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運命のミオ  作者: 鎌月
60/64

ルーシャス1

ーさてと。

龍とアイリス、そしてルーシャスと陸奥とが陸奥が持ってきた世界地図を聖域で見下ろす。

『どこいく?』

「んー、私はよくわからないし、何を目的にいったらいいかもさっぱり」

『目的?』

「ええ。だって、見にいくってのは目的があっていくものでしょう?大きな木が見たいのなら大きな木がある国に。ゆっくり休めるところがあるなら休める場所にって」

『あー』

『因みにルーシャスは目的とかはある?』

「…ない。今はなにも考えられないな」

ルーシャスが答え龍が話す。

『んんー、そっかあ。なあら、はい。私が提案』

『なに?』

『女神の復活と残りのオーブを集める』

「女神の復活?」

『それ難しくない?』

『ルーシャスいるから平気平気。何せ今ランスロット並の力は持ってるから』

「俺が?」

ルーシャスが複雑そうにし陸奥が腕を組む。

『あるけど、アイリスは?』

『教えていけばどうかな?』

『んんんー、なあら、僕の提案』

『なに?』

『もう1人旅のお供で連れて行こう。僕の知人に元勇者がいてさ』

『うん』

『扱いが少し面倒だけどいける』

『えー、扱い面倒なの?』

『なら僕はその女神とオーブ探しは反対。目的達成したい気持ちは分かるけどね』

『むう』

「達成したらどうなるの?」

アイリスが尋ねると陸奥が話す。

『この世界のおかしくなった環境が元通りになるし僕たちが持つ自分の聖域がまた以前の姿に戻るの。つまり、自分たちが過ごしやすかった生活空間になるわけ』

「じゃあ、ここがさらに暮らしやすくなるの?」

『そーいうこと』

『本当はここもまだ広くて生き物たちがあちこち居たんだよ。魚もたくさんね』

「そう言えば…そうね。生き物がいないわ」

龍が頷き陸奥が話す。

『出て行ったんだよ。ここも一応隠してはいるけど人に見つかるところになってもいるからな。人によって棲家を奪われたわけ』

「そうなのね」

龍が頷き陸奥が話す。

『そう。だから、ここにもオーブがあったけどとられて今はないの。ルーシャスが暮らしていた国にあったオーブは別の竜たちの物。僕たちのはまだ見つかってない』

「でも、この子がオーブ探し」

『そうそれ。わかるの?』

『ふふん。わかるんだな』

龍がえへんとふんぞり帰り陸奥が疑いの目を向ける。

『本当に?』

『分かる』

『…』

『本当だからね』

龍が陸奥に近づくと陸奥が嫌がり押しのける。

「ねえ。その元勇者だけどいいかしら?」

『なに?』

「ええ。私が知ってる勇者は強い。英雄というイメージね。それであってるの?」

『合ってるよ』

「ええ。ならどうして元?勇者にも人のように引退とかあるの?」

『引退はないなー。元勇者だけど断罪された勇者でもあるんだよ。無罪なのに有罪とされて処刑された。でも、仮死状態になって生還したんだ。ただ、その元勇者の家族や親族が暮らした村は口封じのために殺されて消されたんだ』

「口封じね」

『うん』

『それってもしかしなくてもランカスター?』

『そう。やっぱり知ってる?』

龍が怪訝に眉を寄せながら頷き、ルーシャスが話す。

「俺も知っている。ただ、ランカスターを断罪した国はもうアストレイとの戦争で敗戦国になりアストレイの一部になった」

『その通り。だけど、根本の元凶がまだ逃亡中でね。そして、一年前に見つけて追い詰めたらしいけどやられたー』

陸奥がばたりと倒れるもすぐさま起き上がり飛ぶ。

『そのランカスターを僕と樹達が介抱してあげたわけ。やられた理由はオーブの力を使ったから』

『えー、そいつらがもってんのお』

『そーだよ』

龍が顔をしかめ、アイリスが話す。

「それは、悪党で見ていいのかしら?」

『みていいよ』

「ええ」

『んんー、ランカスターをやった相手がねえ』

『そう』

龍がくるくると回る。

『だから、難しいんだよ』

『むううう』

「女神は?」

アイリスが尋ねると陸奥が腕を組む。

『出来なくはない。歌い手がいる』

「それってどんな?」

『古代語が理解できる歌い手だね』

「場所は?」

『場所がわからない』

『分かるけど封印されてるよ』

『なんで分かるのさ』

『私』

小さな虫が龍から現れると陸奥が両手を広げる。

『ちょっとやめてちょうだい酷いわね』

『酷くないし。女神に関わると碌なためしないし』

「へえ。話せる虫もいるのね」

「いないが…」

ルーシャスが虫をじいと見ていく。

「そうなの?」

「ああ」

『一応三女神のうちの1人の女神よ』

「虫の女神なのね」

『違うっ』

虫が声を上げる。

『私たちは魂だけの存在なのよ。だから死骸にうつって話をするのよ』

「へえ」

『そうそう。あと、食べられても魂だから逃げられる』

『ま、その後の死骸探しが大変だけどね』

『うるさい』

龍二体が固まり痺れバタバタと落ちる。

『お、己、女神…』

『としまあ』

『私に年なんて関係ないわ。で、私としては後2人の女神。私にとっては姉妹達の解放をしてもらいたいのよ』

「解放ってことは、捕まってるのかしら?」

『封印されたのよ。500年前に』

「500年前?」

「大災害によって未開の地が生まれた時代か?」

ルーシャスが話すと虫が告げる。

『ええ。そうよ。地殻変動によって海が大地に変わったり大地が海に変わった時代。龍に守られていたこの場所は良かったと言えど、人によって迫害されたための影響はあって多くの人間も死んだわ』

「それとあなた達とどう関係があるの?」

『まあ、女神がいたら防げたんだよ…』

『そお…』

『でも、捕まって封印されたの。当時の教会の信者の魔術師達によってね』

「信者?」

『ええ。強いのよ教会の力は。私たちの力を使おうともして私達を見つけて誘い出して封じたの。オーブの力を使ったりもしてね。私たちはこうやって死骸へと移らないと話も何もできない。本当に魂だけの存在だからね。因みに封印したのは当時の三賢者と言われた異界人たちよ。教会に騙されて私達を封印した後は殺されて終わり』

「あなた達力あるとかじゃないわけ?」

『あるわよ。でも、3人揃ってじゃないと本来の力が出ないの』

『そうそう』

『揃わないと弱すぎるんだよ』

二体がむぎいいいいと声を上げ、虫がむかむかと動く。

『異界人の力はここの影響を受けて強くなってしまうの。しかもその三賢者は私達を封じて力が無くなったすきに殺されたの。弱ったところでよ』

「ええ。なら、その後は?遺体は?三賢者なら、この子みたいに何かされたりするんじゃない?」

『勘がいいわね。教会が遺体を回収して解体して調べ尽くした後野に捨てたわ。そしてー』

「そして?」

『彼らは前世の記憶をもつものとして生まれ変わりながら教会を破滅させる為に現在進行形で動いているわね。教会側もそれを認知。敵として、悪魔として調べて追っているのよ』

「500年前のことよね?時効ないの?」

『お互いどちらかが諦めつくまでやるみたい』

「いやなものね。あと、三賢者とオーブは置いて女神二体ね」

女神がうんうんと頷き龍が話す。

『アイリス。なし。やっぱりなしいいいいいい』

『何がなしよっ』

「なしで」

『そんな!!』

「だって私達に関係ないもの。とりあえず目的としてそのランカスターにあってランカスターがやりたいことに私たちがついていくでどうかしら?」

『え?』

『え?なんで?』

二体の龍が目を丸くし、アイリスが話す。

「強い、なかなか死なない。ルーシャ様知っている人物だからかしらね」

『まーそうだけど』

「私は知らないことが多いから歩きながら知っていきたいわ。現状を」

陸奥が頷き起き上がり飛び上がる。

『なら話をしに行くよ。待っててね』

陸奥が去っていくとアイリスが話す。

「因みにルーシャスはそれでいいかしら?ランカスターで決める事にするで」

「ああ。あと、俺もランカスターと話してみたかったし、教えたいことがある」

『なんで?』

「話したかったのは幼い頃に一度会ったから。教えたいことは裏切った仲間の居所だ。その…、俺もどうこう言えないが…」

ルーシャスが俯き、龍が首を傾げた。


しばらくしてー。

白い靄から陸奥の頭を掴み連れてきた眼帯姿のランカスターが現れる。

『陸奥おかえりー』

『…ただいま。そろそろ離してくれないかな』

ランカスターが手をはなすと陸奥が頭を撫でながら文句を言いつつアイリスの元へと来る。

「興味本位か?」

「じゃなくて教えて欲しいから」

「他にも知っているのがいるだろう」

「最初にこの子がお勧めしたのがあなただからよ」

「ちっ。ことかげが」

『たーすけてやったのになーにその言い方はあっ』

陸奥がむかあとし、ランカスターがふいと顔を背ける。

「ランカスター殿」

ランカスターがルーシャスを振り向きルーシャスが話す。

「魔術師マルセロについて知りたくありませんか?」

「…」

ランカスターが歩を進めルーシャスの前に立つ。

「私はどこにいるか知っています」

「…」

『ランカスター。へんじういっ』

ランカスターが陸奥の顔を掴むと陸奥が抵抗する。

「古代国の王様の眷属になってるな」

「はい」

「あの王様は俺のところにも誘いにきたからな。断ったが」

『あ、きたんだ』

『ぶはっ、ま、性格はあれだけど、駒としては強いから』

「誰が駒だ」

「それはいいとして私たち困ってるのよ」

「は?」

「何を目的に生きていけばいいかってね。彼の話だと彼はまだ相手のものになってるのよ」

「ああ、王様のな」

「そう。まあでもあの性格からしたらしばらくは何もしないわ」

「どうだか。それよりあんたは戻りたいとか思わないのか?」

「私の家族は目の前で殺されたからもう居ないわ。私は運良く助かって助かった先に保護されたかと思ったら奴隷として売られてここよ」

アイリスが腹の銃痕を見せる。

「戻ったところで殺されるから。なら、私を知らないここで暮らしたい。だけど」

アイリスが服を下ろす。

「私はこの世界について全く知らないの。それを話したらあなたをこの子が勧めてきたの」

『そうそう』

「…」

『攻撃とかしないでよ』

陸奥が身構え、ランカスターが鼻を鳴らすと指を輪の形に作る。

「金」

『これがあるんだな』

龍が金貨を見せるとランカスターが奪い中を見る。

「こちらも隠し財産がある」

「お前のは全部消えた王様達が根こそぎ取り尽くしたからな」

「元騎士に預けているものがあります」

ランカスターがやれやれとし、ルーシャスが話す。

「よかったら俺も国がどうなったか知りたいです。王達が断罪されたのは知っています」

「分かったよ。ならまずお前の元騎士のところだ」

「はい」

『よーしよし』

『じゃあよろしくなランカスター』

『私もかわるがわるついていくわ』

ランカスターが怪訝な顔をさせた。そして陸奥達の案内の元聖域から外へと出る。アイリスが目の前の崖から砂漠を見下ろす。

「砂漠ね」

『うん』

『元々は草原だったけど、私が捕まったこと。オーブが盗まれたことでこうなったの』

「ええ」

「で?場所は?」

「この先のハーランドです」

「分かった」

ランカスターが宙を歩くとアイリスが目を丸くする。

「こい」

「ええ」

アイリスが進みそろっと足を出すと宙に足が乗る。

「へえ」

『結界の道。ランカスターは結界はるの上手いんだよ』

「そうなのね」

アイリスがランカスターの後を追うように進みルーシャスもまた追う。そして砂漠が終わり森が現れると夕日が落ち始める。その夕日の先に小さな街が見える。

「あれがハーランド?」

「ああ。その先にさらに見えるのは元イーロン国だ。異界の世界を真似た国だったが今はもうアストレイとの戦いで敗戦した」

「誰か住んでたりはしているの?」

「ああ。イーロンにいたもの達がまだ住んでいる」

『そうだよ』

『どうしても抜け出せないんだよ。楽だった暮らしからね』

「楽な暮らしか。どんな暮らしかしら」

『アイリスは向こうの世界では苦労したの?』

「そうね。他の子達はみんな遊んでたけど私は働きながら学校に行って。学校に行けるだけでも有り難くはあったけど遊ぶなんて事は学校似合ってる間だけ。帰ったら忙しい父母の代わりに家事育児ばかり。大人になってからも仕事しながら大学に行ってたわ」

『大学ってここだと最高等学校なんだよ』

『へえ』

「それが似ているのね」

陸奥がそうと頷く。

「ええ。大学卒業して、家のことをしながら仕事もしてたわ。そしてようやく自分にとっての初めての休みが取れたから、旅行を計画していたのよね。でも、そこで弟が殺された後は立て続けにみんな殺されて死んで、私は売られてここ」

『じゃあ旅行にもいけなかったんだ』

「そうよ」

龍が頷きランカスターが話す。

「降りるぞ」

アイリス達が吸い込まれるように下へと降りる。そして街の近くで降りると陸奥が急ごうと告げ急ぎ城門まで歩いた。


ー朝。

ルーシャスが目を覚まし自分の手を見て安堵する。そして着替えをし短くなった髪を一つに束ねるとマントに頭巾を被り部屋を出た。


『アイリス起きてー』

アイリスが気持ちよく眠り龍がアイリスを揺らす。

『もお』

ノックが響くと龍が扉へといき軽く開けルーシャスを見て扉を開ける。

『おはようルー。まだアイリスが起きてないんだ。起こせる?』

「起きていないなら寝せてていい」

『んー』

「起きてるわよお」

アイリスが手をヒラヒラさせ起き上がり欠伸をした。


ランカスターが宿の窓から教会を眺めていた。そこには孤児院もあり子供達が遊ぶ声が響き渡っており、その子供達とシスターが共に遊び、洗濯なども行う。その様子を近くでアイリスとフードを目深に被ったルーシャスも見ておりアイリスが話す。

「教会ね。これは向こうと似てるのね」

『向こうの世界のを真似してるからだよ。異界人が広げたの』

龍が姿を消しながら教えるとアイリスがへえと声を出す。

「ここでも布教ね」

「ああ。あとここはまだ豊かな町で人も穏やかなんだ」

「ええ」

「こちらだ」

ルーシャスが前へと進み、アイリスが後を追う。

「来たことあるのね」

「しばらくその騎士の元に暮らしていたんだ」

「お忍びで?」

「そうだ」

街外れの古びた家へとくるとルーシャスがノックを何度か繰り返す。

「留守?」

「わからない」

ルーシャスが扉に手をやり開くと何もない空間を見る。

「…誰も住んでない?」

「…」

ルーシャスが進み中へと入り、アイリスが続く。そしてルーシャスが残された本棚を横へとずらし扉を見せる。

「隠し金庫ね」

「ああ」

扉のダイヤルの鍵を開け扉を開くと何もなかった。

「ないわね」

「ああ。その下だ。俺のは」

ルーシャスが金庫の底を押し滑らせる。すると金貨や宝石が姿を見せる。

「マジックボックスね。まるで」

「マジックボックス?」

「ええ。そこにあるようでないと見せかけてある。人を騙す箱よ。水があるように見えて触るけどなかった。だけど本当はある。視覚とかを騙した方法で作られた箱の事よ。本物に見えて偽物。だけど本物だったってね」

ルーシャスが頷き袋に金貨などを入れる。

「ここの家主はもう住んでないと言うことね」

「ああ。引き払ってそんなにたっていない…。父達かもしれないな」

ルーシャスが入れ終わりアイリスと共に外へと出る。

「その辺りの人にここの家の人のこと聞いてみる?」

「いや。いい。取り敢えず金は手に入ったから一旦宿に戻ろう」

「ええ」

「シスター」

「ほら歩きなさい。走らないの」

子供達が2人の横を通り過ぎシスターが慌てて追いかける。アイリスが後ろ姿を見ながらふっと笑う。

「大変ね」

「子供は、嫌いなのか?」

「まさか。好きよ」

そう告げルーシャスを振り向く。

「貴方は?」

「子供は好きだな。無邪気なのがいい」

「そうね」

ルーシャスが頷きアイリスがふっと笑う。

「あ、異界人」

アイリスが止まりシスターがすぐさま子供を叱咤する。

「こらっ」

「ええ。なに?」

「おめめ綺麗だから盗まれないようにね」

「え?」

ルーシャスが眉を寄せシスターが子供を抱き上げる。

「盗まれないように?」

「うん」

「その、ご存知ありません?ここ最近旅人さん達だけなのですが目を取られてしまい見えなくなる方がいらっしゃるのです。ギルドの方々が見回りをされてはいるのですが魔獣達の数も増えてどうしても人手が足りないそうなのです」

「ギルドが」

「アイリス。行こう」

「ええ。教えてくれてありがとう。気をつけるわ」

「うん」

アイリスが手を振り子供が手を振りかえしシスターが頭を下げる。


ー目を失うか。

ランカスターが金を数え、アイリスが話す。

「そういえば貴方の目も珍しいわよね。赤」

「ああ。俺は希少種だからな。赤はそのせいだ」

「希少種?」

「この世界に通常じゃない力を持って生まれた種族だ。エルフ。魔獣にも使われる」

「へえ」

「目を奪う相手に心当たりはあるな」

ランカスターが不敵に笑う。

「ドロテアだな」

「誰?」

「ランカスター殿の元仲間になる。魔導士だが、2年前に禁忌を犯し手配された」

「実際に犯されたのは6年前だ。あのじじいは遅かったが仕事はしてくれたからな」

「禁忌ってなに?」

「キメラ製造に関与したんだ。魔獣達を使い一つの体。一つの生命体に変える」

「つぎはぎの化け物だ。人もまた同じようにキメラにされた後は人を狩り捕食する」

「人だけなの?」

「いや。魔獣以外だ」

「魔獣ね。そう言えば見たことないわ。どう言ったの?」

ランカスターが眉を寄せると龍が話す。

『アイリスのギフトだよ。魔石と同じ効果のある力。魔を払う力』

「魔を?」

『そう。ルーシャスの悪魔は使役しているから魔とはまた違うね』

「ああ、あの頭のない甲冑の悪魔ね。それにしても」

「ドルターナ」

「知ってるの?」

「ああ。元魔導騎士だったが、教会の連中の術式によって悪魔になった。儀式により殺されて転じられた作られた悪魔」

「はい」

「ふうん」

ランカスターが顎をなでる。

『ドルターナは魂の解放を望んでルーシャスの元に来たのよ』

ランカスターが下を見てネズミを見下ろす。

「今度はネズミね。虫は?」

『食べられたの。はあ。ま、仕方がないわ。それと、アイリス。貴方のその魔を払う力は悟られないようにね』

「悟られた場合は?」

『殺されて肉体を利用されるかもしれないわ。ただ、死んだ肉体では魔は払えないけれど。これは事実よ』

「なら、切った髪で魔を払えるかとなると払えないわけね」

『その通り。生命エネルギーが必要なのよ』

「わかったわ。私もいきたいから危険になった場合はそうして逃れるわ」

『ええ。で、ドロテアね。残念だけどドロテアはこの街ではなくて別の場所にいるわ。でも、目を奪っているのはドロテアよ』

「どうして目を奪うの?」

『多くの目の力を使って監視する為。あとは、その目を持つ者の力を得る為よ』

「ああ。あれは魔獣の目を奪って魔獣の力を得て攻撃していた」

「目って、目玉ごと?」

「ああ」

『そうよ』

「不気味ね」

「使える力であったのは確かだ。あと、ここには珍しい目の持ち主が2人いるからな」

『そうね』

アイリスがやれやれとする。

「囮にするなら、条件。雇い賃を決めた半額にさせて頂戴」

「ちいっ」

「はいありがとう」

「まだ何も言ってねえ」

「舌打ちしたところで決まりでしょう?男ならうじうじしないのよ」

「あっ。おい勝手に出すなっ」

ランカスターが喚き、アイリスが気にせず上げた分の半額の金貨の枚数を数え取り上げた。


ー快楽に身を任せればいい。ただただ気持ちが良くなるだけ。何も考えずにー。

ルーシャスが飛び起きると息を弾ませ汗を落としていくが息を大きく吐き出し項垂れ今度は涙を落とす。そしてフードを目深に被り外へと出て夜風を浴びる。

「ルーシャス」

ルーシャスが隣を見ると宿から持ってきた椅子に座り手を振るアイリスを見て近づく。

「悪い夢でも見た?」

「…」

アイリスがいすから立ち上がりルーシャスを椅子に座らせる。

「星綺麗よ」

「…まだ、起きていたのか?」

「ええ。体がまだ慣れてないのよ。ずっと暗闇の世界にいたせいで。なんとか日数だけは刻んで数えててね。ここと少し日にちの数え方は違うけど、6年は暗い地下生活だったから」

「それは…あの城で……」

ルーシャスが暗く告げるとアイリスがルーシャスの頭に手を乗せ軽く叩く。

「そう。でもようやく、出られてこうやって風をあびれて星も太陽も見れる。生きてると実感できる。これほど嬉しいことはないわ。そう思わない?」

ルーシャスが小さく頷きアイリスがふっと笑う。

「私がいた故郷とここの星は違うわね。デネブ、アルタイル。ベガ。それすらわからないわ」

「星の名前か?」

「そうよ。私の故郷の星の人たちがつけた名前。何千年も前からつけられた星の名前もあるのよ。それが今でもその名前で残っているし星も残っているのよ」

「歴史が継がれているんだな」

「ええ。ここでは星に名前はつけないの?」

「ないな」

「なら、眺めてるだけか」

ルーシャスが頷き、アイリスが軽く息を吐く。

「アイリスが暮らしていた国は危険な国だったのか?」

「そうね。治安は悪かったわ。でも、明るくていいところでもあるわよ。日が指す時間が長いから太陽の国とも呼ばれているわ」

「太陽の国?」

「そう。暑くて常にかんかん照り。でも、日がさすからこそ明るいし美味しいのはたくさん取れる。危険なのは夜の時間帯と一部の地域。わたしの家族が殺されたのは綺麗だった母を狙っての犯行。振られた腹いせ。本当嫌になるわ」

「それだけで家族が殺されたのか?」

「ええ。母に言い寄っていた男と男に雇われた連中だったから。母も苦しんだと思うし、わたしも苦しい。わたしの前で母はあいつらに犯されて連れ去られたから」

「殺されてはいないのか?」

「いいえ。殺されたわ。死体で見つかったって聞いたの。でもわたしもそれを最後に売られてここ」

風が吹きアイリスが軽く上を見上げた後ルーシャスを見る。

「私の母は遊牧民とイギリスという国の血が混ざったハーフなの。ちなみに父もブラジルと日本の血が混ざったハーフ。そしてその2人から生まれた私は4国の血が混ざった子供。紫の目は母の家系の血。少し肌が黒いのは父の家系の血よ」

「それぞれ国が混ざり合ってるんだな」

「ええ」

「俺は母の親族にあたるものが異界人と聞いた」

「どの国とかは?」

「アンドラ」

「小さな雪国だけど山が壮大で自然豊かだそうよ」

「行ったことあるのか?」

「いいえ。行った人に話を聞いただけ」

「そうか」

「ええ。その国に行こうと旅行の計画を立ててたのよね。私の国は雪は降らないし山もない街ばかり。海はあるけど見飽きたから。それで知人から聞いて勧められたし、母の家族が暮らす国も雪がふる山ばかりのところだったって話だから、一度雪国に行こうとして、残念というか。もう行けないわね。夢のまた夢」

アイリスが仕方ないような、寂しいような笑みを見せ上を見上げる。

「もう後には戻れない。寂しいだけね」

「…」

「…」

しばし沈黙となるとルーシャスが気まずくする。

「部屋に戻るけどルーシャスは?」

「まだもう少しいる」

「ええ。ならお先に。椅子はそのままでいいわ」

「ああ」

アイリスが中へと入ると部屋へと戻りベッドに体を落とす。

ー戻りたい。でももう、戻れない。お父さん。お母さん…。

アイリスが涙を浮かばせその目を閉じ涙をこぼし流す。そしてルーシャスもまた部屋へと戻るも龍が来ていた。

「監視か」

『んー、まあね。ランスロット王から言われてもいるから。アイリスはルーシャスと同じ寝れてないんだよね』

「ああ…」

ルーシャスがベッドに座り龍もまた座る。

『ルーシャス。ルーシャスはルーシャスがいた国に戻りたい?』

「いや…。戻ったところでもう何も無い。居場所もない。そして、あの国もまた飢えている。原因は取り除かれても国として存続するのは難しいと俺は思う」

『そうなの?』

ルーシャスが頷き龍がゆっくりと頷く。

「アイリスのところに。1人でいる方が寂しいはずだ」

『ルーシャスは?』

「俺は慣れている。アイリスは良い家族がいた。なら、俺以上に寂しく感じる」

『分かった。ならいくよ。それと明日陸奥がまた来るって』

「ああ」

龍が頷き窓から窓へと移動しアイリスの部屋へと入ると涙を流すアイリスに声をかけアイリスが龍を抱きしめ龍がよしよしとアイリスを撫でた。


ー雪か…。

ールー。

もこもこの毛皮を着た幼いルーシャスが上を見上げ同じ毛皮のコートを身につけ厚手のドレスを着た女を見上げる。

ー寒くない?

ー…寒い。

女がルーシャスを抱き上げ抱きしめるとルーシャスが嬉しくその体を預ける。

ー暖かい。心地いい。


アイリスと龍がじいと目の前の眠るルーシャスを見てお互い視線を交わすとこそこそ話す。

「寝ぼけてよね?」

『うん、そうみたい』

「よくぶつからずにこれたわね」

『んー』

「ん…」

お互い口を止めルーシャスが僅かに動くも再び寝息を立てる。

「…」

『…』

アイリスが腕をあげルーシャスに近づき龍と共に抱くと龍がその目を閉じほくほくとする。

『あったかい』

「そうね」

龍が頷き欠伸をしアイリスがふっと笑むとルーシャスの頭を撫でその手をルーシャスに乗せ目を閉じた。


ー朝。

ー今日どうする?

ーランカスターが戻るまで暇だものね。

ルーシャスが目を開けややぼうとしながら食事をするアイリス達を見るとアイリスが話す。

「おはよう。昨日よりよく寝れた?」

「……」

ルーシャスが右、左と見渡す。

『ルーシャス。寝ぼけてこの部屋に来てベッドに入ったんだよ』

「…俺が」

『うん』

「私が雪国の話をしたから夢に出てきたみたいね。雪とか、寒いとか、暖かいとか言ってたわよ。覚えてない?」

ルーシャスがダンマリとし頭を振る。

「そう。後ご飯あるから顔洗って食べたら?」

「…ああ」

ルーシャスがベッドから降りアイリスがタライの水とタオルを使っていいと話すとルーシャスが頷いた。


「お姉さん異界人か。目は気をつけろよ」

「お嬢さん目が珍しいから気をつけなあ」

「嬢ちゃん。ここのところ物騒だからあんまり出歩かない方がいいからな。特に夜だ。あと、目は布まいときな」

アイリスがルーシャスと共に歩きながら話す。

「みんな必ず目を言うわね」

「ああ。前はイーロンの逃亡兵に気をつけろと言われていた」

「ああ、戦争で逃げてきた人たちね」

「魔獣が来なくなったな」

「ああ。近隣の街だけになるが物が運べて助かるよ」

商人達が話しながら通り過ぎる。

「…」

「どれだけの範囲かしら?」

「わからない」

「まあそうよね」

ルーシャスが頷くと本屋を軽くみてすっと逸らす。

「何かあるかなあと思ったけど散策だけで終わりそうね」

「ここは観光という場所はない。人が住む街だけになる」

「そっか」

屈強な男達が通り過ぎるとアイリスが話す。

「すごい体」

「ギルドだ。Cランクのもの達になる。首から下げたタグの色で識別する」

「へえ。ギルドかあ。見学とかできそう?見るだけ」

「ああ。住人でも入れるし依頼も出来る」

「ええ。なら、ちょっといきましょう。あと、依頼はいいわ。どこにあるの?」

ルーシャスが案内しアイリスがうきうきとする。そしてギルドへと来ると受付嬢達が仕事をし男や女達が依頼が張られた広告板を見て話していた。

「人が多いわね」

「ギルドは常に人で賑わう」

「ええ」

「ねえ。あなた達異界人?」

ルーシャスが顔を逸らしアイリスが声をかけた魔導士の少女へと話す。

「私がそうよ。なに?」

「珍しいから話してみたくて。ギルドに入ってるの?」

「いいえ。私がここ初めてだから見たくてきたのよ。いつもこんな賑わいでいるの?」

「久しぶりにね。ずっと魔獣退治ばかりでここに来る人はそんなにいなかったの。本当最近魔獣がいなくなって暇になった人たちが今度は清掃とか薬草集めとかの依頼を受けにきているのよ。私も仲間と一緒に薬草集めにいくところ」

「リリア。いくぞ」

「ええ。それじゃ」

「ええ。またね」

リリアが仲間達の元へと行く。

「仲間は必ず作らないとダメなの?」

「いや。単独でもいい。あと、ここは派遣所のようなところで支部は各国の主要都市にある」

「本部は?」

「ガーランドにある。三大国家の一つでこの世界で1番の国土を持っているしギルドが始まった場所でもある」

「そうなのね。行ってみたいわ」

「…俺はあまり」

「どうして?」

ルーシャスが俯き、アイリスがなぜと軽く首を傾げる。

「そこの異界人の姉ちゃん」

屈強な男がアイリスの肩に腕を乗せる。

「なに?何かよう?」

「今何か用事ないなら付き合ってくれよ」

「あるから結構。行きましょう」

アイリスが男の腕を払いルーシャスの腕を掴むも男がアイリスの腕を掴み引き寄せる。

「ちょっと何よ」

「いいからこっちこいよ。そのひょろっこいガキより」

ルーシャスが男の腕を掴み床に投げ飛ばし押さえつけると男が頭に声を上げる。

「あーあーもう」

「こ、のっ」

男が冷ややかに見下ろすルーシャスを見て顔色を変える。

「てめっ。逃げてる、元王子だなっ。ルーシャスっ!」

周りがざわつくと数名がアイリスを含め囲む。

「…ちょっとちょっと何なの」

ルーシャスが周囲を見渡し広告の手配書を見る。そこに自分の顔と名前が張り出された紙があった。

「は、なしやが、れっ」

ーアイリス達目を閉じて。

アイリスとルーシャスが目を閉じる。そして眩い光があたり一面広がる。周りがその眩しさに腕や手で目をかばい光が消えたと同時にいなくなった2人がいた場所と残された男を見てすぐさま周囲を見た。


『はいこれ』

宿へと竜の力で転送された2人がおり、その竜がルーシャスへと紙を向けるとルーシャスが読む。

『手配書と捜索願の二つの張り出しだね』

「ああ」

「どっちか一つにしなさいよ」

『仕方ないさ。依頼人はどっちも違うんだから。ギルドはその通り処理するしかないわけ』

「何よそれ」

「…捜索は叔父上だ。手配は…」

ルーシャスが眉を寄せ名前を見る。

「ミゲルモリエンテス?何故接点がない伯爵が俺を手配したんだ」

「親族関係の人?」

「いや。関係ない。会ったことは2度3度ほどだ。ただ手配されている以上は追われの身だ」

「捜索は?」

「そちらは…人次第になる」

『なんだ突然!!おい!!おいまて!!』

「来たみたい」

『ランカスターはまだいないよ』

「役立たずね。ここの迷惑代でもう半分カット」

扉が乱暴に壊され先程の男含めたもの達が入ると宿主が怒鳴る。

「あんた達は勝手にはいんじゃねえ!!」

「手配書のやつがいるから黙ってろっ」

「手配?」

「元王子様だよな?ルーシャス元王子」

宿主が驚き、ルーシャスがフードを外す。

「あんた…」

男が宿主を後ろへ下がらせる。

「大人しくついてきな。さもなきゃ痛い目見るぜ」

「ちょっと。さっきあんたがギルドで痛い目見たでしょうが」

「うるせえ!!」

アイリスがため息をし、男が棍棒を出す。

「何で不出来な男はすぐに武器出すかしらね」

「んだとっ」

「私経験上。腕の立たない男はすぐに武器出して脅すって話。その筋肉の割には腕が」

アイリスが男の腹を見てあーと声を出す。

「ごめん。贅肉だったわね。お腹」

男が顔をかあと赤くさせアイリスへと向かうもルーシャスが腕を掴み捻りそのまま折るとぼきいと音が響く。男が叫び折れた腕を握りルーシャスが今度は男の腹へと蹴りを入れ蹴り飛ばすと男が泡を吹き痙攣する。

「確かに脂肪の塊だな」

男達が向かうも突如ぴたりと止まる。宿主が驚き姿を見せた龍を見る。

「龍」

『まったく。はい』

男達が真逆となり一斉に床に頭を打ちつけるとその場に崩れうめいていく。

『暫く動けないから行くよ』

「ああ」

「すみません。これ迷惑代」

アイリスが宿主の手に金貨を5枚乗せるも宿主が逆さにしアイリスの手に握らせる。アイリスが目を丸くし宿主が頭を振りルーシャスを見て会釈する。

「あなたのおかげでこの街が良くなりました。魔獣退治のせいでごろつきは増えてますから気をつけて下さい」

「俺は、何もしていない。何も出来ていない。なにも」

「ルーシャス」

アイリスがルーシャスにフードを被せ荷物を持ちその背を押し部屋を出て宿を出る。

『あの空き家に行こう』

「ええ」

『こっち』

龍が飛びアイリスがルーシャスを引き走りついて行った。


アイリス達が空き家へと回り道をして到着するとアイリスが息を切らし床に座る。

「あー、ほんと、体力落ちた…」

『仕方ないよ。閉じ込められてたから。少しずつ取り戻すしかないね』

「そうね」

龍が頷きアイリスが俯くルーシャスを見て立ち上がる。

「ルーシャス」

「…俺と、いると」

「はいはいはいはい」

アイリスがルーシャスを抱きしめ背を叩く。

「宿主さんに感謝よ」

「…」

「あと、感謝されてるなら胸張りなさい」

アイリスがルーシャスから離れルーシャスの胸を軽く叩く。

「自信なくしちゃダメよ。なくしたらなにも出来なくなるわ」

アイリスが離れ閉められた窓の隙間から外を見る。

『あちこち彷徨き始めてるから』

「ならここもわからんじゃない?」

『私が人避けの結界を張ったから上級魔導士とかじゃないと分からない。ギルドにいた連中を見た感じいなかったから問題ないよ』

「分かった。ならランカスターが来るまではここね」

『うん』

アイリスが床に座りはあと息を吐くと立ちっぱなしのルーシャスを見てやれやれとする。

「ルーシャス。こっち来て」

ルーシャスがアイリスの元へと近づくとアイリスがルーシャスの腕を掴み引き寄せ今度は後ろへと向かせ座らせる。

「竜。ナイフある?」

『作ればあるけど』

「作れるならその通りに作って出してもらっていいかしら?」

『うん』

「ええ。ルーシャス。髪切るよ」

「髪を、なぜ?」

「王室の連中ってみんな髪長いのよ」

『あー』

ルーシャスが黙り確かにと頷く。

「あいつら顔の前に髪を見た感じがするわ。だから切るわよ」

「ああ。分かった。切っていい」

「ええ」

龍がアイリスの指示通りにほいさとカミソリに近いナイフを渡すとアイリスがフードを脱がせタオルを首元に巻き髪を漉き整えながら切り落とした。


ー夕方。

「いい感じね」

『おー』

スポーツ刈りに近い髪型となったルーシャスをアイリスは確認し龍はウキウキしながら見ていた。

『ずいぶん印象が変わったねー』

「髪だけでも思いっきり変わるもの。あとは目かしら」

『うん。王の血の影響で代わってるだけだからー』

龍がルーシャスの両目に手をあて塞ぐ。そして離すとルーシャスが元の目の色へと変わる。

「青になったわ」

『ルーシャスは元は青色の目でね。まあでも王の力は強いから暫くかな』

「暫くでもいいわ。ルーシャス。試しにそれでまた歩いて様子見てきて」

「…いや、流石に」

『私がいくから。見つかったときは逃げたらいいよ』

ルーシャスがしどろもどろとするも行こうと責められると分かったとうなずく。そして姿を隠した龍と共に街を歩く。そこにはルーシャスを探すギルド達の姿がちらほらとあり龍がこそっと話す。

『金額まで見てなかったから見てみよう』

「手配書の前でか…それこそ見つかる」

『平気』

ルーシャスが汗を滲ませつつも指示通りに向かった。


ーうまくいけたかしら。遅いわね。

夜になりアイリスが不安になりつつ1人パンを食べていた。

ーはあ。あいつらが来なかったら暖かいご飯食べられたのに。あそこのスープ美味しかったのになあ。

アイリスがしょんぼりとするもちりっと音が響く。そして扉が開く。

「かえっ」

派手な服の女が姿を見せる。

「誰?」

「人除けの結界張ってると思ったら異界人だったのね」

女が楽しく笑みを浮かべアイリスが汗を滲ませる。

「あなた1人?」

「じゃないわ。外に出てる」

「でも今はあなた1人?」

「そうね」

女が姿を消すとアイリスがすぐに目元へと手をやった途端ナイフの先端が触れかける。アイリスが女の手を掴み防ぎ女が笑う。

「よく分かったわねっ。いわれたの?」

「離れなさいよ!」

「いやよ。その目を私に頂戴」

「誰が!」

アイリスが蹴りを向けると女が後ろに下がりよける。

「どうしてそんなに目を欲しがるの?」

「眷属を作るためよ。目は材料。特別に見せてあげる」

女が大量の目玉を浮かせるとアイリスがゾッとし女が不敵に笑む。

「召喚の儀式に必要なの。私のためにその綺麗な紫の目。あと、私よりいい女って嫌いなの。だから心臓も取って有効活用してあげる」

「それ即ち殺すってことでしょ?」

「当たり」

女が再びナイフを持ちアイリスへと振る。アイリスが避ける。

ーあいつ楽しんでるの?術を使わない。

「ちょっと避けないでよっ。もうっ。寝た時にやればよかったわっ」

ー使えないのか。

女が突然飛び壁にぶつかり唸り声をあげる。アイリスが戻ってきたルーシャスと睨みつける龍の元へと走る。

「あいつ。目を奪う時術使っちゃいけないみたい」

『千里眼を得るための儀式だ』

「千里眼?」

「当たり。龍が一緒にいるなんて驚いたわ。それかもどき?」

『だれがもどきだ!』

龍が怒り女が鼻を鳴らす。

「ドロテアだな。だが何故その姿だ?もう60は超えてるはずだ」

ルーシャスの目の前にナイフが飛ぶもルーシャスが避け身構える。

「配慮のない男は嫌いよ。でも貴方。可愛い顔ね」

ドロテアが興奮した笑みを浮かべる。

「貴方は捕まえてあげる。そして私のお人形の一つとして可愛がってあげるわ」

「性格が顔に出てるわよ。お婆さん」

ドロテアがアイリスを睨みつけナイフを浮かせる。

「心臓だけもらうわ!!」

ナイフが一目散に心臓へと向かい飛ぶも途中で消え去る。そしてドロテアの前に不敵に笑うランカスターが姿を見せる。

「は?」

ドロテアの顔が曲がり壁に激突してすぐさまアイリスがランカスターの背中を思いっきり蹴るとランカスターが怒鳴る。

「けんな!」

「しるか!大怪我するところだったじゃないの!」

「時止めてナイフ止めさせただろうが!」

「ほんの1秒くらいよ!」

2人が喚き、龍が話す。

『ちょっと。まだ』

「私の顔…」

龍がドロテアを振り向きドロテアが腫れ上がった顔に触れながら鏡を見ていたがランカスターを殺気立ち睨みつけると姿を変える。

『私の顔をよくも!ランカスタああ!!』

ドロテアが変貌し下半身が蛇で体が鱗に包まれた姿へと変わる。

「やっぱりキメラ化してたな」

「ですが今までのキメラよりも小さいです」

ドロテアが笑う。

『あいつらは失敗作よっ。そしてわたあっ』

ドロテアが痺れ今度は燃え上がる。

「は?」

『あーはいはい』

ランカスターが龍を振り向くと龍がアイリスを示す。

『アイリスの魔を払うギフトの効果だ。人の姿でいればよかったけど、魔獣に近い状態になったから効いてるんだよ。後至近距離だし』

『な、あっ』

ドロテアがひいいと声を上げ一目散に逃げようとするもののランカスターが放った鎖で縛られもがき苦しむ。

「よかったなドロテア」

ドロテアがランカスターを振り向きランカスターがニコニコする。

「失敗作で」

『ら、らんがあぁぁぁ』

ドロテアがチリとなり消える。

「馬鹿な奴め」

「ん」

「あ?」

ランカスターが手を向けたアイリスを振り向く。

「金貨8枚戻しなさいよ。私がやったも同じだしあんたの役目は護衛もありでしょうが」

ランカスターが乱暴に金貨をアイリスの手の上に叩き乗せる。

「痛いじゃないの!」

アイリスが声を上げランカスターの頭を叩き袋に入れる。

「このくそおんなあ」

「ふんっ」

ぼとぼとと目玉が現れ落ちていくとアイリスが顔を歪め、龍が話す。

『死んだから保管してあった目玉が現れたんだ』

「…そう。あー、えーと、んんんんん」

目玉が突如動き始め一斉にあらゆる方向を見てルーシャス、アイリス、ランカスターを見て止まった。


ランカスターが走り目玉達がランカスターを追う。

「あーあー」

「どうにかしろおお!!!」

『ドロテアの意識が乗り移ったみたいだね』

「なら余程のことをしたのかしらあいつ」

『ランカスター!暫くしたらなくなるから頑張れー!!!届いたかな?』

「届いた届いた」

「…助けなくて」

「平気平気。あと休みましょう」

アイリスが中へと入りルーシャスが気まずくついていき入った。


翌朝ー。

ランカスターが川に入り苛立ちながら汗を流す。そのそばにルーシャスと荷物整理をするアイリスがいた。

「あーくそドロテア。最後の最後までしつこい」

「やばい女の執念はとことんやばいわよ。あと、背中の傷すごいわね」

「はっ。勝手に見るな」

ランカスターが川に肩まで入りむすっとする。

「見せてんのはあんた」

「はっ」

「いたあっ」

アイリスが振り向くと少年と少女達がシスターを連れてくる。

「ルー!ほらやっぱり」

ルーシャスが顔を背けると老シスターが話す。

「そうですね。ルー。お久しぶりです。まあ随分と男らしくなって」

「…」

老シスターがふっと笑む。

「ルー」

ルーシャスが振り向くと少年と少女達とがそばへと来る。

「ルー久しぶり」

「髪の色どうしたの?」

「…」

「ルー。ミオとユナとあった?」

ルーシャスがどきりとしランカスターが岸に上がりタオルを手にし体を拭く。

「街のギルドの端くれどもは?」

「ええ。宿の方に怪我を負わせたそうよ。だから捕まったわ。まだ階級も低い段階だからこのまま剥奪でしょうね。ランカスター。あなたあの目玉何なの?」

「あ、私も見た」

「あれなに?」

「ドロテアの最後の悪あがきだ。目玉泥棒の親分のな」

「そうなの?」

「ならもう目玉は取られないかな?」

「ああ。おってきた目玉は焼却した」

「え?」

「分かりました。ギルドに私から話しておくわ。あと、貴方が気になる方は3人ね」

「ああ。そうだ」

「気になる?」

「こっち来て遊ばない?」

少年少女達がアイリスを振り向くとアイリスが葉っぱをとり口に当て吹いてみせる。子供達が興味深く見ていき、アイリスが他にもあるからと子供達を連れその場を離れる。1人の若いシスターが頭を下げ離れる。そして老シスター、ランカスター、ルーシャス、龍が残った。

「あの子には感謝しないといけないわね。ルー。ルーシャス。貴方その髪型いいわね。似合ってるわよ」

老シスターが楽しく告げるとルーシャスが照れつつ軽く頭を下げランカスターが着替えながら話す。

「たく。何が似合ってるだ」

「貴方は変わらないわねランカスター」

「どうもだ」

『私が聞いた話では優しい勇者として言われてたけど?』

「表向きはね。この子は性格悪いわよ。私はこの子が子供の頃。まだこの子の村やこの子の家族がいた頃からの知り合いだから」

『そうなの?』

「ええ。そして、私はあの時殺されなかった運のいい1人よ。重い病にかかってアストレイの教会本部で治療を受けたからね」

『へえ』

「それで今はルーズヴェルトの辺境の街か」

「そうよ」

「シスターリア。ラドクリフは、どこに行ったのですか…」

「ええ。彼は亡くなったの」

リアがはあと息を吐く。

「殺されたのよ。流れ者の手によって」

「流れ者ということはギルド所属の奴に?」

「そう。手配されて殺されたの」

ルーシャスが驚愕し、リアが表情を曇らせる。

「ただ、それが実際本当なのか。私たちに確かめることが出来ないの。手配についてはおそらくルーズヴェルトのものだと思うわ。その流れ者は元国王の名を語って殺したと聞いたわ」

ルーシャスが拳を握り、龍が話す。

『まあ納得とも言える話。ルーシャスの親しき連中は捕まったりして拷問受けてたりしてたからね。まあ今はそうじゃないけど』

「…なら、いいのだけど。ただ、彼については流れ者に殺されたわ。その流れ者は首を持って出て行ったの。体は教会の裏手の墓地に埋葬した。その後、城の連中が家のものを全て持って行ってしまったわ。家族に渡すと話したけど、遺体については何も聞かなかったわ。普通は聞くのが当たり前だけどね」

リアがはあとため息をする。

「ルーズヴェルトは今、アストレイの監視下にあると聞いたからそこで見つかると思うわ。あと、彼の遺体は墓地にあるからもし来るなら来てもいいわ」

「…」

『まあそこはおいおいね。それよりその流れものの特徴は?気にかけとかないとさ』

「ええ。日に焼けた肌で左肩に大きな傷があったわ。それで」

「金髪に茶色の目。腰に鎖を3本下げたゴーラム」

リアがランカスターを振り向き頷く。

「そう。知ってるの?」

「ああ。そいつは確か尊だったか。あいつがギルドから外した。追放させたぞ。ギルドとは関係ない賞金稼ぎをしていた。それも殺しでだ」

『なら尊恨んだりしてないかな?』

「しねえよ。まあ多分になるがな」

『うん』

「ギルドから外されたとなると手配書が見られなくなりますね」

「ああ。入ってたから見れたからな。だから今は依頼でやってるかもしれない」

「はい」

「もしそうなら、ますます気をつけなさい。ランカスターが特にね」

ランカスターが鼻を鳴らしリアがやれやれとする。

「ルー。もし貴方が困ったことがあれば私たちのところにいつでも来ていいわ。遠慮はしないで必ず来なさい。いいわね?」

「…」

リアが進みルーシャスの手を握る。

「貴方のことを心配しているわ。いいわね?」

ルーシャスが頷きリアがふっと笑み頷き答えた。


ブッと布が切れると少女があっと声を上げ小枝に引っかかり破れたスカートを握る。

「スカートが」

「破れたの?」

「うん…」

「こっちに来て」

少女がアイリスを振り向き近づくとアイリスが荷物から針と糸を出し破れたスカートを縫う。

「縫えるんですか?」

「ええ。貴方はぬえないの?」

「簡単なものでしたら…」

「ボタンぬいとか、刺繍とか」

「それ上の人だけしかしないよ」

「うん。貴族の人だけ」

アイリスが目を丸くする。

「本当?」

「うん」

「えー、そうなの。私のいた場所では誰でもしてたわよ。なんだったら私の母の故郷では物覚えが始まる頃から刺繍をしていたわ」

「そうなの?」

「ええ。あと、母の故郷では刺繍で花嫁衣装を自分で作ってたそうなのよ。それから絨毯や袋。とにかく幼い頃から嫁いでも。お年寄りになっても女性はみんな刺繍をして服とかを作っていたそうよ」

「どんなの?」

「花とか鳥とか。雲もよ」

「へえ」

「見てみたい」

「なら待って。ええと」

アイリスが龍から作ってもらった刺繍糸の束を出すとスカートの破れた部分に花の刺繍を施す。

「わあ」

「可愛いですしとても早いですね」

「子供の頃からしてたし商売もしてたから」

アイリスが赤い花の模様を作り糸を切る。

「わあ」

少女が明るく声を上げる。

「可愛いお花。ありがとう」

「どういたしまして」

「うん」

『アイリスー』

龍がその場にくる。

『話終わったよ』

「ええ。後どうする?」

『この辺りで野営して決めよう』

「ええ」

「教会に来れば?」

「気持ちだけでいいわ。内緒の話し合いもしなきゃだから」

『そうそう』

少年がふうんと声を出すもリア達が戻るとリア達を振り向き共にその場を離れ去った。


ーお前の肌は滑らかで気持ちがいい。ここも、濡れてきたな。

ルーシャスが汗を滲ませ唸る。そこにアイリスが前から抱きしめ背を叩くとルーカスが徐々に息を整え始めると緩やかな寝息を立てる。

ー性被害か。私も言えたことはないけど、この子の場合はよほどだったのね。

アイリスが起き上がりルーシャスから離れ寝袋の中へと入る。

ー……。

アイリスが起き上がりはあと大きく息を吐き出す。

ー寝れない……。

がさがさと小さな音が響くとルーシャスが目をすぐさま開けナイフを握り薮へと飛ばす。アイリスが驚くもルーシャスがややふらふらとする。

「ちょっと」

「その体調で起きるな」

ルーシャスが心臓を跳ねさせ、アイリスが薮から姿を見せた尊、シンを見る。

「待ってろ」

「この子の知り合い?」

「はい。少しばかりの同級生です。この世界の学校で」

「学校?」

「そうです」

「お前らか」

ランカスターが姿を見せると尊が話す。

「はい。この辺りでしか取れない薬草をシンさんととりに来たんですよ。ついでシンさんのとこの親族の村によって来たんです」

「ああ」

ルーシャスが黙り込み尊が前に座る。

「…」

「ここに来たのは偶然だからな。ついでに見る」

「…はい」

「ああ。なら上を脱いでくれ。心臓もだ」

「なに?心臓が悪いの?」

「…」

「はい」

ルーシャスが諦めて服を脱ぎ上半身裸となると尊が胸に手を当て淡い光を当てる。

「シン。お前確か」

ランカスターが面白くしシンを指差す。

「裏切られて捕まってたんだろ?」

「うるさい黙れ。相変わらずのかすめ」

「はっ」

「こっちも知り合い同士なのね」

「そうみたいです。あの地下室に閉じ込められてた人でしょ?名前は?」

「アイリスよ。ブラジル出身」

「ブラジルの人はここでは初めてですね。心臓は問題ないな。あとこれを飲んでおけ」

ルーシャスへと丸薬を向ける。

「深い眠りにつく。三日に一度は飲んでかならず体を休めろ。そうでないと心臓にも負担がかかりすぎる」

「…」

ルーシャスが僅かに口籠るもアイリスが話す。

「飲んでおきなさい。体が資本」

「資本…」

「1番大事と言うことだ」

ルーシャスがやや考えるも手を伸ばし丸薬を受け取り口に含め飲み込むと尊から水を受け取り飲む。

「そちらも眠れないのではないですか?」

シンがアイリスへと話すとアイリスが苦笑する。

「まあちょっとね」

「症状聞かせて貰えますか?調合しますから」

「ええと…」

「目の下のクマ目立ちますよ」

「…あー」

「好きにしろ好きに」

「ならそうするわ」

ランカスターが鼻を鳴らしアイリスが尊に告げていく途中、ルーシャスがうつらうつらとし始める。アイリスがそれを見て自分へと傾けルーシャスが諦めアイリスの腕の中で気持ちよく眠る。

「軽い不眠症と時差ボケの重い奴ですね」

「日中夜に体が追いついてないってこと?」

「ええ。しばらく普段通りの食事を同じ時間に取られてください。それから日中は運動されてください。後は睡眠薬を飲んで行きましょう。勿論調整しながらです」

「ええ」

「ランカスター。ドロテアが死んだと聞いた」

「流石早いな。エルフの情報は」

アイリスがランカスター達を振り向く。

「残り2人だろう?」

「ああ」

「ちょっと。この子に関連した2人もよ。元ギルドの賞金稼ぎと賞金つけた貴族」

ランカスターが舌打ちし尊が話す。

「となると、ゴーラムか。俺が報告して除籍した奴だ」

「じゃあ貴方が尊?」

「ええ」

「日本人?」

「はい」

「ええ。私の父の親族が日系人なの。母はイギリスとアラブのベドウィンってわかる?」

「分かりませんね。アラブは知ってます」

「そう。遊牧民のことよ」

「へえ」

「おしゃべりしてないで薬飲んでとっとと寝ろや」

「はいはいそうするわよ。なら見張りよろしく」

ランカスターが鼻を鳴らしアイリスが尊から説明を聞き薬を含み飲んだ。

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