隠れ里
ー揃いました。
術を書いたフラッグを円状に柚が里を訪ねる者達を中心に立てていく。その中にミオ、タイシ、蘭丸、サイモン、エリス、ヒカル、ユナがおりユナがわくわくとしながらミオのそばで体を揺らしていた。そして奏もまたおり、奏が柚へと話す。
「面白いし分かりやすい」
「そうですか?」
「うん。各旗にはそれぞれ意味のある文字と絵が簡単に描かれてあり、組み合わせることにより一つの式が完成する。いわば組み立て式だ。こうする事により術の発動が簡単に行えれば持ち運びも安全にできる」
「へえ」
「俺たちはいつもこれで使っていたけどな」
尊が告げ、ヒカルが話す。
「魔導局では一つの式に完成させて使う」
「それもありだけど安全面からすればこの方が一番いいし、これだと間違った。また一から書き直す必要はない」
「はい。ですけど手間はありますね」
「ま、完成品じゃないからね。使い用はそれぞれだけど私としてはこのやり方が一番ではあるね」
「ぴこお。わからん」
ぴこらげが告げ、ユナがミオの頭に乗ったぴこらげへと手を伸ばす。
「ぴーこおー。おーいーで」
「やじゃ」
「えー」
「それじゃ行きますと」
尊がカードを手にし光らせるとフラッグに書かれた術が光る。そしてゲートが開くと一瞬でミオ達が姿を消す。その後、白いもやの世界に来るとサイモン達とが驚き、エリスが話す。
「聖域ですね」
「これが?」
「そう。そしておいらが暮らしていた元里だ。誰も住まなくなったから俺が案内したのさ」
サムが姿を見せ、尊が話す。
「ああ。理由として人に見つかったからなんですよ。600年前に。それから妖精狩りが行われたので村を出たんです」
「そうだ。今はまた別のところで暮らしてんだ」
「こっちです」
柚が先に行き進む。
「柚しか道がわかりませんから必ずついていってください。絶対に逸れませんように」
「逸れだ場合は?」
「この聖域の白い世界に迷い出られなくなります」
「ああ。そうだ。実際尊達についてきたイーロンの中にいて尊達の言うことを信じなかったのは逸れてわからなくなった。行方不明だ」
ミオが驚き、尊がやれやれとする。
「大抵、金持ちのわがままな奴らでした。後ほどサムと一緒に探し回って見つけたのも居ましたけど見つからなかった人達もいました」
「ああ。まあ、うまく出られたらここじゃない別のところに出る。出られなかったらこの白い世界で死んで骨で朽ちるだけだ」
「ああ。ちなみにここが面白い。子供は迷わないんだ」
「え?」
「純粋だからなんだ。この聖域もまた生きているから純粋な魂は出してやるんだ」
「不純なのは見つけ出すかそのまま死ぬまでいるかになるらしいです」
サムが頷くとモヤが晴れる。ミオが驚き野菜や果物、穀物が生い茂る畑に連なった家が等間隔で並び人々が外に出て手入れや洗濯などを行なっていた。そして、その住宅地の奥の中心に巨大な木がなり若い緑の葉を揺らしていた。
「はあ」
「話は先に伝えてますから。こちらです」
柚がまた案内すると周りが興味深く見たり、恐々と萎縮したりとしていた。そして中には腹を膨らませた妊婦。生まれたばかりの赤子を抱いた母親達もいた。
「赤子もおりますね」
「はい。ここで夫婦になられた方もいますし、元から家族の方とかもいます」
「代表」
その場に顔に大きな傷のある年配の男が来る。
「元大統領の第二秘書官です」
「え」
「その、はい。事実です…」
男が気まずくし、蘭丸が話す。
「なら、他に関係者が生きてここにいるわけか」
「ああ。あと二か所ある。ここが一番大きな村だ」
「はい……。あと、お話し合いの場を設けておりますので」
「いやいいって言ったの」
「ダメです」
「…」
「私も同感ね」
アストレイ代表としてきたミーアが話、タイシもまた頷く。
「俺も。流石にここだと話せない、聞かせたくはないこともある」
「はあ。分かった。なら柚。俺たちは話し合いするからお前はミオちゃんとか村を適当に案内してくれ」
「分かった。なら、ミオちゃんとユナちゃんとー」
「私も行きます」
エリスが話し、蘭丸が告げる。
「なら俺も。ミーアが話すから別いいし護衛としてきただけだからな。あと、2人も。他は護衛でいいか?」
共に来た魔導士、騎士が頷きヒカルが俺は話し合いと告げるとタイシが頷く。そしてそれぞれ別れるとミオがふうと息をつく。
ー知ってる人、いないかな…。
ミオが辺りを見渡し、ユナもまた見ると同年代の子供たちと目があい手を振る。子供達がタジタジとする中1人の少女が来る。
「ニニ」
「言っておくけど私たちは許してないから!アストレイの事を!」
「ニニ…」
「なんで?」
ユナが目をぱちくりとさせニニが話す。
「なんでって私たちの家も国も故郷もぜーーんぶっ、壊したから!」
「うん。で?」
「あ?」
「ニニ。全員悪いわけじゃないんだよ。習わなかった?」
「…」
「あと、ミオちゃんもユナちゃんもイーロンで暮らして家族を戦争で亡くしたの」
「あんたたちイーロン?」
「うん」
「その…でも」
「でも?」
「戦争の最初の一発ぶちかました父親の娘だよ」
ニニが鋭く睨みつけ手を向けるも蘭丸が抑える。
「母親は怪我とか病気とか治した聖女葵だ。イーロンの教科書にも載せられてたな」
「は?え?なんで?そんな…」
「事実です」
ニニが眼鏡をかけた長い髪を一つに束ねた男を振り向く。
「先生…」
「ここで子供達に教えてくれてるハーフエルフの方でマーフィ先生です。イーロンの研究所に囚われてた人で逃げ場を失った子供や大人の方達と共に逃げてこられた方です。片足は研究所で失ったそうで今は義足です」
「ええ」
ニニがモゴモゴと口を動かしミオを睨む。
「この、死神の子!!」
「ニニ!!」
ニニが逃げ、叱責したマーフィがため息をする。ミオが僅かに表情を曇らせる。
「ミオは死神の子じゃない!!意地悪!!」
ユナが声を上げふんと鼻を鳴らす。
「ミオさんについてはこちらも存じている者は多々おります。婚約者探しでの広告によって」
「あー」
「広告は尊さんが持ってこられたのですか?」
エリスが尋ねマーフィが頷く。
「はい。外の様子を見るには一番早いとのことで買ってきてくださっていたのです。私たち文字が読めるものにとって外の様子を知り伝えることができたのでありがたかったです」
「はい」
「アストレイ連合軍並びイーロンの戦争について。イーロンの格差問題。そして社会問題。環境問題と挙げれば多々あります。侵略ではなく、イーロンの度重なる外交問題や私のような旅をしていた者たちを捕らえ実験とした誘拐や人身売買の問題もあります。あとは禁止薬物。何も知らない村人たちを使い薬物を作らせてきたし、簡単に人を殺していた。価値の無いものとして」
ミオが口をつぐみ、柚が話す。
「人狩ですよね?」
「はい。特に子供たちの犠牲が多い。ニニも役人の遊戯。人狩にあい、弟を失っております。あとは、アストレイ軍の進軍により親を失いました。ここでは同じ境遇の子どもたちが多いです。大人たちに関しては元都市部で暮らしていたものたちが多く、村の現状を知らなかった者が大勢おります。そして国を挙げての誘拐や人身売買。人体実験もです」
柚がそうそうと頷く。
「それで、マーフィ先生や国の元大臣の人とかが教えていったの。本当のこと。戦争が起こったのか。もう原因は分かっていたから」
「はい」
「なら、ここの連中はあらかた理解はしているわけか」
蘭丸が周りを見渡しマーフィが話す。
「はい。あとは、我々を助け保護し生活の場を与えてくださった尊殿に多大な恩があります。なので、尊殿の話は全て本当であり、尊殿は私たちが知らない事を多くおしえてくださった方です。なので、彼が連れてこられたあなた方に失礼をしてはならない、と話したのですが」
「ガキにまだまだ早いし、恨むのは仕方ないし、恨むところがないんだろ」
蘭丸がやれやれとし、柚が話す。
「ニニは私が話しておきます。あとミオちゃん」
ミオが柚を振り向き柚が話す。
「ニニは私から話すよ。ミオちゃんは知り合いがいるか探してみよう」
「ええ…」
「戦争は嫌だね」
ミオが頷き柚が頷く。
「マーフィ先生。今からミオちゃんたち連れて村を見てまわります」
「いや。私が案内をするのでニニの所に行かれてください」
「でも…」
「私たちはかまいません」
エリスが話しニニがじゃあと告げエリスたちに頭を下げニニの元へと向かう。
「純粋だから聞かれたくない話でも」
「そこにまだ純粋な子どもたちがいますから。案内しますね」
「へいへい」
蘭丸が先に進みエリスがミオたちを連れマーフィの後に続いた。
「ニニーおーい」
木下で膝を抱え座っていたニニを柚が見つけるとニニが不貞腐れる。
「なんで連れてきたの…」
「故郷の知り合いがいるかもしれないから」
「なにそれ」
「ニニもそうだったでしょ?」
柚がニニの隣に座る。
「私は…」
「そして、何人か見つけて安心した」
ニニが小さく頷き柚が話す。
「戦争って嫌だね。勝っても負けても嫌なことしかないから。喜ぶのは武器を売買する人とか悪い人達だけだから」
「なら、アルスランだって」
「悪い人ならお墓なんて立てないよ」
「…墓立ててんの?」
「うん。あと、私も助けてもらったの。学園内にいってね、顔なしおばけに襲われた」
「は?なにそれ?」
「んー、私もよく分からなくて。顔がね真っ黒。ううん。本当になくてぽっかり空いてたの。人だけど人じゃない。後でそれは亡霊って話を聞いた。人を恨んで死んだ女性だって」
「その亡霊から?」
「私を助けてくれたの」
「うそだ」
「本当。あと、そのアルスランって人は優しい目をしてた」
「ふん。どうだかね」
「もお」
「柚は戦争なんて経験してないから言えるんだ」
「戦争は経験してない。でも、失う辛さは知ってる。そして、全部奪われた苦しさも。お母さんの服も、お父さんの大切なペンも。私にくれた贈り物も」
「…おじさんおばさんだっけ?」
「うん。殴られたりもしたし、お兄ちゃんが庇ってくれた。それに、おじさんは私を犯そうともした」
「え…」
柚が頭を抱える。
「今でも、怖いの…。ここに売られてきた時私はホッとしたの。怖いものから離れられたって」
「…」
柚が手を下ろし表情を曇らせる。
「戦争は、悪い人たちのせいでいい人たちが巻き添えになって起きるから。そのあとも。ここでもみんなまだ苦しんでる」
「そうね」
「うん」
ニニが頷き、柚がニニへと話す。
「ニニ。知ってた?」
「何?」
「死神の子って言ったけど、日本じゃ死神はかっこいいんだよ」
「はあ?なんで?」
「着物着て悪い霊は切って除霊」
ニニが刀をするように手を動かす。
「いい霊は天国に連れていってくれるの。悪い霊も切られたら罪が軽くなって天国にいけるんだ」
「えー、なにそれ」
「でも、とてつもなく悪い霊。人を面白がったりして殺したり、ゴミのように扱ったり。生前悪い事をしまくった霊は地獄に落とすの」
「地獄…」
「うん」
ニニが頷きやや俯く。
「なら、弟殺した奴らも地獄に行ったかな」
「死神さんにお願いする?死神の子がいるよ」
「えー、は」
柚がにこにこしニニが顔をすぐ背ける。
「別、いい…」
「そっか。でも、その子もお願いするのは悲しかったりするからね」
「…」
柚がニニの肩を肩で小突くとニニがしないでとこづき返す。
「戻る?」
「…ん」
「マーフィ先生怒ってたよー」
「……やだな」
「謝ればいいよ。行こう」
柚がニニに手を向けるとニニがその手を握りしめた。
左腕、左足のない男が椅子に座り、話し合いの場に入ってきた尊たちを見ており、ミーアがその男を見て話す。
「確かに元大臣様ね。名前はヨアヒムだったわね」
「ああ。そちらの将軍の一発でこの有様だ。だが、こちらも行ってきたことが災いしたからな」
「あ、そう」
「喧嘩無しでお願いしますよ」
「分かっている」
尊がやれやれとし座りミーアたちも座る。
「早速ですけど、どうして俺が保護して欲しいと頼んだか。この仮の村も期限があるんです」
「期限?」
「おうよ」
サムが姿を見せる。
「いえば、精霊との約束によってここを借りてんだ。約束破ればここはすぐに白いモヤ。白い世界に包まれて出られなくなっちまう。ここは元々俺たち妖精であり精霊の塊が暮らしていたからな。だから尊たちみたいな人間は部外者で外敵扱いだ。俺たちは精霊でもあるから問題ねえけど尊たち人間は違う」
「ああ。なので期限が来る前にここを立ち去らないとダメなんです。期限はあと1年です」
「他のところもなの?」
「他の所はまだ少し先ですがこれ以上の受け入れは出来ません」
「ええ」
「住み良い場所ではあるけれど、これ以上贅沢を言えばまた失う」
ヨアヒムが淡々と告げ、ミーアが話す。
「何か他にあんたにも失うものあるわけ?」
「…」
「ミーアさん」
ミーアがふんと鼻を鳴らし、尊がやれやれとする。
「周りも期限が迫ってきている状況はわかってます。とにかく、受け入れ先の確保をして頂きたい」
「暫くの間でもか?」
「ああ。だが、一日二日とかはなしだ。短くても1年は欲しい。その間に住居や仕事といった必要な生活する場所を決めたい。目星はついているが、そこから先を受け入れてくれるかはわからない。ただ俺がここならという場所で実際に話し合いまでは持っていってない。用意していない」
「ならその先の話し合いは?」
「ああ。俺は関わらない。あくまで俺はここを貸している。その先についてはここで生活をまとめている人たちに任せる。ヨアヒムさんもその1人だ」
「ふーん」
ヨアヒムがミーアを睨みミーアが睨み返すと尊が手で遮りタイシを見る。
「ということだ」
「ああ。なら、一旦持ち帰る。半月後にまたいいか?」
「勝手に決めないで欲しいんだけど」
「それでいいじゃん」
ミーアがむっとし奏が話す。
「そっちは出たら戦犯として捕まる運命だけどさ。誘拐犯と強姦犯さん」
奏がヨアヒムを指差しヨアヒムが話す。
「侵した罪については理解している。殺して隠したことも」
「なら、結構。そうしたら他にもいるけど分かってるかな?」
「私は戦犯として捕まる。だが他は分からん」
「なら私が確認するよ。そのために金もらってきたし」
「…」
「ミオのために来たかと思いました」
「いやそれももちろんよ」
「ミオ」
奏がヨアヒムを振り向きヨアヒムが話す。
「アルスランの娘か」
「そうだよ」
「…そうか」
「なに?」
ヨアヒムが無視をし奏がむっとする。尊がじっと見るとやけにそわつく男を見た。
ユナが村の子供達と笑い合いながら遊ぶ。それをミオが椅子に座りぼうと見ていた。そのそばにエリスがおり、エリスが話す。
「いなかったわね」
「…はい」
「ええ」
「…その、いたらな、でしたから」
ミオが寂しく告げ、ユナが子供達に続き川に入ると水を掛け合っていく。
「私も、ああやって遊んでたな」
「私もよ。幼い頃は水で遊ぶのが好きだったわ」
「ミオちゃん」
ミオが振り向くと柚がそばへと来る。
「こっち来て」
「ええ」
ミオが立ち上がり柚に続く。エリスも向かおうとしたがマーフィが手を握り止める。
「あなたはここに」
「私は彼女の保護者です」
「すぐ終わります。後ユナちゃん見ておかないと」
「それは」
「俺が行くから」
蘭丸がやれやれとしミオたちの元に行きエリスがお願いしますと告げマーフィが離す。そして3人が姿を消すとエリスが話す。
「どこに連れて行かれたかわかるのでしょう?」
「ええ。石碑です。古代の石碑。そして恐らく蘭丸殿は入れないでしょう。エリス殿も」
「入れない?」
「ええ。柚は入れます。ミオ殿も葵殿の血を本当に継いでおられるなら入れます」
「…彼女と葵は親子関係で間違いないですが」
「私達はまだ信じてはおりません」
エリスがやれやれとする。
「何故ですか?」
「アルスラン将軍の事もあります。私はイーロンの出身者ではありません。しかし、共に過ごして、やはり奪われてしまったものたちの悲しみを聞いてはと。彼女は、親子関係ではあるとは尊殿から先に聞いております」
「なぜ尊殿はその話だけをしたの?」
エリスがやや苛立ち、マーフィが告げる。
「ここに連れて来る為。そして、私たちがどのような御子か見たかったのです。私も一度イーロンでアルスラン将軍を見たことがあります。牢から出された時に」
マーフィが遠い目をする。
「怒り、悲しみ…全て無くしたような何も感じない目をしておりました。全てを無に…」
「私が思うに感情を消さなければ何も出来なかったからだと思いますけど?アルスラン将軍は感情を持った人です」
「…分かってはいるのですが、奥底に何かがあるような…。恐怖を感じました」
エリスが軽くため息をしそうですかと告げるとマーフィがゆっくりと頷いた。
「じゃじゃーん!!」
ミオが驚き蘭丸が目を丸くし蔦に絡み文字が刻まれた四方三メートルの正方形の巨大な石碑を見上げる。
「でけえ」
「すごい」
「でしょでしょ。後これ入れるの」
「え?」
「ん?」
柚が向かい石碑にそのまま沈むように入る。ミオが驚き蘭丸がおーと声を出し触れるが石を触る。
「…ん?」
柚が出て来る。
「私は入れます。ミオちゃんは?」
ミオが頷き進むと手をそろおと伸ばす。そして手が沈むように入る。
「お?」
「入った」
「そんな!!」
ミオが驚き隠れていたニニが頭を抱え絶叫する。
「え…と」
「なんだお前はまた」
ぴこらげが呆れ、柚が話す。
「聖なる力を持ってる子しか入らないんだって。マーフィ先生が訳して教えてくれたの」
「ええ」
「くうううっ。確かにあの葵の血を引いてるのね」
「え?」
「だけど!アルスランの血もある!」
「お前はまだいうか。おい」
蘭丸が呆れ、柚が話す。
「でもニニ。血を引いてたら強い力を持ってるって事だよ。後アルスランさんって近くで見ると格好良かったよ」
「どこがっ。うううううううっっ」
ニニが頭を下げミオを指差す。
「私は認めないから!!この変わり者!!」
ミオがずきっとし汗を滲ませニニが逃げ去る。
「失礼なやつ」
「つか、まじガキだろ」
「嫉妬したんだなあ。ここ入れるから。ニニも入りたがってたけど入れなかったからね。ミオちゃん。ならちょっと見てみる?」
「え、うん」
「ごめんね。悪気はあるかもだけど嫉妬も強いから」
「なんだよそれ…」
ミオがこくんとうなずき柚がこっちと手を繋ぎミオと共に石碑に入る。ミオが驚き蝶や花、虫、そして小鳥や小川が流れる広い空間を見る。そこに楽しく妖精たちもまた飛び、翼の生えた角のある馬たちが駆け走っていた。
「綺麗」
「ねー」
「お?新しいやつ?」
「いらっしゃい」
妖精たちが花冠をミオの頭に乗せる。そして風が舞い花びらを散らしていく。
「ここは…」
「未開の地のさらに未開の中の聖域。この石碑はそこに繋がるんだって。サムが教えてくれたの」
「ええ」
「そう」
「石碑が壊されない限り何度でもここに来れるわ。でも、あなたたちみたいな澄んだ人だけよ」
「…私、澄んでるのかな」
ミオが落ち込み、柚がミオの肩を掴み揺らす。
「それってお父さんのこと?」
「…」
「それはダメな考え。だーめ」
柚が指をクロスさせミオが頭を上げ見る。
「お父さん嫌い?」
「…いいえ」
「ならそれでいいんだよ。お父さんとお母さん。ミオは大切な人たちとの間に生まれた子供」
柚がくるくると周る。
「私もそう。でも…私のお父さんとお母さんはもういないからね。でーもっ」
柚がミオの手を握る。
「ミオにはお父さんがいる。ミオはお父さんに大切にされてるかな?」
「…」
ミオがゆっくりと頷き柚が微笑む。
「良かったね」
「…うん」
「うん。あと」
「いたな」
尊が中へと入る。そこにタイシもまた中に来る。
「お?お前も入れたか?」
「ああ。あと、凄いな」
「龍がいるね」
「おーい」
妖精たちが足元へと声をかけると紅蓮が姿を見せる。
「出た」
「うわー」
『妖精達か』
「そうだよ」
紅蓮が頷き、尊が話す。
「柚。ここでなんか問題が起こりそうだ」
「え?」
「内乱じみたもんだ。やっぱり根付いたものはそう簡単には落とせない」
「…そっか」
「話し合いで何かありましたか?」
ミオが尋ね、タイシが話す。
「ああ。何かしらの方法で外部と連絡をとっている連中がいる。樹と透華が潜んで調べてくれた」
「え?来てました?」
「透明化して連れてきた。樹と陸奥の力で」
「ああ」
「へえ。あと、透明化かあ。私たちも考えたけどうまく出来なかったよね」
「ああ。やっぱり得意不得意があるからな」
「そうだね。でも、出来たら私達も少しゆっくり出来たかも」
「と言ってもしばらくの間だろ」
「柚ー。また歌って」
「えー、今日はみんないるから恥ずかしいよ。また今度ね」
妖精達が分かったと頷く。
「ならいくか。待ってるし」
「ああ」
「ミオー」
びしょ濡れのユナが中へと入ると妖精達が集まる。
「子供だ」
「びしょびしょ」
「乾かせ乾かせ」
ユナの周りに風が吹き荒れると尊がやれやれとしユナがそれそれと妖精の手で回転させられながら乾かされる。
「ユナっ!?」
「やめろお前らはっ」
「目が回るよ」
尊とタイシがやめさせるとユナがふらふらする。タイシが抱き止め抱き上げる。
「う、うう」
「あはは」
「乾いた乾いた」
「ダメだよイタズラしちゃ」
妖精達が楽しく離れていく。
「み、みーおー。どこお」
「ここよ」
「き、う、きもち」
ミオがユナに触れユナが止まりうええええとその場で戻すとミオが慌てふためき、柚が服を汚されたタイシからユナを受け取り尊がお前らと妖精達を叱った。
タイシが上半身裸で現れる。蘭丸が話す。
「上はどうした。服」
「吐かれて汚された」
「は?」
ぐったりとするユナを柚がだか連れてくるとエリスがすぐにユナを受け取る。そしてミオ達もまた出る。
「たく。あのチビどもめ」
「すみません。妖精さん達がイタズラして目を回してはいたんです」
「分かりました」
「うー」
ユナが気持ち悪く唸りエリスがユナの背を撫でる。
「エルフヘルム」
ミオがマーフィを振り向きマーフィが話す。
「私達はそう呼んでおります。妖精達の楽園」
「はい」
「タイシ。着替えの服用意するから待っててくれ」
「ああ」
マーフィがタイシの生傷を見る。
「拷問の跡ですか?鞭のような跡があります」
「ああ、これは母の虐待の跡です。もう決別しました」
「分かりました」
ミオが頷くタイシから視線を逸らすと物陰に隠れていたニニと目があうとニニがすぐに隠れる。
「…」
「ミオ。なら次はこっちにー、来れそう?ユナちゃんはー、ええと」
「私が見ます。蘭丸さん」
「分かったよ」
「じゃあこっち。こっちで最後」
「ええ」
ミオが柚に続き蘭丸がついていく。
「古代語の楽譜見せに行ったな」
「楽譜?」
「ああ。見たいなら見ていいが俺はわからん。柚は何となくわかるらしい」
「ああ」
「つかお前音楽よかったろ?歌上手いし」
「いや、それは小学校で…」
「何々?なら行ってみよう」
奏が楽しくニコニコしながらタイシの背をおし、タイシが戸惑いながら押されていった。そして今度は等間隔に並ぶ文字が刻まれた石碑の前に来る。
「ここ。これも入れるよ」
「ええ」
柚達が中へと入り、蘭丸がまたかよとやれやれと外でまつ。その中では多くの楽器が浮かぶ異空間でミオが驚き見渡す。
『ねー、いっぱい』
『あ、声』
柚がふふっと笑う。
『そう。ここはね、私たちの声が出ないの。楽器が鳴らしてくれるの』
『楽器が…』
ハープに似た楽器、太鼓に似た打楽器などが音を鳴らし声の代わりとしてその音色を奏でる。
『すごい…。あと綺麗』
柚がうんと頷き上を指差すとミオが上を見る。そこに音符のような文字がふよふよと浮かんでいた。
『言葉と音。はー、分かるんだよね』
『ええ。確かに』
『わかる!?』
ミオが驚き柚が目を輝かせるのを見て頷き柚がわあと明るい笑みを浮かばせた。そしてミオが指差し教え柚が頷き声であり音を出す。その音が石碑から響くと蘭丸が不思議そうに石碑を見ていき、奏が話す。
「見たことないな。さっきの石碑もそう」
「なら、ここだけにしかないのか?」
「うん。あと、今度はタイシくん入れなかったから、何が条件かな…」
奏が文字をなぞり読んでいく。
「巫女か。あー、古代の巫女として受け入れた少女かー」
「男と汚れ切った女はダメってわけだな」
「けっ。ああそうですよ」
文字が僅かに光を帯びる。
「これ平気か?」
「ダメなものじゃない感じだけどなあ…。でも中の2人にいうには中に入らないと行けないし」
「ユナとかは」
「だめでしょ。具合悪いから」
「前より強く反応してるな」
尊がくるとサイモンが響く澄んだ音を奏でる石碑を見て驚く。
「これ中に入れねえか?何があるかわからねえぞ」
「難しいな…。村の連中もここは入れなかったんだ。あの石碑はある程度の子供とかは入れたんだけどこれだけはダメだったんだ」
「まじかよおい」
「んー、まあ、悪い反応じゃないから。あと中は何?」
「ああ。柚かいうには楽譜が上に浮かんでいて周りは昔のここの楽器みたいなのがあちこち浮かんでるらしい。それらが声の代わりに音を出して響かせるそうだ」
「楽器かあ。三女神だなこりゃ」
「三女神?」
「うん。この世界を作った女神達のことだよ。実際にいるし昔。ラファエルの頃はいたんだ。だけどいつの間にか姿を消した。まさかねー」
奏が触れる。
「うーん」
ーできたあ。
柚のうれしい声が響くと息を吸い声を出す。それは音へと変わると楽器達が一斉に動き出す。ミオが口を思わず開けながら驚き柚が楽しくその声を音とさせ歌っていく。
ー綺麗。響く。波。海。大地。
ミオが胸を熱くさせ、共に入ったぴこらげが体を思わず揺らす。
「完成したな。柚だ」
光が強まり石碑が光る。すると辺りにあった岩が光蔦を飛ばし音を奏でる。それは村にもあちこちあった岩もまた同様に響きかなであっていく。村人達が驚き、妖精達が石碑から一斉に出てくると周りがさらに驚く。
「女神だ!」
「久しぶりー!」
「封印か。解除される」
「封印」
石碑が震えひびが入るとそのヒビからミオと歌う柚が姿を見せる。2人が驚き柚が止まるも。
「はい歌い続けて!」
奏が指揮棒を持ち、石碑から楽器が次々と現れる。柚が顔を赤くさせるもミオがその手を握ると意を決し歌の続きを歌う。楽器が音を奏で、空にオーロラが姿を見せる。
ーまだ足りない。
「はあい!ミオちゃんも歌う!!」
「わたしもっ!?」
「そう!!」
ミオが顔を赤くするが柚がぎゅうとミオの手を握り返すとミオが助けを求める柚の目を見て目を閉じ声を上げ歌う。
「よおしよしきてるきてる」
「なあ。ミオちゃんだけど音ズレ」
「そこ外野黙る」
尊が複雑そうにし奏が手を光らせる。
「大丈夫。気持ちさえ十分あれば問題なし!」
「そうか……」
「奏さん。術」
「はいそこも黙る」
ミオの音程を奏が術でカバーする。タイシもまた複雑そうにしていくと尊が思わずこそっと話す。
「口パクになってないか?」
「ああ。その、ミオはミオの力だけ借りて口パクになっているのが気にな」
ミオが膝から崩れ落ち耳まで赤くなった顔を両手で多い伏せると柚がわたわたとし奏が2人を指差す。
「こら馬鹿ども!!!ミオちゃん頑張ってー。ほらいっち、に」
「で、うぅ」
「耳いいなミオちゃん」
柚が今度は必死になり歌うと奏がくっと声を出し柚を示しその歌を光に乗せる。
「っお、もいなあ!!」
奏の指揮棒を持つ手の皮膚が裂け血が流れる。
「くう。ミオちゃん声出して声!」
「む、むりいいい」
「無理じゃなああい!」
どこからか歌声が響く。タイシが柚達の先を見ると白い衣を身につけた金髪に紫の瞳をさせた女が歌を歌っていた。そしてその声が柚の声と同調する。
ー今は、仕方ない!
「あった!」
奏が柚と女から出た光を棒で受け止め石碑に当たると石碑が大きく割れ七色の光の柱が上へとまっすぐに走る。女がその場に崩れ落ち息を荒々しくし、柚もまた尻餅をつき倒れぜえぜえと息を弾ませる。
「だ、だしき、たああ」
タイシが女の元へと走ると女がタイシを見て立ちあがろうとするも膝を崩し前に倒れる。
ーあれは…。
タイシがはっとし女の前で止まる。
「エステルアールベック」
エステルがすぐに顔をあげ、タイシが驚く。
「イギリスの歌手がなぜ」
『タイシ様!』
タイシの足元が光るとタイシが冷や汗を流し奥歯を噛み締める。
ー紅蓮!風雅!
2体が足元の魔法陣から離れ出る。
「お願い。助けてっ」
涙を滲ませるエステルの足元にも魔法陣が現れると2人がそれぞれの結晶の中に閉じ込められる。
「やられた!」
奏が走るも横からユーリが現れ妨害する。
『ロレンシオ!』
紅蓮が怒り声を上げ、ロレンシオが姿を見せる。
「タイシさん!」
ミオが声を上げ立ち上がろうとするも足がもつれ倒れる。そして目の前の紋章を見て体を起こすもすぐに目の前が白へと変わる。
ーミオ!!
「ミオ!」
エリスが声を上げ、蘭丸がロレンシオの前に来るも足元が黒へと変わる。
「ヤバいやつ!」
蘭丸がすぐに飛ぷ、そして足元の草木が枯れる。
「呪い!カテリーナか!!」
「当たりだ」
ロレンシオが楽しく告げタイシを閉じ込めた結晶触れると結晶がその場から姿を消す。
「タイシ!」
「ミオちゃん!しっかり!」
柚が結晶の中で目を閉じ倒れるミオへと声をあげる。その中にぴこらげもおりぴこらげもまた目を閉じ動かなかった。
「ミオちゃん!ミオちゃん!ぴいちゃん!」
ー見つけたわ。
柚の体にチェーンが巻き付くと柚が引っ張られ尊の腕の中にはいる。ミオの元に微笑む女が姿を見せるとミオの結晶に触れる。
「かてりいな!!」
カテリーナが奏へと視線を向けるも触れたミオが姿を消す。
「ミオ!!」
エリスの放った矢がカテリーナに向かも宙で止まりその場で腐り落ちる。
「ラファエル様の記憶の持ち主ね。あなたも哀れな子ね」
「うっさいわ!どいつもこいつも!!」
奏がユーリのナイフを避け紙の付いた苦無を投げる。ユーリが体をひねり避けまた避けるも後方が光る。そして門が現れる。
「マナ!!」
マナが姿を見せるとロレンシオがつるぎを出しマナを相手に剣をふる。
「弟子を返せ」
「必要だから返せないな!」
お互いに押し合いはじくとすぐに後ろに下がり赤い炎を避ける。ロレンシオが睨む紅蓮を見てうすらと笑い紅蓮が鋭く睨むとマナが隣にくる。
「挑発です」
『分かっている』
どんと音が響くと柚が村の方角を振り向く。
「村っ。みんな!」
「柚!教えたな!」
向かおうとした柚を引き留めると柚が頷き地面に手をつけ尊が手を合わせると魔法陣が姿を見せる。
「みんなをお願いっ」
光が強まり巨大なゴーレム。そして小さなゴーレムが姿を見せる。
「避難させろ!」
ゴーレム達が一斉に動き出す。
「お互い力を合わせて強い召喚獣を出したか」
ロレンシオが告げ、カテリーナが頷く。
ーな、なんだあれはっ。
ーこっちに来た!
「ロレンシオ。あの召喚獣に勝ち目はないわ」
「ああ。ユーリ」
ユーリが最後に奏を蹴り飛ばしロレンシオの元へと来る。奏が倒れ消えたロレンシオ達がいた場所を睨む。
「だああもおタイシくんはああ!!いやでも…あああ!もおおおお!!」
「なんだよお前は。おい」
蘭丸が呆れすぐに立てと奏を立たせる。
『せっかく出られたのにもう』
「ん?」
蘭丸がやれやれとする小鳥を見下ろす。
「でられた?」
「女神だよ…」
「は?とり」
『乗り移らないと私たちは会話もできないのよ。霊体だから』
「…えー、のっとり?」
「鳥だけに…、ってちがう!!あーもおおお!!」
小鳥がやれやれと頭を振り柚が2人の元へと来ると手を引く。
「2人はこっちです。サイモンさん達が行ってくれました」
「なら俺も」
「ダメです。蘭丸さんは浄化しないと」
「は?」
「足足」
蘭丸が足元を見るとドス黒いものが徐々に足先から進行していた。
「なあ!?なんだ!?なんだよこれえええ!!」
「濃厚な瘴気。濃厚すぎて汚染されてんのわかんないのよ」
「どうにかしてくれええ!!」
「だ、だか、ら、こっち」
柚が2人を引っ張り尊の元へと来させる。尊が薬瓶の蓋を開け足に流す。柚が手をやり光を浴びせると黒いものが止まりゆっくりと消える。
「…あ、いまなんかじんじんきてんぞ」
『呪いが薄まったからよ』
小鳥が柚の肩にのる。
『あなたともう2人の子達のおかげ。特にあなたね』
「小鳥さんが話してる」
「女神だと」
「女神だよ」
「女神?小鳥さん女神さんなんだ」
「あー、やっぱヨアヒム他陣営だな」
尊が瞳の色を緑に変え遠くを覗き見る。
「…そう」
「ああ。避難は順に出来ているな。ゴーレム達が担いであちこち散ってるからな」
「避難通路確保してたの?」
「ええ。数箇所。俺たちが作った通路です。ただ、出口はあちこちなんでまたそこから転移させなきゃダメなんですけど」
「魔法使える人が居れば問題ないです」
「あー」
『やっほおー』
陸奥がその場にくるも眠ったユナを浮かせやってくる。
「樹達が相手してくれて助かる」
『どーも。あと聞いたよタイシ達のこと』
「ああ」
「大丈夫かな…」
『殺されることはないよ。利用価値のある2人だから。ただ、あの2人はアルスランの子供でもあるからね。アルスランが黙ってないよ』
「あ、そっか…」
『うん』
「あの人ある意味最強だからな。呪いも破壊できる力持ってるしな。柚。こうなると契約もほぼ破棄同然だ。受け入れに関しては俺たちがどうにか場所作ってもらうよう頭何度も下げるしかない」
「うん」
「私も話すよ」
マナが告げ、紅蓮が苛立ち風雅がずうんと落ち込みながらこちらへとくる。
「だめでした?」
「だめだったな」
小さなゴーレムが柚の足元にくると柚が拾い上げ手振り身振りをするゴーレムにうんうんと頷き答える。
「分かった。お兄ちゃん避難できた」
わたわたときたゴーレムもまた拾い上げると驚く。
「大変!何が人質取られたっ私達が来いって」
「あのお騒がせちびっこめ。向かっていきやがったな…。いくぞ」
尊がため息し、柚がその後に続いた。
ーもう、歌はやめたい。
黒か長いものが振り下ろされるとエステルが痛がり頭を抑え身を丸める。そして今度は耳へと嫌な音ばかりが通り過ぎるとエステルが力のない目をさせ何も考えず聞き流していたが腹部に痛みが走るとお腹を抑え涙を落とした。
エステルが目を覚まし体を起こすと何もない部屋を見渡す。
ーエステルアールベック。イギリスの歌手がなぜ。
「向こうの人なのね。アジア人かしら…」
エステルが涙を浮かばせすーと流す。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
ーごめんなさい。
ー暖かい。心地がいい。
タイシが淡い緑の液体の中を体のあちこちに管をつけ浮かんでいた。それをロレンシオが見上げたあと横を振り向き白衣の男達の中に混ざるルクレイシアを見る。
「ヤンは?」
「部屋よ。あと、膨大なエネルギー量ね。常に生産されてるのね。この子のなかから」
「だから龍の民。それも王家の血を引くものだ」
「そう。それで?どうするの?」
「まずは、古代国を蘇らせる。それからだな」
ロレンシオが離れ出口へと向かうも足を止めルクレイシアを振り向きおかしく笑む。
「あれの婚約者もいるが見に行かなくていいか?」
「いかないわよ。それに行ったら彼女の逆鱗に触れるかもしれないじゃない」
「それもそうだな」
「ええ」
ロレンシオが頷き背を向け離れる。ルクレイシアが再びタイシを見上げる。
ーごめんなさいね。
カテリーナがぼうとするミオの髪を櫛ですき束ねていく。
「愛しい子。本当に」
カテリーナがミオの前に来て抱きしめるとミオもまた抱擁する。
「愛しい我が子…。ようやく会えた。あいつらは私から全てを奪った」
カテリーナが離れミオの頬を撫でるとミオがその手に頰をすり寄せ笑む。
「産んであげられなくてごめんなさい。そして、またこうやって会えた。私のところに帰ってきてくれた…」
カテリーナが涙を落としミオを抱く。
「私の子…」
ミオが再び抱きしめカテリーナが啜り泣きながらミオを抱きしめ続けた。
ーそんなっ。そんなあ!!
ヨアヒムが叫びながら黒いものに突如包まれ飲み込まれる。そして、ヨアヒムに加担したもの達も飲み込まれその場で崩れ落ち朽ちた。サイモンが冷や汗を流しエリスが口元を布で覆う。
「すぐに離れてください。毒です」
「はい」
騎士や元イーロンの軍人達がその場を離れる。そして尊が泣きじゃくるニニを抱きながらため息する。
「簡単に心を入れ替えることは出来なかったか。ニニ。お前ももうするなよ。もーするな」
ニニが頷く。そして柚がこわごわとその場に来る。
「マーフィ先生が一緒に消えたって」
「もうやめてくれよ…受け入れ先も受け入れてくれねえぞ」
「そっちかよ」
「いやそっちが重大だよ。少数のせいで信用できない扱いされんだからな」
「まあ…」
「どうしよう…」
『私が見張ります』
小鳥が話柚を見上げる。
『恩人ですから。一先ずここは必要なものだけを外へと運びましょう』
「畑とかは?」
『そのままで問題ないですしあなた達は来られても平気です。今回の契約は仮の宿。それに荒らされたこちらを元に戻す必要があります』
あちこち開けられた穴やこげた植物達が多々あり尊がやれやれたし柚がしょんぼりとしうんと頷いた。
ー出なさい。
タイシが今度は縛られ椅子に座らされていた。そして目の前にルクレイシアが座っておりルクレイシアがこちらを見るタイシを見て息を吐く。
「もうしばらく付き合ってもらうわ」
「なぜ?」
「あなたの中の無制限のエネルギーが欲しいから」
「それをどうするつもりですか?」
「古代国で利用させて貰うわ」
「復活を願っているんですか?」
「そうね」
「ここは、ロレンシオが建てたところですか?」
「全てではないわ」
「そこまで」
ロレンシオがユーリ、気まずくするヤンを連れ中へと入る。
「出すなと話したはずだ」
「話を聞くだけでもいいでしょう。ヤン。来て」
ヤンが小さく頷きルクレイシアの後をおい出る。
「古代国の復活をして何をする気だ」
「まず、それを願う方がいるのを伝えなければならない」
「その方のために動いているわけか?」
「その通りだ」
「ロレンシオ!あ!」
ロレンシオが振り向くとルクレイシア、ヤンが水の中に入り押される。
「なんだ?」
ロレンシオが結界を張り防ぐ。
『ぴいいこおおおおお』
ロレンシオが眉を寄せるも壁の隙間という隙間から水が溢れる。
「くそ。一体何が起きている」
壁がひび割れぼろぼろの服を着たミオが壁を破壊し姿を見せるもその目には涙が滲んでいた。
「ミオ!くっ」
水がタイシを包みロレンシオ達も飲み込むとロレンシオがタイシをつかんだミオを睨みつける。
ーカテリーナ!聞こえているかカテリーナ!!
ミオとタイシが天井に開けられた穴目掛け上へと移動する。タイシの口元に泡が現れるとタイシが息を吸い吐き出す。ミオが巨大な触手を掴みながら上へと上がる。そしてイーロン国近くの海岸にある崖の上へと上がるとミオとタイシが息を荒げ、ミオがタイシの拘束している手錠を握る。そして集中し破壊する。
「だいぶ、器用になったな」
「はい」
「あー、すっきりしたあ」
ぴこらげが現れニコニコする。
「ぴいちゃん。ありがとう」
「どういたしましてだじょ」
「カテリーナのところにいたんだろう?どうやって逃げられた?」
「…無理やり、です」
ミオが悲しみの表情を浮かべその腕を握るも頭を振る。
「あの時と一緒だな」
「え?」
ミオが頭を上げ笑むタイシを見る。
「潜水艦で助けてもらった時と一緒だ。ありがとう」
ミオが胸を熱くさせ顔を赤くさせる。
「やるわね」
タイシとミオがすぐにびしょ濡れのルクレイシアを振り向く。
「痺れ薬までつけてくれるなんて流石ね。ダリスが選んだだけあるわ」
「ルクレイシアさんですか…」
ミオが名を呼びルクレイシアが話す。
「ええ。まあ、そちらにいる奏と話をする仲ではあったけど、事情が変わったのよ」
「そこは別にいいです」
ミオがきっぱりと告げる。
「なぜ、ダリスさんのところに?」
「…最初は言われてよ。でも、惹かれたわ。だけど、ちょっとね」
ルクレイシアが息をつきタイシへと視線を向ける。
ーなぜ。
ミオがぞくっとしルクレイシアの後ろに悲しみと苦しみの表情を持つカテリーナが立っていた。
「どうして…」
「ミオに執着しているのはなぜだ?」
「お腹に、子供がいたんです…」
タイシが頷きミオが表情を曇らせる。
「拷問によって、無理やり腹から…」
「カテリーナ」
「私の子よ。貴方は私の大切な子」
カテリーナが顔に両手をつけ涙を落とす。その足元はゆっくりとひび割れ植物が枯れていく。
「その体は誰の体だ?」
「え?」
「乗り移っているか、死体だろう?顔は乗り移った時に変わったな」
「その通りよ。あと、生きた体。生贄。まあでも、貴方達にとっては都合がいい相手ね」
「逃亡していた者か?」
「その通り。元ヤンガル国双子の姫の片割れソフィーナ」
ミオが驚愕し、ルクレイシアが話す。
「埃まみれの姫と呼ばれたノーラと違ってお高く止まっていた子だったわ」
「どこに匿っていた?あと」
「その男ね…」
ミオが口をつぐみカテリーナが殺気立ちタイシを睨みつける。
「カテリーナ。勝手なことを言わないで欲しいのだけど。彼は違う」
ーよくも。
「話を聞きなさいカテリーナっ」
ルクレイシアが声を上げ、カテリーナが歯を噛み締めると黒い触手がタイシへと向かう。だがミオが両手を広げ前に出るとすぐに止まる。
「これ以上、私は、大切な人を失いたくないんですっ。そして」
ミオが苦しく声を上げる。
「殺すのを、やめて下さい…。あなたは、そんな人じゃない」
カテリーナが目を見開きわずかにぼうとする。そして触手が落ちるとルクレイシアが頭を抱えるカテリーナを振り向く。
「これだけ。私がここにいるということは、ダリスが何かしらの罪に問われるわ」
「敵の方が多いですし、言われたということは元は教会側だった」
「ええ。でも今は違うし、今は私の意思でロレンシオの元にいる」
ルクレイシアが手を出し光を放つと書類の束が現れる。
「逃す代わりにこれをあげるわ」
書類の束がタイシの手に渡るとタイシが握りしめる。
「逃げていいのか?」
「どうぞ。カテリーナが静まったから。彼女の呪い。恨みは私には抑えきれなかったもの」
震えなくカテリーナの元へとルクレイシアが向かう。
「私も女の端くれよ。行ってちょうだい」
タイシが頷きぴこらげがいくならと体を膨らませ浮かぶ。ルクレイシアがそれを見てくすりと笑い、ミオが乗りタイシものるとぴこらげが上へと浮上する。
「竜を呼べばいいのに」
「わ、たし、は。こ、ども」
ルクレイシアがカテリーナを抱きしめる。
「子は巣立つものよ。あと、カテリーナ。貴方のその体は生きている」
「え…」
「貴方が望むなら子は出来るわ。貴方になるかわからない。でも、子供は出来る」
カテリーナが驚くも顔を赤くし歪め大粒の涙を落とす。そこにロレンシオが怒りくる。
「なぜ逃した?」
「問題ないわよ。あと、命じられたの」
「あの方がか?」
「そうよ」
ルクレイシアがカテリーナに手を貸し立たせる。
「やることが出来たわ」
「…好きにしろ」
「ええ。あと、ここもしれたからまた別の場所よ。それと、ロレンシオ」
「なんだ?」
ルクレイシアがふっと笑う。
「早く着替えたら?お互い様だけど」
ロレンシオが舌打ちしルクレイシアがカテリーナを連れその場を去った。
「みえたじょー。あきゃりー」
夜の空をふわふわとぴこらげが浮かび進んでいた。その上に疲れ眠ったミオを抱いたタイシがおりタイシが小さな灯りが止もる国を見る。
『タイシ様!』
紅蓮が空を飛ぶ。そしてその上にマナと奏がおりマナがぴこらげの上に飛び降り、奏もまた降りる。
「怪我は?」
「疲れました。あと、ミオとぴこらげが助けてくれました」
「そうか」
「ダリス枢機卿は?」
奏がため息し、マナが話す。
「捕まった。その様子からして原因にあったわけだな」
「はい」
タイシが書類を向けると奏が受け取り中を見る。
「ルクレイシア本人からです」
「りょーかい。ま、ダリスについて、敵意は向けてなかったからね。むしろ、色々と満足できる生活は送れてたもんね」
「本人となんの話をされたんです?奏さんは?」
「愚痴ばかりだよ。あとは、そろそろ出ていく。その時になったら私を探せと言われた。この事だね」
「はい」
「ん。あと、中々面白いこと書いてんね。それからこれ暗号もある」
「はい。ただ、俺にはわからなくて」
「わかんないわかんない。私と彼女で決めた特殊な暗号だ。トール」
黄色い龍が突如現れると奏がその竜に飛び乗る。
「アストレイのアルスラン達と話に行くよ。ミオちゃんよろしくね。みんな心配してるから」
「分かりました」
奏が頷き龍が離れ飛び去る。
『力を奪い取られましたね』
「回復出来る」
「しかしか。弟子」
マナがしゃがみ楽しく笑む。
「ここのところすきばかりだがどうした?気が抜けているのか?」
「…」
「2週間だ」
『おい』
「父上。私の弟子でもある。不甲斐ない主人だと父上も弱く見られるからな」
『……だが』
「いい…。気が抜けているのは、確かだ」
紅蓮が複雑そうにしマナが立ち上がる。
「ミオを渡したら行こうか」
「…はい」
「ああ」
ぴこらげがたいへんじゃなあと声に出しゆっくりと高度を落とし地上へと向かった。




