学園都市オラシオン4
コンスタンスがミオがさって行ったのをみて立ちあがり壁へと向かう。そして壁に触れ押すと壁が動いた途端どさっと黒装束の男が倒れる。そして血のついたナイフを拭うルーフェウスが現れる。
「お互い盗み聞き?」
「そのようだ。麻痺毒だからまだ生きている」
「わかったわ。あと、彼女は貴方とはお友達としか見てないわよ」
ルーフェウスが軽く息をつきコンスタンスがふふっと笑う。
「まだ彼女は幼いから。あとは、逃げてるわね。もしかしたら好きな人がいて、でもその気持ちがわかってないかも」
「そうなのか?」
「女の勘。観察できたらしておけばいいわ。まあ、出来たらの話」
「出来る時にする。ステファン。憲兵に連れていけ」
「はい」
「いいの?」
「雑魚だ」
ルーフェウスが返り血のついた花の紋章を見せる。
「そうね」
「ああ。なら、また明日だ」
「ええ。おやすみ」
コンスタンスが手を振りルーフェウスが部屋を出る。それをミオが隠れながら出てきたルーフェウスたちをみておりこちらにくるのをみてどきりとし足音に注意し早く離れる。ルーフェウスが止まり足を早め小走りし、ミオがさらに近づいてきたのがわかり角を曲がると手が伸び部屋に引っ張られる。ミオが引っ張ったタイシを見上げタイシがルーフェウスが止まったのがわかるとやれやれとしミオを見えない位置へと移動させエルハルトに渡し外へと出る。
「タイシ殿」
「すまない。ランカース家の者が潜んで入ってきたからな。それは?」
「ええ。憲兵に引き渡しました」
ミオがドキドキとし、ルーフェウスが話す。
「もう1人誰かおりませんでしたか?」
「俺の部下だ」
マルクールが申し訳なく顔を出す。
「あー、どうも」
「…」
「どうかしたの?」
コンスタンスがその場にくるとルーフェウスがいやと告げタイシへと頭を下げる。
「すみません。俺がちょっと、立ち聞きしたもので」
「あら」
「ランカース家の者が校舎に侵入したと聞いて後をつけていた」
「そうでしたの。んー、まあ、特に」
「部下が立ち聞きをしてしまったようでな。申し訳ない」
「いいえ。ですが、良かったらそのお詫びでお話しいたしませんか?明日」
「ああ」
コンスタンスが頷きまたお伝えしますと伝え離れていく。タイシが見届け、マルクールが中へと入り申し訳なくするミオを見る。
「行った」
「すみません…」
「いや」
「ランカース家が雑魚扱いですか」
「ああ。五大国家と言われていたが、聞く話だと借金をしているとのことだ」
「え?」
「国王の様子が変わったと聞いております」
エルハルトが話し、タイシが頷く。
「ああ。俺もまだ詳細は不明だが国民の前に姿を出さなくなった上、重税が課せられ農村地では飢える者が増え村から逃げる者もいるそうだ。雑魚と言ったのは金を貸しているからか、何か事情を知っているからだろうな」
「はあ」
「タイシさんたちはそのランカース家の、侵入者を追って来られたんですか?」
「ああ」
「ぼっちゃんの部屋を覗き見ようとしてたんで。ま、勿論無理ですけど。戻ります?」
「ああ。後ミオ。もういないから部屋に1人で戻れるか?」
「はい」
タイシが頷きミオが頭を下げ部屋を出る。そして自室へと戻るとはあと息を吐き出すが目の前、よしよしと戻ってきた奏の頭を撫でるマリアンヌを見て近づくと奏が疲れたあと弱々しく声を出しミオに抱きついた。
ーん。
リリーが目を覚まし体を起こす。そして裸になっているのがわかると掛けられていたシーツで隠し目の前の魔人を見るがその後ろに立つ茶髪に青い目の青年を見る。
「誰?」
「トマ。あんたらの世話係他だ」
リリーが眉を寄せ、トマが話す。
「主人が変わったからそうなった」
「…ああ、ええ。確か、そうだったわね」
リリーが頭に手を当てる。
「ルクレイシア嫌いな連中に襲われたんだよ。ルクレイシアから何か話を聞いたんじゃないかって。ルクレイシアは秘密ごと多いからな。でも、誰も敵わないから近付いたやつを狙ったんだ。ついでにいただくって意味で」
リリーが目を見開き術などを使えなくさせられ抑えられたことを思い出し青ざめ魔人とかした自らの腕を掴む。
「そこの兄さんが助けた」
「に、兄さん…」
「魔人の兄さん」
トマが魔人を指差す。
「ついでに襲った連中は全員兄さんが殺した。あと、兄弟とかじゃないけどなんか、その呼び方がいいっぽいから呼んでる。そしてある程度の意思疎通が可能。俺とだけな」
「どう言うこと…」
「そう言うことだし俺もよくわからないし知ったのは本当さっきみたいなもんだ。俺もあんたが襲われた所にいて止めようとしたら、この兄さんが来てあんた助けて襲った連中殺し始めた。そして他も襲おうとしてきたから俺が、まあやめてくれと言ったら頭の中に声が聞こえてきた。何故と。だから説明して意思疎通ができて止めることができたわけだ。そうした上の連中が世話係になれってことで、こうなった」
トマが肩をすくめる。
「後始末は終えたってさっきあんたの直属の上司が来て話した。取り敢えずあんたは今日は休めだと。それと、服は返り血で血まみれになったから全部兄さんが脱がせた」
「…」
「文句なら兄さんに言えよ。俺は食事を持ってくる」
トマが外へと出るとリリーが息をつき変わりの着替えがあるのを見て手にしすぐに着替えていく。
「…ルクレイシア様があなたによろしくとの事よ」
魔人が小さく頷くとリリーが僅かに顔を歪める。
「貴方は本当に誰?私に何をしたいわけ?勝手にきて勝手に助けて、何がしたいの。何を」
魔人が答えずリリーが魔人の肩を掴む。
「答えなさいよっ」
「無理だ」
リリーがトマを睨みつけトマが食事を乗せたトレイをテーブルに乗せる。
「兄さんは口ねえから無理だよ」
「…」
「あんたが気絶してた時にちょっと話聞いてみたら、元はイーロンの研究員になったんだそうだ」
「なった?」
「人手不足である程度計算できる連中がそこらの村から選ばれて連れてこられた。ただ、それは実験体としてだった。そりゃ、ある程度の計算できるやつが研究員として働けるわけないもんな。でも、呼び寄せるには十分だった。なにせ、勉強なんてしていない連中だ。それだけ言えば誘い出せるし、豊かに暮らせる金も故郷に送ると言われたら行くさ」
「それで?」
「しばらく研究員。清掃係としてただ働させられた後はキメラの実験体にさせられた」
「え」
「キメラの失敗作だよ。兄さんは。そしてあんたの腕も言えばキメラの腕だそうだ」
「キメラ?これが?」
「兄さんが言うにはそうらしい。あと、魔人がいると言うのはイーロンが作った偽の話。実態はイーロンが作った人型キメラ。それも魔素を濃く体と一体化したものだとさ。キメラの材料は濃度の濃い魔素だと」
「魔素…」
「ああ。兄さんはなんとか生きれたが、他は死んだ。生きれたのはナガハラって人のおかげでもあるんだと。その人が魔素のバランスを平行に保つための施術を施してくれたから死なずに済んだとさ」
「なら、死んだらどうなるの?」
「溶けるらしい。魔素に食われるんだそうだ。あと、あんたについては魔素にゆっくりと食われている」
「…それは、分かっているわ」
「はあ。ま、俺には関係ないからいいが」
トマがやれやれとする。
「あんた、ミオに八つ当たりしてるんだって?」
リリーが睨みつけトマが話す。
「あいつはその魔素を浄化できるらしい」
「お断りよっ」
「ガキあいつにムキになんなよ一端の大人が」
リリーが口籠、トマが話す。
「ミオをここに連れてきたらあんたは何かするか?」
「…は?」
「俺はミオを生きたままここに連れてきたい」
「どうして…」
「まず、俺はミオが暮らしていた村の生き残りだ。イーロンのだ」
「幼馴染というわけ?」
「そうだ」
「…お節介な話かもしれないけど、ここはイーロンの」
「俺が恨みがあるのはアストレイの奴らだ。村の連中を赤子までも殺したのはアストレイ軍だからな」
「命じたのはミオの父親よ」
「知っている。だからだ。ミオとは父親とだけで関係ない。父親は父親だ」
「何をする気?」
「復讐。ミオに関しては人質とかじゃない」
リリーがはっと笑う。
「笑ってどうぞだ。明日俺の主人のところにご挨拶するって話だ。また後で下げにくる」
トマが部屋を出ていくとリリーが見届けた後軽く息を吐く。そして自分の魔人の腕を見て触れる。
ー高濃度の魔素…ね。
「馬鹿みたい…」
魔人が食事へと手を伸ばそうとするがリリーが止め軽くため息をついた。
ーリクエストある?
ミオが小麦を捏ね、ドライイーストを混ぜ合わせこねる。そして寝かせた後伸ばしていきチーズを包みオリーブオイルで表面を濡らし指でも押し込むとオーブンへと入れた。
ーはああ。
ミレーラがうっとりとしながらチーズフォカッチャを食べ、マリアンヌががっつき食べる。そこは予約制の休憩室で目の前にいるミオが話す。
「今食べたのがチーズフォカッチャでもう一つは木の実のはちみつバターパン」
「はい」
「うまいうまい」
「だわん。異界のご飯はどれも美味しいわん」
「まだたくさん美味しいのあったわ。ここだと材料があったりなかったりだけど大抵はあるから」
「うんうん」
「そうなのですね」
ノックが響くとお呼ばれした女生徒たちが入り、ミオがどうぞとパンを示した。
ーミオ嬢の作る食事がとてもうまいらしい。
ー確か、瑠奈姫にもお作りされていると聞いたぞ。
ー食べてみたい。
ー成功した。
ミオが嬉々としながら硬いものを手にし早速、瑠奈に頼み作ってもらった鉋を使い削る。そして寝かせていた小麦粉生地を足でふみこねていくがはっとする。
「学んできてるのに料理ばかりの気がする」
「そこかーい」
奏が宙を突っ込み、樹が話す。
「単位足りてるだろ?」
「た、足りてます。足りてますけど、なんかこう…」
「まず、何勉強したいんだ?」
「なにを。たくさん」
「あはは」
「具体的に言え」
ミオが難しく考えながら生地を踏んでいく。
「ミオちゃんは向こうでも学んできてるからなー。向こうの普通はここだと優しいなんだよ」
「ああ。ただ、上を目指せば難易度が急激に上がるな」
「そう。中学から高校飛んでと突然大学越えのレベルに行くから。ミオちゃんの場合、基礎をしっかり固めてるからどんな応用でも対応出来るくらい出来てるから特に学力云々はいいかなー。どちらかと言えば実践のほうかな。実際に起こる行為にどう対応出来るかがまだ弱いかもね」
「ふうん」
『きょーのごーはんはーなーーんだー』
陸奥がわくわくしながら中へと入る。
「うどん」
『また妙な名前だ。楽しみー』
陸奥が椅子に座る。
「ミオちゃん魔術とかどう?」
「魔術ですか…」
「そう。結界とかは出来るみたいだけどそっちはどうかなって」
ミオが考えながら生地からおり持ち上げる。
「ないです。タイシさんとかエリスさんとか使われているのはみましたが実際ありません。以前エリスさんから少し教わったんですがうまく出来なくて…」
「よーし。なーらおねーさんが教えるよ」
「はい」
奏がうんうんと頷き樹がボソッと呟く。
「初日との差」
「そこうっさい」
『ミオー』
「あ、はい」
ミオが台に生地を乗せ綿棒で伸ばし何度か生地を折りたたみ伸ばす。
「つか、なんでうどんの作り方知ってるんだ?」
「はい。あちらの喫茶店で働いてて。いろんなお料理を作られる方だったんです」
「へえ」
「おうどんはです。喫茶店の常連の方が昔のご両親からの常連さんでお年寄りの方が多くて作り始めたそうなんです」
「手間じゃねえか?」
「はい。店主さんはそう、話してましたけど、うどんで。ふう」
ミオが麺棒を起き伸ばし終えた生地を畳む。
「知り合った方とご縁があって今一緒に喫茶店されてます。その方はうどんとかの製麺を作るお家の次男さんでした」
「ふうん」
「まあた面白い縁だねー」
ミオがはいと返事を返しうどんを切る。
「あとは、タイシさんからもその喫茶店で教わったりしました」
「あいつの飯美味いもんなー」
『そう。ダシだったねー、凄い香りがよくて美味しいんだよ』
「ああ。あいつの家は寺だったから爺さんが教えてやってたって話だ」
『そうそう』
ミオが頷き切り終わった麺に粉をふるい布をかける。
「これでいいです」
「寝かせ時間?」
「はい」
「後は?」
「待つだけです」
「なら手を洗ってこっちきてみー」
奏がおいでおいでと手招くとミオが手を洗い奏の元へとくる。奏が手を洗い終えたミオの手を握る。
「さーてと。ちょっとぱちってくるよ。さん、に、いち」
ぱちっと電気が走るような痛みが一瞬全身を貫く。ミオがわずかに驚き顔を歪める。
「やっぱりね」
「なんだ?」
「魔素を弾いた。ミオちゃんは魔術は使えない」
「ん?」
『なんで?魔素は誰でも持って生まれるよ。異界人でもここに来たら魔素が体内で作れるよ』
「ところがどっこい。そうでない時もある。ミオちゃんの場合みたいに稀な体質がいるわけ。特に弾く。つまり、魔素とは違う別種の力を持って生まれる子供がいるのさ。その子供は白の子供と言われてね」
「白の子供」
「そう。魔素の影響を受けない代わりに魔術は使えない。だけど」
奏が手を離しポケットから六芒星と小さな文字が書かれた絵を見せる。
「契約は出来る。つまり、あらゆる生物たちと血の契約をしてパートナー。相棒にすることは可能だ。あと、ミオちゃんが出す結界はここで言う浄化。聖なる力によるもの」
「なら聖なる力のレイ」
「あれは魔術だよー。高位魔術で結構魔素を吸い取られるんだ。らくーにだせるのなら私とかタイシくんとかしかいないね」
「へえ」
「ほう」
いつのまにかいたハリーが会話をメモしており一樹が話す。
「お前いつ来た?」
「さっき」
『勝手にメモしてるよ』
「へーきへーき」
カナダが金が入ったハリーの財布を手で投げ遊ぶ。
「授業料もらったから」
「いつの間にっ!僕の財布返してっ!?」
ハリーが声を上げるとミオがせかせかとうどん出来たと今度は沸いた湯でうどんを茹で、ハリーが必死に奏が財布を取り返そうと動き見ている樹がやれやれとした。
ーご馳走さまー。
「さてと」
奏が借りた演習場の中心に立っていた。その足元には魔法陣が描かれており、奏が魔法陣から離れるとハリーが気まずく告げる。
「あのー、これって悪魔の」
「そうだよ」
「禁忌」
「それは根本的なやり方と意味が間違っているからだよ」
「え?」
「魔法陣は確かに悪魔召喚と言われてる。だけど」
奏が楽しく告げる。
「本来は霊獣を呼ぶための魔法陣でもあるわけ」
「うそっ」
「本当。でも、悪魔も霊獣も元は同じで素質によって出てくる出てこないがある。素質というのは力。精神。そして血。無闇な同属殺しを行った場合は自分に似た精神体が現れる」
「精神体?」
「言えば自分の分身のようなものだよ。本来この魔法陣はこの世界の精神体。あらゆる命を集め具現化させたものが現れる」
「ほうほう」
オーガンが頷き、奏が話す。
「だから、間違いさえなければ普通に授業の一環として利用してもいい。間違いを犯した連中が私欲のために呼び出したらご存じの悪魔が姿を見せる。ラファエルの頃はこの召喚の儀を行い、生活に欠かせない霊獣、聖獣たちと暮らしていた。そして、もし危ういものが出た場合血の契約さえしなければ問題ない。ただし、勝手に呼び出して出てきた相手だから代わりのものが必要。それは自分の魔素を半分渡すか、果物といった食事を差し出して戻せばいい」
奏が果物かごを出す。
「もともと私たちも同じ小さな塊が一つの塊となって生きている生物体。だからみんな一つであり、こういった食事も彼らは食べられる。ただし、好き嫌いもある。なのでその場合は魔素を半分差し出す」
「足りないとかある?」
「ある。ただし、それは多人数召喚した場合のみ。多人数だとその分力の強いのが出てくるのは当たり前で引っ込めるにも与えないといけない分が余計ある。だけど1人の召喚なら半分でいいし自分に見合ったのが出てくるからとっても安心」
「へえ」
「なるほどのお。なら、禁忌は多数で行う場合と言うわけか」
「そー言うこと。そして、力によっては聖獣も出てくる。そちらについては特殊召喚になるんだ」
「じゃあさ、紬や望さんみたいな最初から召喚なしできた聖獣たちは?」
「あれは聖獣たちが好んできた。強い力を持っているからと、古の契約によるものだね。彼ら2人はレーガンの子孫だ。つまり、レーガンの元にいた聖獣な訳」
「なら、レーガンの元に二体聖獣がいたの?」
「そう。それ即ちレーガンの強さの象徴でもある。ちなみにラファエルは5体」
「ならいる?」
「ラファエルは子孫は作ってないから私にはいないよー。私はあくまである程度の記憶を持ってるだけ」
ハリーが頷き奏が話す。
「そして、この召喚で出るのは霊獣。もしくは聖獣だよ。せっかくだし先やったら?」
「え、とお」
「わしがやってみてええかのお」
オーガンがわくわくとし奏がどうぞと告げるとオーガンが頷き魔法陣の前に立つ。
「出来上がってるから力込めるだけ。後は見合ったのが出てくるよ」
「よしわかった」
「怖くないのかな本当にもう…」
ハリーがやれやれとしオーガンが魔法陣に手をやり力を込めると魔法陣が光る。そして光が強まり魔法陣から影が姿を見せるとその影が姿を変える。そして頭がワシ、体がライオンのグリフィンが現れるとハリーが驚愕しミオたちも驚く。
「流石局長だけあるね。知恵と風の聖獣だ」
「うそお!?」
オーガンが興奮し、グリフィンが奏を見る。
『ラファエルの記憶を持つ者。其方も難儀だな』
「でしょー?でも人助け出来るからいいっちゃいいよ。そして、そのラファエルのようにだけはなりたくないしならないしさせない」
グリフィンがゆっくりと頷きオーガンを見る。
『人の長き時を生きたものよ。契約をするか?』
「ああしよう。そして、わしもまだまだ長生きせねばな。また楽しみが増えた」
オーガンが嬉々とし、グリフィンが頷く。
「なら血の契約。血の一滴で出来るから」
「ああ」
オーガンが風を使い指の腹を切り血を流すとそれをグリフィンへと向け、グリフィンが額を向けると光が放つ。
「そしてその場で名付けして契約終了」
「うむ。ではウラヌスだ」
『承知』
光が小さくなり消えるとハリーがすぐさまほのぼのとするオーガンとウラヌスの周りを回る。
「すごいっ。凄いっ。次僕!」
「どうぞー。後魔法陣は消えない限り継続して使えるから」
ハリーが頷く。そこにタイシがやってくるとタイシがウラヌスを見る。するとタイシの足元から紅蓮が姿を見せる。
『黒龍殿。息災で何より』
『ああ』
「これは?」
「召喚の儀式だよ。本来のあるべき姿の術。人によって形が変わった」
タイシが頷きハリーが出て来い出てこいと念じる。そして影が現れ形となる。それは少し小さめのフクロウでばさばさとその場に飛び止まる。
「これは…」
「霊獣。精霊たちの集合体の強い方だね。同じ風に少し土属性も感じる」
「…聖獣」
「じゃない」
「ほほほ」
『私の子供のようなものだ』
ハリーが顔をしかめ、奏が話す。
「ちなみにだ。大抵生涯に渡って間違いや大きな身の変化が起きない限り同じのしか出ないから」
「ええ…。あと、大きな身の変化って…」
「人生が大きく変わるということ。例えとして廃人になった事があると、言うようなやつだね。間違いに関しては理にかなっていない。ただ欲のために同属殺し。もしくは他族を多量に殺した場合に起こる」
ハリーが頷きウラヌスが話す。
『それもまた知恵あるもの。お前の手となり足となり役にたつ』
「わかったよお。なら、血の契約」
ハリーが血を出し指を向ける。そして梟がじっと見て額を当てる。
「なら名付け」
「フレイ」
光が放たれ消えるとフレイが目をぎらつかせすぐさまハリーを嘴でつつく。
「なんで!?痛い痛い!」
「気怠く契約をしたからだよ。霊獣達も感情あるからね」
「分かったっ。ごめんってえ!」
フレイが鼻を鳴らし、ハリーが顔を顰める。
「タイシ君行ってみる?」
「いえ。俺は紅蓮達がいますから」
「オッケー。そうしたらミオちゃん」
「はい」
ミオがドキドキしながら魔法陣にくる。
「それは自分の力に反応する特殊な陣だからね。つまり、魔素は関係ない」
「じゃな。念じたぞ」
「僕もー。魔素を吸い取られる感じじゃなかった」
ミオが頷きしゃがみ魔法陣に触れる。
ー私の…。私は……。
魔法陣が僅かにぱちっと音が響く。奏、オーガン、ウラヌスが気づき身構えようとしたところにタイシが動きミオの腕を掴む。すると魔法陣が赤く染まる。
「なに!?」
「ミオちゃんこっちに投げて!!」
タイシもだがミオに激しい痛みが襲う。
ーまったく。世話の焼ける子だ。
タイシの体から黒い蛇が姿を見せる。
ー其方に私の力はいらないだろう。新しき子の命のなろう。
蛇が渦巻き錬成陣を囲む。タイシが足に力を込めミオを後ろへと飛ばし投げる。そしてそのタイシをこんどは紅蓮が掴み赤く光る陣から離す。
「一体なんなの!?」
「錬成陣だ。ミオちゃんが無意識で刻んじゃったみたい」
あちこちの皮膚から血を流し気絶するミオを奏が治癒していく。
「近い形をしておるからな」
「そう。タイシ君ナイス。体は?中の方は?」
『少しばかり喉をやられている』
「治癒は?」
『可能だ』
「なら任せた」
蛇が消え始めるとタイシが喉に触れ咳き込みながら消えていく蛇を見て今度は青く光る錬成陣を見る。
「さて、タイシ君の中にあった加護とミオちゃんの血を糧に何が作られて錬成されるかな」
奏が突如現れた輸血パックを掴みハリーに持たせ手早く針を差し込み青白くなったミオへと輸血をする。
「ミオ」
「体の半分血液もってかれたらね。あと、お母さん思ったかな。人を蘇らせるのは禁忌であり、蘇ることは不可能」
「そうなんですか?」
「そうじゃ。同じものを蘇らせるのは二度と叶わぬ」
ウラヌスが頷きハリーが錬成陣から現れた影を見る。白い髪の毛に鱗模様の皮膚。そしてその形はまだ未熟な赤子であり赤子が目を開け青い瞳を見せるも光が消えた途端コロンと転がる。そして青空を見て驚くと顔を歪め声を上が泣いていく。オーガンが目を丸くし、ハリーが汗を滲ませるもその場へと瑠奈がやれやれとし向かい赤子を抱くと奏を見る。
「でー、人の子供が作られるわけですか?蘇りはできないで」
「きゅうきゅうきゅう」
「ん?」
瑠奈が振り向くと赤子が棘の生えた白いこぐまへと変わっていた。
「え?」
「あーっ。そいつ上で面倒見てたキメラ」
「え?はい?」
「んんんんんんんんん???」
奏がミオから離れ向かい白いこぐまに触れる。すると今度は人の子へと変わり声を上げなく。
「なんと…」
「なーるほど。はいはい」
「なんですか?」
「もともとこのこぐまは人を使って作られたキメラか」
「そうじゃ」
オーガンがゆっくりと頷く。
「キメラ型の魔獣達はみな人と同じものを持っていてな」
「そう。そして、瑠奈ちゃんの力を持ってしても人には戻らなかった。魔獣の割合が多かったからだ」
「そうじゃ」
瑠奈が複雑そうにし奏が話す。
「今はまたどこかで新しい命になっているから。そしてこの子」
奏が子供を抱き指を鳴らす。するとつのの生えた山羊が姿を見せる。奏がしゃがみ直接ヤギの乳を口へと向けると子供が口にし飲んでいく。
「直飲み…」
「それ絶滅したヤギっ」
「そこいろ」
ハリーがそわそわとそわつき、瑠奈がしゃがみごくごくと勢いよく飲む赤子を見る。
「ミオちゃんはこの子をどうにかしたかったみたいだね。まあ、どうにかするにあたりまさかここまで代償がいるとは思わなかったみたいだ」
「なら、誰かを蘇らせたいじゃなくて」
「この子を助けたい。んんー、でも、まだまだ未熟。教えてあげなきゃダメだね」
「はい。兄。平気?」
「なん、ど」
「喋んない。しばらくはダメだね」
タイシが頷き、瑠奈がオッケーと頷きヤギの乳から離れ欠伸をする赤子を見下ろした。
翌朝ー
ー…。
椅子に座るタイシが気まずく土下座するミオから視線を逸らす。そして瑠奈が呆れながらミオの頭を叩く。
「そこまでしなくていい。向こうで何見てなんの影響受けたの」
「え、影響…は、ドラマ」
タイシが吹き出しそうになったが堪える。だがごほごほと咳をする。
「はあ。はいもう立つ。軽く謝罪でいいから。後、まだ魔法とか錬金とか未熟だから大きなものは使わない」
「はい…」
ミオが落ち込みながら立ち上がる。
ーあの子供は?
「オーガン局長がまた保護したよ。ウラヌスが面倒見るって」
タイシが頷き、ミオが話す。
「喉…」
「炎症起こしてるからあとは薬飲んで休めばいいから」
ーみおーー!!聞こえるかー!!
ミオが目を丸くし耳に手を当てる。
ーきてきてー!
「なに?」
「マリアンヌが呼んでる。多分、霊獣」
「ああ、あれから特別授業で霊獣を出す事になったからってよくすぐ許可降りたわ」
ー生徒の状態回復の意味もあるとのことだ。
「となると、癒しのペットみたいなものかな」
「えと」
「いいよ。あと、そこまでの謝罪はいいから。薬代だけ出す。それで十分。兄もそれでいいでしょ?」
タイシが頷き瑠奈が頷くとなら、あとで請求書渡すと告げミオを見送った。
演習場では生徒達の肩や足元に猫や鳥。または馬、ぬいぐるみの形をした霊獣達があちこちといた。そしてミオが来るとマリアンヌが手を振り自分の人形を向ける。すると人形が動き巨大化しマリアンヌを乗せる。周りが僅かに驚き声を上げマリアンヌが興奮し手を振る。
「凄い」
「水の性質を持つ霊獣」
奏がその場にくるとミオが頷く。マリアンヌが再び戻りその人形を抱きミオの前に目を輝かせくる。
ーすごいの!後苦手な念話ができるようになった!
「そうなの?」
「その理由は召喚による力の一時的解放だから」
奏がそう告げ召喚をする生徒を示す。
「言えば自分の実力を知る機会であり、自分の力を存分に発揮させることもできるわけ。霊獣は個人の力によってやっぱり強さも変わってくる。はいこっち」
ミオを引っ張り召喚の場へとくる。そして召喚した女子生徒の前に愛らしいが少し大きめの黄色の鳥が現れ羽ばたくと女子生徒がわあと目を輝かせていく。
「綺麗」
「それは雷と風の霊獣だね。ほい」
奏が木片を投げると鳥が放電し木片を破壊する。
「まあ…」
「普段放電はしない。自分や主人の危機を感知すると放電する。あとは放電させたい時にさせれば問題なし」
「その放電させたい時って」
「お湯」
「え?」
ミオが目を爛々とさせる。
「電熱でお湯とかできる…」
「そうなのですか?」
「そう。そこは私が渡した教本見てねー。しっかりと」
「はい」
「それでどうする?」
奏が手を向けると生徒が針で自分の指を腹を刺し血を流す。そして鳥が額を向け契約を行い名付けをする。
「なら、一生涯いるから大切にすること」
「はい」
「ここに集まっているのはそのこともわかって来ているの?」
「もちろん。契約書に署名してね。昔はそうじゃなかったから霊獣の虐待もあってね。その時は霊獣を元の世界。精神体に送ったんだ。あと、霊獣にももちろん傷つくし死ぬこともある。ちゃんと生きているからね」
「ええ」
「うんうん。でー、はいミオちゃん」
「えっ。で、でも私」
「今度はちゃんと召喚」
ミオが戸惑い奏が話す。
「ちょっと気になるからね」
「え?」
「はい」
ミオが戸惑いながら魔法陣の前に立つ。そして意を決して魔法陣に手を当てると魔法陣が光る。
「よし。ちゃんと正常に動いた」
「えと、昨日は」
「異常で、すぐにある人が動いてくれて助かったよ」
ミオが落ち込み光が強まる。そして形が作られる。それは白い虹色に輝く鱗に白い翼を持つ二メートルほどの蛇でミオが鼓動を高鳴らせ周りが息を飲む。
「アスクレピオス」
「え」
「ヒカル達のお母さんが宿していた聖獣。つまり、ミオちゃんの中に篭っていたのが出て来たわけ」
「私の中に…」
『はい』
白蛇が答えるとその形を薄衣を纏った女人へと変える。周りがどよめき女人が虹色の瞳を見せると微笑む。
『ラファエルの記憶を持つ子。私もウラヌスと同じです』
「同情ありがとう。さて、外にでたけどどうする?どっちにいく?」
「どっち?」
『ミオ様が必要なければ春子様の御子の元に参ります』
「了解」
「え?なんで?ん?」
その場にいたハリーが疑問に思い、奏が話す。
「彼女は加護のためにいた聖獣で、まあ本来の召喚ではあるけど、ミオちゃんの召喚じゃない」
「どう言うこと?」
「外に出ただけ。ミオちゃんから加護を取り出した」
「え?」
「私はいいです。ヒカルさん達。アスクレピオスさんの子供さん達の元に行かれてください」
女人がその目を伏せはいと返事を返すと再び蛇となり空へと上がり姿を消す。
「行っちゃった…」
「はーい、次こそミオちゃんの実力発揮っ」
「えっ、えっ」
奏がミオの手を挙げ魔法陣に触れさせる。
「強制発動させて」
「気にしない気にしなーい」
ミオが汗を滲ませ、周りが注目する。そして光が現れクラゲに似た丸い銃を持つものが姿を見せる。
「え?」
「なんだ…」
「ん?」
「お?」
奏が面白くしクラゲがふよふよ浮かぶ。ミオが目を丸くし立ち上がるとクラゲがミオを示す。
「呼んじゃのはお前じゃにゃ」
「あ、え、はい」
「何かの変な生き物」
クラゲがハリーへと銃を向ける。奏がハリーを押し周りの生徒達を風で左右に別れさせた途端光線が走る。そして演習場の壁が解け弾ける。周囲が唖然としハリーが口を引くつらせる。
「じゃれにもにょをいっちぇる!!くりゃ」
奏がクラゲの頭を掴み銃を取り上げると取り戻そうとするクラゲの頭をつかみ止める。
「あっぶなー。聖獣ではあるけど見た事ない」
「ふぁなしえええ!!」
「え…」
「多分、原子力の聖獣だね」
「原子力?」
「なんだそれは?」
周りがざわつき奏が手を叩く。
「はい静かにねー。どうする?戻すこともできるよう」
「にゃ?!」
ミオが息をつきクラゲが汗を滲ませる。
「契約します。この子は私の中のものを押さえてくれると思います。あと、無闇に攻撃させないようします」
「オッケー」
「ぷはっ」
奏がクラゲを離しミオが立ち上がりクラゲを見る。
「契約しましょう」
「やじゃ!」
「…」
ミオがポケットからすっとクッキーを出す。クラゲがふんと顔を背けるがチラチラと見て触手で奪い取りすぐさま食べる。奏がぶふっと吹き出しクラゲが飲み込む。
「いいじょ」
「ふはっ」
「じょきょ!」
「なら、血は」
「いりゃにゃい」
「え」
ミオが目を丸くしクラゲが話す。
「べちゅにぼきゅは血にゃくてもいいにょ」
「そうなの?」
「そう」
「…なら、お名前。リリア」
「やじゃ」
「…サフラン」
「やーじゃ」
クラゲがぶいと顔を背ける。ミオが名前を言いクラゲがやだやだと駄々を捏ねる。そしてミオが出し尽くし若干息を弾ませ、クラゲがむくううと膨らみ始める。
「うわお。でかい」
「な、名前…は」
ミオが頭に生えた触手の先端の丸か光るものを、そしてクラゲを見る。
ーぴこぴこ…。くらげ。
「ぴ、ぴこらげ」
「…」
クラゲがまた元の大きさに戻る。
「いいじょ」
「ぶはっあっ!!」
奏が大きく吹き出しゲラゲラと笑いぴこらげが笑うなあと声を上げた。
タイシが興味深くマフィンを食べるぴこらげを見ており、瑠奈がそのぴこらげと疲れジュースを飲むミオを見る。
「なんだか向こうにいるキャラクターの一つみたい」
タイシが頷きアンナが尋ねる。
「きゃらくたあ?」
「可愛い造形物。生き物とかを人から好かれるような形に絵を描いたり人形にしたりするもの」
「はあ。美味しいー。もういっきょ」
「だめ。1人2個まで」
「やじゃやじゃもう一個」
「だめ」
「やじゃやじゃやじゃ」
ぴこらげがじたばたと動き駄々を捏ねるとミオがダメと言いながらぴこらげを抱きしめ止める。ぴこらげがむうううとほおを膨らませミオの腕の中でジタバタとする。
「子供のようですね」
『変わっているな』
紅蓮が姿を見せ、ラファもまた見せる。ぴこらげがビクッと震えミオの背中から怯える。
「え?」
『精霊ではありますが生まれたばかりの精霊なのですね』
『ああ。まだ子供のようだ。この世界のことをよくは知らない』
「そうなんですね」
ミオがぷるぷると震えるぴこらげを見下ろす。
『精霊や我々も生まれたばかりは知らぬことばかりだからな。人に教わり時と共に多くのことを学んだ』
『はい』
「なら、この子が血の契約をしなかったのはなぜですか?」
『血の契約は死ぬまで続く縛りでもあるからな。霊獣達の中でもごく稀に拒絶する場合もある』
『ええ』
「なら、契約しなかった場合何かありますか?」
『力が十分に発揮できない。そしてお互い危険が迫った時が分からない』
『はい。霊獣は血の契約により心身も繋がるのです』
紅蓮が頷きぴこらげがじいと紅蓮達を見る。
「ねえ!おじちゃんちゃち、なんじぇしょんなこわいしゅがちまににゃの?」
『私はおじちゃんじゃありませんけど』
ラファがむすっとし紅蓮が口を開けわざと威嚇して見せるとぴこらげがビクッと震え、紅蓮が肩を閉じ意地悪く笑った。
ぴこらげが欠伸をしミオの机の上にあるかごの中ですやすやと気持ちよく昼寝をする。他にも生徒達の霊獣達が各々場所で気持ちよく寝ており教師が気になりながらも授業を進めた。
ーなんだろう。空気が澄んでいる。
「ああ、それは霊獣達が増えたからだよ」
奏がミオへと話すと女生徒達が尋ねる。
「増えたら空気が清潔になるのですか?」
「そうだよ。だって精霊達の塊でもあるからね霊獣達は」
「はい」
「なら、お水とかも変わっていくのですか?」
「もちろん。昔霊獣や精霊達が暮らしていた頃は街も水も綺麗だった。だけど、戦。あとは人の虐待を受けてぐんと数が減った。これは千年前にあったこと。歴史の本にも載ってるよ」
「はい」
「うん」
「ミオー、おなかへったじょー」
「ええ」
ミオが欠伸をするぴこらげにクッキーを向けるとぴこらげが触手で掴み食べていく。
「この子はクッキーが好きなのですね」
「はい」
「私のナナは木の実が好きなのです」
可愛らしい翼の生えたリスが頷き、奏が話す。
「霊獣の好みはもちろんそれぞれだから。中には魔素しか食べないのがいるからね。マリアンヌちゃんがそう」
「そうなりますとどうやって食べさせるのです?」
「一緒にいればいいだけ。ただ、普段よりも魔素を使う量が減るから把握しないといけない。そして、魔素の保有量は心身を鍛えれば増えるんだ」
「え!」
「ただしただ鍛えるだけじゃない」
奏が紫の宝石を出す。
「そちらは?」
「魔素を固めた石。魔性石。魔導士達が魔素を補填するために使う石でね。補填した後はもちろん無くなる。これを使うんだよね。まずは体内の魔素をほぼ空にする。空にした後これを食べる。そして、3日休んだ後また繰り返す。3日休むのは魔素の回復を図る為と対外の魔素に体を馴染ませるための期間になるわけ。魔素は体内以外にも体外から吸い込み力にすることができるからね。その出来る人は限られてくる。ここでも知ってる人で名前をあげるならギルバート学園長。オーガン局長。あとは、タイシくんと瑠奈ちゃんとかだね。瑠奈ちゃんとギルバート学園長は元から体外の魔素を取り入れやすい体をしているみたい。だけど、オーガン局長とタイシ君は別。あれは限界まで鍛えて増やしたみたいだね」
「なんかよくわからないじょ」
ぴこらげが話、奏が告げる。
「学んでいけばわかるよ」
「ふーん」
「ぴこらげさんですが、最初と比べると言葉がはっきりされておりますね」
「奏にまほーをかけられた」
「分かりにくかったからちょいと言語理解の魔法をかけさせてもらったんだよ。まだ生まれたてでうまく発音ができないみたいだからしばらくはそれで補って発音発声練習をしていくようにしてもらう」
「ふん」
ぴこらげがふいと顔を背けむくうと頬を膨らませる
。
「そうなのですね」
「そう」
「ミオさん」
周囲がややざわつくとミオが手招くコンスタンスを見て立ち上がり近づくとコンスタンスが共に来たぴこらげを見る。
「可愛らしいわね。お名前は?」
「ぴこらげ」
「ええ。初めまして」
「だじょ」
コンスタンスがふふっと笑い奏が傍へとくる。
「今日そっちのクラスだったね」
「はい。よろしくお願いします。後その前にミオさんとお話をしたいのでこちらに参りました」
「なら私もいいかな?」
「はい」
奏が頷きコンスタンスがこちらにと2人を案内する。そして部屋へとくるとコンスタンスが座り奏が即座に話す。
「婚約者とのとうまく行ってないでしょ?特にここ最近あたりがひどい」
「はい。ご存じなのですか?」
「まあね。ある程度の学園内の情勢や競争関係他知ってた方がいいからさ。あと、私としては婚約者殿ととっとと縁を切った方がいいね」
「それはなぜ?」
奏が懐から液体の入った噴射機能がついた小瓶を出しテーブルに乗せる。
「そちらは?」
「試してみるよ。ほい」
「ぷはっ。なにするだじょ!」
ぴこらげが液体を噴射されるとびくっと震えくらくらとする。そしてうずうずとする。
「え…」
「ぴこらげ?」
「ぴこー」
ぴこらげがにこにこし奏に擦り寄る。コンスタンス達が驚きコンスタンスの従者がハッとする。
「最近殿下の周りの女性がその様な状態になられているのを見ました」
「そう。これ、霊獣や聖霊たちにも効く薬でね。原料は未開の地でしか取れない禁止薬物を使用したものなんだよ。中毒性はまあまあ。ほい」
「ぷみゃっ!?」
別の小瓶の薬をまたぴこらげがかけられると頭を振るい顔を顰める。
「……」
「ぴこらげ?平気?」
ぴこらげがミオの胸元に飛び込むとすやあと眠る。ミオが抱きしめ眠ったぴこらげを見る。
「解毒薬だけど睡眠効果があってね。起きたらまた戻るよ」
「はい」
「その中毒症状はどの様な症状なのですか?」
「うん。まず、かけた相手の命令に歯向かえないね。これは自白剤や幻覚剤の一種なんだよ。そして、ある意味催眠にかけられた状態だから集中力が極端にかける。その殿下さんがこの薬を使ってるみたいでね。取り巻きはその薬のせい。実際本人がモテてるわけじゃない」
「その薬が禁止薬物だと彼は知っているのでしょうか?」
「まず知らないね。恋の薬とか言われて高額で買取してるみたい。今ちょっと売人を泳がせてたら、その殿下がご購入したのを見たわけ」
「…そうなのですね」
奏が頷きコンスタンスがため息をしその目を閉じる。
「私から学園長に一筆書かせるけど?」
「出来るのでしたらぜひ」
コンスタンスが晴れやかな笑顔を見せる。
「お願いいたします。もういい加減、うんざりどころか消えろと思ってましたから。心のおーく底から」
従者がこくこくと頷く。
「オッケー。後私はこの話をしたかったからついてきたわけ。そしてそっちはミオちゃんに用がある様だけどまた別かな?私もいても平気?」
「はい」
「なら、このままいるね」
「はい。あと、その件はよろしくお願いいたします」
「了解」
「はい。では、ミオさん。ルーフェウスが貴方に好意を持っていると先日お話し致しましたよね?」
「その、はい」
「はい。まあ、ルーフェウスですが、その後にアルスラン将軍に直接お話しに行かれたのですよ」
「……」
「それで返答は?」
「ダリス枢機卿と婚約者同士で決まっていると。しかし」
「しかし?」
奏が興味津々にしコンスタンスが頷き続けて話す。
「聞いた話では契約での婚約をしたと」
「それ誰が話したんでしょうか…」
ミオがつっこみ、奏が話す。
「その場にいた人でしょ?ダリス枢機卿の取り巻き」
「…あの、方もいたけど…」
「サイモンさんとのお話でしたよ」
ミオがダンマリとし、奏が話す。
「仲もちさんかあ。まあ仕方ないし仕事だし。それでルーフェウスはなんて?」
「契約でなら、破棄も考えられるという話をしておりました。どの様な契約をなさったのか私は存じませんが、ルーフェウスの話では無理だと言われておりました」
ミオがため息をする。
「勝手に決めつければ後々痛い目に合う。ルーに伝えてください。私はあの村で一度同じことを言いましたと」
「伝えておくわ」
コンスタンスが面白く返事を返しミオが頷きやれやれとする。
「あなたの言うとおり。決めつけは良くないわ。何事も慎重に行動をする必要があるもの。ただ、どこかの、誰かについては、決めつけどころでは済まないですけど」
「取引の様子もバッチリ」
奏が楽しく小さな水晶を出すと力を込める。そして光と共に水晶に映る学生2人を見る。
「片方は学生に化けた売人の子」
「はい」
ミオが眉を寄せるが目を見開きトマを見て驚愕する。
「トマ」
「え?」
「村の、生き残り。ルーフェウスが話してくれたの。1人生き残りがいて保護されたけど施設から消えたって」
コンスタンスが頷き奏がほうほうと頷き茶髪の薬を渡すトマを見た。
ーあの方々のねえ。
ー同じことをするだろう。
ーああ、汚らしい。
ざわざわと汚れ切った言葉があちらこちらと飛び交う。痩せこけた子供の頃のダリスが疲れ切った目をさせながら1人佇んでいた。
ーダリス。
ダリスがゆっくり振り向き年若い男を見上げ、眩しさのあまり目を細めた。
ーアルスラン殿たちがいなければ私は今頃何をしていたのだろうか。
ダリスが部屋の中でグラスに入った酒を手に外を見ていた。
ーダリスさんは、なぜ枢機卿になられたのですか?
向こうの世界で意を決したミオがダリスへと尋ねる。ダリスが僅かに考え淡々と話す。
ーただ、なったからと申しますか。上を上をと目指していく間にそこにいたのです。なぜ、目指したかは、上の立場になれば亡くなった両親や周りを見返せると思ったからでしょうか。
ーそうなのですか?
ーええ。まあ、結果として多少見返せたところで残りは陰口やら憎まれ口。そして噂があちこちできてしまいましたけどね。
ーご親戚とかは。
ー両親が両親でしたから。
ミオが頷き、ダリスが話す。
ーあとは?
ミオが頭を振る。
ーいえ。ないです。
ヒカルがこそっと耳打ちする。
ーミオ。深く根掘り葉掘りとか。
ーヒカルさんはいいですよね?何もありませんよね?
ヒカルがミオから離れ、ダリスがならと立ち上がり話を終わらせた。
ーミオ殿は深く聞かなかったのは遠慮してだろうな。
ダリスが酒を飲み息をつくもちかっと小さな光が現れる。ダリスが窓から離れドアへと向かいドアの外にいたクリスを見る。
「クリス」
「はい」
「少しばかり食事を持ってきてくれませんか?」
「え?」
「飲みすぎましたので」
クリスが頷きその場を複雑な面持ちで離れる。ダリスが扉を閉め椅子に座った。
ーあー。
薄着を着た瑠奈が気持ちよく湖に浮かんでいた。その湖にぴこらげとぴこらげをうきわがわりにし浮かぶミオと親が楽しむ紬がいた。
「気持ちいい」
「ええ」
パシャと音が響くとミオが大きなお腹を抱えたながら水浴びするユーフェミアをチラリと見る。そのユーフェミアの髪は僅かに光っており、瑠奈の髪もまたそれよりも明るく光っていた。そして焔が湖に足をつけ淡く光りながら湖の水温を調整していた。
「ユーフェミアさん。さむくなかですかー」
「いいえ。気持ちいいくらいです」
「なら、よかったです」
「はい」
「望さんに感謝。森の奥とか流石に誰もこないだろうからね」
「やっぱり入ったほうが気持ちよか?」
「うん。気分転換にもいい」
「私もですね。あと、水浴びで回復ができるのは初めて知りました」
「え?じゃあ、海とか川とかは?泳いだ事なかとですか?」
「紬紬。限定した場所でしかこうならないの。海と川では何も変化なし。あるのは水源地のみ」
「へえ。そぎゃんか」
「はい。私も瑠奈様からお話を聞いて初めて知りましたの」
「へえ」
ミオが足元の膨れ上がる砂地を見る。
「きもちいいじょー」
「あ、ええ」
「ところでミオはおよげんと?」
ミオが気まずく告げる。
「ええ。苦手」
「なら、うちが教えようか?」
「い、いいよ」
「遠慮せんでよかよ」
紬が傍へと来るとミオが戸惑う。
「紬。無理強いして教えない」
「月夜の晩に美しい女神たち」
瑠奈が呆れ、ユーフェミアが気味悪くし、紬、ミオが岸にいるライアスが爽やかに告げる。
「まさに絵になる光景だ」
「…」
「変態だ変態」
「変態もですが変人もです」
「……ぴこちゃん」
ぴこらげが頬を膨らませ水をライアスへと向け吹き飛ばす。ライアスが易々とよけ、また避ける。ぴこらげがむうとし、ライアスがふっと笑う。
「そんな子供騙し聞くわけが」
ライアスの首に刃が付けられるとライアスがさあと青ざめ、タイシが冷ややかに告げる。
「これは子供騙しじゃない。ここで何をしている」
「い、いや」
『どうやって私達の結界を潜り抜けたのですか…』
『貴様は何様のつもりだ。小僧』
2体の竜にも囲まれるとライアスが脂汗を浮かばせる。
「殺さないでよ。っとに」
「ぴこちゃん」
「ん」
吹き飛ばした水に電気が走る。その上に立っていたライアスに電流が流れるとライアスがそのまま崩れ落ちた。
「おお。電気」
「へえ」
「何かされたか?」
「何も。ただエッセイ的なこと言われただけ」
「そぎゃん?」
「そぎゃん。あと、兄も来たことだし上がろうか。兄。上がって着替えるから」
「ああ。なら俺はこいつを連れていく」
「よろしくー」
タイシが頷き気を失ったライアスを肩に乗せ去ると、瑠奈がやれやれと先に湖から出る。
「気持ちよかったー」
「最後はバカみたいでしたけど」
次々と上がりミオもまたぴこらげと共に上がる。
「ミオ。ぴこらげって電気も流れるんだ」
「ええ」
「流れるじゃなくて使える。五大元素使えるよ」
「まあ、すごいです」
「へへん」
「五大元素?」
「火、土、水、雷、風の事。聖獣で五大元素使えるのは聖獣の女王くらいって話」
「おー」
ミオが頷き、ぴこらげが鼻高々とする。
「あがったかーい」
奏がその場にくるとミオが返事を返す。
「はい」
「途中で兄とはちあいしませんでした?」
「したした。いやー、面白いの連れてたね。あれは向こうとかこの世界のハーフの子。それから生徒手帳持ってたよ」
「え?なら生徒?」
「そう。しかも生徒会だ」
瑠奈が目を丸くし、奏が話す。
「極秘にタイシ君とキヨ副学園長とで尋問するそうだよ。なんだったか、砂漠のこととかもだって」
「あー」
「忍者みたいな術使う」
「そうそう。それでこっそり隙見て逃げようとしたけど私が術使えないよう束縛したからねー。そして竜たちに囲まれながらの連行だから笑えたよ」
奏が可笑しく告げる。
「それで私がみんな送ることになったんで着替え終わったら一緒に戻るよー」
「はい」
「お願いいたします」
「おっけー」
ミオがそっかと思いちらっとユーフェミアの膨らんだお腹を見る。
ーあと、二、三ヶ月くらいかな…。
「ミオさん?」
ミオがはっとし無意識にユーフェミアの隣に立っていた。そしてあたふためく。
「その、あの、お、お腹」
「はい」
「さ、触っても…いいですか…」
「どうぞ」
ユーフェミアが微笑みミオが頷きユーフェミアの膨らんだお腹に触れる。
ー…懐かしい。ユナがまだお母さんの中にいた時以来だ…。触ったの。
ミオが村のことを思い出すと次から次に涙が溢れる。
「ミオ?」
ぴこらげが覗き、ミオがもごもごと口を動かしながら俯く。ユーフェミアがそのミオを抱きしめるとミオが肩を震わせ涙を流し小さく嗚咽を漏らした。
ライアスが椅子に座り萎縮していた。その周りをタイシ、キヨ、ラファ、紅蓮、楓に囲まれておりライアスが汗を滲ませる。
「なぜ来た?」
「ちょっとしたあいさつで」
「挨拶でなら昼にすればいいだろう?」
「それも考えましたが…」
『下心あってのことでしょう』
『ああ』
「…そうか」
タイシが剣を出し向けキヨがくくっと笑う。
「正直に話さないならその目を潰す」
「申しわけありません!ありました下心!」
「あはははは」
「あらあら」
ライアスが硬直するとぎこちなく右を向く。そこにルーフェウスとにこりと笑うコンスタンスがいた。
「ご、ご両人、も」
「ああ」
「ええ」
ライアスの目の前に刃の切先が突き付けられる。
「下心ある方が、生徒会の一員は、ねえ?」
「ああ」
「そ、そのま、えに、引いていただきたく…」
「さて」
キヨがポンと手を叩く。
「こうしようか。ライアスはタイシが学園内にいる間は召使だ」
「えっ!?」
「その変わった術はなかなか使えるし、竜達の結界を潜り抜けて入ったからな。それに砂漠でもそうだ。2体の竜の猛攻を2人を連れて逃げ仰たと聞いた」
『ふんっ』
『別に猛攻ではありませんからね』
「どちらにしろ逃げられたのは間違いなしだ。そしてライアス。明日から学園内ではタイシの召使となれば退学はなしだ。生徒会については2人の判断に任せる。どうする?」
ライアスが汗を滲ませむうと僅かに声を漏らす。
「タイシは?」
「…」
タイシが剣を鞘に戻すとライアスを睨みつける。
「二度目はないと思え」
「は、はい。あと、それで、いいです」
「よし」
「ライアス」
コンスタンスがはあとため息をする。
「あなたの良いところはもちろん知ってますし、会長候補にあげてたのに。どうしましょう」
「い、いや」
「今後の態度次第だ。あと、罰として100項書取りだ」
ライアスが汗を滲ませる。
「せ、せめて半分」
「100だ」
ライアスが頭を落としキヨがふふっと笑うも奏が話す。
『キヨ。クリスから来て欲しいって』
「分かった。私は行く」
「はい」
キヨが離れその場を去ると紅蓮、ラファがライアスへと近づきライアスがすぐに頭を上げ冷や汗を流した。
「ダリスがいなくなった?」
キヨが誰もいない部屋を見渡す。そしてクリスがオドオドとしサイモンが話す。
「私もクリスも離れた時です。いたのは警備のもの達だけでしたが眠らされておりました」
「2人離れてはなんのための護衛だまったく。だが、あれもまあ手練れだからな。わざとかもしれんなぁ」
キヨが扇子を握り手を叩く。
「ここは学園内だからな。対応は学園長とまず話す。お前達はできるだけ探せ」
2人がはいと返事を返しキヨがまったくとぼやき足早に離れた。




