあ』

「やめてくれ。あと、あの裸体の王様はどこぞかしことビュンビュン飛んでわたかってくるからな」

『子虫みたいな言い方だなあ』

龍が呆れ、尊が話す。

「当たっているだろうが。いいか。来るなら前持って俺をしっかり通してから伝えろ」

『いや、まあいいけど…』

「はあ。ランカスター殿。しばらく付き添います」

「え?」

「好きにしろ」

シンが驚き、尊が話す。

「なら、パーティ組みませんか?」

「ギルドか?」

「ええ。俺も今みたいな問題やろうの整理をするよう長達から言われてるんです。今みたいなカスでも俺が捕まえればまあ金にはなるんですよね」

「金作りと、後は?」

「シンさんも特別またギルド加入出来るようになったので名誉返上のため。後は」

「別いいぜ」

『あれ?』

ランカスターがやれやれとする。

「だが条件が一つ」

「逃亡中の復讐相手達ですね」

「そうだ」

「ええ。そちらは俺が話しておきますし、俺の責任としてどんな状況であっても相手をされて結構です」

「よし。ならいい。で、」

ランカスターがルーシャスを指差す。

「やつは?一応手配されてるだろ?」

「はい。今の容姿を見る限りわかるのはごく僅かしか分かりませんし、彼を擁護するものは彼を必ず隠し通します。なので、名前だけ変えます。その了承を得た上でギルドに登録してもらいメンバーになってもらいます」

「分かった」

「確かに随分と変わったからな」

「ええ」

「さっきの奴らも全く気づかなかったからな。斧のやつなんざ肩まで髪があった頃のこいつが腕折ったんだ。だってのに最後まで気づきやしなかった」

「そうなんですね。確かに分かりにくいと言うか、はっきり顔立ちがわかるようになって逆に誰だと言う感じですしね」

「ああ」

「なら、問題ないです。明日2人が起きたら話しますね」

尊が立ち上がると荷物を持つ。

「ギルドか?」

「ええ。あいつらの始末もしなきゃならないのと極秘処理して来ます。口裏合わせです」

「分かった。ちなみにこいつらはいつ起きる?」

「その時次第です。見張りをお願いします」

ランカスターがため息をし早く戻れよと告げると尊が頷きその場をシンとともに後にした。


ー話し声…。

ルーシャスが体を捻りその目を覚ますと辺りを見渡し天井を見るが尊の顔が見えるとそちらをじっと見つめる。

「まずはこれを飲め」

尊が水差しを向けるとルーシャスが口に含み水を飲むも僅かに顔を顰める。

「苦いのは我慢しろ。薬だ」

ルーシャスが飲み込み尊が水差しを離す。

「こ、こは…」

「ギルド専用の宿だ。あれから熱を出して3日寝続けた。点滴を打って栄養補給とかをした」

「…」

「俺がいいと言うまでここで療養だ。重湯を持ってくる」

「お、も」

「穀物の粥だ。胃が弱っているからまだ固形物はダメだ」

尊が離れるとルーシャスがぼうと見る。

ー3日も…。本当に…。

『ルー。おはよー』

龍がその場に来るとアイリスもまた来てベッドに腰掛けルーシャスを覗きその額に触れる。

「もう熱もないわね。良かったわ。急に高熱出して大変だったのよ」

『そうそう。嘔吐もしたからね。アイリスが被害にあって』

龍がアイリスに頭を叩かれる。

「余計なことは言わなくていい」

「す、まな、い」

「いいわよ。あー。のどがらがらね」

「熱の影響だ」

尊が中へと入りルーシャスを起き上がらせる。アイリスがルーシャスを支え尊がゆっくりかめと匙で重湯をすくいルーシャス中へと流し入れるとルーシャスが咀嚼し飲み込み再び咀嚼し飲み込んだ。そして再び深い眠りにつく。

「点滴とかここで習ったの?」

「独学で」

尊がルーシャスの腕の血管に針を刺し点滴を行う。

「ちなみに袋は使い捨て用の植物性だ。ゴムみたいな植物で作っている」

「へえ」

「終わったら教えてくれ」

「分かったわ」

尊が去っていきアイリスが手を振り見届けるとルーシャスを振り向く。

『アイリスはルーシャスの事すごく心配してるね』

「そうね。前も言ったけど死んだ弟のようだから。だから心配なの」

アイリスがルーシャスの頭を撫でる。

「早く元気になりなさいよ」

『元気になってね』

アイリスがふっと笑みルーシャスの頭をゆっくりとまた撫でた後その手を離した。


ーわ、私と、結婚して欲しいです!

ダンガンが両腕を組み難しく考えていた。その場にラダン、アルスラン、ミーアとおりミーアが話す。

「良かったじゃない。独身男さん」

「あのな…。歳を考えろ」

「別によくある話でしょ?20歳差」

「いや、ううんんん」

「よく考えて答えを出せ。だがあまり待たせるな」

ダンガンが複雑そうに頷き返事を返す。

「閣下失礼致します。タイシ殿の御友人の尊殿が参りました」

「通せ」

兵士がはいと返事を返しその場を一旦去ると尊がその場に来る。

「失礼します」

「ああ。ルーの様子は?」

「はい。熱は下がって食事も食べましたので後は体力が戻れば問題ないです」

「分かった」

「尊。元父親がルーに会いたいと話しているのよ。念のため聞いておいて」

「分かりました」

「尊。透華に」

「俺は無関係です」

「…そう言ってくれるな…」

ダンガンが難しい顔をしアルスランがやれやれとする。

「透華に会えるなら返事は先だと伝えてくれ」

「分かりました」

「ああ。あと、ルーについて。ダリスにも伝えている。頼むとの事だ」

「はい」

「ああ」

「アルスラン将軍。ダリス殿は今後どうなさるのですか?」

「今は後処理を行う。その後については協議を行い、この国を任せるか否かを決めてもらう」

空気が僅かに変わるとアルスランが尊をまっすぐに見つめる。

「まだ極秘になる」

「はい」

「ああ」

「尊。アルスラン閣下の御息女のお具合はっ」

「あんたが聞くか」

尋ねたラダンの背中をミーアが叩き、ダンガンがやれやれとする。

「もう問題ないです。大樹の樹液による副作用の吸血行為も無くなりましたから。ただ以前よりも力が強まりましたので制御する事に苦労しています。タイシとアンナと保護責任者のエリス殿がその役を務めてます」

「…ああ」

「継いでほしくはなかったな」

ラダンがアルスランを振り向き、尊が話す。

「継いだものについては仕方が有りませんし、当人がしっかりとその力を使えるように今努力しているところです。そして、その力の使い道を決めるのはミオです」

アルスランが無言で頷き尊が小さく頷き答えるとこれで失礼しますと告げその場を離れ去った。


ーまだ。

ミオの目の前の棒が捻り捻られる。だがカッと光りばんと大きく破裂する。

「ふぐうぅ」

ミオが声を出し棒のはしきれが顔に当たるとその場に倒れ顔を抑えうーと唸り声を出す。それをタイシとアンナ、エリスが見ておりエリスが心配そうに見つめ、タイシが話す。

「まだ最後のところがなってない。一旦休憩して再開だ」

「は、はい」

エリスが向かい額から血を流すミオの治療を施す。

「初めよりマシにはなりましたね」

「ああ。だけど、まだまだだな。と、うさんのほうが」

「タイシさんまだ言い淀んでます」

「はいあなた様もまだまだですわ」

タイシが俯き、アンナがどっちもどっちですねと答えた。


ー寝た。

「…2日も寝てたのか」

「おかげで喉も良くなってるわよ」

『意識もはっきりしてるしね』

アイリス、龍がルーシャスへと告げるとルーシャスが複雑そうにするがおかゆを向けられると口に含みゆっくりと咀嚼し食べる。

「ま、寝て疲れをとるのもいいから」

『そうそう。あとは、体を動かして行かないとね』

「…ああ」

「そうね」

アイリスがルーシャスへとおかゆを食べさせ終える。そこに尊がシンとランカスターと共に来る。

「集まったから話をしよう」

「話?」

ルーシャスが驚き尊が話す。

「ああ。先ずはルーシャス。これからルーカスと名乗るようにしろ」

「え?」

「何故かについては今から説明する」

ルーシャスが頷く。

「まず、ルーシャス。ダリスさんが探していたが俺といるとの事で捜索による手配は取り下げられた」

「…」

「次。捕縛に関しての手配はそのままだ。俺の権限で出来るがあえてそのままにしておく。理由として手配している者は訳あり人物だからな。なので残す」

ルーシャスが頷いていき尊が話す。

「そして、今のお前の容姿だとよく見ないと中々本人とはわからない」

「そう、ですか?」

『街中でも試したじゃん』

「試したが…」

「なら、自覚あると言う事で進めていく」

尊が淡々と告げ、ルーシャスが複雑そうにする。

「まずギルドに加入してもらいたい」

「な、なぜですか?」

「よく聞くだろう?勇者パーティと。俺としては30年前活躍したアルスランさんたちを超えるか並ぶほどのパーティにしたいと計画している。何故か。名声、金、後は秩序、国家建設」

ルーシャスが驚愕しランカスターがやれやれとする。

「巨大な夢持ちだからな」

「夢は大きくもってこそです。特に実力あるなら手を余らせるよりいいでしょう」

「なんでそんな…」

「俺が今まで旅した中でこの世界は不安定且つ、出来ていない。そして改善点が多くあるし、豊富な資源を無駄にしている。それはルーシャス。お前も分かってるはずだ。国のために働いてきたからな」

「…け、れど」

「ちなみにお前に逃げ道はない。このままだと裸体の王様行きか訳ありのところに行くかもしくは将軍のところで謹慎だ」

「…」

「無茶苦茶ね。ルー。ルーはやり直す気はない?」

「…」

「そうだ。人生のやり直し。後は自分なりの償いと今度は違う視点で見てみたらどうだ?世界を」

ルーシャスが鼓動を打ち拳を握りややくらい面持ちをする。

「命じられるがままいられるよりこもるより見て回ったらどうだ。村から村。街から街。そして国だ」

「回って、その先は…」

「まず俺が建てる目標どうりになるかはわからない。俺の理想だからな。ルーシャスの理想は?」

「…」

ルーシャスが俯く。

「償いたい…。そして自由ができるなら。今は…世界を見たい。けれど、ついてきてくれた者達の事が」

『アルスマグナの方は平気。問題なし。ただでさえ人手不足だから料理人とか世話人とかいて問題ないよ』

「確かにな。ルクレイシアの世話もしていたしあれが離さないだろ。あとステファンは?」

「知人の所に匿ってもらっていますし、治療も受けてもらっています。足が特にひどく、治るかが」

「分かった。まあ、俺がみれたらみていい。とにかく、周りに問題なさそうなら問題ない。そうしたら、明日からルーカス。あと、ギルドのパーティ名はケルサス。ここでは海の海底国の古代語として使われ、向こうでもまた古代語ラテン語として使われた同じ意味の言葉だ。つまり、繋がりを持った名前を変えた同じ言葉になる。そしてケルサスの意味は。至上。最高。最も高いと言う意味だ」

ルーシャスが頷き、ランカスターがやれやれとしシンが頷きアイリスが楽しく笑む。

「ええ。後ルー。私も昨日ギルドに登録してきたのよ。後はルーだけよ」

「そうだ。ちなみに、正体を知っているの俺が信頼しているギルド長三名だ。今後何かあれば俺の責任を取る形で行動してもらう。あと、そんな状況でもあるが好きにしていい。ただ、ルーは人は殺すなよ」

「はい」

「ああ。なら、まずは明日からルーカス。そして体が動けるようになったらギルドに行きパーティを作る。いいな?」

ルーシャスがはいと返事を返し尊が頷き答えた。


ーランスロット。

瑠奈が膝枕したランスロットの頭を撫でる。

「楽しそうね。何かあった?」

ランスロットが微笑みながらふふっと笑うと瑠奈の頭を撫でる手を握り触る。

「少しな」

ランスロットが手を離し起き上がり立ち上がる。

「出かけて来る」

「ええ」

ランスロットが瑠奈から離れ瑠奈が手を振り見送った。


ルクレイシアが体を起こし軽く欠伸をする。その隣にカテリーナが気持ちよく眠っておりルクレイシアがカテリーナを起こさぬよう起き上がり部屋を出て外へと出る。

ー冷たい風。

ーひひひ。

ルクレイシアが横を向き氷付のピエロを見上げる。

ーおはようルクレイシアちゃん。

「……はあ。いつまでこいつはこのままなわけ」

ルクレイシアが背を向けそのまま去るとピエロがひひひと不気味に笑った。


後日ー。

ルーカスがギルドのタグを腰に下げると受付嬢の視線を釘付けにする尊が話す。

「なら、パーティ登録を頼む」

「はい」

受付嬢が先に書いていた書類を尊から受け取ると嬉々としながら用意する。それをアイリスが見て話す。

「尊。向こうの世界でもモテてた?」

「いや。モテないように地味な格好していたし、坊ちゃん学校だったから。迎えは車で塾やら習い事で忙しい毎日だったからわからない」

「そうなの。さすが一流コックに女優の家ね」

「ああ」

「タケル。手続き完了しました」

「ああ。ありがとう」

受付嬢が頬を赤く染めながらいいえと照れながら答え他の受付嬢が恨めしく見ていく。

「今更だが良く俺もできたな」

「ああええ」

「前の容姿と変わっていれば性格が真逆だからな。お前もある意味変わったから」

「お前もいちいちうるさい」

「事実を述べたまでだ」

ランカスターがシンへと苛立ち告げる。

「なら、俺がいるからCの上を受けることが可能だ」

「その上は?」

「パーティによる任務完了数で上がっていく」

尊が広告板へと進むとシンが依頼の広告を見る。

「魔獣退治ばかりね」

「ああ。その中のこれだ」

尊が依頼の紙を取り掲げて見せる。

「荷物?」

「ああ。行商人の護衛任務になる。隣町まで半日の距離を護衛する」

「ええ」

「なら俺は」

「いて下さいよ」

ランカスターが面倒臭そうにし尊が紙をルーカスに見せ説明しルーカスが頷いていく。


ランカスターが幌馬車の屋根に寝そべり欠伸をする。そして尊達が馬車のそばを歩きながら商人達と共に街へと向かっておりその商人の長が話す。

「魔獣が全く出ないから良かったです。ええ」

「威嚇魔法や魔獣よけをかけてますから」

「ええ。本当助かります」

長がにこにこしていく。ルーカスが話を聞いていたがアイリスが近寄るとアイリスを見る。

「疲れない?」

「いや」

「すみません。2人乗せられます?」

「ああ。どうぞ」

尊が頷き馬車へと乗るように促すとルーカスが戸惑いつつも頭を下げアイリスがごめんなさいねと手を挙げゆっくりと動く馬車に乗り込み座る。アイリスがはあと息を吐き出し、ルーカスが浮かんだ汗を手で拭く。

「まだお互い様ね」

「ああ」

アイリスがええと返事を返しリュックからタオルを出しルーカスへとむけルーカスが受け取り汗を拭いた。


ー後は何かしら。

フードを被った少女がカゴを持ちメモを見ていく。その少女を商人達が見てコソコソと話をすると少女が足早に離れ広場へと向かった。


「またチビ達が増えたな」

尊が広場で物乞いする子供達へと金を渡すと子供の1人が尊へと話す。

「増えた?」

「ああ。親とか苦労してるんだろ?」

「えと、うん」

「税がたくさんってパパ言ってた」

「ああ。となると、また重税を貸したな。魔獣が押し寄せてくるからその対策のためと言ってか」

「え?」

「以前なんかしたのか?」

ランカスターがパンを向けると子供達が受け取る。

「ええ。2年前に坊ちゃんが俺に勝負挑んだんで受けて勝ったんですよ。そうしたら兵士さんたちが押し寄せてくるくる」

「ふーん」

ルーカスが離れながら警戒する兵達をじっと見ていく。

「まあ全員氷付にしてギルドから王様達に伝えて厳重注意と罰金と領主に貸せて大人しくさせたんですけどいっときだけか」

「みたいだな」

「もしかして冷たい龍作った兄ちゃん?」

「そうだ」

子供達がわあと明るい笑みを浮かべる。

「見せて見せてっ」

「そんなに見せられない。ほら」

「ちぇー」

馬車が来ると尊達の前に止まる。子供達がこわがり髭を生やした男が馬車から降りすぐさま尊を指差す。

「貴様か!またのこのここの街にきおって!!!」

「坊ちゃん?」

「ええ。行き遅れの坊ちゃんです」

「なんだと無礼な!!」

男が剣を抜き構えると剣から焔が現れる。

「魔剣だ!!」

「魔剣だなあ」

男がふふっと笑う。

「今度こそ!!しねえええ!!!」

尊へと男が向かう。だが、頭と顔を残し魔剣ごと氷漬けにされると動かなくなる。

「そんな弱い魔剣で俺に勝てるか」

「だよなあ」

ランカスターが黒い槍を出し地面に突き刺す。すると馬車の下から棘が無数に現れ突き刺される。行者が悲鳴をあげ逃げていき、男が青ざめた顔を更に青ざめる。

「これくらいなくちゃな」

「あ、ああ…」

「何してるのかしらね」

荷物を持つアイリスがシンとともにその場に来る。

「ルー。シンが選んだナイフ」

「ああ。風の精霊の加護を受けたものだ」

「はい」

ルーカスが受け取り風を早速操る。

「ルーカス。どうもこいつとかの親は反省してないからな」

ルーカスが尊を振り向き尊が書状を男へと向ける。

「そ、それ、は」

「領主交代の書状だ。王の印鑑ありのな」

「な、あにいいいいっ」

「運びやすい形に削っておけ。これも練習」

「は、い」

「下はソリの形にしたらいいわよ」

ルーカスがなるほどと頷き風を使う。すると氷が音を立てて削れていき男が悲鳴をあげ助けてええと叫んだ。


ーこの異界人がああああ!!今度こそ死ねええええ!!!

「親子揃って同じセリフを吐くなよな」

「確かに」

シンが尊に答え、尊が呆れながら凍らせた年配の男を蹴ると男の足元にルーカスの手で作られたソリが坂を滑り下にいたギルドの兵士たちに受け止められる。

「後よろしく!」

「へい!」

「わかりましたあ!」

「はあい!」

男達が呆れつつ明るく声を上げた女達を見る。ルーカスがその様子を見た後尊を見る。

「この後は?」

「ああ。新たな領主が3日内に来るから任せる」

「はい」

そこに痩せこけたもの達が集まりだすと尊が前を遮る。

「そこをどいてくれ…」

「却下です」

「中に金や食料がある。元々は俺たちのものだ」

「そうだそうだっ」

「なぜあの領主を殺さなかった!」

人々が叫びだすと尊がやれやれとする。

「はいはいはい!!!」

鍋をガンガンと強く叩き鳴らしながらアイリスが静かにさせる。

「食料に毒でも入ってたらどうするのよ。責任取れる?」

人々が戸惑い、アイリスがやれやれとする。

「元気余ってるなら広場行きなさい。子供達の方が余程利口よ。ちゃんと頂戴ってお願いしてもらってるんだから。広場に食料配ってる人たちがいるからそこからもらいなさい。金については新しい領主が返金作業とかしていくから」

「…信用していいのか?」

「私たちを信用してくれるならいいわ。そしてもちろん私たちは毒は盛らない」

しんと静まり返るとアイリスが話す。

「分かったなら行ってみてちょうだい。いい?」

人々がうなずきだすと踵を返し離れていく。

「悪いな。ちなみに屋敷の散策はどうだった?」

「金銀の装飾だらけ」

「ああ。後は任せるか。アキラさんに」

「ええ。でも他の領地の領主だけど可能なの?」

「近所だから問題ない。ルーカス。アイリスと広場に行ってくれ」

「はい」

「行きましょう」

ルーカスが頷きアイリスと屋敷から離れ広場へと来る。そこには先程の大人達が配膳された食料を受け取り子供達とともに食べていた。

「お腹減ってると頭がおかしくなるものね」

「ああ」

「異界人のお姉ちゃん」

「ご飯美味しい」

「ご飯ありがとうー」

子供達が嬉しく駆け寄ってくるとアイリスがよかったわねと告げ、ルーカスもまた言われるとふっと微笑んでみせた。


ーいーやあ!!これも私の!私のよ!!

ーシルフィア!アンジェラを泣かせたわねっ!

ーシルフィア。その首飾りをアンジェラに渡してさっさと部屋に戻れ。

質素なドレスを身に付ける片方のほおを赤く染めた少女シルフィアがはあと息をつきもの寂しい簡素な部屋の中にあるベッドに座ると首に触れる。

ーお婆様のペンダント…。

シルフィアがヘッドに倒れはあと息を吐き出す。そして腫れたほおを触ると転がり再びため息をする。だが、けたたましく扉が叩かれるとシルフィアが飛び起きすぐに扉を開く。そこに楽しく笑んだ少女がいた。

「…アンジェラ」

「ねえお姉様。今から森に行ってきて」

「え…」

「マルスの実を食べたいな。はいこれ」

アンジェラが無理やりシルフィアに籠を持たせ引っ張り出す。シルフィアがその場に倒れアンジェラがおかしく笑う。

「早く行ってね」

「ま、まって。もう夜よ。それに魔獣達が今増えているのに」

アンジェラが涙ぐみしゃくりを上げ始める。

「お願い」

「お姉様。酷いっ!酷い酷い酷い!!」

「シルフィア!!!」

シルフィアがビクッと震え女が怒りだちながらその場に来る。

「お母様っ。お姉様が酷いの!」

「まあ」

「よ、夜の、森には、魔獣達が…。私は」

「マルスの実をとってくるって朝約束したのにまだとってきてくれないのよ」

「違う」

女が落ちていた籠を手にしてシルフィアに乱暴に投げ当てる。

「早くとってきなさい」

「で、てすが」

「約束したのでしょう?行きなさい」

アンジェラがおかしく笑みシルフィアが青ざめた。


暗い夜の森をシルフィアが震え身を縮ませながら進んでいく。

ー出てこないで…。何も、出ないで。

音が響くとシルフィアがすぐに後の方角を振り向きまた別の方角を見る。そして黒い影が見えるとすぐに結界を張り狼の魔獣の牙を塞ぎ走りだす。狼がすぐさま追いかけ他の狼達も追いかける。

「だ、だれかっ」

一匹の狼が遠吠えをあげると他の狼達も吠え始める。すると前方から狼が現れ迫る。

「ひっ」

シルフィアが止まり横へと今度は走るが木の根に掴まれるとそのまま宙吊りになる。狼達も止まるも何匹かが木の蔓に捕まり暴れていく。シルフィアの目の前に顔のある木が姿を見せ叫ぶとシルフィアが悲鳴をあげ悶えたその目の前で狼がその木の口に入れられ刻まれながら食されていく。

「いやああ!!!いやっ!!いやあああ!!!」

目の前の樹が縦半分に切られると狼達もその場に落ち倒れる。そしてシルフィアも地面に落ち倒れると痛みにうめいていくが引き起こされ肩に担がれる。

「何故森に入った!!」

怒鳴る声が耳に入るとシルフィアが泣きながら一度大きく震える。そして狼達が狼狽するも笛の音が響くとその笛の音へと向かいかけだす。しばらくしてシルフィアが下ろされると体を震わせ歯を鳴らしていく。

「危険だと分かって…」

「ご、ごめ、ごめ、ん、なひゃ、ひゃい。ご」

ルーカスが驚き震えなくシルフィアを見下ろす。そこに笛を持つ尊が姿を見せる。

「どうした?」

「元学園の生徒で、コンスタンスの元秘書でした。名前はシルフィアアーネット。親の事情とかで学園を去りました」

「ああ」

シルフィアが泣きながらルーカスを見上げる。

「…」

「さてと。なら、まず顔を拭え。後水だ」

尊がシルフィアの涙や鼻水で濡れた顔を拭うと今度は砂糖が入った水を飲ませる。

「ローウルフ達は?」

「群れへと戻らせた。あいつらは戻れば暫くは来ない。あとは、天敵が森にいると分かった以上移動するだろう。怪我の手当てをする。入ったのは何故?」

「マ、マ、ル、スの、み、実を」

「あれは襲われたところのさらに奥だ。人工的に作られてもいるのになぜ?命じられたのか?」

「と、とりに、い、いかないと…」

シルフィアが手を震わせ、尊がルーカスを見る。

「ルーカス。背後向いていろ。この子の服の下を見る」

「はい」

ルーカスが後ろを向き尊が見ると告げるとシルフィアが頷く。尊がそれを見て服を捲り鞭の跡や跡紫色の殴られた跡などを見る。

「家庭内暴力か。無理やりいけと命じられたか」

「確か、コンスタンスが以前話していました。父親は横暴な性格だと」

「ああ」

「わっ、私の、せいですっ。私が!役立たず、なのが」

シルフィアが必死に声を上げると尊がその口を塞ぐ。

「魔獣はまだいるからな。いいな?」

シルフィアが頷き尊が手を離す。

「ルーカス。いいぞ」

ルーカスが振り向きシルフィアがルーカスを見上げる。

ー見たこと、あるけど……。ルーカス?でも、そんな名前…。ルー…。

「ルーシャス、生徒会長…」

シルフィアが目を見開き、尊が話す。

「今はルーカスだ」

「ど、どうして…。その、御髪は。学校は」

「学校は辞めたし王子も除籍。そして国も今はアストレイの管轄になった。王が多くの犯罪を犯し裁かれたからだ。その前にルーカスはルーシャス王子としての立場を排除。消された。そして今は俺の下で働きながら教えている。しみるぞ」

足に消毒液がかけられるとシルフィアが苦痛に顔を歪める。

「ウッドロッドは根や蔦に無数の針がある。そこから毒を出す。まあ、縛られただけでは効き目は少ないが動きを鈍らせることができるからな」

尊が今度は塗り薬を塗る。

「2日は安静だが、家に帰ってできそうか?」

「…」

「出来ないな。ルーカス。宿に運ぶ」

「い、いえ。帰ります」

「何も持たずにか?」

シルフィアがダンマリとし尊がやれやれとする。

「ギルドを通じて父親に徴収する。暴力を振るわれない手立ては用意する。だから宿に運ぶ。分かったか?」

シルフィアが困惑するも項垂れ小さくはいと答えた。


ー髪。

アイリスが湯の張った大樽に入るシルフィアの髪を石鹸使い洗うとシルフィアが僅かに戸惑っていた。

「じ、自分で」

「いいからいいから。それとマッサージも兼ねてするから。傷んでいる毛先後で切っていいかしら?そうしないと更に髪が荒れるから」

「は、はい…」

「ええ。ヘアオイル塗るわね」

アイリスがオイルを取りシルフィアの髪に塗り馴染ませていく。

ーいい香り。

「ユルの花。私の故郷ではカモミールに近い花らしいわ。柔らかい落ち着いた匂いなのよ」

シルフィアが頷き心地よくなると船を軽く漕ぎそのまま眠りに落ちる。龍が姿を見せシルフィアを風であげるとアイリスが体をタオルで拭い下着、服を着せベッドへと寝かせた。


翌日ー。

「やっぱり熱出たか。必ず出るんだよな」

顔を真っ赤にし苦しく吐息を吐くシルフィアへと薬を入れた水差しを含ませ飲ませていくとシルフィアがゆっくりと飲み込むと龍が話す。

『麻痺毒だからねえ』

「麻痺というか神経だな」

『神経?』

「ああ。体を動かす管の事だ。体の更に奥の奥。血管の近くで血管に似た筋になる。傷つければ一生歩けない時もある」

『へえ』

「ウッドロッドの毒は神経を目掛けて移動する。そうした方が麻痺と違って長く体内に留まれば解毒薬もすぐには効かない」

『はあ。なら、毒を受けて飲んだはいいけどまだ残ってるんだ』

「ああ。そして、この子の場合日々の虐待もあって体が弱っていたんだ。通常なら動きが鈍いほどで1日過ごさないといけないが弱っていたから毒のせいで体が限界に達して熱が出たようだ」

『うん、後その子平気?』

「肺炎に似ている。ここでは治療が困難な病で死の病と言われている」

『えー』

「まあだが、それも10年ほど前」

尊が小瓶の薬を見せる。

「ナガハラ先生が捕まった時にイーロンで作った肺炎に効果のある特効薬だ。捕まっても医師としていろんな研究をやってきたそうで他にも数種類の特効薬がある」

『おー』

「あと、この子はまだ俺の見立てになるから肺炎なのかはわからないがこの薬を注入して熱が引いたら肺炎となるわけだ。きかなかったら別の病になる」

『うん』

尊が注射器を持ちシルフィアにその薬を注入した。


ー…歌?

シルフィアが夢見心地で歌を聴く。

ー聞いたことがない言葉…でも、とても綺麗な音色。

シルフィアが目を微かに開け視線を巡らせぼんやりとした影を見ると徐々に鮮明になる。そこに鼻歌を歌いながら刺繍をするアイリスがいた。

ー誰…。

「出来た」

『頂戴頂戴』

「はいはい。まってね」

龍へと作った小柄な刺繍の肩下げバッグを渡すと龍が早速体に通し嬉々とし威張ってみせる。

『どう?』

「いいわね。悪くない」

「龍…」

龍がどきりとしアイリスがシルフィアを振り向く。

「あら。目が覚めたのね。男連中は今出払ってるところよ」

「はい…」

『あーあー。見られたよ』

「いいんじゃない?具合はどう?熱を計ろうにもここだと計るものがないって聞いたから」

「熱を計る?」

『向こうには体温を測るための道具があるんだよ』

「ええ。それで自分の平均体温。それから高熱とか、生理の始まりとか分かるのよ」

「生理のも」

「ええ」

『便利だよね。その体温計に関してはアストレイで近いものを開発してるって話だったな。で?具合どう?実はあれから5日経ってるんだよね』

「…え?」

「昏睡状態が続いていたのよ。栄養補給は点滴」

『そう。肺炎は肺炎でも症状がひどい肺炎だったらしくてさ。アイリスもだけど尊とかが交代で1日中見てたんだ。最初は何度か危険なとこまで行ったりしたけど落ち着いてからは熱も下がり始めたからね』

「ええ。とにかく意識が戻ってよかったわ」

「そ、そんな、に。私…」

シルフィアが起きようとしたが体が重く気だるさに負ける。

「まあだ起きない。今は安静よ」

「で、ですけど、家の…」

「意識が戻ったな」

アイリスが入ってきた尊を振り向く。

「ええ。ついさっきよ。彼女の家の方は?」

「ああ。何というか、母娘の視線が痛い。父親は異界人が嫌い」

『へえ』

「あ、あの、ま、さか、私の家に」

「ああ。まず、この国の王が定めた法に書かれた罪の虐待や違反に関与したので罰金刑とその対象者の保護をすることになった」

「え」

「虐待の対象者の保護だ」

「そうだ。国の連中と押しかけたから文句は言いつつも指示に従った」

「そ、の、はい」

「ああ。とにかくまだ体は休めておけ。家には帰るなよ。何か大切なものとかはあるか?」

「…昨日、アンジェラ。妹に取られましたかはもうないです」

「分かった。未練は?」

シルフィアが頭を振る。

「妹の手に渡れば壊されたも同然です」

「分かった。そうしたらここで安静だ。俺は宿を変える」

「え?」

『またどうして?』

「つけられているんだ…」

「ええ。シルフィアの家の者だ」

『あーあー。尊ー』

「俺のせいだというようにいうな」

「どうしてそんな…」

「気にはしていいがそこまで思いとどめるな。今後のやり取りは医療系に従事した知人を使う。医療費は父親から徴収済みだからな」

『尊。宿の前に馬車が止まった』

「…」

龍がじっと見下ろすと馬車からドレスを着たアンジェラが姿を見せる。

『シルフィアに似てるね』

「透視の眼を持つやつは?」

「わ、分かりません」

『僕とアイリスで調べるよ。でもその前に』

「分かった。仕方がない。ルーカス。シルフィアを。俺はその妹の相手をしておく」

「はい」

ルーカスがシルフィアを抱き上げ龍がアイリスと共にルーカスの姿も消し去ると窓から外へと飛び出す。その様子を手錠をかけられた肩まである金髪の少年が見ていたが視線を宿へと入るアンジェラの背中へと向ける。

ー別いいかな。

ぐいと何かに引っ張られると驚くが突然景色が変わり森の中へと変わる。少年が驚きながらも手錠が今度は壊されると手に触れながら上を見上げる。そこに髪を茶髪に変え一つに束ねたランスロットが楽しく見ていた。少年が口を開け動かす。

「ああ。待て」

ランスロットがしゃがみ少年の切られた舌を指で挟む。少年が嫌がるもハッとしランスロットが手を離すと少年が生えた舌に触れる。

「ひは。あ。はへは」

「ふふふふ」

少年が眼を輝かせる。

「ありいがあろお」

「礼には及ばない。よかったら私の元に来て手伝ってくれないか?」

「れうらう?」

「ああ。そちらの遠くまで見える目の力を借りたい」

「…」

「ひどいことはしない。そして、私の妻の世話をしてもらいたい」

「おせわ?」

「ああ。衣食住は用意しよう」

少年が分かったと頷く。

「いひよお」

「ああ。なら、名前は?」

「ローレンふ」

「ローレンスか。なら行こうか」

ランスロットがローレンスを抱き上げるとローレンスがうんと頷いた。


シルフィアがベッドに寝かせられるとアイリスが話す。

「なら今度はここで安静よ」

「はい…その、アンジェラは…。その、お相手の方」

「平気よ。暫くしたら」

「来たぞ」

「早かったわね」

アイリスが眼を丸くし、尊が呆れながら中へと入るがその肩にルーカスが担がれていた。

「え?え…」

「ちょっとちょっとどうしたのよルーは」

「裸体の王様だよ。俺たちのことを見つけた奴隷の子供を持って行った」

「ええ」

「奴隷…。まさか、孤児院の子」

「え?」

尊が気絶させたルーカスをソファに寝かせ、シルフィアが話す。

「家の近くに孤児院が。その、孤児院というべきなのか…」

「名前が孤児院だな。そこに何があるんだ?」

「私はよく分かりませんが子供が数名見えることがあって。メイドの1人に聞いたら孤児院ですとしか…。でも、本当に孤児院なのか……」

『調べてみたら?こっちは僕がみておくよ』

「ああ。あと裸体の王が来たら言え。操るな」

『あーうーんー。まあ』

「絶対だからな」

尊が龍を指差すと龍が難しく顔をしかめるもそのままその場を去る。

「シルフィア。フィアで今度から名前呼んでいいかしら?」

「あ、はい」

「ええ。なら、フィア。あなた家出したら?」

「い、家出ですか」

「ええ。家出。したくないなら戻る?」

「……」

「どうする?」

「ご、ご迷惑」

「ならないならない」

アイリスがベッドに腰掛ける。

「確か学校で秘書してたんでしょう?なら得意なことある?」

「ええと」

シルフィアがしどろもどろとしながら話すとアイリスもだが龍も頷き聞いた。


ーこれが話に聞いたアルスマグナ。

身なりを整えたローレンスがロレンシオの後に続きながら辺りを見渡す。そして眼を緑に光らせる。

「みえはひ」

「勝手な事はするな」

ローレンスがロレンシオを見上げると頷きまた元の青へと変えた。そして1人前へと進むが水晶の柱や扉を見てあちこちと止まりながら進み、ようやく辿り着くと瑠奈が心地よく白い柔らかいソファに寝そべり静かに寝息を立て寝ていた。そのそばに機械人形がいた。

「わあ」

『遅いです。もっと早く来なさい』

「…ロボ」

『ロボではありません』

「ロボ」

『ロボではありません』

「ロボら」

『ロボではないです』

「ろーぼ」

『ですからロボでは』

「んん」

機械人形が止まりローレンスが瑠奈を振り向く。

「おふぃ」

機械人形がローレンスの口を塞ぎローレンスがやれやれとする機械人形を振り向き首を傾げた。


手錠をかけられ奴隷印を押された子供たちが大人用のベッドに6人ずつ押し込められ寝ていた。そこに尊がおり尊が痩せ細った子供達を見る。

ーギリギリのところか。奴隷印は。

尊が六芒星の奴隷印を見る。

ー教会のか。久しぶりに見たな。さて。どうす。

耳元に息が吹きかけられると尊がぞわあと鳥肌たて震えすぐさま後ろに立っていたランスロットを振り向き離れる。

「この、変態裸体の王様が…」

「ふふ。より酷い言われようだな」

「あの子供は?」

「瑠奈の世話係だ。そば付きの機械人形が苦労している」

「ふふぁ」

尊が起きた子供を見るとすぐに口を開けあるところにない舌を探す。

「ふぁ」

「ここにいる子供らは異界人や力のあるものの親との交配により作られた希少性の高い子供達だ」

「舌を引き抜いたのは離さないようにか」

「そうとしか考えられないだろう」

尊が小さく唸り子供が眼を擦る。

「この子らは私が引き取ろう」

尊がはあと大きくため息をする。

「ならどうぞだ。こうなると俺でも無理だ」

「ふふ」

「なんだ?」

「実験に使うとか」

「裸体の王様がするはずはないだろう?拾ってきた連中を見る限りな」

「どうだろうか」

子供たちが次々と浮かぶとゾクゾクと目を覚まし驚いていく。

「はああ」

「ふあひ?」

小さな音が響くと尊がランスロットを掴んだ途端その手に針が刺さる。ランスロットがその手へと視線を向け尊がすぐに手首を縛り凍らせるも力無くその場に倒れる。

「貴様ら異界人か」

ランスロットが睨みつける神父の男を振り向く。

「よくも私のモノを」

「まだ浮かせたばかりなんだが」

「黙れこのクソ共。異界人は本当に不出来な奴らばかりだ」

「不出来か。ちなみにこの子らはどうするつもりで世話をしていたんだ?」

「貴様が聞く意味などない」

兵士たちがボウガンを構える。

「子らに当たるぞ」

「撃て」

矢が次々に放たれるが途中、宙に吸い込まれるように消える。そして反転した矢が兵士たちの額や胸に当たりその場に倒れる。男が呆然とすると今度は尻餅をつき青ざめランスロットがやれやれとすると視線を尊へと向ける。

「また器用なことを」

「…はあ」

尊が立ち上がる。

「証人は多くいた方がいい」

兵士たちの頭や胸の辺りが全て凍りついておりその兵士たちも僅かに呻き声を上げていた。

「ダリウス神父。ここにいる奴隷の子らは違法中の違法だ」

男がハッとしすぐに後ろを向くと異端審問官たちを見てさらに青ざめる。

「おまけに舌を全員切って話せなくしているし、中には連れ攫われた子供もいる」

尊の元に震える少年が涙を流しながら尊を抱きしめていた。

「虐待もだが誘拐に監禁。奴隷禁止法に人身売買他多数。反省する余地なしと見る。こちらからは以上でだ。この裸体!」

「服は着ているだろう?」

仮面をつけたトマが驚き髪や目が金へと変わるランスロットを見る。そして子供らが浮かぶ。

「あうっ、うーっ」

尊に抱きついていた少年が手足をばたつかせる。

「問題ない。治してもらえ」

少年が口をつぐませランスロットがくすりと笑うと子供達と共に姿を消す。

「わ、私の商品…。私の金っ。このいかっっ!?」

男が鎖で拘束されるとトマが尊の元へと来る。

「今の、アルスマグナ?」

「そうだ。住人集めを王自ら選定して行っている。酷い事はない。俺が保証する」

トマが頷き尊が頷くと針を箱に入れトマに向ける。

「殺傷性のある毒が付着しているから気をつけろ」

「分かったけど…尊にいは平気?」

「俺は平気だ。常に自分の身は守っている」

「ああ…」

「はっ、はなせっ。私を誰だと思っている!!!」

トマが男を振り向く。

「地下。この下にまだいたけどもういない」

「なっ、んだと!!あの男!!私のコレクションを!!よくも!!よくもおおおお!!!」

男が連行されると尊が話す。

「コレクションはなんだ?」

「多分、尊兄と一緒の異界人だと思うけど、棺みたいなのに眠ってる姿が見えた。生きているかはわからない」

「ああ。まあ、裸体の王様が連れ去ったみたいだからどうしようもない」

「…その裸体の王様って、アルスマグナだろ?」

「ああ。ランスロット王。変わり者の変わり者だ。俺を気に入っていって付きまとう」

「えと、自分で言う?」

「言いたくなるほどうるさいんだ。あと悪いが俺はもういく」

尊がトマの頭をポンと手を乗せたあとすぐさま離れその場を去る。

ー…まだ話したかったけどな。

トマがやや寂しくするもユリウスがそばへと来るとそばに寄り添った。


ー術のせいで。

ーなら、もうすぐ目が。

ーあ。

エステルが目を開けた白髪に肌の白い少女を見下ろす。少女がぼうとし辺りを見渡しゆっくりと体を起こしぼうとすると再び体を寝かせる。

「まだ具合悪いとか」

「…」

今度はがばっと飛び起きるとエステルもだがその場にいたカテリーナが驚く。

「ここどこ?締め切りが!!」

少女がベッドから勢いよく降りようとするも足がもつれその場に倒れる。ルクレイシアがやれやれとし少女が額を抑え唸る。

「い、ったあああ」

「名前は?なに?」

「ろ、六条、遥…」

「年」

「じ、十八…」

「日本人ね。あと締め切りって何?」

「しょう、せつの…」

遥が顔をあげルクレイシアやエステルたちを見渡しエステルを見る。

「イギリスの歌手の…ですよね?」

「あ、えと」

「エステルさん」

「え、と、ええ」

遥が目を輝かせすぐにエステルの手を握る。

「大ファンです。スプリングフラワーとか本当大好きです」

「そ、そんな…。ありがとう。マイナーなのに」

「そんなまったくですよ。あー、どこかに紙っ。紙ないかな。サイン欲しいけど」

「目が赤い」

遥がカテリーナを振り向くとルクレイシアが話す。

「彼女アルビノね」

「アルビノ?」

「ええ。ここにはない体質よ」

「も、しかして、囁きを書いた若い小説の方ですか?」

「うわ。うわあ。囁きならそうですはい」

今度はエステルが遥の手を握る。

「とても素敵でした。それから防人もです。自然界の世界観がとても綺麗で感動して」

「嬉しいです。実はまた…書いてる途中っ」

遥が手を離しドアを開き右、左と見渡すとルクレイシアたちを見る。

「ここどこですかっ。きょうは何日っ」

「え、と」

「まあそうね。ここはあなたが思う世界とはまた違う世界」

「え?頭逝ってます?」

遥の隣の壁に穴が開くと遥が穴と指先から火花を出すルクレイシア、そしてまた穴、ルクレイシアと見ていき冷や汗を流す。

「残念ながら私の頭は正常よ」

「は、い。えと、なら、ええと」

遥が額に手をやりむうと考える。

「海外に、映画の、挨拶に…。それからホテルに泊まって……。から。確か、あの時すごく眠くて。もう、次の本作り終えるまで少しだったのにすごく眠くなって…。起きたら、ここで」

「そう。ちなみにどこの国?」

「アメリカです。波内の映画」

「波内の映画?1年前になるわ」

「え?」

遥が驚きエステルが話す。

「私は…、半年前からここに。私の場合は人身売買で」

「その、有名歌手の」

「親戚に、借金が…。私が働いたお金で返してたの…。だけど追いつかなくなって」

「それで売られたって。ええ…」

エステルが表情を曇らせ、ルクレイシアが話す。

「貴方は容姿でかしら。たまにあるのよね」

「え…、なら、その、戻るには、どうしたら」

「ないわ」

「そんな困りますっ。私まだできてない本とか読んでない本とかもありますしっ」

「私にそう言われても私も困るだけよ」

「そんなあ…」

遥が膝を崩し座り込み頭を落とすと床についた髪に触る。

「…すごく伸びてる。時の流れを感じるってそんなああ」

遥が突っ伏すと後ろにロレンシオが立つ。

「ロレンシオ。なに?」

「王が連れてこいとのことだ」

「王…」

遥がロレンシオを振り向きロレンシオがああと返事を返した。

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