古代国アルスマグナ4
ー久しぶりの。
「温かい食事」
アイリスが感動しながら温かいスープを飲んでいく。そこにエステルがおり、エステルが話す。
「あなたはどうしてあちらに?」
「ええ。売られたの。売られてこの世界に来てあの変態王に買われて犯された。そして食事は冷たいスープに固いパン。でもようやく、あの王に鉄槌が落ちる。嬉しいことはないわ。あとは私を人手不足のたしにとうった連中ね。私の父方の親族」
「どうして」
「金のため」
卵が淡く光るとアイリスが卵を抱き上げ抱きしめる。
「龍の卵」
「ええ。とても綺麗よね」
エステルが頷き水晶色の卵を見る。
「海のよう」
「ええ。ところであなた幾つ?」
「20」
「私は30。国は?」
「イギリスよ」
「ブラジルよ」
「ブラジル。サンバを見たことがあるわ。とても情熱的で私も熱くなったの」
「ふふ。ありがとう。そうよね。イギリスは訪れたことはないけど友人がイギリス人のパティシエをしていてよくイギリスのお菓子を食べていたわ。お気に入りはアップルクランブルね」
「私もそれ好き」
エステルが爛々としながら話、アイリスも楽しく話して行った。
ルーシャスの首元へとランスロットが歯を立て噛むと流れる血を飲む。ルーシャスがわずかに震えふうと息を吐き出す。ランスロットが口を外し自らの手を噛む。ルーシャスが口から僅かに血を出すも舌で舐める。
ー効いてくれ。
ルーシャスが冷や汗を流し心臓を大きく跳ねさせる。
ーまだ、耐えてくれ。
視界が僅かに揺らぎ始める。
「お前は面白い」
ランスロットがルーシャスの髪を掴み後ろへと引きのけぞらせる。ルーシャスが顔を歪めランスロットが口元から血を滴らせるとルーシャスへと口付けをする。
ー自ら毒を飲んで私に飲ませるか。ふふ。ルーシャスがランスロットを掴み離そうと抵抗する。
ーっっ。
ルーシャスが口に含んだ血を苦しく飲みこむ。そして体を一度はね、また跳ねる。ランスロットが離れくすりと笑う。
「私の血だ。いい味だろう?」
ルーシャスが顔を歪め胸を掴み息を荒げる。そしてその目を赤く光らせ、青く光らせると最後にランスロットと同じ金の瞳に変わる。
「良かったな。一度死にまた蘇って今度は龍の民で私の眷属だ」
「けん、うっ」
ルーシャスが頭を抱え呻く。幼い頃、学園生活や城での暮らしが次々と頭の中に現れる。ランスロットが瞳を光らせルーシャスが苦しく顔を歪めた。
ーあの。
城の外でアストレイ軍達の元サイモンがパンを食べる樹と陸奥、尊の前で親指を首に当て右から左に動かす。
「これどう言う意味でしょうか?」
「俺たちの世界の表現でとどめさせ」
「だなー」
サイモンが苦笑し、尊が話す。
「アルスランさんは意味知ってたな」
「あ、やっぱり?あれ笑い堪えてたよな」
「ああ」
『ダリスもスッキリしたんじゃない?今までのツケが払えたから』
「陸奥。大きなツケがまだ残ってるだろ」
『ああ…。ランスロットかあ』
「そうだ」
「俺の場合はこき使われまくったからな…。早いとかあの裸体の王様にこき使われないよう対策取らないとな。ただその前に」
「くすり売りか?」
「それもだが保護してきた人達のとこ行かないといけないからな。じゃあな」
尊がその場を離れ去る。
「俺達はそこら探しするか」
『うん』
「あ、ええと、何かされに行かれるのですか?」
「はい」
『サイモンはあれでしょ?ナガハラもいないから暇』
「ははは…、まあ」
「じゃあ怪しいとこを陸奥と一緒にあちこち見つけたんで見に行きましょう」
『うん。その中には教会もあるからさ』
「ああ。先に行くか」
『だね』
サイモンが分かりましたと返し2人に続き大聖堂へと向かった。
ミオが枕を抱きしめ気持ちよく眠る。そのミオの頭にアルスランが触れその手を引くと静かに部屋を出る。そして部屋を出てすぐにダンガンが声を顰め話すとアルスランが頷き足早に向かった。
ー樹は無理。僕とサイモンで行くよ。
外で待つ樹の元へとアルスラン達が来ると樹が話す。
「多数の死体があったらしいです」
「分かった」
アルスランが入ると隠し扉から奥へと進み作られた地下空間へと出る。そこは異臭が漂い男女問わず皮膚が剥がされ死んでおり中心には血に染まった魔法陣が残されていた。
「悪魔の儀式か」
『きたきた』
陸奥がサイモンと共に姿を見せる。
『先に奏に式を見せたら式としては成り立たない悪魔の術式。貴族のお遊びなんだってさ』
「貴族の?」
『そう。奏曰く、何箇所か同じところがあって場所は教会、貴族の家、城の一角とか。とにかく貴族達が集まりやすいところにあって、ここもまた似たようなとこらしいよ。そして死んでいるのは雇われたメイドや従者とかだってさ』
「ああ」
「酷いことをするものだ」
「すぐに調べろ」
ダンガンがはいと返事を返し、陸奥が話す。
『死体の記憶から関わった連中教えとくね。あと、終わったらまたサイモンと樹で見つけていくからよろしく』
「分かった。頼む」
陸奥がうんと頷く。外で待つ樹が欠伸をする。
「昨日も徹夜だったからな…」
樹が干し肉をだし眠気覚ましにかじる。
「ガムとか食いてえ…。尊に話そうかな」
ざーと音が響くと樹が横を向きユーリが姿を見せると樹を抱き上へと飛び上がる。アストレイの軍人達が驚愕し、樹が干し肉を落とす。
「なんだっ!?」
陸奥がはっとしすぐに上へと上がり外へと出ると大風が起きる。そして龍の手に掴まれた樹と龍に乗るユーリがいた。
『樹いい!!!待ってよサラサ!!!』
陸奥が追いかけるとサラサが尻尾をぶんぶんと振るい陸奥に当て落とす。
「陸奥!!!おいこら弱いものいじめするな!!!」
『……小さいのが悪い』
「体躯を考えろ!!それでなんで俺があ!!」
突風が吹き荒れる中雲を突き抜ける。サイモンに抱かれた陸奥が目を回しいつきいと弱々しく声を出しぱたりと手を落とした。
樹がうんざりとしながらユラの見張る中座っていた。そこはアルスマグナの建物の一つで樹が話す。
「なんでこうなるなんで…」
「黙りなさい」
「だったら理由を教えろ」
「王の命令よ」
「はあ?だったら尊だろうが。間違いだろ?」
「あなたであってるわよ」
樹が嫌な顔をしユラがその顔を見てムッとする。
「その顔は何よ」
「あのな。この状況でだ。選ばれて嬉しいってのはないからな。人攫いが名誉あることな訳あるか」
「さ、らってる訳じゃないわ」
「今言葉つまったぞ」
「違う」
「いいやつまった」
「違うっ」
「はあ。とにかく勘弁してくれ…、俺はあいつのようになんでも出来るとかじゃ無いらな。本当に、おたくらの王様はなんて王様だよ…。まあ、龍の姿の時から性格悪かったからな。その割には食欲はあって人のを取って食ってやがったし、こそこそ勝手に盗み食いもして」
樹がぞわりとし鳥肌を立て、ランスロットが樹の首筋を撫でる。
「相変わらずお前は言いたいことを言うな」
「こーやって面白がって突然出てくるから嫌なんだよ会ったときから!なんで俺だよ俺っ。尊にしろ尊にっ」
「舐めた口を」
「いいいい。構わん」
ランスロットが手を引きおかしく笑う。
「さて。早速きてもらおうか?」
「…どこに」
「部屋にだ」
樹が呆れ、ランスロットがその呆れ顔を見てふすっと笑った。
椅子に座りぼうとするルーシャスの後ろに樹が呆れたっていた。そしてランスロットが眠る瑠奈の頭を膝に乗せ見ており樹が話す。
「こいつに何したんだ?」
「眷属にした。気に入ってるからな。体ごと全部」
「…俺は男は嫌だからな」
「私もお前を抱こうとは思わない」
「なら良かったよそれだけ聞けて。くそ」
樹が鋏を手にしルーシャスの腰の近くまであった長い髪を肩あたりから思いっきり切り落とす。そして確認しながら細かなところを切って行った。
「髪切るために俺攫われたってどうよ…」
樹が案内された部屋にエステルがおり、エステルが複雑そうにする。
「えと…髪は、誰の?」
「ルーシャス。あいつのお気にになった奴。はああ」
ノックが響き欠伸をし卵を抱きながらアイリスが来る。
「ねむ。ん?誰そのアジア人」
「ええ。さっき連れてこられたの。日本人の樹」
「どーも」
「日本人」
アイリスが樹の前に座りまじまじと見る。
「なんだ?」
「あなたに似た人を奴隷小屋で見たわ」
「…俺に?」
「ええ。男の子で名前は蓮」
樹が驚く。
「蓮?まじ?そいつ俺の生き別れの双子の弟」
「え?」
「そうなの?」
「ああ。俺は両親の虐待後に売られてさ。そして蓮は母親の親族に子供が産めないからってことで金で売られたんだよ。7歳の時に。ここの奴隷小屋か?」
「ええ」
樹が複雑そうに両腕を組む。
「まじかあ。あいつも売られたか?わからないな…。横塚さんの話じゃその親族も海外に出てから足取りが掴めないって話だったからなあ」
「そう」
「ああ、まあ、一緒で名前も蓮なら本人で間違いなさそうだな。あー、どーするか」
樹が考えるがため息をする。
「と言ってもここだからなあ。俺は尊やタイシ達と違ってあそこまで力無いしな。ていうか用が済んだらさっさと返せってんだあの裸体の王様は」
「なに?」
「私と一緒で攫われたの。その、アイリスは…どうなるかしら?」
「私の場合は龍の育てでしょ?なら自然とここじゃない?」
「…えと、まあ」
「嫌いな奴と嫌いな場所から出してやった奴らだからな。そう考えとけばいい」
「ええ」
「ああ。そして俺は髪切らせるためだけに連れ攫われたんだよこれが」
「なに?美容師?」
「あー、子供の頃なろうと憧れてこの世界に来て腕磨きしてんだ」
アイリスが嬉々とし自分の髪を触る。
「じゃあせっかくだから切ってよ。思いっきりバッサリいいわ」
「ああ」
「…」
エステルが毛先に触れると樹がやれやれとし一緒に切ると伝え空間から道具を出しテーブルに置いた。
ーなんで私が…。
ユラがぶつくさいいながら食事を持ち樹のいる部屋へと来るとノックし中へと入る。
「食事…」
目の前でエステルの髪を樹が切っており、隣には髪を肩まで切ったアイリスがいた。
「何してるの?」
「髪切り」
「ええ。おかげでさっぱりしたわ。あなたも切ってもらったら?」
「わ、私は」
「別に俺はいいけど」
ユラがやや揺らぐ。
ーき、気にはなってるけど、でも、でもっ。
ユラがぎこちなくなり、樹が終了と告げるとエステルが鏡を見て嬉々とし笑顔を見せた。
ルーシャスの髪や体にランスロットが丁寧にアロマオイルを塗る。
「ふふ。あれがどうなるか楽しみだ」
「あれ?とはなんですか?」
「今から会いにいくものがあれだ」
後ろにいたランスロットを振り向いたルーシャスが頷き再び前を見ると小さなまめの出来た自らの手を見る。
ーみ、お。
「ミオ……」
「会いたいか?」
ルーシャスが頷きランスロットが櫛を出し短くなったルーシャスの髪をすく。
「ああ。だがまだ待て。必ず会わせる」
ルーシャスが頷きランスロットがふっと笑い櫛を置いた。
「これでいいだろ?」
髪を整え切ってもらったサラサが満足しながら頷き椅子から降りると樹が呆れつつ話す。
「で?俺いつ戻れる訳?解放」
「…王の命令」
「なら直接言ってくるわ」
「いやっ、ちょっと待ってっ」
サラサが慌てて外へと出た樹の後を追うが目の前で樹が消えた。樹が汗を滲ませながら暗い拷問部屋の中におり右の拷問具、左、正面と所狭しとある拷問がを見渡したが、唸るような声が響くと肩をビクッと跳ねさせる。
「まじ、勘弁してくれよ…。俺こう言うのいっひいっ!?」
ランスロットが後ろから樹の首を触れるとすぐさま離れおかしく笑うランスロットを見て苛立ち服を掴み揺さぶる。
「こっの裸体の王様がっ。てっめふざけんなこらっ。うっ!?」
後ろからユーリが掴み抑える。そしてその場にロレンシオがおりランスロットがおかしく話す。
「王。あまりおふざけにはならないでください」
「ふふ」
「つっこんでいいか?まず俺はどうあれあんたらの王の胸ぐら掴んだという失礼働いてんのにそこ突っ込まねえのか?」
ロレンシオが無視をし、ランスロットがおかしく話す。
「ロレンシオはお前を知ってるからな。後この声の正体を見せる」
「いや見せなくていいから部屋戻せ」
「遠慮するな」
「したいわっ。碌なことねえっ。おいこらっ。お前力強すぎだろっ」
樹が持ち上げられながらジタバタする。そして扉が開かれると目の前に裸のルーシャスが顔を赤らめ息を荒げながら、額に罪人の印をつけた裸体の老人の上に寝そべっていた。
「おい、おい趣味悪すぎだろっ。後俺はああなるのやだからな!!」
樹が必死に声を上げ、ランスロットが話す。
「なるか?」
「嫌だってさっき」
「樹」
樹が固まりぎこちなく反対方向を見る。そこに樹に似た青年がいた。
「れ、蓮…」
「樹。すごくひさ」
ユーリが驚き腕から抜けた樹を捕まえようと手を伸ばすが樹がその手を払う。そしてすぐに扉を拳を光らせ無理やり破壊しこじ開ける。
「樹!なんで逃げるの!!」
「ははっ」
「こ、ぞう、とも。余を、よくも…」
ランスロットがおかしく笑みを浮かべ蓮が追いかけようとしたがランスロットが肩を掴み止める。
「どうせ逃げられはしない。お前はこの老人の相手を続けておけ」
「…わかりました。仕方ないな…」
「まだ、殺すなよ」
蓮が口を尖らせ頷きランスロットがああと返事を返した。
「ちくしょうやっぱり嫌がった!!」
樹が走り外へと出ると空の結界、周りの機械人形たちを見る。
「クソマジ最悪すぎだろって…。あー、どこに…」
ーアイリスのとこ、くる?
樹が踵を返し走る。そしてエステルとカテリーナがパン生地をこね、アイリスが卵を抱きながらルクレイシアと話していたがそこに乱暴に扉が開き樹が入り扉を閉める。アイリス達とが驚き、ルクレイシアが話す。
「ノックくらいしたら?」
「わ、るい。あと、くそっ。蓮がいやがったっ」
「蓮?」
「樹の双子の兄弟だそうよ。私と同じ奴隷小屋にいたの」
「ふうん。で?その蓮がなに?」
「性格が最悪すぎんだよあいつは。とにかく、最悪だあぁ」
樹が滑り尻餅をつく。
「だからどう」
壁が切り倒されると返り血がついた蓮がにこやかに入る。
「樹みっけ」
「いっ」
「殺さない程度って言われたけどちょっと刻んだら気絶してさ」
エステルが青ざめ、蓮がアイリスを見る。
「あれ?奴隷小屋にいたよね?」
「いたわね。あと、双子なのにどうしてそんなに性格違う訳?」
樹がそろそろと逃げ、蓮が話す。
「さあ。でも僕は弟の樹を助けるためにしてることなんだよ」
「その弟は怖がってるわよ。非常に」
「そんなことないよね?あれ?」
樹がいなくなっており蓮が顔を顰める。
「また逃げた。樹。ようやく会えたんだから話とかしようよー」
「礼儀がなってないわね。そこらの子供よりタチ悪いわ」
蓮がルクレイシアへと視線を向けた途端ルクレイシアの目の前に斧が回転し飛ぶ。ルクレイシアが斧を結界で防ぎ、エステルがひっと声を上げる。
「あー、ごめんごめん。手が滑った」
ルクレイシアが冷めた目で見ていき、蓮がニコニコしながら頭をかくもはっとし通路を見る。
「そうだ。樹っ。待ってよ!」
蓮がその場から走りいなくなる。
「こ、わかった…」
「あんなのだったとわね。あと、あの様子だと幼い頃からで酷くなってるわけね」
「そうみたい」
機械人形達が来るとルクレイシアが話す。
「壁の修繕をお願い」
『はい』
「ええ。あと出てきたら?」
「え?」
術を使い壁に偽装し隠れた樹が姿を見せると汗を滲ませ膝をつけ、両手をつけ前屈みになる。
「で?あの性格何?」
「ああ…。ガキの頃からああなんだ。俺をいじめた奴に対する鉄槌が酷い。1番やばかったのはお偉いさんのとこのガキが俺を馬鹿にして殴ってきて。そうしたらそいつの家の犬盗んで除草剤入りの餌食わせて殺したし、今度はそのガキを呼び出して催眠薬飲ませてそのガキの母親の車に跳ねさせて重症負わせたんだよ…。蓮は異常児って事で精神鑑定されたあと影響力を受けた俺の親父たちから離された。俺もしばらく保護されたんだけどまた親父たちが預かったんだ。それも金儲けのために」
「ええ。あなたはそれを見たわけね?」
「ああ。ただ見たのは犬が死ぬとこだけだ…。そして俺は見ての通り蓮がとにかく苦手だ…」
「ええー!?」
樹がビクッとし固まる。
「もう目が覚めたか。ちぇ」
エステルがドキドキし、蓮が近づいてきていたが文句を言いながら立ち去る。
「…最悪だあ。くそお。あの裸体の王様め。なんて奴連れてきてんだ」
樹が頭を抱えるも息を大きく吐き出し立ち上がる。
「よし。逃げる」
「どこに」
「外だ外。早く行っ」
ユーリが突如現れ樹を肩に担ぐと樹がじたばたする。
「こらおろせ!俺は向こうに戻る!!すぐに戻るからおろせえ!!!」
樹が連行されるとルクレイシアがやれやれとし、エステルが心配そうに見つめた。
ユーリが再び拷問部屋へと連れてくるとランスロットが話す。
「感動の再会は?」
「誰がするか!!」
「いぎいいいいぃ」
樹が震え蓮がノコギリで老人の足を切断していた。
「いい声だ」
「っ蓮!!」
蓮が隣の部屋へと続く扉を見る。
「やめろ!!お前はそれ以上馬鹿な事すんじゃねえ!!」
「ばかじゃないよ。頼まれた仕事だよ」
「ひぎっ」
ノコギリが足から抜かれると蓮が隣の部屋へと入る。
「そして、ようやく久しぶりに会えたよ樹。ずっと会えなくて寂しかったよ」
「俺はなにも」
「えー?」
その後ろからシーツを体に巻き付けふらつくルーシャスが姿を見せる。
「ルーシャス?」
ルーシャスが蓮に倒れ込み視線を樹へと向ける。すると樹が姿を消す。ランスロットが面白くし蓮が驚く。
「樹!樹どっ!?」
ばちっと音が鳴ると蓮がその場に崩れ倒れルーシャスが壁に背をつけ尻餅をつく。ランスロットがルーシャスへと向かいルーシャスが息をゆっくりと吐き出し吸う。
ー眠い…。まだ、寝ては、だめだ。
ルーシャスが口を開け自分の手を噛み、さらに強く噛むもその手が離されるとランスロットがルーシャスの顎を掴み上へと向ける。
「まだ反抗できる力があったか」
「いててて」
蓮が顔をしかめながら起き上がる。
「いったあ…。何すんのさルーシャス」
蓮の上に影が落ちると蓮が転がりナタを避ける。ランスロットが頭を上げロレンシオがやれやれと若返った老人を見る。
「王。どうなさるのですか?」
「そう言うな」
蓮が立ち上がりため息をする。
「余をいたぶりおって」
男が怒りながら蓮へと視線を向ける。
「この小僧」
蓮が冷ややかな視線を向けると手に鞭を持ち身構えるが老人の体に楔が巻かれる。
「なんっだっ」
男が倒れランスロットが倒れたルーシャスの元へと行き抱き上げる。
「やれやれ困ったものだ」
男が一気にミイラと変わると唸る。ロレンシオがゾッとしランスロットがルーシャスを抱き直し起こすとルーシャスが目をゆっくりと開けそのミイラとなった男を見て驚愕すると冷や汗を流す。
「私に従え。この意味は理解してるだろう?」
「…」
「これまだ生きてます?」
「死なない程度で止めた」
「わかりました。なら」
蓮がパンと手を叩く。
「続きだ続き」
男が腕を突如上げ蓮の服を掴む。蓮がすぐに避けると服が切り裂かれ皮膚が僅かに切られる。だがその服の下、包帯と共に膨らんだ胸が曝け出されると蓮が顔を真っ赤にし胸を抑え老人を睨みつけ鞭で打つ。
「っっ」
ロレンシオが蓮の手を掴むと蓮が息を弾ませる。
「やはり女だったか」
「……うるさいですね」
「ふふ。さて、ルーシャス」
ルーシャスが震える。
「お前もああなるか?」
ルーシャスが僅かに首を横へと振るとランスロットが頷き答える。蓮が包帯を結び直し胸を隠す。
「最悪最低っ。このじじいっ」
「うるさい」
ランスロットが気絶したルーシャスを抱き直す。
「続けておけ」
「勿論ですよっ」
蓮が怒り立ち、ランスロットがロレンシオとユーリを連れ外へと出ると苦しい呻き声が背後から響き渡った。
『樹よかったあ。でもなんで木に引っ掛かってんの?』
樹が疲れ果てながら逆さに覗く陸奥を見る。そこは学園内にある木の一つで知らせを聞いたタイシが木に引っかかる樹を見上げる。
「樹っ」
「…とりあえず、飯。はらへったあ」
樹が大きく息を吐きタイシが分かったと頷いた。
ー感情が昂る。胸が苦しい。
ルーシャスが血が流れるほど爪を噛み震えていた。
ー俺はなんのために、生きてきたんだ…。どうして、生きてるんだ。俺は、ただ、周りが。みんなが…。
笑顔を見せるものたちを思い出すと、ルーシャスが涙を流す。そして幼い頃のミオ、今のミオと思い出す。
ーミオ…。ミオに会いたい。ミオ。ミオ。
温かいものが包み込むと震えていたルーシャスが止まりその目を閉じ口から手を落としゆっくりと静かになり眠りについた。
ー蓮がいた…。
樹が疲れ果てながらタイシたちへと話すと綾香が話す。
「話してた双子の?」
「そおだ…」
「まず、俺は初めて知った」
「あんまり思い出したくなくてな。何せトラウマだらけの兄弟だし」
タイシが頷き陸奥が話す。
『ここにはどうしてきたの?』
「あー。奴隷小屋に、ん?」
ミオがふらふらとエリスに支えられくると樹の隣に座り目の前の食事を食べ始める。
「…」
「すみません。用意していただいて」
「いえ。ついでですから」
「あー、ミオが起きたわけか」
「はい」
ミオが小さく頷きもぐもぐとパンを食べる。
「今、ミオの体はとにかく食べないと保てない体になっているんだ。ちなみにこれもだな」
尊が指先を切り血を出し向けるとミオが瞬時に動き指を咥え血を飲む。
「なぜ血?」
「大樹の影響だ。瀕死の状態を回復させるために使ったのが大樹でな。まだミオの中にある。それをまず出さないといけない」
「どうやって?」
「とにかく力を使って消耗させる。吸血行動が終われば異常な食欲と異常な睡眠が落ち着く。終わるわけだ」
「へえ」
『どうやって知ったの?』
「実験で。サムの話を聞いて瀕死の魔獣を大樹に入れて同じ状態にさせた。そしたらミオと同じような状態になった。ちなみに魔獣は俺の眷属になってる。カノン」
その場にハーピーが姿を見せるとすっと頭を下げる。ミオが僅かに驚き、エリスが話す。
「ハーピーをよく使役されましたね」
「確かに」
「難しいのか?」
「ああ。知能がある程度高い魔獣を使役するのは至難と言われているからな」
『私は尊様より助けていただいたこともありましたのでおそばにおります』
タイシたちが頷き樹がふーんと声を出す。
「歌が上手いからな。柚が歌を教えたんだ」
『はい』
「柚にも大樹の力は?」
「その前に亡くなった。あと、病気についてはある程度しか効果がない」
「そうか」
「ああ。で、その蓮か。お前はそいつから逃げたい?」
「当たり前だ当たり前。もおおおお、勘弁してくれのやつだからな。とにかくきたらどうにかしてもらいたい。ぜっーたいっ。くるからな」
樹がため息をしパンを取る。
「後向こうで裸体の王様含む20人くらい髪切ったわ」
「使われたな」
「はあ。まあ、裸体の王様をのぞいて、最初か。アイリスだったな。髪切れから始まって、だんだん女どもがくるわけだよきりに。お前ら仕事してんの暇してんの?はあ」
「暇してるのもいるはずだ。いずれにせよ、人数は100もいないほどだからな」
「ああ。もし、呼び込めばまずい状況でもある」
「その可能性は少ないだろう。裸体の王様は好き嫌いがあるからな」
「俺はもうなどと会いたくも行きたくもないけどな」
ーあと、ルーシャスのこというべきか…。
樹がちらりとパスタを食べるミオを見た後やめておこうと視線を逸らした。
ー温かい。
ルーシャスが目を覚ますと手を動かし誰かの手に触れる。
「起きた」
ルーシャスが聴き慣れない声を聞き後ろを向くとアイリスが後ろからルーシャスを抱きしめ布団をかけていた。
「育てだからと世話を頼むと言われたのよ」
「…育て」
「この子のね」
アイリスが同じく抱いていた竜の卵を見せると再び抱き直しルーシャスも抱く。
「また寝たらいいわ。私は何もしない」
ルーシャスが息をつき頷くとその目を閉じすうと気持ちよく眠りアイリスが眠るルーシャスを抱きしめ続けた。
そして再び目を覚ますと激しい頭痛と喉の渇きに襲われる。だが口に冷たいものが当てられるとすぐに口にし流れる水を飲む。そして口を離しアイリスを見る。
「ルクレイシアから薬もらったから今飲ませたわ。しばらくしたら効くと思うわ」
ルーシャスが小さく頷きその目を閉じすうと寝息を立てる。
「ミオね」
アイリスが卵を抱き椅子に座る。
「小屋でも聞いたわね。この世界で有名なのかしら…」
ーアストレイのアルスランとアイリスと同じ異世界から来た人でこの国で聖女と呼ばれてた2人の娘。
「へえ…、なら特別な存在なのね」
ーそう。
アイリスがふっと笑む。
「あなたのおかげで色んなことがわかるから助かるわ。ありがとう」
ー…えへへ。
アイリスが卵を撫でたあと眠ったルーシャスの頭を撫でる。
ーあのじじいが話していた孫ね。あとは、ダリス。
アイリスが手を引き軽く息をつき卵を抱き直し上を見上げその目を閉じ瞼の奥で遠い場所となった故郷を思い出す。
ーもう戻れない。
アイリスが目を開けルーシャスを見下ろすも卵をテーブルに乗せると両掌を上に向け光らせ水を生み出しゆっくりと渦を作り浮かばせた。
ーさて。
ダリスが王室内をアルスランと共に歩いていた。その後ろには箱に入った押収物を持つ騎士や兵士たちが並びついてきており、ダリスがうんざりとしながら話す。
「欲まみれとはこのことですね。アストレイ元女王が隠していた財産もここにあったとは恥ずかしいと申しますか。いやはやです」
「こちらは見つかってなによりだ。これで全て回収出来たからな。ダリス」
「はい」
「そちらは今後どうする?これからどう生きる?」
「…」
ダリスガ沈黙するが外へと出ると止まり後ろを振り向き城を見上げる。
「少しばかり時間をください」
「分かった」
『アルー』
陸奥がその場に宝石が多数入った籠を持ってくる。
『ダリスのお兄さんの隠し財産。空き家の床下収納に隠されてたよ』
ダリスがやれやれとしアルスランが受け取る。
「分かった。ご苦労」
『どうも。あと、僕と樹が感じた怪しいところはこれで終わり。他は何かある?』
「今はないな。また何かあるときは知らせる。こちらは報酬だ」
『まいどー』
陸奥が金貨が入った袋を受け取りばいばいと手を振り立ち去る。
「私はアストレイに戻る」
「はい」
アルスランが頷き部下たちを連れその場をさった。
ー具合はどう?
ルーシャスがぼうとしながらアイリスを見る。アイリスがルーシャスの額に手を当てる。
「いいね。口に合うかはわからないけどスープ作ってみたから」
ルーシャスがぼうとしアイリスが匙でスープを掬いルーシャスの口元へと持ってくるとルーシャスが口に含みゆっくりと口を動かし飲む。
ールクレイシアが話していた力の影響ね。脳にダメージが来ているだったわね。
ルーシャスが再び与えられたスープを飲み込み、また飲み小さくはあと息を吐き出した。そしてルーシャスがアイリスに手を取られその手を見られていく。
「ゆびだこね。あと、皮膚も硬い」
アイリスがルーシャスはの手に触れていく。
「あなたはあの祖父が王様してた国の王子でしょう。たまに話を祖父がしてたわ。文句ばかりだったけど。でもそれは余程、あなたのことが羨ましかったのね」
ーうら、や、ましい。
「人の為に身を挺して動く。ただ、それが自分に負担になってきたのね」
ルーシャスが鼓動を跳ねさせ、アイリスがルーシャスの手を握る。
「ミオのことをルクレイシアから聞いたわ。貴方にとって大切な想い人だけど、彼女はそうじゃなかった。でも、そんな彼女をあなたは今でも大切にしている。素敵ね。中々いないわよ今どきそんな男は。振られた女をそれでも大切にしたい。それは貴方がそれだけ心優しいからできることよ。だからこそ、貴方は生きなくちゃ。貴方の優しさで助けられた人たちが待ってる」
ルーシャスの目から涙が落ち溢れていく。アイリスかルーシャスと目を合わせるとふっと笑む。
「ただ、謝る人には謝らないとダメね。そして、苦しい先にも幸せはある。幸せがあるからこそ生きなきゃだめだ。私の死んだ祖母の口癖よ。家がとても貧しい家だったから常に死と隣り合わせでもあったの。でも、祖母は力強く生きた。貴方も生きなさい。こうやってちゃんと動いてるもの。もう止めちゃダメよ」
俯き涙を落とすルーシャスの頭を抱き寄せ額に額をつけルーシャスと告げると今度は抱きしめた。
ー記憶がある程度戻ったみたい。
アイリスが泣きつかれ眠ったルーシャスの頭に卵をつけ調べさせるとその卵をまた抱きしめる。
「死んだ弟を思い出すわ」
ーどうして死んだの?
「ギャング。私の暮らしていた街は人を殺す連中があちこちいたの。弟はその連中が目的にした奴を殺す時の流れ弾に当たって死んだのよ。学校の帰りだったわ。まだ、16」
アイリスがゆっくりと息を吐く。
「何もしていないのになぜ、なぜ、神様は連れて行ったのと、何度も思った。弟は彼と同じ人に優しくていい弟だったわ」
ーそっか。
アイリスが頷く。
「ええ」
しばし沈黙するとアイリスが頭を振り部屋を見渡す。
「ここから外に出たいわね。前よりかはマシだけどやっぱり自由がいいわね」
ー私もそう思う。
「ええ。出ちゃう?」
アイリスが意地悪く笑み卵が淡く何度か光った。
ー出よう出よう!
ランスロットが目の前の映像に映された世界地図をロレンシオと共に見下ろしていたが軽くため息をする。
「今度はアイリスか」
「育てのものが出たのですか?」
「ああ。ルーシャスを連れて。まあ、しばらくは自由にさせる」
「王。ルーシャスですが、他に何かあるのですか?」
「眷属にさせたのがそこまで珍しいか?」
「ええ。以前はレーガンだったでしょう?ですが貴方に手を出した」
ランスロットがふふっと笑う。
「ああ。ラファエルの力を借りて。弟子でもあったからな」
「また繰り返されるかもしれません」
「それが運命なら受け入れるだけ。そしてこちらはこちらでまた来るからな。外の者が力を欲しがる為に」
ロレンシオが頷き、ランスロットが楽しく笑む。
「あのときは核があったから楽だった。次は久方ぶりに使おうか。国の力をなー」
ーこれを売れば足しになるよ。
ーならつむわね。
小鳥たちの鳴き声が、木々の囁きと水のせせらぐ音が鳴り響く。ルーシャスがゆっくりと目を開け揺れ動くかを見上げると横を向き前を見る。そこに花を摘むアイリスと小さな白い龍がいた。
『アイリス。起きたよ』
「ああ、ええ」
アイリスがそばへとよる。
「自分の名前言える?」
「…ルーシャス」
「年は?」
「20」
「みんな若いわねー」
『アイリスもまだ若いよ』
「私はもうおばさんの年よ。ルーシャス。まだ縛りはあるそうだけどしばらく自由が出来るそうよ」
「…」
「嬉しいのやら、悲しいのやらかしら?」
「……」
ルーシャスが頭を振り重たい体をなんとか起こすがふらつくとアイリスが支える。そして隣に支えながら座る。
「外に、なぜ…」
「憂さ晴らし」
『部屋にこもってたら何も出来ないでしょ?暗い気持ちのままだしね』
「ええ。でも、資金なしでもあるから。売れる物を今摘んでるところ」
『そう』
ルーシャスがアイリスのもつ白い花を見る。
「それは、やめた方がいい…」
「どうして?」
「貴重な薬だ。付け狙われる」
「でも摘んだから勿体無いわよ」
ルーシャスがはあと息を吐か目の前の白い花を見て今度は目を見開く。
「こんなに…」
「この花?」
「ここは、どこだ」
『僕がいた所だよ。聖域。だいぶ放置してたから荒れ放題になってるけどね』
「ゴミだらけよりいいじゃない。素敵よ」
『ありがとう』
龍が照れる。そこに靄が現れた途端影が現れる。そして陸奥が飛び込む。
『やあ』
『陸奥。よく分かったね』
『僕は特別だからね。食べられたけど』
「え?」
『それを言うなら私は生かされて骨まで使われてたけどさ』
『確かになー』
お互いうんうんと頷きあうと陸奥がルーシャスを見る。
『ちょっとだるそうだね』
『まだ万全じゃないんだよ』
『そっか』
「ねえ。この子の友達?」
陸奥がアイリスを振り向く。
『うーん、まあ、兄弟だね。なに?』
「ええ。どこから来たの?あの時城の地下に居たわよね?」
『そうだよ。後地上であり、あの時そっちもまた人達の知人のとこだよ』
「なら、これ。その知人に売れる?お金が欲しいのよ」
アイリスが花を向けると陸奥が受け取る。
『いいよ。後ついでにもう少しもらっていい?』
『いいよ。持って行って』
『うん。それで、お金が欲しいって話だけどお金が手に入ったらどうするの?』
「適当に宿に泊まるわ。あちこち回ってね」
『うーん。今はー、各国の周りは魔獣がいるし増えてるからなあ…』
「魔獣?」
『見たことないかー』
『ずっと縛り付けられていたからね』
『なら、仕方ないね。んー』
陸奥がルーシャスを見るとルーシャスが話す。
「秘密に、してて欲しい…」
『しょーがないな。分かったよ。ならカリね』
「カシ?」
『向こうの世界の言葉。貸し借り。僕がルーシャスにお金を貸しました』
龍がうんうんと頷く。
『ルーシャスは借りました。お金は借りたら後で返さないといけない。貸し借り』
「等価交換のことか?」
『うーん。等価交換は同じことでしょう?貸し借りはその人の価値でお互い了承の末成り立つ事だよ。つまりお互いに利益が出たら大なり小なり関係なしって奴。で、今回、ルーシャスは僕に他の人に黙ってて欲しいでしょう?』
「ああ」
『なら黙っておく代わりに貸し1ね。そして僕が何か困った場合とか命の危険があって守ってくれたらそれはもう返したってことにしていいから。これはお互いの信頼によって成り立つからね』
「分かった」
『よーし。それじゃ』
『なら僕はその薬草持っていくから貸し1』
陸奥がギョッとし、龍が楽しく告げる。
『ここに来た本来の目的は、なーんだ?』
『……い、いやあ』
陸奥がぎこちなくする。
『ここは私の聖域。陸奥は陸奥の聖域があるでしょ?』
『ええと、まあ、その、うん』
『ならそれは私の場所の薬草だ』
『ちょっとくらい』
龍が前に出てじいと顔を近づけさせると陸奥が汗を滲ませる。
『わ、わかったよ。なら、はい』
陸奥が財布を出し金貨を渡す。
『これでいい?』
『うん。それじゃまたね』
『はあ。じゃあね』
2体が手を振り陸奥が薬草を持ち去る。
「それがこの世界のお金?」
『そうだよ』
龍が金貨をアイリスに渡すとアイリスが見ていきルーシャスを見る。
「ねえ。これ共通金貨?」
「正確には交友金貨になる。使えるところは限られてくるが必ずギルドでは使える」
「ギルド?」
『アイリスは知らないことだらけだからね。閉じ込められてもしてたから尚更ね。だから、ルーシャスが教えたらいいよ』
「そうね。そうしたら、よかったら教えて。あと、まだ動けそうにないから今日はここで過ごして、明日もまだならしばらくはここにいましょう」
『うん。ま、ゆっくりしていってね』
ルーシャスが気まずくする。
「俺は…、その、一緒にいれば危険だ」
『へーきへーき』
「危険だったら置いていくわよ。取り敢えず、そこにいて。適当にご飯になるような物見繕うわ」
アイリス1人がその場を離れる。ルーシャスが気まずくするも龍が来る。
『気にせず生活したら?』
「しかし」
龍がルーシャスの額に自分の額を当て押す。
『気にしない』
「わ、分かった…」
龍が頷きアイリスがその様子を見て軽く笑うと両腕をあげ伸びをした。
ー…。
ミオが手首から口を離すとむっとむずかしい顔をする。
「不味い」
樹が呆れながらミオの頭に手刀を叩き落とすと笑うサムと陸奥の声を聞きつつ尊からぬれ布巾を受け取る。
「お前人の血勝手に吸っといて不味いはないだろ不味いは」
「す、すみません…」
「そろそろ体が元の状態に戻ってきているかも知れないな」
尊がカルテを書く。
「よし。サム。陸奥が持ってきた薬草を持ってきてくれ」
「あ、あいよ」
「お前らも腹抱えて笑うな…」
『ごめんごめん』
サムが白い花を持ちミオへと向けるとミオが受け取り見ていく。
「これは?」
「リリス。女神の花と言われている。花弁を食べてみろ」
ミオが頷き白い花びらを食べると目を丸くする。
「辛い。ですか?痺れる感じです」
「ならミオは電気に強いな」
「え?」
「体質を見る薬草でもあるし、体の回復。力のバランスを整える効果もあるんだ。毒素を吐き出すんじゃなくてある程度必要分は残して馴染ませる効果を持つ。耐性をつける希少薬なんだ」
「へえ。なら、値段は?」
「その花びら一枚で1万」
ミオが固まり手を震わせる。
「樹も食べてみろ。ミオのもつ花から一枚取ればいい」
「ああ」
樹がミオが持つ花の花びらを一枚取り口にする。
「辛いけど俺のは痺れると言うより熱いな」
『じゃあ火の体質だね』
「ああ」
「俺は冷たかったから水の体質を持っている」
「ああ。そうしたら、それらの体質が自分の特異体質ってわけか」
「ああ。そうだ」
樹が頷き、サムが花を持ち上げる。
「これだけあるから儲けもんだ。どこで手に入れたんだ?」
『ひみつー』
「教えろよ」
陸奥が頭を振り、尊が話す。
「それだけあればしばらく困らないほどの金にはなる。あと、ミオも食べたからな。回復は早くなる」
「はい」
『なら1万』
「えっっ」
「いらん」
陸奥がぶーと樹に文句を言うと樹がため息をする。そこにタイシがサイモンとエリスと共に来る。
「ミオ。体調はどう?」
「前よりいいです」
「ええ」
「無理をなさらないでくださいね。あと、何故ここに…女神の花が」
サイモンが汗を滲ませ、樹が話す。
「陸奥が持ってきたんですよ」
「こ、こんなに…」
「?ええ」
「教会のリリスの扱いは特別なんだ。俺たちは普通に扱っているが教会だと結界を張りさらにガラスで包み込み、大聖堂のミサで披露しながら花の良さをみんなで見るらしい」
「ただの鑑賞じゃねえか」
「その見るだけで効果があるから金が入る」
「詐欺だろ」
「さ、詐欺、ではなく」
「実際効果はあるが軽い怪我が治る程度だ」
「やっぱ詐欺じゃねえか」
「い、いや、ええと」
サイモンがぎこちなくしエリスがふふっと笑う。
「1番はやはりこうやって食べた方が効能があるんだ」
「ああ。あと、ダリスが一度毒盛られた時にも使ったぜ」
「え?あの、薬に?」
「はい」
「ああ。乾燥させて粉にさせたのを混ぜたんだ。充分効果は残ってるぜ」
サイモンが頷き、タイシが話す。
「尊。話していた難民の土地が決まったから見にいくか?」
「ああ。行く」
「ミオ。ナガハラ医師が診察するそうよ」
「はい」
「食べたこと伝えろよ」
ミオが尊にはいと返事を返す。
「なら俺はー」
『樹暇そうだからちょっときて』
「はいはい暇だよ」
樹がやれやれとし立ち上がった。
ーふうん。
人気のない場所で樹が陸奥からルーシャスのことを聞き陸奥が話す。
『と、言うわけ』
「ああ。なら、お前はサポート。俺たちが使ってた隠れ家や宿を案内してくれ」
『オッケー。樹は?』
「ルーシャスがいた国で稼ぐわ。護衛はタイシのとこの部下とアンナがするから気にすんな」
『分かった。そうしたらちょっと行くね。用がある時は来るから』
「ああ」
陸奥がじゃあねと手を振り去っていき、樹が軽く息をつきその場を離れた。
ーお腹にいるの?
仰向けになった瑠奈が自らの下腹部に触れるとその手をランスロットが重ねる。
「ああ。私たちの子だ」
「ええ」
ーようやく、身になった。
ランスロットが瑠奈の腹に耳を当て微笑む。
ーようやく……。
「私も連れて行って欲しかった…」
エステルが落ち込むとルクレイシアが話す。
「無理ね。まずあなたなんでもないもの」
「な、なんでもないって…」
「私と一緒」
エステルが尊が書いたレシピノートを見るカテリーナを振り向く。
「私も世の中を知らなかったから犯され、出来た子供も殺されて奪われ、そして私も殺されたの」
「え?」
「前世の記憶よ。まあとにかく、危険に変わりはないのと、あなたは食事係」
「私向こうでは歌手…」
「ここでは食事係」
エステルがしょんぼりとしカテリーナが話す。
「私は、作るのが楽しいから。今まで作ったことなかったから」
「…まあ、ルクレイシアさんが作ったよりかは」
ルクレイシアがエステルの頭を叩き鼻を鳴らしエステルが頭を撫で本当なのにと小さくぼやいた。




