古代国アルスマグナ1
ーいやああぁ。
瑠奈が両腕を掴み息を弾ませながら涙を落としていた。そこは広い結晶で作られた部屋の中で瑠奈が震え喉を抑える。
ーミオ。ミオ。私。
血に染まったミオを思い出すと瑠奈が頭を抱え振るとしゃくりをあげ前のめりになる。
「瑠奈」
「いや…」
呼びかけたランスロットが瑠奈に触れる。
「もう、いや…。ミオ…ごめん。ごめん、なさい」
ランスロットが瑠奈の顔をあげさせると瑠奈が泣きながらランスロットを見る。
「辛いなら、忘れさせようか?」
「わ、すれ、たら、なにも、の、こらない」
ランスロットがふっと笑う。
「しかしこのままだと、ずっと苦しみ続ける。私も泣き続ける様を見るのは飽きるからな。ああ、でも」
ランスロットが瑠奈を押し倒す。
「忘れる前に契りを交わそうか。瑠奈」
瑠奈が小さくしゃくりをするがランスロットが口付けすると胸を大きく膨らませ両手をランスロットの肩につけ抑え抵抗する。ランスロットが離れ瑠奈が息を弾ませるもその手が縛られると瑠奈が凝視するランスロットを見てぞっとした。
ーよし。
尊が気絶させた男たちを縛り付けると隠していた木の実を食べる。
「貴重な実を食った分は払ってもらうからな」
尊が足早に移動すると外へと出る。そして誰もいない街を見る。
ー柚が話してた沈んでいた国か。
尊が食べ終えた種を地面に埋めると蔓が伸び上へと向かう。そしてさらに上に伸び上がる。
「でかいな。アストレイよりかは小さいか」
「そうか」
尊がぎくりとし、上半身裸だが下半身は布で隠され、片腕が機械に義手となったランスロットが面白く笑む。
「なら、まだ広くさせないとな」
「…オタクはなんでも一番が好きか?」
「ああ」
ランスロットが手を向けると尊がフライパンを出し鋼鉄の槍をスイングし弾き飛ばす。ランスロットが驚くも大笑いし尊がふんと鼻を鳴らすが腕が重くなるとすぐに亡者たちを見る。
「なんっだあっ!?」
亡者が尊を下へと引き摺り下ろす。尊が地面に叩きつけられる前に風で自らを吹かせ浮かせ地面に転がる。亡者たちが姿を消すと尊の頭元にルクレイシアがたち見下ろす。
「あなた結構ばかなの?」
「…ばかじゃない。こっちは計算して生きてるんだよ」
「フライパンも計算のうち?」
「ああそうだ」
尊が起き上がり大きく息を吐く。
「それよりあの裸体の王様は暇か?」
「これから忙しくなるわよ。連れていって」
『はい』
機械人形たちが来ると尊を起こし今度は囲み連行する。ランスロットが部屋へと戻るとベッドの上で横向きで裸になった瑠奈が顔を赤くし小刻みに震えていた。ランスロットがその姿を見て興奮し瑠奈の傍に来ると瑠奈がランスロットへと視線をむける。
「ラ、ンス」
ランスロットが口付けすると瑠奈が手を挙げランスロットを抱き受け入れる。瑠奈が離れ吐息を吐くも再び自分から近づき口付けする。ランスロットが瑠奈の頭に手を回し抱き瑠奈が顔を赤くさせながら求める。
ーもう、どう、なってもいい。今は、ただ。
瑠奈が離れる。
「欲しい…。早く来て。いれて」
ランスロットが覆い被さり、瑠奈が後ろに身を逸らし声を上げた。
ー瑠奈。ミオ。柚…。
紬が落ち込み項垂れる。焔がそばに寄り添い声をかける。
『紬…』
「……あのとき、村の方じゃなくてうちも学園いたほうがよかったかな」
『村にいたから無事ではありませんでしたか』
「でも、瑠奈たち…。兄さんも。うちいたら、止められたかも…」
紬が落ち込んでいたがサムがしょんぼりとするぴこらげに乗りそばへと来る。
「そんなこと言ったら俺らどうすんだよ。そばいたのになにもできやしなかったし」
「だじょ…」
「…小さいから」
「小さい関係ないわっ。あと、また会うために何するんだっ!俺だって尊に会いたいんだからな」
「…うん」
紬が息を吸い吐き出し立ち上がる。
「行動」
「そうだ」
「乗り込む」
「いやそれはやめろ。すぐ殺されるからな。っておい。おいこらあほっ!おおいきけやばかやろお!!」
紬が走りぴこらげたちが慌てて追いかけた。
エステルがやや俯きながら機械人形に囲まれ歩いていた。そのそばにユーリが付き添いおりエステルが目の前の大樹を見て目を見開く。その大樹の中の樹液にミオが浮かび眠っておりエステルがミオを見上げる。
ー精霊?
「あの、この人は…」
エステルが振り向き驚くとユーリから尊に変わっていた。
「え」
「エステルだろ?俺の母親も歌手だった。椎原元子」
「元子…。日本のソプラノのオペラ歌手で女優の」
「ああ。俺はその息子の尊だ」
「行方不明と聞いたわ…。マネージャが話してくれたの」
「人身売買組織に売られてここだ。くそおじ夫婦のせいで」
尊が進みミオを見上げると足元の骨を見る。
「人喰い大樹」
「え?」
「未開の地に生えている大樹で人喰いだ。正確には雑食植物だな。その力、養分を使って回復させてるのか。内臓…」
尊がむうと眉を寄せる。
「胸は違うな。処置の後もある」
「…あの」
「待て」
尊が大樹に触れその樹液の中に手を入れミオに触れる。
「癌か。その種は一度取り除かれているが…再発か」
「その子は、人?知り合い?」
「ああ。友人のまた年下の友人だな。あとは、妹の友人だ」
尊が手を引く。
「妹に擬態した精霊でしょう?」
エステルがはっとしやれやれとするルクレイシアを振り向く。そのそばにロレンシオがおり、ロレンシオが話す。
「勝手にあちこちと出歩くな貴様は」
「出歩きたくなる性分なんですよ。それとどうしてエステルをここに連れてきたんです?彼女をこの世界に」
「彼女は私たちが連れてきたわけじゃないわ。売られてきたのよ。借金を負った親族に」
エステルが口をつぐませルクレイシアが話す。
「清浄化した力。彼女はミオの代わりとしてここにきたの」
「道標か」
「ええ。その通り」
「ならミオの用事はもうないだろう?」
「その娘は人質だ。アルスランの娘だからな」
「恐れてるな。あの人の力を」
エステルが恐々とし、ルクレイシアが話す。
「そうね。あと、そろそろ部屋に戻って欲しいのだけど?」
「ならもっといい部屋用意しろ。退屈だ」
ロレンシオが睨みつけ、ルクレイシアがやれやれとするも耳に手を当て小さく頷きその手を下ろす。
「分かったわ。あなたに見合った部屋があるわ」
ロレンシオが眉を寄せるが軽く視線を逸らす。
「しかし…」
「裸体の王様か?」
ロレンシオが鋭く睨み、尊が話す。
「俺の前にその姿で現れたからな」
大樹の根が尊の腕に張り付き細い根が腕に刺さる。
「ひっ」
「その木のそばにいないほうが賢明よ」
「知っているしどんな性質かわかっている」
樹木が青色へと変わると尊の腕から根が引き枯れ始める。
「なに?」
エステルが後ろに下がり枯れ果て落ちていく葉を見る。そしてミオが光り僅かにその目を開ける。樹液が徐々に減りミオの中へと吸収されるとミオが前へと向かい地面へと向かい落下する。だがそのミオを突如現れたルーシャスが受け止める。尊が血が流れる腕を落とす。
「何をしたの?」
「俺の血は特別な血らしくてな。再生と破壊の両方を併せ持つし、俺はそれを操れる」
ミオが胸を大きく膨らませはあと息を吐きその目を開ける。
「ミオ…」
「体の完全回復だ。あの裸体野郎に今度は道具として使われるな」
ルーシャスが口をつぐませる。
「……誰?」
尊が眉を寄せ、ミオがぼうとルーシャスを見る。
「誰?」
「名前は?自分の名前は言えるか?」
尊がやや慌てて確認しミオが僅かに眉を寄せる。
ー名前…。名前は…。
「私、知らない……ーー」
拘束された尊が顔をしかめながらルクレイシアに伴われ歩いていく。
「血の流れすぎによるものか、ショックによる記憶障害とは」
「あなたが悩んでも仕方がないんじゃない?」
「仕方なくない。ミオの中に俺の妹がいる」
「同化した精霊でしょう?」
「精霊になった妹だ。精霊は魂だからな」
「はいはい」
「事実だ」
ルクレイシアがやれやれとし、扉を開ける。そこに多くの薬草が植えられた花壇が用意されており尊が周りを見渡す。
「裸体の王様があなたにだそうよ。どうぞご自由に」
ルクレイシアが拘束を取り去っていき、尊が中へと入り薬草を見る。
「まあ、いいはいいが…。作ってそれで、どうすんだおい。はあ」
尊がため息し、木の実がなる木々を見る。
「まあ、ストックは作っててもいいか」
尊が空中から道具を出す。
「サムがいてくれたらな。サム。頼んだぞ」
尊が道具をテーブルへと置き採取するかとその場を離れ必要な分の薬草を切っていった。
ミオがわからないままルーシャスの隣に座り肩を抱き寄せられていた。ルーシャスがやや俯きミオがルーシャスへと手を伸ばしほおに触れる。
「冷たい」
「…」
「冷たくて気持ちいい」
瑠奈がルーシャスの手を握り自分のほおに当てる。ルーシャスがミオの背中に手を回し抱きしめミオがその目を閉じ静かに抱かれた。
流れ出る水とお湯の湯船の中でランスロットが淡く髪を光らせ眠る瑠奈を抱きながら湯船に浸かっていた。
「傷んでいるな。綺麗にしなければな」
ランスロット瑠奈の髪に触れる。すると髪が伸びながら艶をたてる。瑠奈がその目を覚ましランスロットの手を握るとランスロットがその手を握り返す。
「お風呂…」
「ああ。体が休まる。ゆっくりと入ろうか」
ランスロットが口付けすると瑠奈がその目を閉じ受け入れる。そしてランスロットが離れると体をランスロットに預ける。
ー紬と焔とその他だな。ユラー。
紬たちが焔に乗りアルスマグナの上空を浮遊していた。
「しゅごい」
「あーあー。復活したかあ」
「サム知ってるんだ?」
「ああ。だからアルスランとかに話してたのさ」
紬の目の前に女が現れると紬が鋭い細剣の突きを避ける。焔が進み旋回し、紬が心臓を爆つかせるが頭を振り呼吸を整えサム達が紬の後ろに隠れながら固まる。
「び、びっけたあ」
「じょー」
「ここ敵地だった」
『はい』
今度は背後に現れると今度は寝そべり避ける。
ー早いわねこの子。
女がまた姿を消し宙に浮遊し構え機会を狙う。
ーあの聖霊を狙うか。
「よし突入!」
紬が飛び降り地面へと向かう。サム達が声を上げ、女がすぐさま追い紬に追いつくと再びつくも紬が空中で身を逸らし器用に避ける。
ーなんなのこの子!?当たらない!!
女が奥歯を噛み締め姿を見せるとその細剣に雷を纏わせるも。
「お前まさかあの時の貧乏な餓鬼じゃねえか」
「びんぼーにゃのか?」
女の背後に2人がいつのまにかきており女がサムを見て目を見開く。
「あのっ、妖精っ!?」
「よ」
「したー」
女がはっとし地面が近いのを見て慌てて結界を張ると音と砂埃が大きく立つ。サム達が女から離れ着地した紬の傍にくる。
ー油断したっ。しかもこの国を知りすぎている妖精がいるっ。生きている。
女が痛みを堪えながら体を起こす。
「さ、む。う…」
女がその場に倒れ意識を失う。
「あーあー」
「知ってる人なんだ」
「ああ。王室序列だけど貧乏で常に飢えてたんだ。騎士になってからは稼いできたけどやっぱり貧乏」
「どうして?」
「浪費されてたんだよ。実母に」
「そっかあ」
『敵』
『侵入者』
機械人形達が近づき紬達を囲む。紬が地面に手をつけ念じる。すると機械人形達が止まり目の光を青くさせ引いていく。
「お?」
「ふふん。レーガンの血は侮れないからな」
「にゃんで?」
「その通り」
丸眼鏡をかけたエルフの男がその場にくる。
「機械人形達はレーガンの血。王家の血を継ぐ方には手を出さないのです」
「…ん?」
紬が首を傾げるとサムが呆れる。
「その通りだっての。頭戻せ頭」
サムが押しやり紬が頷く。
「さて、ユラ殿が敵わなかった相手のようですからね」
エルフの男が本を開き軽く眼鏡を掛け直す。
「本気で行きます」
「ん。こい」
「バカみたいな間に受けてねえで逃げるぞ!!あれは魔導書の上位だ!」
「本嫌いだから知らない」
「いや知らねえじゃねえよ大層ヤバすぎるから教えてんだよ!!」
サムが喚き、紬に教えていく。
ーあの妖精。他の妖精達と比べて多くのことを知っていそうだ。
「元、じゅう、にん。よ」
エルフの男がユラを見下ろし、ユラが苦しく話す。
「この、内部、を、詳しく、知ってる…。むこう、に、知られてる、可能性が、う」
エルフの男がサムを見る。そしてサムの周りに柵が現れサムを囲み鳥籠の中に捕える。
「なっ、なんだあ!?」
サムがエルフの男の元に吸い寄せられるも慌てた紬が鳥籠を掴み引きずられる。
「面白い子ですね」
「油断、しない、方がいい」
「なら」
巨大な炎の柱が後ろから現れ伸びる。エルフの男が驚き炎の柱が動き移動をするとエルフの男がユラを連れすぐに回避する。紬が旋回する焔を見上げると焔から影が落ちる。そしてマナが降り立ち楽しくゆっくりと周りを見渡す。
ーあれはっ。龍人。
エルフの男が興奮し、紬が鳥籠を抱きながらそばへとくる。
「まだ早いですよ」
「すまないな。早く降りたい気持ちがよぎった。何せ父上の故郷だからな」
ユーリが姿を見せ剣をマナに向けるもマナが両手で挟みそのまま刃をおる。ユーリが驚愕しすぐさま下がる。
「おったー」
「すげえな」
「うんうん」
風が巻き上がるとマナが魔導書を光らせるエルフの男を面白く見る。
『デスランド』
巨大な黒い球体が現れ吸い込み始める。瑠奈達が慌てて建物にしがみつき、黒い球体が建物や機械人形達を吸い込む。
「なに、あれ」
「吸い込まれたら即終わりのやつだよ!離さないでくれよお!」
マナがふふっと笑い片足を出し横へと向ける。
「踏波」
エルフの男が衝撃と共に宙を舞う。エルフの男が血を吐き混乱させる。
ー何が起きた。なにが。わからないっ。わかるのはっ。
男が風を使い激突を避けると地面に転がり咳き込む。
「な、なに、が」
「ただ気を下に送って上に飛ばしただけだ」
マナが目の前に来て見下ろす。
「まあ別に、技名を告げなくてもいいがあえて言った」
巨大な水柱が横から現れマナへと向かうもマナが消し去り目の前のサラサを見る。
「やはり、生みの親につくか」
「……それが運命なら」
「我が父や私は人側だぞ」
マナが雷を放つ丸い物体をいくつも飛ばすとサラサが冷や汗を流す。
「さあ、私と追いかけっこでもするか?」
「で、でき、な、う」
ー次元が違いすぎる。
サラサが震えかみ、男がぞっとしていく。
ーそこまで。サム。
「お?」
鳥籠が外されるとサムがすぐに外に出る。そして尊が薬を調合しながら話す。
ー来てくれ。俺の場所はわかるだろ?
「分かるけど…。たく」
サムが移動し、マナが雷を収めるとすたすたと前を歩き紬がついていく。サラサが腰抜かしながら離れていくマナ達を見る。
「どこ行くんですか?」
「散歩だ」
「…えと、瑠奈とか」
「難しいな。まず気配がしない。気配がしないということは奥深い所にいるということだ」
「地下とか?」
「いいや。次元。亜空間。ランスロット王が作った特殊な中にいる。そうなるとその中へと入れば死ぬだけだ。死んでしまえば会えない」
「…う」
「ミオは?」
「ミオの気配はする」
「生きてるじょ?」
「生きてなかったらぴこらげ。そちらはここにいない。私たちの目の前にもいない。契約者を変えない限りは契約者と共に運命をいく。それが聖霊だ」
「しょーなのきゃ」
「なら聖霊が死んだら?」
「聖霊は霊獣と違い死ぬことはないが、蘇るには契約者の半身が必要だ。いわば、半分の命」
「ええ」
「んー、契約者なくしては、かな?」
「ふふ。その通りだ」
紬が頷きうずうずとする。
「なんか、沈んでた割には建物綺麗」
「すべての建物に術がかけられている。彼の国自体が巨大な術式により作られている。だからこそ、危険であり美しい」
「え?」
「おーい」
サムが小瓶が入った袋を持ち飛んでくる。
「用事はこれらしい。後どうする?」
「戻る」
「うー」
「まだ焦るな」
マナが紬の頭に手を乗せはなすと焔が降り立ち紬たちを乗せ空を舞う。それをランスロットが縦長の窓から足を出し眺めて見ていた。その後ろに柔らかい白いネグリジェを着た瑠奈が広いベッドの上で静かに眠っていた。
ー使い。渡したい。終わる。使いは帰還。
片言の文字が書かれた折れた槍の柄がテーブルに置かれていた。そして届けられた小瓶の中の薬液をナガハラが点滴袋に入れ目覚めないダリス、紅蓮へとその薬液を注入させる。サイモンたちが見守る中サイモンが話しかける。
「これで起きますか?」
「さあな。ただ、あの小僧が作る解毒薬は確かだ。様子を見ておけ」
「はい」
ナガハラが去りサイモンが頭を下げた。
「どうやってあちらに伝えた?」
尊がため息し調合しつつランスロットへと話す。
「王様が俺に向けて放った槍だよ。フライパンで返しただろ?あの時に刻んだ」
「また器用なことをする」
「どう、もっ」
尊がびくっとしランスロットが後ろから尊の顎、そしてその髪に触れる。
「瑠奈を知るなら体質も知っているだろう?オイルや香水を作っておけ」
「…触るな気色悪い。あとそうしたら三食飯出せ。まだ食ってないから腹減ってんだ」
ランスロットがふふっと笑い離れる。
「分かった」
「腐った飯とかよこすなよ」
「するわけがない。夜に使う」
ランスロットが姿を消すと尊がはあとため息をし文句を言いながら作業を中断し、ハーブオイル作りのための薬草をまたつみに向かった。
目の前にパンやスープ、肉などが多く並べられており、それらをミオが食べまた食べていく。それを隣でルーシャスが見ていたがぐっと口をつぐませる。ミオがルーシャスを見てパンを向けるとルーシャスが頭を振りミオが頷き再び食べた。そして全て食べ終えると気持ちよく眠りにつきルーシャスがそばを離れずにいたが目を赤くさせながらベッドシーツを握る。
ーやめろ。やめろ。
ルーシャスがミオに近づき口を開ける。ミオが目を覚まし目を赤く光らせたルーシャスを見るもルーシャスが押し倒しミオを抑える。ミオが驚きルーシャスが顔を歪め項垂れるとミオから震え離れるがミオがその腕を掴みルーシャスを抱き寄せる。
「お腹すくならいいよ。我慢しなくていいから」
ルーシャスがミオの首筋を噛み震えながらその血を吸う。ミオがルーシャスの頭を抱きはあと息を吐く。ルーシャスが口元を血で濡らしながら離れる。
ーいつもなら、肉も…。なのに、これだけで落ち着いた。
ルーシャスがはあと息を吐くとミオが血を流しながらルーシャスの首を噛みぎゅうと力を込める。そして離れると僅かにルーシャスの血が口元についていた。
「ミオ…」
「…」
ミオが僅かに目を赤くさせるがすぐに消えると再びルーシャスの首筋を噛み血を吸う。
ーなぜ、こんなことをするんだ…。
ルーシャスがミオの背を抱きミオが吸い終わるとはあと息を吐き目を爛々と赤くさせるが再び消える。
「ミオ」
「楽になった?」
「…ああ」
ミオが笑んで見せる。
「良かった」
ルーシャスが小さく頷きミオがうんと頷くと体を横たえそのままの状態で眠りについた。
ー血を飲んだ?
ルーシャスとミオをルクレイシアが診察する。そして機械を使い血液を調べていき、結果を見て眉を寄せる。
「どう言うこと?」
「なにがだ」
ルーシャスの前にルクレイシアが立ち聴診器を使い胸に当てる。
「心臓が動いている」
「え…」
「まだ微細だけど…。彼らは呼べる?契約した悪魔よ」
ルーシャスが頷くと足元に穴があらわれる。そして黒い頭のない鎧のみのものが姿を見せる。
「何か思うことは?」
『ある。ただ、契約違反ではない。我もこのようなことは初めてのことだ』
「でしょうね」
「何がだ?」
ルーシャスが尋ねるとルクレイシアが眠るミオを指差す。
「彼女は健康。そしてあなたの場合捧げたはずの心臓がまた動いてるわけ。つまり、彼女の血か、噛まれた時に力を注いだか。ああでも、目を赤くさせたなら吸った…?わけわからないわ」
ルクレイシアが考える。
「とにかく、彼女の力があなたに影響を与えたのは事実。まあ、悪魔は問題ないとのことだからいいけど」
ルクレイシアが器具を片付ける。
「ああ、そういえばもう1人わかりそうなのいたわね」
「誰が?」
「尊。捕虜よ。そして王が気に入って部屋まで用意したの。こっちよ。彼女も連れてきて」
ルーシャスが頷きミオを抱き上げルクレイシアの後についていき悪魔が再び穴の中へと姿を消した。
ーこの効能をつけておけ。
ー匂いはこれがいい。
「あのわがままな裸体の王様をどうにかしろっ」
尊がやってきたルクレイシアへと声を上げ、ルクレイシアが話す。
「出来るわけないじゃない」
「はあっ、くそ」
「何か注文受けたの?」
「ああうけてんだよ。ボディオイルとか洗髪剤やら香水やら。後から後から増やしやがって」
「忙しいのは分かったけど彼と彼女見てくれない?」
「分かってるから連れてくるな」
「今分かったのよ。あと、人手よこすわ。それでいいでしょ?」
尊がため息をし頷くとやれやれとルーシャスたちの前に来て片目に手を当て青くさせる。
ー血液の循環。
「心臓が動いているし、今も治癒が続いてるな。ミオの血を飲んだな。それも大樹の樹液とアスクレピオスの血を含んだミオの血だ」
「ああそれでか」
ルクレイシアが納得し、尊が話す。
「ミオの血は今不死の状態に近い。時間の経過と共に効力は無くなるが」
「残念ね」
「いちいち話に入るな…」
「ごめんなさいね」
尊がため息しルーシャスへと続ける。
「大樹の樹液は貴重な薬でもある。世界樹は知っているか?」
「ああ」
「なら、あの木は世界樹の幼体だ」
「あの木が?人を食らう」
「それだけの命を糧に命を与える役割を持っている。世界樹は未開の地にもある。そして俺は見たことがあるし採取したこともある。それを使っての治療もした。効果は超回復と再生。細胞から全てを再生させる。その幼体でもまだ未熟とはいえ劣らないほどの効果はある。その樹液をミオは無意識に吸い尽くした。体内に入っている」
ルーシャスが頷き、尊が話す。
「まあ質量の法則はさておき、中にあるからな。それによって傷ついて止まっていた心臓が治癒したわけだ。ちなみにミオが血を飲んだのは大樹の樹液のせいだな」
「とんでもない食欲は?」
「あれは元からだ。後は力を使えばミオの場合飯で補うとタイシから聞いた。だから特異体質だ」
「ふうん」
「血を飲んだことについてはまだ大樹の意思が備わっているから。それによる吸血行為だ。幼体の場合、吸血して養分を得るが世界樹の場合。丸ごと飲み込み溶かして食う。見てろ」
尊が指の腹を切りミオの鼻へと向けるとミオがすぐに口にし飲んでいく。ルーシャスが驚き尊が指を抜くとミオが口を開けるが再びとじすうと寝る。
「これで樹液がまだ体内に残っているのがわかる。無くなったら吸血行為もしなくなる」
「ああ…」
「あなたのところに連れてきた方が早かったわね」
「はあ」
「なら、分かったところで行くわ」
「使えるやつ寄越せよ」
「ええ」
尊がやれやれとしルクレイシアが去るとルーシャスがミオを連れ去る。尊がまったくとぼやき作られたオイルに調合したハーブを入れ一つ目のボディオイルを完成させた。
1時間後ー。
「不味い」
ルクレイシアが冷ややかな視線を送り、尊が嫌な顔をさせつつルクレイシアを見る。
「あんたが」
「そうよ私が作ったのよ」
「…」
その場に人手としてカテリーナがおり、カテリーナが尊が向けたスープを見て気まずく軽く飲むとびしっと固まる。
ー痺れる…。から、すぎて。
カテリーナが顔を真っ赤にしすぐさま水をとり飲む。
「あんた辛いならなんでも許せると思うなよ」
「辛いのに不満?」
「不満の問題だ不満の問題。研究やら医者やらばかりしてるから飯がまともに作れないんだよ」
「時間がないから仕方ないでしょうっ」
「休みくらいあるだろ。その時何してたんだ?」
「……お」
「お?」
ルクレイシアが顔をみるみる赤くさせ踵を返し扉に向かおうとするが尊がその手を掴む。
「離しなさいよ!」
「離せるか。この飯作り直す」
「捨てればいいじゃない!」
「そんなもったいないことできるか。後あんたが作るなら俺はこの先毒を守られるところか餓死して死ぬわ」
「なんですって!!」
2人が言い争い、カテリーナがまだ辛いと尊に持ってきた水をコップに注ぎたし飲んでいった。
また一時間後ー。
ルクレイシアがスープを飲み僅かにむすっとし、カテリーナがが恐る恐る飲むも再びスープを口にする。そして尊がルクレイシアの与えられた部屋の調理場でむうとするルクレイシアを見て話す。
「薄めて材料足せばどうにでもなるし余ればまた明日温めて食べ直せばいいんだよ」
「…ふん」
「少し、独特な匂いが…。でも、嫌な匂いじゃない」
「海鮮だ。ここだと嫌われている甲殻類の殻を粉にしたものを使っている。十分に出汁が出るからな」
「そうなのね」
「トムヤムクンでしょ?」
「え?」
「そうだ。向こうの世界の国の料理の一つだ。辛味のある海鮮スープ。本場はまだ辛いが旨みもある」
ルクレイシアがふんっと鼻を鳴らし飲み干し、尊がはあとため息をする。
「ていうかなんであんたが飯係なんたよ」
「王に聞いたら?」
「あいつ楽しんでるな。他の奴らは?」
「私たち以外食事はあまり必要としないのよ。ここだと尚更ね」
「そう言う種族というわけか」
「そうよ」
「分かった。だかそうしたら、ミオは?」
「いるわ。ルーシャスが用意した料理人。ルーシャスについてきた1人」
「ついてきたとなると、他にもいるわけか」
「ええ」
「あいつ何をするつもりでいるんだ?ダリス枢機卿のことだけじゃないだろう?ここにいることが証拠だ」
「本人に聞くしかないわね。あと」
ルクレイシアが皿を置く。
「私料理下手だけど」
「正直に言ったな」
「あなたが言ったじゃないっ」
尊がため息し苛立つルクレイシアからカテリーナを見る。
「料理したことあるか?」
「…あるけど」
「ならここにいる間の飯はどうしてた?こいつも」
「ええ。まとめて買ってたわ。外で」
「その手があったか」
「あなたはいちいち腹が立つわね」
「腹立てんな。あとそうなると、もう出られないからこいつが仕方なく作ったわけか。あー、そうなるともう1人人手が欲しい」
尊が考えああと声を出した。
ー料理はカテリーナ。で、薬草作りは。
手などに包帯を巻いたあのエルフの男が尊のいる部屋へとくると興味深く周りを見る。
「ちょっとあなたに悪いですけど紬たちが来てくれた時にいると分かったのでよかったです」
尊が話し、男が告げる。
「エルフの私がですか?」
「はい。知識が有りますから」
「まあ、貴方ほどかは分かりませんけど」
「俺以上ですよ。俺は新薬は作れるけれどこの世界の本当の薬は一切知らないのですから。成分を調べて合う合わないか地道に調合して作っていく。知っていればその作業も早くて済みますから。お名前は?俺は尊です」
「シンです」
「シンさんですね」
「はい。ところで」
シンがテーブルへと視線を向ける。
「先ほどから匂うこの妙な香りのする強烈な刺激物はなんですか?」
「あー、それ、ルクレイシアって人が作った飯の残り。忘れてたわ持って行って作り直すの」
残され皿のスープを手にするとシンへと向けるもシンが手を前に向け首を横にふり、尊が大きく息を吐きだし薬草と水とそのスープに入れよく混ぜる。そして油を浮かせその油を取り除いた後火を近づけスープに火をつけると香ばしく出来上がったスープをシンへと向け、シンが受け取り軽く飲みやや驚いて見せた。
ー紅蓮。
紅蓮が目を開けタイシを見る。そこにマナと透華、アンナがいた。
「紅蓮様」
『…お前は、あちらに、いかなかったか』
「はい。瑠奈様のことは、気になりますが…。まあ」
アンナがドギマギとする。
「半数の竜は残っております」
『ああ…』
「父上殿はどうだ?」
紅蓮が鼻を鳴らすと僅かに顔を歪め小さく唸る。
「まだまだだな。しかし目が覚めただけでも功となす。やはり意識のないままだと回復が遅くあるからな」
『タイシ、様は』
「俺はここだ。お前が庇ってくれたおかげで無傷だ」
紅蓮が安堵の息をつき頷き再び目を閉じすうと眠りにつく。
「さて、まだ休ませた方がいい。薬はもう必要ない。あとはダリスか。父が起きたならあちらも近々起きよう」
「はい」
「毒の槍の雨なんて…」
「陛下はそれほどの力を持っておられます。その力を、レーガンの子孫が単独で防いだのは見事です」
「ああ。多少の被害は出たが致し方ない。最小限で済んではいるからな」
「はい」
「お?いたいた」
サムがその場にくる。
「マナ。お前の生えかけの角もらえないか?」
「生え掛けは難しいな。なぜ?」
「ダリスだ。尊から調合する紙をもらったんだがその中にある龍泉木って奴。自然に落ちた竜の角。それがギルドにもなくてさあ。貴族の奴らも譲ってくれねえんだよ」
「価値があるからな。龍の角は」
「ああ。それがあればダリスの傷跡の治療のための薬出来んだ」
「なら、アンナ」
アンナが気まずく笑む。
「わ、たしは、ちょっと…」
「え?」
「やっぱりだよな。竜は自然に取れる以外角を引きぬきたがらない」
「どうして?」
「激痛だからだよ。マナは痛くないか?」
「私は特に。ただ生え掛けとなればやはり繋がっているからな。流石に渡せない」
「だよなあ。んー」
「持っている貴族を知っている」
「お?」
「ただ、難癖があるし俺のことを嫌ってもいるし好いてもいる」
「どういうことだ?」
「夜の相手。タイシは黒髪黒目の希少な異界人でもある。オークションでも高く売れる人種だ。そして、多くは貴族のもとにいる」
「ええ」
「あー、うーん」
「いっそそのごみと屋敷と破壊して手に入れましょう」
「それはだめだ。父さんと相談してくる」
サムがおうと頷きタイシが出ていく。
「実の父親の方はどこに行ったのだろうか」
「え?あいついるの?」
「ああ」
「そう言えば、半月前からお見かけしなくなりましたね。瑠奈様にはしばらく会えないと言われて出て行かれましたし」
「うん」
「へえ」
「まあいい。サム。ダリスだが様子はどうだ?」
「ああ。薬が効いたみたいでさ。熱少し下がって汗かき始めたけどまだ目が覚めないな。紅蓮は?」
「先ほど起きて会話もできた」
「分かった。あと、やっぱり龍の角いるな。なかった場合はー、どうなるか様子見か」
「もしくは父の角だな。しかし父も目覚めてからでないと無理だ。あとは、やはり力のある龍だからな」
「そうそう。力ありすぎるのも効果ありすぎて毒になるかもしれねえからな」
「なら、私のもではありませんか」
「そうだけど紅蓮よりかは弱いから話したんだ」
「それはそうですが…」
「私は人の血が流れているからだな」
「そう。一番よかったと思ったけどしゃあねえ。タイシの方が無理だったらまた検討するか別の方法とるしかねえ。じゃあな」
サムが出ていき、透華がふうと息を吐く。
「フェンリルがいるのではないですか」
「あれは回復には向いていない。とにかく、どちらも良くならなければ先には進めない」
マナが紅蓮に触れ撫でた。
花の香りが漂う髪のオイルをランスロットが瑠奈の髪に丁寧に塗り込み櫛ですいていく。瑠奈が椅子に座りながらランスロットへと話す。
「ランスがしなくても…」
「私がしたいだけだ。いい香りだ」
ランスロットが瑠奈の髪を一房すくい匂いを直接嗅ぐ。そしてはなすと櫛をおき抱きしめる。瑠奈が手を挙げランスロットのほおに触れその目を閉じた。
「疲れた…」
尊がやや焦げたパンを食べ、シンもまたちぎって食べる。そこにカテリーナがおりカテリーナがお茶を注ぎ給仕する。
「8本か」
「ええ。気に入ったやつは追加しろと言ってきます。パンは少し焦げたんだな」
「焼き加減が難しくて…。かまどを初めて使ったから」
「ああ。釜戸だから仕方ないか。後釜戸ならピザがいいな」
「ピザ?」
「向こうにあるパンの種類の一つだ。これなら簡単にできるし早い」
尊が紙に作り方をかきカテリーナに渡すとカテリーナが見ていく。
「またこの刺激物はなんでしょうかね…」
「分かってんでしょ」
赤いパンを2人が見下ろすとカテリーナが気まずく話す。
「その、ルクレイシアが、作ると言われて一緒に作ったパンなの…」
「…」
「あいつは激辛しか作らない女なのか」
尊が宙に手を入れどれだったかと探る。そして硬い円盤状のチーズを出すと、パンを薄く切りチーズにハーブと魚や肉の燻製を乗せ火をつけ炙りチーズを溶かし出来上がったカナッペを作り上げる。そして酒を出しコップに注ぐ。
「それは?」
「酒だ。ワイン。未開の地で俺とかが作ったやつだ。赤いから相当昔に持ち込まれた果物を発酵させて作った酒になる」
「ああ」
シンが受け取り匂いを嗅ぐとカナッペを手にし口にした後ワインを軽く飲む。
「美味しい…」
カテリーナがやや驚き、尊が話す。
「それは赤だ。赤は皮付きで作る。そして白は皮を取った実だけで作る。同じ果物だが全く違う味わいのできるワインになる」
「ええ」
尊に手が触れると尊が呆れ、半裸のランスロットが尊にのしかかりカナッペに手を伸ばし口にする。シン、カテリーナが硬直し尊が告げる。
「おい。裸体の王様。お前はせめてドアから入れ」
「大口叩けるのはお前だけだな」
「叩きたくなる」
ランスロットがカナッペを飲み込む。
「干し葡萄はないのか?」
「…」
「私は白ワインが好きだな」
「なら魚かマリネか野菜にしろ酒のつては」
「明日でいいから作っておいてくれ。もらうが」
ランスロットが小瓶を手にし尊から離れ姿を消す。シンが大きく息を吸い吐き出しカテリーナがドキドキする。
「たまに突然くるからなあの裸体の王様は」
「え、ええ」
「突然は困りますね…」
「はあ。つうかあの野郎。さりげなく持っていきやがったな」
ワインのボトルとカナッペが無くなっていた。
ランスロットがワインを飲みカナッペを食べる。ベッドの上では裸体で眠る瑠奈がおり、ベッドの上はシーツが汚れ乱れていた。
ー尊を連れてきて正解だったな。
ランスロットが口に再び含み嬉々とし飲み食いし堪能した。
ルーシャスがミオの首筋を噛み血を飲み、ミオもまたルーシャスの首を噛み血を飲んでいた。2人はお互い抱き合い吸血しあっており、ルーシャスが先に離れ息を僅かに弾ませミオもまた離れるとルーシャスにもたれかかりはあと息を吐き出す。
ー鼓動が聞こえる。少しの時間何も感じなかった鼓動がこんなに熱かったのか…。
ルーシャスが顔を赤くさせ項垂れる。
「音がすごい」
ミオがルーシャスの胸に手を当て耳を当てる。
「ルーシャスの音…」
ルーシャスがかあとより顔を赤くさせミオを押し倒し覆い被さる。ミオが顔を赤くさせ項垂れるルーシャスへと手を伸ばし熱くなった頰に触れる。
「ルー…」
ルーシャスがミオを振り向きミオが涙を流す。
「生きてる…。暖かい」
ミオがルーシャスの頬を挟むとルーシャスが顔を歪めミオの胸に頭をつけ涙を落とす。ミオがルーシャスの頭を撫で抱きしめる。
「良かった…。ルー」
ルーシャスが今度は嗚咽を漏らしミオの上で泣きじゃくった。
ミオがルーシャスの白くなった髪に触れる。
「…悪魔はまだいる」
「ええ」
ミオがルーシャスの髪を下ろし温かくなったその手を握る。
「ダリスさんの事もだけど、他に何か分け合ったから?」
「……城では常に比較されていた。叔父と。そして叔父に勝てと幼い頃から言われ続けてきた。それが私に根付いた。強く。だが、叔父は天才とも言えるし、文武共に良き師がいた。それよりも良い師をと父上たちが用意した」
「陛下が?」
「ああ…。父上もだが祖父である王も叔父を好いていない。その理由として叔父は国には入れない。故郷に戻れなくしている。祖父の力で」
「…以前向こうの世界でみんなで故郷の話をした時、ダリスさんだけ何も話さなかった」
「戻りたくとも戻れないからな。昔暮らしていた村も父上によって落とされた」
「え?ダリスさんのご両親ではなくて?」
「父上だ。叔父上の両親は確かに遊び人だったが、大叔父上は仕事はできた。新たな田畑を作る。道具などの開発をし生活を豊かにするなど、国のために尽くしていた方でもある。大叔母上に関しては確かに浪費家なだけであった」
「全部の権利は王の名前だったけど」
「見たのか?」
「ええ。ルーの国でもあるから。どんな国かなと思って記事とかも見たの。ダリスさんの故郷とは聞いたけど、ダリスさんについては何も書かれてなかったな。ルーについては生誕祭とか、園芸の向上とかは書かれてた」
「ああ…。以前ミオが、花はとても貴重だと聞いたから」
「イーロンにはなかったもの。私の村には。商人が月に一度来ていたけど、花は食べ物よりも倍以上に高かった。わざとなのか、上乗せしているのかわからなかったけど高かったのは覚えてる」
「花は高い。それは事実だ」
「やっぱり」
「ああ」
ミオが頷いていき、ルーシャスが話す。
「私は」
「俺でいいんじゃない?ルーはそっちがいいやすいんでしょ?」
ルーシャスが小さくふっと笑う。
「俺はミオから色々話を聞いて売られているものの価値を調べたんだ。そして、身近にありそうで高いもの。手に入れられるけれど手間がいるもの。その量産ができないか調べて協力して作り上げた」
「ええ」
「まあ、それも今後どうなるか」
「あなたがここにいるものね」
「ああ。父達は俺のことも好きではないんだ。叔父上によく似ているから」
「ならもう廃嫡してそうね」
「そうだな」
「そして犯罪者」
ルーシャスが笑って見せるも口をつぐみ、ミオがやれやれとする。
「コンスタンスさんが何度もルーのことばかばかばかって」
「そうだな」
ミオが肩でおしはあと息を吐く。
「もう、やってしまったことは消せないし事実だから」
「ああ」
「うん。でも、ルーがしたことは他人には出来ないこと。たとえ、横取りされても必ず分かるから」
ミオがルーシャスの手を握る。
「でもルーも悪いことしたから。その、捕まるのは、確定」
ルーシャスが小さくふっと笑む。
「笑い事じゃない」
「ああ」
ミオがもおと声を漏らすとルーシャスがミオに近づき押し倒しミオを見下ろす。
「ミオ。これも犯罪になるか?」
「……」
「ずっと気になってたんだ。なぜ、叔父上と婚約関係を結んだ?」
「契約したの」
「契約?」
「ええ。私はもう、戦争を起こしたくない。私は目の前で大勢の家族が死んだから。血のつながりがなくても家族だったから。私はダリスさんを見てこの人なら強く言える人だと思ったの。父が選んだのは私の業を背負えるとわかったから」
「業?」
「私は父の血を引いてる。そして、無意識の内に人を殺してしまってる」
「人を…」
「村の人たちが私をありがとうと。役人が怖かって何もしてくれなくなったって。私の中に私の知らないものがある。母は知ってて私に秘密にしてたけど、私は知ってる。ダリスさんは若く枢機卿になった。そして王の候補者にもなってる。それだけ強いなら、止めてくれる。殺してでも。ルーはできる?」
ルーシャスが口をつぐませ頭を振り、ミオが頷く。
「あと、私が婚約した時に結婚するなら王になった時と約束したの」
「王に…」
「どちらの王でもいい。それで約束したの」
「とてつもないな…」
「でしょ?」
ミオがふっと笑む。
「ルー。それが彼との契約。だけど、ダリスさんは私を大事にもしてくれている。でも私は怖いし、幸せになれる自信はない。けど、ならないといけない。私を助けてくれた人たちがいる」
ミオが手を挙げルーシャスに触れ涙を流す。
「私はその人達のためにこれから先簡単には死ねない。私の命はその人達のおかげで生かされている。ルーシャス」
ミオがもう片方の頬に手を当て頬を包み込む。
「あなたも死んじゃダメ」
「…」
ミオがルーシャスの頬を挟み抑えるとその手をおろす。
「ルー。私とダリスさんが街に出た時、ついてきたんでしょ?」
「いや…。偶然見かけたんだ。そうしたら、か」
「女装する?」
ルーシャスが頭を振りミオが話す。
「出来ないんだ」
「流石に…」
ミオがやれやれとする。
「ルー。私、みんなのところに戻らないといけない。心配してる。ユナもいる。会いたがってた」
「…ああ」
ミオがルーシャスを押し体を起こす。
「ルーは?」
「…無理だ。俺を追ってきた城の者たちもいる」
「え?」
「食事を食べただろう。作ったのはそのもの達だ」
「…そっか」
「ああ」
「……私は、行かないと」
ルーシャスが小さく頷く。
「ええ。あと、気になったのだけど瑠奈は?」
「彼女は…、ランスロット王の元だ。ミオに、瀕死を負わせたことに精神が…。最近見た時は意識はあるが記憶を失ったような。ただミオと違って意識も定かではない気がする」
「…」
ミオが俯き腹部に触れ頷く。
「ルー。あのね。瑠奈は…」
ミオが目を見開き、ルーシャスが青ざめる。そのルーシャスの後ろにルーシャスの首に触れ髪に触れるランスロットがいた。
「白髪もいいな。あと、手入れもしているのだな。そして」
ランスロットが今度は手を背中に当てる。
「心臓が動いている。ああ、だが」
ランスロットミオを楽しく見る。
「そちらもか」
ランスロットがミオの首を義手で掴み締めるとミオが顔を歪めるとランスロットを睨みつけその手を両手で握る。
「いい目だ。堪らない」
「ふ、ざけ、ない、で」
「ふざけていないさ」
ミオがランスロットへと手を向けるもランスロットがルーシャスの首を握る。すると握られた手から血が流れる。ルーシャスが顔を歪め小さく唸る。
「少し眠っておけ」
ランスロットが力を強めるとミオが力をなくす。そしてランスロットが離すとその場に倒れ動かなくなる。
「ミオっ。つっ」
「さて、ルーシャス。目の前にお前が好いていた女がいる」
ルーシャスが歯を噛み締め、ランスロットが楽しく告げる。
「自分のものにしたらいい。まずは」
「こんな、やり方は、いやだ。俺はもうっ」
ルーシャスが弾み、ランスロットが告げる。
「なら私が手をかそう。不器用な男だから仕方がないな。ルーシャスはー」
ー苦しい。痛い。お腹、痛い。
ミオが目を覚まし目の前で覆い被さり息を荒くさせるルーシャスを見上げるも下腹部に激痛が走ると涙を流し小さく声を漏らす。ルーシャスがミオを振りむき、ミオが目を赤くさせるルーシャスを見上げるもルーシャスが近づき口付けをする。ミオが顔を赤くさせ、ルーシャスが離れ顔を歪め涙を滲ませる。
「み、お。俺は、やだ。こんな、やり方で、は、いやだ」
ルーシャスが奥歯を噛み締め項垂れるもミオが強く抱きしめる。ルーシャスが涙を流していく。
「ミオ…。すま、ない。す、ま、ない」
ミオが頭を振る。
「ルーのせいじゃない。泣かないで。落ち着くまで、いいから。ルー」
ルーが啜り泣くが目がより赤くなると体を起こしその表情を無へと変える。ミオが小さく息を吐きルーシャスを抱きしめ、ルーシャスがミオに抱かれて行った。
ーあの男。ああ。
ダリスが奥歯を噛み締める。そこは暗闇の中で周りにはいくつもの景色がモニターのように映っていた。そのダリスのそばにルクスがおり、ルクスが話す。
ーまるで子供ですね。
ーああ。まだ動けない体が憎い。
ー彼らに任せるしかありません。
ールクス。タイシ殿達に手伝いを。力を貸してくれ。
ルクスがはいと返事を返し姿を消す。そしてダリスの足元にいたルクスが目を開け起き上がるとその姿を消す。すると今度はタイシやアルスラン達のいる元へと来る。タイシがルクスを振り向きナガハラが話す。
「どうした?」
『ダリス様からの命です。龍泉木を早く手に入れるための力添えをするようにと』
「ああ」
「ん?え?」
その場にサイモンがおり、アルスランが話す。
「あれは葵からの指導も受けたことがある」
「えっ!?」
タイシもまた驚き、ナガハラが話す。
「ああ。ちなみに、生霊。魂の一部を飛ばして見ること、聴くことができるからな。最近聞いた話、向こうに渡って力が強くなったので見る目が増えたと聞いた。ルクレイシアについては知らんが、あいつは悪巧みしてる連中の足跡を見つけてはアルに伝えてたからな」
「おかげで早期解決ができた件が多々ある」
「…」
『ミオ様方についても様子をご覧になられました。ミオ様はあちらでランスロットから弄ばれたようです。ダリス様はその件でお怒りです』
「ちなみに詳しく?」
ナガハラが話、ルクスが話す。
『それはできません』
「そのランスロットと」
「レイジ」
ナガハラがやや呆れ、アルスランがテーブル真っ二つに割る。ダンガン達が驚き、タイシが息を吸い吐き出す。
「お前は物をぶっ壊すなあほうっ。ランスロットに犯されたわけか?」
『違いますが似たようなものです』
「となると、違うやつか。あと、龍泉木を持っているのはダリスの異母兄だったな」
「はい。ギルドの注文票に名がありました」
「ああ」
「悪業あるもので早い」
「おい。アル」
「さっさと終わらせる」
「私事を持ち込むなお前は」
ナガハラが突っ込みリュウがはあとため息をし無理無理と手を振った。
ミオが目を覚まし背を向け声を押し殺しなくルーシャスを見て痛む体を起こす。
「ルー。ルー…」
ルーシャスが顔を伏せミオが無理やり自分を向かせると抱きしめ包み込む。
「ミオ…。すま、ない。ミオ…」
ミオが頭を振る。
「泣かないで。いいから」
ミオがルーシャスを慰める。そしてルーシャスが泣き疲れ眠るとミオがルーシャスの頭を撫で腫れた目元に触れる。
「素直になればいいのにな」
ミオが起き上がりそばに来たランスロットを見て首筋を噛む。ランスロットがミオへと視線を向けミオが強く噛み締める。ランスロットがミオを離しミオが目を僅かに赤く灯しながら睨みつける。
「痛いことをする」
「体が傷ついただけでしょうあなたは。瑠奈は?」
「私の部屋だ」
「ルイスさんに心臓を取られたのね」
ランスロットがすっと目を細めミオが元の目の色へと戻るとふっと笑う。
「元の力に戻るこのは不可能。新たな命となってからでは遅いもの」
「…」
ランスロットの手が澪の頬を叩くもミオが負けじとはたき返し鋭く睨む。ランスロットが頬に触れ冷めた視線をミオへと向ける。
「やはり殺すか」
「いやだ」
ランスロット、ミオがお互い動き首を絞め合う。ランスロットが加減に眉を寄せミオが鋭く睨む。
ーなにか、企んでいる。あ。
「おっと」
ランスロットが消えるとミオの体が前に傾くもグッと堪える。だが両手を後ろに回され握られ顎をもたれ後ろに姿を見せたランスロットに引き寄せられる。
「そうだったな。お前はアルスランの娘だった」
「っ」
目の前に目を赤くさせたルーシャスがくるとミオが奥歯を噛みしめるも、ランスロットが今度は抱きしめる。
「はなせっ」
「まだ元気が有り余っているみたいだからな。なので私も特別に加わろう。3人で楽しもうじゃないか」
ミオがぞわっとし首筋を舐められていきルーシャスが更に近づくと僅かに顔を歪めた。
ー中々楽しめたな。
ランスロットが虚ろな目をさせ息を弾ませるミオの頭を膝に乗せ撫でていく。その傍には疲れ眠ったルーシャスがいた。そしてミオの体には歯形や赤い点々とした跡があちこち残されていた。
「瑠奈だけではと思っていたところだからな」
ミオがランスロットへと視線を向けランスロットが楽しく笑んで見せる。
「ルーシャスもともに私の部屋だ」
「…っの、下種、男」
「反抗的なところもまたいい」
ランスロットがルーシャスを浮かせミオを抱き上げ姿を消す。
ルーシャスが目を覚ますとはっとし頭を上げる。
「ミオ…。ミオっ」
そして体を起こし前に進もうとしたが後ろに引っ張られ倒れる。ルーシャスが首に嵌められた首輪とその首輪を繋ぐ鎖に触れると今度は見知らぬ水晶の部屋を見渡す。
「ここは…」
「私の部屋だ」
ランスロットがその場に現れる。
「な…んで」
ルーシャスが汗を滲ませランスロットがしゃがむ。
「昨日は楽しめたからな。ミオとともに気に入ってここに連れてきた」
「ミオは…」
「今湯浴み中だ。こちらだ。ついて来い」
ランスロットがルーシャスの鎖を外し背を向ける。ルーシャスが立ち上がり焦る気持ちを抑え続く。そして広い湯殿へと入った。




