瑠奈6
女が心臓を跳ねさせ、ライアスがふううと長く息を吐く。
「やばかったな」
「やばいところじゃないわよ!聞いてない!」
「聞いてないと言ってもこの世界だから当たり前にあると思うしかない。俺たちは何とか生きれた」
「生きれたですってっ。冗談じゃないわ!」
「あ、おい」
女がその場を怯え怒りながら離れていく。ライアスがやれやれとすると大の字になり上を見上げるミールを見る。
「あいつは引っ込んだのか?」
「ん。怖くて中に篭っちゃった。でも僕も怖かった」
「ならしばらく出てこねえな。ま、いい。うるさくないからな」
ミールが起き上がり鳥肌を立てた腕に触れる。そこに片目グラスにタキシードを着た老人が歩み寄る。
「バトラー。ミールが龍の攻撃を記録した。記録したがあれを攻略するのは無理だ」
男が頷きバトラーが止まると深く頷く。
「はい。主人もそのように申しておりました」
「ああ」
悲鳴が上がるとライアスがやれやれとし男が話す。
「勝てるわけないのに」
「わかっていない女に未来はない。次の継承者は?」
「準備できております。あと、ライアス様。こちらを」
バトラーが手紙を向けるとライアスが受け取り中を見る。
「へえ。だが、噂はあったからな」
「なに?」
「学校だ。あの可愛い黒髪のお姫様達と兄上殿達が入ってくるんだと」
ライアスが楽しく笑みを浮かべバトラーが頷く。
「作用。しかし、こちらも乱暴な手は使えないのです」
「ああ。学舎に暴力沙汰は御法度だからな。了解した」
ライアスがその場を離れる。
「楽しそう」
「ミール様。宜しければお仕事をお願いいたします」
「わかった。でも急いで逃げてもきたから上手く写ってるかな」
ミールが立ち上がり額に手をやる。すると写真のフィルムのようなものがしたいから次々と現れた。
ー熱が。
ミオが布を絞り顔を赤くし息を弾ませるマーサの額に乗せる。そしてテレサもまた熱を出しておりエリスが浮かんだ汗を拭いながら2人で相手をしていた。
「ごめんなさい…」
「いいえ。あと、親子ですね。一緒に熱を出されるから」
エリスが微笑み安心して寝てくださいと告げるとテレサが頷き答えた。
ーああ…。
オアシスで瑠奈が湖を泳ぎながら汗や疲れを癒していた。その岸には疲れ果てたラファと竜に戻ったアンナが寄り添うように寝そべり、リオルが静かに寝息を立て寝ていた。
「気持ちいい」
『…それはよかったですね』
「ええ。あと、こうやって回復するのか」
『そうです…』
『はい…。姫様達の祖先の方々になる王族は清らかな水で体を癒されて参っておりましたので…』
『そうです。その水を作っていた一族が人の手により悪魔とされ未開の地に逃げることになったのです』
「ええ」
瑠奈がはあと息を吐き青く光るまで星空の輝く空を見る。
「星の位置が違う」
「瑠奈ー。充電中?」
「そー」
やってきた紬が頷き自分もと靴や上着を脱ぎ湖の中へと入る。
「あー、生き返るー」
「ねー。ミオは?」
「マーサさんたちの看病中。それよりこぎゃんとこおって平気?結界ははっとるようばってんが」
「あーうん。何かあったらラファのせい」
『…まあそうなりますけど』
瑠奈が頷き紬がふうんと声を出す。
「ラファも瑠奈に使われて大変たいねー」
『本当に』
「はいはい」
「瑠奈ー。明日どぎゃんすると?」
「話し合い。紬中入る?」
「よかー。うち難しいのは無理」
紬が瑠奈の元へとくると後ろから抱きしめ顔を晒す人すり寄らせ、瑠奈がおかしく笑いながら紬の顎を指でくすぐった。
ー疲れた。
瑠奈が静かに寝息を立てる。そして眠る瑠奈の元に影が忍び込むと瑠奈へと手を伸ばすが影が固まる。そしてその影の正体である魔術師が後ろを振り向くと目を赤くさせたラファが睨んでいた。魔術師がその目を見て固まった途端自身の目も赤く染まり力無くその手を落とす。瑠奈が小さく唸り、魔術師が床へと沈み消える。瑠奈が目を開け体を起こし何も、誰もいないあたりを見渡すと再びベッドに転がり気持ちよく寝息を立てた。
マーサがベッドに頭をもたれ掛からせ眠るミオを哀しみの表情を浮かべながら見ていた。そして涙を流す。
ーマーサ。僕が死んだら子供達のことは頼むよ。
ーテオ……。
マーサが口を手で押さえ涙を流しながら嗚咽を堪えていく。そこにエリスが来てミオを起こさぬよう声を掛ける。
「マーサ」
「う、ふう」
「今はまだ体を休めてください。ミオもですが私達も、貴方の元気なお姿をまた見たいのです。心配なさらず、不安な思いもなさらず休まれてください。何かあれば私達がいます」
マーサが小さく頷きエリスがはいと返事を返し優しく背を撫でた。
翌日ー。
アルスラン、そして瑠奈の視線の先にタイシがおりタイシが気まずくやや俯いていた。
「兄。兄はどうしたい?」
「…複雑」
瑠奈が胸ぐらを掴みタイシを揺らす。
「うちはどぎゃんしたかといっとるとよっ」
「はいどーどー。瑠奈ストーップ」
共にいた紬が瑠奈の手を離す。
「タイシ」
タイシがアルスランを振り向く。
「ユリアーナはどうする?」
「…もう、ないとは思いますけどユリアーナと子供を狙う同種がいます」
「ああ」
瑠奈が手を離す。
「学校は?」
「…以前から、興味は少し。ただ、怖い。同じ事が、起きたらと思うと」
タイシが脂汗を流し、瑠奈が話す。
「前とは違う。兄には紅蓮もいる。私もいる他もいる。兄はここが兄にとっていいところってのは私はすごくきて理解した。だって兄を頼る人が大勢いるから。向こうはそんな人なんていなかった。兄を頼るのも兄に言わないとだめだったし、嫌う人ばかりいた」
タイシが口をつぐみ、瑠奈が話す。
「一部の人たちは兄のことは好きで心配してた。だけど、兄の力になれないってその人たちも苦しんでたし悔しい思いしてたから。でもここはそうじゃない。兄が望むこと、兄が心配せずに信用できる人が大勢いる。ここが兄にとって心地よいところなのはよーく分かったし、兄の大切な人もたくさんいるのが分かった。そして、甘えていいことも」
瑠奈がタイシをびしっと指差す。
「私は向こうが私にとって心地いいから用件が済んだら帰るからね。でもそれまでは兄に協力するし、一応妹として相談にも乗る。兄は学校に行きたいんでしょ?なら、私も一緒に行く。そして何かあれば保護者のアルスランさんとか紹介者のオーガンさん頼ればいいから」
「ああ。私も頼らないところがあったばかりに行かせる事ができなかったからな。ようやく、出来るなら行かせたい。ただどうしてもというなら行かなくてもいい。好きに選んで構わない。行かなかったら行かなかったでタイシの好んだ生活。学び場を私が用意する」
タイシが口をつぐみ胸を熱くさせる。
「あと、兄についてきた人たちの保護と居所の確保だね」
「そちらは私が用意する。ユリアーナについてもだ」
タイシが頷く。
「頼みたい。あと、学校に行きたいー」
タイシが顔を真っ赤にし建物の壁にもたれかかっており瑠奈がやれやれとし紬が話しかける。
「そぎゃん恥ずかしがらんでもよかと思うけどなあ」
「慣れとらんと。ま、少しずつ慣れていけばよか」
『紬』
焔が傍へとくるとギルドの塔の示した。
ミオが顔を真っ赤にし、テレサが申し訳なくミオの額に水を固く絞った布を乗せる。そこに瑠奈たちがくると、紬が話す。
「あらまー。疲れが出た?」
「…少し」
「私や母をずっと看病してくれて…。申し訳ないわ」
「いえ…」
瑠奈が近づきミオの額、そして首筋に触れる。
「扁桃腺が腫れてる」
「へんとーせん?」
「体の組織の名前です。私の故郷で呼ばれる名前です。触ったら痛い?」
「痛い…」
「んー、なら、ちょっと長引くかな。扁桃炎だからまだ熱出るよ。向こうでなった?ここでは?」
「ある…。前もあった」
「なら分かってるね」
ミオが頷き、紬が話す。
「ナガハラ先生に聞いてみる?」
「そうだね。マーサさんも。まだ容態悪いみたいだから診てもらおっか。アルスランさんに頼めばすぐだし」
紬が頷き瑠奈がそうしたらとその場をすぐに離れた。
ミオが点滴を受けながら気持ちよく眠る。そしてナガハラが一向に良くならないマーサの体を見ていく。テレサがはらはらとし、エリスが話す。
「嘔吐や悪寒、頭痛。そして熱も下がだたり上がったりの繰り返しで少しずつ意識も遠のいてます。毒も考えたのですが」
「毒は毒だな。これは蚊だ」
「蚊?」
「ああ。向こうから持ち込まれた吸血する小さな羽虫だ。マラリアだな」
ナガハラが持ってきた道具から注射を出す。
「イーロンの奴らがここにはいなかった生態系や病気を持ってきては広めていた。ただ、こちらの生態系に大概は負けたが蚊はそうじゃなかった。イーロン国内の環境を好み数を増やし徐々に周りの空気や魔獣たちの血に慣れて今では当たり前にいる。蚊は病を運ぶ虫でもある」
ナガハラがマーサに注射し薬液を注入する。
「これでもし変わらなかったらまた言え」
「はい」
ナガハラがその場をさるとカレンが狼狽えながらエリスに尋ねていくとエリスがどんな病気なのかと困った表情を浮かべた。
「マラリアですか」
カレンが瑠奈を見て頷き瑠奈が話す。
「ウイルス性の熱病ですね。細菌感染になります。症状は熱、嘔吐、下痢、悪寒、頭痛。通常の風邪に似てるので把握しにくいそうですけど、長く続いたり、意識が遠のいたりして悪化すれば死にます」
「母、が、意識とか」
「ナガハラ先生は何しましたか?」
「薬を打ったみたい…」
「なら、特効薬です。マラリアは特効薬のある病なので打てば回復します。なかった場合は多分になりますが、意識を保つために常に見ておかないといけないと思います」
「ええ…」
「はい。とーなると、もしかしてミオも?あとそうなると、マラリアを持つ蚊がいて、先生対策するかもだな。すぐ出たならまだ間に合う。ラファ」
ラファが姿を見せる。
「先生のところに行って。ミオも診察して欲しいって」
『はい』
ラファが空を飛びナガハラがいる方角へと向かう。それをタイシがエルハルトに気まずくするブレイズを連れくる。
「マラリアか?」
「かもね。ミオも多分その可能性あるから診てもらうの。そっちも調べてたの?」
「ああ。高熱を出すものが複数いると聞いたからな。それでツボに入った濁った水たまりを見つけた。本来ならないユスリカの幼虫が泳いでいたからな」
「なら人為的かあ」
「ああ。あと、一年半前にはここに蚊はいなかった。最近発生したそうだ」
「そっか。あと、確か隠れてたとか」
タイシがブレイズを軽く見て頷く。
「ああ。エルハルトとユリアーナの父親と仲が悪いからな」
「あーまあ。一役買ってはいるからかな」
瑠奈が頭に触れやれやれとする。
「前世のと言うよりも、この星やあの場所から流れてきた感じにも思える。あの時いたあの場所は何?」
「ブレイズ」
「…隠れ家です。ラファエルが弟子たちに与えた場所になります」
「ええ。あと、他にもあるけどその自称ラファエルが使ってるしな」
「はは」
タイシが笑いながらきたマナを振り向く。そしてエルハルトがじっとマナを見るとマナが楽しくエルハルトを見て笑む。
「お前の父親も変わったな」
「どういう事でしょうか?」
「直接話を聞いたらいい」
「直接は…」
エルハルトがいい止まり、マナがふっと笑う。
「いずれで良い」
「そこのトカゲの半身」
マナがやってきたナガハラをおかしく振り向く。
「なんだ?」
「お前から生えてるその竜の角をよこせ」
「なんって失礼な!!」
その場にアンナが走りくると威嚇する。
「いって良いことと悪い事があるわよ!」
「悪いことは言ってないが」
「トカゲの半身!竜の」
ぼきっと音が響くとタイシたちが一斉に角を外したマナを振り向きアンナが声を上げる。
「あーーっ。そ、そんな簡単におってはああ」
「リオルだろう?使ってくれ」
「え」
「ああ」
ナガハラがその場を去るとラファがその場に降り立つ。
『リオルが危篤になりましたので私が伝えました。ミオは後ほどでもよろしいですか?』
「ええ」
「そ、う、なら、そうとっ。言葉遣いに気をつけなさい!!」
「あはははは」
「はいはいうるさい」
「それより師匠。角はどうなるのですか?」
「ああ。また生えるぞ」
マナが簡単にもう一つの角を折るとぽんとタイシの手に乗せる。
「マナ様!そのっ、簡単にポキポキおってはなりません!!」
「あははは」
「笑い事ではありません!!」
『うるさい…』
アンナが青ざめ、ぬっと紅蓮が姿を見せる。
『黙れあんっ』
タイシが紅蓮の口を手で掴み塞ぐとマナが吹き出し大笑いし紅蓮が顔を真っ赤にし震え、ラファもまたぶくくと震える。
「兄…」
「…周りがいるから、静かにと…。師匠……」
ー手で。
ー手だけで黙らせた…。
ーさすが、竜殺し。
瑠奈が呆れ恐れながらもひそめくもの達の声を聞く。
「その顔っ。くくくくっ」
マナが腹を抱え、タイシが気まずく手を離すと紅蓮が身体中真っ赤になり叫んだ
『まなあああああああ!!!!ーー』
咆哮が周りの建物を吹き飛ばし周りの人々も吹き飛ばした。
「やかましいな」
ナガハラがやれやれとしミーアが竜の角を手にしリオルに当てながら治療を行う。
「すごい力にすごい流れ…」
ヒカルたちも見学し、ハリーが目を煌めかせる。
「竜の角。幻の角だあ」
「鹿の角と一緒だろ」
「違いますよ」
「父さん。ここもういいならミオの方いいか?」
「わかった。そこらにある虫入りの水は捨てておけよ。皿もあれば捨てろ」
「分かった」
「ちょっとした水でも生きるってのがまたすごいなあ」
「だが水から出たら死ぬから駆除は簡単だ」
「へえ」
「なら廻るぞ」
「えー、まだ見ておきたいー」
ヒカルがハリーを連れ出しミーアが続けて治癒を行った。
ー手が痛い。痺れる…。
ミオが唸り顔を僅かに歪める。そして話し声が響く。
ー何…。
ーその声は聞いたらダメだ。
ミオの耳を誰かが塞ぐとミオがハッとし後ろ振り向きキヨを見る。
ーキヨさん。
ーまた抜け出してるぞ。あと、やられたな。
ーえ?
キヨが足元を指差すとミオが足元を振り向く。そこにミオの腕にまとわりつく小虫たちが湧き上がるツボがありミオがぞおとし青ざめ手を思いっきり振る。
ー軽い呪いだ。
ーど、どうにかしてえ!
ー安心しろ。焔が得意だ。
今度は炎が上がると虫たちが悲鳴をあげ燃えていく。ミオが驚きながら自らの腕を見て安堵する。
ー他の呪いの連中がいるからと兄殿から依頼を頼まれてな。それで呪いの根源を探すためにこうやって出ているわけだ。
ー根源というと呪いをかけたものですか?
ーそうだ。このようにして見つける手段を私が持っていたし披露したからな。まあその間体は無防備になる。そして、ミオも呪いをかけられていたのを兄殿が見つけた。
ーえ…。
ー兄殿もまた私のような優れた力であり、目を持っている。あと、兄殿の話では魂の色が変わるとか。それで呪いをかけられているか。もしくは生死に関わる状態がわかるらしい。兄殿もまた変態だからなあ。娘の魂を見て分かっているからおかしくなったのを見て私に話に来たのだ。
ミオが口をつぐみ、キヨがふっと笑う。
ーお互いに難しい親子ではある。そして、親。ミオ。親という字は木の上に立って見ると教えただろう?例えどんな事であれ、子が子を持ったとしても、親にとって子はいつまでも子供で心配する。兄殿は兄殿で隠れながらミオの助けをしている。そちらもそうであろう?お互い様だ。
ミオが小さく頷き、キヨが頷く。
ーお前を呪った小物はだ。分かっているとは思うが兄殿が相手をしているからな。気にせず甘えておけ。ではな。
キヨが消えるとミオが大きく息を吐き出した。そして目を覚ますと安堵するエリスが映り、遅れユナを連れやってきたサイモンが声をかけ、ユナもまた大丈夫と声をかけた。
グレンがイライラとし、瑠奈が呆れながら吹き飛んだ建物と横たわった男や女たちと治療をする術師たちやマナを見る。
「まったく。口抑えたくらいで」
『うるさいっ』
「はあ」
「申し訳ありません」
「いや……」
タイシが謝っていくと紅蓮が少しずつ気まずく頭を動かす。マナがその姿を見てふふっと笑う。
「その…。ティーチと、タイシとどちらを言えば」
カレンがその場にくるとタイシが話す。
「好きな方でいいです。あと、怪我人とか」
「それはいいわ。頑丈な連中だから」
「おい…」
「ねえさんそれはない…」
男、女たちが答えカレンが無視をする。
「私達は、どうしたらいいのか話をしたいの。ここの、事についても」
「でしたら、今アーサーさんが来られてます」
「う…、ま、まあ。今、ギルド長だものね……」
「はい」
カレンが複雑そうにする。
「何かありましたか?」
「あー、ちょっーと昔ね。ええそう昔」
「兄。そこは聞かなくていい話。後ここについてはその人たちに任せてミオのとこ行くよ。呪い受けてたって話だったから」
「ああ」
瑠奈が先へと進むとタイシが後に続く。
「お供は?」
「と、とう、さん、が、話中だ」
「…慣れなよ早く」
照れるタイシが頷くと瑠奈がため息をついた。
ー中世に来たみたい。
唯子が開けられた窓から見える外の景色や人々を見ていた。そのそばに横塚がおり横塚が話す。
「産院の帰り道に襲ってくるとは嫌な連中ね」
「はあ。本当ですよ。ちゃんと育ってると分かって安心したところにでしたから」
唯子が腹に触れ、横塚が話す。
「しかし小鳥遊君の子かあ。小鳥遊君警視庁じゃあもちろん有名で有望で狙ってる子たちもいたけど、上司も娘たちをってのがいて食事に誘ったりしてたのよ」
「そうだったんですね」
「ええ。ま、それでもおめがねには叶わなかったということ。そして、いやまさか一目惚れくるとは思わなかったわ」
「そ、その。私も、お、驚いたのと、その」
唯子が顔を真っ赤にし頬に触る。
「あんな、どストレートに。その、彼のことはもちろん知ってましたよ。オリンピックも見てましたし、新聞も。でも、知ってただけで後はなくて…そ、それが突然、自分が告白されるなんて」
「まあそうよね。でも断れることもできたわよね?どうして?」
唯子が恥ずかしく話す。
「その。私の家のことはもちろんご存知とは思いますが、父が有名で…。私もいいところの学校に通っていた身ですし、小学から中学は女子校でしたから」
「へえ」
「それで、あの…、し、少女漫画とか」
「あー、憧れてたわけね」
「そ、うなんです」
「食パン咥えて出会い頭」
「え?食パン?」
「なんでもないわ」
ー年の差を。
「やっほー。年の差感じさせる会話してんなあ」
横塚が即座に玄海の顎を殴り倒し、望が踏まないように避けて唯子の元へとくる。
「お、ぶう」
「あんたはいちいちうっさいわ!」
「体調は?」
「ええ。だいぶ良いわ」
「ああ」
「で?何かわかった?」
「すこーし。いててて」
玄海が顎を撫でながら立ち上がる。
「そうそう。みおっちも軽い呪いかけられてさあ」
「呪い?呪いがあるんですか?」
「あるある。で、死ぬ呪いじゃなくて嫌がらせ程度の呪い。嫉妬って話だな」
唯子が目を丸くし横塚が話す。
「あの子に?なんで?」
「元ご主人様と歳が近いってことで、ご令嬢から頼まれたやつがやったらしい」
「あー」
「元ご主人?」
「タイシ君よ。彼ここだと相当人気者なのよ」
「ああ。意地悪な王様のせいで散々な目にあったけど、今いなくなって更に人気があがってるわけ。後この世界は俺たちみたいな別世界から来たのを異界人っつってるんだ。で。差別もあったりする」
唯子がほうほうと頷く。
「もともとこの国も元王のせいで異界人に対する差別がひどかったし、元王自身が差別していたから見てわかるほど酷かったのよ。定められた法律も無視していたし」
「そうそう。で、最後は下々さん達に弾圧されて民衆裁判によって処刑された」
「隠れて悪どいことを次々とやっていたし、私達もだけどあなたみたいに無理やり連れてこられて奴隷として使う連中達に手を貸していたの」
「横塚さん達は元はこちらに攫われて奴隷にされたんですか?」
「そーよ」
「そーそー。で、俺は若造さん達に買われて色々ただで教わってあっち行ったらこっち来たりの手段を得られた」
「私は魔獣に襲われて死にかけで目が覚めたら元の世界の病院。野犬に襲われたとかってなってたし、まあなんというか。こいつに会うまで記憶喪失だったのよ。その当時のね」
「そうそう。そんで俺があつーく」
横塚が限界の口を抑えると玄海がぶーと声を出す。
「唯子。ここは信頼できる人の居住地になる。それでも危険はあるからもし出歩く場合は俺か横塚さんがついていく」
「ええ。ま、私たちがいない場合はできる限り出ないように。それと、真央ちゃんのところに行きたいなら望君に話してちょうだい」
「ああ。あと、唯子の亡くなったおばさんの相手が唯子に会いたいとのことだ。それから、おばさんの墓もあるそうだ」
「葵叔母様の…」
「ああ」
唯子が頷き、横塚が話す。
「まあでもしばらくは安静。葵さんのお相手の方が帰ってきてから話しと墓参りをしたら良いわ」
「はい」
「おー、起きた起きた」
蘭丸が中へと入る。
「耳が」
「そーだ。俺は獣人だからな。向こうにはいないってのは聞いてる。この近くに葵が少し過ごした母屋があんだよ。アルスランが先に案内してくれって話し合ってさ。墓もそこにあるんだ」
「はい」
「行くか?」
唯子が頷き蘭丸がならこっちだと道を進んだ。
ーはあ。
キヨが椅子にだらしなく座りながら水を飲む。そこにラダンがおり、ラダンが軽く咳をするとキヨがやれやれとする。
「少しくらい許せ。こちらは魂飛ばしをして疲れたんだからな」
「だとしても、流石に見苦しいです」
「いるのはお前だけだ。別どうでも良いだろう。あと、兄殿も兄殿だな。娘を持つ父親とはいえ、やりすぎは禁物だ」
キヨが楽しく告げる。
「ところで衝動的な謝罪はもうしないのか」
「……誰から」
「長く生きている快活な子犬だ。よかったらそうなった時止めてくれって言われてな」
ラダンが舌打ちするとキヨがくくっと笑う。
「アストレイに無事に辿り着いた時に行えば良い。その時にお前も死んでは元も子もないからな」
アルスランがその場にくるとキヨが話す。
「術師は?」
「捕らえている。研究者達の呪いは?」
「解けた。タイシがその根源を取り除いたからな。ただ、受けたもの達はしばらくまともには動けない。体の血管の至る所が傷ついているからな。なにせ、内側から熱により膨張して爆死するように仕向けた呪いだ。内臓がひどく損傷しているものもいる」
「その根源は死んだとのことだったな」
「ああ。自ら呪詛返しを行った」
「そのようなこと可能なのですか?」
ラダンが驚き、キヨが話す。
「ああ。出来る。言えば呪いを我が身に宿せば良いの話だ。呪いが自分にかえるようにするだけ。しかし気に食わない。奴らはまだ何をしたい?今度はなんの人体実験を行なっていた」
「何もわからなかったからな」
「ああ。そして、先に大事なものはあの場から持ち去っていたようだ。先見の目を持つ者がいる。面倒だ」
「先回りをどうにかしていくしかない」
「はあ。骨が折れる話だ」
キヨがやれやれとする。
「わかるだけでも捕虜達に聞くしかないな。それと、ミオにいたずらめいたことをしでかした連中と話はできたか?」
「ああ。近いうち没落する。父親も加担していたからな」
「おやおやだな」
「哀れとは思わない」
キヨがくすりと笑う。
「失礼致します。ギルド長アーサー殿が参られました」
「通してくれ」
騎士がはっと返事を返しその場をさるとアーサーが中へと入り軽く会釈した。
ー現実でもっ。
ミオが必死に湿疹のできた腕を泡でゴシゴシと洗う。傍にエリスと紬が立ち見守っており紬が話す。
「ミオ。そろそろ」
「まだ…」
「肌荒れがひどくなるわ。これ以上はダメよ」
ミオがぎこちない動きに変わるとエリスが水をかけ泡を落とし今度は香りのいい軟膏をミオの腕にぬる。
「いい香りだ」
「蜜の入った軟膏です。くすりとしても使われる花からとった蜜を使っております」
「へえ」
「む、虫よらないですか?」
「虫除けの効果もあるから心配ないわ」
ミオが頷き紬が話す。
「そりゃ、意識なかったとは言えあそこまでおったらいやたいねえ」
「どこまでいたの」
「はいはいもうはなさん」
「教えてっ」
ミオが紬を掴み紬が汗を滲ませ頭を振ると笑い声が響く。2人が笑うエリスを振り向きエリスが話す。
「以前のミオととても違うわ」
ミオがみるみる顔を赤くし紬が話す。
「そんな恥ずかしがらなくてもよかたい」
「紬ー、ミオー。いる?」
瑠奈がその場にくると紬が答える。
「おるよー」
「ええ。オーガンさんが来たから呼びに来たわ。学校について話しようって」
「オッケー。ならミオ行こう」
ミオが頷き紬がミオの手を握り行ってきますとエリスに手を振りエリスがいってらっしゃいと手を振り返し見送った。
アストレイー
捕虜専用の療養所に砂漠から運ばれたもの達が看護師や術師たちの治療を受けていた。そして望が両手を拘束されながらベッドに寝込む濱口の元へときていた。その濱口は目の下が窪み顔色が青ざめていたが意識はあり望を見上げていた。
「話せるな」
「はあ。まあ、少しなら。いい」
「ああ」
濱口がはあと息を深く吐く。
「名護さん、か。名護翔大警視正。その人に、誘われたんだ…。いい話が、あると」
「名護警視正に?あの人が?」
「ああ…。いい人に、見えて、そうじゃない」
濱口がはあと息を吐く。
「…わかった」
望がその場をさると濱口が去って行った背を見る。
ーあいつが、親しんでた人だからな。
ー問いかけするわ。
望がスマホを持つ唯川がある部屋へと静かに入る。そこに横塚が立っており唯子が告げる。
「小学生の頃に飼っていたのは?そう。ええ。なら、高校。お父さんが勝手に乗り込んだ家。そうじゃないっ。乗り込んだでしょ他校の男子のとこ。あれ本当迷惑だったんだからっ。落とし物拾ってくれただけだってのに難癖つけてっ。あの後私は娘ラブの父親を持っているとか、モンペアの娘とか言われたのよっ。だから妹にも嫌われてんじゃないのっ」
唯子が愚痴を言うと横塚がストップウォッチを見てやれやれとする。
「後1分」
「お母さんと変わって!チェンジ!あ、お母さん。とにかく無事で簡潔に言うわ。望君が一緒にいるから」
「うしろ」
「え」
望が近づき手を向けると唯子が望むにスマホを渡す。
「はい。申し訳ありません。唯子さんのことを。いえ。あと、電話の時間も限られていますので今言えるのは唯子と自分たちの子供は俺が守ります。唯子さんに変わります。唯子」
望から慌てて受け取る。
「また連絡する時にするわ。あと、お父さんはいいわ愚痴しか言えないから。とにかく無事だから。ええ。元気だし望君も一緒。時間だからごめんね。また」
スマホの電源が突如消えると横塚が手にする。
「なら、また上手くできたら10日後。その時はちゃんとここでしばらく過ごすことを言いなさい」
「はい」
「ええ。なら、ちょっと休むから。はあ」
横塚がその場をさり、望が頭を下げ唯子を見る。
「おとうさん。拾った相手のところに行ったんだな」
「あ、ええ…」
「初めて知った。俺の知らないことがまだたくさんあるな」
「え、あ」
「俺もまだ唯子に話していないことがたくさんある」
戸惑っていた唯子が頷き望が小さく笑む。
「向こうではあまり話す時間がとれなかったけれどここならあるから話して行こう。俺はもっと唯子のことを知りたい」
唯子がやや顔を赤らめると恥ずかしく笑む。
「私も。望君の子供の頃の話とか聞いてみたいわ」
「ああ」
唯子が頷き望が隣に座り唯子の肩に腕を回し抱くと楽しく会話を始めた。
ー学校か…。
ミオがオアシスの湖に足をつけ物思いに老けていると隣に瑠奈がミオに軽く体を当て座りまた、ミオを挟むように紬が楽しく体を当て座る。
「なあんか楽しみ増えたたいねー」
「当初の予定と変わったけど」
「ええ」
「不安?」
「まあ、ちょっと。でもその場所に欠片があるなら、とも思うし」
「そぎゃんね」
「ま、探しつつ学ぶべきことは学んだらいい話。旅と一緒でしょ?ミオが求めている旅とね」
ミオが頷き紬が話す。
「人生なんでも楽しまんば損たい」
「苦労ももちろん必要。でも、紬のいう通り楽しむのも大切」
「そぎゃんたーい」
「あとは、どうにでもなれ。その時はその時。そして周りもいる。過ぎたことは過ぎたこと」
「そうそう。あとは、特に悪かこつばしなければいい話たい」
「それってどんな?」
「人殺しとか」
「人殺しでも戦争はまた別」
「そぎゃんなあ。お互い傷つきあうし」
「バカじゃなかったらね。ミオも見たでしょ?戦争をして殺して病んでしまった人を映像で」
「ええ。敵も味方も昔も今も変わらない。ずっと怯えて暮らすすしかできないって」
「そう」
ミオが頷き、紬が話す。
「ばってん戦争は無くならんもんなあ」
「宗教とかになると特にかな。お互いプライドを持っているし。あとは侵略戦争か」
「イーロンはどうして?」
「この世界の未来のため。そして、悪い膿がたくさんあったから。人身売買。人狩り。貧困。あとは、薬とetc。叩けば叩くほど出てきたから」
「侵略も。それを行なっていたのは一部の人だったけど、その一部の人のせいで周りの影響も大きくあったから。知らなかったけど、知らないうちに加担してたの。悪い事に」
「そっかー」
「一番被害合うのは知らなかった人たちだものね」
ミオが頷き紬が話す。
「ミオ。前話したたい。親しい人たちが殺されたって」
「ええ」
「お墓参りとかした?」
「え…あ、してはない、かな」
ミオが俯く。
「してない、し。ユナも、あれから、連れて行ってない…」
「ならいく?」
「行きたいけど…、いけないところにあるから」
「なんで?」
「閉鎖地域。管理地域だから」
「なんで閉鎖で管理?」
「アストレイ国が土地開発や調査のために人を立ち入らないようにしている」
ミオがやってきたタイシたちを振り向く。
「お相手さんの移送と、お相手さんの父親はどうなった?」
「ああ。ユリアーナはアストレイに。父親の方は好きにしていいとのことで別れた」
「それでよかった?」
「ああ」
瑠奈が頷き、ミオが膝を抱え俯く。
「ここに、戻ってきたんでしたら、色々と話とかしてほしかったです…」
紬が目を丸くし、瑠奈がミオの背を叩きやれやれとしながらタイシを見る。
「保護責任者の1人なんだからさ。心病んでるのはわかるけど、手紙なり理由づけのすればよかったじゃんか。向こうでも世話なってたんでしょ?心配させて心配してんの」
タイシが申し訳なくし瑠奈がため息をする。
「次はこういったことはないと思うけど、一緒に旅してきた仲なら話すのも大切だと思う。とにかく次はないようにして」
ミオがこくっと頷きタイシが話す。
「ああ。悪かった。本当に…」
ミオが口をつぐみこくっと頷くと瑠奈がやれやれとする。
ーあとは、ま、取られたショックもあるかー。
「兄。イーロンのミオの住んでたところっていける?」
「ラダンさんの許可を取ればいける?」
「まあ聞いたけどその人って後ろめたいの?」
「ああ。ただ、あの人自身も戦争で両親を亡くしている。目の前でだ」
ミオが驚き顔をあげ、タイシが話す。
「俺が知ってるのはそこまでで、後ろめたい事もあるし、蘭丸曰く、俺たちが見てないところで頭下げようと勝手に動くから止めてるそうだ」
「あー、んー、えー」
「きっつかねー」
瑠奈が紬を振り向き紬が話す。
「うちの兄さんのさ。友人さんが車に飛び出して自殺したと。その葬儀の時に友人さん轢いた人が棺の前で土下座して、そしてその友人さんのお父さん達もその人に土下座したとよ。うちもそれ、通夜に行った兄さんから聞いてさ。あと、自殺した原因は会社に使われたこと。使われ過ぎて鬱になって休みとっても毎日上司が連絡してこらしたからって。そん自殺した人もきつかったけど、他人の人ば巻き込んでしまった。友人さんの両親もそう。この先死ぬまで楽にはならん、というやつ」
「重い…」
「そぎゃんなあ」
ミオが頷き、瑠奈が話す。
「どうする?」
「…決心つかない。まだいい」
「えー」
「いいよ。あと、ゆっくりでいいからさ」
ミオが頷き瑠奈がタイシを見る。
「学校行くとしてさ。なんか待遇どうなるかな?」
「わからない。俺も初めてで、その学校都市自体尋ねたことがない。学びたいことが学べると聞いて話していたし話もあったが邪魔されたからな…」
「あー、前の王様か。でもさあ。そうなると学校側も邪魔してたんでしょ?でないと、学校側からの推薦で強制もできたはずよね」
「ああ。その通りだ。聞いた話になるが、前王と手を組んでた講師達もいたそうだ。あと、そこでも異界人の差別がはびこっているし、講師達の接し方も酷いとのことだった。生徒もそれに賛同していたりもあったとハリーから聞いた」
「ハリーさんそこの卒業生?」
「ああ。魔導科の卒業生だ。あとは騎士科、商業科、執事科、司書科だな」
「司書って図書館の管理者ですよね?」
「ああ。あとは、魔術書や禁忌書の扱い。王室の歴史書や地図。それから今回問題になっている巻物の扱いも本来はその司書の管理であり仕事になる」
ミオが頷き、瑠奈が話す。
「私いけるならそっちがいいなあ。ミオは?」
「えと、考えてる」
「うちは騎士ー」
「ちなみに王室関係者になると今言ったクラスとはまた違うクラスになるかもしれないらしい」
「え?」
「ミオは分からない。関係者ではあるが不明だ」
ミオが頷きタイシが話す。
「あとは、宗教に関するクラスもある」
「やっぱりあるんだ」
「やっぱり?」
「学園都市だからあるだろうなーってのは」
魔法陣が現れると大量の本を持ったヒカル、ハリーが姿を見せる。
「いたいた。これ学園都市のクラス資料と手続き書類と筆記試験」
「筆記試験!?」
紬が嫌そうに声を上げ、ハリーが話す。
「簡単簡単」
「ていうか、それ学校とか個別で」
「場所とわずのだから。ただ受ける時は監視員が必要だけどね」
ハリーがバッチを見せ、ヒカルもまた見せる。
「ヒカルさんも卒業生だったんですね」
「ああ。あとミーアさんもでそっちは依頼済みだ。そして俺が1位。ハリーが2位」
「いちいち言わないでくれるかなあ」
ハリーが苛立ち告げ、瑠奈が話す。
「その筆記試験は選んだクラス分け用ですか?」
「その通り。クラス分けになる。向こうで言えば1が選抜コース。頭よくなくてもとにかくずば抜けて逸材が選ばれるのがこの選抜。2が進学。これは知識重視だな。3が普通。本当普通」
「3適当すぎない?」
「だってそうだし。そしてこれはなかったが4。下等」
「…かとう」
「えー、それは、言えば下僕とか奴隷とか」
「いや。問題児も含める。あと筆記テストで振り分けされる。ちなみに筆記テストの用紙は魔法もかけられている。だから不正はできない」
「はい」
「その下等とかとなれば扱いはどうなるんだ?」
「普通と同じだな」
「うん。まあ、ただやっぱり階級格差があるところではあるかな…、それから授業数が少し多めになる」
「ああ。あと教室とかは問題なしだ。ちなみに選抜進学に進んだのと王室関係者になるとまた別だ。教室から教養まで全部違う」
「だねー。それからその3クラスは各クラスの授業を選んで受けるんだ。そこで単位が取れたらいいから」
「ああ。向こうの世界の大学と一緒だ」
タイシがああと返事を返し、瑠奈が話す。
「なら、その筆記テストっていつされるんですか?」
「今日から1週間内ならいつでも良いよ。あと持ってきた中に筆記に出る教材もあるから」
「ああ」
「分かりました」
「うー、私も生徒として行くことになったからなあ…。でもこぎゃんこつきいてなかあ」
紬が顔をしかめ、ヒカルが話す。
「紬の成績どうだったんだ?」
「まあまあ、下」
「ひどっ。でもそぎゃんかも…」
紬ががくっと頭を落としハリーが話す。
「ならヒカル。教えるの上手いから教えたら?タイシはいいけど瑠奈とかこっちきて初めてだしさ」
「ああ。ミオは教材見てから考えるか?」
「あ、はい」
ミオが返事を返しヒカルが分かったと返した。
ーそして。
「おいっ」
ヒカルが呆れながら汗を滲ませる紬の紙の漢字を指さす。
「試しにとやって書かせてみたけどなっ。この朝顔。小学生もかけるぞ」
「そ、ん。漢字はせんでしょっ。あと、ええと数学はある程度は」
「どの程度だ?九九とか出来ないとかじゃないよな?」
「そっは出来ます…。えー、分数は、苦手」
「嫌できろっ。ここでもするからな分数はっ」
隣の部屋で教材を見ていたミオの元にヒカルの机を叩く音が響く。ハリーがあーと声を出す。
「紬。クラス4になるかもなあ。分数もできなきゃさ」
「えと、騎士科を選んでも」
「うん。まあ、ざっといえば各クラスで分類されるんだ。選抜でも基礎はできて当たり前の知識は持ってなきゃだから。強くても聖獣持ちでもね」
ミオが頷き、タイシがまたその隣の部屋から瑠奈とやれやれとするミーアと共に出てくる。
「2人とも満点」
「…」
「凄い」
ハリーが大きく舌打ちするとタイシが気まずくし瑠奈が軽く呆れる。
「不正はなしよ」
扉が開きヒカルが疲れ果てながら出る。
「瑠奈っ」
「あ、はい」
ヒカルが机に突っ伏す紬を指差し部屋に入れとジェスチャーすると瑠奈が頷き中へと入りヒカルが扉を閉める。
「どうした?」
「教えるのうまいヒカルでも紬の頭に苦労してるところ。多分クラス4だね」
「そうなのか?」
「うん」
「えと、ちなみにどの程度とかなかったら」
「七割だね。筆記試験自体は簡単なんだよ。ただし1問だけ魔術を込めた難問があってさ」
「ああ。解読した後推理の必要がある。それから問題はその1問だけ全て違う」
「そうそう」
「ええ。そこでまた評価をするのよ。たとえ全問正解したとしても金、名声、階級で変わるのよね」
「そう。あ、種族は関係なしだよ。エルフやドワーフにも人の王家のような人達もいるからさ。そういった人達もその都市に来てるんだ。習いにね」
「エルフとドワーフにも王室が?」
「あるよー」
「ああ。ただエルフの王室については常に移動している」
「そう。幻の島マーセラスと言ってね。希少な鉱石とかも採掘される島でもあってね。ごく一部の国としか取引してないんだよ。ちなみにアストレイもその一つで担当はもちろんアルスラン将軍」
「ああ」
ミオが頷きヒカルが顔をしかめ部屋を出ると瑠奈が気まずく紬を連れ出てくる。
「だめだ。2週間後でも取れない」
「あー」
「なんで筆記テストなんてあるんだああっ」
ミーアがやれやれとし紬が頭を抱えた。
ーちなみに。
唯子のいる部屋で望が動く文字を見てさらさらと書いていくとすっとヒカルとハリーに向ける。2人が筆記試験の用紙を見ると頷く。
「うん。全問正解」
「ああ。難問の答えもあってるな」
「さっきの動く文字?」
唯子が尋ねるとヒカルが頷く。
「そう。でー、紬は分かりはするんだが、解けない」
「え」」
「妹は運動は出来るが勉強は壊滅的だ。俺が教えても右から左に流れていく」
「いや本当。はい」
「ああ。瑠奈には感謝している。渾身的に教えてくれたおかげでなんとか高校には合格できたからな。ただ、受けるテストは全て追試だった。卒業も危うく、瑠奈が入院中。瑠奈には苦労をかけたがモニターを通して教えてくれたから家族総出で瑠奈には頭が上がらない」
「…」
「あ、はい」
「ええと、紬ちゃん。そんなに酷いの?」
望がゆっくりと深く頷くと唯子が困惑しながらそうと答えた。
『…』
「えーと、ここの、数字を」
紬の勉強をラファと焔が見ておりラファがこれも分からないのかという顔をし焔がこれはこうと渾身的に教えていく。そして瑠奈がミオへと分からないところを教えており、ミオが話す。
「瑠奈」
「なに?」
「瑠奈は、帰るよね」
瑠奈が頷く。
「帰るよ。向こうにね」
「…ええ」
瑠奈がミオの頭を乱暴に撫で離すとふっと笑う。
「それまではいるし、離れても友達」
ミオが小さく頷きもじっとする。
「つ、むぎみたいな」
「はーまだかなあ」
「ど、どうして」
「ミオも私もお互い知らないことが多いからね」
瑠奈が自分とミオとを指さす。
「お互いにお互いのことや周りの事を気楽に話せるようになろう。ミオもまだ私に話さなかっことがあるでしょ?私もまだミオに話せてないことがあるから」
「ええ」
「あと、助け合い。大切な時の助け合いとか寄り添い合いとか。それができて忘れることができない間になったらそれは特別」
ミオが頷き瑠奈が話す。
「紬とは長いしお互い信頼しあってるのもあるから。ミオが信頼できてない分けじゃないよ。ただ、物足りない。その物足りなさ。阿吽の呼吸が必要かな」
「阿吽の呼吸?」
「意思の通じ合いだよ。何も言わなくても何をしたいかわかるような。私もだけど紬も何もお互い言わずでもわかる時があるからね。ミオはまだ私も分からないところがあるから。だからお互い話して知って助け合って行こう」
「ええ」
瑠奈が頷きなら続きと告げるとミオがええと返事を返し再び下を向き教材を見て行った、




