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運命のミオ  作者: 鎌月
49/64

学園都市オラシオン3

都市内の救護室にてー。

リックが与えられたスープや水を飲みじいんとする。その隣にミオが座り肩にスラムを乗せた奏が面白くパンを手にし食べながら話す。

「食べるねー」

「まだ、空いてるけど…」

「2日まで我慢。今度腹痛くて苦しんだのたれ回るよ」

「…分かった」

リックが我慢しスープを飲む。そこにダリスたちが来るとリックが嫌な顔をする。

「教会の…、神父とかもう勘弁だし…」

「そちらについては大変申し訳ありませんでした」

「いや、申し訳」

「何もしてないのから謝罪求めても意味ないよ」

「…ん」

「なぜミオ殿も一緒に連れていったのですか?」

ミオが目を丸くし、奏がわずかに怒りのこもった目を向けるダリスを見る。

「理由としてミオちゃんも次のターゲットにされていたから」

「ターゲットとは、一体」

「目的物だよ。ミオちゃんも狙われてたわけ。ミオちゃんを恨む生徒はここに複数いるからね」

サイモンが驚き、リックが目をぱちくりとさせる。

「あそこは生徒が生徒を売る売買組織の一端でもある。私が垢抜けさせた連中の頭読んで分かったことだよ。そのあいつらも今頃素直に話してくれてる。このスラムがとことん痛めつけて放心したからね」

『その通り』

「え?」

「従魔の契約をなされたのですか?」

「そうだよ。そこにいるリック君と一体化しようとした魔獣をね」

リックが嫌そうにし奏が話す。

「瑠奈ちゃんの場合、人だけ残し魔素を含む魔獣は浄化して消し去っている。だから知らなかった。わからなかっただろうけどキメラは未開の地の魔獣たちを材料に使っている。理由として魔術にとって多くの魔素を含む良い素材だからだ。そしてミオちゃん。ミオちゃんの場合力が強いのも理由としてあるけど、ここの中では勝手に恨んでる連中もいる。そいつらの依頼で攫われかけてたわけ」

「その事実を知ったのはいつ?」

「昨日。食堂でね。小言が聞こえたもんで狙ってくると思って常についていたんだよ」

「だから、昨日は図書室にもいくなって話したのですね」

「そう。実際教会の暗部が動いていた。ここではアルスランと葵の娘だから狙われるのも理由の一つとしてあるしね。ミオちゃんはあまり自覚ないだろうけど、古代人含めて意外と狙う連中多いのよ。理由として父親母親とも有能な血統書付きの子供だからね。見栄えももちろんいい。もし攫われたらどうなるかは相手次第だ」

「えと」

「姉ちゃんってそんなに狙われてるのか?」

リックが尋ね、奏が話す。

「瑠奈ちゃんほどはないなー。あっちはただいま、男連中が夢中になってるとこだし」

「瑠奈?」

「タイシ君の妹」

「あー、あの最強のかあ。へえ」

「奏殿はここには欠片を探すために呼ばれたと」

「そーだよ。でーもー」

奏がミオを抱き寄せる。

「かわいい妹分ができたからね。探しつつこっちの解決もしようと思ってるし、悪いけど私も教会連中が好きじゃなくてね。もちろん全部じゃない。一部の人間」

奏が手を離す。

「そっちはどうする?」

「どうするとは何がですか?」

「枢機卿のままでいるか。アストレイの新王になるか」

サイモンたちがわずかに動揺しミオがじっとダリスを見る。

「もし、新王になったら私は貴方の味方でいるよ。理由として世の常を分かっているから」

「世の常とは一体」

「向こうの世界の言葉。わかる異界人に聞いたらいい」

「まだ、候補は3名おります。その中にはアルスラン殿もおります」

奏が頷く。

「でもアルスランは向いてない。素質はあるけど王にはなれない」

「なぜです?」

奏がミオの肩を抱き寄せる。

「ミオちゃんとそっくりだからだね。皇后とか支える相手としてはいい。でも、国の方針を決める者としてはー外れてるね。理由として素直すぎる。ある程度の悪も必要だ。必要悪というものだよ」

「必要悪?」

「話、難しすぎる」

リックが顔をしかめ、奏が告げる。

「なあらわかるように勉強したらいいよ。ここ学園都市だし」

「えー。あと学園都市っつても金いるだろ?」

「君被害者じゃん」

奏がサイモンを指差すとサイモンがぽかんとする。

「そこの糸目さんから教育資金もらって学んだらいいよ」

「いや、なぜ私が…」

「そっちは妻子がいるでしょう?そしてそっちは金を簡単に使えない。なーらあとは独身の糸目さんしかいない」

「いや、でも」

「教会の被害者くんだ。あとこの子素質あるよ」

「え?なんの?」

「教育受けたら開花するね」

「…でも俺勉強、嫌い」

「好きなことだけしたら?私はそうやってるしさ。ここは単位が取れたら卒業できるとこだもん」

「いや、ですが」

サイモンがあたふためくと奏が話す。

「君がやる気があるならの話になるよ」

「…」

「どうする?」

リックが考え込みボソッと話す。

「飯とか、苦労しねえ?」

「しないしない。寝床もある」

「じゃあさ、いじめとかある?」

「あるよ。でも、暴力は御法度でもあるところだからね」

「…むう」

リックが考え込むとちらっとサイモンを見る。そしてまた伏せるがチラチラと見るとサイモンが気まずかするが観念しため息を吐く。

「分かりましたよ。資金は私がだしますが貸すだけです」

「それでいいよ。無料は楽してるだけだ」

「…どんだけいるの?」

「都市で過ごすだけ金はいる」

リックが顔をしかめ奏が頑張れば平気だとリックの肩を叩いた。


ー私らしく、あるのかないのか。

ダリスが用意された部屋の中の窓から差し込む夕日を見ていく。

ーダリス…。どうかしたの?

困惑するルクレイシアを思い出すと頭を振り上を見上げふうと息をつきその目を閉じる。

ー新王になったら私は貴方の味方でいるよ。

「新王か…」

ダリスが目を開け立ち上がると窓を開き黄昏時の風を浴び思いふけた。


ールイスさん。あれから音沙汰なくなったな。

瑠奈がバスタブの湯に入りながらはあと息を吐く。その瑠奈の後ろではアンナが瑠奈の髪を洗い手入れをしており瑠奈が話す。

「アンナは長い時の中を生きてて暇な時は何してた?」

「暇な時ですか?まあ、とても暇である時は長い眠りについております」

「眠りに?」

「はい。特に何もなかったらです」

「そう」

「ええ」

「そっかあ」

瑠奈がはあと息を吐くとその目を閉じうつらうつらと始めた。


ルーシャスが再び夜釣りをしていた。そこにミオが来る。

「教会のことは聞いた」

「先生達から?」

「いや。部下だな。密偵がいる」

「暗部とは違うの?」

「ああ。人は殺さない。ただ、何があったのかいち早く調べて教えてくれる。ラファエルの前世のものと一緒に売買を行なっていた隠し部屋を見つけたと聞いた」

「ええ」

ミオがルーシャスの隣に座り、ルーシャスが話す。

「怪我は?」

「ないわ」

「なら、よかった」

ミオが頷きルーシャスが告げる。

「ダリス枢機卿が来ていると聞いた。ミオの婚約者だろう?」

「ええ」

「…」

ルーシャスが黙り込み頷きミオがじっと見る。

「なぜ、婚約者に?」

「どうして聞くの?」

「聞きたいからだな。彼は女性がいる。ルクレイシアと言うものが」

ミオが頷く。

「知ってて婚約者になったのか?」

「違う。ルー。私は私の意思で婚約者になったの」

「その意思には彼に想いを寄せてもいるのか?」

「どうしてそこまで聞くの?」

「知りたいからだ」

「なに」

「こんな夜更けに何されているのです?」

ミオとルーシャスが軽装し髪を一つに束ねたダリスを振り向く。ダリスがミオの手を掴み引き寄せるとミオが戸惑いながらダリスの元にいく。

「なぜ、ミオを婚約者にしたんですか?兄殿は」

「え?」

ミオがルーシャスを見て驚きルーシャスがダリスを睨む。

「秘密の花園に貴方は貴方が好む相手がいるでしょう?愛する女性が」

ミオが胸をちくりと痛ませ、ルーシャスが憎々しげに告げる。

「ミオを隠れ蓑にするのですか?偽りの花嫁に。だからあなたは」

「言いたいことはそれだけか?」

ミオがぞっとしダリスが冷ややかにルーシャスを睨む。

「ルーシャス。お前こそ立場を弁えろ。誰にものを言う」

ルーシャスが奥歯を噛み締める。そしてミオが冷や汗を流す。

ー後で聞いたらいいよ。

ミオがどきりとし視線を木陰へと移す。

ー見つけるの上手だ。悪いけど昼間話した通りだからね。

ーその、ご迷惑かけて、あ、すみません…。

ダリスがミオの手を引きルーシャスから離れる。奏が悔しがりながらも憎々しくダリスを睨むルーシャスを見てゆっくりと離れミオの後を追う。

「昼間に奏殿が話されてましたよね?」

ダリスがやや怒り口調で告げるとミオが申し訳なく告げる。

「すみません……」

ミオが表情を曇らせながら行き道とは違い歩くダリスに手を引かれたままついていく。

「あの、ルー、シャス、とは。どういった関係なんですか…」

「従姉妹の弟です。私の母はルーシャスの母の姉にあたりますから。出来の悪い姉です」

「え…」

ダリスが息をつく。

「いえ。兎に角勝手に1人で出歩くのはやめてください。それも男の為に」

奏がにやにやとしながら会話を聴きつつついていく。

「友人です。ルーは」

ダリスが止まりミオが話す。

「イーロンから避難した時。ハルヤーンの村の孤児院。あそこで暮らしていた時村の図書館で知り合った方です。その時は王族とは名乗らなかったですし、市民服を着られていたから知らなかったんです」

「…だとしても」

ダリスの手に僅かに力がこもるとダリスが苛立たしげにミオを見る。

「こんな夜更けに出歩くな」

ミオが胸を苦しくさせ、ダリスがミオの手を引き再び歩いた。


翌朝ー。

「ミオー」

ずうんと落ち込むミオを心配そうにマリアンヌが見て話しかける。

「どうした?」

「わん。元気出せわん」

ミオがこくりと頷きマリアンヌがミオーと揺らした。


ーあの。

人気のない場所でサイモンが複雑そうに呼び出した奏へと話す。

「昨夜の、あれは一体。いや、本当。あちらに渡ってからダリス様は変わられたと言うか…」

「ここだと、身分の差によっめ仲は深まらないからね。まあでもまだミオちゃんは惹かれてない。惹かれてるかもしれないけどあの子は恋愛沙汰に無縁な生活を送ってたから気づくのにも気づかないでしょ。あとは、婚約者同士とはいえどうにも隔たりがあるけどなんで?」

「はい」

サイモンが正直な話奏が頷く。

「あー、繋がったし、なんとなーくそうじゃないかと思った。ルクレイシア」

「あ、ええと」

「我が敷地内で飼ってる蝶がいるわけだ」

サイモンが気まずそうに頷く。

「その、はい。しかし、こちらの世界に戻られてからまだ一度しか会われていないのです。前は戻られたら必ず会われていたのですけど…」

「理由ありだ。ちなみに彼のその時の顔から見た心情は?」

「えーと、困惑されていたようにも思えます」

「困惑か。気になるな」

奏がふむと考える。

「ま、後でもいいかー」


ーと、言いつつ。

奏が姿を消し秘密の花園へとダリスの住まいを通り向かう。

ー気になるもんな。ていうか、枢機卿の家にしては質素すぎるなー。他の2人はギンギラギンなのに。

奏が庭へと来ると周りの花壇や薔薇の花を見る。

ーお庭は派手。

「何のよう?」

奏が奥へと進み東屋を見る。そこに睨みつけるルクレイシアと小太り神父がいた。

「まだダリスを落とせないのか」

「何を言いに来たのかと思えばくだらない事を」

「何がくだらないだ」

「だから何もかも失敗に終わるのよ」

ルクレイシアが立ち上がる。

「断罪されなかっただけでもよかったと思っておきなさい。私からしてみればあんたみたいな幼児嗜好者こそ断罪されるべきね」

「誰に口を聞いている!」

「変態神父によ」

神父が手を向けるとルクレイシアが掴み投げ腕を上へと捻じ曲げ抑える。

「おられたくないのならここからさっさと去りなさい」

「っの」

「ミオ」

ルクレイシアが視線を横へと向けリリーが近づく。

「ダリス枢機卿の婚約者とお聞きしました」

ルクレイシアが手を離し神父を解放する。

「魔神の腕を」

「はい」

「そう」

ルクレイシアが手の甲を上へと上げ指輪を光らせると赤い光を腕に纏わせる。リリーが目を見開き神父がすぐに起き上がるも顔をその手で掴まれると嗚咽を漏らし炎をあげ燃焼し何も残さず消えた。

ー太陽に近い熱を持ってるな。

リリーが汗を滲ませルクレイシアが話す。

「魔人の彼がいるのね」

「…はい」

ルクレイシアが光を消す。

「分かった。あと、ミオさんについては知っているわ」

ルクレイシアが椅子に座る。

「知っていると申しますと…」

「ええ。ダリスの婚約者」

「…貴方は何も思わないのですか」

「思うところはあるわ。ただ、事情があるの。そして、彼は今私のところに来るのが怖くなっているみたい」

「なぜです?」

「私がイーロンの関係者と知ったからでしょうね。あちらの世界で過ごした時に知ったかもしれないわ。研究者としていた事をね」

ーへえ。

奏が頷き、ルクレイシアが話す。

「魔神の彼は貴方のことを大事にしているわね」

「…その魔神ですが、元は一体」

「人よ。彼もまた研究者。魔人になってしまったのはキメラの犠牲によるもの。いわば失敗」

「え」

「魔人なんて昔からあるとかじゃないわ。10年ほど前に新たに作られたもの。貴方のその腕は眷属、子孫のようなものね。治せるには治せるけど、腕をなくすわ」

「…腕は元から無くしております」

「そう」

リリーが頷きルクレイシアが話す。

「お名前は?」

「リリーです」

「なら、リリー。私、あの子豚さん燃やして消してしまったから話しておいてちょうだい。それから、あなたはミオが嫌い?」

「…嫌いです」

「なぜ?」

「か、のじょのせいで、わ、私は」

リリーが言葉に詰まりルクレイシアが告げる。

「ミオだけど、あの子は私の恩人の娘なの」

「恩人…」

「ええ。でも恩人の娘だからといっても譲れないものもあるわ。その一つについてはイーロンの研究者の頃の全てよ。私の研究してきたこと。私の記憶」

「キメラの」

「それ以外のことよ。あと、貴方はどうして私の元に来たの?」

「上からの命令です。貴方にご挨拶をと」

ルクレイシアが鼻を鳴らす。

「面白がってなのね。馬鹿馬鹿しい」

ルクレイシアが手を払う。

「ミオの母親とは、どのような」

「貴方には関係ないわ。あと、貴方はその子を本当に恨んでいるの?」

リリーが口をつぐませルクレイシアがリリーに近づく。

「貴方を見る限り、恨みというよりも生きるための踏み台にしかしていないようね。本当の恨みは、恨みによる怒りは瞳の色。空気から違う」

リリーが鼓動を跳ねさせながら黙り込み、ルクレイシアがやれやれとする。

「ダ、ダリス、きょうのことを、お二人を、どう思われてますか…」

ルクレイシアがため息を漏らす。

「質問ばかりね。彼のことは好きよ。でも、まだまだ子供」

ルクレイシアがリリーから離れる。

「彼は女性として見ているよりも大切なものとして見ている。そして、好きなものと教えればもちろん用意してくれる」

ルクレイシアが薔薇の花に触れる。

「恋愛というものは欲しいものを与えるもらえるだけでは成り立たないの。その人の事を思う事。その人を他人に取られたくないために行動を起こす。嫉妬をする事よ」

ルクレイシアが手を離す。

「上に話してちょうだい。勝手に私の許しなく人を来させないようにと。次、同じ事を行えば私は私が持っている秘密は話さない」

「なぜ、あなたはここに」

「はいか、いいえよ」

リリーが気圧されはいと返事を返す。

「ええ。なら行きなさい。それから魔神の彼によろしく伝えておいてちょうだい。私の名前を出せば反応を示すわ」

「はい…」

ルクレイシアが頷きリリーが頭を下げさっていく。

「あいつらも人手不足なのね」

「面白い」

ルクレイシアが赤い石の指輪を向けると指輪から光が走るが奏が姿を見せ石を指一本で制止ルクレイシアの口を塞ぎ結界を張り姿を消す。ルクレイシアが驚愕しながら止められた石を見る。

「無理無理」

「…」

奏がルクレイシアの口から手を離す。

「私は奏。見ての通り日本人」

「…何をしに来たの?」

「女たらしの枢機卿の女を見に来た」

ルクレイシアが鼻を鳴らす。

「嘘ね」

「どの部分が?」

「ダリスの知り合いでしょう?」

「最近ね。私はミオちゃんの知り合い。ミオちゃんのことは妹分として見てるんだよね」

「ミオの」

「そう」

ルクレイシアが軽くため息をし奏が話す。

「彼は私を研究者と知ったかしら?」

「知ってるけど、まだ本当なのかと疑問に思っている」

「ええ」

「でーもさあ、それだけで会いに行きづらくなったのもどうかと思うけどね」

「彼はまだ子供よ。子供なの」

「子供というよりも、分からないんだと思うし逃げている。私の考えだと貴方に母としての愛を注いでもらっている感じ」

「同感ね。私もそう思うわ」

奏が頷き、ルクレイシアが話す。

「なぜ私のところに来たの?」

「ミオちゃんのライバルがどうなのかなーって様子を見に来ただけ。面白がってとかじゃないから。そして、イーロンの研究者ってのは知ってたからね。蜥蜴男知ってるよね?龍の男」

「…貴方のところに?」

「そう」

ルクレイシアが小さく息を吐く。

「生きていたのね…」

「死にかけてたところを私が助けた。そうしたらイーロンの研究者だったけれど反発した為にキメラ研究の材料にされたと聞いたよ。龍を材料としてね。でも、半端になってしまった」

「ええ。釣り合わなかったと聞いているのだけど元々キメラ実験は失敗しかしなかったわ」

「なら今のは?」

「半分と言うところよ。理由として自我をなくすこともあるし、分かる相手には分かってしまうからよ」

「正体が?」

「ええ。キメラは確かに合成獣だけど、私が思う理想は完全一体型にして分離型。つまり、どちらも本体になりうるもの」

「興味深いな」

奏が楽しく笑みを浮かべ、ルクレイシアが話す。

「貴方は何者かしら?」

「厄介者だね。あと、貴方はここで何かする為にいるわけ?」

「仕事でいるけど、ダリスともいたいわ。ただ、彼に恋愛感情は求めていない。私が求めている相手はもういない」

ルクレイシアが軽く息を吐く。

「枢機卿といたいのは気になるから?」

「そうね。まあ、後はあいつらの言いなりにもなっているからそうなりたくもない。やけね」

「ふうん」

「ミオさんについては聞いてるわ。ただ、進展があるかないかはと言うところ。そして、私はその子に悪いことは一切しないわ。恩人の娘でもあるから」

「分かった。なら、人が来そうだから私はこれで失礼」

奏が結界を解いてすぐ姿を消す。

ーああ、もし私と話がしたいならサイモンを通して。

奏の声が消えるとルクレイシアが小さく肯定と頷き答えた。


「どうでしたか?」

夜中にサイモンが待ち合わせの場所へとこっそり尋ねると奏が話す。

「彼女娼婦じゃなくて工作員だ」

「では敵ですね」

「味方でもあるね。彼女自身、ダリス枢機卿のこと人として好きだし上と揉めてるし私の目の前で1人殺して消したから。小太り神父を。名前はワーズだったね」

「ワーズ神父ですか。知っております。後ほど確認します」

「どうぞご自由に。そして、味方とも思ってもいいけど、場合によっては敵になる。だけど、ミオちゃんには一切悪いことはしないってさ」

「それ本当ですか…」

「本当本当」

「…ならいいのですが」

奏がうんうんと頷きサイモンを指差す。

「そして、貴方は私と彼女の手紙など渡す係」

「はあ?」

「そう決めたからよろしく」

「いや決めたからってなんで勝手にっ」

「決めたし決まったから。そして話したからよろしく」

サイモンが何か言いたげだったが大きく息を吐く。

「分かりましたよ。あと、ダリス様の事を人として好きと言われましたよね」

「そうだよ。恋愛対象まではないって。理由として彼女が心から慕っていた相手がもうこの世にいないから。つまり今も慕っているから裏切らないみたいなものかな。でー、枢機卿も枢機卿で、彼女からして見たら彼氏とも言えるけどどうにも母親を慕う子供のような。そんな風に見える。ま、私も聞いて納得はしたね。疑う相手に中々近づけなくなってるから。普通恋人でも近づきはするけどね」

「そうなんですね」

「私も独り身だけどさあ。それくらいのことはわかるのに。余程暗いとこ暮らししてたんだ」

「五月蝿いです」

「それじゃ報告終わり。じゃね」

結界が解かれ、奏が姿を消しサイモンがはあとため息をし仕方がないかと思い人目を避けその場を後にした。


ーあれからどうにも、はあ。

ミオがため息をし、そしてため息をする。

「ミオは2日前に何があったんだ?」

マリアンヌが尋ねるとミオがふっと笑う。

「まあ、色々…はあ」

「…」

「ミオリュシェール嬢はいるか?」

ミオが顔をあげ茶に黒髪の混ざった青年が教室の前に立っていた。

「はい」

「ああ。所要がある。ついてきてもらいたい」

「所要…な」

「生徒会にゃ生徒会。胸のバッチがそう」

青年の胸の月と太陽の紋章の入ったバッチをマリアンヌの猫が指差す。

「行ってこいにゃ」

「ええ」

ミオが注目されながら青年の元へと行き教室を出ると青年と共に離れる。

「秘書の方ということは…」

「生徒会長かしら?」

「違うわ転入生ですからいつものよ」

「ああ…」

「羨ましいですわ」

女子生徒達が潜めき話す。

ールーは確か、会長だったわね。ちょっと気まずい。

ミオが複雑そうにし青年を見る。

「申し訳ありません。まだきたばかりなので生徒会のことはあまり」

「分かっている。紹介も兼ねてになる」

「え?」

「会長直々だ。転入生については生徒会について。こちらの学校の生徒間のルールについてまだ知らないことが多いからな」

「生徒間のルールがあるんですか?」

「ああ。そちらも含めて説明する」

「それは転入生を全て集めて?」

「いや。個々人順当にだ。あと、俺は以前会ったことがある」

ミオが目を丸くしということはと思い出す。

「あの、片目の…ステファン」

「そうだ」

ミオが驚く。

「確か目は見えなかったんじゃ…」

「アスクレピオス様の加護で回復したんだ。あの裁判の時、俺も捕まって処刑台待ちになっていた」

「どうして…」

「密偵をしていた。将軍とだ。そして捕まり見せしめとして処刑されかけた。陛下もだが殿下もあの時大変お怒りだったし、申し訳なかったと謝罪も受けた。そして、ストレイジ伯を動かしたのはそちらだろう?」

「私は特に」

「話は聞いている。将軍も来てくれて感謝したと話してくれた。約束を破りそうだったと」

ミオが軽く息を吐く。そして木製だが彫刻が見事な扉の前に来るとステファンが扉を開ける。そこは誰もおらずステファンがミオを通す。

「ここで待っていてくれ。会長を連れてくる」

「…」

「どうかしたか?」

「その、夜に」

「ああ…、一昨日だろう?」

「ええ。あの後ルーは」

「機嫌が悪かったな。ダリス卿。従兄弟の兄上とは折り合いが悪いんだ。ダリス卿が全て悪いわけじゃないし、せいでもない。悪いのは亡くなられたご両親だな。そのせいでダリス卿もよく見られてはいないんだ」

「気になるのだけど…、何故そのご両親についてわからないことばかりなの?」

「緘口令も敷かれているからだ。王室の恥。膿言われていたからな。会長を連れてくるから待っていてくれ」

「ええ」

ステファンが頷きミオを残し扉を閉める。ミオが部屋を見渡し指示された席へと座る。そこにノックが響くとミオが立ち上がり、扉が開き扇子を持った金髪の女生徒が微笑みはいり、眼鏡の少女が剣を腰に差し入る。

「お待たせいたしましたミオさん。生徒会副会長のミレーラロドリヘスです。初めまして」

「はい」

「はい。ミオリュシェールです」

「ええ。ご活躍のほうは度々お耳にしております。リュシェール公爵令嬢。そして、ふふ。ルーね」

ミレーラがセンスで口元を隠しくすくすと笑いながら席へと座り、剣を差す女性とは後ろへとくる。

「ルーからある程度詳細は聞いているわ。本来ならルーが説明しなければならないけど、私が致しますと彼に話したの。貴方と彼は特別な関係を持っているから別の話をしそうで長引きそうだったからよ」

「村の事でですか?」

「ふふ。ええ。思い出に浸る事でね」

ミオが頷きミレーラが話す。

「なら早速簡潔に話していくわ。ルシア」

「はい」

ルシアがミオの前に資料をおくと生徒手帳も置く。

「そちらは部屋で目通ししておいてちょうだい」

「はい」

「ええ、な」

「貴方は副会長ですか?何故、試される真似を?それとも生徒会ではないとかなのですか?そしてこの方はどなたですか?私は何かしましたか?」

ミレーラが止まり口を閉ざし奥歯を噛み締め、ルシアが僅かに笑むと肩を震わせるミレーラの肩を掴み抑える。

「この生徒手帳。無くしたものなのでしょう?」

「はい」

「も、もう、いいではありませんか!」

ミレーラが声を上げるもルシアが睨むと体をこわばらせる。

「何をされたいのですか?」

「…ええ。簡潔にいうわ。退学してくれない?」

「お断りします。私は学ぶためにここに入りました」

ルシアが剣を抜きミオの前に突き出す。ミレーネの頬に刃が当たったのだろう、すーと血が流れ頬を伝う。そしてミオがルシアをまっすぐ見つめルシアがミオを睨みつける。

「ル、ルシア、様」

「ミレーラ。動いたら痛い目にあうわよ」

ミレーラが青ざめルシアが冷たい視線を向ける。

「抵抗できない相手に力でものを言わせる。黙らせる行為はいきすぎています。剣を突きつけて脅すなら」

ミオがその剣の刃を握るとルシアが目を見開きミオが手から血を流しながら自分の首元へと向ける。

「覚悟があってされてますよね?」

ミレーラが青ざめ、ルシアが脂汗を流す。

「私を憎しむ理由をここではっきりと教えてください」

ルシアが奥歯を噛み締めその口を開く。

「あなたが居なければルーは」

ルシアの隣に突如ステファンが現れるとルシアがすぐに押さえつけられる。

「ス、テファン。うっ」

ミレーラが震えながらふらつくもミオが血に濡れていないもう片方の手で倒れかけたミレーラを支える。

「あ、あな、た。血、が」

「ヒリヒリはしますけど…」

ミオがミレーラを座り直させるとミレーラの頬の傷に触れ光を当てる。

「あなたがっ、あなたのせいで私はルーフェウスから婚約破棄されたのよっ!あなたのせいで!」

「その性格だからだろう」

ステファンが冷たく言い放つ。

「人を脅して人を使う。殿下の隣に相応しくない」

ミオが手を離し、ルシアが睨みつける。

「人を使わずに上は成り立たない!だから」

「支えあってこそ人も国も何もかも成り立ちます」

ミレーラがミオを振り向きミオが悲しみの表情を浮かべる。

「支え合わなければ滅んでしまいます。そして憎しみあっても自分以外のために我慢する事も必要なんです」

ルシアが僅かに奥歯を噛み締め、ミレーラが胸を熱くさせる。

「ルシア」

ルシアが汗を滲ませルーフェウスが中へと入りルシアを睨みつける。そして騎士達が囲む。

「失礼致します」

瑠奈が中へと入りやれやれとするとミオの手を握り瓶を出すと液体をかける。ミオがすぐに汗を滲ませ激痛を堪える。

「っうう」

「あらあら」

「まったく。ミレーラ嬢。お話ありがとうございました。まさかこうも堂々とくるとは」

「え…」

「も、もうし、わけ、ありま、せんでした」

ミレーラが顔を赤くし涙を落としていきながら震える。

「紬を通して話があったの。後でまた詳しく彼女を交えて話すから」

「わ、分かった。痛い…」

「はいはい」

瑠奈がミオがの切り傷を見て縫うほどじゃないなと分かるとアンナから包帯を受け取り巻いていく。

「ル、ルー。た、助けて」

ルーフェウスがはあと息を漏らし、ルシアが騎士達に捕縛される。

「ルシア。ステファンの話した通り。そちらの行動、言動。今回のような傷害や脅迫を起こし、あまつさえそれを父親の力や身分を使い隠した。それも何度もだ。そして退学の身だというのに在学生を脅しこの校内に侵入した。もはや犯罪だ。侯爵には厳しく罰してもらうよう我が父を通し伝える」

「そ、そんなっ。待って!嫌よ!謝るから許して!!ルー!ルーフェウスお願い!!」

ルシアが叫び、瑠奈が連行されるルシアを見てやれやれとするとミオへとこそっと話す。

「会長の話だと婚約破棄されたのは8年前。退学は1年前」

「……え、と。ええ」

「ミオ、様。た、大変、申し訳、ありませんでした」

ミレーラがぼろぼろと泣きながらミオへと頭を下げた。


1時間後、瑠奈の部屋にてー。

「んー、少し間に合わなかったたいなあ。ごめん」

紬が申し訳なくしながらミオの手に触れる。ミオが頭を振り目を晴らし落ち込むミレーラを見る。

「いえ。それで?」

「うん。まず、生徒手帳を隠したのはミレーラたい。同じ教室でしょ?」

「ええ」

「うん。で、それを脅してそんルシアって人が来たと。どこで見たとかは分からんけど脅されて校内潜入の手伝いとかさせられたらしか」

「ほ、本当に」

「もう謝罪はいいです。次はされないように気をつけてください」

「はい…、はい」

ミオが頷き瑠奈がやれやれとする。

「前学園長時代の時に副会長だったそう。その当時を知る生徒達から聞いたら悪女と言われていたそう。剣の腕もまあいい方だったから剣に慣れていない生徒達を呼び出しては相手をして、負けたら単位を剥奪したりもしたらしいの。ちなみに、あの時は婚約破棄されて恨んでるって話だったけど、在学中。現会長のルーフェウス殿下を見下していたし、殿下がその当時の最下層クラスに落とされた時は面白おかしく見ながら浮気してたそうだから。ちなみに今は家に勘当されかけて居場所を失っていたから婚約破棄の解消を行えばまた元の生活に戻ると思って言い寄ってきたそうよ」

「……え」

「恐怖政治だったって」

ミオが紬を振り向き紬が告げる。

「だけん今も怖がっとる人が多からしか」

「ええ。あと…会長の婚約者でも、8年前に破棄して、学校にいづらくなかったのかな?」

「話だと当人は婚約中だと嘘をつきまくってたそう」

「そう…」

「あの…」

ミオ達がミレーラへと向けるとミレーラがドキドキとさせながら話す。

「なぜ、ルシア様はミオ様のことを婚約破棄されたのはミオ様のせいだとおっしゃっておられたのでましょうか…」

「八つ当たりもありますでしょうけど、本人が破棄された自覚がなかったら、ミオの婚約者探しが原因とか?」

「え?婚約者探しは私は何もしてないのだけど…」

「ミオが娘と分かってからアルスラン殿のところに婚約希望者が相次いだと聞いたの」

「ああ…。それは、まあ聞いた……。そこで……え?」

ミオがはっとし、瑠奈が話す。

「ルーフェウス会長も送ってたみたい。王の許しも貰って」

ミオがぽかんとする。

「わ、わかります」

「なんで?」

「だって、考え方が違いますもの。ミオ様は」

ミレーラがドギマギとしながら辿々しく話す。

「それに、学ばれる為にお越しになられたともうされておりましたが初めから知識が豊富ですし古代語もご理解されてお話しなさってます。私なんてもう2年もおりますのにちっともです。あと、あの応接室で、ルシア様は人を使わなければ上は成り立たないとおっしゃっておりましたが、支え合わなければ人も国も成り立たず滅んでしまうとおっしゃられた。憎しんでいたとしても自分以外のために我慢する事も必要であると毅然とされた態度で、堂々と」

ミレーラが涙目で顔を赤らめながら尊敬の眼差しをミオへと向ける。

「感動いたしました。感極まります」

「え、えと」

「それに、私を、こんな酷いことをした私を助けて」

「ていうかミオは気づいてたんでしょ?盗んだのこの子って」

「まあ…。その、また戻ってくるかと思ってたから。今日声をかけてみようかと思ったら朝からいなくて」

「朝からもう使われてたとたい。うちと友達とで見張っとった」

「そう。そして私が何するか泳がせたの。そうしたらミオの後に堂々と入って行ったそうだからすぐに呼びに行ったの」

「焔がね」

『はい』

「だからすぐ来たのね」

「んんんー、でも怪我したたい」

「大したことないわ。あと、ああした方が彼女は何もできないと思ったの」

「なんで?」

「勘、かな」

紬がえーと声を出しミオの頬をつまみ引っ張る。

「混乱して刺すことあるから次せんでね」

「同感」

「ふぉ、ふぉめん…」

紬が手を離し、瑠奈がやれやれとする。そこに扉が開き透華が入るとアンナが楽しく話す。

「どうでした?外は」

「はい。一党捕縛できました」

「ええ」

「一党?」

「彼女1人だけではこの中まで来れるのは難しいでしょ?だから彼女の命令で来ていた連中を透華さんがのしにいったわけ」

「うん。教会の連中共だったし顔見知りもいたからスッキリしたよー」

透華がニコニコし、ミレーラが透華の服を見て青ざめる。

「あ、あの。血が」

「え?ああ、返り血なので平気ですよ。ちょっと着替えてきます」

「ええ」

透華が嬉々としながら向かうも止まると瑠奈達を見る。

「誰かルシアって子知ってる?」

「知ってまーす」

「はい。何か、ありました?」

「女の子だけど元気よくてね。そうしたら薬をしてたの」

「え?」

「話からしてイーロンの違法薬物って話。興奮剤と強壮剤。軽いバーサーカー状態になってて輸送馬車を破壊したの」

「え…」

「すぐ着替えてくるね」

透華が急ぎ着替えに向かう。

「あの、バーサーカーとは一体」

「向こうの言葉で狂信状態です。つまり、痛みも分からないほど狂う。そして手加減などなく強い力で攻撃を行う。そういった状態です」

「そんな…、その、薬で」

「はい」

服を着替え終えてまた戻るとアンナの隣に立つ。瑠奈が冷たいお茶を出す。

「良かったら冷茶です」

「ありがとう」

「透華さん。プチバーサーカーになったルシアって人はどがんなったと?」

「あ、うん。一発お腹に当てたけどダメだったから」

『え』

透華が左拳を握る。

「顔に一発。その薬と魔術のせいで結構硬かったな。ようやくおとなしくなってくれたから気絶したまま捕縛して連行されたよ」

「硬いとは」

「透華さんのくらってもだめだったとは…」

「薬と魔術で体の強化を行ってたのか…」

「瑠奈。紬。透華さんの強さがどれだけか分からないのだけど…」

「うちは手合わせして即負けた」

「そうなの?」

「うん」

「素手でだから…」

「うちあんな早く動けん」

「私はアンナがテストしてからと言われたから」

「姫様の護衛ですから強ければいけませんもの。そして見事な腕前でしたので採用しました」

ミオが頷き、アンナが話す。

「しかし、一度入れて倒れなかったとは余程なのね」

「私も加減しましたから。まあ、二度目は少し強めにしました」

「ええ」

「瑠奈。透華さんどれくらい強いの」

「本気でオリハルコンの壁破壊した」

「え?」

「えっ!?は!?」

ミレーラが思わず声を上げ、透華が話す。

「でも術も使ってだから」

「普通術を使っても破壊できないわよ」

ミレーラが汗を滲ませミオが凄いと驚き声を漏らすと透華がそんなことないよと照れる。

「ま、ルシアの件はいいとして、会長」

「…」

ミオが気まずくし、紬が話す。

「ところで奏さんは?」

「ええ、ええと、朝からギルドに謝罪と賠償金と慰謝料の支払いにタイシさんと音哉さん達が連れて行ったというか…」

「連行されたわけね。だから兄はギルドに用があって留守にするって話したのか」

「抵抗しとったばってん兄さん達も加わって抑えられてエルハルトさんが出した檻にいれられて連れてかれたの見たばい」

瑠奈が呆れる。

「そう…」

「うん」

「あ、そうだった。レミーラちゃんはお昼すんだらキリノハに来てと言われたわ」

「は、はい…」

「キリノハ?」

「問題起こした生徒が罰として教本の写しとかを行うところだって」

「はい…」

「それだけで済んだからよしということになさってくださいね」

レミーラがはいとしょんぼりと答えた。


ー…。

ミオがまたため息をする。そのミオを椅子に座った唯子がじっと見ていた。そこは望と暮らす特別用意された家の中で唯子が尋ねてきたミオへと話しかける。

「悩みごと?」

「ええ…その、昔知り合って今は生徒会長をしている人が」

「ええ」

「私に婚約したいって言う手紙出してたって、知ったから」

唯子が目を丸くする。

「以前、その。私が、父の。アルスラン将軍の娘だと分かった。娘がいると分かった時にあちこちから婚約したいって手紙が届いたって聞いたの」

「なら、その中にあったの?」

「そう。でも、手紙は全部断ったって」

「なら、どうしてダリスさんを選んだのかしら?」

「分からない…」

「あなたは?受け入れたんでしょう?」

「受け入れはしたけど……条件付き」

「条件?」

ミオが気まずく王になることを条件にと話していき唯子が頷く。

「そうしたらあなたは王妃にならないといけないじゃない。どうしてまたそんなことを」

「ま、まだ、そうと決まったわけじゃないし……」

「でももう半分はそれで決まってるわよ」

ミオが固まりぎこちなく俯き小さく頷く。

「ミオちゃんは大胆なことを言うものね」

「そ、う?」

「ええ。あと、そうね。ミオちゃんはダリスさんの事をどう思ってるの?」

「分からなくて…。よく分からない」

ミオが表情を曇らせ唯子が話す。

「恋愛に関して分からないのね」

「…お姉さんは?その、望さんとどうして結婚しようと思ったの」

「あー、ほらまず話した通り、かしらね。初めて出会って即言われたことにドキッとして…。その後お互いに時間の都合を合わせてデートをしたのよ。望君もいると気を使わなくてもいいし、安心感があるの」

「安心感?」

「そう。悩んでいる時や困っている時にいてくれたり、話を聞いてくれたり、助けてくれたりとかね。ここに誘拐された時も助けてくれたし、今も私が気分が悪かったら代わりに食事とか作ってもくれたりするの。お洗濯とかもね」

ミオが頷き唯子が話す。

「気兼ねなくできる相手。それから、照れはするけど、好きね。特別な好きよ。両親達や兄弟達とも違う好きと言う熱。両親達は暖かいけど、望君の場合は暑いかしらね」

ミオがむうと頭を傾け唯子が若干照れつつ話す。

「ミオちゃんもそうあればと思うわ」

「んー…」

「いつか必ずわかるから。あと、そうなるとミオちゃん。ダリスさんと婚約者でしょ?」

「ええ」

「それで、その昔の知り合いだった会長さんはミオちゃんのことが好きで出したってわけじゃない。本人とはあったの?」

「ええ。でも、夜に…。ここだとまだ転入したばかりの私は悪目立ちするから」

「そう?」

「ええ。貴族のいざこざに巻き込まれる可能性も高いの」

「そうなのね。でもどうして夜に?」

「呼び出されて。その、私も久しぶりだったから。村に図書館があって。そこで本の話とか国の話とか色々してて仲良くなったの。だから」

「お友達として久しぶりに会いに行ったのね」

「そう…」

「そうしたら本人はそうじゃなかったの?」

「えと、知ったのはさっきなの。ルーが婚約を申し込んでいたのはって。ただ、2回目にあった時に、ダリスさんが来て…。怒られた」

ミオがしょんぼりとする。

「ふーん…」

「なに?」

「嫉妬かしらね」

「え?」

「ダリスさん。あと、来たと言うことはよ。貴方が男に会っていたからきたの?それとも彼の知り合いだったから?」

「えと…知り合いだったから、かな…その」

ミオがダリスを思い出す。

「でも、男だったから、でもあるかな…」

唯子がふっと笑む。

「私から言わせればお互いにまだまだ未熟で不器用ね」

「どうして?」

「知らないことばかりだからよ。それと、まあそうなるとミオちゃん。あなたモテ過ぎてあっちこっちと振り回されそうよ」

「…」

「何かあったら私でもいいわ。あとは瑠奈ちゃん達とかも頼りなさい」

ミオがええと返事を返し唯子がよしと頷きミオの頭を撫でた。


ルーフェウスが席に座りはあと重くため息をする。そのため息を聞いてか笑い声が響く。その先に銀髪碧眼の女子生徒がおり女子生徒が話す。

「もう、ルシアさんに振り回されるのは最後にしてもらいたいと言う顔ね」

「その通りだ。おまけに禁止薬物まで持ち込み使用したからな」

「ええ。そこは大変問題なところよ」

今度は真面目な顔をする。

「ルーフェウス。その薬物がこの学園でも回っているかもしれないと考えていいわ」

「ああ。ようやく終わったと思えばまだまだだったな」

「致し方ないわ。とにかく注意を全校生徒にも通達。あとはまた、室内調査ね」

「やりたくはなかったが仕方がないか。実施は1週間後だ」

「ええ。ところでルーフェウス。話は変われど、貴方。ダリス枢機卿を相手に彼女を奪う予定?」

女が楽しく笑みを浮かべ、ルーフェウスが話す。

「ああ。そうだ」

女がふふっと笑う。

「あの人のもとにいるだけで不幸になる」

「どうかしらね。まあ、私は貴方と同じ幼馴染だったルシアさんと違って見守っておくわ。後彼女の彼女の親の処分について陛下からお手紙」

女が手紙を向けるとルーフェウスが手にする。

「早いのは問題と見たからね」

「ああ」

ルーフェウスが手紙を開け中を見る。

「明日、緊急会合を開く」

「ええ。あ、そうだ。今日彼女に会ってお話ししてみるから」

「なぜ?」

女が楽しく外へと向かう。

「してみたいから。それじゃ」

女が外へと出るとルーフェウスが軽く息をついた。


ーごきげんよう。

女がにこっとしながら食事をするミオへと声をかける。ミオが手を止めぺこりと頭を下げるとマリアンヌが即座に告げる。

「コンスタンス副会長、だ」

「え?」

「ふふ。ええ。転入したばかりだとまだ生徒会が誰かわからないものね。お食事の後月の間に来てもらいたいのよ」

周囲がざわつくとマリアンヌがこそこそと告げる。

「お茶のお誘い、にゃあ」

「貴方達もいいわよ」

マリアンヌが人形と共に即座にいえいえと頭を振るとコンスタンスがくすくすと笑った。そしてミオがコンスタンスがよこした使いであり女生徒の案内で月の間へと目指す。

「全く。お嬢様ときたらいつも面白がって」

「あの、先輩はコンスタンス様の」

「ああ、ええ。騎士になるわね。騎士であり護衛。コンスタンス様のご家庭は騎士家庭なの。だからコンスタンス様も腕には覚えがあるわ」

「はい」

「ええ。それと、ここで話せば朝、問題を起こした人物。ルシア。彼女と幼馴染なの。同年代」

「そうなのですか?」

「ええ。あと、ルーフェウス殿下共よ。後のことはお嬢様からお話を聞いてみて」

女生徒が月の掘り起こされた扉をノックし開ける。そこは天井高く作られた中庭のある部屋で天井は全てガラスで作られており星空がチラホラと出ていた。ミオが薄暗い中進むと部屋の左右から灯りが漏れる。そして右端の東屋にコンスタンスが座っていた。

「ミオさんこちらよ」

「はい」

ミオが進みコンスタンスにお辞儀しコンスタンスが座ってと告げると空いた席へと座る。

「急に呼び出してごめんなさいね。こちらの副会長を務めているコンスタンスよ」

「ミオリュシェールです」

「ええ。あと、ちなみにだけど、朝のルシアが元副会長。でも、昨年退学してその座も降ろされたの」

「はい。お話は少し。悪徳政治や悪女だったとお聞きしておりますし、会長との関係もお聞きしてます。元婚約者同士とか」

「その通り。だけど、妃教育の放棄から、人を上から圧力をかけたかったらたまに余ることばかり。最終的にステファン。彼の片目を見えなくさせたことによって破棄が決定したわ」

「それで…。確か剣で切られたとか」

「その通り。彼女がわざとしたの。当人は弁明したけれど目撃者もいた。ステファン自身。被害者自身が彼女が嘲笑っていたという事で処分されたわ。ただそのあと、アスクレピオス様のお力。奇跡で回復したのよね」

「はい。そちらも本人から聞いております」

「ええ。なら、かしらね。実は私もルーフェウスとは幼馴染でよく話もするのよ。その中で、イーロンの近くの国。その村の図書室で話があった女の子と出会ったと聞いててね。彼は本好きもだけど、外を知ることも好きなのよ。王家となればなかなか市民達との交流も限られてくるし、生活間違っているからそう言ったことを知りたがるの。あとは彼が興味を持っていたイーロンね。彼もイーロンには赴いたことがあるわ。そこで全く違う別世界を見せられたの。だけどそれは表だけ。裏では人を人と思わないことばかり行っていた。そしてそれを他国に知られぬようにね」

ミオが小さく頷きコンスタンスが話す。

「ルーフェウス曰く、目に見える場所で、目に見えない場所で何をしていたのか知りたくて避難民が多くいるあの村に行ったのよ。そして、貴方に会えて、貴方とお話しできて充実したと話していたわ。でー」

コンスタンスが楽しく話す。

「そんな貴方がまさかの聖女葵とアルスラン将軍の娘だったとは驚いたと言うわけなのよ」

「あ、あの」

「ふふ。婚約のでしょう?」

ミオがこくこくと頷くとコンスタンスが頷く。

「貴方ももうわかっての通りルシアがあんな性格だったでしょう?そして彼は第一王子。ルシアがああ言う性格だからいつか問題を起こすだろう。そうなれば破棄されるとわかって、娘達をこっそり近づけさせたり陛下や皇后様に言い寄ったりしたのよ。あの時のルーフェウスは疲れ切っていたわね。ルシアにも振り回されていたから」

「そうだったんですね…」

「そうよ。それで女性が苦手になり始めてたのよ。メイド達も遠ざけて。そんなルーフェウスが」

コンスタンスがミオを示す。

「貴方には心開いたと言うべきかしら。帰った後も貴方と話した事。学んだ事。私に楽しく話してくれたわ」

「その、コンスタンス様がルーフェウス様の婚約者にはならなかったのですか?」

「ふふ。みんなから言われるわ。そして私はこう返すの。婚約者がいるから」

「私がお聞きしたのは破棄されたとか」

「違う違う」

コンスタンスが手を振りふっと笑う。

「破棄した方がよろしいのではと言われているの。私の婚約者は浮気男でね。それでも皇太子なのよ。ルーフェウスとはまた違う国の皇太子」

「その、それでもと言いますか」

「それでも破棄しないのは家の為よ。私の家は支援が必要なの。伯爵家ではあれど貧乏貴族。私はその問題王子に相応しいから選ばれて婚約者になったのよ。仕方なしではあるけど」

「…」

「だから、ルーフェウス他の婚約はできないし、私自身ルーフェウスとはお友達でいたいの。幼馴染で気兼ねなくお話しできるから。まあ勿論、彼や私がこの先お互いの相手と結婚するまでになるわね」

「その、はい」

「ええ。そして、ミオさんね。ちなみにミオさんは見たところ私と同じお友達でいたいとの考えでしょう」

「はい…。その、会長は…」

「あれは本気ね。特に貴方がここにきてさらに気持ちを固めた。強めたみたい。だけど、貴方もダリス枢機卿の婚約者として婚約をされている」

「はい」

コンスタンスがじーと見ていくとミオが気まずくする。

「でも、恋愛まではないのね」

「え、と、えと、こ、コンスタンス様は」

「ふふふ。私はどーせ浮気するもの。淡々と子供だけ作ってあとは自分のやりたいことをして過ごせばいいわ。役割だけしたらあとは自由にさせてもらうと言う考えよ」

「寂しくはないですか」

コンスタンスがふっと笑う。

「強くならないといけないのよ。女は。そして子を持てば母親として強くなって父親のような子供に育たないよう育てないといけない。私は彼を子供の教育資料としか思ってないわ。そして、いなければいないで結構。こちらも好きにさせてもらう」

「その、国のお金に手を出した場合は…」

「ふふふふ。貴方はその先、そしてさらに先を見るのね。私も考えでは見るわ。だけど、未来は見えないの。ただ、予行はできるからその時に備えて身の回りの整理と身を固めるための準備はするわ。一番はそうならないのが一番だけど」

ミオが頷きコンスタンスが紅茶を飲みカップを置く。

「他に何か聞きたいことがあるなら今のうちよ」

「なら、その。ダリス様とルーフェウス様は仲が悪い、ですか?」

「そうね。まあ、それはダリス枢機卿のご両親のせいでもあるわ。ただそのご両親もアストレイ前王に殺されてしまい亡くなっているから。あと、何故ご両親なのか。彼らこそルーフェウスや私が暮らす国。ユーストピアの国庫金に手を出したからよ。そして、イーロンによく行かれて遊ばれていたのよ。ダリス枢機卿は放置して」

「放置されていたとのお話は以前ナガハラ先生から少しお話を聞いております。教育を受けさせながら暮らしていたことも」

「その通り。私やルーフェウスはまだ生まれてなかったけど子供の頃のことはお互いの両親から聞いていたから知っているわ。ただ、どのような環境で育ってたのかわからない部分もあったの。ミオさんの話からナガハラ医師の元にいたのね」

「はい。ただ、いつまでいたのかはわからないです」

「ええ。でも、異界の天才医師と呼ばれている方の元だもの。私が思うよりも学べる環境で生活をされてきたと言うことね」

「おそらくになります。あと。何故ご両親が悪いのにダリス様も悪く言われるのですか?」

「親の悪評は子にも影響を及ぼすの。その反対もあるわ。例え善人であったとしても人が知れるほどの悪いことを行えば消えることはないわ」

「…」

「アルスラン将軍については恐れている方が大勢いるけれど、慕っている方もいるわ。そして尊敬されている方もよ。それは貴方がこの学園都市で過ごしてわかっているはずよ」

「はい」

「ええ。あとは、貴方を語り付け込もうとした生徒達が複数在籍していること。そちらもご存じね?」

「はい」

「ええ。なら、これから多くの問題が表に出てくるわ。ルーフェウスを含めてね」

「どう言うことですか?」

「ええ。彼もまた暗殺されかけているのよ。未遂に終わったこともあるけど。ここではまだ病死に見せた暗殺があるわ。ここで暗殺すれば学校側の責任になるの。そして学校の許可がなければ調査もできない。だから暗殺者にとってここは暗殺しやすい場所。おそらくミオさんにもくるとは思うけど、ふふ。最初の貴方がルーフェウスが好きだった令嬢達との睨めっこで臆した者もいるわ。私の婚約者もそうよ」

「…」

「まあそれでもいいよりそうね」

コンスタンスが首から下げていたペンダントのロケットを出し中にある小さな肖像画の青年を見せる。

「これが私の婚約者。彼、私が溺愛しているように見させたいから身につけておけと言われたの」

「はあ…」

「言い寄ってきたら忙しいとか話して追い返していいわ」

コンスタンスが再び下げ直す。

「さて、後は?」

「はい。よかったらこの学校の地図とかありませんか?」

「それはないわね。大まかな校舎や街の地図はあるけど住居とかはないわ。暗殺を防ぐためにね」

「分かりました。あの、よかったらその地図はいただくことは可能でしょうか?」

「出来るわよ。図書室に行った?」

「行きましたけど、ないと言われました」

「あらあら。なら、図書委員からは私がしっかり話しておくわ。しっかりとね。だからまた明後日尋ねてみて」

ミオがはいと返事を返しコンスタンスが頷いた。



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