瑠奈2
ーええっ。
『どうしてですか。瑠奈が危険な目にあってるかもしれふぁ』
ラファの口をキヨが抑える。そこはラファが運んだ街から離れた森の入り口でキヨがラファの手を離す。
「瑠奈が眠った時に聞いたことがない言葉や古の竜ローレライ等声に出していたから気になっていた。ラファは知らなかったか?」
『……』
ラファが右、左と頭を振り項垂れる。
『眠ってました…。知りません』
「ああ。ちなみにローレライは?」
『はい。私たちの父にあたる始祖の龍です。ラファエルが私たちを作るための材料にした巨大な獣の骨になります』
「骨か。なら、その骨の遺伝子を用いてお前達は作られたのか」
『遺伝子というのはいまいち分かりませんが、私たちの父であるとラファエルが結晶化された骨を見せてくれました』
「ああ。ちなみにその骨は?」
『分かりません』
「そうか」
『はい。それより瑠奈』
「必ず戻るからここにいるぞ。あと、お前はまだ隙がありすぎるな」
『そ、そ、そう、いわれ、ましても…』
ラファが頭を下げ激しく落ち込みキヨが私も言えたものではないかとやれやれとした。
ーリズ。
青い瞳にアッシュブランドの髪を腰まで伸ばした色白の女が白い杖を持ち兵士の服を着たブレイズに近づき目の前に立つ。
ー来てくれてありがとう。
ーいや。王室の仕事はどうだ?
ー退屈。ずっと扉の見張りばかりだから退屈ね。あなたは?
ーいつも通りか。訓練をして、見回りをして終わりだ。
ーでもあなたはご親族でしょう?
ー親族でも遠縁になる。
ーいいじゃない。あなたは長く生きていられるわ。でも私は短命よ。
ーその。
ブレイズがしどろもどろとし、女がクスッと笑い離れる。
ーあーあー。どこかの誰かが、何かを、話してくれたらいいのになー。
ーそれは、その。
ー今度の遠州。帰ってきたらお話待ってるわ。
ブレイズが僅かに顔を赤らめわかったと答え、女がふふと笑いやわらかく笑みを浮かべた。
ー私の中にエレノアがいる。私の前のエレノアが。私がいる。
瑠奈が眠らせたブレイズを抱き座っていたがはあとため息をする。
「なんでかなあもお……」
瑠奈がブレイズを見下ろす。
「約束して、殺された。その前も、待ってると言われて」
瑠奈がブレイズの頭に頭をつけ表情を曇らせる。
「今の私はエレノアの生まれ変わりだから…」
「事実ですか?」
瑠奈がドキッとしすぐさま声が聞こえた方角を振り向きルイスを見て汗を滲ませるとルイスが駆け寄り膝をつき辺りを見る。
「それが事実なら危険です」
「え…」
「彼女について、私も知っております。ブレイズも連れてこの空間からでましょう」
瑠奈が頷き、ルイスがブレイズを抱き上げると瑠奈も慌てて跡を追った。
ーきたな。
キヨがすぐさま立ち上がりラファが安堵し突如現れた空の亀裂を見る。そして瑠奈とブレイズを抱いたルイスが姿を見せるとラファが飛び三人を乗せキヨの元へ届ける。
「これが話していた赤髪が」
「あ、はい…」
『私がいながら…』
「いや。別にいてもいなくても問題なかったからいいよ」
ラファがショックを受け再び激しく落ち込む。
「そして」
「話がしたい。緊急で。ただ、この場所からも」
軽い音が響くとルイスが電撃を放ち両刀を持つ男のその攻撃を受け止め弾く。男が中で回転し着地する。その姿はやや小柄で長く伸ばした黒い髪を結び青い目をこちらへと向けており、持っている刀を握りしめ構える。
「エレノアか」
ルイスが舌打ちし、ユリアーナ達の父親が笑みを浮かべる。
「まさかその生まれ変わりとは」
瑠奈が顔をしかめ、キヨが話す。
「瑠奈」
「三大老の1人です…。あと、どーしてエレノアが殺されたのか理解しました」
「あの時はあの娘を殺さなければと後悔はした」
「…でしょうね」
「何か重大なものを持っていたのか?」
「ああはい。持ってますね。ルイスさんは知ってそうですけどなぜです?」
「ラファエルが教えてくれました」
「やはりか」
男が拳を握る。
「ラファエル。奴のせいで何もかも失った。そしてレーガン。ラファエルの弟子が」
「弟子」
「弟子だったのか。なら、その弟子の子孫達が後ろにいるぞ」
黒髪の男が紬の刀を受け止め、望の刀をユリアーナの父親が結界を使い受け止める。
「紬気をつけてよっ」
「分かっていたあっ!」
紬の腕からパッと血が出ると瑠奈が呆れ声をあげる。
「だからいったたい!あとそれですぐ」
紬が刀を鞘にしまい男が構える。だが目の前に紬の拳が現れると殴られ吹き飛ぶ。
「な」
ユリアーナの父親が思わず声を出し紬がゆらりと揺れ拳を握り炎を纏う。
「いたかたい…」
瑠奈が顔をしかめ、キヨが抱きついた震える颯を撫でる。
「キレた…」
「キレたらどうなる?」
「はい。見境なくなるんですよ。一回暴走族がうちにけしかけてきた時にキレて全員病院送りです。望さん含めて色んな人から説教されて相当落ち込みましたね」
「そうか」
熱が伝わると瑠奈がさらに顔をしかめ、キヨ達がブレイズを見る。そのブレイズはユリアーナの父親を睨みつけ殺気立っていた。ルイスがすぐに瑠奈をだき、キヨが楓と共に離れラファがまってえと瑠奈を抱き避難するルイスの後を追う。
ーここまで力はなかったはず。
ユリアーナの父親が冷や汗を流しブレイズが赤い炎を圧縮し青い炎の球体へと変わる。
「エレノアを殺したのは貴様か…」
ルイスが止まりルナが降りる。
「どいつもこいつもキレまくって」
「エレノアはブレイズと婚約しかけていたと聞いておりますから」
「はい。ただ、その婚約が成立する前に殺された。ロレンシオ自ら手を下した」
ルイスがやや驚き、瑠奈が話す。
「求婚を断ったんですよ。ロレンシオもエレノアの事を気になされて自分の愛人として迎えようとされていたみたいです。その時正妻は病死とのことでしたけど、多分。ロレンシオが殺害したと思います」
青い炎が辺りを包み込む。ラファが汗を滲ませキヨがやれやれとする。
「よく燃えるぞ」
「…摂氏温度1万ほどですからね。青い炎は」
「一万か」
「燃えてきたあ!!」
瑠奈が頭をくらりとさせキヨがやれやれとし赤い炎を纏う紬を見る。
「あのバカ紬は…」
「のりにのりまくるな」
「ご友人関係を考えられてはいかがですか?」
「あーいや、根はいい子ですから…。つむぎいいいい!!!!」
瑠奈が大声を上げる。
「もおおいいからあああ!!!」
紬がわずかにちらりとむくもまた顔を前へと向ける。
「あれは聞こえているな」
「こっらああ!!!!やめんかあああ!!!!」
青い炎と赤い炎が一瞬で消え去るとブレイズが驚愕し、紬が目を丸くする。そして一つの刀に炎が吸い込まれると望が冷ややかな視線を向ける。紬がビクッと震えブレイズがぞくっとし青ざめ、ロレンシオが鳥肌を立てる。
ーレーガン。
望が消えブレイズの背後に立ちその首に手刀を当て卒倒させると再び消える。そして紬が消えると瑠奈が両手を向け気絶した紬を受け取る。
「このバカを見ているように」
「はい」
「逃げたぞ」
望が消えたロレンシオの後を見る。そして、同じく消えたブレイズがいた場所、紬に殴られた男の場所を見て紬を見ると首根っこを掴む。
「連れていく。まだ本調子じゃないようだから気をつけるように」
「はい…」
「ああ」
望が紬を肩に乗せその場を離れ去っていく。
「一瞬でしたね」
「はい」
「ふふ。あちらでも最強でこちらでも最強ときた」
「ですね」
「ああ。そして、ルイスだったな。落ち着いたから聞くが何しにきたんだ」
「エレノア。そして欠片の事で話をしに来た」
「なら、その話は何処で私も同伴して聞いていいか?」
「ああ」
「よし」
「ええと、それよりブレイズ、さん。誰に連れて行かれましたか?」
ルイスが頭を振るとキヨを見る。
「聖獣は?」
『見てたよー。黒髪の女』
「他に特徴は?」
『仮面つけてた。あとわかんない』
「そうか」
「なら、ラファエルかもしれない。奏だ」
『かなー?』
楓が首を傾げてみせた。
ー起きた。
ブレイズがはっとし体をすぐに起こすと明美を見る。
「気分どうや」
「…ここはどこだ?なぜ」
明美がため息をしやれやれとする。
「タイシ君やタイシ君。あんた手を出したらあかんやつに手を出したんやて?帰ったら危険やからここに匿って欲しいって言われたんや。あとここはアストレイ。リュウ将軍って言えばわかる?一応ここの家の主人や」
「…言えばわかるどころか知りすぎている」
「そうか。あと、タイシ間がここでしばらく身を隠せやて。そうでないとこっちもあんたも、ここも。危険に晒すからって話や」
「…ああ」
「ほんま分かってんのかいな」
扉が開き疲れたリュウガがくる。
「あーもう。なんで会議って…」
リュウが止まり汗を滲ませ明美がリュウを見て話す。
「知り合いかいな」
「えー、なんでいるのかなあ」
「タイシ君や。突然ここに現れてなあ」
「え?」
明美が巻物を見せる。
「船の設計図やて」
「設計図」
リュウが近づき巻物を受け取り紐を解き開き中の魔法陣に手を当てる。すると船の形やその内部の構造が浮かび上がる。
「はあ」
「これ。探していたものだ」
「探していたもの?」
リュウが消し巻物を見る。
「外装を外して紛れ込ませたのか。はあ」
「そちらのなっている船のものだろう?」
明美がブレイズを振り向きリュウがやれやれとする。
「そうだよ。アル呼ぶけどいい?」
「…ああ」
リュウが頷き家を出る。
「リュウはんとどう言った関係や?」
「マーリスの諜報員か。大臣の情報を俺がこちらに横流ししていた。キメラ。そして人身売買を行っていたからな。ただ、ここ最近になるし俺は今捜索対象に入っているはずだ。大臣の側近としていたからな」
「はあ。なら、まあ、なんでタイシ君が連れてきたん?」
「…ここにいた方が安全と踏んでだ。俺も、やりすぎた」
ブレイズが小さく声を漏らし、明美が頷く。
ーせやけど、まあ。
「タイシ君。女装できたんやなあ」
「……」
「少し幻覚も入れてる言うたけどな。せやけどほんま女に見えたなあ」
ブレイズがやや複雑そうにし、明美があんなこともしてたんやなあとしみじみと思った。
タイシが化粧を落とし幻覚を解く。その様子をエルハルトが見ており、エルハルトガ話す。
「イーロン。あちらでスパイ行動をされておられた時もそのような格好をなさった事がおありなのですか?」
「あった。情報や惑わせる為にやった。あと、ロレンシオか」
「…」
『妹君がエレノアの生まれ変わりであるのは危険です』
「それはエレノアの記憶にある鍵か?それともエレノアか?」
『エレノア自身です。あの者はラファエルの弟子で王の皇后の候補者に上がっておりました。本来ならば血族から選ばれるのですが王自ら指名したと聞いております』
「指名か。だが、ロレンシオが殺した。処罰は?」
『ございません。理由としましてエレノアがその申し出を全て断ったからです。あのブレイズという者を唯一好いていたからとラファエルから聞いております』
「ああ」
「私は詳しくはわかりませんが、確かに彼女は他のもの達と違い扱いがよかったところもあれば候補に挙げられた娘達からの嫌がらせを受けておりました。その後、死亡したとだけ聞きました。まさか、父が殺していたとは思いもしませんでした」
『こちらもです。本来三大老自ら手を下すことはありません。行うならば部下達になります』
「ああ。あと何処も上は下にやらせるからな。ただ、もしかしたら本人が直接手を下した可能性もあるからな。手に入れたいものが手に入れる事ができないならだ」
「そうですね…」
ー手に入れる…。
エルハルトがふと何かを思い、タイシが話す。
「向こうもおそらく勘づいていると思うがお互いある程度の付き合いはしていく。手を出した場合はもちろん相手をする」
「父は国を持っております」
「分かっている」
「おや」
エルハルトの手が攻撃する為に動くもタイシがその手を掴みマナを見る。
「元気そうだな」
「よくここがわかりましたね師匠」
「ここは私の父と関係のある場所だから。しかし、弟子も所帯持ちとは」
マナがエルハルトの元へと行き楽しく笑む。
「私も待とうかな?だが、お前とでは合わないな。体も」
「…」
「ラファエルの生まれかわり」
「奏だろ?先般助けてもらったんだ。あちらの世界の武器を利用した魔道具にやられてしばらく捕まっていた。教会に。そうしたら奏達がいて助けてくれてな」
「師匠ほどの人が」
「ふふ。まあな。だからお前も注意はしておけ。その魔道具を持っているのはロレンシオだ。ところで」
マナがむすっとする紅蓮を指差す。
「そこの蜥蜴は」
『誰が蜥蜴だ!!』
「相変わらずうるさい父め」
エルハルトが驚愕し紅蓮が鼻を鳴らす。
「父…」
「ああ。母は人だ。私はそこの黒い龍の娘になる。ちなみに母との馴れ初めは」
『噛み殺すぞ!!』
「やれやれ。娘に向かって噛み殺すとは酷いものだ」
「師匠。他に何か」
「ん?ああ。それだけだ。弟子の顔と、一応注意と、そこにいる父に久しぶりに会いにきただけだ。元気ならそれでいい。ではな」
マナがすっと消える。紅蓮がムカムカしタイシがポケットに入った欠片を手にし、他のポケットにも入れられた欠片を出すと軽く息をついた。
ーだあああああっ!!
奏が声を上げ、マナがのんびりしながらハンモックに乗り寝そべっていた。
「欠片全部タイシ君に渡したの!?せっかく集めたのにいい!」
「んー、いいんじゃないか?あとそうそう。弟君は弟子の元にいる。弟子が怪我などの治療を施していた」
「怪我?どんな怪我?」
「拷問。そして目は完全に光を失っていた。眼球が取り除かれていた」
「…えー。へえ」
奏が背を向けそうかそうかと頷きながら離れる。そしてその場から見えなくなると今度はサルーシャが姿を見せる。
「なかなかの殺意だったな」
「…また、戻ってきてからの方が良さそうですね」
「ああ。そうしておけ。ルイスから何かあったか?」
「はい。暫く瑠奈様の元に留まるとの事です」
「分かった。あと、奏はまた戻ってくる」
サルーシャがはいと返事を返しマナが頷きハンモックに再び寝そべり伸びをした。
「とーと」
レオの手により上半身に包帯を巻かれる音哉の元に友哉が来て抱きしめる。そこは半獣達がいる庭先で音哉が友哉に触れる。
「とも。あと少しヤンさんのところで待っててくれ」
「んー」
「もうすぐ終わる」
友哉が渋々と離れこちらへたきたヤンの元へと走りその手を握る。
「また勝手に移動したのか」
「そうみたいです。ここでやり方を覚えてか分かってる場所によく飛ぶようです」
「ああ」
ヤンが友哉を抱き上げ傍へとくる。
「すみませんヤンさん」
「いや。俺たちも頼ってるからな。レオ。老師が間も無く来る」
「分かった」
レオが急ぎ終わらせるとヤンの元へと来てヤンが友哉に話すと友哉がレオを掴み共に姿を消す。そして、友哉だけが残ると足音が響きロレンシオが黒髪の男を連れその場にくる。
「小僧。お前だけか?」
「はい。あと、足を怪我されおりますね。後ろのものも」
「余計な事はいい。タイシ様は?」
「彼は留守です」
ーん?
音哉が眉を顰める。
「ここに誰か入ってきてる。敵意」
男が周りを見渡し、ロレンシオが告げる。
「その感知は」
いくつものナイフが飛ぶと地面が盛り上がり壁となりナイフを受け止める。ロレンシオがその壁を振り向き、音哉が話す。
「おかしい。力を感じたのに消えた」
「ユーリ」
ユーリが飛び出し走る。そして勾留されていたはずの今原へと向かう。今原が踵を返し走るとユーリがその後を追う。
ー左によけろ。
ユーリが止まり左に体を逸らすと地面に突如大穴が開く。今原が踵を返しユーリが穴を除き針地獄を見おろし今原を見る。
ーなんだろうか…。
「お前も懲りないな」
「タイシ」
タイシがエルハルトを連れこの場に来る。
「女性しか襲わない小心者が」
今原が奥歯を噛み締めタイシを鋭く睨む。
「知っているやつか?」
「ああ。向こうで知人の母親を殺した。その後は俺の知人で妹の友人を襲った」
ナイフがタイシに向かられ飛ぶも紅蓮が現れそのナイフを尻尾で払う。今原が目を見開き紅蓮が唸る。
「この世界の常識を知っているか?」
今原がぞおっとしタイシが宙から電撃を浴びた槍を出す。
「弱肉強食だ。そしてここでは向こうの法律は関係ない。容赦しない」
「ひっ」
タイシが槍を今原へと向け投げる。今原が恐怖するが突如不敵に笑う。そして目の前に鏡が現れ槍が吸い込まれる。
「力が消えた?」
「この槍は俺がもら」
槍を今原が掴むも電撃が走らず無反応だった。
「はあ?おいっ!ちくしょう!!」
今原が槍を叩き落とす。
「もしかしてあいつ。まだ来たばかり?」
「そうだ。この世界のルールを知らない」
がさっと音が響くと今原が音の先、隠れていたユリアーナを見つける。ユリアーナがすぐに身を隠すも周りを大量のナイフに囲まれると汗を滲ませる。
ー死ね。
ナイフがユリアーナへとめがけるとユリアーナが腹を抱え身を丸くする。だが、何も起こらないとわかると顔をあげ何もない空間を見る。そして悲鳴が上がるとユリアーナが振り向くがユーリがその目の前へと来て影となる。
「お怪我は?」
「ないわ」
「誰に手を出した。誰に」
冷ややかな声が響く。今原が血が流れる切り落とされた腕のあった肩を掴みながらタイシを見上げるとタイシが剣を上へと向けていた。
「とことん性根が腐った奴が」
「タイシ。待って」
タイシが止まり音哉が話す。
「まだ遅いけど創造再生ができるよ。そいつ」
今原がビクッと震え、ロレンシオが眉を寄せる。
「後で腕もはやせる。だから取引しよう。俺の目と俺の失った内臓を完治してくれたら今後の安全を俺が保証する。特にそこのタイシ達について。それから」
「ふざけんなガキがっ!」
「妥協案だけどな」
「なにがっ!?」
タイシが今原の首につかを当て今原を昏倒させる。
「やれやれだ」
タイシがユリアーナの元へと行き、音哉が話す。
「ロレンシオ殿。彼使えますよ。血が」
ロレンシオが顎を撫で、音哉が話す。
「だからタイシは生かしたんです。タイシ達に危害が加わらなければ煮るなり焼くなり好きにしていいです。俺が話した事は」
「事実。分かった」
ロレンシオが楽しく笑みを浮かべる。
「ユーリ。その男を運べ」
「はい」
「要件は?」
「急ぎではない」
ロレンシオが離れタイシにまた後ほどと告げると今原を肩に担いだユーリと離れる。ユリアーナがほっとし、音哉が杖をつきながら近づく。
「タイシ。一応彼のおかげでよかったな」
「ああ。腹は立つがな」
「使えるからいいだろう」
「その、力がわかるのですか?相手の」
ユリアーナが音哉に尋ねると音哉が頷く。
「わかる。だから、ギリギリのところで生かされていたんだ」
「そうだったのですね…」
「ああ」
「音哉。奏さんが戻ってきてさっそく暴れているから止めにいく」
「暴れてる?」
音哉が眉を顰め、タイシが話す。
「ああ。お前に拷問をした連中相手にだ」
「はあ。分かった。なら、タイシ。多分、この世界にいる以上また会えると思う。またその時に礼をさせてほしい」
「礼は奏さんからもう頂いた。送る」
「分かった」
「えと、いかれるのですか?」
「いく。友哉。おばさんに会いに行こう」
友哉が姿を見せる。
「エルハルト。すまないが頼む」
「はい」
「なら友哉。教えるから行こう」
「うん」
友哉が明るく声をあげ、タイシ達にバイバイと手を振るとエルハルトも連れ消える。そして音哉が示した地点に来ると友哉が驚き音哉がやれやれとしエルハルトが瓦礫だらけな上あちこち兵士が倒れるその場所を見渡す。
「トリハルスタン、ですね一応」
「前いたところと」
どんと土柱が立つとキメラ化した女を奏が締め上げていた。友哉が口をあんぐりと開け、奏が不吉な笑みを浮かべながら恐怖する女へと槍を向ける。
「ほおら。美味しい美味しい金属だ」
『ゆ、ゆる』
奏が一斉に槍を女へと突き刺し切り裂く。
「誰が」
「うわあああああ!!!」
奏がすぐに振り向く。そして友哉が音哉を抱き大泣きする。
「とーとおおおお!!!」
「……え?え?え?」
奏が汗を滲ませすぐ様向かい音哉、友哉と交互に見る。
「ぶ、無事。ええと、とーとー?え?子供。いや。泣かない泣かなーい。べろべろばあ」
「タイミングが悪かったですね」
「いや。この人は元々こうある人なんだ。殴って脅して黙らせて遠慮がなかったから向こうでも」
「こーわいいいい!!!いやあああ!!!」
「怖くなーい怖くなーい。息子?」
「ああ。友哉。楽しみにしてた叔母だ」
「いやきらあああいいいいい!!!!」
奏がショックを受け、友哉が声を上げる。
「帰るううううう!!タイシにいのとこがいいいいいぃぃ」
『死ねええ!!』
槍に刺されたキメラが大口を開けるも突如ぴたりと止まる。
『う、ご』
「お前のせいだああああ」
キメラがゾッとし奏がキメラを怒り立ちながら振り向く。
「甥にも嫌われたああああ」
「ご自分のせいでしょ」
「ああ」
「とーとおおお」
エルハルト、音哉が突っ込み、奏の術でキメラが吹き飛び散った。
瑠奈がむすっとしながら地図に載せられた欠片の在処を示す光を見ており、キヨがふむと声を出す。
「ここが多いな」
「はい。タイシ様がおられる場所です。マナが奏が集めた欠片を全て渡したとのことでした」
「ああ」
「兄が多いのが悔しい」
キヨがくくっと笑い、瑠奈が話す。
「それに、一つ取られましたからね。あと一つはミオに渡しておいてよかった」
ー瑠奈ー。
瑠奈が地図を畳み宙へと手を伸ばすとそのなかに地図が吸い込まれる。
「便利だな」
「はい、ヒカルさん」
瑠奈が通信用の魔道具を出すとヒカルの声が響く。
『アストレイの方から。リオルの件で来てほしいんだと。瑠奈が来ないと話さないってさ』
「子供ですか。はあ」
「致し方ない。血による件もある」
瑠奈がやれやれとし頷く。
「分かりました。キヨさんと行きます」
『ああ』
瑠奈が通信を切る。
「ルイス。お前はどうする?」
「同行しようと思う。瑠奈様」
「いいですよ」
ルイスがはいと返事を返した。
会議室内で重々しく苦しい雰囲気の中でリオルが集まった重鎮達の中に混ざりながらいらただしげに座っていた。その隣にアルスランとナガハラが座りナガハラがやれやれとし疲れ顔をして見せるリュウを見る。
「リオル。そこのおっさんに食わせるから落ち着け」
「ちょっと。冗談でも言わないでくれるかな」
「そのような見た目から固い肉の男など食わん」
「…」
「我儘め」
「リオル殿。我々が」
リオルが睨むとテーブルの壺が割れる。周りがざわりとし、アルスランが告げる。
「リオル」
「暴力で解決しようとしても何も起こらない」
アルスランが開かれた扉から入ってきた瑠奈とルイスを見る。
「皆々様にはこの姿でこの場に来た事を踏まえ無礼承知で申し訳ありません。そして私はこちらの作法やご挨拶など来たばかりなので分かりません。ご容赦ください」
周りがやや静かになるとナガハラがこいと手招くと瑠奈が進む。
「多少ちがうだけで向こうと変わらない。提示された人側の案件だ」
瑠奈がナガハラから紙を受け取り文字を読んでいく。
「文字はわかるか?」
「はい。わかるよう教えてもらいました」
「ああ。それとその男は誰だ?」
「はい。タハマヤ一族。竜の民の者です」
「な」
周りがよりざわつくとナガハラがふうんと声を出す。
「なら、エルフのようにではないな」
「はい。千年前からこの姿のままです。リオル。腹を立てているのはどの案件」
「全部だ」
「それはない。人との関わりを持つ事。龍にとって人との関わりを持つというのは宜しくありません。認められたもの。竜が認めた時以外は別です。そして龍と関わりを持って何をされるのです?そうなれば周りの魔獣との関わりを持つ事につながります」
「魔獣と龍は違う」
「同じです。姿形は違えど彼らもまた私たち人を拒絶しあっています。そうなれば襲うしかないです。その時の責任はどうなさいますか?龍がこの国を襲えばどうなります?今、リオルは人との関わりを避けたいために他の龍達の代表として来ております。そして、リオル達龍と関わりを持って何をなさるのですか?素材収集ですか?」
1人の男が立ち上がり苛立ち声を上げ瑠奈を指差す。
「異界から来た小娘ごときがでしゃばるなっ」
男の椅子が青い炎に包まれ燃えると周りが僅かに悲鳴をあげ、男がひいっと声をあげその場を離れる。
「この娘は竜の民の王族の末裔の者だ。我ら龍は王族の手により作られたからな」
「な…」
「そしてこちらに来て即座に礼儀にかけることを謝罪している」
男がぞっとし、リオルが目を赤くさせる。
「礼節をわきまえないのはお前たち人だ。そして、我らが結んだ盟約をお前たちは即座に破り我が一族の者たちを殺しその者たちの身体を至福の道具とした。あまつさえそれらを使い一族を殺した。そしてその後の剥ぎ取られた肉は野晒しだ」
「龍達の絆は深く死んだ後の遺体は丁重に弔うよう盟約に記載されておりました。その盟約が書かれた巻物は当時の国全てに行き渡っておりました。ここアストレイも同じく」
ナガハラがやれやれとしアルスランが軽く息を吐く。
「申し訳ないがアストレイの巻物は売られて所在不明だ」
「ああ。どこぞの前女王のせいでだ」
「簡単に」
「リオル」
牙を剥き出しにするリオルの肩を瑠奈が掴む。
「所在不明なのであれば即刻探されてください。盟約は血の誓いも同然。祖先が行ったからその次世代は関係ないでは済まされません」
リオルがそれでもまだ怒りだっており瑠奈の手から僅かに血が流れ肉が焼ける匂いが漂う。ルイスが汗を滲ませ手を握ろうと向けるも瑠奈がその手をもう片方の手でゆっくり払う。
「瑠奈様」
「国もまた盟約。契約により和平。平和を築いております。違反した場合は各国盟約通りの処罰が下される。名訳が記された書は違反した場合の確たる証となりますよね?そして人もですが龍が人を殺めるという行為がその盟約に記載されていれば龍もまた違反しています」
リオルが僅かに反応する。
「ならば違反による罰を与える必要があります。ただ、今人側が害をなしたと龍が訴えております。それは盟約通りに龍が訴えているからです。そしてお話ししますが龍はその土地の守護者としておりました。龍がその守護者として消えた時より魔獣や海獣など増え、土地の恵みも無くなった筈。歴史を見返せばすぐにわかります」
ナガハラが瑠奈の真っ赤に焼け爛れた手を見る。
「龍がこの近い歴史の中で憎んでいた人と話し合いを行うことを決めたこの今をどうかご理解頂けたいです。そして、盟約と過去の災害や魔獣被害をお調べ下さい」
リオルが腹を立てながらも落ち着く。
「リオル。兄が殺した龍について。アルスランさんたちから安寧した土地を与えられたと聞いたけどなぜ?」
「……」
「リオル」
リオルが小さく唸る。
「人肉の味が忘れられなかった者達だ。元々魔獣や果物を喰らい過ごしていた。人肉を食らった龍は臭いが変わる。その匂いは腐った肉の匂いと一緒だ。その匂いは盟約に違反した龍を区別するための証としてラファエルが施したものだ」
「あの二匹か」
「確かに、違和感はあった」
アルスラン達が答え、リオルが鼻を鳴らす。
「その以前より、盟約に違反していない一族を殺されている。そして、龍の次の龍を人は捕え閉じ込めている。あの飛龍はその捕えられた南の龍と魔獣が合わさり作られた半獣だ」
「南…」
「あの砂漠の……」
周囲が大きくざわつく。
「話し合いはここまでにして盟約書を探す方向でいく」
周りが代表の金髪碧眼のがっしりとした体躯の男を見る。
「そちらが龍の王家の末裔ならば、そちらの兄でアルスラン将軍の養子。タイシもそうか?」
「はい。ただ、兄は兄で別行動を起こしております」
「分かった。その話はまた後にしよう。リオル殿。私は盟約について知らず、我が父や祖父。その以前よりも何もついでおりません。そして今、そのことを知ったのですぐさま探し新たに話し合いを行いたい」
リオルが睨むも。
『ならば、盟約書を8つ持ってこられてください』
瑠奈の影からラファが姿を見せる。
『多少破れていても構いませんが、すべての文字が見える状態のものをそろえてください。ラファエルが作りし盟約書は16。龍が4。人が12。これは1200年前にありました人の国の数通りに作られております。歴史書を見れば当時の国が必ずわかります。期間は明日より1月とします。ルーシャス』
リオルの斜め後ろが光ると銀髪赤眼の青年がその背を越す長い巻物を持ち姿を見せる。
『アンナ』
赤いチャイナ服に似たものを身につけた黒髪に緑の女が姿を見せる。その女もまた背を越す長い巻物を持っていた。
『彼らは元は東と北を守りし龍としておりましたが、人によりその棲家を奪われた竜になります。そして彼らが持つものが盟約書。これはすべて同じものです。これだけ大きければ即座にわかります』
「なんで」
ラファが瑠奈を振り向くとぎくりとし瑠奈が脂汗を流しながらラファの首を勢いよく掴む。
「出て来て勝手にいうかな…」
『い、いおうと、考えまして』
ルーシャスがやれやれとしアンナが笑む。
「姫様」
瑠奈が止まり、アンナが話す。
「そこのお方は我らの王の1体です。偉大なる存在です。けれど姫様。あなたもまた我らにとって大切な御身。リオル」
「……」
アンナがその目を赤くさせリオルを見る。
「あなたも分かってるわよねリオル?私たちに知恵と命を与えてくださった方々の血筋。もう1体の黒龍様もまた殿下に仕えておられる身。なれば、私達はの立場は?リオル」
アンナがリオルの肩に手をやり汗を滲ませるリオルへと冷気を出す。
「お前が二番目の年長者としてこの話し合いの代表としてやった。他の生意気なもの達は私たちが無論罰した」
「ああ。末裔とはいえ我々守護龍を作り、その次にお前達土地の守護龍を作ったのはラファエルたちとランスロット王だ。そのランスロット王の血族であるお方にその言葉。態度。まして怪我をおわせた」
「そう」
周りが冷える中、アンナがリアルの体に氷を纏わせる。
「その通り。リオル。姫様に謝罪なさいな」
「…」
「…いっそ夢であってほしい」
瑠奈が後ろに傾くとナガハラが腕を握り止めラファがすぐに抱き止める。
『瑠奈』
「まったく。こっちで治療する。そこの腹黒龍」
「お腹は黒くないのだけど?」
アンナがリオルから手を離し、ナガハラが気絶した瑠奈を抱き上げる。
「冷えるからその冷気を引っ込めろ。年増の女ってのは竜であってもタチが悪い」
ナガハラがぐちぐち言いながら瑠奈を連れ離れラファが後を追う。
『後はお願いします』
「はい」
「はい」
「…承知」
ラファが頷きナガハラの後を追う。そしてルーシャスが巻物を上げ広げると古代語が浮かび上がる。
「これが我ら守護龍が所持する盟約書だ。この中身はすべて同じになる」
「ええ。あと、姫様がお話しされたことは事実。私たちはお前達人により土地を追われた上、土地を管理するための大切な石も奪われた。唯一残っているのは東の森。エルフ達が守る森のみ」
「ああ。彼らとドワーフは我々との共存を望み、盟約書も所持していた。しかし南のドワーフ達が暮らしていた国は人により破壊され、竜もまた殺され新たに生まれた龍は捕われの身のままで行方がわからない」
リオルが氷を溶かし、男が話す。
「捕らわれた龍殿の生存はわかるのですか?」
「わかる」
「ええ。私たち守護龍は転生を行い生きているわ。その転生はその土地に新たに龍が生まれる。リオル達に関しては死に間際。もしくはいくばくもない時に卵を産み落とす。けれど、私たちと違い記憶を受け継ぐことはない」
リオルが頷き、ルーシャスが話す。
「ああ。そして今回南の龍について。死ねばその龍がその土地に生まれるはずがまだその気配がない。それは生きているというわけだ」
「ええ。そして、各国にある飛龍達はすべて土属性を持っている。南の龍は火属性」
「ああ。私は西の風だ」
「そして私は東で見ての通り水。残りの一体は土。土属性のいる龍。ハイネスはその場所を今でも守っているからこちらに来れないわ。そして東の温暖な豊かな地域は問題無く変わらないのはそのせいよ」
「ああ。我らは気候の安寧を約束されていたが、人の欲によりなきものにされた上、大切な宝玉も失った」
「そう。だから私たちは守らないし守る必要がなくなったわ。それを行ったのは人」
男が軽く息をつきアンナ達へと話す。
「我ら子孫は罪を犯した祖先達の代わりに動かねばならぬなわけだな。盟約にも確かに記されている。守護龍と共存せよ。さすれば土地の豊かさは保たれると。東の国は年中雪が降り、西の国ではよくかまいたちが起こっている。そして南の砂漠は灼熱地獄に化し広がりマーリスにもおよび始めている」
アンナ達が頷き、男が話す。
「北のエルフの長より聞いたことがある。エルフは龍を殺すことを禁じていると。だがそれがなぜかはわからないとの話だった。それでもエルフはその事を守っている。盟約書についてはおそらく大長が所持していると思う。その盟約書を借りることは」
「不可能だな」
「不可能ね」
「分かった」
「ええ。それと、姫様や殿下について。お二人は貴方達人が創造主と聖書に記されたランスロット王の血筋の方。それは国が眠りについてもなお続いているわ」
「眠りに?」
「ええ」
「タハマヤ。お前達が話す古代国について、本来の名はアルスマグナ。タハマヤは龍の民の恩恵を受けたもの達一族になる。王家については龍の民。もしくはエルムの一族になり、人の始祖。創造主と言われお前達が知っている私たちの生みの親でもある大賢者ラファエルはそのエルムの一族になる」
「ええ。エルムの一族とタハマヤの一族はまた別。タハマヤはエルムの一族の恩恵を受けたもの達であり、エルムの一族の親族になる者達になるわ。ここにいるルイスはその恩恵を受けて生きるタハマヤ一族。エルム一族からの恩恵は変わらない姿と長い命。後は人並みはずれた力」
ルイスが頷き、ルーシャスが話す。
「しかしだ。タハマヤ一族はエルム一族と結んだ血の盟約によりエルム一族に逆らえない。もしくは盾となり生きるように交わしている。それは親から子へと受け継がれたが子から子とまではいかなかった。恩恵を受けた親から生まれた子供のみが長命に変わらぬ姿となった。そしてそれら一族達はアルスマグナを発展させ、周囲の国づくりを行なっていた人の手助けをしていた。しかしラファエルが今ここでも禁じられている魔術を作り、その作った魔術を使い別世界からの人間やこの世界に本来はなかった品をタハマヤ一族が中心となって持ち運んできた。ラファエルは止めようにも止めきれなくなり魔術の全てを知る自らと共にタハマヤ一族を絶やすようラファエルの弟子のレーガンに頼み、その弟子はラファエル他タハマヤ一族の多くを殺害した。王家であるエルム一族はラファエルと共に殺されたか自害した。ただ、レーガンがエルム一族の血を引く赤子を情に負けて殺さず我が子として迎え入れると言った。終わった後私たちの前で」
「そう。だから、私たちが提案したの。この世界では狙われるから別世界で共に生きなさいとね。私たちはラファエルの異空間を繋ぐ術を使いラファエルとその子供をあちらへと送ったわ。そしてその子供の子孫が殿下と姫様よ。ただ、あそこまで濃く受け継がれていたとは思いもしなかったけど、お二方のの父親が王家の血を引き継いだ母親のその血を複製し同じ力を得ることができる体質だった。それにより消えかけていたエルム一族の血が複製であれ作られ混ざった結果、当時のエルム一族が持つ力と同等の力をもつお二方が誕生なされた。ただし、殿下についてはこちらに来た際に黒龍様の血を引く娘様が力を封じ、姫様についてはあちらの世界で暮らされておられたので分からなかった」
「タイシがマナと出会ったのはこの世界に来て半月後だ。イーロンでの選別では使えないものとして処罰対象とされたが?」
「アルスラン。エルム一族は特別な血と特別な力を持っているのよ。人の力で作られた道具に反応する訳ないわ」
「ああ。そして王家を見つけるための石があると聞いた。ルイス」
ルイスがポケットから龍が彫刻された石を出して見せる。
ー少し、違う。
「ルイスが持つこの石に見覚えがある者もいるはずよ。この石はエルム一族を見つけ、エルム一族であると確信させる石になるわ。人もまた密かにエルム一族の力を得ようと動いているようね。特に元イーロン。後は教会のもの達。彼等はこのエルム一族を見つける道具としてこの石に着目した。着目し南の龍の血を使い複製を作ったわ。けれど、エルム一族には反応がないわ。もちろん人にも。ただし、私たちを見つけられることはできるけどそれも触れなければならないわ。直接」
「ああ。なのでこの世界に出回っている石は偽物。紛い物だ。本物はすべてタハマヤ一族の当時の上流貴族達が所持していた」
アンナがくすり楽しく笑む。
「そう。だから無意味なのよ。この場にも数名偽物の石を持っているわね。貴方達もエルム一族の血。王家の血が欲しいのかしら?」
周囲がややざわつき、リュウがやれやれとする。
ー怖いなあ。
「話が長くなったわ。私達はここまで。そして私達から。彼の方は私達にとっても大切なおかた」
「ああ。危害を加えた場合容赦しない。お前達にもまた同じ程度の危害が加わると思っておけ」
「生ぬるいわねえ」
「大事にしたくはない。姫もそう願っている」
ルーシャスが魔法陣に吸い込まれるようにその場から姿を消す。
「姫について、あちらの世界の人としての暮らしが長かったから多少拒絶はされると思うわ」
アンナがテーブルの上に魔法陣を作り出すとその魔法陣から青い石がいくつも湧き出る。周りがどよめき、アンナが話す。
「こちらは姫の治療代も兼ねてのもの。姫のために使う分は使って。リオル」
「…はい」
アンナがリオルの両肩に両手を乗せる。
「次。怪我をさせないようにね」
「…はい」
「ええ。それじゃあご機嫌よう」
アンナもまた姿を消した。
ーふうん。
キヨがそう声を漏らしぐったりとする瑠奈の隣に座りやってきたアルスランへと話す。
「四神では無く四竜という訳だな」
「四神?」
「北の玄武、東の青龍、南の朱雀、西の白虎。それぞれ順に土、水、火、風の属性を持つ霊獣と言われている」
「葵が発動していた術式か」
「それについてはしらないが、少なくともその四竜達がそれぞれの土地を豊かにし自然の均衡を守っていた。だが、人によってその均衡が崩れ今や自然による災害で脅かされているという訳か。いやはや」
「それより私はどうなりますか…」
瑠奈が尋ねキヨが楽しく笑む。
「上得意様扱いだ。大きな風呂にも入れるぞ」
「落ち着かない…」
「タイシも今後について考えなければならない」
瑠奈が起き上がり、キヨが話す。
「知ってて養子にしたと言われそうだな」
「ああ。そちらはいい」
「私たちで終わらせればいいんです。国の統一化と君主制廃止。そうすれば私達は一般人として生きれますし、国もまた他国に吸収合併する事によりその国の新たな土地となります。それを行うまで、まずは段階を踏みます。どうせ兄のことですから兄も同じ考えて動いているはずです」
「ああ」
「確かにそちらが理想ではあるな」
「はい。ただし、はあ」
瑠奈が大きくため息をし顔を顰める。
「それまでは我慢して姫役しますよ仕方ないですから」
「そうだな」
「ていうか、ラファっ」
瑠奈が影へと声を上げるとラファが影から飛び上がり苛立つ瑠奈を見てそわつく。
『だって、事実』
「だとしてもあんな人っ人っ。人前で言うなっ。後あの2人もっ。あーもおお!!」
キヨがくくっと笑い、アルスランが話す。
「もう手遅れだ。後悔しても遅い」
「…」
「その通りだ。あと、確認したいがダリス殿は?あちらは保護責任者として瑠奈を守っていた。政治や暗殺者などから」
「ああ。そちらはおそらく教会が協議するだろう。そして、ダリスは王の候補者としても挙げられている。そのまま保護責任者としての立場でいるだろう」
「それが都合がいいですし、私もそのままいてくれたら助かります」
「そうだな」
「ああ。私からも話しておく」
「どうだ。どこぞの姫の具合は?」
瑠奈が顔を顰め、ナガハラがコーヒーを飲みながらリオルを連れやってくる。
「…申し訳ございませんでした」
「敬語されるの結構違和感あるんですけど。あと、いえ」
「人の女に化けた竜にこっぴどくやられたからな」
「っ。こっぴどくはやられていない」
「やはり竜社会にも上下関係は存在したわけか。あと、盟約の巻物か。どんな者だ?」
「私よりも少し長い大きな巻物に記されている。以前、私もこの城内の倉庫で見たことがあるが、女王がどこぞに売り払ったと捕らえた女王の従者が話した」
「売り払ったか。まあ、人のものを勝手に盗んでは我が物にしたり、売って金にしては懐に入れたりとしていたそうだからな」
キヨが軽く両手を叩く。
「せっかくだから私も探す事にしよう。見つけた際の報奨金はいただけるだろうか兄殿」
「ああ」
キヨが頷き、ラファがふっと笑う。
『そう簡単に見つかるとは私は思いませんね』
瑠奈が手を向けラファの羽を掴み引き寄せ、ラファが汗を滲ませ堪える。
「何その態度は。あ?」
『人も、苦労しろと言う事です。盟約破りを先に犯したのは人ですし、オーブを奪ったのも、人ですし』
「竜の宝だな。一つ心当たりがある」
ラファが止まり、アルスランが話す。
「イーロン。そちらの装置の一つに使われていたのが強力な力を持った石だった。扱いがわからず封印のみ施しその周囲を封鎖した。色は青だ」
瑠奈がラファの手を離し、ラファが頷くと瑠奈がすぐさままた羽を掴みラファが沈もうとしたが止まり汗を滲ませ食いしばる。
「こちらが責任を持って取りに向かう」
『くっ』
「人がやったのなら人にさせるように」
ラファが止まり顔をしかめながら瑠奈を振り向く。
「なに?」
『…いえ。わかりました』
「ええ」
ラファが渋々とし、リオルがやや不貞腐れながら話す。
「その方は、我が王でもありますので…。もう少し丁寧に扱われてください」
「ふっはははっ」
「道具か」
キヨが笑い、ナガハラが突っ込みラファが呆れた視線をリオルへと向けた。
ー盟約の。
「ああ…。龍と人との友好の証として結ばれた契りだな」
ブレイズが尋ねてきたアルスランへと話す。そこは龍の家で明美が茶を持ちくる。
「それを人がどこかに忘れて放置したんですか?そら怒るわ」
「ああ。なので、16本の内の8本の巻物を集めなければならない。それが話し合いの再開に向けての条件になる」
「8本」
「期間は?」
「1月」
「難しいな。あれは生きた巻物だ。大きな物だからこそ目立ちはするが、その当時の契約者の血を引いたものが近づかなければ姿を見せてくれない。ただそれではその者がいなくなった場合はどうなるか。それ以外のものが王となった場合はどうなるのかについて、その時に引き継いだ証として巻物に血胤を押す。それによって次のものへと引き継がれそのものが近づけば姿を見せる」
「ああ」
「魔法探知とかは?」
「できるかわからない。俺も実際にその引き継ぎについて、当時は儀式があった。その儀式で見たのでわかるが、その巻物に触れたことはないし魔術による力もあったのかわからなかった。大勢のもの達に見守られる中での引き継ぎの儀だったからな。当時はとても丁寧に扱われ守られてきたが、俺が知る限りおよそ500年前からその儀式すらなくなり龍と人との間に亀裂が起こった。つまり、人が龍を殺したのがその年になる」
「はあ」
「ギルドが誕生したあたりだな。その頃から魔獣の数が増え始めた時でもあり、聖女、英雄といった者が現れた時でもある」
「なら、意図的に立てられた可能性もなくはないな。ギルドが」
「ああ」
「その事について、レーガンの知人が考えていた事になる」
「ラファエル達を殺した者の知人か」
「そうだ。名前はレックス。エレノアの兄にもなる。彼は人々の中心に常にいれば警備隊長として任についていた。大勢から信頼されていたがある時外の外敵を退治するための傭兵隊を作ろうと話したそうだ。それに賛同した若い者達が集まり作った後が問題となった。魔獣退治の為の傭兵隊を作ったものの、害のない半獣達までを殺しそれらの毛皮を売り資金にし始めた。そして、まだ建国出来て間もない国を攻め、レックスがその国の王となり今度は俺がいた国。アルスマグナを攻めようとした。けれど、ランスロット王自ら食い止めレックスも捕らえられ処刑された」
「王1人で?」
「ああ。そちらも知っての通り、エルム一族の血を引くタイシ様。あの方は竜二体をお一人で倒されている。土地の龍だが血肉を欲したので例え盟約に記された」
「盟約違反者を罰した。知らなかったとはいえ殿下の手でね」
明美が後ろを振り向き楽しく笑むアンナを振り向き呆れる。
「勝手に上がらんで欲しいんやけど?」
「分かったわよ。異界の人間は細かいわね」
「当たり前のことや」
アンナがやれやれとする。
「また何の様できたんだ?」
「ええ。姫のお世話係としてラファ様から言われてきたの。あと、レックスね。懐かしいわ」
「ランスロット王になり裁かれたと今しがた聞いた」
「ええ。彼は頭は良かったし強かったけどそこまで。さらにランスロット王が上だっただけ」
「ああ」
「そのランスロット王ですが、私達は姿を見たことがありませんし、常に王座の間にいるとしか聞いておりません」
ブレイズが尋ね、アンナが答える。
「その通りよ。姿を見たものはそうそういないわ。けれどレックス達謀反者を倒したのはランスロット王で間違いないわ」
「はい」
「なあ。あんた瑠奈ちゃんの世話人ならなんかするんか?あと、ブレイズはんから聞いたけどブレイズはんみたいな人がこの世界に転々と隠れて住んでるって聞いたけどなにかするん?」
「ええ。ちゃんと一国の姫としての装いをするわ。その為の衣装も今制作してもらってるところよ」
アンナがにこっと笑み、明美が話す。
「勝手やな」
「勝手よ。私達は。そして待ち望んでいたわ」
「瑠奈は君主制廃止後国を統一化するとのことだ。タイシもおそらく同じ考えでいる」
「そう。それが姫様達が望んでいるなら私達はその通りにするわ。私たちも言えば自由に生きているから。姫様も普通の人としてあちらで暮らしてきたならそう言わざるを得ないし、国ももうほぼ機能していないと同じ。待ち望んでいたのはいたけど、私達はどちらを選ぶか。それを待ち望んでいたの。存続か。廃止かとね」
「ええやん廃止で。そんなわけわからん国続けるより無くしたほうがええ」
「部外者は黙ってくれない?」
「その部外者を頼ってるのはあんたらが殿下言うてる奴やで。そこのブレイズはんも匿ってくれとわざわざきて置いてったけど?」
「その通りだ」
「…はい」
アンナが鼻を鳴らし、明美が話す。
「ま、そこに行き着くまでが苦労やな。話じゃ親世代が厄介者って話やし。後それに協力している現代人やな」
「ええ。その通り。そして、まあ今回私たち龍があなた達に人側の前に500年越に来たもの。しかもその龍が」
「いやいわんでも誰でも分かるわ」
「あなたは何なのかしらね?」
「妊婦やな。今は」
アンナがむかむかし明美が話す。
「どうせお披露目するんやろ。アルスランさん。瑠奈ちゃんについて知れ渡ってますか?」
「ああ。広報でもある魔導局も隠し通すなどしないからな。あと、流石にここでは出来ないのでおそらくマーリスで行うだろう。あそこは戦のない国だ。それに賓客用の屋敷が備えられている。そちらもそのマーリスに移動する予定だろう?」
「ええ。ここに姫様が過ごされる場所がないもの。屋敷も」
「元からないやん」
「あなたはいちいち口出ししないでくれない?」
アンナが苛立ち、明美が呆れる。
「事実いうたまでやし。あと、姫はやけど、タイシ君が暮らしてた屋敷はあるって前龍はんから話聞いてたで」
「ふん。知ってるわ。けれど、殿下が留守された時に荒らされたから荒れてるの」
「清掃したのだがな」
「せや。後必要な生活用品置くだけ」
「あの様な質素なところ」
「タイシ君が質素が好きなだけやないか」
「ああ」
「そんなわけ」
「タイシ様は必要なものしか必要とされてませんでしたし、身に付けられていたのも剣のみでした」
「せやろなあ」
「剣のみで、過ごされているお部屋は…」
「タイシ様の付き人になられた者が着飾ることもせず、部屋も寝具とお食事用の席くらいしかないと話されていました」
ブレイズの言葉にアルスランがうなずき、アンナが何も言えなくなるとラファが後ろから現れる。
『何言い負かされてるのですか』
「う」
「あんたも何勝手に入ってきとるんや」
『それは人が決めたことでしょう』
「瑠奈ちゃんは?」
『きております』
明美が玄関のドアを開けるとその先に瑠奈がいた。
「すいませんお邪魔します何迷惑かけてるの」
瑠奈がラファの首をしめ、ラファが汗を滲ませ狼狽える。
『め、迷惑は、かけて』
「るのっ。勝手に人様の家に上がり込むなっ」
『は、はい…』
「姫様。何もそこまで」
瑠奈が睨みつけアンナを押し黙らせ、アンナが汗を滲ませ萎縮する。
「瑠奈ちゃん。あんたこれからどうするんや?」
瑠奈がはああと長く息をつき顔をしかめながら明美を見る。
「暫くはお姫様します」
「そうか。ならきいつけえや。突然出てきた異界の小娘やから手篭めにしやすいって考えるのおるからな」
「はい」
「ええ。あと、あんたら勝手に入ってきた罰や。どうせこの国の巻き物どこにあるか知ってるやろ?」
二体がダンマリとし、明美が話す。
「まあだ瑠奈ちゃんを舐めてかかってるからな。なら、あんたらの事タイシくんと黒龍にいうけど?」
ー黒龍。
『う…』
「ちょっとラファ様」
アンナが思わず突っ込みはっとする。
「言われるのと巻物一本見つけてアルスランさんに渡すのどっちや。ちゃっちゃか選べー」
ラファが顔をしかめながら城の中へと入ると今度は女王が以前過ごした部屋へと入り天井の板を外す。すると魔術が発動し隠し階段が現れる。それをアルスラン達が見ており、ダンガンが進み梯子を上る。そして瓶に入った血をゆっくりとかざし回すとすっと巻物が姿を見せる。
「ありました」
「ああ」
『…ふん』
「ラファ」
『…』
ラファが瑠奈の元へと来ると瑠奈がやれやれとする。
「ありがとう」
『え?』
「見つけてくれたから」
ラファが目を丸くするも今度は顔を赤らめ照れていくもハッとし頭をブンブンと振る。
『今回だけですからね』
「ちゃんと人の常識守られたらね」
『分かりました…』
「はいよろしい」
瑠奈が反省するラファの頭を撫でるとラファが再び照れた。




