瑠奈3
「あなたも敬うこととかないわけ?」
家から移動し孤児院へときたアンナがフォークにナイフを持ち食事しながら明美へと話す。明美がため息をすると。
「嫌だったら食うなよな」
そう、明美の料理を食べにきた蘭丸が告げ、ステラがこくこくと頷き焼かれた肉を食べる。
「それとこれとは別よ」
「我儘だなあ」
「最初から知ってるわ。はいおかわり」
明美がステーキを置きその場を離れ他の女達が作る料理に指示出しする。
「しかしタイシがなあ」
「特別な存在ではあっただろう?」
「まあな。ただ、前の王が消してくれてたからな」
「前王のことについて私たちも気になっていたわ。でも人間の問題だから何もしなかったし、最終的に人間同士で終わらせたから良かったけど」
アンナがフォークに一口に切ったステーキを突き刺す。
「その奥様にはお会いする予定よ」
「前女王に?」
「ええ。ちょっとねえ」
アンナが不適に笑みを浮かべふふっと笑うとその場にいた子供達が話を止めると明美がすかさずきてアンナの頭を叩き注意し、アンナがムカムカしながら反論した。
ーへえ。
号外と配られた魔導局の広告をフードを被った青年が見ていたが突如腕が伸び肩に乗せられると鬱陶しそうに眼帯をしたランカスターを見る。
「何すんだよ。ん」
「なになに。古代国の末裔の姫が見つかった。そしてアルスラン将軍の養子」
「いふぁなくへぇ、いいだろいちいち」
口に肉菓子を突っ込まれた青年が肉を飲み込み告げるとランカスターの腕を払う。
「感想は?」
「何となく、そうだよなぁと、いう感じだな。向こうでもタイシは1人だけ違った。頭良すぎてやばかったし運動も出来過ぎ。とにかく何でもこなしてたから、出来ない奴らの嫉妬に飲まれたなあって。後妹がいるのは初めて知ったし」
「へえ」
「まあ、俺別クラスだったし」
「樹君いた」
メガネに三つ編みの胸が大きく動くたび揺れる女子がその場にくる。
「相変わらず揺れ激しいな」
「い、言わないでください」
「透華。アストレイに行こう」
「いいけど…」
「戻れるかもしれないからか?」
「そうだ」
「指令が入ったわ」
ショートカットの背の高い女が横頭を軽く小突きながらくる。
「指令?」
「姫様のために集まれよ」
「集まる?」
「ええ。待ち望んでいた事だから。あとどうせ行くんでしょ?」
「ああ。面白そうだし俺の相手も来るはずだからな」
「その、何度も言いますけどまだ」
ランカスターが透華の口に指を当てる。
「おっぱい猫ちゃんは黙ってて」
「…」
透華がその手を払う。
「おっぱい猫ちゃんじゃないです。心配してるんですよ。それに、おわったら終わったでどういきふぇ」
「透華よせ。俺たちには関係ない」
「その通り」
再び透華の口に指を当てたランカスターがその手を離す。
「広告はアストレイだけどマーリスとの事よ」
「ああ」
「なら行きますか」
「ていうかあんた張り出されてんじゃん手配書をギルドに」
「へーきへーき」
「もお」
「透華。気にしすぎないの」
4人が歩き出すと透華がため息をしランカスターが楽しく笑みを浮かべた。
瑠奈が気持ちよく寝息を立てる側でラファが立っていたが人の手がその足元から出ており、ゆっくりと下に沈み姿を消す。ラファが赤く光らせた目をまた元の目の色へと変えると眠る瑠奈を見下ろし頭をつけゆっくりと愛おしく擦り付けた。
ーマーリス
「なら私は行くわ」
女が樹たちへとつげると透華がしょんぼりとする。
「ジェシカさんがいなくなると寂しいです」
ジェシカが透華の頭を撫でる。
「はいはい。あと、またすぐに会うし私からあんたたちのことは話すわ。そうすれば必ず会ってくれるからね」
「はい」
「じゃあそれまでこの国にいます」
「ええ。ラン。あんたは助けてやった恩。忘れないでちゃんといなさいよ」
「分かってるさ」
ランカスターが肩をすくめジェシカがやれやれとし背を向け離れ去る。
「さてと、ランってっっ」
ランカスターが姿を消すと拳を握る。
「あの野郎っ。ジェシカいったらいなくなりやがってっ」
「もお…」
「くそっ。ほっといて宿探すぞ」
「ええ」
2人が移動すると透華が話す。
「樹君。ここまでは、流石に来ないよね?」
「わからない。とにかく常に交代で見張るぞ」
「ええ」
「ああ。あと、帰りたいというか、帰ったらどうしようかなと言おうか…」
樹が軽く天を仰ぎ、透華が不安な面持ちをする。
「私達の親、毒親だもんね」
「ああ」
「そこのでけえおっぱいの姉ちゃん」
透華が止まりかけるも樹が引っ張り歩くも少年がすぐさま立ちはだかり樹を指差す。
「おいこらっ。連れてくなっ」
「五月蝿いガキ。あとそんな馬鹿げた呼び方さんじゃねえ助平が」
「誰がっ!?」
「すまんな」
ガタイのいい男が少年の頭を殴り樹がしょんぼりとする透華を引っ張り連れていく。
「言葉を正せクソガキ」
「っのおお!俺はリックだあ!!」
成長したリックが声を上げるも再び殴られると男に連れていかれる。樹が視線を向け止まり透華が樹を見て先ほど男に連れて行かれるリックを見る。
「透華。さっきのガキ連れて行ったあの男見てくれ。ついでにガキも」
「うん」
透華が片目に手を当て外すと虹色に瞳が光る。
「どうだ?」
「黒。男の子は薄灰色」
「ならこそどろとかしてるガキだな」
透華の目が元に戻り、樹が頭をかくと透華が気まずくする。
「陸奥。追え」
樹の足元から薄い影が地面を滑ると2人が後を追った。
ーちくしょお。
男が乱暴に鎖をつけ檻の中へと放り入れる。
「たくっ。抜け出しやがって」
「うるせえっ。また抜け出してやるっ」
「やってみな」
男が離れ、リックがムカムカする。
「言ったな。見てろよ」
リックが隠し持っていたヤスリを使い手錠を削る。
「あのバカさえ邪魔しなけりゃおっぱいの姉ちゃんに助けてもらえたのにっ。そんで」
リックがにへらとすると不気味に笑う。それを忍び込んだ樹が鍵を回しながらしゃがみ傍観していたがリックが気付き汗を滲ませる。
「やっぱ助平なガキじゃねえか」
「違うっ。あと出せっ」
「やれやれだ」
後ろから透華が顔を出し他に子供達が顔をだし恐る恐る覗く。
「樹君。その子はどう?」
「怪我なし。兵士を呼んだ。行くぞ」
「って出してくれよっ」
「だそうだ透華。お前見てただろ?」
「へ…」
リックが固まり、透華が無言で頷くと子供達を連れその場を去る。樹が鍵をリックの手の届かない場所へと置く。
「そこで今までの行動含めて反省しとけ助平ガキ」
樹がそう告げリックのみ置き去りにした。
ーそこにいろよ。
子供達が兵士やギルドのもの達に保護される中、メルルが鍵を手にし膝を抱え頭を俯かせ深く落ち込むリックを見下ろす。
「あんたどうしたのよ」
「……くうううう」
「メルル。みんな保護した」
「ええ。ほらリック。出るわよ」
メルルが檻の扉を開けリックを出すとそのまま腕を握り引っ張り外へと連れた。
宿で透華が桶に張った湯を使い髪や体を拭う。そして別室で樹が小型のナイフを研ぐ側に小さな灰色の龍が浮かび見ていた。
「まだ終わらない?」
「あと一本だけだ」
「人が来るよ」
「はあ。陸奥。透華の所にいてくれ」
「うん」
陸奥が壁をすり抜け消えると樹が立ち上がりナイフをしまう。そしてノックが響くと樹がナイフを隠し持ちながら扉を開ける。そこにフードを目深に被り口を覆い隠した者が立っていた。樹が手に力を込めるも口を覆った布が外されタイシが顔を出す。樹が驚きタイシの足元を見てすぐに身を引き、タイシが素早く中へと入ると扉を閉める。
「俺じゃなかったら」
「そんなわけがない。龍がいる」
タイシがフードを外すと壁から頭だけを出した陸奥を見る。
「王子と黒龍様だ」
「俺は王子じゃないんだがな」
「陸奥。透華に知らせてくれ。あとタハマヤ一族の人とここに来たんだ。俺たちの協力者だ」
タイシが頷き、樹が安堵の笑みを浮かべる。
「良かった。どうあれ知り合いであの学校の同級生だ」
「ああ」
「あれからどうなったとかわかれば教えて欲しい。俺たち以外に売られて連れてこられた奴もいるのか?」
わたわたと服を着たが髪が濡れている透華がすぐに部屋へと来ると口をつぐみ涙を滲ませる。
「久しぶりタイシ君…」
タイシが頷き、樹がやれやれとしながらタオルを陸奥に渡し陸奥が透華にタオルを渡す。
「時間は?」
「ある程度は取れる」
「ああ。なら、重要部分だけ教えて欲しい。学校の連中、俺たちの親、俺たち以外に何人いるか」
「ああ。学校は廃校予定。誘拐も含め自殺問題が多く教育委員会と国が決めた。国立だからな。和田の親は離婚後自宅を売った後は音沙汰無し。中島の親は娘の売買や薬物売買によって逮捕されてまだ獄中だ」
「はあ」
透華が表情を曇らせる。
「お前達以外に分かっているのは五人。俺は別だ。俺は元々違う目的でここに連れてこられた。学校とは関係ないが、お前達は親か教師の独断で自殺や行方不明と扱われて売られた。家庭に問題があるか孤児という判断だ。そして、俺が知る5人のうち2人はお前達。後1人は音也で知人が保護した。残り2人について1人は売られた先の家族で家庭を持ってこの世界にとどまるという話だ。後1人は不明」
「その売られた先のは三浦だろ?俺たちもあって話をした」
「うん。三浦さんは目の前で院長先生がお金で売ったのを見たそうだから…」
「ああ」
「俺も聞いた。そちらももう人身売買によって逮捕されたし、孤児院は新たに立て直しになった」
「そっか」
「なら、向こうの馬鹿連中は大抵裁かれたってことだな。それだけ聞けたらいいし、後は俺たちは決めるしかないな。1人で向こうで生きるか。ここで生きるかだ」
「その、うん。でもその前に帰れるか…もかな」
「方法はある。ただ、決めるなら決めたほうがいい。向こうに帰ったらここには2度と来れない」
「だな」
透華が頷き、樹が話す。
「話が聞けて良かった。あと、なぜここに?」
「ああ。黒龍。紅蓮から聞いたからだ。紅蓮」
タイシの影から紅蓮が現れ姿を見せると陸奥が嬉しく飛ぶ。
「大変お久しぶりです。変わらずのご健在何より」
『そちらもだ』
「はい」
「前、俺が殺した竜の子供か」
「ん、ああ。そうそうそうだ。俺がまだ1人でいた時に休んだ洞窟で見つけた。最初はお互い警戒し合ったが、お互い様で今は一緒にいる」
「そう。そうしたら、エルム一族の方々が見つかったと知らせを受けました。そして、姫様の元に集まれと招集を受けたジェシカが行きました」
「そうだ。2年前に人型キメラに追われてたのを俺と透華が助けた。透華とは3年前に透華が捕まってたところを見つけて俺が助け出した」
「うん。その、貴族に売られて大きな檻の中にずっと着せ替え人形みたいにされて生きてたの。たまに触れられはしたけどそこまでだった」
「でも、その先でどうなるかわからなかったからすぐに助けて逃げた。ただ、そのせいで今も追われている」
「うん…」
「あと、俺もか。俺の場合はちょっと特殊な奴でな。害はないんだけどなあ」
「ない?」
「樹は樹に惚れた女に追われてるんだよ」
「はあ。あと、未開の地に住む住人だ。俺の場合は、未開の地の開拓者として他の奴隷連中と共に連れてこられた。あそこは魔獣がわらわらいるわ。毒沼に、毒草。そして地面の中に住む大型魔獣の巣窟。俺以外の大人と子供の内、子供は2人残して死んだ。俺や残り2人が助かったのはその女の母親が助けてくれたからだ。ただし、条件を提示された。即ち村にのこれと。そこの村が女傑族でな。男がいるが外の連中で多種族多様。でも、生まれてくる子はみんな女で同じ姿。そして俺の場合、その女の母親。族長の娘がぞっこん」
「うん。私も話聞いたら絶対に諦めないって」
「理由として、母親が助けたは助けたがその前に俺がその娘の方を助けたからになる。2人は隠れて難を過ごして助かっただけだ。あと、元英雄で手配されているランカスターはしってるか?」
「知っている」
「なら、あいつは大怪我負って未開の地に逃げ込んで倒れたところを俺が助けた。今は適当にこの辺りを彷徨いている」
「その大怪我の理由は?」
「ああ。聞いたというかジェシカさんが話をさせた」
「分かった。残りききたいことは?」
「それだけ聞けたらいい」
「うん…。ショックもあるけど、分かったからこれから先の事考えられる」
「だな。あと、タイシ。ここに来たのは理由もあってだろう?」
「ああ。もしよければだが手伝ってもらいたい」
「竜の国の関係で?」
「ああ。無理ならいい」
「流石にリスクが大きすぎるから俺には無理だ。透華は?」
「私はいいよ。追っ手をどうにかしてくれたらならいいけど」
「ああ。俺の方はまだ悪意あってじゃないけど透華の場合はそうじゃない。後透華は使えるし俺より強い」
「分かった。どうにかしよう」
透華がほっとし樹が頷く。
「ならよし。あと、ジェシカさんがここにお前の妹のことも含めてくる予定だ。お前がここに来たことは話してもいいか?」
「いや、なるべく伏せてもらいたい。ただ、透華もだごランカスターか。知られてそうだ」
「ランカスターのことは気にするな。透華はそれとなくジェシカさんだけに伝えるしジェシカさんは口が固いから信用していい。そしてお前が知られたくないのは妹にだろ?それでいいか?」
「分かった。それでいい」
「よし。なら透華。急いで支度しろ。お互い何かあれば龍がいるからすぐに現状わかる」
「うん」
「そうだね。なら、危険が起こりそうな場合は黒龍様、紅蓮様に伝えるよ。紅蓮様も宜しいですか?」
『ああ』
「急いでくれ」
透華がすぐさま荷物を持ちタイシの傍へとよる。
「すぐ逃げられるようにしてるからな。ならまた」
「うん」
「ああ」
タイシが透華を連れ姿を消し、樹がふうと息をつく。
「よかったの?」
「ああ。透華の場合はしつこいストーカーだからな。しかも危険を及ばせる奴だ」
「なら、タイシ様のところはやめておいたほうが良かったんじゃない?」
「いや。あいつがいうから問題ないだろ」
ノックが響くと樹が扉を開けノックした横塚を見ると横塚が警察手帳を見せる。
「なにそれ?」
「警察手帳。まじ本物?ていうかなんで?」
「私も元イーロンの奴隷だったの。色々な事情があってあっちに戻ってまたこっちに来たわけ。ジェシカから聞いたわ。後1人は?」
「別の奴が保護しました。あいつの方の追っ手は危険ですから」
「その別のやつは今村タイシ?」
樹が肩をすくめ何も言わないと口を閉ざし、横塚がやれやれとする。
「分かったわ。まあ、いなくても代わりに話してくれたらいいから。それから戻る手立てももちろんあるけどそのことも含めて話をしてもいい?」
「はい」
「ええ。あと、その子は飛龍?」
「違うよ。竜」
「はい。タイシにたおされた竜の子供です。旅先で知り合ってそれから一緒にいます」
「そう。陸奥っていう名前」
「日本の昔の地名です」
「ええ。わかった。なら入っていい?」
「どうぞ」
横塚が頷き中へと入りお互い先に座り横塚が向こうでのことについて尋ねていくと樹が答えていった。
ーわあ。
透華が目を輝かせ半獣達を見て回ると興奮しながらタイシを見る。
「ここはこんなにたくさんいるんだ」
「ああ。未開の地で見たのか?」
「うん。樹君の生活してた所にいたよ」
「ああ」
その場にレオ達がくるとヤンが透華を見るがゾッとし鳥肌を立て汗を滲ませる。
「あの女。何だ」
「え?」
透華がヤンを振り向き、ヤンがやや後退る。
「ええと」
「透華。何か召喚獣を持っているのか?」
「いや。違うよ」
『召喚獣と言っていいものかと思いますがね』
「見せてくれ」
「あ、うん。それと紹介しようと思ってたから」
透華が指の腹を切り血を下へと落とす。
「来て。リザルド」
血が五芒星を作り上げた途端その五芒星から鎖のついた巨大な骨の鯨に似た海獣が姿を見せる。レオが驚愕す?。
「な…」
海獣が高い声をあげ響かせるとレオ達が耳を抑え、タイシが片耳を押さえうるさく顔を歪める。そしてその目を赤くさせる。
「躾が悪い」
海獣が地面に叩き落とされ骨をミシミシと鳴らす。すると光が放たれその姿を変える。そして次に蝙蝠の翼をもつ赤目の男が牙を軽くむき出しにし苦しみながら唸る。
「…」
透華が無言で見下ろしレオが目を見開く。
「魔族」
「魔族?」
「ああ。魔素を多くその間に宿す一族だ。魔獣とはまた違う人種型の種族だ」
押さえ込みがなくなるとリザルドがなんとか体を起こしふらつき息を荒々しくする。そしてタイシを見る。
「リザルド…」
リザルドが身を固め透華がリザルドを覚めた目でみる。
「私は話したよね?」
「……す」
「話したよね?」
透華の足元の地面に亀裂が入るとヤンが青ざめる。
「すまない…」
「透華。ここを壊すな」
透華がやれやれとするタイシを見る。
「樹が話したのはそういうことか。お前の力が強すぎて相手を殺さないか心配だったんだな」
「…」
透華が腕を握り俯き、リザルドが安堵するも。
「お前も見下すなよ」
「…し、承知、いたしました。あと、大変、申し訳ございませんでした」
リザルドが膝をつき深くタイシへと頭を下げる。隠れていた半獣達が恐々と覗き、レオがヤンを見る。
「あの魔族かと思ったがタイシ様の知人の力が計り知れなかったから言ったのか」
「ああ……。恐怖でしかない」
「ああ」
透華がしょんぼりとしタイシが話す。
「それでどうして魔族を従僕にしたんだ?」
「その、好きでしたわけじゃないの。最初は樹君。樹君を好きになった子の元婚約者がリザルドだったの」
「…」
「ああ」
「それで、婚約者をまた振り向かせるために樹君を殺すために襲いかかって来たのを私が。それでリザルドの一族の掟とかで負けた者は勝つまで従僕となるか。もしくは一族の権利を失うかの2択を決めないといけないらしくリザルドは失いたくないから私の従僕になったの」
「…是」
「なるほどな。あと、樹を追ってるのは魔族に近い種族か」
「うん。リザルドみたいに蝙蝠みたいな翼をはやしてるの。向こうだと、インキュバスみたいな感じの子だね。長い尻尾を生やしてたから。リザルドにはないけどね」
「ああ。あと女傑一族と聞いたがそうじゃないのか?」
「ううん。それはあってる。ただ、長同士の子供に関しては扱いが違って婚約関係を結んだりするって。ちなみにリザルドのところは相手が誰であろうとも関係ないって」
「子供は?同じ姿で生まれると聞いた」
「ええと、多分姿はそう変わらないから」
「私達は近い血を持つので、子供だと多少変わります。あとは強い力を持つ血を持てば上手く混ざり合います」
「だって」
「ああ」
リザルドが頷くも透華がしゃがむとぎくりとし油汗を滲ませる。
「勝手なことしないでね」
「御意…」
「うん。タイシ君ごめん。話してはいたけど」
「いや。レオ。俺も少し魔族について話は聞いたことはあるが当時はどうだった?」
「はい。まず、交流がございました。しかし、レーガンによる国の破壊によってそれも自然と絶たれたようです。彼等は私たちが未開の地と呼ぶ危険で足を踏み切れない場所の者達の住人。ただ、彼等もまた私たちが暮らすこの場所へと入ることができない住人でもあります。理由としまして、種族。その姿を人は悪魔としか認知されないからです」
「教会だな」
「はい」
リザルドがぽつりと話す。
「もともと私の祖先は人とお互いに手を繋ぎ合っていれば人との子を産み家族となり生活を共にすることもあった。命の時間はやはり人の方が短いが我々もまたそれに近い寿命の為寂しさも少しで済んだとの話を祖父の代から聞かさられた。人との交流がなくなったのはそちらの話通りレーガンというラファエルの弟子が国を変えてしまってからになる。国が変わりアルスマグナが眠りについたあと、その他の国が祖先達へと突然敵意を向け戦を起こした。祖先達は人に負けたあと、未開の地のさらに奥深くまで逃げこの地に足を踏み入れることのないよう今世まで過ごしている」
「えと、未開の地のさらに先に私と樹君とランカスターさんがいったんだ。リザルドの案内で。それでリザルドのお父さんと話をしたの。ランカスターさんは蘇りで蘇って、私達は異界人という事で特別に村に入ることを許されてお話聞いたんだ。そして、彼等もまたこの世界との交流をしたいって」
「はい…。やはり、あちらでの生活は私たちにとってもこちらよりも危険ばかりが多くあります。ここでは竜たちの加護により守られているので私たちのところと比べますと安全です。私たちの暮らす場所は深い霧により日の光は無く常に薄暗く冷え切っており、村の結界の外に出ると凶悪な魔獣たちが私たちを餌にするために常待ち構えております。そのせいでまだ何もわからない子供らが犠牲になることもございます。元々私たちの祖先はこちらで暮らしていた。なのでまたもう一度お願いしたいのです」
「ならなんで始めにああしたの?」
「た、試したく」
透華が威圧をかけるとリザルドが項垂れていく。
「2度としないでくれる?」
「是…」
「うん。あ、タイシ君。私はどうしたらいいかな?」
「ユリアーナの元にいてくれ」
「うん。分かった」
タイシが頷きこっちだと案内した。
マーリスー。
「こちらのお色が合うわね」
「もう少しうすいほうがどうかしら」
「こちらの首飾りは?」
「そうね」
ドレスにアクセサリー、そして化粧品や靴が揃う部屋の中心で瑠奈がその場に気まずく座っていた。そして傍に紬がいたが。
「マレーネが髪飾を持ってきたわ」
「そこに置いて」
「また来た」
「次から次に…。一体どこにこんなに隠してしまい込んできたの…う」
「あちこちですよ」
化粧係の女性がパウダーを瑠奈につけていく。
「サラサ様が来られたわ」
「まあ」
その場に小柄の女が中へと入ると周りが頭を下げ、アンナが瑠奈へと話す。
「土地の竜の一体。サラサです」
「ああ、なら。あの時にいた小柄な緑の龍」
「…はい。お初にお目にか、かります」
アンナの圧により若干言葉が止まったもののぺこりと頭を下げ挨拶をする。
「護衛としてお側につかせていただきます」
「ええ。ラファより心強そうだからよろしく」
『なっ!?』
ラファがそう声をあげがくっと頭を落とすとアンナがふふっと笑う。
「その、ラファ様の方がお強いのですが…」
「強いけど本気出してないしまだ器用なことできないようだからちょっとね」
『ちょ、ちょっとねってっ』
「まあまあ」
紬が手をあげさげする。
「瑠奈様。お知り合いの女性の方がジェシカがお話しされた殿下の知人の男性を連れて来られました」
「別室で待機をお願い。まだ瑠奈様はご支度が終わってないからまだお会いすることはできないから待たせてちょうだい」
「かしこまりました」
女が離れ瑠奈がもうとため息を吐いた。
ミオが目の前の龍を肩に乗せた樹へと頭を下げサイモンが話す。
「なんとなく、タイシ殿に雰囲気が似ておられますね」
「そうですかね。俺はあいつみたいな特殊人間じゃないですけど。あと、聖女の娘が旅をしていると話は聞いたことあります」
「どのような話をですか?」
「だから、旅をしているだ。話わかってる?反射で言ってる?突っ込んで聞いてばかりしてない?それ結構迷惑だからな」
ミオが項垂れて小さく頷く。
「聞こえなかったらならいいけどな」
「聞こえました…」
「ああ」
横塚がやれやれとする。
「そうすぐすぐ改善されないものね」
「お待たせしました」
横塚たちが振り向くと白いサテンのさらりとしたドレスを着た瑠奈が顔を赤らめ来る。
「へえ」
「それが古代の国の姫衣装ですか?」
「はい」
「タイシの妹かあ」
「あ、えーと、はい」
「戸田樹。ばか施設長と馬鹿教師と馬鹿親たちのせいでこっちにきたんだ」
「散々ですね…」
「ああ。いや、あいつと似てはいるけど顔立ちとかいいな。目鼻立ちもしっかりしてるし」
瑠奈がやや照れくさくし、樹がじいと瑠奈を見ると女が話す。
「目鼻立ち以外に綺麗だとか」
「そう言ったのは」
「化粧が濃いな。あと姫衣装とはいえ、化粧とその衣装と髪もあってない」
「え?」
横塚がやれやれとしサイモンが話す。
「そうでしょうか?」
「それ」
「え?」
「見てすぐにこれが姫衣装かとかしか思わなかったでしょ?それじゃ駄目なんですよ」
「あーえーと」
「なあ。タイシ妹」
「瑠奈です。はい」
「なら、瑠奈ちゃん。俺触っていいならやり直す」
女性たちが驚き、横塚が話す。
「彼、スタイリストになりたかったそうなの。でも、親からも反対され教師からは気味悪がられ、施設長からは金にならないで売られたそう」
「本当散々ですね」
「ありがとうまさにその通りだ。くその大人どものせいで散々だ。あと」
陸奥がそばへと来ると支払い箱を出して見せる。
「やるならもちろん金。ただし、後からでいい。気に入らなかったら払わなくていい」
「ええと」
「私から。彼の腕は保証致します」
ジェシカが告げると周りを見る。
「ここだと、男が女性の髪や顔。特に貴族から上は抵抗があってあまり施術を出来る機会がありませんでしたが、最近ですとマハラ国の女王がお忍びで城下町に来られていた時に施術されて大変お慶びになり、今度は孫の挙式での施術をと願い出されております。後日尋ねる予定です」
「ああ」
「あの小さな国の」
「でも女王陛下はとても流行りに敏感な方でおしゃれな方よね」
周りが口々にいい、アンナが話す。
「そこまでなら、まず私からいいかしら?」
「私も。毛先気になる」
「ああ」
「龍なのに気になさるとは。なんだかおかしな話ですし、毛先なんてありましたか?」
サイモンの右頬に石の礫が掠るとサイモンがどっと汗を滲ませかたまるとやれやれと陸奥がサイモンの元へと来る。
「龍はどんな姿でも外見をとても気にするから。僕もそう。樹に爪とかも全部整えてもらってるから」
「ああ。あと、雄の龍もそうですから。だから全ての龍は服装から姿まで整っているんです」
「ええ」
「次、注意しなさいよ」
「…はい」
「ならサラサからしよっか」
サラサがええと頷く。そして、陸奥が革製のバッグを出すとその中へと手を入れ鋏などの道具を次から次に取り出しテーブルへと並べる。女たちが驚き、サラサが布で巻かれながら話す。
「女神の鞄をどこで手に入れたの?」
「未開の地で。切るぞ」
「ええ」
「化粧は?」
「なら少し」
樹が頷き櫛とハサミを使い手際よく迷いなく髪を切った。
30分後ー
毛先が綺麗に整われ、薄く化粧を施されたサラサが鏡で確認しながら頷き樹を見て陸奥がもつ支払い箱に金を入れる。
「満足」
「どうも」
「なら、私は化粧もいいかしら?ヘアアクセはここにあるもので」
アンナが告げ樹が頷いた。そしてアンナがハーフアップにされヘアアクセに置かれたピアスを手にし見ていく。
「これだけか。陸奥」
「はあい」
陸奥がバッグから貴金属を出し、石を出すと樹へと渡し樹が指を当て金属を変形し形作る。サイモンや周りが驚きアンナが話す。
「錬金術ね」
「その通り」
「ええ」
「すごい」
「ああやって新しいものに変えていくやり方は初めて見たわ」
「錬金術も細かな作業は可能よ。ただ、相当集中力はいるけど」
樹が枝の耳飾りを作ると宝石もまた加工した後、耳飾りに散らばせアンナの耳に取り付ける。そして化粧をし鏡を見せる。
「まあ」
アンナが目を輝かせ、樹が話す。
「水の龍だから海の中をイメージして作った」
「ええ。気に入ったわ」
アンナがニコニコしながら陸奥の持つ箱へと札束を入れる。
「どうも。で?」
「ええ。瑠奈様。どうなさいます?」
瑠奈がやや苦笑する。
「じゃあせっかくなので。してもらった後に悪いけど」
「いえいえ」
「お気になさらず」
整えた女たちが話し樹がならどうぞと椅子を向け瑠奈がぺこりと頭を下げ椅子に座ると樹が早速瑠奈の毛先を見て布を瑠奈に巻き毛先をカットし髪を整えた。
ーるんるん。
玄海が楽しく通路を歩く。そして部屋の外にいるマルクールの元へといくと賑わう中の声を聞く。
「賑わってんなぁーと。おっつー」
「どうも。なんだ?」
「ああ。お姫さんたちに会いに」
「そうか。ところで」
マルクールが指差す先にお互い睨み合うニーナと玲花がいた。
「イーロンが作ったそっくりさん?」
「おしいー。姉妹」
「いたのか。でも仲悪そうだな」
「あはは。途中までラダン来てたけどうるさいからって逃げた」
「だろうな」
「ああ。後中いいか?」
マルクールが頷きノックをする。そして女が顔を出す。
「瑠奈殿に会いたいとのことだ。玄海」
「ああはい」
「来たわね」
横塚が顔を見せると玄海が手を挙げ玲花がむすっとし横塚を見る。
「ちょっとなんでいるのよ」
「いるからよ」
「中盛り上がってるなー」
「ええ。話した男の子よ。中いいわ」
横塚たちが身を引き、玄海が中へと入る。そこに桃を主張した薄化粧に黒髪の横側を編み込まれ、すずらんの髪飾りをし、白いパールのイヤリング。細い金の腕輪に首飾りをした瑠奈が座り、その瑠奈を樹が化粧などのチェックをしており玄海が目を丸くし瑠奈が玄海と目を合わせる。
「この美人さん誰だ?」
瑠奈が瞬時に顔を赤くさせ、樹が玄海を振り向くと玄海が瑠奈に気づきまじまじと見る。
「瑠奈ちゃんか。その髪型と化粧いいじゃん。誰にしてもらった?」
「あんた意外とまともに褒めんのね」
「えーそうか?」
樹が恥ずかしく俯いた瑠奈を見下ろしふむと考える。
「これくらいでいいか。分からなくなるとだしな」
「君がしたのかー。いいじゃんいいじゃん」
「どうも」
アンナがはいと再び札束を陸奥の持つ箱へと入れる。
「これ瑠奈様の仕上げ代ね」
「ねえ。よかったら私もお願い」
「私も。髪もよ」
女たちがわいわいとしていくと樹が話す。
「なら順番で、瑠奈ちゃんの付き添う人から先にする。決めてるんだろ?」
「勿論。ジェシカもその1人よ」
「ええ」
「親衛隊副隊長でしたからね」
「そう。私は恥ずかしくない程度の軽めでいいわ。護衛だから」
「はい」
「後も軽めで」
「ええ」
「アンナ様そんな」
「この度は姫様が主役だから。いいわね」
女性たちが頷き、サラサがやれやれとした。
「こりゃ話はまだ無理そうだなー」
玄海が忙しく化粧を施す樹を見て隣に座り恥ずかしくする瑠奈を見てニコニコする。
「化粧とかしないほうだろ瑠奈ちゃん」
「あーまあ。ええと、ところでどうでした?ヤンガルは」
「ああ。おかげで面白いのを見つけた。それとさあ、今度あのじじいに案内させないでくんねえ」
「なんでですか?」
「いや、瑠奈ちゃんに話して」
玄海の頭を後ろからルイスが冷ややかな視線を向け掴む。
「…こうあるから」
「よくわかりません」
「そちらの男は彼の弟子ですよ」
ルイスが鼻を鳴らし、アンナがふふっと笑う。
「彼はここでは諜報部員を育てる役目をしているのです。あちらの世界もですが、この世界の情報を常に得るための人員作りを。その為にはやはり強くなくてはならないので彼が鍛えてるんです。後は学習もです」
「…」
ルイスが頷き玄海から手を離し玄海が口をつぐませる。
「ちなみに材料はイーロンからのご購入だ。俺とかもそう」
「その購入後も危険なのよね」
ルイスが横塚へと視線を向け横塚が話す。
「敵派閥による襲撃があったりするから。私はその襲撃にやられて結構危険だったけど起きたら東京の病院だったのよね。本当なぜ?そして誰が運んだのか全く分からない」
「そうそう。俺てっきりキラリちゃんが死んだかと思ってめっちゃ悲しんっ」
横塚が限界の足を踏み捻る。
「苗字で呼びなさい」
「いいじゃんかあ。俺らの仲だしさあ」
「知るか」
「ルイス。あなた姫様のエスコートする?」
瑠奈がややどきっとしルイスが頭を振る。
「いいえ。私では務まりません」
「そうかしら?いいと思うのだけど」
「いえ」
ー…。
「ならー」
「望ちゃんは?」
「んー、まあ、彼はレーガンの子孫でもあるし妻子持ちでしょう?」
「妻子?」
「え?子供?」
玄海、瑠奈がぽかんとしアンナが話す。
「そう聞いたけど?」
「ダリス枢機卿でよろしいかと思われます。姫様の保護責任者として預かっておられる方ですから」
ルイスが話し、アンナがふむと頷く。
「そうね。後彼も来る予定だしそうしましょう」
「はい」
瑠奈が小さく頷くとふうと僅かに息をつく。玄海が瑠奈、そしてルイスと視線を向けふむと考えた。
ー子供。
「いるがまだ唯子の腹の中だ」
紬がぽかんとしミオが驚き望が話す。
「話してなかったな」
「いや本当そぎゃんよ。え?いつ?何ヶ月?」
「3ヶ月だ。まだお父さんたちにも話していない。どうやって知った?」
「アンナさん。龍」
「ああ、なら、色々知ってそうだし心をよんでいそうだな」
「あー」
「全然知らなかった…」
ミオがややショックを受け、望が話す。
「すまない。唯子も初子ということで何かあった時に言われるのが怖いということだった。安定期になるまでは黙っておこうと決めたんだ」
「そぎゃんね。やっぱり不安だもんね。うちの知り合いのお姉さんもそぎゃんでね。流産とか怖くて人に話すのは後にしようって話とったらしか」
「ああ」
ミオが頷き望が話す。
「なので生まれる前までに終わらせたい」
「そぎゃんなあ。産前産後の恨みは一生言うし」
「そうなの?」
「うん。まあ、うち達はまだ経験しとらんけん分からんけど、うちのおかんとおばさん達は常に恨んでるって話とったね。定年退職したら別れるって言うおばさんもおらすとよ」
「警視庁内でもよく話があるし注意しろと言われたいる。いまは昔と違って休みもある程度取るよう言われているからその時は休めと言われた」
ミオが頷き、紬が話す。
「ま、うち達はその時だけん。後兄さんが間に合うよう手伝えるところは手伝おう」
「ええ」
「なら、紬。俺はしばらく留守にする」
「へ?」
「ダンガンさんと横塚さんとここにいると言う場所を回る。その時にだ。俺がいない時に、だ」
紬がどきっとし、望が圧をかける。
「騒動を起こし人様に迷惑をかけるようなことをするな。そして瑠奈を無視するな。いいな?」
「り、了解」
「ああ。なら、悪いが横塚さんを呼んで支度していく」
望がその場を離れ横塚の元へと向かう。
「こわかあ」
「でも紬が悪い」
「……うー」
「久しぶりにあの人数は流石に疲れるな」
紬達が望の後をおう樹を見る。樹は2人を通り過ぎこちらを見る横塚達と合流する。
「もう全員終わったとかな?」
「いや話するから一旦休憩ー」
たっぷりの札束が刺さった箱を持つ陸奥がホクホクしながら通り過ぎる。
「すごい儲けたなあ」
「うん。見てみよう」
「あ、うちも」
2人がその場を離れ瑠奈達のいる部屋へと来る。そこに、樹に化粧や髪を整えられたもの達が和気藹々としながら話しており、瑠奈がラファとアンナと何か話していた。紬がミオと共に中へと入り瑠奈に近づく。
「瑠奈ー」
「ええ。ごめん待たせて」
「よかよー。パーティばってんダンスとかもすると?」
「ダンスはしない」
「ええ。今回はお披露目だから厳かにするのよ」
「厳か…なんだ」
「格式を大切にした式。つまり、向こうだと茶道とかちゃんとした動作や礼儀を行ってすること。その格式に背いたことはしないと言うこと。今回は座っての披露宴を行う予定。発足人はアンナ達龍」
「ええ。協力者はこちらの王よ」
「そう。この間の人型キメラの襲撃とかを解決してくれたから。あれから一度もキメラが来ないって話」
「瑠奈様が事前に人に戻されたりもされたから数がぐんと減ったのよ」
「いつの間に」
「夜の内にキヨさんとしたの。昼は人が多くてそっちに行くけど夜だと少なくなって的を絞るから。だから狙ってくるなら夜の方が都合がいいから夜にキメラの数を減らしたの」
「でも、それって瑠奈の血ばつかったとだろもん」
「そう。でも、私のも限界があるから私の血に近い戻すための特効薬や術を魔導局が急ピッチで作ってるところ」
「そぎゃんか」
「そう」
「姫様。ダリス枢機卿が到着されたと連絡がありました」
「はあ。なら行こう」
アンナがはいと返事を返し紬が頑張れとミオと共に告げた。
ーあれからまだ忙しさを理由に会っていないな…。
ダリスが瑠奈と共に会場へと向かっており瑠奈がダリスを軽く見て話す。
「ダリスさん。疲れてるところ付き合っていただいてすみません」
ダリスが頭を振る。
「いえ。あと、考え事をしていただけです」
ー考え事…。
「あの、睡眠とか取れてますか?あと、私なんかの為にそれで」
「いえ。瑠奈殿といる方がまだ気が楽ですしゆっくり出来ます。あちらにいる方が気が重いですし、煩わしくありません」
「枢機卿。あまりそのようなことは」
「別に問題ないでしょう誰もいませんから」
後ろにいたハリスへとそう答える。そして付き添うサイモンがやや驚く。
ー以前はこのような事はなかったのですけどあちらに行かれてかわられたんですね。
「タイシ殿とはあれからは?」
「何も音沙汰なしですよ。あとすみません。あんなバカ兄の事気にかけてくれて」
「いえ。こちらも何度も助けて頂いてますしあちらでもいろいろ面倒を見て貰いましたから」
「そこまでとは思いますけど…」
「いえ。おかげで多くのことを学べました」
「それは何より」
ダリスがいらっとしその先にはキヨが巫女服で立っていた。
「その服は…」
「私の正装だ」
「えー、あちらの神官の服で巫女服といいます。白衣は神の補助役として務めていると言う意味の色で、赤は悪い物を祓う色と言われています」
「その通り。しかし瑠奈みたさに各国集まる集まる。広報係によるものとは言え、要人達が大勢居るぞ。中にはダリス。お前と同じ枢機卿もだ」
「え?」
「そうでしょうね」
サイモンがダリスを振り向き、ダリスが話す。
「何か吉凶でもあったのですか?」
「いや。その予言。これから起こる吉凶はここに来て分からなくなった。ただ、嫌な匂い。気配がするのは以前に増して強まった。私としては予言が消えて少し心がすっとはしたな」
「そうですか」
「ああ。そして、まあ、深い闇などではないがそれでも良い気がない者たちも多い。龍がいるのでそれは龍たちもわかるはず」
アンナがくすりと笑い、サラサが頷く。
「ええ」
「もちろん。あとその服派手ね」
「派手でも瑠奈の可憐さには劣る」
「かかか可憐ではないですからっ」
瑠奈が顔を真っ赤にし、キヨが手を振る。
「なんの。さて、私は先に会場へと入って兄の隣にいる」
「とんでも無く迷惑ですね。アルスラン殿が」
「おや。兄は寛大な心を持っているから問題ない」
キヨがにこっとし、ダリスが笑みを崩さぬようしているが苛立っていた。
ーこのような枢機卿を見るのは初めてだな。
ーキヨ殿とあちらで何があったのだろう。
「では私はこれでだ。失礼するよ」
キヨがその場を離れ去るとその後を隠れるように待っていたアルスランの部下たちが追う。
「将軍の部下の方」
「警戒ね」
アンナが話、サラサが告げる。
「私たちが苦手な物を持ってきてる連中がいる」
「龍殿たちが?」
「ええ。その為に伝えに来たようよ」
「それ声に出して問題ない?」
「はい」
「ならいいけど」
瑠奈の足元からラファが姿を見せると瑠奈がすぐさまその頭を叩く。
「いえ」
『ひどい』
「いや酷くないし。場所提供しているのは私」
『その場所で我慢しているのに』
「あちこち行けてるのは誰のおかげ?」
ラファがダンマリとし瑠奈が圧をかける。
「あちこち見れるのは誰のおかげ?」
『次から言います…』
「当たり前」
『…なんだか腹が立つ』
「なんか言った?」
ラファがむすっとしながらいえと答える。
ー以前の契約者たちと違う表情をなさるわね。
「偉そうに」
アンナがサラサを振り向く。
「姫とは言え人。なのになんでそんな白様」
「名前はラファ。嫌なら向こうに行きなさい」
「…」
「嫌なら向こうに行って」
サラサが口をつぐませ、瑠奈が見下ろす。
「なに?」
「…」
「何?」
「…何でもない、です」
「ならどうするの?」
「一緒、行きます」
アンナがふふっと笑い瑠奈がはいと頷き待っているダリスと先へ進む。
『瑠奈は強いですからね』
「ふふ」
「意地悪」
「強くて意地悪なお姫様はいい事よ」
アンナが答えるとサラサが不貞腐れラファがまあそうですねと頷いた。
ーいやあ。
化粧や髪などの支度が全て終えた支度部屋では樹と陸奥のみしかいなかった。その中で陸奥がほくほくしながら札束を数え、樹が道具の片付けを行う。
『暫く食べるのにも休むところにも困らないね』
「ああ。あと陸奥。前話した仲間を見つけたら俺と離れるか考えるって話しただろ?どうするんだ?」
『うーん。暫く忙しそうだし、まだ僕も樹のとこいたいから一緒にいるよ』
「分かった。ならこれからも頼む」
『うん。よろしくー』
樹が拳を向けると陸奥が手を向けお互いにこつんとぶつけ合わせる。
「あいつから何か話はあるか?」
『うん。パーティの様子を見せて欲しいって』
「分かった。なら、俺は言われた部屋に行って手入れするから行ってこい」
『分かった。なら行ってくる』
「ああ」
陸奥が札束をバッグへと入れ部屋から出ていく。そしてパーティ会場へと姿を消し入るとゆっくりとその目で誰かに見せるかのように見わたす。その様子をタイシが紅蓮の力を借り水晶を通してエルハルトと共に見ていた。
ー疲れたな流石に。
樹が欠伸をしながら部屋の中へと入るも足を止め呆れる。そして壁に向かいすぐさま何かを掴もうと動くもからぶる。
ーふふふ。
上から声が響くと突如緑の髪に黄金色の瞳。蝙蝠の翼を生やした女が姿を見せる。
「さっすがいつきい」
女の体に紐が巻き付くと今度は布が巻きつきそのまま落ちる。
「ちょっとこらっ」
「人が疲れてんのに出てくんなこら。あーくそ」
「なら癒してあげる」
「却下。先風呂入るわ」
「ちょっとっ。こら解きなさいよ樹っ」
樹が無視をし扉を開け用意された風呂桶のある部屋へと入り、女がこのおと声を上げじたばたと悶えた。




