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運命のミオ  作者: 鎌月
40/64

欠片2

ーこの世界は力が物語っている。

瑠奈がむかむかしながら着替える。そして扉を開け外で待っていたヒカルの元へと来る。

「あー腹立つ」

「だよな。タイシ。あいつ自分ばかり背負ってるからな」

「本当そうです」

ヒカルが瑠奈と共に転移魔法へと来ると足で踏む。そして一瞬で姿を消すと今度は魔導士2名と兵士、ステラ、ハリスがいる転移魔法のある部屋へとやってくる。

「連れてきました」

「ああ」

「ダリスさんは教会ですか?」

「いや。王代理に呼ばれてな。私が案内をする」

瑠奈がはいと返事を返し、ヒカルが話す。

「ステラさん。父は?」

「奴は望の作るコーヒーという飲み物を堪能中だ」

「あー、はいはい。まったく」

「長年飲まれませんでしたから反動が来てるんですね」

「ああ。なら、尋ねるついで買い物したら戻るから。何かあったら知らせてくれ」

瑠奈がはいと返事を返しハリスがこちらだと告げ瑠奈が後について行った。


瑠奈が城下町をハリスと共に歩くと周りが物珍しそうに瑠奈を見ていた。

「私が珍しいですか?」

「それもあるが、タイシ殿の妹としてもう話が舞い込んでいる」

「兵士さん達から?」

「ああ。あとは、白い龍のラファ殿だ」

ラファが勝手に出ると辺りを見渡した途端、周りがすぐさま逃げ隠れる。

「なんで勝手に出るの?」

『…問題ないかと思って』

ラファがしょんぼりとし頭を落とす。

「勝手に出ないの。次から」

「いや、その次からももう遅いと思うが…」

石が投げられると瑠奈が指先を向け石を止め石を投げた子供を見ると老人が声を上げる。

「こらっ。なにをしておるっ」

「り、竜なんて怖くないからな!」

子供が背負っていた棒を向けるも後ろから明美がその頭を叩く。

「石を投げなんな」

「よかった」

「ええと」

「タイシ殿と知人でリュウ将軍の……」

明美の腹が膨らんでおり、ハリスがダンマリとする。

「妻、になるのか?保護しているとしか聞いていないが」

「あれ妊娠されてますよね」

「ごめんなあ。その龍はんはなにもせえへん?」

ラファがしないしないと頷き明美が怖がる先ほどの男児と他の子供らを連れ近づく。

「明美殿だったか。龍将軍から保護しているとしか」

「あー、まあ、はじめは、はい。今は、はい」

明美が軽くお腹を叩くと子供らが話す。

「赤ちゃんできたってー」

「うん」

「せや。アルスランさんもご存知です。後その子タイシくんに似てるんですけどご親族?」

「ああ。タイシ殿の実の妹殿だ」

「初知り。相変わらず何も言わんな」

「鬼坂瑠奈です」

「鬼坂?」

「実父の知り合いの方の娘として育ちました」

「養子かあ。でも知らんかったなあ。後よろしゅう。タイシ君と同じ東京の施設で育ったもんでな。明美いうねん。出身地は大阪や」

「はい」

明美と瑠奈が握手する。

「こっちの龍はんは名前は?」

『ラファです』

「ラファやな。よろしゅう。触ってもええか?」

『はい』

明美がラファに触れる。

「やっぱ硬いなあ。でもほんのり温かいわ」

「本当に?」

「ほんまや」

子供達が恐る恐る触る。

「本当だ」

「爪硬い」

子供達がわいわいと触り、石を投げた男児も触るが明美が引っ張り謝るようにと告げると男児がごめんなさいと頭を下げた。


ラファが子供達を乗せニコニコしながら歩く。そして瑠奈がハリスと明美の間に挟まれ城下町を歩いていた。

「明美さんはここで何されてるんですか?」

「ここでは子ども食堂開いとるで。あとは保育施設運営をしてるわ。何せこの国見ての通り復興中やし、孤児もえらいおってなあ。話じゃ敗戦国やけど、ここ最近内乱起きたから孤児が増えたって話やったん。それで、うちが龍はんに直談判して食堂と日中の子供らを預かる保育施設を古い屋敷で使われてないとか軽く改修して作ったんや。最初はみんな疑心暗鬼もやし、うちが異界人ってことで中々きいへんかったけど、復興中に子供の面倒も見ながら家の片付けとかせなあかんとか、孤児が増えて食事を盗み食いするのも増えたとか結構おおあったねん。それらを、食堂と保育施設が受け入れることになってからは親御はんとか、お店の人たちから頼まれるようになったわけや。大人も子供もそれぞれの生活があるからなあ。朝から夕方までしか見られへんけど子供も大人も喜んでくれはるで」

「お仕事されながら子供も構わないといけないという大変さが軽減されますから」

「せや。あと子供も遊びたい欲が出るからな。子供は子供のうちにいろんな遊びさせたほうがええねんな。それで学ぶからな」

「いろんな遊びかあ」

「瑠奈ちゃんはそんなんなかった?」

「いえ。ただ、私はそういった保育施設とか行ったことないんです。大抵親戚の家かご近所の酒場など運営される方のところに預けられてました。養子縁組で預けるのが難しかったのか詳細は分かりませんけどね」

「おとうはんは?」

「はい。実父は養育費だけ送って東京。養父はプログラマーしてましたけど職場が鹿児島で帰りも遅かった時とかありました」

「えらい大変やなあ」

「はい」

明美が頷き、子供が話す。

「鹿児島って?」

「向こうの世界の国の領地の名前の一つや」

明美達が古い屋敷を改築した保育施設へと到着すると明美達が手を振り施設へと向かう。

「リュウというと、これから会う方ですよね?」

「ああ。そうだ。アルスラン将軍とは数少ないご友人の関係でもあられる」

「ナガハラ先生もそのうちの1人でしたっけ?」

2人が軍施設へと向かい歩き、ハリスが頷く。

「そうだ。あと、話ではリュウ将軍がタイシ殿に体術を教えられていたそうだ」

「そうだったんですね。なら、結構性格とかもしっかりされてらっしゃるとか」

「いや。私から見れば…、逆かなと。先ほどの明美の方がしっかりされている。明美と出会われてからは時間に正確になったと聞いたし、部下で秘書のものも助かっていると聞いたな。生活の世話をしていたと話していたし」

「その部下は男性ですか女性ですか?」

「女性だ」

「一種のパワハラじゃん…」

「パワハラ?」

「向こうの言葉で、上下関係や仕事の立場を利用して部下の人を不当に苦しめるという意味です」

「そのような意味か」

「はい。まあ他にも性的言動や勝手に肩に触れたりなど、相手にとって不快なことをするのはセクハラとか言いますね」

「ああ。あと、そうだな。簡単にその言葉一つでわかるのはいい。こちらではないことだ」

ハリスが他にはと尋ねると瑠奈が他はと言葉を告げ説明した。


ータイシ君の妹か。

リュウがじいと瑠奈を見て行き、リュウの隣にいたアルスランが話す。

「瑠奈。こちらがリュウだ。海軍大将となる」

「大佐でよかったんだけどね」

「瑠奈です。あと異例の昇格というとこです」

「そう。人手不足も関係あるのと今までされてこなかった評価を考えてのことらしい」

「されてこなかった?」

「以前の王は異国人を嫌っていた。リュウは異国の血を半分引いたハーフになる」

「なら、黒髪なのは血を引くからなんですね」

「そう。この世界に黒髪黒目の人種はいないんだ。いるとしたらそれは異国の血を引いたあちらの世界のアジアという地域の人種のものになる」

「はい」

「ああ。そして、以前の王の時は異国の血を引くものにたいして差別がひどく、評価をあげても何もなされなかった。ここにいるリュウもだがタイシもだ」

「タイシ君は特にかな。どうにも彼の天才ぶりも気に入らなかったようだけど、周りが彼に期待していたり有能な若者と評価していたのが気に食わなかったのと」

リュウがアルスランをしめす。

「気に食わなない相手の元にいたからさらに気に入らなかったみたい」

「ああ」

「ではなぜ、そんな方の元にいつづけたんですか?アルスランさんもリュウさんも。他国から来ないかとお声がけもあったのではないですか?」

リュウが手を下ろす。

「僕の場合はこの国に父の道場もあったからかな。一応管理は僕がしているし、前王の支配下にあったとはいえ運営はされていたから。あと僕の性格上、あちこち行くのが面倒でもあったし、また1から部下を持ってやり直すと言うのも嫌だったからかな」

「私は悪あがきでもあった」

リュウが目を丸くし、アルスランが話す。

「あとは、自分の力の強さ。恐ろしさを把握していた。前王は弱かった。なのでここならどうにでもなると思いここにいた。どのような事情であれな」

「どうなでもなるねー」

「と言うより、いざとなれば自分が王になると思われたんじゃないですか?」

「若い頃はその考えがあったな。ただ、葵が子を連れて出て行った時に変わった。あれは私と変わらぬ暮らしを子としたかっただけだった。私の上を目指すための邪魔はしたくないとの手紙だけ残されて私の元を去った。探しはしたが見つからず、イーロンの村にいたのを葵が死んでから分かった」

瑠奈が頷き、リュウが話す。

「僕は彼女についてあまり知らなくてね。ナガハラは知っててナガハラ曰く、どちらも頑固者で自分の意見を常に貫くしか生きていけない2人だと言うことだったよ」

「葵さんについて、私はあちらの世界から来ましたから澪を通してご親族を知っています」

アルスランが頷き瑠奈が話す。

「いつも1人で全てしようと躍起になっているところもあって心配してたとお母さんからお話聞きました。お話からして確かにそうだなと納得します。そして、病気であった時も人には一切告げず、隠し通していたそうです。あちらでは余命宣告も受け一年もなく亡くなるはずなのにそれでも病のことは友人達にも言わず体の不調も訴えず隠しながら生活していたとのことでした。激痛もあるはずなのに堪えていたのは見て分かっていたそうです」

「タイシが、ミオから聞いた話で同じことがあった。体はもう病に侵されながらもミオには苦しい事は一度も話さなかったとだ」

瑠奈が頷き、アルスランが話す。

「強いが、せめて話くらいはしてほしかった」

「葵さんの性格上できなかったんだと思いますよ。あとは、王になると当時思われていたあなたなら尚更だと思います」

「ああ」

「ちなみに今は?」

「候補として上がっているが、王にはならない。支えとして生きようと思っている」

「僕もそれがいいと思ってる。君は力が強すぎるからね。逆に危険で、逆に周りの国から喧嘩売られるよ。まだ、こちらへこいと手招かれる方がマシだ」

アルスランが頷き、瑠奈が話す。

「今も他国から誘われてるんですか?」

「ああ。リュウもだ」

「そう。ほら、今まだこの国は王がいない上に他国の王が代理で着任しているようなものでね。そう出来るのは昔から決められた友好国のみなんだ。特にここは周りに生産物というものが少ないから他国からの輸入で賄われていることが多いんだ」

「そうなんですね。広いから色々されてるかなと。あと海もありますし」

「それが、なんと言うかなあ。その前王以前の問題に金を費やしてたのが最近わかってね。そのせいで食物や鉱物などあらゆる資源が見つければあるのに放置していた。海に関してもそうだし、この近くの海は荒波が多いし凶暴な海獣たちの縄張りでもあるから漁に出るのは厳しいんだよ。だから、アストレイの領海になった敗戦国の海で漁や僕たち海岸が遠征して訓練してる」

「移転装置は?あれ便利じゃないですか?」

「魔導局の許可なく出来ないんだよ。取り決めでね」

瑠奈がほうほうと頷く。

「きちんと取り決めがあるんですね。魔術でも」

「あるよ。あと魔術だからこそかな。あれは子供でも使える致死率の高い兵器だから。だから小さいうちに厳しく教えてあるんだよ」

アルスランが頷き瑠奈がなるほどと頷く。

「まあ、まだ来たばかりだし、僕たちも時間限られてるからここまでかな」

「ああ」

「はい。なら、最後にではないですけどリュウさん」

「なに?」

「保護されたのになぜ子供つくられたんですか?」

リュウが固まり、アルスランが話す。

「明美にあったか?」

「会いました。来る途中に。会ってお話ししたらそう聞きましたので。あと、兄と同じ施設暮らしで、やっぱり私のことは話されてなかったのも言われました。アルスランさんは?」

「それとなく聞いてはいた。ただ、はっきりといるとは話さなかったな」

「えー、えー、あー」

リュウが汗を滲ませ、アルスランがやれやれとする。

「口だけの保護だ。今後についてはリュウと相手が決める」

「分かりました。なら、私ですけどミオ達とたまに行動しつつ、調べることは調べつつ主に魔導局にいることにしました」

「ああ」

「はい。なら、また何かありましたら魔導局のヒカルさんにお尋ねください。ナガハラ先生を通してからでも構いません。お伝えしてます」

「分かった」

「はい。ちなみに。今ですか。キヨさんは?」

「あれはここに住処を作っている。私がもつ土地を与えた」

「なら。よかったら後で場所だけ教えてください」

アルスランが頷き瑠奈がありがとうございますと頭を下げた。


髪を一つに束ね、鉱山に従事するものが着るような服を身につけ汗水流すキヨがステラとハリスを伴い来た瑠奈を見てああと声を出す。

「瑠奈。タイシに酷い目にあったらしいな」

「ふんっ。どうにか出来ませんか?話したいこと話せないんですよっ」

「どれ」

むくれる瑠奈の頭にキヨが触れるとはまた声を出しふむふむと頷く。

「わかるか?」

「ああ。スペルに関しては解けないが私にはわかる。あれは恥ずかしがり屋だな」

「ん?」

「話してもいいと言いながらスペルをかけた。それは確かに瑠奈からすれば腹が立つ話だな」

瑠奈が強く頷き、キヨが面白く笑いステラ達を見る。

「兄に伝えろ。タイシには子が出来たようでその子を守るため、妻を守る為の行動をとっていると」

ステラが目を丸くし、ハリスが驚く。

「なんと」

「納得はいくな。ああ」

「ふふ。そして、まだ瑠奈も含め自分の周りに危険を及ぼす連中を排除するため多少周りの被害を顧みずの行動もとっている。マーリスでの出来事がそうだ。自ら流れる血を使い、同じ血を流すものの支配をし感情を昂らせ表に出している。古のもの達の血の縛りはただの縛りと違い強いと見る」

キヨが手を離す。

「だがその代わり不死に近い体を持つことになるようだ。何事にも少なからず代償はついてくるようだな。ちなみに、瑠奈は只人だ。奴らと同じ体とはまた違う。それについては私にもわからない。まあそこは魔導局のもの達が調べるだろう。とにかく今わかったのはタイシが思いのほか恥ずかしがり屋なところだけだ」

キヨが瑠奈の頭をポンポンと軽く叩くと瑠奈が不貞腐れる。

「あとは奴らの出方次第になる。そこで瑠奈。私と探さないか?」

「かけらを?」

「それもだが。阿呆なことをする連中どもを。そのついでこの世界のつくりを見てみようか。私たちが知らないこの世界をだ」

瑠奈が頷き、ハリスが困惑する。

「キヨ殿」

「危険は常にある。表裏一体だ」

「しかし」

「行くとしてどこに行くんだ?」

「あちこちと言いたいところだがまずはアステムへと向かう」

ーアステム。

「ここから海を超えた先でしたね」

「ああ。荒波はラファに乗れば問題ない」

「でしたら転移」

「それでは意味がない。とにかくアステム。明後日行く」

「嫌ですが」

「お前もいちいちうるさいなあ。ダリスに私から話しておくから問題ないだろう」

ハリスがそうでなくとも危険だと伝えるがキヨが言って聞かず首を横へと振り続けた。


ーマーリス。

ギルドの演習場にミオ、エリス、サイモン、マルクール、ユナとユナを抱いたメルルが来ていた。その先に望もあり、望が刀を持ちミオとお互いに向かい立っていた。

「力をまず一定に保たれていない」

望が真剣な眼差しのミオへと告げるとミオが頷く。

「はい」

「ああ。俺の場合ここに来てまだ浅いが、松風のおかげもありすぐに力の配分がわかった」

松風がぺこりと頭を下げるとそれを見たサイモンが丁寧だなと思う。

「力は空気と同じだ。息の吸い方とだ。息もまた走ればすぐにきれる。そして、歩くことも短ければ一定を保てるが距離が長くなると乱れ始める。松風」

『はい』

松風が外甲を一枚浮かせその面に文字を浮かばせる。

「まず自分の限界を知るのに早い持久走を行なってもらう。とにかくペースを保って走れー」


ミオが汗を流し倒れ息を切らしていた。そしてエリスがわずかに悩み、サイモン達がミオを見ており望が三人へと話す。

「感想は?」

「倒れるのが早いわね」

「う…」

「後、五周ほどは回れたらなと思いました」

「あー、ここまで体力ないとはってことかな」

「まあだ体力たけないとダメね」

ミオの胸にその言葉が突き刺さりながら頷く。

「力は伸ばせるが伸ばすには常に日頃の鍛錬が必要だ。ただ、鍛錬といっても基本を忠実に守ったものではならない」

「は、はい」

「ああ。ちなみに走ったあとは歩けるほどの余力は残さないといけない」

望がミオを立たせ歩くよう指示を出しミオがふらつきながら歩いた。


「イメージ。想像も大切だ。だが、行きすぎた想像は身を滅ぼしかねない」

落ち着いたミオへと望が話すとミオが手を挙げる。

「行きすぎた想像とはなんですか?」

「ああ。つまり。こうすれば必ずああなるだろう。言えば自分に利益をもたらす結果になると過信。強く思ってしまうことだ。想像であったとしても常にそうはならない。一つの成功は10の失敗があってこそなりうる。それだけ現実とかけ離れていると考えていい。魔術というものについても想像によって力が使えるというがそれは使うものの知識あってのことだと俺は思う」

エリスがその通りと頷く。

「ミオの場合、自分ができると。しなければならないと意気込みすぎる傾向がある」

そこに瑠奈がくる。

「お疲れ様です。望さんから教えてもらってるんですか?」

「はい」

「ああ。向こうでも師範でもあるからと言う周りの意見で」

「そんなに意気込む必要はない。松風」

『はい』

松風が角を光らせると小さめの分身が現れる。

「ん?」

「え?」

「体力作りは向こう出してきたそうだが、足りない」

ミオが体をこわばらせ、望が告げる。

「この松風が一定の速度を保って後ろから付いてくるので、そちらもまた速度を保ちながらまた風に追い抜かれないように走るんだ。そしてもし、10周して追い抜かれた場合はー」


ミオが必死に腕立て伏せをし、松風が角を向け腕立て伏せをするミオの腹と地面の隙間に角を入れあたらないようにと位置を決めていた。

「嬢ちゃんがんばれー」

「ミオー。これでも望さんまだ優しい方」

ミオがくううと声を漏らし、サイモンが瑠奈と望を見て話す。

「厳しいとどの程度厳しいですか?」

「格上になると高山長距離走ですね」

「ああ。酸素が少ない山岳地帯を走ります。そうすることで肺活量が増えます」

「なるほど」

「砂漠とかは?」

「砂漠がない、山ばかりの国ですから砂漠での長距離走はないです」

「へえ」

「ここでは高い山とかは?」

「ええ。高い山となればラグラス山脈。あとは未開の地かと」

「未開?」

瑠奈が不思議そうにし、サイモンが話す。

「はい。人がすまない場所。まだ開拓されていない。わかっていない土地があるのです。この世界に」

「なら、こちらの世界地図は人が住む場所しか書かれていないんですね」

「はい。魔導局が書いたもので、未開の地について、今私たちが暮らしている土地と比べて約60パーセントはわかっていないのです。土地のことが」

「半分以上もですか」

「ええ。まあ、その未開の土地に住む方々もいるのですが、未開の土地はここ以上に魔獣達の生息域なので危険なんです」

「はい。なら、兄とか行ったことありますか?」

「さあ…。聞いたことはありませんね。マルクールは?」

「俺もないな」

瑠奈が頷き、望が話す。

「魔獣をまだ俺は見たことがないです」

「そうなのですか?」

「はい」

「私はー、人型キメラというのは見ましたが、私も見たことないですね」

「ああ。向こうの、動物園みたいな施設はなさそうだしな」

「ないですよ。動物園に行ったミオが話してましたから」

「ああ」

「なら、ここギルドですから聞いてきましょうかマルクールが」

「て俺かよ…」

「ふふ。私が聞いてみますね」

エリスがおかしく笑いユナへと行ってくると伝え瑠奈に託しその場を離れる。

「エリスさんは、正真正銘のエルフですよね?」

「?ええ」

「エルフは長く生きられてると聞いたので」

「そうですよ」

「どうやって生まれたのかなと」

「そうしたら人もだな」

「うーん。でもそうしたらですよ。私たちのところは人しかいないですから」

「なら、渡ってきたんじゃないのか?」

「え?」

「向こうの世界からこの世界に人が渡ってきた。侵略もあったんじゃないのか?」

瑠奈があーと声を出し、マルクールが話す。

「可能性ありそうな話だなー。なにせ、古の国の奴らのこともあるし」

「はい」

「なら、元々ここには人種はいなかった。いたのはエルフやドワーフと言ったもの達だったわけですね」

「そうなのかは分かりませんが。ミオ」

力尽きたミオの元へと望が向かい立たせ松風に捕まらせゆっくりと歩かせる。

「なんで歩かせるんだ?」

「寝るよりも歩かせたほうが息が整い回復が早いんですよ」

「へえ」

「サイモンさんは何かされてたんですか?初めてお会いした時身軽な格好されてましたよね?」

「はい。えーと、まあ以前は教会の暗部をしておりまして」

サイモンが苦笑し、瑠奈が話す。

「それってアサシンですか?」

「アサシン?」

「はい。向こうでは暗殺者と言われてます。人しれずに依頼を受けた人物を暗殺する方です。病と見せかけて毒殺。あとは事故と見せかけて殺害。それから通常に殺されたりもしますし、諜報もします」

「まさにお前じゃねえか」

「あなたは私のこと何も知りませんよね?」

マルクールへとサイモンが即座に突っ込むとエリスがおかしく笑いながらその場に訪れた。


望、瑠奈、紬が肉に誘われきた角を生やした大きな熊達を見ていたがそれらは徐々に後ろに下がっていた。その後ろにミオ達がおりメルルが話す。

「彼らも本能でわかってるのね」

「いや当たり前じゃねえか」

「中々出なかったのはやはりこのせいだったのですね」

「はい。人為的に餌を撒いてようやくでしたからね」

ミオがこくりと頷き熊達が怯えながら下がる。

「そう言えばミオ様」

「はい」

「あの時の子グマは?キメラの」

「はい。魔導局にいます。ヒカルさんの話では人語も話せるようになったとか」

「え?」

「それ本当?」

「はい」

「まじか」

「とりあえず一体触りたか」

「何言ってんの」

「だめだ。向こうでも熊は危険で触られないだろう」

「ばってんこっちは魔獣」

ずんと音が響くと後ろから人の顔が浮かぶ熊のキメラが姿を見せる。

「あ」

『…』

熊のキメラが涎を流す。

『飯いいいー!!』

わっと即座に向かった。


「人の本能よく出てましたね」

「だなあ」

あちこち傷や殴られた痕を残し裸で正座された禿の男が震えており望と松風が男を見下ろし、ミオ達が背を向け立たされていた。

「兄さん。そん人の服まだー」

「まだだ。後ろを向いておけ」

「はあい」

「やっぱ裸なんだ」

「ええと、そうみたい」

「ならあの姿も素っ裸たい。恥ずかしくなかとかな?」

「え、と」

「そこ。素っ裸言わん」

男が今度は顔を真っ赤にする。

「いや赤くなんなよ」

「本当そうですね」

「素っ裸で暴れるって変態通り越して変人たい」

「だから素っ裸言わんって」

「変人じゃなくて見せたがりの変態の変質者」

サイモン達がミオを思わずみる。そして男が地面に両手をつけ頭を下にし項垂れ震える。

「も、う。もう殺してくれ…。そっちが、そっちが楽だあぁ」

「同情するな。少し」

「いやしないほうがいいですから」

ぐううと腹の音が響くと男が涎を垂らし喉を動かす。

「相当腹空かせてんな」

「ですけど、食べるものは人ですし」

「人だけなんですか?」

瑠奈が尋ね、サイモンが頷く。

「はい。魔導局の話では呪いの一種のようなものらしく人。人肉しか受け付けられないそうなのです」

「なら同種だけなんですね」

「はい」

「瑠奈。血やったら?」

「なんでそぎゃんなるとか」

瑠奈が呆れ、紬が話す。

「特殊って言われとるからやったらどうなるかなと気になる」

「……あー、まあ」

瑠奈が小刀を出し手の甲に軽く当てる。するとスッと血が流れる。瑠奈が今度は布に含ませる。

「まあ、向こうに行ったらだし、向こうに行くまでにもしかしたらだから…。望さん。最後のという事で」

瑠奈が血濡れた布を向けると望が近づき受け取り男の元へと戻ると変異しかけている男に向ける。男がすぐに布を剥ぎ取り口にし音を立て吸う。

「どうなる?」

「分かりませんよ」

「ちょっと何してるの」

エリスが呼び連れて来たメルル達が来る。そして男が布を落とし震える。

「あ、ああ」

メルル達が止まり、男から湯気が立ち始める。

「なに?」

そして男の口から黒い液体が出た途端男が光る。瑠奈達もその光に気づき振り向き黒い物体が煙を出し焦げ、光が消えると男児がちょこんと座りきょとんと望達を見上げた。


「ふむ」

男児が硬直する中オーガンがヒゲを撫でながら男児に光を当て見ていく。

「内臓ともに異常なしのようじゃな。名前は?」

「…ロミオ」

瑠奈たちが目を丸くする。

「ロミオか。なら」

「ロミオとジュリエットのロミオ」

「ん?」

オーガンが瑠奈たちをみる。

「名前が同じだけね」

「そぎゃんね」

「ロミオとジュリエットと言うと?」

「と言うと?」

「劇作家シェイクスピアが作った悲劇の恋人物語の2人の名前。争いの絶えない両家から生まれたロミオ、そしてジュリエットは密かに会っていた。そして秘密裡に結婚した時にジュリエットの婚約者をロミオが殺害。ロミオは追放されジュリエットが追放されたロミオが戻ってくるようにと自ら毒を飲んだ。けれどその毒は仮死状態に陥る毒であって、ジュリエットが家族全員死んだと思い葬儀が行われたのち、ロミオが人の目を忍んで会いに来た。その時にロミオは死んだと勘違いして毒を飲んで自死。そして仮死状態から蘇ったジュリエットが死んだロミオを見てロミオの短剣を喉に刺して死んだ。2人のその死体を見て両家が2人が愛し合っていたのを知って和解したと言う話」

「へえ。なんかこう、殺したり死んだと思ったら生き返ってまたそのまま死んで」

「そう」

「ふむ」

オーガンがロミオを見る。

「まあ、この者の場合は盗賊の頭であったな」

「……」

「だろう?」

「そうだ…」

「うむ。さて、確か捕らえた時は相当腹を空かせていたとのことだったが今は?」

「…少し」

「ならこちらは食べられるかな」

オーガンが重湯を向けるとロミオが小さく喉を鳴らしオーガンをチラリと見てすぐさま奪い取り口に含み食べ再び含む。

ー…美味い。

ロミオが飲み込み今度は大粒の涙を流しながら重湯を勢いよく食べた。


ロミオが気持ちよく眠る。だがその腕は点滴が投与されていた。

「瑠奈の血はあの龍人の血が全く違うな」

オーガンがミオたちを前に話し瑠奈が話す。

「まったくですか?」

「ああ。まず回復速度は人並みだ。龍人。奴の場合龍化したからか知らぬが回復速度は途轍もなく早かった」

「その調べ方はどうやって」

「ああ。実験用の小型魔獣を使ったのだ。鼠の。そうしたら即座に変化が見られた。両方とも」

「あー、それは私の血も」

「そうだ」

瑠奈が複雑そうにしオーガンが告げる。

「そんな顔をするでない。血は個々人違う。そして、瑠奈の血だが不明な点が多い」

「ならネズミはどうなりました?」

「同じく若くなった。そして、ロミオのように黒いものを吐き出した途端小さくなり子供となった。あと、魔獣特有の角が無くなったので調べたらなんと。魔素が消えたいたのだ。それすなわち浄化されたと言うわけだ」

「浄化ですか…」

「ああ。あと、黒いものは魔素などの物質になる」

「はい。えーと、分かりましたけど…。あの、私の血を飲んだ人は、なんか力が強まったのもいたんですけど」

「ああ。古の者とのことだな」

「はい」

「うむ。そちらについて血液を混ぜたものをネズミに投与したらまた違う反応が出た」

オーガンがやや興奮しながら話す。

「今度は若くも小さくもならず、体が大きくなったのだ」

「大きくですか」

「ああ。そして、危うく担当していた者の腕を噛み切るところだった。他の魔導士が即座にその鼠を押さえた。鼠だが手のひらになるほどの大きさがロミオほどの大きさに突如変わり力も強まった。仕組みはわからないが、古の者たちにとって瑠奈の血は力を強めるための素材のようなものだ。そして他にとっては浄化作用と若返りのある血となる」

「……はあ」

「はい。ちなみに局長さんは試したかですか?」

紬が手をあげ尋ねるとオーガンが笑う。

「ふふふ。いいや。わしはその通りの余生を生きるよ。あと、ロミオはこのまま観察をする。ネズミについても今は堅固な檻に入れているから後で見てみるか?」

「はい」

「ああ。それと、まあ人型キメラたちが歯向かって来ているために飢え始めているものたちが増えている。ロミオのように人を見てすぐさま襲うものもだ」

瑠奈が頷きサイモンが話す。

「食に関してとても堪えきれない程でしたがやはり術の影響が強いのでしょうか?」

「おそらくな。そして、人肉のみと言う呪いだ。他に食べられるものがあればそのような飢えもなかったはずだ」

「確かに」

「人類滅亡を考える人がそう作ったんですか?」

「いや。エルフやドワーフも犠牲になっているからそれはない。彼らも言えばわしら人と作りは似ている種族だからな」

「でも味とか違いそう」

「さてな」

紬がうーんと眉を寄せ、オーガンが話す。

「少しわしの言い方も悪かったな。人肉は人以外にエルフたちと含まる。現に、彼らの死体がキメラの胃の中に」

「エルフの肉を食ったのは魔術師だ」

オーガンたちがハリーと共に来た目を擦るロミオを見る。

「エルフとドワーフはあ」

ロミオが欠伸をしんーと声を漏らす。

「魔素が強い。肉としての味はいいものじゃないけど食べれば強くなるし腹持ちがいいと言う話は聞いた」

「食べたことないと?」

「ない。あと、まあ、人は食べた。それと人型キメラの中に変わり者がいた。子をなしてる奴らだ」

オーガンがやや驚き、ロミオが話す。

「人型キメラ同士で作ったそうだ。そいつらは旅の商人として各国を回っている。だからよくわからない」

「なら、ロミオは知っているのか?」

「ああ。また、今はわからないけど人型キメラだとお互い何も言わず見ただけで分かったからな。感知したとも言うべきか…」

「ああ」

ー私も分かりますよ。

ラファが現れるとロミオへと話す。

『独特な気配を放ってますので近くであれば分かります』

「どの程度近く?」

『はい。今のロミオほどの距離です』

「まだ位置が長ければいいけど」

「こっちもその程度の距離だ」

「うーん」

紬が手を挙げる。

「ロミオ質問」

「…なんだ」

「ロミオは自分からキメラになった?」

「いや。目が覚めたらなってた」

「目が覚めたら?」

「ああ。俺みたいなのはまだいる。あいつらは俺たちを実験台にした。810って番号が俺の番号だ。俺が知る限り、806から俺含めて829までが俺と同じような突然この体にされた奴らでそいつらはみんな俺と同じ盗賊で捕まってた奴ら。その中には俺の部下もいた。そして、確か711が自分からキメラになったと話していた。名前はシェリル。女だ」

「シェリル?」

サイモンが驚く。

「処刑されたはずの元暗部の女性です。私も一度だけお会いしたことがあります。8年前に2人の枢機卿を殺した者です」

「あまりそうは見えなかったけど。まあただ、名乗ったのはそのシェリルだけ。今まであった俺と同じ体になっているキメラ化した連中だ」

「ええ」

「ふむ。だとすればか。そうまざまざ殺すわけにもいかないようにも思える。しかし、危険でもある」

「飢えがくれば我慢できなくなる。とにかく食べるために動くしかない」

ロミオが告げ、オーガンが頷く。

「あと、俺は元の歳の体に戻れるか?」

「歳何歳でした?」

「38」

「それは、難しいのお。ただでさえ改造された体であったからな。そしておそらくこれはわしの推測だ。吐き出されたのは魔素と呪いによりどうしても出さなければならなかった肉体の部位ではなかったのではないかと。そちらも調べたら血肉も出て来たからな。そして、小さくなったのはその肉体として生きれる大きさになったからだろう。成長に関しては今後も観察していくしかない」

「…分かった」

「でもよかったたい」

「…まあ」

「髪生えて」

「いやそこかい」

サイモンが小さく吹き出し、マルクールが突っ込む。そしてロミオが顔を真っ赤にする。

「好きでハゲになったわけじゃない!」

「なら元からハゲとったと?」

「うるさい!」

「ほほほ。まあ、その辺りはまたギルドと話そう。そして飢えにより凶暴化し見境なくなることもだ」

ミオたちが頷き、オーガンが頷き瑠奈を見る。

「あと、すまないがまた血をもらいたい。戻すための薬や術ができるかもしれないからな」

「分かりました。ただ、そのためだけに使われてください」

「分かっておる」

瑠奈がはいと返事を返し、オーガンが頷いた。


ーだいぶ、回復したな。

濃霧により周りが見えない場所でポツンと小さな家があちこち点々と立っていた。その家の一つにルイスが腕の包帯を解くとハンモックに寝そべったマナが話す。

「まだゆっくりしていいのでは?」

「いや。もう行く」

「そうか」

マナが楽しく手を挙げ赤い水晶を出すとルイスへとポンと投げ渡しルイスが受け取る。

「奏からだ」

「ああ」

ルイスが懐へと入れると背を向けその場を去る。

「あれもあれこれもこれだ。そして、弟子も弟子」

『あの小僧は気が抜けたのか?』

ラドンが焼いた足の人肉を喰らいながらくるとマナがくすりと笑いハンモックから降りると乗っていた子龍が飛ぶ。

「さて。それは会ってから見るさ。ラドン。私も留守にするよ」

『なら俺もここを出る。ここでは狩ができないからな』

「ああ」

マナが姿を消しラドンが肉にかぶりつきながらその場を離れた。


ー私はキヨさんと行動するから。

瑠奈がキヨと共に道を歩き目的の国へと向かう。そして、ミオたちがマーリスへと戻るとミオが再び望に鍛えられていく。

「さて。私たちもいつ行動しますか?」

鍛えられるミオを前にサイモンがエリスたちへと尋ねるとエリスが話す。

「一月後にしましょう」

「こっちもそれで。ぼっちゃんがいないけど目的はお嬢さんの旅だからな」

「はい」

「次どこ行くの?」

ユナが尋ね、エリスが話す。

「ええ。ラムールよ。風の国と言われているわ」

「風の国?」

「そう」

「あそこは少し面倒ではあるんだよな」

「そうですか?私としてはラムールの次の国のヤハネスよりマシかと思います」

「まあ、あそこも人がな」

ユナが首を傾げエリスが行けばわかるわとユナに話すとユナが頷き答えた。

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