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運命のミオ  作者: 鎌月
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瑠奈1

ー瑠奈。瑠奈は強いな。

男が幼く頭を堪えながらも涙を滲ませる瑠奈を抱き上げ転んで怪我をした足を見る。そこに日傘をさした女と青年がそばへと来る。

ー瑠奈ちゃん。痛かったでしょ?

ーっちゃくにゃい。

ー触ろうか?

ーやじゃっ!!

青年がおかしく笑いながら瑠奈の頭を撫で女がお兄ちゃんは意地悪だよねと告げ、男が鼻を啜る瑠奈の頭を撫でた。


「至って普通の家族でしたね」

瑠奈が焚き火を見ながらキヨへと話すとキヨが微笑みながら小枝を焚き火の中へと入れる。瑠奈のそばにはラファが、キヨのそばには颯がそれぞれ眠っていた。

「仲良し家族というわけだな」

「はい。キヨさんは神社でしたよね?」

「ああ。私は生まれは最悪で育ちも最低なところであった。ただ、その先ではいい暮らしができた」

「なのにどうして、また戻ってこようと思ったんですか?」

「ここが私の故郷だからだ。やはり、恋しいんだ。もちろんあちらも第二の故郷であった」

キヨが長い鉄製の棒を使い焚き火の火を調整する。

「淋しくはある。だが嬉しくもある。私は捨てられる前にこの世界を見せてもらった」

「それってイーロンで?」

「ああ。優しい研究者の1人が連れて行ってくれたのさ。空に。そして私は空からこの世界を見た。とても美しかった」

キヨが笑みを深め、瑠奈が頷くとラファが顔を上げ、楓が目を擦り浮かぶ。

『来ます』

『キヨー。けいかーい』

「ああ」

素早い速さで大きなものが飛び込む。それはヒョウの体には体には人面があり唾液を絶えず流していた。


ーてて。

ラファが瑠奈の手に治癒をかける。そのそばにいたキヨの膝には裸の女児が頭を乗せすやあと気持ちよく眠っていた。

「明日聞くしかないですね」

「ああ。しかし、夜な夜な探し求める姿はまるで亡霊のようだな」

「そうですね。あと、商人たちの護衛料が上がっているという理由は分かりますね」

「ああ」

キヨがマントを女児にかけ瑠奈に先に寝ろと話すと瑠奈がはいと返事を返した。


翌日ー。

「助けてくれてありがとうございました」

起きた女児が瑠奈、キヨへと礼を告げる。

「いや。あと、ただの窃盗であの姿か」

「知ってるんですか?」

「知っているではなく見た。施設出身者というのも分かった。そのことについては先に魔導局やギルドに伝えている。施設の子供らもキメラにされてしまっていると」

「はい」

「元の年は?」

「15だな。名前はフィオナ」

「そうです」

フィオナが肯定し、キヨが頷く。

「ヤンガル国の施設か。まだ掘れば出て来そうだな」

「確か、ここよりさらに東でしたよね?行ってみます?」

「そうだな。行くか。ラファ。颯。あちらに元ヤンガルは待機調査をすると伝えよ」

『はあい』

颯が周り姿を消す。

「聖獣」

「そうだ。さて、腹ごしらえしたら行こう。他の子らもそこにいるなら迎えに行こう」

フィオナが強く頷き、キヨがスープを向けるとフィオナが受け取り夢中で食べた。


戦争の破壊された跡が残るヤンガルへとくると瑠奈が廃墟と化した瓦礫と家を見てまわりラファがフィオナを背負い周りを見渡す。

『生き物の気配はありません』

「ならさがそっか。分裂」

『はい』

ラファが光り小さなラファが現れる。そしてさらに増え50体ほどになる。フィオナが驚き、瑠奈が水晶を上へと上げると浮かび上がる。

「なら散会」

『はい』

ラファたちが一斉に消え風が舞い浮かぶ。

「すごい。初めてみた」

「ドローンの要領か?」

「え?どろーん?」

「はい」

水晶から霧が現れると地図らしきものが次々と造られる。

「あとは、変わったものを見つけたら映ります」

「ああ」

すっとモニターのように霧が集まり映る。そこに人型キメラが集まり仲間を貪り食べていた。キヨがフィオナの目を隠しフィオナがその手を抑える。

「なに」

「眠らせます。ラファ」

「ああ」

ラファが光るとキメラたちが一斉に振り向いた途端その場に倒れる。

ー共食いか。

ーはい。飢えに飢えてでしょう。

再び別の映像が映る。そこに魔術師と思われる者たち。そして槍や杖を持つ者たちが交戦していた。

「ええと」

「ギルドの証。ネームタグをかけている。魔術師はオラクルだな」

「はい。まあ、今のところ問題なさそうなので見ておくだけにしましょう。次」

瑠奈が次々とラファが見つかるものに対して指示を出す。

「お姉さんすごいね」

「ふふ。そうだろう?皆が羨ましがる才を持っている」

「いやそうしたらキヨさんもでしょう?」

「私のような力の持ち主はこの世界では数多くいるからな」

「そうですかね」

「そうだよ。地下は?」

「入り口を見つけてるところです」

キヨが頷き、フィオナが話す。

「私の施設のところは?」

「ここからどの辺り?」

『瑠奈。見つかりました。魔術師が来ます』

瑠奈が宙へと手をやる。そして宙から短槍が姿を見せる。すると大地が突如避け瑠奈たちへと向かうとキヨが指を向け指を光らせ楽しく笑む。

「私は歩く原子炉だぞ」

「げんしろ?」

指からレーザーが現れ大地を切り魔術師の横を切り裂き寸断する。魔術師がすぐに身を引くも顎に瑠奈による短槍の石突が当たるとその場に卒倒した。


フィオナがやや怖がりながら瑠奈と手を繋ぎ、キヨが指先を拘束し前を歩かせ地下室へと案内をさせる魔術師の背中向け歩く。魔術師が冷や汗を流しながら周りを忙しなく見ていき、瑠奈が話す。

「誰かいたらすぐ私が分かりますよ」

「…」

「味方を待つよりも、自身が殺されるのではと思っているな?若いのに苦労する」

「え?」

「…うるさい。元はと言えばアストレイのせいだ。見過ごしておけばよかったんだ」

フィオナが驚きキヨがくすりと笑う。

「そうはいかなかっただろう?聞いた話キメラの製造。そしてガルダという危険極まりないものを作っていたそうだからな」

「それは師父達だ。俺たちは本来魔術師としてこの国にいただけなのに」

「いただけ?」

「戦争であればいただけでも関係ない。いて使えるから今でも使われている」

「ですね。大抵犠牲になるのはそういった方々ばかり。あとは、弱い人たちです。上は傍観」

「そうだ。だからはなせ」

「ふふ。それとこれは違うな。そして、そちらも下手なことをすれば自滅するよう術が施されている」

「は?」

「私が今押さえているから出来ないだけ。そうでないと私達も巻き込まれかねないからな」

「…やっぱ捨て駒か」

魔術師がやや項垂れる。

「そうだな。だから、助かりたくば案内をしろ」

「解けるのか?」

「勿論」

キヨが微笑み魔術師がそれを見て頷く。

「キヨさん。お話中悪いですが、あのギルドの方々が危険です。大きな鳥に襲われてます」

「ガルダだ」

「ラファが今防いでいます」

『はい。ですが力を四散してます故防御しか』

「颯。術師達がいる。遊んでこい」

『はあい』

颯が声を上げ姿を消す。そしてガルダを操る術師達の前に現れるとすぐさま巨大な突風を当て術者達を吹き飛ばした。すると炎で攻撃を行なっていたガルダが止まり周りを見渡し始め、ラファが飛び上がりガルダの上で上半身のみ出された子供に触れるとすぐにガルダから引き剥がす。子供が力無く頭を下げ浮かびラファが下を向きその穴からこちらを汗を滲ませ覗き見上げる男を見て光を放った。


「ふふ。派手にいったな」

キヨが空から下へと落ちる光の柱を見て小さく笑い、フィオナが驚き魔術師が汗を滲ませる。

「なんて、魔素の量…」

「龍だからな」

声が轟くとキヨが空を見上げ緑の龍が上空より現れ旋回をする。魔術師が青ざめ、瑠奈が驚く。そして龍がこちらへと向かってくると瑠奈達の前に降り立つ。魔術師が心臓を跳ねさせ震え、龍がじっと瑠奈を見る。

『竜の民の生き残りか。久方ぶりに見た』

ラファが姿を見せると龍が僅かに目を伏せる。

『白竜殿。初めまして』

『初めまして緑龍。そちらは2代目ですね』

『はい。お話は伺っております』

『はい』

フィオナが驚き、瑠奈が話す。

「この辺りに住まれているのですか?」

『いや。本来は別の場所だ。ただ、ずっと気になっていたからな』

再び空から青い龍が現れ地面に降り立ち、また赤い龍、黄色い竜と現れ降り立つ。魔術師が硬直していたが後ろに頭を傾けキヨが受け止めふふっと笑う。

『小さき人間め』

『仕方がない。集団でしか私たちを相手にできないからな』

『くくく。いっそここで喰らうか?』

「それは勘弁だな」

龍達がキヨを見ていく。

『黙れ人間』

「怖いなあ」

「その高圧的な態度をやめてほしい」

今度は一切に瑠奈を振り向くとフィオナがすぐに隠れ怯え、瑠奈が話す。

「私たちとあなた達は共存できる存在かな?」

『共存?』

『笑わせる』

『お前達は我々を脅威と道具の材料としか見ていない。まだ幼き子すらお前達の餌食にされた』

「ならこっちも同じ。幼い子供を食らったことがあるでしょう?餌として」

『それがどうした?』

『肉を食らって何が悪い』

「ならこちらは道具として使って何が悪い?」

龍達が殺気立ち地面が震える。

「凄まじいな」

『調子にのるな小娘』

『貴様が竜の民でなければ我々はここに来なかった』

『白竜殿も何故まだ人間の味方をするのですか?』

『私は味方はしておりません。当時から私は変わっていないだけです』

「話し合いの場を設けたい」

『話し合い?』

「そう。あなた達が何をしたいのか。人に何をしてもらいたいのかその時に話してほしい」

『はっ。笑わせてくれる』

『以前もそのような場を設けた事がある。だが、人間が裏切った』

「その時に誓約は?誰が場を設けたの?そして誰が」

『黙れ!!』

空気が振動するとフィオナがビクッと震える。

「黙らない」

龍達が睨みキヨが話す。

「今、新たに結び直せばいい。そちらも怯えず隠れず苦労せず生活はしたいのだろう?」

『何を』

『私が確認する』

黄色い龍が青い竜を睨む。

「懐かしい面々だ」

龍達がすぐにマナを振り向く。

『半端者か』

「ああ」

「角?」

「あの人がマナか」

瑠奈が話、キヨが竜の角、鱗を持つマナを見て頷く。

「そのようだな」

「私はマナという名前がある。あと、弟子の元に行こうとしたら各々が集まっていたから驚いた。老師はいないがな」

『あの方がいるわけがない』

「そうだな。あと、先ほどから話は私も聞いた。折角だから青爺が確かめてから皆が決めたらどうだ?私は今まさに、この機会を見逃してはならないと思う」

龍達が黙り込み、青い龍が光るとその光が小さくなる。そして長い銀髪き碧眼のケープを着た好青年へと変わる。

「まずは近くに人間達が交戦している。そこからだ」

『ふん』

『竜の民』

黄色い龍が瑠奈を睨みながら指差す。

『我々は盟約によってお互いに殺さない』

「なら兄は?」

『奴は血が表に出る前に殺している』

「表に?」

「覚醒したという事だ。まあ、私が覚醒させないよう止めていたがな」

瑠奈がマナを振り向く。

「なら覚醒しなかったらそのまま人としていられたんですよね?」

「ああ。しかし、2人とももう覚醒している。原因は石だ。触れただろう?」

「あれかあ。安易に触れなければよかったけど、兄はとっくに」

「偽物も中にはあるからな。だが、ルイスが持っていたのは本物の石だ。そこで覚醒したのだろう」

瑠奈が顔をしかめ、マナが薄くなる。

「では私は弟子の元にお邪魔をしにいく。お前の兄の元だ」

マナが姿を消す。そして竜達が翼を広げ各々空へと飛び立つ。

『青の。しかと見届けよ』

「分かっている」

龍達が消え、キヨが人になった青い竜を見る。

「名前は?」

「リオル」

『リオル。私はラファです』

ラファが告げリオルが軽く会釈した。


「…怖かった」

腰を抜かしたフィオナが瑠奈に背負われ運ばれていた。そしてキヨがふふっと楽しく笑うも唸る声が聞こえると斜め上を見る。そこには赤髪に翡翠の瞳をさせレースのワンピースを身につけた少女であり魔術師が浮かんでおり少女が目を覚ますとはっとしジタバタする。

「り、龍っ」

「落ち着け」

キヨが少女を下ろすと少女がすぐさまワンピースの裾を掴み整えられた髪に触り顔を真っ赤にしキヨをばっと振り向く。

「そちらが似合っているぞ」

「な、あ……」

「歩くなら歩け」

少女がリオルを振り向きリオルが顎で前を示す。

「え」

「青い竜だ。リオルと言う名でな。あとそちらはまだ名前を聞いていなかったな。名前は?」

「ソ、ソフィー」

「ではソフィー。行こうか。一応まだ其方は捕虜だ。いいな?」

ソフィーが小さく頷きリアルと目が合わぬよう前を歩く。

「あとその服は颯が近くの街でちゃちゃっと買ってきてくれてな」

『そおー。かわいーのした』

ソフィーが顔を再び真っ赤にする。

「ごめんだけど髪は勝手にだけど私が切ったから。痛んでたし」

「…わ、分かった」

音が響き始めると交戦する光がちらちらと現れる。

「そちらの仲間達はどう言った関係か?」

「…多分、指導者だと思う。私にとっては教師」

「ギルド側が押されているな」

「なら加勢するか」

『キメラ達が来ます』

二体のキメラが姿を見せるもその二体に矢が当たる。リオルがボーガンで矢を放った瑠奈を振り向き、瑠奈が矢を補填する。

「私の血を入れた鏃の矢を飛ばした」

キメラ達が湯気立ち光り小さくなり幼児へと変わる。

「私の血は毒になる?」

「いや。他にとっては再生能力の強い血だ」

「人に、戻った…」

ソフィーが驚愕しすぐに倒れ眠る幼児達に触れる。

ー生きてる……。

ソフィーが手を震わせ涙を滲ませる。

「イデア様…」

ソフィーが瑠奈達を見る。

「お願い。いえお願いしますっ」

ソフィーがその場に土下座し頭を深く下げる。

「イデア様を助けてくださいっ。元に戻して下さい」

「イデア?」

「確か、この国の王家にイデアという第五王女がいると聞いた。他の王族達と行方不明とか」

「いえ。イデア様は王の命によってキメラにされたんです。この子らとは違う、また違うキメラです…」

「違うキメラ?」

「場所はわかります。案内を」

突如後方が光るとラファが炎を結界で防ぎ消し去る。

「ギルド側がやられたな」

ソフィーが青ざめ、魔術師2名がその場に来るもその一名は青い宝石を杖に嵌め込みその杖を握りしめていた。

「ソフィー。なんだその格好は」

「そ、その…」

ソフィーが硬直するも突如魔術師達が現れたが瑠奈もまた突如魔術師側に現れると足を光らせながら蹴りを放った。そして蹴りを放たれた魔術師達が同時に吹き飛び廃墟に激突していき最後は地面に転がり動かなくなる。

「いい蹴りだな」

「いえ。あと、もう疲れが見えてましたから。早く終わらせるとこは」

瑠奈の頭上に光が現れる。瑠奈が鏡を作り上げ血を流す魔術師へと角度を調整する。魔術師が朝を滲ませ自ら放ったレイが当たると煙を吐き全身焦げながら白目を剥きその場に倒れる。

「結構頑丈」

「あのロープのせいだな」

リアルが告げキヨが手を叩く。

「ならば、もらおうかな。綺麗すぎたから不思議と思っていたがそういうことか」

「はい」

「…」

「ああ。まずギルドのもの達から行ってからでいいか?」

ソフィーが強く頷く。

「はい。あと」

「いいよ。あちらも王室のもの達から話を聞きたいようだからな」

キヨが歩き魔術師達のロープを颯を使い剥ぎ取った。


ーう…。

上半身裸の男が目覚める。そして横を見て壊れた眼鏡をかけ寝込む魔導士の男がおり、その隣に座りぶつくさ文句をキヨへというドワーフもいた。

「ハイル。グリュー」

「ん?ザイード。起きたか」

「なんとか…」

「キヨさん。女性のエルフの方見つけました」

「ああ」

ザイードがなんとか起き上がるもラファを見てギョッとする。

「な、ぜ、り、龍、が」

「そこの嬢ちゃんの相棒だそうだ。あと、こいつら俺たちが交戦しているのを見てやがったんだぜ。加勢するならさっさとしてくれ」

「一応してはいたぞ。風の結界を張り即死を防いでいた」

「そこ。確か元大司教の部屋です」

ザイードがソフィーと瑠奈を振り向き、リオルが話す。

「行くならば早く行け」

「リオルは行かない?」

リオルがフィオナへと視線を向けるもすっと逸らす。

ーなんだ?あの男は。

ザイードが冷や汗を流し、リオルがザイードと目を合わせる。

ーやばい感じしかしない。

「瑠奈。私が行くよ。そこの者から文句を言われるのも疲れた」

「うるせえ。言いたくなるんだよっ」

「ふふ」

キヨがその場を離れ、瑠奈がやれやれとする。

「何者だお前らは」

「ティーチ殿の、妹君との事です」

ザイードがハイルを振り向くと瑠奈が目を丸くするもハイルの隣にもぐらがいるのが分かった。

「もぐら?」

「精霊ですよ…。精霊が、教えてくれたのです」

ハイルが力を込め体を起こし息を弾ませる。そしてリオルへと頭を下げる。

「偉大なる空の使者殿。このような形でお目見えした事嬉しく思います」

「空の使者?」

「龍だ。青い竜リオル殿だ」

ザイードが目を見開き驚愕する。

「人は我らを狩の対象としかみたいなあと思っていたが」

「いえ。ただ、そう思う者達もいるのは事実です」

ハイルが頭を上げ、グリューが話す。

「思うのは人族だな。ハイルはエルフと人のハーフで俺はドワーフだ。エルフやドワーフ。俺たち一族は竜を守神としているが人はそうではないからな」

「それは保身か?」

リオルが冷ややか睨むと空気が冷たくなる。グリューが冷や汗を流し、瑠奈が話す。

「その人は保身じゃなくて事実を話しただけ。いちいち怒る必要はない」

リオルが鼻を鳴らし、グリューがふううと長く息を吐き、ハイルもまた息を吐くがすぐに後ろを振り向き望と八雲、ヒカルを見るとその八雲の背に包帯を巻いた力のないエルフの女がいた。

「望さん。ヒカルさん。お疲れ様です」

「ああ」

「キヨさんから運べと言われてな」

「あの人も人使い荒いですね」

「いつもの事だろ。あと、報告のあったガルダの子供他は回収した。こっちは怪我の程度は?」

「俺は恥ずかしながら頭打って先に気を失っちまったからそこまでねえ。その後こいつらが俺ら庇って大怪我しちまってな」

グリューが2人を指差しエルフを見る。

「エハナは?なんか変なものに閉じ込められて連れ去られたのは知ってる」

「…し、痺、ます」

かろうじてエルフのエハナが答える。

「麻痺薬を飲まされて犯されかけたところをラファが痛めつけて止めた」

「は、い。た、へん、あ、り」

『今は休まれて下さい』

「ああ。呼吸の乱れもある」

「ちっ。強い毒をもったな」

ヒカルが頷きザイードを見る。

「このメンバーのリーダーですよね?」

「ああ」

「はい。魔導局に運びます」

「ナガハラの子供か」

「え?知ってます?」

ヒカルがリオルを振り向きリオルが話す。

「ああ。人の中で唯一ナガハラと葵、アルスランを我々は信頼している」

瑠奈が目を丸くし、リオルが話す。

「後は死んだエルフだ。彼らが私たちに居所を与えてくれたからな」

「何も聞いてない何も話してないあのおっさんども」

「そうだな」

瑠奈が呆れながら頷き、ヒカルが話す。

「俺もそんなの知らないし」

「まだ来ないのか」

キヨがほぼ全裸の男達を浮かばせ連れてくると指を鳴らしその場に落とす。ソフィーが顔を赤くさせ横を向き、瑠奈が望を見る。

「望さん」

「手加減はした。あと、全身凶器だったから仕方がない」

「ふふ。武士のほんの情けだけは残しているからいいだろう?ソフィー。若い連中だ。知り合いとは物分かりのわかる奴はいるか?」

「は、はい」

ソフィーが顔を向け気絶した男達を見て指差す。

「そ、そこの茶髪の短髪…。ランスといって、魔術学校の、首席です」

「ああ」

「まさか、ヤンガルの」

「捕虜だ。そして、若者達は老害達によって戦で命を散らしたばかりか今もまだ使われているそうでな」

「老人もいましたよね?」

「あちらは私が特殊な牢に閉じ込めた。ヒカル。このもの達も運んでくれ。老人はその後だ」

「わかりました」

ヒカルが懐から魔法陣の描かれた布を出し広げる。そして魔導局と繋がると早速、武装した兵士と魔導士が現れ各々拘束や治療をするためにエハナたちを運んだ。


「…特殊な牢」

「ああ。特殊な牢だ」

蠢く巨大ミミズや虫にうもれ仰向けに倒れた老人が白目を向け泡を吹き気絶していた。瑠奈が気持ち悪く身を引き、ソフィーが汗を滲ませる。

「ざまあねえな」

グリューのみ手伝いのためついてきており、リオルが話す。

「幻覚か」

「ん?幻覚?」

「その通りだ。心を病んでこの老害は虫達が苦手と分かったからな」

キヨが指を鳴らすとミミズ達が消え、結界も消える。

「ああ、擬似体験って奴ですね」

「ああ。風、水を使ってな。後は感覚で颯が再現した」

『そーだよー』

颯がくるくると周り、グリューがふんと鼻を鳴らす。

「さて、あらかたすんだ。ソフィー。案内をしてくれ」

「はい。あとその、老師は…」

「こっちが捕縛して連れてく」

ヒカルがハリーを乗せボードに乗り空から現れると下へと降りる。

「これいいね」

「だろ?」

「ふふ。なら頼むな」

「はい」

ヒカルが返事を返し魔術が使えない拘束具を腕に嵌め込むと縄で縛りボードと繋ぐ。そして風を使い老人を吊るしながら再びハリーを乗せ空へと上がりその場を離れた。


破壊されたもののかろうじて残る学校でソフィーがはずれの倉庫へと案内し隠された扉を開け暗い通路を灯りを照らし歩いていく。そして埃まみれの空間へとくるとてんてんと魔獣の骨が散らばり唸り声が響いていた。

「この声は?」

「イデア様です…。人型キメラにされたのですが、空腹を堪えておられるのです」

ソフィーがすぐに前へと進む。すると徐々に荊が現れ周りが荊だらけとなる。そして骨もまた増え始めていた。

「人の代わりに魔獣を喰らっていたのか?」

「はい。ですがもう限界です。魔獣は多くの魔素を帯びているので毒でもあると、私は思います。体が食べていくと共に変わりこの荊も広範囲に」

『おおなあひい』

ひたっと音が響くとソフィーが赤い花がいくつも咲く場所を照らす。その下に骨が剥き出しになり赤い目がいくつもあり皮膚が溶けるように地面に張り付いた者がおり、それが僅かに顔を上げると顔の上部分もまたいくつもの目が侵食しその目があちこちと動き回っていた。

「イデア様…」

荊が動きソフィー達の前に振り下ろされる。

「イデア様っ。助けますっ。助かりますっ」

「無理だな」

ソフィーがリオルを振り向く。

「魔獣で堪えていたのが不味かったな。魔素を取り込みすぎて体が全て汚染されている。あの体はもう人の体から遠ざかった。竜の民の血を引くこの娘でも戻せない」

『はい。一部でしたら取り除けたのですが難しいです。そして治癒も受け入れることができないばかりか魔素により悪化します』

「そんな……」

ーもう、いい。

ソフィーが苦痛に顔を歪め、イデアの声が響く。

ーわた、しは、いい…。

「イデア様」

ーらく、にして…。

ソフィーが涙を滲ませ、イデアが僅かに笑む。

「最後に残す言葉はなんだ?」

リオルが青い炎を上げる。

ーオト、に…。とも、と、しあわ、せに。ソフィ、ありが、と。あな、たも、し、あわ、せに。

「待ってっ!」

リオルが青い炎をイデアへと向け放つと炎があたり燃え広がる。

「イデア様!!いでっ」

望が向かおうとしたソフィーに手刀を当て気絶させるとソフィーを抱き上げる。そしてイデアが青い炎の中へと姿を消した。


ーオト。オト。

青年が上へと手を挙げる。

「イデア……」

青年の手が胸へとくると奥歯を噛み締め歯を歪め小さく唸る。

「イデア…。死んだのか……」

「オト様。静かに」

マツリが友哉を抱きながら震え声を上げると悲鳴が響く。外ではいくつも煙が上がり兵士や人々が城へと攻めていた。

「マーマ」

「会おうと約束したじゃないか…。三人でまた、暮らそうと」

見えない目から涙が流れ落ちる。

「約束したのに…。イデア」

「とーとー」

ーお話しされた方がまさか、亡くなられた。

扉が破壊され村人と重しき者達が流れ入る。マツリがひっと声を上げる。

「わ、私、達は」

「マツリと友哉は生かして欲しい…」

マツリが青年を振り向き青年が両手で目を覆い俯く。

「何もしていない…」

「残念だがそうもいかない」

「ああ」

村人達がまずはマツリを掴み友哉を話す。友哉が驚きながら男の脇に挟まれきょとんとし、マツリが乱暴に床に叩きつけられ抑えられる。

「とも、や、様。おと、や、様。うっ」

マツリの目の前に老齢の男の首が転がる。

「ひいっっ」

周りが笑い声を上げ、男がオトヤの腕を掴み立たせるとほおを片手でつかみ顔を上げる。

「異界人だが目が見えないやつか」

「目が見えないのは気にするな。それに、この部屋を見る限り大事にされていたようだからな」

男の手に力が込められる。

「ああ。俺らの子がのたれ死んだ。こいつらもそのうちの1人だ。のうのうと生きてやがる」

「ち、ちが、う」

男がマツリを見下ろしマツリが苦しく声を上げる。

「からだ、を、みろ…」

男が音也を振り向き乱暴に着ていたシャツを剥ぎ取るとその目を見開く。そこには骨と皮で痩せこけ拷問の跡であろう、皮が剥ぎ取られ穴が開けられ乱暴に包帯が巻かれた状態だった。

「もう、長くない…。イデアも、苦しんで死んだ」

男が音也を見ると音也が涙を流す。

「俺は、好きにしていい…。だが、マツリと息子の友哉は…」

「とーとー」

男が友哉へと視線を向け友哉が足をジタバタする。

「とーとー」

「友哉様も、耳を潰されている。ここにいた、ヤンガルの、逃れてきた王族達のせいで。音哉様たちも被害者だ」

「おい!!キメラがきた!!」

再び叫び声やけたたましい破壊音が響くと村人たちがすぐに外へと逃げ男が汗を滲ませ音哉を離すと音哉が力無く倒れ唸ると友哉が下ろされる。

「とー」

通路が突如破壊されるように巨大な物が通り過ぎながら部屋から出た男たちを一斉に飲み込む。男が青ざめマツリがすぐに友哉を抱き音哉の元に逃げ苦しく呼吸をする。

「キメラ…」

『みーつーけーたあ』

マツリがゾッとし部屋に一つ目玉が見えると天井が破壊されその顔を見せる。それは、虐げられていたメイドでマツリが震え怯えていき、男が冷や汗を流す。

「…ナティーシャに頰を叩かれたメイドか」

『正解。ふふ』

キメラが光り裸体の女が姿を見せる。

「み、みんなは」

女が深く笑みを浮かべ膨らんだ腹を撫でる。

「美味しくいただいたわー。さて、おーとーや」

女が楽しく近づきながら男の腹を殴り男を飛ばす。男が壁に激突しそのまま痙攣したあと動かなくなる。マツリが震え上がり友哉が目を丸くすると裸の女を見る。その女は音哉の腕を掴み立たせる。

「あなたは私が暫く飼うわ。そこの2人も」

マツリがびくっと震え友哉がじいと女を見上げる。

「俺はいい。だが2人は」

「私が決めた。さあ、いきま」

女の手から音哉が消えると女が目を見開きすぐに辺りを見渡すと部屋の隅に立っているタイシと音哉を見て目を見開く。

ー嘘…。ーえ。えっ。

「エル。治癒を」

「タイシ様ああ!!」

タイシが僅かに硬直し、女がはっとしすぐに部屋のクローゼットを掴み服を引っ張り出す。

「やだ私ったら裸で…」

「タイシ?」

タイシが音哉を振り向き音哉が話す。

「今村?」

「そうだ。久しぶりだな。音哉」

「なんで、ここに…」

「この世界にか?それともこの場所か?」

「どちらも…」

「ああもう。何かしら話があればよかったのに」

マツリが震えるが目の前に影が落ちるとエルハルトを見上げる。

「確か、ソーニャだったな」

「はい…。ああ私のことを」

「今俺にはユリアーナがいる」

「えっ」

ソーニャが固まり、タイシが話す。

「まだ生まれていないが子供もいる」

「そ、そん、な……」

「その体は自分から志願してなったのか?どちらにしろお前は食べ過ぎだ」

ソーニャがゾッとし、タイシが音哉から離れながら鞘から剣を抜く。

「そ、の。わ、私、は」

ソーニャが冷や汗を流し後退る。

「あ、わ、わた、し」

タイシが黒い剣を向ける。

「ゆ、ゆる」

ソーニャの胸元に刃が突き刺さりとおるとソーニャが身を逸らし小さく声を漏らす。

ーそん、なあ。

ソーニャの体が湯気が立つとタイシが剣を抜きソーニャを背にし離れる。マツリが目を見開き徐々に光りながら体が小さくなるソーニャを見る。そして最後に幼児となると唸り起き上がり小さな紅葉の手を見てギョッとする。

「エル。ソーニャは腕のある術師だ。連れていく」

「はい」

「わ、わちゃしにゃんじぇこんにゃっ。えええっ!?」

ソーニャが声を上げるが影が落ちるとはっとしエルハルトを見上げる。そしてエルハルトがソーニャを浮かせるとソーニャがジタバタする。

「あにゃ。ひえ」

「ユリアーナは私の妹だ」

「え…」

エルハルトが目を赤くさせる。

「私がお前の見張りだ。よいな?」

ソーニャが冷や汗を流しながらこくりと素直に頷くとエルハルトが元の緑の目に変え頷きタイシを振り向く。

「音哉。音哉の姉の奏さんからお前を探して欲しいと頼まれた」

「…姉さんが?」

「ああ」

「…俺は、死んだことにしていい。そして、死にたい。俺を助けてくれてそばにいてくれたイデアが殺された」

ーイデア?

「だいごおーじょ。あにょ。しょくぶつゅにょキメ」

ソーニャがぎくりとし、じいと見るエルハルトから顔をぎこちなく背ける。

「…キメラにされたのか…。だから、最後に」

「ソーニャ」

ソーニャがビクッとしタイシが告げる。

「植物のキメラで?」

「そ、そにょ」

「ランドベルド」

ソーニャがすぐさまエルハルトを振り向きエルハルトが話す。

「それからヤンガル元女王の命のようです。あとは、またアストレイ国女王レイミアが関わっているようです。植物型のキメラに。イデア姫はそのキメラの実験台として犠牲になられたようです」

ーこ、ころを。

「読んだ」

「ソーニャ」

ソーニャがびくっと震え目を赤くさせこちらを鋭く見るタイシを見て怯える。

「分かっていることは全てこれから先向かうところで素直に話せ。全てだ」

「ひゃ、ひゃい…」

「ああ。音哉。考えるのは後にしていくぞ。後その2人は?」

マツリが僅かに怯え、音哉が話す。

「獣人の子はマツリだ。もう1人は俺の息子の友哉」

「分かった」

タイシが音哉の腕を握り肩に回す。音哉が話す。

「近くに、男がいる。治療して欲しい。俺や子供達を殺さないでくれた」

「ああ。紅蓮」

ソーニャの近くで紅蓮が姿を見せるとソーニャがビクッと飛び跳ねた。紅蓮が赤い目をソーニャへと向け牙を剥き出しにするとソーニャがひいっと思わず声を上げ、紅蓮がくくっと笑って見せるがタイシに注意されると渋々と離れた。


ーパパ。苦しいよ。お腹すいた…。

男が目を覚ましすぐに体を起こすと目を血走らせ全身に汗をかきながすも奥歯を噛み締め歪めるがはっとし周りの見知らぬ質素な部屋を見渡す。

「どこだ…。確か、あのキメラに」

「元イーロンの付近だ」

男がヤンを振り向きヤンが話す。

「戦時中、タイシが見つけた相当昔の隠された空間とのことだ。入るには精霊の力を使える物でないと」

「なぜそんなところに…」

「音哉。タイシが姉から頼まれて保護したタイシの知人でもある奴が助けて欲しいと頼んだんだ。息子とその世話人を殺さずにいてくれたとかで」

「…」

「あそこでの生き残りはあんただけらしい。他はキメラとあんたたちが攻めた奴らの援軍で全滅した」

「そんな…。なら、村は」

男がふらめきヤンの服を掴む。

「俺たちの村は…」

「全滅と聞けばわかるはずだ」

男が両膝を突き力無く項垂れる。

「じー」

ヤンが走り来た友哉を振り向く。その後ろを慌ててマツリが追いかけ友哉を抱くと目の前の男を見る。

「あ…」

「…お前たちを殺しておけば、俺はよかったか?」

「え?」

「それは2度と言わずに今は怪我の治療をされてください」

男が紅蓮を連れたタイシを見て目を見開く。

「あんた…。たしか、あの時村の大型魔獣を退治してくれた…。あと、龍…」

「ぐーれん」

「あっ。ちょっ」

マツリが朝を滲ませあたふためき、友哉が紅蓮の腕を抱く。

「にーにのペット」

『…ペットではないからな小僧』

「ならなに?」

紅蓮がムカムカし、タイシが話す。

「聞こえは良くなってきたみたいだな」

「あ、は、はい。少しまだ小さな音は聞こえにくいようです」

「ああ。ヤンさん。また見えますね」

タイシが片目を指差すとヤンが目に触る。

「…どうにかしたい」

「はい。でも、少しずつ伸びてきてますから」

「ああ」

『タイシ様。その男はどうされるのです?』

「あの乗っ取られた国をまとめてもらいたい」

「え…」

「俺にはそんなの無理だ。あと、教えてくれ。俺が住んでいた村は?村はどうなった」

「そちらが城を攻めていた時に攻められたようです。残されていたのは残骸と多くの捕食された死体のみでした」

男が顔を歪め再び俯くと涙を落とす。マツリが口をつぐませ、ヤンが話す。

「相手にも預言者がいて準備をしていたようだ。だから、主要な人物は全員無事になる」

「くそ…んだよそれ」

男が震え泣き続けた。


ソーニャが苛立ちながら冷ややかに見上げ、ナターシャもまたソーニャを見下ろし火花を散らしていた。その場にグリフォンがいたがめんどくさそうにあくびをする。するとエルハルトに連れられてきた音哉を見る。

『そちらの治療は済んだな』

「ああ。あと、まだやっているのか」

『そうだ。面倒臭くて仕方がない。オト。体の方は?』

「前より良くなった。なんと言おうか…。否定すればよかったのにそれをしなかった」

ーたーたー。たーたー。

友哉のにこにこした顔が思い浮かぶと音哉が息をつき、グリフォンが話す。

『なら生きるしかないな』

「ああ」

「まさか、1000さいも年増だったとは驚いたわユリアーナ」

流暢ひ言葉を発することができるようになったソーニャが嘲笑いつげ、ユリアーナがイラっとする。

「あら。そちらはそんな体になって。また幼児返りかしらねー」

ソーニャもまたイラっとする。

「くだらん」

『お互い間をおいて相手の罵り合いを繰り返している』

「どちらも性根が悪いんだな」

2人が音哉を振り向く。

「タイシにはなぜそんな人ばかり寄ってくる」

「違うわよっ」

「わ、私は違います」

「何してんの?」

クレハがその場にくる。

「そこのおちび連れてくわよ」

「私はおちびじゃないわ!ちょっと!こら!まともに運びなさいよーー!!」

クレハの脇に挟まれソーニャが声を上げ離れる。

「ふん」

「ユリィ」

「…」

「見苦しい」

ユリアーナが汗を滲ませ黙り込む。

「とーとーっ」

友哉が走り音哉に抱きつくと音哉が友哉を抱き上へと上げ抱き直す。そして面倒くさそうに紅蓮がやってくる。

「ぐーちゃん」

ーぐーちゃん?

三人がやや衝撃を受け紅蓮がカチンときて怒鳴る。

『紅蓮だといっているだろうっ』

「ぐーちゃん」

『違うっ』

「友哉。マツリは?」

「マチュリはにーにーのとこ」

『そうだ。あとその子供を教育させろっ』

「呼び方に関してはまだわからない事が多い。周りが何も言わない以上堪えて欲しい」

『私が言っているだろうっ』

「えと、虐げられていたんですね」

音哉がユリアーナの声を聞きとり頷く。

「俺が力及ばずで友哉にもマツリにも苦労をかけさせてしまった」

「そうだったのですね…」

「その目はいつから?」

エルハルトが尋ね、音哉が話す。

「アストレイという国により攻められた時に。第二王女が突然きた。今まで、イデアに無関心で放置していたのに。その王女のせいで友哉の耳もやられた。イデアは」

音哉が拳を強く握ると友哉がじっと見ていく。

『ふん。そちらが弱く何もできなかっただけだろう』

「紅蓮様」

「そちらのいう通り。俺は何もできずイデアも失った。そして、仇は打たない。打ったところで残るのは苦しみだけだ。だが、相手がこれから先不幸がくればいいと考えてはいる。今でものうのうとして生きているのに腹が立つ。そして、どうあれ俺たちは捨て駒扱いであり、飽きたらただのゴミとして処理だ。同じ人でありながら人としての心はない。だから、これから先死ぬまで不幸であり続けて欲しい」

紅蓮が鼻を鳴らし、エルハルトがじっと音哉を見る。

ータイシ様が話されたあの奏の弟なら何か秘めていそうな気もしなくは無いが。

『そちらはこれから先どうするんだ?』

「ああ。姉に会うまでこちらで過ごすことになった。俺もタイシから聞いて驚いた。けど、姉は確かに変わっていたし、人の更に上をいく存在でもあった」

『ああ』

「あの、タイシ様と同じ扱いを学舎で受けていたそうですがその理由はなぜですか?」

ユリアーナが尋ね、音哉が話す。

「姉が目立っていたこと。そして、俺は今もそうだが俺は元々目がほぼ見えていなかったんだ。ここにきてイデアたちからの治療を受けて初めて世界の色を見た。とても美しかった。ただ、あちらでは俺は障害者としてありながらタイシと同様、できない奴らの的にされた上、汚い大人の憂さ晴らしにあった。俺もタイシが行方不明になった後。半年後にこの世界に連れてこられた。そして奴隷として売られたあと、捨てられた先にイデアがいてイデアに助けられた。それから先は平和であったけれど、奴らのせいでそれも失った。今もまだ何かあればと思うと恐ろしさしかない。ただそれでも父親として友哉を守りたい」

音哉が友哉の頭を撫でると友哉が嬉しく笑み浮かべ音哉を強く抱きしめる。

ーオト。貴方も。

友哉が目をぱちっとさせ離れていく淡い光を見上げていった。


ーもし、奇跡が起きるなら。せめて少しでも可能性があるなら私はやれるだけのことをしたい。

イデアを飲み込む青い炎を切り矢が2本刺さった。

小さな目が開けられ辺りを見渡す。

ーここ…は。

見知らぬテーブル、椅子、天井、そしてベッド下を見ると大量の本が綺麗に重ねられ置かれていた。小さな手が本へと手を向けるも驚くようにひき。その手を見る、

「え…」

そう幼い少女が目を丸くしその体に触れるもはっとし横で眠る瑠奈を振り向く。

「かろうじて蘇ることはできた」

少女が椅子に座るリオルを振り向き今度は自分の顔に触り手に触る。そして布団を剥がしその先を見るがその先は何も無かった。

「足はない。体が」

「よかった…」

リオルが涙を流す少女を見ると少女が顔を歪めしゃくりを上げる。

「もう、ねっこ、じゃ、ない。繋がって、ない…。よかったあ…」

少女が大粒の涙を落としながらシーツを掴む。瑠奈が鳴き声で起きると少女を見て手を伸ばし抱きしめ背を叩く。

ー暖かい。暖かい。

「リオル…。泣かせた…」

「勝手にその娘が泣いたんだ」

「んー、怖い夢見らあ」

瑠奈が少女の頭を撫でる。

「もお、へーき」

少女がわっと声を上げないていく。すると扉がけたたましく開く。

「イデア様!おめざっ」

ソフィーの顔に枕が直撃しそのまま後ろに傾きよろめく。

「うっさい…。寝かせろ…」

ソフィーの後ろから来たキヨがくくっと笑いソフィーが枕を抱き落ち込むとキヨが扉を閉める。リオルがやれやれとし少女がすやあと眠る瑠奈を見る。

「そこにいる瑠奈。その娘がお前を助けた。私の力を使い自らの血を使い浄化と再生を行い魔素を取り除いた」

『はい』

少女が後ろを振り向きラファを見る。

『ただ、力を使いすぎましたので今は体力回復のために眠られております。あなたもお眠りくださいイデア』

イデアが頷きしゃくりを上げていくも徐々に落ち着くと瑠奈の胸に顔を埋め眠りに落ちた。


ーファイアっ。

ぽっと小さな炎が小さなソーニャの手に現れすぐさま消えるとソーニャが頭を抱える。

「なんでーー!ファイアっ。ファイアアッ!」

クレハが面倒臭そうに椅子に頬杖を付き見ており、ブレイズが壁に背をつけ立ち見していた。

「魔素がほほ消えてるもの。当たり前よ」

「ならどうにかしてっ」

「却下だ」

ソーニャがぎくりとし、タイシが男を連れ中へと入る。

「そのままでいるんだ」

「そ、そんなあ」

男がソーニャを見ていきタイシが話す。

「クレハ。レオと共にワルプスへ行ってくれ。そこに欠片がある」

「はい」

「ああ。ブレイズはヤンガルのソルマータに。アルベルトの相手をしてもらいたい」

「はい」

「ソーニャはブレイズについて行くこと」

「は、はい…」

タイシがああと返事を返しソーニャがしょんぼりとした。


湿布に包帯とあちこち生傷を負ったミオが腕をプルプルと震わせながら起きたイデアに両手を当て光を当てていた。そのそばにヒカルと瑠奈がおり、ヒカルが話す。

「大分力が一定してきたなー」

「まあまあしごかれてきてますからね」

「うん…」

「その、無理とか」

「へえきへえき」

「これもまたミオのためだから気にしないで」

「そ、そうです」

イデアがミオを振り向きミオが真剣な眼差しを向ける。

「できます」

「…」

「あ、なにかあったら俺が止めるから」

「そうそう。ヒカルさんは」

「何言ってるんですか!イデア様を都合よくうっ」

瑠奈が入ってきたソフィーを掴み背負い投げし素早く押さえ込みすると呆れながら外で大笑いするキヨを見る。

「ちょっとキヨさん」

「すまんすまん」

「本当超特急だな。それより確か、望さんが見てたんじゃ」

すっと望が来るとソフィーの元へと向かう。そして瑠奈がどくとすぐさま立たせる。

「え、えとお。イ、イデア様の」

「大変まだ元気そうだからな。追加で10だ」

「は、はい」

ヒカルが僅かにふきだし、望がソフィーを連れ外へと向かう。

「ミオも終わったらすぐに来るように」

「はい」

「ああ」

望たちが去るとイデアがしどろもどろとする。

「その、ソフィーが申し訳ありません」

「いやいや」

「元気有り余りすぎてるけど止める人いるから平気」

「ああ。ミオ、そこまで」

ミオが手を下ろし息を整える。

「なら次望さんのところ」

「はい」

「少し休まれては」

「だめ」

「はい。休みなくしないとダメなの。あと、ちゃんと考えてるから平気」

ミオが頷き次とややふらつき外へと出る。

「修行って、大変ですね」

「いやいや。まだ楽だし、イデアと比べると簡単だ」

「いや、イデアの場合は苦行で比べるまでないですよ。そしてイデアは気にせずに体力回復に努めて。また会いたいなら元気な姿でいないといけない」

イデアが頷き、ヒカルが話す。

「あとはそっちも新しい生活に慣れることだ」

「はい。義足の練習とかもしないとだから」

「はい」

「ああ。それからまた再開した時は家族の補助を受けることだな」

「そう。遠慮しなくていいからね」

「ですが、ともも目が…」

「そこはお互いにお互いを助け合う事。現にここでも同じようにお互い助け合って生活する人もいるからな」

「そうです。まあ、今は体力の回復。それから定期的な検査だね。私の血かあ。まあ、まだわからないことが多いから。とにかくどうなるかもわかってないから気をつけて生活すること。些細な変化でも伝えてね」

「分かりました」

「ええ」

「あと、しばらくイデアは授業で忙しいんで局長の孫たちが世話するから。そして落ち着いたら色々話も聞かせてくれ」

「はい」

ヒカルがよしと頷き、瑠奈が頷くと私はこれでと伝えその場を去った。


ーヤンガル。

助けられた男、アルベルトが瓦礫とかした町をブレイズ、ソーニャと共に歩いていたがソーニャのみ縄で縛られアルベルトに引っ張られながらぶつくさと文句を言い続けていた。

「なんで私がこんな目に合わなきゃいけないわけ?タイシ様もタイシ様よ。どーして、あのユリアーナと」

「さっきからうるせえ。黙ってろ」

ソーニャが鼻を鳴らし、ブレイズが大きな石へと指を向けると石が軽々と浮かび横へと避け転がり目の前に空洞が現れる。

「ふうん。無詠唱でねー。流石竜の民」

ブレイズが無視をしソーニャがむすっとし、アルベルトが背中を押すと前へと進んだ。そして梯子を降りブレイズが壁に手を当て光を当てると一斉に小さな炎が浮かび通路を明るく照らす。その先に焼け落ちた瓦礫がありブレイズが進み、ソーニャが話す。

「その先にイデアがいたわ。確かに」

「植物キメラにされた王女だな」

「そーよ」

あちこち魔獣の骨が散らばっていたがそれと同時に焦げた跡も壁や床をなぞっていた。そしてその奥で天井や床、壁が焦げ付き、ソーニャが顎で示す。

「そこにいた。誰かが焼き払ったわね」

「殺したってことか?」

「楽にさせたんじゃない?」

ブレイズが進み焦げた二本の棒を手にし光を当てる。

「棒?」

「生きているな」

「は?」

ブレイズがソーニャを振り向く。

「これは矢が燃えた跡だ。そして、燃えたのなら人の燃えた跡もあるはずだがその跡がない。あと、この矢から知っている力を感じた」

「誰?」

「ああ。タイシ様の妹君だ」

「妹?タイシ様に妹いたの?」

「いる」

ソーニャが驚き、ブレイズが引き返しアルベルトに棒を二本渡す。

「アルベルト。ソーニャを連れてまた戻ってくれ」

「ああ」

ブレイズが先に進み姿を消し、ソーニャがアルベルトに縄を引かれ、アルベルト共にその場を離れた。


力尽きた魔導士たちが瑠奈が張った結界の檻の中に入っていた。その瑠奈は顔をしかめながら座りキヨが遠くで風を起こし魔導士たちを圧倒し払っていた。

「どんだけ粘るのあの老人どもは」

「…とても強いからな」

「はあ」

「お疲れー」

ハリーが到着すると瑠奈が竜巻を指差す。

「お疲れ様です。キヨさんが大物を引き連れてるので今のうちに連行してください」

「わかった」

「はい。それと、数名が脱水症状と栄養失調起こしてます」

ハリーがうなずき捕まえられたまだ自分と同じ年頃もいる魔導士たちを見る。その中には力なく横たわったもの達もありその顔は生気がなくやつれていた。

「実際に餓死された方もいるそうです」

「キメラたちもいて、食糧補給もままならないどころか、あの方達からもこき使われていたからな。学徒達が一番可哀想だ」

髭を生やした年配の男が力無く告げ、ハリーが話す。

「話はまた向こうで。瑠奈はどうする?」

「キヨさんの加勢に入ります」

ハリーがなら気をつけてと話すと瑠奈が頷き答えた。


キヨがやれやれとし、老魔導士の攻撃を竜巻の壁を使い弾いていた。

「まったく。体力が有り余っている」

黒い炎がキヨの横から突如現れるとキヨが驚愕するも矢が地面に突き刺さり光を放つ。そして黒い炎がキヨを飲み込むと黒い炎を放った老婆が笑う。

「はははっ」

その老婆の背後に逆さになったラファがそろおと現れる。そして黒い炎が消え去り菱形の結界に包まれたキヨが姿を見せる。

「くっ。己小娘えっ!?」

ラファが抱き抱え空を飛ぶと老婆が悲鳴を上げ、ラファに遊ばれるようにくるくると回って行く。

「ばばあもいたのか」

「キヨさん。私たちもそのババアにいずれなりますからね」

「はは」

キヨが軽く笑い、瑠奈がやれやれとその場にくる。そこにまた一体のラファがキヨと対峙し合っていた老人を

「すまんなあ。相手をしてくれて」

「いえ」

「ひええええええっ!!!」

老婆が空から垂直落下するもラファが地面スレスレでぴたりと受け止める。老婆が泡を吹き、瑠奈がやれやれとする。

「ラファ。おわり?」

『はい。終わりました』

「ええ」

「あらかた始末はついたな」

「はい。あと、魔導局じゃもう入らなくなってきたってことなのでアストレイが受け持つそうです」

「わかった」

キヨが服の襟を掴み仰ぐ。

「しかし暑い」

「そうですか?」

「ああ。動いたからな…」

『キヨ』

キヨの視界がぼやける。

ーなんだ…。

ーキヨさん。

ーキヨ。はっ。空気違うっ。

ーえ。

颯がすぐにふらつき座り込んだキヨの周囲の空気を入れ替える。ラファが辺りを見渡し瑠奈もまたボウガンを構え見渡す。

『キヨっ』

「…ま、て。ね、せろ。きも、ちわる。まわ、る」

キヨが青ざめながらその場に体を横たえ目を閉じ息を弾ませる。

「一酸化炭素中毒」

『一酸化炭素?』

「空気が汚染されたの。酸素を取り込んで休めば良くなるけど」

ー暑いって言ってたな…。

瑠奈が心音を鳴らし胸を抑える。

ー赤い髪…。

ラファがぎょっとしすぐさま辺りを見渡し忽然と消えた瑠奈を探しあたふためく。そして瑠奈が見慣れた空間の中を見てすぐにボウガンを握るもその手を緩め、目を青くさせる。

ーエレノアっ。死ぬな。死なないでくれ。エレノア。

瑠奈が後ろを振り向きブレイズを見る。

「リズ……」

瑠奈がボウガンを落とし口を抑えると頭を振るも涙をいくつも落とす。

ー胸が熱い…。流されちゃう。流されて。

ブレイズが瑠奈を強く抱きしめると瑠奈が顔を赤らめ歪める。

「ちが、う。瑠奈。わ、たしは。でもお」

瑠奈の脳裏に過去の記憶が蘇ると瑠奈がブレイズを抱きしめ力をなくし、ブレイズが瑠奈を支えだき続ける。

「りずうう…。い、きてた、生きてる…」

「ああ」

「ごめん。ごめん。まってて、待ってたのに。弱くて…。み、んな」

「もういい……。生まれ変わって、きてくれた。ずっと、待ち望んでいた」

ブレイズが涙を滲ませ瑠奈が頷きしゃくりをあげ泣き続けた。

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