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運命のミオ  作者: 鎌月
47/64

学園都市オラシオン1

ーねえ。

スラリとした緑を主体としたワンピースにスカーフの学生服を身につけた女性たちや、緑に騎士の服に似せた学生服を着た男性たちとがあちらこちらと話をしていた。

「後はそう。聖女とアストレイ国の将軍の娘」

「ええ」

「そういえば、娘と語った女生徒達がいたよなー」

「ああ。いたいた」

「恥ずかしいとは思わなかったのかしら」

「思わないんじゃない?」

くすくすとした笑い声が俯き歩く金髪の女性との耳に響くとその女生徒が奥歯を噛み締め拳を震え握りしめた。


ーさあ。

アンナが何もない部屋へと手を向ける。

「姫様の恥のないような部屋にするわよ」

『はい』

「いや、そんなに張り切らなくても…」

瑠奈が気まずくするもアンナ達がテキパキと用意した家具や調度品、服などを配置していく。

「さあ。ミオさんのお部屋がこちらです」

寮母がミオを共同部屋へと案内するとミオが中へと入りシンプルなベッドに机と必要なものが全て揃っているのを見て今度は隣の愛らしいベッドにツノの生えた熊や犬などのぬいぐるみが置かれた机を見る。

ーかわいい。

「もうすぐどうしたのマリアンヌが来ます。寮での過ごし方はマリアンヌ。もしくは寮長に尋ねてください」

「はい」

すっと寮母の隣へと小柄なこげちゃの短い髪をさせた少女が大きなクマのぬいぐるみを抱きくる。

「マリアンヌ。こちらはお話しした今日から同室になられるミオさんです」

クマの人形が口を開けパクパクとさせる。

『やあ。僕レオナール。こっちがマリアンヌ。よろしく』

「はい。レオナールさんにマリアンヌさんですね。ミオです。よろしくお願いします」

ミオが深々とお辞儀をするとマリアンヌがやや目を丸くしミオをまじまじと見ながらぺこりと頭を下げた。


「…地味」

ハリーがボソッと呟く。そこはタイシに与えられた大部屋だが木の家具に棚には綺麗に並べられた本が収まっていた。そのタイシの部屋をブレイズ、マルクールとが運んできた荷物を各棚やクローゼットに入れており、マルクールがハリーへと話す。

「ハリーの坊ちゃんは派手な部屋にしてたのか?」

「いや。僕は同室だったから。そういえばヒカルは?君、女子寮じゃ…」

ハリーがヒカルへと尋ねるとヒカルが話す。

「大金払って1人部屋だ。金はアルスランさんとリュウさんから借りたんだ。2人はいいって言ったけどそういうわけにはいかないからこつこつ返済中」

「あー、なるほど」

「俺もヒカルと向こうに行った時に知った」

「ん?タイシの故郷の世界に?」

タイシがああと返事を返し机に水晶を置く。

「坊ちゃんさんよっと」

マルクールが丸めていた黒いふんわりとしたカーペットをベッドの隣に敷く。

「これはベッドのこの辺りでよかったですか?」

「ああ」

「カーペット?でもなんか…」

「紅蓮用だ」

「えー、なんかペットみたい。笑える」

紅蓮が姿を見せ威嚇するとハリーがすぐさまタイシの背に隠れタイシがやれやれとした。


今度はツノ兎のぬいぐるみを持ちながらミオと共にマリアンヌが寮の廊下を歩いていく。時折女子生徒達が通り過ぎ奇妙な視線を送りながら通り過ぎていく。

『食事のお部屋はここよ』

マリアンヌが高い天井のある広い食堂へと連れてくるとミオがやや驚く。

『ここで決まった時間にお食事をするのよ』

「はい。天井がとても高い」

『え?そこ?驚くのそこ?』

兎のぬいぐるみが首を傾げ、ミオが話す。

「はい。私が知っている食堂はここより広くて天井は低かったんです」

『ふーん』

「異世界の食堂です」

マリアンヌが驚きまじまじとミオを見る。

『異世界の?』

「はい。最近異世界に行ってまた戻ってきたんです」

『そんな事あったの?あと、異世界ってどうだったの?』

「こことはまた別世界でした。金属の乗り物が魔術もなしにとても早く走れて。それから人を100人以上乗せた大きな飛行機という空を飛べるものもあったんです。イーロン。あちらの世界に似せて作られた都市があったそうですけど、とても敵わないほどの技術と驚きばかりでした」

マリアンヌがほうほうと興味津々に頷く。

『そうなのね。うーん。まだ話を聞きたいのだけど長くなるからまたお部屋で聞かせて。後食堂はここよりもさらに広かったの?ここはこの学校で最大の食堂と言われているのよ』

「そうなんですね。ここよりもまだ広かったですし、観賞用の植物とか、食事を待つ間の本なんかもたくさん置いてありました」

『本まで?待つ間の?』

ミオが頷きマリアンヌがはあと声を漏らした。


「なんとかかんとかで…普通で通りました…」

ヒカルが目の下にクマを作りながら望へと報告すると望が感謝するとヒカルをハグしすまんなと謝罪をした。


「なんかどうしても覚えきれない」

「えー」

「ねね、聖獣様撫でていい?」

「あ、私も」

4人部屋となった紬と同じ同室の3人が紬の元に集まっており紬がいいよと焔を向けると3人が交代で焔を撫でたり抱いたりとした。


ーゴシック風かなとは思った。

真っ白なベッド、その隣には白の金の刺繍が入った衝立が置かれていた。そして白を基調とした調度品が見栄えよく並べられ、幾何学模様のある服がクローゼットに収められていた。瑠奈が部屋を歩きその調度品を見て周り、ベッドに座りベッドを撫でる。

「絹みたい」

「あちらの布ですか?」

「そう。高級品。これは何でできてるの?」

瑠奈がアンナへと尋ねるとアンナが話す。

「はい。マルナという獣の毛です。マルナは今ここでは絶滅と言われておりますが、私たち龍が隠して育てているのです」

「それは他の絶滅種も?」

「ええはい。もちろん。人の手により数を失っておりましたから。ちなみにマルナが激減しましたのはその毛皮の貴重性もですが肉。とても上質な肉が取れていたから乱獲されたのです。マルナは国では毛皮のために養っておりましたが外の人間達により食用とされてしまったのです。繁殖がとても難しく育てるのも苦労するというのに」

女性達が頷いていき、瑠奈が話す。

「隠れた村とかあるの?未開の地に」

「はい」

「ええ。そうでなければ暮らせませんから。外の人の手により迫害されたもの達もです」

「そう」

ノックが響くと瑠奈が立ち上がり、女中が扉へと語りかける。

「はい」

「瑠奈は?支度はできたか?」

「はい。しばしお待ちください。タイシ様です」

「分かった」

瑠奈が立ち上がり扉へとアンナと共に向かう。そして扉を開け外で待っていたタイシとブレイズ、マルクールに樹がおり瑠奈が目を丸くし外へと出る。

「樹さん。こちらに来られても問題なかったですか?」

「そこのアンナさんとの許し。ま、勝手にしたのはそのアンナさんと陸奥」

樹の肩に座っていた陸奥が頷く。

『そうだよ。僕たちはここでは聖獣と同じ扱いみたいだし、樹は瑠奈専属の髪結師だからある程度になるけど許すって』

「ああ。あとはタイシと行動する時もだ。それから後で透華もくる。透華は話し合った通り今後ここにいる間はアンナと共に瑠奈ちゃんの護衛だ」

「はい」

「聖獣の王と共におりますからね。異界人であっても誰も歯向かえません。あ、姫様もですよ」

「そりゃ人に化けてるオオトカゲといたら歯向かえないだろ」

「あなたはそろそろそのっ、生意気な態度をどうにかできませんかっ?」

「悪いな。なかなかできない性格だ」

アンナが鼻を鳴らす。

「しかしタイシの部屋と違ってこっちは白を主張とした部屋だな」

「はい」

「そんなジロジロ女性の部屋を覗かないで」

「お前。ここで俺は明日から髪ゆうんだぞ」

「…くっ。やはり契約しなければよかったわっ」

『ざんねーん』

アンナが陸奥を掴み振り回すと樹がやめろととめる。

「この部屋作ったのは?」

「アンナたちです。王室の部屋はこうだったそうですよ」

「へえ」

「紅蓮も話していたな。あと、白は王家だけしか使ってはいかなかったそうで他は冠婚葬祭の時だけ白の衣を着ていた」

『そうそう。官服は』

「透華がきたから話しながら行くぞ」

陸奥がはーいと返事を返し遅れてきた透華がごめんねと頭を下げると瑠奈がいえと返事を返し進む。

「それで官服は?」

『うん。官服はここの学生服と同じ緑なんだ。城下町の人達は白以外ならなんでもよかったよ』

「ああ」

「白ってなるとこっちは花嫁衣装とかだよね」

「花嫁衣装には使いません」

「なら何色?」

「赤や金、青に銀となります」

「ええ」

「赤金なら王様の色だな。透華」

「なに?」

「夜にも瑠奈ちゃんのところ押しかけてくる奴がいるから交代で見張ってくれ」

「え、うん」

「兄はなさそうだね」

「いや。アストレイや他国に行った時は何度かあった。特に他国か…。毒、じゃないが。飲まされた」

「あ、うん。それ気づいたというか、なんか異変あった?」

「そこまではか…。ただ暑かったから蘭丸に伝えて薬湯を飲んだな…。あと、自分の部下の時もあったからな」

「それ、お前の今の嫁候補になるのか?まあ嫁にもなるか知らねえけどその人もか?」

「………わからないと」

タイシがだんまりとしそう小さく呟くと樹がやれやれとし透華が苦笑する。

「いき過ぎた女は怖いな」

「えと、そういえばノエルは?」

「あいつはオーガンの爺さんとこにいる」

「うん。僕の姉と仲良くなって色んな魔法の研究とかしてるよ」

「ならよかったわ」

「魔法の研究ってどんなものですか?」

「うーん、古代魔法だね。姉はその研究者でもあるからわからないところを教えてもらったり現代の魔法を教えたりしあってるみたい」

透華がうなずき、樹が話す。

「さらに結構だ」

「やっぱりうるさかった?」

「毎夜毎夜突入されてみろ。その後こっちは人に見つからないよう追うのもおえないように縛って行くんだからな」

『だねー。相当な執着ぶりだったしさ。後しばらく透華にもちょっかいだしてたし』

「はあ。うん。分かってくれたからいいけど」

樹、陸奥がダンマリとし瑠奈が話す。

「その何も話さないのはなぜ?」

「色々」

『そうそう。あと、透華はいい護衛をしてくれるから安心していいよ』

「ああ」

「あの目の前の門が学園長たちが待っている広間だよ。普段は魔法の試験とかで使われる特別な部屋」

「へえ」

大きな扉が開かれるとタイシたちが中へと入る。そこにオーガンもだが中央にオーガンと同じ長い髭を蓄えた老人。そして若いものや年配のものと男女勢揃いしていた。

ーうわ。みんないる。

「よしきたな」

オーガンが楽しく告げ手招く。

「タイシ。3年ぶりだな」

「はい。学園長だったのですね。驚きました」

「どう言ったことで会ったことあるの?」

「ギルドの依頼で誘拐されたお孫さんの救出の時に」

「ああ。騒々しい孫でな。あれから自分の力がどれだけなのか把握して無理をしなくなって助かる」

「ほほほ。ギルバートの子供の子にしては破天荒な娘だったがおとなしくなったからなあ」

「ああ。まあ、色々と理由あってな」

「ほほほ」

ーあー。

瑠奈がチラリとタイシへと視線を向け、学園長、ギルバートを見る。

「さて。まずはタイシ。前王やその派閥によって入学希望であったのにできずに申し訳ない。こちらも特別にとは思ったが周りにしめじがつかなければ国王自らであると厳しくてな」

「ああ。特にアストレイ。アルスランが最強とはいえ何があるかわからなかったからな。まあ、今ようやく落ち着きはしたか」

「左様。それによりタイシ。お前以外にも王により入学を妨げられていたもの達も周りの助けもあり入学することができた。その中には将来有望視されたもの達もいる」

「そうじゃ。もちろんその中にお主も入っておるからな」

「ああ」

タイシが軽く会釈しギルバートが瑠奈を見る。

「さて。そのタイシの妹の瑠奈」

「はい」

「ああ。そちらもだがタイシもか。いやはや。伝説といわれた古代国の王室の眷属の血を継いであったものとは驚いた。その証拠として龍達が周りにいる。こちらも古代の文献が残されているからな。ただ、文字の解読がなかなか難しくようやくか」

ギルバートが陸奥を示す。

「そのこ子竜の力を借りて分かったからな」

『えっへん』

「お前が言ってた秘密の友達はそこの学園長か。乞食されてましたよね?」

「え?」

「え?学園長乞食?」

ハリーが驚き、ギルバートが楽しく笑う。

「他にも色々なものに化けて試しておる。樹。そして透華達とはカダルで知り合ってな。その時は乞食の格好をして人を観察していた。そうしたら身を隠した子竜をつれた者が見えたからな。驚いて思わず声をかけた」

『そうだよー。で、ギルの話面白かったからお互いに知識の交換しようってことになったわけ。樹達にも安全な国とか。食べ物とか教えたのはギルから教わったんだ』

「うん」

「ああ。で、交換として文字の解読か」

『そうだよ』

「ああ。古代文明について謎だらけであり古代語も魔術がかけられてわからない言葉ばかりだったからな。オーガンの協力も得て半分までとはいかんがなんとかどのような暮らしをしていたかはわかるようになった」

「うむ。あと、それはラファエルの日記でな」

『そうそう』

「あの方なのでしたら納得ではあります」

アンナが告げ、瑠奈が話す。

「今はとんでもなく犯罪者だけどね」

「…否定はしませんが」

『うーん。まあ当時のラファエルも破天荒だったらしいからねー』

「ならどっちも救えない話だ」

「ほほ」

「まあ、そのラファエルの前世の記憶を持つものについては何かあれば現れたりもするだろう。その時は教えてもらいたいところだ。さて。話を戻して其方ら2人については大変特別であり、人の祖でもあり、初めて国というものを作った王室の血筋でもある」

アンナたちがうなずき、瑠奈が話す。

「まあもうほぼ機能してませんけど」

『うーん』

「ええ、まあ…」

「ほほほ」

「ほぼ機能してはいないがまだ国としては残っている。実際に滅んだわけではなく眠っているようだからな」

「さよう。そして、お主ら2人は知識さながら身体能力も常人と比べると遥かに上。魔素の量も。あとは龍をいえば従えておる」

ギルバートがうなずきオーガンが楽しく話す。

「異界人といわれてもいるがこの世界の血を持つ者としてもいる。なので、周りがこぞってくるぞ」

「ああ。もう早速学校中で其方らの話で盛り上がっているからな」

「ふふ」

タイシがうなずき、瑠奈がやれやれとし樹が話す。

「ここにいないミオ。聖女と言われた異界人の女性とアルスラン将軍との間の娘は?」

「ああ。そちらについてか。妬み、恨みを持つ生徒もいる」

「恨む?」

「偽物ですね」

樹が眉を顰めギルバートが頷く。

「ああ。アルスラン将軍に娘がいると分かってその年頃の娘たちが我こそはとこぞってアストレイに来たのだ。タイシは知っているだろう?」

「はい。それで、面会も行いました。まだその時はミオが娘とは分かっておらず、俺も探していましたから」

「ミオを?」

「ああ、父に頼まれて」

「ん?」

「アルスランさんですよ。養父」

「ああ」

タイシがこくりと頷くと瑠奈がため息をする。

「その通り。本人は教会に3年ほど預けられていた。そして、葵が所持していた魔除けの石。葵の力によって作られた石を持っていたこと。あとはその容姿を確認して、わしらに届けられた2人の血を調べ一致したので親子と判明した」

「はい。そしてその間、俺が知っている限り102名のもの達が娘を名乗ってきました。中には無理やり娘をさせられたものもいました」

瑠奈が驚き樹が話す。

「迷惑な話だ。なら、実の娘だと偽った生徒がここに複数いるわけか」

「ああ。こちらもある程度把握してはいるが介入するわけにはいかない。問題を起こす以外はな」

「はい」

「でもどうしてそんな人数になったわけ?」

「まず、父の名声もある。そして階級もだ」

「お貴族様だからな。葵さんについては?」

「ああ。聖女としていたから教会からの扱いが厚遇されるかもしれないと考えられたようだ。とにかくもし娘として受け入れてもらえれば一生会えるのにも困らず過ごしていくことができるという考えを持っていたからになる」

「ああ。ま、あとは無理やり連れてきた奴がいることはようはそいつらに今まで育ててきた金。もしくは買取金をもらいたかったんだな」

「ああ。高額請求した連中もいた」

「百名を超えるとなると相当でここにいても不思議じゃないわね」

「ああ」

「ミオには先にオーガンが話をしている」

「そうじゃ」

「はい」

「おじ、局長。学園長。どうして講師の人達が集まってるんですか?」

「ああ。ここには講師は300を超える数がいる。その中で信頼できるもの達を集めた」

「なるほど」

「あとは私の子供もいるし学生として孫もいる」

「わしのところもじゃな」

タイシがうなずき樹が話す。

「タイシの強さも知れ渡っているから妹の瑠奈ちゃんに擦り寄ったりする輩が教師にもいるとかですか?タイシもですけど」

「ああ」

「殺しは?」

「ないな。それにまずできん。2人ともに龍がそばについておる。知らないものももちろんいるとは思うが叶わんだろう」

アンナがうんうんと頷くとタイシの元から紅蓮が、瑠奈の元にラファが姿を見せる。

『そちらが信頼しうるものとは言えこちらは信頼はしていない』

「それで構わんさ」

オーガンが飄々と告げ、ラファがふんと鼻を鳴らす。

『ここにいる1人でも裏切るようなものがいれば容赦しません』

『ああ。骨の髄まで焼き尽くす』

『肉体が滅んだ後も苦しませる』

「ほほほほ」

「全く怖いことを言う」

オーガンが笑いギルバートがやれやれとした。


「ジジイどもは余裕食ってたけど教師どもはびびってたぞ」

会場を離れながら樹が話すとタイシがうなずき瑠奈が話す。

「そうですね。あと、敷地面積ディズニーランド以上だ広すぎる」

「行ったことあるのディズニーランド?」

「あ、はい」

「いいな…」

「俺もないからな。なし」

「俺は、外だけか」

樹がタイシを振り向きタイシが話す。

「実の父親が連れて行ってくれたんだ。中には入らなかったが外だけ。外の土産と少しある乗り物には乗せてくれたな」

「ふうん」

「あの人ああ見えて父親としての自覚は少しあるからさ。ここきて結構使ったよ」

「使ったんだ…」

瑠奈が頷き、樹が話す。

「責任は感じてるところはあるわけか」

「はい」

タイシが複雑そうにし瑠奈がやれやれとする。

「ま、愛情と言う愛情はなしにせよ、一応親としての自覚はもってる。母親はすこーしか。反省してるにせよ一緒に暮らすことは考えてない。あの人は元から子供を育てると言うことを苦手。雰囲気とかでわかる」

「ああ…」

「父親は?」

「あっちは見てますね。育てると言うか手伝うと言う感じです。まあでもまだそっちがマシですよ」

「ああ」

「親になるとかな。大人になった時どうなるか不安あるよね。子供との接し方とか…。自分も親と同じになってしまうかって…」

「反面教師反面教師。心に刻んどけ。後不安なら相手を作らなきゃいい話だろ?独身貫けば」

「そ、れは」

「ん?」

透華がもじもじとするとアンナが話す。

「あら?好いている方がおられるのですか?」

「アンナ。そうやってすぐに聞こうとするの悪い」

「いいではありませんか」

瑠奈がまったくと告げ樹が話す。

「しょうがねえ。年寄りはずけずけいくからな」

「誰が年寄りですってえ?」

「当たってんだろ」

アンナが苛立ち、瑠奈が話す。

「透華さんも流石に話すのは気が引けますよね?」

「えと、その、話してもいいはいいし、見つけて欲しいの」

「え?」

「助けてくれた人なの。好きになった人は」

透華が照れつつ話、瑠奈が頷く。

「なら、イーロンで?」

「そう。またあれから捕まったけど捕まる前に解放してくれた人」

「特徴は?」

「うん。片目は眼帯をしてた。それで長い棒の先端がオノ」

タイシがとある人物を思い瑠奈がふむふむと頷く。

「それで、強くて筋肉質で。男の中の男という人。マントに甲冑。本当ヒーロー」

透華がでれでれと話すと樹が話す。

「聞いてりゃそれヒーローじゃなくてむさい山賊のおっさんじゃねえか」

樹の目の前で拳が止まると樹が固まり透華が殺気だった。


マリアンヌの前でミオがクマのツノがついた人形の破れた部分を縫っていた。

『ミオ。ありがとうにゃー。マリアンヌは縫い物が苦手何だにゃ』

「私はよくこうやって塗っていたから。服を一つしかイーロンにいたから持ってなくて」

『1着だけ?』

「ええ。下着もダメになった服を繋ぎ合わせたものを着ていたの。服屋とか布屋とかそういったものがなかったから。そして、村から出て初めて植物からでも糸が取れるのが分かったの。先生とかいない村で役人の人たちが見回りもしていたところでもあったから」

『そうにゃのか』

「ええ」

ミオが直した人形をマリアンヌに渡すとマリアンヌが受け取り嬉々とする。

『ありがとう。ミオ』

「どういたしましてジョセフ」

『おう』

『ミオはいい奴だにゃ。マリアンヌや私たちを変な目で見ないし優しくしてくれるにゃ』

『ああ』

「どうして変な目で見られるの?」

マリアンヌがじーとミオを見る。

『どうしてって…。にゃあ』

『俺たちやマリアンヌの話方が可笑しいからだな。他の奴らと見比べると変わったやつにしか見えない』

『だにゃあ』

「私はそう思わないし、マリアンヌ達のような人を向こうでも見たことあるから。そういった人たちは他の人達を喜ばせてもいたし、マリアンヌ達みたいに話もしていたわ」

『へえ』

『それはいいにゃあ』

「あとは、マリアンヌたちの個性。私も変わってるところは持ってる。でもそれはみんな同じ」

『うーん、そうだけど…』

「変なふうに見られると思うならそう思われないようにしたら」

ノックが響くとミオが立ち上がり扉に向かい扉を開ける。マリアンヌがぞわっとしミオが瑠奈を見る。

「瑠奈」

「ここの部屋になったと聞いたから。同室の人が」

「は、はじ、はじめ、まし、て」

ミオがマリアンヌを振り向きマリアンヌが汗を滲ませ頭を深く下げていた。

「ま、まりあ、マリアン、ヌ、です」

「あと、クマさんがジョセフ。猫さんがエレノア。魚さんがトーイ」

「ええ。瑠奈と言います。ミオとは友人です。突然きてごめんなさい」

マリアンヌが頭を振る。

「授業は馬術だけ一緒と聞いたから。またその時に」

「ええ」

「何かあれば東の私の部屋に。アンナが許してるから通っていいわ」

「分かった」

瑠奈が頷きそれじゃあとその場を離れる。ミオが扉を閉めるとマリアンヌがくらくらとしベッドに倒れ込む。

「怖いの?」

『い、や。きんちょー、だにゃ』

「瑠奈だけど、その、ここではどう言われているの?どうしてそこまでしたの」

『まあ、まず、古の国の王家の血を引くお姫様でしょ?』

『うんうん』

『そして、あのアストレイのタイシ中佐の妹でしょ』

『そうそう』

『それから、龍。龍の姫と言われてるにゃ。そして、強い』

『ああ』

『頭がいい。勇気がある』

『そうだ』

『それからお金も持ってるにゃ。あとはアストレイのアルスラン将軍やマーリス王他、数えきれない王家が後ろについていると聞いたにゃ』

「え?いいえ。その、王家とかの後ろ盾はいないわよ。その、いるとすれば境界のダリス枢機卿よ」

『にゃ?』

『聞いた話と違うなあ』

『うーん、まあ、所詮噂だからにゃあ』

マリアンヌが体を起こしふうむと考える。

『あと、あのダリス枢機卿とはにゃあ』

「え?」

『女たらしと聞くにゃ』

『夜な夜な女郎にいくとかもだにゃ』

『それから顔を使って』

「違う」

マリアンヌがミオを振り向きミオが頭を振る。

「それも間違い。私が知っているから」

マリアンヌが目を丸くし頷いた。

ーねえみた?

女子生徒達がそわつきながら話していく。

「あの方が古代国のお姫様。瑠奈姫ね」

「凛とされて堂々となされたお顔つきだったわ」

「ええ」

「とてもきれいな黒髪でしたわ」

「羨ましい」

ーはじめてみた。

今度は男子生徒達が話していく。

「見ばえからいいな」

「ああ。それに体もとても鍛えているのがわかる」

「古代国の王子かあ。しかしその強さ計り知れないと聞くがどの程度なのだろう」

「二体の龍を退治したものなのだろう?それなのになぜ他の竜達は腹を立てないのだろうか?」

「聞いたところその二体は人を食らったからだそうだ」

男子学生達が長い金髪を一つに束ねた碧眼の好青年を見る。

「竜と人と結ばれた盟約というものに龍は人を食べてはならぬと決められていたそうだ。なので、彼が行ったのは違反した龍を罰した」

「そうなのですね」

「そうなると納得は」

「しかし、我々人側も違反をしている。龍の住まいを破壊し無益な龍を殺戮した。龍は土地の神としてその土地に恵みを与えていた。龍がいない土地は荒れているとの事だ」

「土地の神?」

「初めて知りましたが…荒れているというのは」

「侵攻する砂漠化。止まない雪。魔獣だらけの海だ」

男子達が驚き、その青年が話す。

「彼。そして彼の元にいる龍達に失礼のないようにしたほうがいい。そして彼については数多くの功績を残したかたであり、この学校の生徒や教師達も守られたこともある。反学園都市派達の暴動を止めたのは彼と彼の部下達だ」

「え」

「前王のせいで彼の功績全てもみけされたからな」

「そうなのですか…」

「あの、会長はなぜそんなにご存じなのですか?」

「父。そしてお前達も知っての通りだが前王の息子が私の侍従として務めている。その者から聞いた」

男子達がなるほどと納得する。

「時期に妹姫も含めこちらにも招待する予定だ。失礼のないように」

男子達がはいと返事を返し青年が頷いた。


ー目立つ…。

ー目立って落ち着かない…。

タイシの部屋の中で瑠奈が机に突っ伏しタイシが椅子に座りやや疲れた表情を浮かべており、その2人を二体の竜とアンナ、透華、ブレイズ、マルクールが見ていた。

「すごい目立つ…。落ち着かない…」

「ああ…」

「どうしてなのですか?目立つほうが良いではございません?」

「慣れてないの…」

「えと、その、向こうの学校では2人ともいじめもあってたのもあるかも。注目される意味が、変わったのと。あそこまで大勢、獲物を狙うまで見られる事なかったから」

「いや、透華さんのいう通り。本当そう…」

「ああ…。あと、いじめとはいかないが、また何かあればと」

タイシが息をつき、瑠奈が話す。

「下に護衛と脅し役がいるでしょ?向こうと違う。しっかり兄を守るのがついてるから。私のはイマイチだけどね」

『えっ!?えっ…』

ラファが汗を滲ませ、瑠奈が話す。

「兎にも角にもそんなに不安に思うことはないから。それよりも、欠片の気配。あるにはあるけどなんか散ってる感じ」

「ああ。もしかしたらだが、さらに細かくなっているかもしれない」

「細かくといいますと?」

「割れてる。更に小さなかけらになってる可能性が高いの」

アンナがえっと声を上げ、タイシが頷く。

「調べないダメだな」

「ええ。まあただ…目立ちながらは、難しい」

「ああ…人の目をどう掻い潜ればいいかが問題だ…」

「そんな重く考えなくてもいいじゃないですか」

マルクールが淡々と話す。

「とりあえず今は学園生活楽しんで過ごしたらいかがですか?2人は向こうじゃいいかもしなかったんならここで好きなように学んでいったらいいじゃないですか」

瑠奈がんーと声を出しタイシが複雑な面持ちでだが小さく頷く。

「ええ。ちなみにですけどどんなイジメ受けてたんです?」

「まあ、靴隠された」

「水をかけられたな」

「体操用の服を刻まれてゴミ箱に捨てられてたなあ」

「椅子に針や小さな刃が座る時に当たるように置かれていた」

「教科書がなくなるのは当たり前」

「殴られたな」

「水筒に辛いものを入れられた」

「弁当に大量の虫」

「いや、えーと…」

マルクールが汗を滲ませ瑠奈がヘクソ笑う。

「教師なんて触って攻めてきたからマジ鳥肌たったわ。そして教師煽ったあの馬鹿どもの笑い声。今は思い出すだけでも腹が立つ」

「こっちは叔父が教師だったから常に成績は最下位。他に言っても無視か俺の味方をしてくれた教師は飛ばされたな」

「私はうるさいおばさん先生に私のせいでもないのに何度も犯人扱いされて廊下に水入りバケツ持たされて立たされた」

「こっちは昼から夕方まで正座だ」

タイシが遠い目をし、瑠奈が突っ伏す。

「やばい…泣けてくる…」

「…はあ」

「あーあー」

「ちょっとそこの適当男っ」

「それは2人とも離れてる時だよね?」

2人が透華を振り向く。

「今は一緒だし、味方もいるから。後そう言った人たちは後で後悔する目にあうか、後悔し続ける時が来るから」

「あーまー」

「…」

「私は瑠奈ちゃんの護衛としてちゃんと瑠奈ちゃん守るから心配しないでね」

「透華さん…」

『瑠奈。私もいますけど瑠奈。瑠奈ちょっと』

瑠奈が目をうるっとさせながら透華見て、ラファが負け時と告げる。

「失礼致します」

ブレイズが2人の前に紅茶を出す。

「差し出がましいかもしれませんが、今は今かと思います」

「…ああ」

「そうよね」

ブレイズが頷き2人が紅茶を飲むと瑠奈がふわっとする。

「香りがほんのり甘い」

「ああ。爽快感も感じる」

「これ好き」

「ああ」

ー格好ついてんなあ。飲み方もなんか見てて気持ちいいわ。

2人がほわあとすると、マルクールがそう思うがアンナが親指の爪を噛み締める。

「たかがお茶如きでっ。卑怯なブレイズっ」

「え、えと」

『ブレイズ。私にも飲ませなさいっ。そのブレンドに使われているお茶を』

「えと、え…」

『阿呆どもが』

「あんた達揃って馬鹿でしょ…」

透華が苦笑し、紅蓮がやれやれとし、瑠奈が呆れ突っ込んだ。


ー明日からかあ。

マリアンヌが眠りについている頃、ミオが制服を掲げて見ていくと息をつき抱きしめる。

ーあれからもう6年。早いな…。

「お母さん…」

ミオが強く制服を抱きしめ俯く。そして息を吸い吐き出すと顔をあげ浮かんだ涙を拭った。


朝ー。

女性教師が緊張するミオを教壇の前に立たせ話す。

「彼女のお父様はアストレイ国左大臣アルスランリュシェール公爵。お母様はかつてこの世界で数多くの国や人を救われた聖女葵様です」

ーここまで紹介されないといけないの…。

ミオが声を押し殺し女性教師が話す。

「それから義理のお兄様としてこちらに同じく学ばれることとなったアストレイ国大佐及び古代国アルスマグナの皇太子タイシ様がおります」

ー長い。あと、聞き慣れない…。

ミオがぐうと言いたいことを押し殺す。

「本日から皆さんと一緒に学んで参られます。紹介を」

「はい。ミオリュシェールと申します。ここでは勿論初めてのことばかりです」

女子生徒の数名が可笑しくし、ミオが淡々と話す。

「そして、父や義理の兄と私の立場や存在について私はかけ離れていると感じております。そして私は元はイーロンの辺境の村におりました」

周りが驚きざわつく。

「戦争により故郷を失った私はイーロンを離れました。なぜ争いが起こりなぜ貧困が起こったのか。私の中ではすべて疑問であり、その疑問を解決したい。その為にはまず知る事が大切と思い、自分から言うにもなんですが勉学に勤しんでおります。ここでもですが、これから先も私は歴史、宗教、政治、人、自然。多くのことを学び多くのことを知ろうと思います。知識不足で未熟ではあります。私の性格もまた知りたいことでよく尋ねる為に注意される事があります。皆さんとは仲良くしたいのもですが、競い合うもの同士としてお互い励み合い向上出来ればと思います。本日よりよろしくお願い致します」

ミオが深々と頭を下げると室内がしんと静まり返った。


ー紬です。特技は剣。苦手は勉強。

男性教師がため息をする中教室が笑いと化すと紬が一応は頑張りますと楽しく告げる。

ー樹。で、

「陸奥」

『どうもー』

周囲が興味深く樹と樹が指差した陸奥を見る。

ータイシです。

ー瑠奈です。

「兄ともによろしくお願い致します」

タイシの隣で瑠奈が頭を下げる。そこに金髪の青年もまたおり青年が瑠奈、そしてタイシを見て視線を今度は2人の影へと落とした。


ーみまして?

「生徒会長よ」

「後ろにお二人がおられるわ。会長がご案内なさってるのね」

生徒たちが注目される中青年がタイシ、瑠奈の2人を連れ学校内の案内を行っていた。その3人を離れた位置でミオたちが各々の場所でその様子を見ていた。

ーあの人が会長…よね?

ミオがじっと目を細め見る。

ーどこかで見た感じ…。

「ミオ。どうかしたにゃ?」

マリアンヌ尋ねるとミオが話す。

「タイシさんたちを案内されてる方は?」

「あれはユリウス生徒会長だな」

「ルーシャス生徒会長」

「そうにゃ」

「もてもてでとても人気だ。カーラン王家の王太子でもある。ルーシャスイオカーランだ」

「ええ…」

ー本が好きなのか?

ミオがはっとする。

「村にいた」

「え?村?」

「ええ。引き取られた。保護されたところに…。同じ人なら」

マリアンヌが頷き、ミオがまさかと複雑そうにヘンドリックを見る。

ーうん。本は私にたくさん知らないことを教えてくれるからすき。

3人がミオ達の元に近づくと見学に来た生徒達がやや興奮気味に見ていく。そして瑠奈がミオを見て若干ほっとした表情を浮かべ、タイシがやや疲れ気味に視線を向ける。

ーやっぱり。ルーだ

やや薄汚い旅衣装を着た当時のルーシャスを思い出すとルーシャスがミオへと視線を向けその視線を合わせた後逸らし2人を連れ前を歩く。

ーどうしてあんなところに…。

「ミオさん」

ミオがハッとし女性達がミオとマリアンヌを囲むとマリアンヌが汗を滲ませミオが目を丸くする。

「今、会長と目があいませんでしたか?」

「あいました」

「…」

女性達が悔しがっていく。

「羨ましい」

「私も何度も視線を送っているのに合わせてくれないのです」

「やはり将軍の娘様。いえ。タイシ様の義理の妹様だからですか生徒会長」

女性達が声を上げ、マリアンヌがあーと声を出しながら話す。

「会長の、追っかけの方々だにゃ」

「ええ」

「ミオさんっ。仲良くなりましょうっ」

「ああ、私もっ」

「抜け駆けは許しませんわっ」

女性達がなぜか今度はミオの取り合いを始める。ミオが冷や汗を流しあたふためきマリアンヌが一旦輪の外に避難する。

「おーいっ」

女性達の動きが止まり紬が手を叩く。

「お姉さん達ダメ。みんな驚いと、驚いてるから。お姉さん達のぐいぐいと押しかける姿に」

「お、押しかけては、いませんけど」

「ええと、まあ」

「ミオも困ってるから。お話しするなら次の休み時間か寮にいるときに話したら?」

「あなたも突然なんですか?」

「私はミオのいとこのはとこ」

『はい』

焔が答えると周りが焔に注目する。

「そーだ、ミオ聞いて」

「ええ」

「兄さんが来る…。教えに」

ミオが目を丸くし、紬が顔を顰める。

「いる間は、生活費を稼ぐ為にって。話じゃ理事長ーさんがアルスランさんから話聞いて来るって」

「そうなの?」

「そー。後剣術とー、数学。兄さんきびしかけんなあ…」

「その前に数学教えられたのね」

「んー、得意ではあるから…」

「ミオさんのいとこのはとこさん」

紬が振り向き女達が見下す。

「とやかく言いたくはないのだけど、あなた言葉がすぎるわ」

「ええ。それにトレですし」

「それは私が頭悪いから仕方ない」

「はっ」

「ご自分からおっしゃいますか」

周囲が今度はミオ達へと注目し始めるとマリアンヌがおろおろとする。

「あなた。霊獣を持っておられるようだけどどうしてあなたのような方が」

「もしかしてその霊獣は紛い物ではありません?」

焔がやれやれとする。

「霊獣でしたらなぜあなたのような馬鹿の子のところに?」

「ええ。そして、ミオさんのいとこのはとこ?聞くだけで不愉快ですわ」

「まあ大体そちらのミオさんも本当に将軍の子かしら?」

「ええ。お金目当てで来た娘達の中で運良く選ばれたのではありません?」

「本当。それに、確か。あのダリス枢機卿の婚約者だとか」

「お可哀想に。彼の方女遊びがすぎるとのことですよ」

女性達がおかしく笑い始める。

「その話の根源。証拠は?」

「は?」

紬がぞくっとしマリアンヌが鳥肌を立てる。

ー空気が…。

女性達と周りが硬直しミオが怒った目を向ける。

「お話しできないのですか?そしてなぜ私の家族を会われてすぐに侮辱されるのです?霊獣がいるからなんですか?可笑しい」

「ミオ」

『おーい』

樹がミオの肩を掴む。

「噂好きの世間知らずのバカ女どもの挑発にのるな」

『そうそう。後周りも見物だけってのはなー。騎士候補もいるのにないなー』

周りの緊張が解かれるとミオがやや手を振るわせる紬を振り向く。

「あ、あなた。なにをしたのっ」

女性達が脂汗を浮かせ下がっていく。

「気持ち悪いっ」

「大体ここでは術を使うのは禁止よ!」

「術じゃないな」

教員の帽子を被った3人の男女がその場にくる。

「先生」

「先生っ。そこにおられるミオさんが術を」

「術じゃない」

「え?」

「それよりもお前達だ」

コワモテの男が鋭く睨みつけると女生徒達が体をこわばらせる。

「単位を5下げる」

「そんなっ」

「令嬢だというのに、よってたかって集団で何をなさっているのです?恥ずかしい」

女がさらりと告げる。

「おいてめえら騎士候補どもっ」

「は」

「はいっ」

男が樹の頭に乱暴に手を乗せ動かすと樹が呆れながら顔を顰める。

「こいつの言う通りなにしてんだてめえら?ご令嬢どもの恥晒す前に止めろや!」

「も、申し訳」

「言い訳不要!カリキュラム終わったら訓練場に来い!全員覚えてるからな1人でもかけたら覚悟しておけ!」

男子達が声を上げ、紬が男を見るも後ろがざわめくので後ろを振り向きあっと声を出しミオから離れる。

「兄さんー。お姉さんも」

ミオがすぐに振り向き紬の後を追う。そこに望、護衛に囲まれた唯子。そして松風がついてきていた。さらにその後ろに楽しく笑んだキヨが颯を連れきていた。

「姉さん。体調は平気?どうしてここに…」

「ええ。貴方たちが居るから」

「ああ。アストレイからの通い詰めでは不便とのことでアルスラン将軍が便宜を図ってくれた」

『これはなんの騒ぎですか?』

『何々?お出迎え?』

キヨが可笑しく笑うと前へと進み女生徒達のところへとくる。女生徒達が気まずくしキヨが話す。

「もっと世間を知れ。そのままでは身を滅ぼしかねないからな」

「何を…もうして」

「その通りだ。お前達は満たされた生活ができている。ならばそれを余すことは勿体無い」

キヨが片腕の義手を外すと女性たちが小さく悲鳴をあげたりとする。

「私のように初めから満たされなかった場で生まれたものは苦労した。だが、世間を多く知ったことで今がある」

キヨが再び義手を取り付ける。

「ミオは私の姪で紬は私の親族になる。私はアルスランの妹。そして、お前達を縛り付けたのは覇気」

周りが再び硬直すると男の教師二名がびりつき、女教師が冷や汗を流す。

「覇気は王となるべくものや、極めたものにしか不可能。ミオの場合受け継がれたのもあるが、ミオ自身その覇気を感情によって使える。怒らせないよう気をつけておけ」

周りの緊張が解かれると複数がその場に座り込み息を弾ませる。

「そして覇気が使えるのがいわばアルスラン将軍の娘の証拠でもある。あとは私の姪であることも間違いない」

キヨが扇子を出し軽く広げる。

「もっと先見の目をもち見聞を広げよ。私の今言った言葉はここでも通用するからわかるだろう?わからなかったら私が学ばせる」

キヨがセンスを畳みにこりとすると女教師を見る。

「単位5は取り消して五日間私が特別講師をこのもの達に行おう。そしてそこの見物人となった騎士達について。放課後学習は厳しく行われる。ならば、その放課後学習」

キヨが紬が扇子で示す。

「紬がまとめて相手をする。掠ってでもいい。一度でも当てたらなしだ。紬は今後騎士生徒達の見て学ぶだけの見本をする」

「へ?」

紬がぽかんとし、キヨが楽しく告げる。

「剣を持つ動作は美しいからな」

「…いや、そんなあ」

紬がてれてれとし男がやれやれとする。

「見本なら問題ないだろう?」

「はい」

ーはい?

ーえ、先生が敬語…。

周りが驚くとキヨが吹き出し笑う。

「副学園長。周りの反応を楽しんでみないでください」

「え?」

「え?キヨさん、が?」

キヨがふふふと笑う。

「ああ。3日前から副学園長としている。まだ歯向かう教師もいるが私は気にしない。歯向かうなら歯向かえ。私に敵うならな」

キヨが堂々と宣言すると女学生達をみてふっと笑う。

「というわけだ。単位は通常に取らせるので私直々の授業を早速行うとしよう。他は解散。放課後予定の騎士達はそこのハルバートについて行け。紬もだ。ミオは唯子に付き添え。その後授業に参加だ」

「返事しろ返事っ」

ハルバートの怒鳴り声が響くと学生達が各々返事を返し解散したり集まったりとする。そして女学生達が気まずくキヨの後に続き、ハルバートと紬の後を騎士学生達が続いた。


ー騒ぎは終わりました。

生徒会室の応接室にいる瑠奈がやれやれとし、タイシがルーシャスと話す。

「以前、学園外であったとはいえ差別が目立っていた」

「まだ序の口です。酷い時は自殺や自殺に見せかけた暗殺もあります。ここは学園都市とともに、将来の好敵手となるものを潰す場でもあります。その好敵手は貴族以外に引き抜かれたもの達も含めておりますから」

「ああ」

「暗殺以外だと、どの場所でも変わりないですね」

「私はあちらの世界の学校については存じません。ですが、ここまで酷い場所はないだろうと思います」

「階段から突き落とされたりもか。生ゴミを飲ませられたりも」

「兄さんの体験話は置いて」

瑠奈が即座に突っ込み、秘書が目を丸くすると透華が話す。

「その、あちらでは貧困民として誹謗中傷されていたんです。2人とも。原因は親なしだからが一番ですね。唯一の味方がいない子供を子供は狙いますから。そして、大人もまた唆します。日頃の苦悩や苦痛を晴らす為に子供を使って他人の子供を貶める。いじめるんです」

「ここでも同じようなことが起きている。あとは、親の後ろ盾。親の力だ」

透華が頷きアンナがやれやれとする。

「我が欲。自己満足。そして人は共同協力する者たちですものね。共存し合えば皆が同調する。私たちにはない事です」

『はーやれやれ』

陸奥が窓から部屋へと入ると瑠奈の膝に座る。

『キヨが場を収めたよ』

「ええ」

「副学園長に就任していたと聞いた時には驚いた」

「ええ」

「学園長は新しい取り組みや今の学園を変えようとされておりますからね」

「それは、最近変わられたという事ですか?」

「はい」

「前の学園長はアストレイ前王と共に処刑された」

「えっ」

瑠奈が驚きタイシが話す。

「人道を超えた行いをしていたからだ」

「はい。この学園内での処刑です。裁判の大鐘という古代の大魔術によって」

「ええと…」

「各国の王の契約の元発動される術だ。裁くのは王達になる。そして隠し倒すことができない罪を全て罪人自ら話す。偽りもなく全て。その全ての真実を聞いたのち王達が審査して裁く。現に処刑されずにいた者もいる」

「ええ…。後そう言った術もあるのか…」

「あるが、契約した王達が揃わないとダメだ。学園長も言えばこの学園都市の王になる。そして学園長もこの契約による術に加担できる」

「だけどその時は裁かれたものとして裁かれて…。まさか学生達の」

「学園長室で裁かれた。立ち合いは王達の代理と元副学園長だ。そちらも対象ではあったが処刑までの罪はなかった。だが投獄中だ」

「…はあ」

「一年ほど前と比べて学園内での差別や犯罪も極端に減りました。特に薬によるものです」

「横流ししてたわけですか。学園長たちが」

「はい」

「ああ。それも依存性の高い物だ。まだ治療しながら通っている生徒もいると聞いた」

「その通りです。大抵は差別を受けていた生徒達。被害者達になります。そして薬は実験の為という事です」

「人体実験ですか。でもそれをしてどこに流そうとしたんです?」

「栄えている国。あとは、アルスラン将軍の部下達です」

「相当憎まれてたのね」

「悪どい奴らからはな。ただ、その一件で敵が減ったし、父や俺の名誉の回復もできた」

ルーシャスが頷き、瑠奈が話す。

「ええ。あと、それを考えると権力者はそこまでしないと裁かれないわけよね?」

「ああ」

「そうですね」

瑠奈が頷きアンナが話す。

「ちなみ瑠奈様も権力者のお一人ですよ」

「私に死ねというわけ?」

「いえいえそうではありません」

アンナがおろおろとし瑠奈がやれやれとし冗談だからと告げた。


「ミオー。怒ったらめーだからにゃー」

ミオが申し訳なくしマリアンヌがしょんぼりするミオの頭をよしよしと撫でる。そこは机が等間隔に並べられた教室で、生徒達がミオを見て潜めいたりとしていた。そこに騎士科の男子が落ち込みやってくる。

「どうだった?」

「…負けた。なぜあんな動きができる。なぜっ」

「おや?」

「紬に負けたのね」

「他は?」

「…全員ダメだった。当たるどころか掠りもしない」

男子が席に座り激しく落ち込む。

「その、紬ってとんでもなく強いのかにゃ?」

「ええ。でもそれ以上にお兄さんの望さんが強い。見えない。あと、とても頭もいいし優しい」

「へえ」

「あの…」

ミオ達が振り向くとそわつく少女たちがいた。

「えと、その、お兄さんだけど馬の霊獣の方?」

「はい」

「…かっこいい」

マリアンヌが目をぱちくりとさせ、少女たちがお話ししたい、聞きたいとミオへと尋ねる。その男子学生が舌打ちするが頭を抱えくそおと悔しく声を上げた。


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