古代国アルスマグナ2
ー腹が立つ。
ミオがむすうとしながら湯の中に肩まで浸かっていた。その体にはいくつものあざがあり、ミオがムカムカとしていく。
ー瑠奈も記憶を失ってた。でもあれは瑠奈が耐えられなかったからだ。分かるけど、元の原因はあの男っ!
ミオが気配を察知すると振り向きはっとしルーシャスを見る。
「ミオ」
「っ下種男!」
ミオがすぐに立ち上がりランスロットの胸ぐらを掴む。
「よくもやってくれたわね!」
「体力あるな。まあ大樹の」
「しるものですかっ」
ミオが声を上げ、ランスロットがやれやれとしルーシャスの鎖を握り引っ張る。ルーシャスが前のめりになりミオの横に落ちるとミオが顔をあげ咳き込むルーシャスを引き上げる。
「うるさい」
「何もかもあなたが悪いのなにもかもっ!ほんっとうにやることなすこと無茶苦茶!」
ランスロットが面倒臭そうにその場を去る。
「放置しないでよこの下種!」
「ミオ…。いい」
ルーシャスが弱々しく言い、ミオがはあはあと息を弾ませるとルーシャスを振り向く。
「…痛いところない?」
ルーシャスが頭を振り、ミオが頷きしゃがむ。
「俺のせいだ」
「それは完全に違う。あの下種男のせい。勿論、ルーはルーで、悪いことはしてるけどっ、あれはあれ。違うっ」
「……」
ミオがルーシャスへと手を伸ばし頬に触る。
「寝てたとき冷たかったから。だいぶ熱持ってきたね」
ルーシャスが口をつぐませ、ミオがルーシャスを抱きしめる。
「ここを何としてでも出る。出た後は、あの下種男を私は潰したい。跪かせてやる」
「…」
「ルーはダリスさんとお話しして。お互いまだ知らないことばかりだから。お互いをお互い知らない」
「俺は……、もう、そうだとしても、俺の場所は」
「私が作る。あなたがそれでよかったら私が作るから。捕まっても必ず私が会いにいく」
ルーシャスが鼓動を打ち胸を熱くさせ涙ながらに笑む。
「ミオは、強いな」
「強くなるって決めたの。でもまだもっと強くならないといけないから」
「ああ…」
ミオが頷きルーシャスから離れる。
「今は部屋で休もう。寝よう」
ルーシャスが頷きミオがうんと返事を返した。そして2人がベッドの上で緩やかに眠りについた。
タイシもだがサイモンが黒服に身を包む。そこにぴこらげとサイモンがおりサムが話す。
「こっそり行くのか?」
「ああ」
「ええ。目立たないようにこちらを着ます」
「ふうん。ところでさあ。タイシ。アルスラン激怒してたけどお前は?」
「怒ってはいるが…、あそこまではない、な。いや、ないと言うか、圧倒されたと言うか。逆に冷静にもなれたとも言える」
「あーなるほどー」
「テーブル真っ二つにしたんじゃろ?」
「ああ」
「気持ちはわかります…ええ」
サイモンが拳を強く握る。
「とても」
「兎にも角にもだけどさあ。ダリスの兄だろ?どんな奴?ダリスそっくり?」
「いや」
「いえ」
「そうじゃないんだ」
サイモンが頷き、タイシが話す。
「怠惰の塊だな」
「ええ。見るからに見苦しい程肥えております」
「へえ」
「あと、顔も似てませんよね」
「ええ。あちらは母の血が強いようです。多少面影のような部分はありますが兄弟といっても話さなければわからないです」
「母親が違いますからね」
「あ、そうなのか」
「ああ」
ナガハラが疲れ果てながら部屋へとくる。
「せんせー疲れてんな。なんかあったか?」
「あのバカの頭を冷やさなきゃどうにもならないから戦地に送ったんだ」
タイシが複雑そうにし、ナガハラが話す。
「お前らはさっさといってとってこい。ちなみに向こうの答えはノーだ」
「はい」
「わかりました」
「なあ。それ盗んでくるってことだよな?問題ないか?」
「ああ。龍の角については特殊素材で扱われていてな。力を増幅させる作用があるのは分かるだろう?」
「まあな」
「ああ。そのため、もし、戦争。または、医療行為において必要となった場合ギルドを通じて戻さなければならない」
「え?戻す?でも買ったんだろ?」
「話してなかった。彼にはギルドから貸し出してるんだ。貸し出し注文なんだ」
「ああ。完全に我が物にするまでの金はなかったんだやつに」
「貸し出しか。ちなみに購入額は?」
「時価と状態と素材次第だな。ちなみに彼が所持しているのは600万程の金額だ」
「うわお。まあまあな値段」
「大きさは俺のこの片腕程度だ」
「そんだけでそんな値段!?」
「おおー」
タイシが頷き、ナガハラが話す。
「ダリスはそれだけの金は持ってるからな。ルクスの許可を得ての買取になる」
「はあああ」
「ううんん。しゅごいじょ…」
「それで今回拒否されたから回収するわけだ。勿論相手にも送っているから使いを渡した。使いたちを無視した場合は俺たちが行く」
「どうせ無視するから準備してるんだよ。まあとにかく行って来い」
ナガハラがしっしと手を振ると2人が返事を返し部屋を出ていきサムたちもその後を追った。
この方法はいいですね。
蒸留して成分だけを抽出する機械をシンが興味深く見ていく。そこは薬草だらけの部屋となり、尊が話す。
「この世界にないですか?」
「ええ、はい。私が知る限りはありません。イーロンにも」
「向こうにも?」
「ええ。こうやって道具を使って成分のみを取り出すのは術で行っておりましたので。ただ、術者によっては不純物も混ざり扱うものが少なくもありました。なので、この道具ならば手順通り行えば術を使うよりも遥かに簡単に取り出せます」
「まあ、そうですね。素人でも出来ますから。となると、この世界の香水が高いのはそのせいか」
「ええ。香水は成分を純粋に取り出さなければ出来ませんので。不純物が多少混じった場合は値段が下げられ売られますが、それでも高値ではあります」
「ええ。なら、これ普及したら商売ものか」
「ええ。まあ、今ここですが」
「はあ。ま、考えておくのもいいでしょう。これでもう一つ完成。さて次は、いよいよ薬作りだな」
尊がまた道具を出しテーブルに置きシンへと説明を行った。
ミオが目を覚まし体を起こす。その隣ではまだルーシャスが眠っており、ミオが軽くルーシャスの頭に触れその手を離すと意識を集中する。
ー知っている気配がする。どうすれば分かる…。どうしたら。
ミオの髪が僅かに浮かぶ。そしてミオが目を開け目の前のダリスを見る。ダリスが僅かに息を吐くとミオがダリスにしがみつき震えダリスがミオの頭に触れる。
ー守ることが出来ませんでした。
ミオが頭を振り涙を流す。
ー私が、弱かっただけ、です。私が…。
ーいいえ。
ダリスがミオを抱きしめる。
ーまだ、何も出来ないのが歯痒いです。
ミオが再び頭を振る。
ーこ、こうやって、来てくれてます。あと、あとは、必ず、来て下さい…。
ダリスが頷きミオがしゃくりをあげ泣く。
そして意識をまた取り戻すとミオが赤くなった鼻を鳴らし涙を拭い眠り続けるルーシャスに触れる。
ールー…。
ミオが立ち上がり辺りを見渡し歩いていく。そしていくつもの扉のない部屋と部屋の間を通る。
ー同じところに来るように術がかけられてるのね。
ミオがルーシャスが眠る部屋へと勝手に戻る。
ー壁を破壊しても一緒かな…。
ミオが今度は壁に手を当て念じていく。すると、壁がひび割れるもすぐに修復され元通りになる。
ーだめだ。
ーこっちだ。
ミオが後ろを振り向き声がする方へと進む。そして玉座へと来るとミオが驚き宙に浮かぶ巨大な虹色に光る龍の骨を見る。
「凄い…あれが聞いた始祖」
龍の頭が揺れると目が現れミオを見る。ミオが思わず肩を震わせる。
『小娘か…』
「え、と」
手が伸びランスロットがミオを束縛する。ミオがランスロットを睨みつけランスロットが上を見ながら話す。
「呼んだか?」
『貴様は呼んでいない。ランスロット』
「ならまた寝ておけ」
「なにっするの!」
「勝手に玉座の間に入っておきながらなにするのか?決まっている」
ランスロットがミオを床に押さえつける。
「これ以上勝手な真似をすればルーシャスを殺す」
ミオが奥歯を噛み締め、ランスロットが楽しく笑む。
「お前はそちらの方が苦しいだろう?」
「ほんっと、さい、ていっ」
『ランスロット…』
龍の目玉が消える。
『お前も変わらない。また失うぞ』
ランスロットが鼻を鳴らしミオを拘束すると肩に担ぎ玉座の間を離れる。
「なんっで、あなたが運ぶのよっ」
「この部屋には用事がない限り入れさせたくないだけだ」
ランスロットがミオをルーシャスの隣に投げ落とす。ルーシャスが目を覚まし奥歯を噛み締めるミオをぼうと見る。
「ミオ…」
ランスロットがルーシャスの腕を掴むとミオがハッとし連れて行かれるルーシャスとランスロットへと声を上げる。
「連れていくな!ルー!ルーシャス!!」
ルーシャスがぼうとしながら力無くついていき、ミオが2人が消えてもまだ声を上げ続けた。
ー眠い…。とても眠い。
ルーシャスが重たい頭に体を動かそうとするも動けずにいた。
ー一つ願いを叶えてやろうか?楽しませてくれているからな。
その声が耳に響く。ルーシャスのそばに楽しく笑んだランスロットが座り見下ろしておりルーシャスが頭を振りその目を閉じる。ランスロットがふふっと笑いルーシャスの頭に触れ撫でるとすっとルーシャスが姿を消す。そしてミオの元にルーシャスが現れるとミオがルーシャスを抱きしめる。
「ルー…」
ルーシャスが目を覚ましミオとわかると息を緩やかに吐き出し頭を上げ首筋を噛む。ミオがっつと声を漏らし痛みをこらえ、ルーシャスがゆっくりとミオの血を飲む。そしてしばらくして飲み終えると口元を血に濡れながら目を閉じ眠りにつく。
ールーの中にも私を通じて大樹の樹液が入ったのかも…。
ミオがルーシャスを下ろすとその隣に横になり抱きしめる。
ールー。私がいるから。あなたのそばにいるから。ルー。
ミオの髪が揺れ僅かに灯る。するとランスロットが姿を見せ手を伸ばすがその手が空をきるとランスロットの目の前から2人が消える。
ー始祖。なぜ邪魔をするー。
ルーシャスが目を覚まし見知らぬ部屋を見渡す。
ーここは。ミオ。ミオは。
『気づいた』
『人が気づいた』
ルーシャスの目の前に妖精たちが現れる。ルーシャスが僅かに驚くと手が伸びパンを食べるミオが姿を見せる。そして一旦飲み込む。
「ルー。起きた。よかった」
「ここは…」
「私の隠れ家だ」
そこにイオが姿を見せる。
「未開の地になるがな」
「未開の…」
「ルー。前話したイオさん」
「ああ」
ルーシャスが起きあがろうとしたが体が動かせず小さく唸る。
「まだ無理だ。ランスロットという男の術式が強く体を縛っていた反動が起きている。食事を摂りゆっくり休めばいい」
ミオが頷き、イオが話す。
「そちらは食べ過ぎだミオ。食料が尽きる」
「そ、そう、言われましても…」
ミオがしどろもどろとするもぐううと腹の音を鳴らすと顔を赤らめ項垂れる。
『いい音』
『ここから出たのか』
『パンまだあるよ』
「自分でとりにいけ」
ミオが頷きその部屋を出る。
「話は聞いた。祖父の話通りの男だな」
「祖父…」
「俺の祖父に当たるが、ランスロットの相手もしていた。種族は選んでいたがあれは男も女も関係がないからな」
「…」
「食事を持ってくる」
イオが部屋を去りルーシャスが僅かに安堵の息を吐くと目を閉じ眠り妖精たちがまた寝たとその寝顔を見つめた。
ー探さないといけないな。
ランスロットが瑠奈の髪をいじる。
「ランス。どうかしたの?」
「少しばかり暇になった。まあ、少しだけだ」
ランスロットが瑠奈の髪を編み込みした後丸める。
ーミオ。見つけたらお前だけは特別扱いしてやる。
ランスロットが出来終わると瑠奈の顎を上へと挙げ口づけした。
ー私は自分の意思でここに来ました。人を憎んで。
シンが食事を摂りつつ尊へと話すと尊がやや目を丸くする。
「俺も人の部類ですけど」
「人ですが、私が思う人ではないのです。私が憎んでいるのはギルドと以前の仲間たちです」
「仲間同士の衝突は聞いたりします。ギルドについて仲間同士の衝突は放置でしょう?」
「はい。その通り。けれど、私は裏切りに合いましたしギルドはリーダーの話を信じ私を投獄させたんです。私が仲間の女性を強姦し金を奪ったとのことで。私はそのせいでライセンスを剥奪されたばかりか今まで貯めてきたお金も慰謝料として全額支払いとなったのです」
「…は?」
「そして釈放後すぐにギルドから永久追放されました」
「プロラテの一員でした?Aランクパーティの」
「ええ。ご存じですか?」
「はい。一応俺もギルドに入ってるんですよね。薬売るのにギルドならすぐにオークションにかけられて売ってくれますから。つまり、通常に売るより、自分で値をつけて売るよりも高く売れるからです」
「はい。それは確かに」
「ええ。でー、そのプロラテさんたち。俺が人身売買組織から追われながら販売していた時に話しかけられたことがあるんですよ。パーティに入らないかと。でも追われみのみでしたし、1人行動が俺にはあってましたから断りました。プロラテさん達は魔導士を探されたいみたいですね」
「私がいなくなりましたからね。あといつ頃ですか?」
「2年前です」
「そうなると5年は空いてますね。その間、何名か入れ替わったかもしれませんね。私以外の3名はほぼ同時期に仲間になった方達のようですから」
「ちなみに、その強姦されたと言われた女性は?」
「その3名に入ります」
「なら、仲がいいんですね」
シンが頷き、尊が話す。
「それでまたどうしてどうやってこちらに?」
「ええ。ルクレイシア。彼女からの勧誘になります。元々他人同士だったのですが、彼女の亡くなられた部下の1人が私と知人だったのです。その方から私のことを聞いていたそうで勧誘しにきたのです。私も元犯罪者になってしまった上、名の知れたパーティでしたので居場所がなかったこと。あと、やはり恨みもありますし今も恨んでおります。元々役立たずとも言われておりましたから」
「なぜですか?」
「私が攻撃性の魔術を一つしか使えないこと。後は薬草の調合しか出来なかったからです。それでもいいと言われて入ればたった半年。最悪です」
「となると、騙しもあったかも知れませんね」
「ええ。ただ、私はそれに引っかかって犯罪者となり全て没収されましたから」
「にしてもなんかひどくないですか?ギルドはどこの国の?」
「カルドアです」
「ああ、あそこか。確かギルド長が捕まり投獄された後殺されたって話でしたけど」
「ええ。でも、それで私の立場は変わりはしません」
「どうですかね。冤罪かけられた者が数名いたらしく、剥奪されたライセンスをまた戻されたと聞きました」
「だとしても、私は許さないです。ギルド長は王達やギルド達が決めた方々ですから」
「ええ。でも、名誉回復したくないですか?」
「それは…」
「あと、騙した相手を見返したい。復讐ではありません。彼らがあなたを捨てたことを後悔させたくありません?復讐よりよほどスッキリしますよ」
シンがゆっくりと頷き、尊が話す。
「それで、こんなとこでですけどよかったら俺の手伝いしません?」
「尊さんのですか…」
「はい。俺の主な仕事は解毒薬作りです。あとは商品を各地に売るためにギルドにいます。後々領地を手に入れて施設などを作ろうと考えてます」
「施設?」
「孤児院や学校、診療所です。俺はそのための資金作りをしています」
「なぜですか?」
「死んだ妹との約束ですし、妹や死んだ血の繋がりのない子供達の犠牲を出したくないためです。俺の妹は叔父によって犯され、叔父が持っていた性病によって死にました。この世界では不治の病とされていますが、向こうには特効薬がある病気です。俺の妹は犯されてすぐ俺と共にこちらに売られてきたために助かりませんでした。そして、俺たちが売られた後に来た孤児院は売買組織で子供達の犠牲もありました。その経緯。そして妹のような犠牲と妹から子供達を守ってほしいと言われたのです」
「その為に領地を得てその為の組織や施設づくりをされるということですね」
「はい。独立したものを」
シンがゆっくりと息を吐く。
「その為には資金づくりが必要です。その資金作りの為の薬を売らなければならないですし、病のための特効薬作りも行わなければなりません。よかったらシンさんに手伝っていただきたいです。勿論手伝ってくれた分のお礼はします。後は薬草の知識や調合を俺に教えてほしいです。お願いします」
尊が頭を下げるとシンが目を見開き驚く。
ー座っておられても、頭を下げられるなんて……。あの者達と大違いだ。
「私が犯罪者ではないことを信じてくれますか?」
「信じます」
「なら、はい。私でよければ手伝います。あと、あなたが言うように、復讐よりも後悔させて悔し顔を見た方がすっとしますね」
シンがふっと笑み尊が頭を上げる。
「もし、になりますし貴方でよければ尊さん。亡くなられた妹君との約束が叶えば私は貴方のそばにいてもいいですか?」
「勿論ですし心強い」
尊が嬉しく笑みを浮かべシンが頷き答えた。
ー何使ってるの?
玉ねぎをすりおろすカテリーナへとルクレイシアが尋ねるとカテリーナがすりおろした玉ねぎを肉に乗せる。
「ええと、シャリアピンステーキ、ね」
カテリーナが傍に置いたレシピの名前を見て告げるとルクレイシアが何それと眉を寄せた。
ーシャリアピンステーキは。
「歯が不調で固いものが食べられなかった声楽家のためにシェフが肉を柔らかくさせて作った料理名だ。その声楽家の名前から取られてる」
夜に出された肉を前に尊が話すとルクレイシアがふうんと声を漏らしワインを飲みステーキを食べる。
「そう」
「ていうかあんた仕事してんのか?」
「してるわよ」
ルクレイシアが鼻を鳴らす。そこにシン、カテリーナがおり、尊がやれやれとする。
「ああそうだ。エステルは?」
「ああ、あの子なら部屋よ」
「暇してるならカテリーナの手伝いさせたらいい。1人で作るより2人がいいだろ?」
「…はあ。話しとくわ」
「ああ。それと、ミオいなくなっただろ?」
「それは知らないわ」
「逃げたみたいだ。俺は多少気配を感じられる方だからな。ミオの気配がなくなったからな」
「そう。となると、王がどうするかね」
「殺すくらいなら必要ないだろ?」
「生き返らせるつもりで攻撃したのよ。彼女はまだ必要なのよこの国に」
「なぜ?」
「本人に聞いたら?たまにくるんでしょ?」
「朝昼夜とくるがあの裸体の王様は」
「なら聞いたらいいじゃない」
「聞く前にいなくなるんだよ」
「そう。じゃあ残念ね」
尊が呆れる。
「おい…」
「近々攻撃する話は聞いた?」
「いやもう、魔獣とか機械人形とか送ってるだろ。ちなみにどこに?」
「ロンタークという国よ」
「イーロンと組んでた国か。攻撃性の高いところだな」
「そうなの?」
「ああ。なら、宣戦布告か、奇襲かけてきたんだな」
「あたり。ここは最悪で静かだからわからないけど奇襲かけられたわけ。あと、話ではその国の王がこの国の王の私物を持ってるらしいのよ。元々この国にあった王の証の宝石。水の鏡。透明度が高い澄み切った宝石だと聞いたわ」
「私がレーガンによって動けなくなったところにコソ泥されたのだ」
尊の頭に腕が乗せられると尊がうんざりとする。
「今日は肉か。明日は魚がいいな。フリッタータ」
「自前のシェフを用意しろ自前のシェフを」
ランスロットが尊の前の肉を浮かせる。
「向かうの作り方を知っているのはお前だけだ」
「行く前にミオ。なんでまだ必要としてる」
「人質」
「他にもあるだろ。あと、奇襲かけた国」
「ああ。明日の昼に消す」
「石は?」
「コソ泥の触ったものなどいるものか」
ランスロットが姿を消すと尊が大きく息を吐く。
「消すと、いうとどう?」
「色々」
「あんた関与してんだろ?」
「ま、当たりね。なら、私は行くわ。昼までに間に合わせないといけないから」
ルクレイシアがその場を去る。
「…あーくそ。そこのアホ王め」
カテリーナが複雑そうにし、シンが話す。
「戦争ですね」
「力の差が歴然すぎますよ」
ーどうする…。どうに伝えて避難はさせたい。
尊がカテリーナをじいと見るとハッとする。
「ある。な」
「え?」
「強制だが仕方がない」
尊がカテリーナへと話すとカテリーナが驚き気まずくまあと頷いた。
紬が素振りをし息を荒げる。そして座り込みはあと息を吐き星空を見る。
ーまだ、兄さんも目が覚めん。辛か。辛かけど、がんばっ。
紬が突如痺れるとばたりと倒れる。焔がハッとし紬の傍による。
『紬っ』
「あ、う、ひ、ひびれ」
紬から黒いもやが現れる。
『呪いっ!?』
紬が倒れたのを見たものが駆けつける。そして運び出されると紬が顔をしかめうーと声を出し、呼び出されたヒカルが来る。
「話せるか?」
「す、こし」
「ああ。触るぞ」
ヒカルが手を光らせ触れる。するとヒカルを通じて尊の声が響く。ヒカルが驚き、柚がヒカルを見る。
「どーし、たんで」
「このやり方で呪いかけるか。はあ」
「ん?」
「緊急!明日昼にアルスマグナがロンターク国を消す!」
「え?」
「呪いの繋がりを使って尊から通信が来た。呪いは軽いものだからすぐに解ける」
紬が頷きすぐにその事を魔術師たちが念話で伝えた。
ーおのれええええ!!!
「ギルドがああああ!!!!」
叫び声が外にも響く。それを屋根の上で龍の角を持つタイシとサイモンが聞いていた。
「なんと申しましょうか…。あんなのがダリス枢機卿のご親族とは」
「まあ、親族は多種多様ですから。俺の実母もいえばそうでしたし。実父は適当の面倒くさがりなものですから」
タイシが遠い目をし事情を知っているサイモンが頷く。
「なら戻りますか」
「はい」
タイシが合図を送る。すると颯が姿を見せ2人を空へと浮かせ城から離れた。
ー一時間後。
サムを肩に乗せたタイシが急ぎ軍務会議の場へと向かう。その両隣にマルクルとマルクールがおり、群馬会議の場に来るとすぐにアルスランの元に来る。
「角は?」
「回収しました」
「おう。早速作って飲ませた」
「ああ」
「でー、ロクタークへの攻撃かあ」
「どのような攻撃を行う?」
サムがうーんと声を出す。
「あの国自体凶器だからな。おいらが知ってるのは上から雨のように降らせる攻撃だな。術じゃない。道具だ」
「爆発するか?」
「ああ。よくそれで攻撃したのは覚えてる。後はわからねえ」
「ああ」
「お前がいるからその手は使わないかもしれないな」
「あー、あり得るな。あと、あいつもどうも向こうの世界の知識を得てるから、昔とは違う方法が攻撃しそうだ。避難させるなら急がせるか範囲を広げたほうがいいとオイラは思う」
「分かった」
「将軍、ロクターク国王より、秘密兵器があるので心配無用との申し出です」
「秘密兵器?」
「嫌な予感しかしない。なにせ、イーロンと交友関係を結んでいた国だ」
「魔導局に伝えて逃亡する国民のみすぐに保護するようにとだ。時間は明日の朝までだ」
騎士がはいと返事を返し、タイシが小さく唸る。
「原子力を使ったもの。核兵器ならばより甚大な被害が出ますし、死の大地に変わる」
「ああ。あの施設から近いからな」
「核兵器ってのはおいら知らないな」
「人を溶かし消し去る程の光線を放つ。そして、遠くであってもその高熱により皮膚を溶かし死に追いやる。更に遠くでも光線を浴びれば強力な毒となり血を大量に吐き死に至る場合もある。生き残ったとしても死と隣り合わせか死ぬまで苦しみ続ける兵器だ」
「お、恐ろしいな…」
「あとは、大地も枯れ果てるし、その大地に足を踏み入れるだけでも毒となり体を蝕む。それが原子力だ」
サムがぞわわとし、キヨがやれやれとする。
「あるとして動いた方が良さそうだな」
「ああ」
「ああやばいことになってるう」
サムが冷や汗を流しタイシがすぐさま行動に移した。
勉がイーロン国の隠れ家で酒を飲み獲った魚を食らっていた。そこにリーンがやってくる。
「やっと見つけた」
「なんだ?」
「ロンタークがアルスマグナに喧嘩を売ったそうだ」
「ああ」
リーンが座り焼き上がった魚を見下ろす。
「それでアルスマグナが報復するって話だ。ロンタークにある素材どうする?」
「取りに行く。勿体無いからな」
勉が食べ終え立ち上がる。
「リーン。残りは食え」
「俺が食べられるのは人肉。他にやるさ」
リーンが魚を持ちじゃあねと手をふりきえ、勉もそこを後にした。
ベッドに寝ていた瑠奈が体を起こし背中を向けるランスロットを見て手を伸ばし抱きしめる。ランスロットが瑠奈のその手を握りいじる。
「どうかしたの…」
「考え事をしていた」
ランスロットが楽しく笑みを浮かべる。
「悩み事?」
「まさか。違う」
ランスロットが瑠奈を振り向き押し倒す。
「面白い事だ」
「面白い?ん」
「ああ」
ランスロットが瑠奈に口付けしていく。
ーそう、面白くなりそうだ。
ー留守にする。ここを出るな。
イオが未開の地を抜け森の中を歩く。そして、ある国を前にくる。そこでは騎士や兵士たちが複数国民たちを外へと出していた。その国民たちは急ぎ魔導局が作った移送術の門をくぐり避難しており、イオが眉を寄せるも轟が響く。国民たちがすぐに走り兵士たちが向かってくる味方である兵士や騎士たちの前にでる。
ー何が起きている?
「エルフか!」
イオがすぐに騎士の一撃を避け森の中へと姿を消す。騎士達がイオを探すために動くも、突如縛られるとなんだと声を上げる。奏がやれやれとし騎士達を浮かせ他の騎士たちの元へとこさせる。
「貴様異界人!何をする!」
「緊急避難。はい行った」
奏がぽいっと騎士達を投げ入れ国民達をすぐに通す。そこにウラヌスが姿を見せると奏が話す。
「受け入れ先の方は?」
『まだ問題ありません。可能です』
「分かった。あと、やっぱりあったよ核兵器。やばいね」
『持ち出すことは?』
「不可能。術をかけられていて持ち出した途端ドカン。危険すぎる。本当知らぬが仏だ」
『知らぬが仏?』
「向こうのことわざっていう言い伝えやその時の事をものに例えたりして言葉にしてるやつでね。知らぬが仏は知れば気に病むけれど知らなければ平穏でいれる」
『なるほど。その武器の危険を知らぬが故安心し切っているのですね』
「そう言うこと。逆に自分の首を絞めてるわけ」
『はい』
奏が頷き逃げる国民達の体つきを見る。その中には痩せこけたもの達もおり、奏がウラヌスへと話す。
「孤児の子供らもいるから行くよ」
『気をつけてください』
「もちろん」
奏が姿を消しウラヌスが見守った。
ールー。
ミオとルーシャスがお互いに首筋を噛み合い血を飲んでいた。そしてミオが離れはあと息を吐き出しまだ飲み続けるルーシャスを抱く。ルーシャスが離れ息を弾ませるとミオを見て僅かに固まるもミオがルーシャスを抱く。
「ミオ」
「…ん」
ルーシャスもまたミオの後ろに手を回し抱きしめる。
「生きてるね。お互い」
「ああ。とても暖かい。とても」
「うん」
2人がダンマリとするとルーシャスがぎこちなく離れるもミオが体を預けるように抱き直す。
「…ミオ」
ミオが目を虚ろにさせその目を閉じる。そして足元から根が現れるとルーシャスが驚愕するもすぐにその根に取り込まれる。そして水のようなものの中に沈むとルーシャスがあぶくを出すも目を開け身を丸めるミオを見る。
ーこれは…。
『世界樹』
『やっぱり。この子の中にあったんだ』
ルーシャスが外にいる妖精達を見る。
『世界樹…』
「そう」
そこにイオがくると壊れた家を見て軽くため息をし大樹の中にいるミオとルーシャスの元へとくる。
「ミオが目を覚ますまで出られないからそこで寝ていたらいい」
『え…』
「そう」
「大樹の夢の中にいたらいいよ」
「ああ。ここはそう簡単には見つからない。見つかったとして俺たちがいる」
周りの魔獣や霊獣達がわらわらと集まるとルーシャスが驚く。
「大樹は大切な命を作る。そちらはそこでミオと共にいるんだ」
ルーシャスが僅かに口をつぐむ。すると地面に穴が開き首のない甲冑が姿を見せるとその場にあぐらをかく。
『ドルターナ』
『我らにとっても必要なもの。目が覚めるまでここで守りをする』
ルーシャスが徐々に眠くなり始めると小さく頷きその目を閉じる前にミオを引き寄せ抱きしめ目を閉じミオと共に深い眠りについた。
ーさあ。楽しい時間の始まりだ。
ランスロットがやや興奮しながら部屋のモニターを操作していく。そのそばに瑠奈がおり瑠奈が座り込み瞳を銀に輝かせながら集中していた。
ダリス目を覚ますとサイモン達が安堵の表情を浮かべる。
「枢機卿」
「ダリス枢機卿」
「ルクス」
ルクスが姿を見せるとすっと頭を下げる。
「アルスラン将軍に。奴は核そのものを破壊させようとしていると早急に伝えろ」
『はい』
ルクスが姿を消すとダリスがはあと息を吐く。
「枢機卿」
「エリス殿と樹殿を呼んでくれ。頼み事がある」
「はい」
ダリスが頷き痛みに僅かに顔を歪める。
ー必ずあの玉座から引き摺り下ろす。それまで待っていろランスロット。
ー核を直接破壊するっ。
タイシが冷や汗を流し、アルスランが小さく唸る。
「全員引け。魔導師たちもだ」
ーヒカル。
タイシが奥歯を噛み締める。そして、国の中、奥深くに潜入しているヒカル達が核兵器を見つける。それは巨大な落下型の爆弾で鎖で吊るされ揺れていた。
「この扱いそのものが危険すぎる」
「どうする」
「逃げるぞ。何もできない急げ。早くっ」
「だが見つかれば」
「逆だ!逃げろと声を上げろ!早く!!」
魔導士達がすぐに走りヒカルもまた走るも逃げぎわに魔術を放ち多くの煙を出す。そして騎士達が気がつくも。
「早く逃げろ!!死ぬぞ!!強力な炎が来る!!逃げるならこっちだ逃げろ死ぬぞ!!!」
騎士達が固まり去っていくヒカルたちの後をすぐにおう。
ーよしよしよしっ。
「お前らもいえ!!」
「逃げろ死ぬぞ!!!」
「巨大な火炎に巻き込まれる!!!この辺りが死地になるぞ!!!」
城の者たちがその声を聞きパニックになりヒカルたちに続き走る。
ー思った以上についてくる。なぜ?
『私の力よ。そのまま行きなさい』
ヒカルが肩にのるネズミを見ると頷き魔導士たちの門を潜る。そして大勢がその門をくぐっていく。
『足を止めるものは信じない者たちよ』
「どうにか出来ませんか?」
『私たちができるのはここまでよ。あなたも死ぬことになるわ』
ヒカルが口をつぐみ逃げ走る者たちを見る。
ー面白いな。
ランスロットがほぼ空となった国を見下ろすと今度は城へと向かう。
「私が裸体ならここは裸の王様だな。ふふ」
ランスロットが城内へと入り王座にいるヒゲの王を見ておかしな笑みを浮かべる。
「き、きさまが、ランスロットか」
「そう言うお前は裸の王だな。国の民のほとんどは逃げていないぞ。信頼のない王だ」
「黙れ!!逃げた国民たちは後ほど重罪でも喰らわせる!」
ランスロットが吹き出しククッと笑う。
「重税とはな。からの脳だから仕方のない。だから核兵器もあのような扱いだ」
「核兵器だと」
「イーロンからもらっただろう?新型の爆弾を」
ランスロットの頭上に鎖付きの核爆弾が現れゆらゆらと揺れると王や残った臣下たちがゾッとする。
「はんっ。それはこれがなければ爆発などしない!」
王がリモコンスイッチを見せるとランスロットがぶくっと吹き出し王を見て不敵に笑んだ。
「あの突起物。あれは触れるだけで発動できるスイッチだよ裸の王様」
鎖が破壊され爆弾が落下する。そしてランスロットが消えた途端爆弾が床にたどり着きかちりと音が鳴り響いた。
巨大な閃光が周辺を光らせる。タイシたちが冷や汗を流し爆発と共に爆風が辺りの壁や家を破壊する。そして巨大なキノコ雲を作り出す。
「タイシ」
「核兵器で間違いありません。爆風が来ますっ」
「ミーア」
ミーアたち魔導士が結界を使い砂埃と風を防ぐ。
「塵が上空へとあがり雲になり黒い雨を降らせます」
「毒の雨だったな」
「はい」
「向こうで見たのそのままだな」
ヒカルがその場にくるとタイシが安堵する。
「鎖で爆弾を吊り下げて保管していた。鎖が壊れればすぐに爆発するようになっていたから恐ろしかった」
「なら、イーロンが元々破壊するつもりか実験のための贈り物として提供したのだな」
「その考えで妥当だと思います」
「ああ」
「毒の雨は広範囲で降ります」
「分かった」
ヒカルが水晶を出し光らせる。そして炎に包まれる瓦礫とかした国を見る。その国の外れで皮膚が溶けた者たちが皮膚を下げながら歩いておりヒカルがゾッとし魔導局でもまたその映像が流れ見たものを恐怖へとかした。
ー瑠奈。ご苦労。
汗を滲ませ息を弾ませる瑠奈がランスロットの膝に頭を乗せ体を横たえていた。
「ん…。ランスは?」
「問題ない。しかし、無知とは怖いものだ。そして、信頼できないものほど最後は哀れで寂しいな」
「え」
「いいや。何でもない」
ランスロットが瑠奈を今度は抱き上げベッドへと寝かせると瑠奈が緩やかな息を吐きその目を閉じ眠りに落ちた。
ルクレイシアが機嫌悪く酒を飲む。尊が呆れカテリーナが声をかける。
「ルクレイシア。飲みすぎよ」
「ふんっ」
「せっかく用意したのが使われなかったのは残念だが飲みすぎるな。つまみくっとけ。悪酔いするからな」
尊がチーズを出すとルクレイシアが取りチーズを食べる。シンがやれやれとすると扉が開きそろおとエステルがパンを持ち姿を見せる。
「…焼けた」
「ああ。ルクレイシアの前に置いてくれ。先食べろ」
エステルが頷きパンが入った籠を起き席に座ると魚のみをほぐしたものなどを見る。
「カナッペ」
「ああ」
エステルが頷きパンナイフでパンを切り早速乗せて食べる。
「向こうと、少し味が…」
「味が変わってるのは今まで食べてきたものと俺のレシピと味の濃さとかが違うからだろうな。素材はほぼ似てるからな」
「ええ。私はもう少し濃いめだったわ」
「ああ。まあそこは住む国でも違うか。日本の食事は塩胡椒やバターを多量に使わない。素材の味を生かしたりするから味が薄い」
「そっかそれで」
ルクレイシアがパンに乗せて食べる。
「クラッカーとかビスケットも好きだったけどな…」
「作ることはできはするが、昼飯だからな。これくらいが…」
「腹が減ってるから何か作れ尊」
エステルが驚き、尊が呆れ果てながら後ろから寄りかかったランスロットを見る。
「裸体の王様。もう少しまともにこい。あと結局あの国どうなった?」
「半分自滅だな。核兵器を爆発させた」
「え?」
「イーロンの放射能爆弾。それも新型のものがあの国にあったから必要ないと言われたのですね」
「ああ。撃ったところで無駄に終わるからな」
「はい」
「なんつうものを…」
「なぜか知らんが国の大半の国民は避難されていた」
カテリーナがどきっとし、ランスロットがパンを手にし口にする。
「そして残された裸の王は無知だな。新型爆弾を天井から鎖で吊るして保管していたからな」
「吹っ飛びすぎる…」
ランスロットが軽く吹き出し面白く告げる。
「ああ。なら尊。五人前作ってロレンシオに渡せ。外に使いのものがいるからついていけ」
ランスロットが姿を消すと尊が大きくため息をしシンに後は頼むと告げその場を去る。カテリーナが汗を滲まさせどきどきとさせルクレイシアがわからなかったのかしらと疑問に思いつつカナッペを食べた。
ーあった。
イーロンの研究所からタイシがレシーバーのような機械を見つけ操作する。そこにブレイズ、エルハルトもまたおりエルハルトが話す。
「放射能測定装置で間違いなさそうですね」
「ああ。ただ電気切れだな。向こうに戻って充電すれば問題なさそうだ」
「はい」
「その充電はどうするのです?」
「試しにはなるがあてはある。それと戻る前に確認したいところがある」
「はい」
タイシが装置を空間に入れ2人を連れその場から離れた。
ぴこらげがむすうとしながら微弱な電気を送り装置を充電していた。
「なんでぼきゅが充電?けっ」
「すまない。一番適しているんだ」
タイシが話すとぴこらげがふんと鼻を鳴らす。
「これどうやって使うの?」
「それを起動させて歩けば勝手に測定される」
ハリーへと教えるとハリーがへえと声を出す。そこにユナがくるとユナがタイシの傍へとよる。
「望お兄ちゃんが目を覚ましたって」
「そうか。よかった」
「うん。あと大きな方のヤンがどこいるか知らないって」
「分かった」
「預言者でしょ?自殺未遂の」
「ああ。ロレンシオの元に行ったらしいがいなくなったと音哉が話してくれたんだ。音哉は行動を読み取る力を持っているからな」
「へえ」
「そう。あ、ちっちゃいヤンはサムと一緒にいるよ」
「分かった。まだ仕事でていっぱいだと伝えてくれ」
「来れないの?」
「避難してきた人の判別で忙しいみたい。伝えてくるね」
「ああ」
ユナが去り、ハリーが話す。
「ユナは寂しくないのかな」
「寂しいだろう。ただ、前みたいに何もせずに待つのをやめたようにも思える」
「充電終えたじょ。まっちゃきゅ」
ぴこらげがぶつくさいいながら離れるもタイシが礼にと果物籠を見せるとぴこらげが仕方ないなあともらい早速りんごを口にしむしゃむしゃと食べた。
ーあれか。
イオがルクスの背に体を預け来たダリスを見る。ダリスがはあと息を吐き出しイオがそばへと来るとダリスを抱き上げる。
「ミオ、どのと」
「中だ」
イオが大樹の元へと来るとそこに樹液の中を浮かぶミオがいた。だがルーシャスの姿はなく、ルクスが話す。
『ルーシャスは?』
「昨日外へと出た。出たがまだ目を覚ましていないので建物の中だ」
「かっ、ちゅう」
「ドルターナ。ルーシャスが召喚させた悪魔だ。ミオの守りをしている」
イオが大樹にさらに近づく。ドルターナが淡々と話す。
『よくその体で生きていられる。強靭だな』
「そう、でも、ないです」
ダリスがはあと息を吐き出すと木の根が現れダリスを包み込む。そしてミオと同じ樹液の中へと入るとダリスが小さなあぶくを出し目を閉じ浮かぶミオを見る。
ーダリスさん。ダリスさんだ。
ミオが僅かに目を開け手を伸ばしダリスの体に手を当てると顔を歪めダリスがその手を握りゆっくりと目を閉じた。
空の下でハリーが運ばれた角の放射熱を浴びた事で皮膚が溶け死んだ死体に装置を向けると針が左から右へと大きく動く。それを魔導士や兵士たちと見ておりタイシが話す。
「危険域を超えている。長時間いると見えない危険な毒にやられるからな。すぐに荼毘だ」
「分かった…」
「この見えない毒を浴び続けるとどうなりますか?」
「ああ。まずは倦怠感。そのあと高熱に髪が抜ける。そして吐血に血便。1週間もしないうちに死ぬ事もある」
タイシが死体へと火をつけ焼く。
「焼いた後はすぐに埋葬。焼けば毒は少なくなるがそれでもあるからな。死体の搬出は霊獣たちに任せてこちらはとにかく身元がわかるものを調達したらすぐに荼毘して地面に埋葬だ」
周囲が返事を返しタイシがああと返事を返した。
ーなにもないじょ。
ぴこらげがふよふよと霊獣たちと共に黒く焼け野原となった国を見て回る。そして黒焦げた死体を見つけては回収し魔導士たちが作った移送術に起き送っていく。颯が寂しく子供の黒焦げた死体を持ち上げる。すると破壊された家の床が揺れあげられる。楓がハッとしやせこけた少女が恐る恐る姿を見せた。
少女、少年たちがパンを貪り食う。そこにユナがおりユナがスープをせっせと運び奴隷紋を押された少年少女たちに渡す。そして近くには診察するナガハラと手伝うヒカルがおりヒカルが話す。
「教会の地下に閉じ込められて助かったんだな」
「ああ。まあ5年ほどは要観察にはなる」
「同じ教会のものとしてあるまじき事。行為……」
ナガハラが拳を握るサイモンを無視する。
「許しませんね」
「ならさっさと逃げた奴らの中から探し出せ」
「また見つけたじょ」
ぴこらげが老婆と老人を運ぶ。
「おじいちゃんが足が悪くて下にいたんだっちぇ」
「ああ」
「診察受けたらスープね」
ユナがそばへときて話すと老夫婦が分かったと返した。
「もうあの国はダメですか?」
「ダメだな。この先100年超えるほどは住めない」
ナガハラが老人の足を見ながら話老人が息を吐く。
「そうですか…」
「バチが当たったのよ。あのイーロンから兵器を貰い続けてたんでしょう?」
「ばちとかいうな。関係ないのも死んでるからな」
「そうだけど…」
老人が頷き、ナガハラが話す。
「現状維持になる。このままだ。兵隊か何かしていたか?古傷だな」
「はい。30年前のアストレイとの戦いで受けた手傷です。イロークの戦いです」
「ああ」
「アルスランさんが初陣した戦争?」
「そうだ」
「ああ、ご活躍はかねがね。敵とはいえとても立派な方です。話では負傷兵や亡くなった兵士たちの遺族にこれから先苦労しないほどの金銭をお渡しされていると聞いております」
「ああそうだ」
「ええ。なのに、こちらは何もしてくれませんでした」
老人が頭を振る。
「唯一の一人息子も戦地に駆り出された後戻ってきたのは片腕のみ。それだけでした」
老婆が項垂れ、老人が話す。
「妻がバチが当たったと言いましたが、まあ、確かにそうかもしれませんな」
「そのバチが当たったという言葉はどこで知った?」
「ええ。息子です。息子は異界人の言葉や生活に興味をもっておりました。私たちがいた国では異界人の入国は禁じていたのでわざわざ出て隣国に赴いて異界人から話を聞いていたそうです。アメリカとか日本中国」
「ええ。あと、お金を貯めてイーロンにも行ったわね。あの子も好きだから」
「ああ。それからか。イーロンから戻ってすぐに戦地に駆り出された。兵士でもない息子が人手不足だからと」
「どこの戦地だ?」
「ええ。マルスクとの戦いです。結局、国は小さなその国に負けてしまいより重税を課せられましたからな」
「ああ。確かに負けたな」
「ええ」
ナガハラが診察を終えると待ち構えているユナを見る。
「5年ほどは健康状態の観察だ。あといいぞ」
「うん。じゃあこっち。おじいちゃんはこの歩行器使って」
「ああ、これはいいな」
老人が歩行器に体を預けゆっくりと前に進み老婆がついていく。
「息子のことなんか知ってる?」
「知らん」
ヒカルが分かったと頷きナガハラがとりあえず終わりだなと立ち上がりその場をさった。
ランスロットがロレンシオを連れ通路を歩く。そして壁がなくなり部屋が現れる。そこに某アメを咥える片腕の青年が宙に逆さに浮かびながら本を見ていた。ロレンシオが眉を寄せ青年がランスロットたちを見て飴を口から出す。
「ランスロット王」
「ああ。お前のおかげで暗号が解けた」
「それはよかったです」
青年が地面に降り立ちロレンシオを見る。
「その者は?」
「ああ。そこらに倒れていたのを拾った」
「拾った?」
「本当助かりました。堕王に歯向かったせいでイーロン製の武器や拷問の実験台に他の者たちと共に利用されましたから」
「ああ」
「それで、何故その者を、いえば助けられたのです?」
ロレンシオが尋ね、ランスロットが話す。
「イーロンで出会った」
「はい。俺が元々異界の語学などに興味があって異界人が集まると噂されたイーロンに来たのがきっかけです。実際は誰もおらず、噂は人を呼ぶための噂であると後程わかったのです。俺のように異界人に興味を持つ人が数多くいますから。そのイーロン国の食事処でランスロット王と知り合ったのです」
「知識。見聞は常に広めておいた方がいいからな。あとは秀でているものを探していた。そこで見つけたのがロードでな。古代語やあちらの世界の古代語を多数知っていた」
「骨董店など回って本を手に入れてきましたから。その話をして知り合ったのですがその時はまだ王とは話されておられなかったので驚きました。そしてその後国に戻ってすぐに国から戦地派遣を名目にした実験体にされたんです。理由として俺が異界の本を焼却する法令を出した王に歯向かったからです」
「ああ。後独学か?」
「はい」
ロレンシオが頷き、ランスロットが話す。
「ロードの他にもこちらが引き抜いた者は他数名いる。こい」
ロレンシオが頷きロードが頭を下げ見送ると再び宙にういた。
ルクレイシアがポテトチップスを食べながら図面を引く。だがそこは尊たちのいる部屋で尊が呆れつつ話す。
「狭い。持っていっていいから自分の部屋でやればいいだろ」
「別にいいでしょ。後少し待ってなさいよ」
「はあ」
尊がため息し薬草を干していく。
「まったく。それ終わったら行けよ」
「わかってるわよ」
シンがやれやれとしルクレイシアが図面を引く。そして書き終えるとルクレイシアが片していき、尊が休憩と椅子に座る。
「イーロンにピエロがいると聞いた」
「悪魔の道化師ね」
「悪魔?」
「ええ。封じられているわ。私も見たことあるの。あれは封じられながらも話とかするから。そして夜だけ解放されるの」
「なぜ?」
「それが封印を長くさせるための契約だからよ。夜解放されたら赤子であろうと惨殺するの。だからイーロンの一角。貴方のような異界人や奴隷が住む街ね」
「やっぱり管理されていた街があったのか」
「ええ。その街にその道化師を放って封印を長引かせたいたわ。ちなみに家の外に出た者が対象」
「赤子は出して生贄にもしていたのか」
「そうよ」
尊が頷き、ルクレイシアが話す。
「私は見ただけ」
「そうか」
「…」
「それを話して俺があんたにこうすればよかったじゃないかとかはないからな。ただ、管理された街があるは話に聞いていたがどこにあるかは知らない」
「まあ、そうね」
ルクレイシアが道具を持つ。
「地下にあったの。でも、アルスランたちが全て解放した」
「道化師は?」
「わからないわ。私も彼が街に運ばれていくところしか見たことがないから」
「道化師」
ルクレイシアたちが扉を振り向きカテリーナが話す。
「まだ生きているの?ベックが」
「古代国の?」
「ええ。殺人の狂信者。アルスマグナでも脅威となったものよ。そして、始祖の龍の骨の一部を盗み体内に直接同化させたから死にもしないの。ラファエルが封じたけど、生贄を捧げるような封じ方はしなかったはずよ」
「なら、誰かが解いて契約上の封印にしたのかもしれないわね」
「もしくは本人がそうさせたかだろう」
「そうね」
ルクレイシアが部屋を去る。
「食事は部屋にあるわ」
「ありがとう」
カテリーナが頷きシンが話す。
「その街ですが街のものたちはどこに保護されたんでしょうか?」
「将軍に聞かなければわかりません。それと食事きましたから食べましょう」
シンがはいと返事を返しカテリーナとエステルが作った食事を食べに席についた。




