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運命のミオ  作者: 鎌月
39/64

欠片1

小鳥が飛び周りが整えられた木々や花に溢れていた。その中心には巨大な屋敷が聳え立ち、メイドや従者、兵士たちとが行き交う中、中庭では鳥籠に似せた部屋がありその中に片足に枷をされ鎖に繋がれた黒髪を一つに束ねた青年が椅子に座っていた。その青年の両目は大きな一本の横傷により潰され見えなくなっており、小鳥が柵の隙間から入り青年の手に乗ると青年が小鳥に優しくふれ撫でる。

「分かった。ありがとう」

小鳥が飛び立ち青年が軽く息を吐きしばらくすると頰に手の感触が伝わる。その青年のそばにそばかすだらけのややでっぷりとした女がきていた。

「オト。気分はどう?昨日はよかったわ」

「まだ少し疲れが残っています。あと、誰かいるんですか?」

「ああ、気にしないで。メイド達だから」

頬を殴られ震えるメイドとしゃんとたつメイド達がその場にいた。

「メイド?珍しいですね。こちらに連れて来られるなんて」

「ええ。あなたのことを教えるためによ。それじゃ、今日はまた夕方に。お買い物しなくちゃだから。またね」

女が離れメイド達がその女の後に続く。

ー1人震えていたな。また殴ったのか。

青年が自分の目に触れ息を吐く。

「見えないのが辛いな…」

「タータ」

ぎゅっと温かいものが足を掴む。青年が立ち上がり手探りで黒混じりの茶髪の男児の幼児に触れ抱き上げる。

「友哉」

友哉が強く抱きしめ頭を青年に擦り付け甘える。そのそばにボーイの服を着た犬耳の少年が立っていた。

「申し訳ありません。お嬢様を怖がられておられたので遅くなりました」

「ああ。そうだろうと思ってたよ。友哉。マツリと一緒にいたか?」

友哉が頷きマツリがはいと返事を返す。青年が安堵の笑みを浮かべ座り裕也を膝に座らせ頭を撫でて行った。


アストレイー。

ーここがかあ。でも

「復興中?」

「だなあ」

アストレイ国内であちこちと家造りをしたり壊れた道路の修繕をしたりとする者たちがあちらこちらといた。

「前のバカ王のせいで内乱が起きてな」

瑠奈達のそばにいたダンガンが説明し、横塚が話す。

「王とその悪巧みした一派は処刑したんでしょ?」

「そうそう」

「ああ。裁きが下ったと言えばいいな。あと来たぞ。瑠奈は枢機卿と共に行動してくれ。残りは俺とだ」

教会の旗であり、ダリスの印のついた旗を挙げた馬車が来る。

「私からすればなんか変な感じですね」

「向こうじゃ一般人扱いだったそうだからな」

「はい」

馬車が到着すると扉が開き正装したダリスが外へと出て瑠奈を見て微笑んだ。


「本当重たそうですね」

馬車に向かい合うように乗り込み座った瑠奈が目の前のダリスへと話すとダリスがふっと笑う。

「はい。重いです。あちらで過ごした服がとても軽く過ごしやすかったです。またこれを着た時は息苦しさを感じましたね」

「服の重みに人の圧力とかですか?」

「ええ。あと、戻ってきたなとも感じましたし、寂しくもあります」

「暇なしだったからですか?」

ダリスが軽く笑い頷く。

「はい。そして充実した時間でしたから。これからはストレスフルです」

「暗殺の類もあるそうですからね。普段どうやって凌いでるんですか?」

「護衛たちに任せてます」

「そうじゃない気もしますけど」

「たまに、悪いこともしますね。その悪いことがうまくできたら面白くありますし傑作です」

ダリスが楽しく笑み、瑠奈がでしょうねと答えるとダリスがおかしくふふっと笑い頷いた。


マーリスー。

ーエリスさんたちと一緒にいるならついて行っていい。

ーやった。オッケー。

紬がウキウキしながら周り見渡しミオを見る。

「本当向こうの中世時代。タイムスリップしたみたい」

「ええ」

「なんだ。タイムスリップってのは」

マルクールが尋ねて、紬が話す。

「過去や未来に移動するってやつです。もちろん出きんで言葉だけですけど」

「ふうん」

「ミオ。ギルドに行ってメルルを読んでもらいましょう」

「はい」

「ギルドかあ。見るの楽しみ」

紬がワクワクする。そしてギルドのものたちが集まり紬の肩に乗る小さく愛らしい姿になった焔を紬と共に見ており、サイモンがそれらを見て苦笑する。

ー目立つなあ。やはり。

「聖獣はここらじゃ神さんといっしょだから特別扱いされるぜ」

「ですね」

「どいてどいて」

メルルが急ぎミオ、紬の元へと来る。

「メルルさん」

「ミオ。無事でよかったわ」

メルルがミオを抱きしめ安打の息をつくもほむらへと伸びる手を見てハッとする。だがすぐにがっと手を伸ばした男の顎に刀の鞘が当たる。ミオが驚きメルルがやれやれと紬に刀の鞘の先を当てられた男を見る。

「このがっ」

紬に再び鞘を当てられるとそのまま倒れ目を回す。

「お見事」

「ああ。見ずにやったな」

焔が鼻を鳴らし紬が刀を背負い直すも再び持ち直し持ち手を握り僅かに刃を出す。だがその目は煌めいており周りに見せびらかす。

「もしかして腕試し?」

ぬっとゆっくりと刀を出すと周りが冷や汗を流す。

「やってよかよ。誰から来る?」

「馬鹿野郎が無礼を働いてすまん。納めてくれ」

ミオが目を丸くしサイモンがおやっと声を出し正装したランカスターを見る。その後、長室へと入るとミオが目を丸くしじいと見続け、ランカスターがその視線に気づいておりため息をしメルルが軽く笑う。

「ギルドの長として服装も整えないと言えないわけ」

「そうだ」

「確かに今までお会いした方々も正装されてましたね」

「ああ。各国の王や当時のギルド長が決めた事らしいから覆す方は不可能だ。はあ」

「元々雪国予定だったのだけど以前ここにいたギルド長が申し出て彼方に転属したのよ」

「それはまたどうして?」

マルクールが尋ね、ランカスターが答える。

「あの人の故郷だからだ。だもんで、故郷に帰られるのと、周りもあの人がハーフエルフだから詳しいだろうとのことで話がつき、俺がこのマーリス担当になった。砂漠についてはまだ今も協議中だ」

「なかなか厳しい場所でも」

「彼女が明け渡してくれないのよ」

「え?」

メルルがやれやれとし、ランカスターが話す。

「決まってはいる。だが、元ギルド長の奥方とその部下たちがギルドとその領地の明渡を拒否している。明渡をする条件として元ギルド長。テオドール殿の殺害犯を渡せとの事だ」

「誰も見ていない上にテオドールギルド長が集めたAランクの精鋭たちをしてもころされた相手を見つけて捕まえて渡せなのよ」

「無理難題すぎて困ってもいる。まあただ、ギルドとして砂漠の魔獣。盗賊たちの対峙は継続されているが、建物や長の席を渡して暮らすなあ困り果ててるわけだ」

「そうだったのですね」

「ああ」

「でまあ、なんというか。ティーチがいてくれたら説得してもらえるかもって淡い期待は抱いてたのよね」

「ティーチって誰ですか?」

紬が尋ね、マルクールが話す。

「ぼっちゃん。タイシ殿の事だ」

「ええ。通称でもあり、やはり異界人なので名前がわからぬようにここでは別の名前にされて登録されていたのです」

「へえ。そうなんですね」

「そうだ。そして、まさか聖獣持ちを連れてくれるとは」

「サイモンさんはご存知だろうけどここでは神と同等の扱いなのよ。だから、聖獣持ちの方は特別優遇になるの」

「どうなります?」

「教会に行かないといけなくなりますね」

紬が苦笑するサイモンを振り向くとランカスターたちが頷く。

「なので、私と参りましょう。ダリス枢機卿が手配されております」

「街の観光」

「無しです」

「ええっ」

「出来ないわよ」

「ああ。観光するとして寝静まった夜くらいだな」

「お店開いとらーん」

「何語だ?」

「熊本弁…」

ノックが響き慌てて男が来る。

「ギルド長っ。また聖獣望の方が来られましたっ」

「はあ?」

「兄さんかな?」

「お前の兄もかよっ」

ランカスターが声を上げ紬が頷いた。


男たちと視線を松風が集め、女たちの視線を望が集めていた。そこにすぐさまサイモンが来ると汗を滲ませ松風、望と見ていく。

「ええと」

「いや迷う必要ねえじゃん。飼い主からだろ?」

後できたマルクールが望を指差す。

「申し訳ありません。知り合いがいるので通ります」

「後少し」

「いや何が後少しだよ」

マルクールが突っ込み望が告げる。

「時間が限られていますので」

「にいさーん」

周りがざっとすぐさま離れると望が見渡し、刀を振った紬がそばへとよる。

「…」

「まあ無邪気な殺意みたいなのあったからな」

「紬。家宝だから粗く扱うな」

「あーごめん」

「後なぜ周りの方々はお前を見て避けた」

「さあ」

「言ったほうがいいか?」

「いえ。もうこのまま行きましょう」

「ところでなんで兄さんきたと?」

「瑠奈ちゃんを連れてきたんだ」

「え?瑠奈は?」

「散策にいった。時間がかかりそうだからとの事で」

「えーー!!ずるか!!」

「後俺もまたナガハラ先生のところに戻らないといけないから戻る」

「わかったー」

望が頷き背を向け松風もまた望の後に続く。

「瑠奈だけずるかあ」

「紬さん。このまま行きましょう」

紬が不貞腐れながらはいとサイモンへと返事を返した。


ー血なんだろうな。呼ばれてる感じがする。

瑠奈が人々の間をくぐり抜ける。そして城へと続く道を見上げると観光客たちと共にその道を歩く。その後門の前へと来ると今度は城壁の周りを歩き表門から右側の門。使用人用の門と見る。その瑠奈の姿に門兵たちが興味深く見ており瑠奈が軽く会釈し歩く。

ー海外に来た感じだ。

ぴーと音が響くと共に観光客たちが逃げ、兵士たちがその逃げた場所へと向かう。瑠奈が逃げたものたちをみつつその先へと向かうと巨大な土柱が立つ。

「うわ」

悲鳴が上がると瑠奈の影がゆらめく。

『ワームですね。ですが人の気配も』

「なら、話にあった人型キメラ?」

『そのようです』

「待って子供があ!!」

「ダメです!」

叫ぶ母親が兵士たちに連れてこられると瑠奈がやや体を硬直させる。

『人質に取られてますね』

「……ラファ。離れても」

『その場にいてください』

影が薄れる。そしてワームのねっとりとした口の中に悲鳴を上げ泣き叫ぶ子供が2人入っていた。兵士たちが狼狽、ワームの人の顔が不気味に笑う。

『ガキの代わりをよこせ!!』

「か、かわり」

『てめえらでもいいぞ。こっちはすぐにでも食いてえんだよ』

よだれが落ち子供達が嫌だと声を上げる。兵士たちが恐れその足を固めると地面から影が伸びラファが姿を見せる。

『な!?』

「りゅ」

「竜だあ!!!」

兵士たちが声を上げ一目散に逃げる。

ーここでは竜は恐怖の対象と言われてるけど本当なんだ。

瑠奈が驚き、ラファが飛び上がり周りにいくつもの光を出す。

『光よ』

カッと強く眩い光が上がる。

『レイ』

光の光線がワームの体を貫きその人の頭も貫く。ラファが飛び落ちる子供達を受け止め空を旋律をあげながら呼応し飛び上がる。兵士たちが驚き王が驚愕しながらラファを見る。

「白き龍…」

ラファが今度は下へとおり体液まみれだったが綺麗になり怪我も治った子供らを浮かせ地面に下ろす。子供らが呆然としラファがニコニコする。

『怖い夢を見たなら私を思い出して』

ラファが飛び上がりすっと空に溶け込むように姿を消す。そして瑠奈の影が濃くなる。

ーうまいじゃん。

ーふふ。

「ティナ!ティナあ!!」

「マイク!!」

子供達の親がすぐに走り駆け寄ると子供らを抱きしめお互いに涙を流す。

ーまだ、周りにいるから溶け込める。

瑠奈が軽く後退り後ろを向くとすぐに止まりじいと自分を見るナターシャと目を合わせる。瑠奈が目をぱちくりとさせナターシャが目を細める。

「お嬢様」

「…ティーチ様に似てる」

「何を言って」

「ナターシャというお名前ですか?」

ナターシャが頷き、瑠奈が話す。

「お話はミオと兄から聞いてます。お世話になられたお家の方と」

メイドが驚きナターシャもまた驚くが目を輝かせ何度も頷き答える。

「タイシの妹の瑠奈と言います」

「はい。はい」

「ここではなので」

「そうですね。はい」

ナターシャ嬉々とし手を合わせる。そして城の門兵へと伝え通される。

ーおー。好都合。

「親族の方とかですか?」

「いいえ。実はお父様に御用があって来ていたのです。お父様はこちらで働いております」

「お尋ねしても問われないのですか?」

「ちゃんとした許しを得たら問題ありませんし、お呼びだてされたのなら通れます。まあ、また見合い話でしょうけど。はあ」

「私が入っても宜しかったですか?」

「そちらは私が責任を持ちます」

瑠奈が複雑そうにしちらりとメイドを見るとメイドが本当はダメなんですと頭をふりジェスチャーした。


そして早速ヴィクトールに怒られると瑠奈が外に出され待ち、同じくヴィクトールの部下が瑠奈と共に待たされていた。

「お仕事されてる中申し訳ありません。ご迷惑おかけして」

「いえいえ。まあ、お嬢様のせいでもございますから」

「はあ。あと、外の騒ぎについて、こちらでも何か避難などされたりとかあったのですか?」

「はい。避難所をこの城に設けておりますので外らに向かう途中、終わったと知らせがありました」

「その避難というのは、あの大きなよく分からない魔獣のせいで?」

「はい。人型キメラ。元は人であったものが術により魔獣と融合したものです。月に1度は襲撃してくるのです。そのため犠牲者も常に出ております。そしてなぜか、マーリスだけなのです。理由さえわかれば良いのですが…」

ーマーリスだけ。

扉が開き瑠奈がヴィクトールを見る。

「大変申し訳ない。招かざるものになるからな。この城の外で話をしても良いか?」

「いえ。こちらも突然お会いしたいと申し出た事申し訳ありません。あと、お時間と娘さんは?」

「あれは部屋の中で反省させる。時間はある。人型キメラの襲撃が短くて済んだからな。こちらだ」

ヴィクトールが歩き出し、瑠奈が後に続いた。そして城の外、門の外へと出ると兵士たちやギルド達が調査と散った肉片の回収を行っており、門から少し離れたところでヴィクトールが止まり瑠奈を振り向く。

「改めてか。ヴィクトールという。そちらは?」

「瑠奈です。兄とは3歳ほど歳が離れています」

「そうか。あと妹がいるとは初めて聞いた」

「多分、兄のことですから私の事は秘密にしたかったんでしょう。兄弟。妹として。兄はこちらでは有能者として、あちらでは嫉妬の対象者として注目され危害を加えられてましたから。ただ、あちらの世界。私の故郷でもあるあの場所が特にひどかった。だから、兄は私の事は誰にも一切話さず、私とわかるものも全て隠していました。兄にとって唯一無二の家族と呼べる存在は亡くなった祖父と私でしたから」

「そうか。祖父についても知らなかった。孤児としか聞いていなかったからな。それでなぜ、その妹が?ここに済んでいたわけではないだろう?」

「はい。ある問題解決のためにきました」

「問題?」

「はい。私と兄の今後に関わる事です。それでお尋ねします」

「ああ」

瑠奈がかけらを出しヴィクトールに見せるとヴィクトールがかけらを受け取り見る。

「これは?」

「この城にあります。そしておそらく、あいつらの狙いはこのかけら」

「このかけらが?」

「はい。信じられないでしょうが、集まれば古代の王の間の鍵になります。このかけらがこの城の中にあります。見た事はありませんか?」

ヴィクトールが頭を振る。

「ないな」

ヴィクトールが欠片を瑠奈に渡す。

「そして、例えそうだとしてやはり城内へと入らせるわけにはいかない。特に今あの人型キメラの強襲により厳しくなっている。奴らは我々のように人として、元の自分の若い姿をさせることが可能だからな。なので、はあ」

ヴィクトールがため息をしやれやれとする。

「今回の娘についてもだ。まったく」

「偽物、本物と区別するためのものは娘さんがされていた腕輪ですか?」

「ああ。その通りだ。魔導局が開発したものでな。血液を使い、あちらこちらと見えないように配置された術に反応して本物か偽物か判断する。ただし、これはあくまで装着したもの。持っているものにしか反応しない。なので独断で人を入れてはならないのだ」

「それは、大変申し訳ありませんでした」

「いや。娘が悪い。しっかりと伝えたのにだ」

「ヴィクトール侯爵。お久しぶりです」

ヴィクトールが横を向き小走りで来たミオを振り向く。

「ミオ」

「ええ」

「久しいな。後知り合いだったな」

「はい」

ミオが瑠奈の元へとくる。

「ミオだけ?」

「ええ。エリスさん達は人型キメラの調査の手伝いに。サイモンさんと紬は教会に行ったわ」

「なんで教会?」

「ええと、調べるためかな」

ミオの心臓がわずかに鼓動するとミオが城を見る。

「そこにあるんだけど、人型キメラを警戒してもだし、私たちは関係者じゃないから入れない」

「ミオについてはどうだろうか…」

瑠奈が振り向きヴィクトールが少し待って欲しいとその場を離れる。

「いけそうかなあ」

ーミオ。

ミオが瑠奈の影を見下ろす。

ー中に古のものがいるようです。瑠奈から離れないように。ルナと逸れないよう気をつけて。

ーええ。

ー了解。大騒ぎ起こしたら優先するのは城内の人たちね。

「瑠奈さま」

ミオがすぐに振り向き瑠奈がルイスを振り向く。

ーあれ?

「契約が解けたんですね」

「はい。そちらは兄君のおかげです。ただ。解けたことにより一族同士。特に下が上のものに対する攻撃が始まりました。私は他と共に今お世話をなっている方のもとにおりますので加担しておりません」

「あの変わり者のラファエルの生まれ変わりの人ですね」

「はい」

「腹が立つ…」

瑠奈がむかっとし、ミオが話す。

「主導権は自分にあるみたいな感じだったものね」

「そう。後ここに来られたという事は、中に古の方がいるわけですか?」

「はい。お話ししました3人のうちの1人がこちらにおります」

「はい」

「長になる人?」

「そう」

「なら怪しいなあ」

「内乱も起きておりますし、今私を探すもの達が大勢おります」

ミオが目を丸くし、瑠奈が話す。

「起爆剤になるという事ですね。それ、向こうは?」

「好きにとのことでした」

「ではお願いします。早く終わらせたいですし。あと、欠片は?」

「今は、私はあちらに身を置いてますので見つけた際、手は出しません」

「はい」

「…あの時私に乗り移った人は?」

「あれは私の上になる方です。地位としては二番目に当たる方で私は三番目になります」

「待たせた。そちらは?」

「ミオの護衛のルイスさんです」

「はい」

ミオが慌てて間髪入れず答える。

「そうです」

ルイスが頭を下げ、ヴィクトールが頷くと後ろから騎士団長と思われるものが来る。

「中にいいそうだ」

「はい」

「え、あの。はい。あの、そんな早く決まっていいんですか?ミオが偽物とかだったらどうするんですか?」

「そうしたらそちらがタイシの本当に妹なのかと疑うところだ」

「いやそれも含めて…」

「国務大臣に話し許可を得た後すぐに陛下より許しを得た」

ー国務大臣が上です。

ーああなるほど…。

「なので入ってもいいが、こちらも万が一の事を考えてはいる」

3人を兵士と魔術師が囲む。だがその中にヒカルが混ざっておりヒカルが2人を見つつ笑いを堪え、ミオ、ルナと共に気付き瑠奈が呆れた視線を向ける。

ーヒカルさん…。

ーあんた何笑ってんですか。

ーいや、つい。あと、緊急バイトみたいなもんで来たんだよ。

ーキメラかも知んないとかで。

ーそう。

「なら行こう」

団長が進み、3人が囲まれ進むとヴィクトールが残り見送る。

「わからなくもないけどなあ。後ミオはここで何したの?」

「ええと」

ミオが考える。

「悪魔付きの、その、ここの、ええと…」

「亡くなられた前王の姉に当たるものが悪魔を宿し前王を殺した。その時に悪魔となった姉を退治されたのだ」

「退治…、に、なるんでしょうか…」

ミオがやや表情を曇らせ、瑠奈が話す。

「人助けをした。ミオがいないとよりさらに被害が出たんでしょ?前王が殺されたという事は、こう言ってはなんだけど悪魔を宿したその人に周りは力及ばずだった。その力及ばずな人からミオが国民を助けた」

団長が頷き、瑠奈が話す。

「悪魔付きもまさか来てるとかはないですか?」

「いや。今は人型キメラの強襲のみだ」

ー悪魔付きはイーロンの教会のもの達。

「悪魔付きと人型キメラ。どちらが一番脅威ですか?」

ー悪魔付きですね。倒せるものが限られております。

「悪魔付き、だな。人型キメラは我々の武器でも対応できる」

団長がチラリと瑠奈を見て止まると振り向く。

「そちらはタイシの妹という事だが何も知らないのか?」

瑠奈が呆れる。

「あのですね。私は兄と生活を一切共にした事ないんです。だいたいよく知り合うようになったのは半年ほど前。ミオが疲れて迷子になったのを偶然私が声かけてお世話して届けた先にあの連絡なしの何も言わない自分勝手なことばっかする」

「分かった…」

兵士たちもまた驚き見ていき、瑠奈が話す。

「何でもかんでも兄と性格も一緒と思わないでくださいよ。それから強さとか魔法とかそう言った関係も。見ての通り私は手ぶら」

「むう…。だが彼は宙から武器など出して」

「どんだけ器用じみたことしてんの」

「ええと。器用でもないんだけど…」

「止まってしまい申し訳ない。行こう」

騎士団長が再び歩き出すと全員が後に続く。

ーインペクトリ。王家のものしか使えません。

ーあーつまり、私と兄のいずれかしか使えないわけですね。

ーはい。

重厚感のある扉の前へと来ると騎士団長がノックする。

ー感じますね。欠片じゃない方でっ。

「えっ!?」

瑠奈が床へと沈むとミオが手を掴む。

「瑠奈っ」

ミオもまた引き摺り込まれる。

「なんだっ」

ルイスがすぐに扉を掴み開け、騎士団長達が驚愕し逆さ吊りになり血を落とす絶命した男を見る。

「大臣!」

「違う偽物だっ。王の元に行け!人質に取られるぞ!」

悲鳴が上がるとルイスへと剣を持った赤髪の男が飛び込み壁に押さえつける。

「彼の方の、邪魔はさせないっ」

「あれだけの仕打ちを受けてもなおっ」

「うるさい!」

男の首に赤い鎖の刺青が見えるとルイスが歯を噛みしめる。

ー奴隷の印をつけたか。

騎士団長がすぐさまルイス達を置き王の間へと向かう。そしてヒカルが顔をしかめながら2人が消えた床、押し問答するルイス達、部屋の中の死体を見るが死体がわずかに動く。

「…やば」

ヒカルが杖を光らせる死体へと向ける。

「爆発するぞ!!!伏せろ!!!」

死体をいくつもの結界が囲むと死体が膨らみ発光した。

ドンと鈍い音が瑠奈とミオの耳に響く。瑠奈がうんざりとしミオが驚きながら下へとまだ沈んでいく。

「これ、いつまで沈むの?」

「…わからない」

ふっと景色が変わり2人が同時にクッションの上に落ちるとミオがすぐさま下敷きにした瑠奈から降り前を見て驚く。その先に小鳥達が鳴き木々がざわついた世界が広がっており瑠奈もまた驚きながら立ち上がる。

「ここ…」

『異空間です』

ラファが姿を見せると頭をわずかに振り2人を見る。

『ラファエルが作った異空間でラファエルの別荘地にもなります。他にここ以外にもあります』

「へえ」

「じゃあ、敵の罠とかじゃなくて瑠奈かあなたに反応したの?」

『かけらに反応したようです』

「これか。となると、欠片がこの異空間の鍵でもあるのか」

『おそらく。私も詳しくはわからないのです。ラファエルは私たちを作り私たちを自由にさせた後姿を消しました』

「ふうん」

ー人だ。

ー何百年ぶりだろ。

小鳥達が集まる。だがその額には角や宝石が埋め込まれていた。

「魔獣じゃない」

『半獣です。絶滅しかけている種族です』

ーそう。

ーラファエルが住処をくれたの。

「となると。ここは避難域でもあるのか。なら、誰か呼べたりもできるかな。連れてこれる?」

ーんー、多分。

『調べます』

ラファが高く吠え光を放つ。するとその先の石碑が光る。

『あちらを使えばできるようです』

「オッケー。なら手始めにご当主様だな」

「王様?」

「そう。話したほうがいいから」

瑠奈が進みミオもまた進む。そして石碑に埋め込まれたカケラを見ると瑠奈が取り上げゲットとミオへと見せた。


ーつぅ。

「ヒカルっ」

ヒカルが上を見上げハリーを見る。そこには爆発に巻き込まれた兵士や使用人たちがヒカルとともに通路に並べられ治療を受けており、ナガハラがそばへと来る。

「死体が爆発したんだと?」

「した…。被害は?」

「建物が一部吹き飛んだ」

「やばすぎだろ……」

「お前が押さえ込んだからそれで済んだ」

「ていうかさあヒカル」

「なんだ…」

「そんなに力あった?」

「向こうに渡ったからだろ」

ナガハラが立ち上がり離れる。ヒカルがはあと長い息を吐き再び目を閉じる。

「ヒカル」

ーいた。

ナガハラが後ろを振り向いた瞬間怪我人達が一斉に床に吸い込まれ姿を消すと驚愕するがもしかしてと周りが混乱する中下を見下ろす。

ハリーが驚き小鳥たちが舞い木々が揺らぐ空間を見て唖然とするがすぐに立ち上がり目を爛々とさせる。

「す、ごい。ん」

笛の音が響くとハリーが周りを見渡し響き渡る笛の音に耳を傾ける。

「何かの音」

「ひいっ」

「く、くるな」

ハリーがラファを振り向くとラファが怖がる兵士たちを見てしょんぼりとする。

『そんなに怖がらなくてもよいのに』

「ラファ、殿」

ラファがハリーを振り向く。

『ラファでいいです。こちらにいれば回復が早いので買ったながらですが連れてきました。陛下もこちらに避難されております』

「だから消えたって。城の中大騒ぎだよ」

「人型キメラとか、きてるのか…」

ハリーがヒカルを振り向き、ラファが話す。

『まだ、襲っておりませんが混ざっているようです。あと、こちらに入られるものは限られております』

「お、っけー、いってえええ」

ヒカルが起き上がり折れた腕を押さえ治癒を始める。

「まだ起きたらダメだって」

「爆発が、でかいのだったら急いだほうがいい」

笛の音が止むと地面がわずかに光り草原や木々が揺らぐ。ハリーがぞわりとしヒカルたちもだが兵士たちが起き上がり塞がれた傷などを見る。その光を隠れながらミオが祈り放っており瑠奈が肩に手を乗せ木々の隙間から見る。そしてそばに年配の男と騎士団長と数名の部下たちがおりミオが祈りをやめると僅かに息を弾ませる。

「力の流れを感じた。多かったり少なかったり一定してない感じ」

「そう?」

「うん。だから、疲れるんだ。後。相手は私とミオがきたから気持ちが昂ってるな…」

ーそれと、少し変な感じもする。

「ラファ。上にあがって」

『分かりました』

ラファが翼を広げ飛ぶと天へと向かう。すると途中で姿を消す。周りが驚愕しヒカルが瑠奈たちを見つけると瑠奈が手話を使いそこにいるよう伝えるとヒカルが頷き肩に止まった小鳥を見て驚く。

「こちらの力及ばずで申し訳ない」

「いえ。あと、私たちが来ちゃったんもんで早く自分のものにしないとと思ったんでしょ」

ー瑠奈。見つけました。

「転移。後よろしく」

ーはい。

瑠奈が紙を出し力をこめ飛ばすと紙が上へと上がり姿を消す。

「上に伝えています」

瑠奈が指を鳴らすと宙に霧が現れモニターのようにラファの視界が映る。王たちが驚き瑠奈が更にラファが移動する城内を記し残す。

「これは」

「ラファの視界とラファの移動した道の跡です。今、ラファが気配を探知して探しています」

「これはあ」

瑠奈がハリーを振り向きハリーが目を輝かせる。

「…まあ、ここの水写しの要領ですね」

ハリーがうなずき瑠奈が移動するラファの視界に映る人々を見る。そこにやれやれとヒカルがくる。

「兵士たちは眠らせてきた。後からハリーが回収した爆発した一部。根源」

ヒカルが焦げた骨を渡すと瑠奈が受け取り光らせる。

「ラファ」

ーはい。受け取りました。

ラファが速度を上げ階段を下り地下牢へと向かう。その先に血に塗れ力をなくしたルイスを運ぶ覆面の大柄の男と死体と似た男がいた。男がラファを見て冷や汗を流し、覆面の大柄の男がルイスを乱暴に降ろしすぐに人面の蛇へと変わりラファへと大口を開け向かう。

ーせめてこやつだけでもっ。

「起きろ裏切り者!立て!」

男がルイスを蹴りつけるとルイスが苦痛に顔を歪めながら力無くその目を開ける。

ーお前は瑠奈のために動いているのか?

ルイスが鼓動を鳴らす。

ーあなたは…。

「ルイス!!」

「がっ」

ルイスが壁に叩きつけられ磔にさせられるとその両手に置かれていた杭が打ち付けられる。

男が目を赤く光らせ再び杭を向けるも今度は横へ飛びよける。そこに槍を持った瑠奈が姿を見せ、瑠奈が男へと向かう素早く槍を何度もつく。男が右、左とよけ瑠奈が男の動きを見ながらその目を紅へと染める。

「小娘がっ。龍の血を引くとはいえ、調子に乗るな!」

「調子には乗ってない!私は彼を守るためにいるの!」

ルイスが鼓動を熱くさせ瑠奈が槍を光らせる。

「血なんて関係ない!あんたたちの欲望にもだ!」

槍が男の腹部を貫きそのまま男を壁に磔にさせる。男が声を漏らしその槍を掴み引くも抜けなかった。

『瑠奈』

キメラを退治したラファが瑠奈を呼び、瑠奈がルイスを下ろすラファの元へと走りルイスを抱き留める。

「も、うしわけ」

「話さないでいいですから」

『あっぐっっ』

ラファが吹き飛び壁に全身を激突させ貼り付けられる。

「ラファ!あっ!このっ」

ルイスが力無く倒れ必死に瑠奈を抱きつかむ血を流す赤髪の男を睨む。男が瑠奈の首筋を噛み、瑠奈が声を上げ涙を滲ませ男の頭を掴む。

「ブレイズ!その後私のもとにその娘を連れてこい!」

ラファがすぐさま飛びブレイズと瑠奈の元へといくが磔にされた男の妨害の結界に激突し頭を後ろに、前に、目を回し後ろに倒れる。

「い、つう」

ブレイズの奴隷紋が消え怪我もまた回復する。

ーま、って。この人、とんだけ。私の、血。

瑠奈が青ざめ視界を掠めると力無く目を閉じその手を落とす。

「瑠奈、さま」

ブレイズが瑠奈の首から口を離し瑠奈の血に塗れた口元を拭う。

「ブレイズ!次は私だ!その娘が生きていれば問題ない!」

ブレイズが男を振り向き、男が手を向ける。

「私に血を」

目の前が火に包まれると男が叫び悶えながら炎の中身を包む。ブレイズが瑠奈の首を治癒し止血すると抱き上げ再び男へと手を向け振り火を放つ。

「ブレイズ…」

「ようやく支配から解かれた」

アブレイズがルイスを見る。

「同じよしみだ。お前は見逃す」

「待て。どこに…」

ブレイズが離れルイスが奥歯を噛み締め立ち去るブレイズへと手を向けた。

「る、なさ、まー」


ー龍の血を引くものは万物の力を持ってると言われてるわ。それは怪我を治し病をも治しながら力を与える。

何もない古屋の中でブレイズが汗ばみ目を閉じた瑠奈の冷たくなったほおに触れる。

ー俺のものにすればあいつらに負けない。

瑠奈が僅かに目を覚まし霞んだ視界の中赤を認識する。

ーああ。

「きれ、な、赤…。夕日、の、色」

ブレイズが鼓動を鳴らし、瑠奈が再び目を閉じるもブレイズが頭をだき持ち上げ口付けをする。瑠奈が小さく声を漏らしブレイズが瑠奈をおき上の服を脱ぎ上半身裸となる。瑠奈が小さく唸り手を挙げかけるもブレイズが手を握り瑠奈の服を抜がせる。

「や、だ」

「誰も来られませんよ。ここは私が作った亜空間。私だけの領域」

瑠奈の服の下の胸を覆う下着が見えると今度は首筋を吸うと瑠奈が顔を赤らめ小さく声を漏らす。

ー動けない。動かない。ただ、体が熱い。

瑠奈が目を青へとかえ掠れる赤を見て手を伸ばし触れる。すると痩せこけた女と鍛え上げられた体の男が民衆の中磔にされ特殊な剣でその体を貫かれる。そして首をさらされた子供たちの中に赤髪の少女がいた。

「く、るし、かった」

ブレイズが瑠奈を振り向き瑠奈が涙を流す。

「め、のまえ、で。なく、した」

ブレイズが目を見開き硬直しながら動悸する。

「親、を。いも、お、とも」

ブレイズに触れるルナの手が僅かに淡く光っていたが力無く落ちる。ブレイズが瑠奈からすぐに離れ頭を抱え涙を落とすと顔を歪め震え嗚咽を漏らし前屈みになる。

ーブレイズ。

ブレイズが見えない何かに押しつぶされるように倒れる。そして空間が裂けタイシがエルハルトを連れその空間へとくるとエルハルトが瑠奈へと服を着せる。

「殺す、なら。殺す前に…」

「決めるのはタイシ様だ」

「ブレイズ」

ブレイズがタイシへと視線を向ける。

「お前が願うなら、俺の手伝いをしろ」

「てつ、だい…」

「そうだ」

タイシがしゃがむ。

「俺は古の国の復活。そしてお前が攻撃をした男。ルートヴィヒのようなもの達を今消している。そのようになるようにけしかけている」

「ど、ういう」

「お前のようなもの達の解放。及び、あえて交戦的になるようタイシ様が感情を昂らせている」

「ああ。エルハルトの災厄の力も借りてだ」

ー…確かに。あれだけ慎重にしていたやつが、突然…。

「お前の焔でもまだあいつは死なないが、もう何もできな」

エルハルトが驚き、タイシが瑠奈に蹴り飛ばされると瑠奈が倒れ込む。

「そ、ういう、わけ、かああ。ど、りで、妙、と」

「…」

タイシが起き上がり、瑠奈が拳を握り座りこちらを見るタイシを睨む。

「ま、わり。まきこ、むまで」

「巻き込んだ」

「しら、じらしく」

「俺には、俺がこれから先も守らないといけないものができたんだ」

「………は?ちょ、これ、から、って」

「察してるだろうが、ユリアーナとのユリアーナの間に子供ができた。まだ、生まれてはいないがな」

「……き、きいて、ない、し」

瑠奈が頭を落としうーと声を出す。

「周りに話してもいい。あと」

タイシがエルハルトから瑠奈が持っていたかけらを受け取ると瑠奈が手を向ける。

「こらああああぁ」

「代わりに治療と乱暴を働きかけた奴を連れていく。あと、俺も俺で動く。みんなには悪いと伝えてくれ」

「なにが、悪いだあ。この、馬鹿にいいいいいっ」

タイシが離れエルハルトが動けないブレイズを連れ瑠奈に頭を下げ離れる。そして三人が去ると瑠奈の体がふと軽くなると瑠奈がすぐに立ち上がり声を上げた。

「悪いと思うならカッコつけんな馬鹿ああああ!!!!ー」


ブレイズが力無くエルハルトの後についていく。そして転送魔法により移動するとその先を見て驚く。そこに壁に埋め込まれた機械を前に人型のロボットがモニターや各国の映像を映す水晶を記録していた。

「機械人形…」

「ああ。タイシ様が修理されて使用されている。この奥だ」

エルハルトが進み扉を開けると浅黒い肌の短髪の女、金髪碧眼の男が向かい合いチェスをしていた。そして部屋の隅に魔防具の腕輪をしたあの中国人の男、ヤンが座り本を読んでいたがエルハルト達を見て顔を上げる。

「クレハ。レオ」

「ああ」

「お互い難儀だったな」

「チェック」

レオがハッとしクレハがレオのキングを指で弾き金貨を手にする。

「待て」

「待ったなし。ブレイズ。お前はどうやってあの男の手から離れた?お前の場合特に酷かったはず」

「…」

「タイシ様の妹の瑠奈様の血を飲まれた」

「なに?」

「…ああ」

クレハが頷きレオが話す。

「なるほどな。だから以前感じていた力とはまた違った感じがするわけだ」

「ああ」

「…その、あなた達は、血を呑んだら力にするんですか…」

ヤンが気まずく尋ね、レオが話す。

「その通りだ。俺たちはいわば魔獣と同じような血を継いでいる」

「というよりも、魔獣の原点のようなものだ。私達はお前のような人種とはまた違う。別人種になる。そして、お前のように予言などはできない」

「ああ。できるのは魔術。そして力。あとは、吸血による回復と力の増幅だ」

ブレイズが僅かに頷き、クレハが話す。

「まだあの男は死んでないだろう?」

「ああ。だが、再起不能だ。ブレイズ。ここが私たちの隠れ家になる」

「ああ」

「部屋は別だけど」

「はい」

「必要な時以外は基本ここで過ごしてもらう。まだ、私達とて奴らの呪縛から解放されたわけではない」

「そうだ。俺たちのように使い捨てにされている者達がまだいる。タイシ様は俺たちのようなもの達を助けてくださる」

「本当か…」

「嘘じゃない」

「そうだ」

「…俺の場合は、事情違うけど」

ヤンがぽつりと話、クレハがヤンを指差す。

「ヤン。彼だけ人だが向こうの世界の出身者でこちらで預言者としての力を得た。そしてその予言の中。見た先の事実を確かめたいそうだ。本当に自分を売るために育てられたのか。その育てられていた兄弟達はどうなったかなど」

「一応、お前の場所を特定したのはこのヤンになる。特定というよりも、予言していた。誤差は5分ほど」

ヤンが頷き、エルハルトが話す。

「5分もあれば十分準備できて行けるからな」

「ああ」

「ただ、見ると疲れるし腹が減る」

「予言はそれだけ力を使うからな」

ヤンが頷き、クレハがブレイズへと話す。

「ここにいないがあと、三名ほどいる。私たちやお前が知っている連中ばかりだ」

「なら、同じ出身者か?」

「そうなる」

「唯一、貴族出のエルハルトは違うがな」

「ええ。まあ、今は私が思う以前の階級はないと感じておりますけど。あるとすれば私の父達ですね」

「縛る者達だな」

「はい」

ブレイズが口を僅かに結び、エルハルトが告げる。

「ブレイズ。後程タイシ様がお越しになられる。お前のこと全て話せ」

エルハルトが背を向け部屋を出るとヤンが話す。

「少し怒っていた」

「そうか?」

「同感。お前何した?血を飲む以外」

レオがブレイズを振り向くとヤンが話す。

「その件についてタイシは知っている。そして、他言無用」

「分かった」

「そちらも話すな」

ブレイズが小さく頷き、レオがとりあえず座れと椅子を示すとブレイズが分かったと返した。


ー怒りはなかった。

生い茂る木々の中で紅蓮にもたれかかり座るタイシが気絶した瑠奈のそばで涙を流すブレイズを思い出す。そして過去の階級差別による断罪を脳裏に浮かばせる。

ー…いい。

ユリアーナが隠れながらぽうと紅蓮にもたれかかるタイシを見る。そのそばに頭は鳥に背中に翼を生やし、体はライオンのグリフォンが立っていた。

「やっぱり素敵…」

『まだ乙女見てるのですか?』

ユリアーナがぎくりとしグリフォンがやれやれとする。

『千年近い歳のくせに』

ユリアーナがグリフォンの首の羽を掴む。

「言、う、な」

『…』

ーユリィ。

ユリアーナが肩を震わせ顔を赤くさせる。そしてすごすごと姿を見せグリフォンと共にタイシの元へと来る。タイシが手を向けるとユリアーナがその手を握りタイシのそばに座り、今度は腰に手を回され引き寄せられると心地よくタイシのそばに寄り添った。


ーむかつく。

ハリーがうまうまと食べ、オーガンが柔らかい肉に舌鼓する。そこにサイモン、マルクール、紬、エリス、ユナ、ミオ、ヒカル、そして瑠奈がいた。他に王が後ろに騎士団長含めた護衛を立たせ座り食事を共にしていた。そこは魔導局の一室で瑠奈が作られた簡易厨房に立ち無言で集められた材料で料理をしていた。

「なんか本当タイシの妹ってわかるなあ」

「腹を立てたり考え事するところで料理を作るというところがな」

「くうっ。むかつくううう。なんで一緒なわけえっ。腹立つうううっ」

瑠奈が葉野菜を素早く千切りにする。

「瑠奈の作ったのうまかけんうちは好きたいね」

ミオがほくほくし食べながらうんと頷く。

「ちなみに兄とどっちが?」

「えー、うち食べたことなかけん知らん」

「こっちはこっちで美味しい」

「…肉、魚、野菜、和食」

「やめんか」

ミオが汗を滲ませミオのそばまできた瑠奈を紬がはなし再び調理場に立たせる。

「ほほほ」

「兄弟仲いい訳悪いわけ?」

「仲はいい。お互い助け合うけど、タイシの場合は慎重に付き合っていて、瑠奈の場合腹立てながらも心配している」

「違いますっ」

瑠奈がむすっとし声を上げぶつくさいいながら肉を出し麺棒を出す。

「力込めすぎたらいけんけんな」

「分かってるし」

『私の役立たず。役立たず』

瑠奈が呆れ足元で床に何度も頭を打ちつけ落ち込むラファを見る。

「ちょっと…。頭」

「ラファ殿。落ち込んでますねー」

「そりゃ結界に頭ぶつけて意識飛んだらしいからな」

『くううう。魔術は常に進歩してるなんて。結界が以前と比べて強くううう』

「いやその前に頭突きで破るの?」

「ほほほほ」

「じいちゃん笑ってばっかり」

エリスがみかね側でラファに声をかけ慰める。瑠奈がやれやれとし綿棒で肉を叩き柔らかくしていく。だが手を止めブレイズの事を思い出すと今度は顔をかあと赤らめる。

「ん?」

「…あああもおおおお!」

瑠奈が肉へと麺棒を振り上げ叩き潰した反動で綿棒が折れテーブルが割れ折れた綿棒が飛びマルクールの額に激突する。マルクールが額を抑え呻めき瑠奈が頭を抱え悶える。王が目を丸くしサイモンがやれやれとマルクールに声をかけエリスが今度は悶える瑠奈へと声をかけた。


ラファが頭を落とししょんぼりとし瑠奈がラファの上に上半身を乗せぐったりとしていた。そしてマルクールが額に湿布を貼り顔をしかめながら座っておりサイモンが話す。

「また災難でしたね」

「そーだな」

マルクールが瑠奈を見ると瑠奈がすやあと眠っており、ラファもまた寝ていた。

「寝てるし」

「疲れたんですよ」

「こっちも疲れたぞ」

オーガンが肩を叩きながら部屋へと入る。そして王も入る。

「寝てしまったか」

「はい」

「起こしましょうか?」

「いや。起こすのも忍びない。あと、大臣か。あのような身体とは驚いた」

「あのような身体?」

「龍の血と言えば良いか」

「え?」

オーガンがヒゲを撫でる。

「奴は今全身が龍の鱗で覆われておる」

「龍の鱗で?」

「龍になりかけていると言えばいいか…」

王が困惑しながら話、オーガンが頷く。

「あれが古のもの達が長く生きている理由のようだ。あやつら自体が龍なのだ」

サイモンが頷き、マルクールが瑠奈を見る。

「そうしたら…」

「ああ。調べようと思うが、話によると血を吸われたとのことだったからな。なので後日調べようと思う」

「ええ」

「なんといいましょうか。吸血をして体に問題はないのかと思いますね」

「わしも思うところだから、やつを使い慎重に調べて確認する」

「下手したら拘束を解きかねませんからね」

「そうだ。今も魔導士6名で交代しながら拘束しておるからな。中々骨がいる」

「魔導士6名ですか」

「ハローエブリバディ」

玄海が横塚と共に来ると横塚がふざけるなとその背を叩く。そこに望むもまた来ると眠っている瑠奈とラファを見て近づき瑠奈を抱き上げる。するとラファが寝ぼけ眼で顔をあげ望を見る。

「ベッドに寝かせる。ラファは?」

『一緒に寝ます…』

「ああ」

「寝床は隣の部屋じゃ。あとすまぬな来てもろうて」

「いえ」

望が頭を下げルナを連れて隣の部屋へと入る。

「確か古のものを捕まえたとかでしたよね?」

「ああ。運ばれた時は相当な大火傷であったが生きておった。そして、暫くして今度は龍の鱗を斬新に纏い始めたので慌てて」

「龍化だな。最終段階の逃げ道だ」

オーガンが楽しく笑む玄海を見る。

「やはり、龍になろうとしているのか?」

「いや。正確には人の形の龍だ。龍人って言ってる。そいつになると不死に近い体にはもう戻れない。あとは首を飛ばせば即死だ。だが、人の体の時と違って力は倍。つっても魔獣が使えるわけじゃない。肉体的な力。腕力とかが龍並みに強くなっている。人なら殴られただけで内臓破裂するどころか貫通するほどだ」

「魔導士6名で押さえているがどうだ?」

「ぎりなところだな。もう2人欲しい」

望が戻ると玄海が望を見る。

「望ちゃん。今から会う予定のやつは相当馬鹿力になっている。人の体なんて脆いくらいと思えるほどの力だ」

「はい」

「その龍人は戻れるのか?」

「そいつは俺にはわからねえ」

玄海が肩をすくめオーガンが分かったと頷く。そして、王もまた連れ玄海たちを地下の特殊牢へと案内する。そこでは魔導士6名と見張り5名が一体の人型の龍を囲み縛っていた。魔導士たちが頭を下げ龍人がオーガンたちを睨むが手を振る玄海を見て歯を噛み締める。

『玄海っ。小僧っ』

「どもー」

「あんた何恨み買ってるわけ?」

「色々恨み買うことしてきたの」

魔導士の一名が汗を滲ませ踏ん張る。そして龍人が腕を震わせ、魔導士たちが強まった力を必死に押さえ込む。

『玄海っ。貴様だけでと殺さねば気にっ』

龍人が上から何かに押さえつけられ地面にめり込むと魔導士たちが息を切らし望が龍神の背にのり腕を上へとあげ押さえていく。

『せ、いじ、ゅう、使い…』

「聞きたい。なぜそこまで昔にこだわる?今の地位であっても満足いくのではという俺の考えだ」

龍人がおかしく笑う。

『満足?あれでか?私はあの国の力を使いこの世を支配することで満足出来る。あの兄弟の力があれば、王の宝玉が手に入れば』

龍人が涎を流す。

『兄弟を喰らえば永遠の命を得られるからな。だから、邪魔をするなああ』

望が押されると床にヒビが入る。魔導士たちが苦しく声を漏らし、オーガンが息を吐く。

「ラファ殿が話しておった。わしらの魔術がまさかここまで強まっていたとはなと」

望が押されながら刀を握りすっと鞘から刀を引く。

『無駄あっ。この鱗に通るわけがっ』

片手片足の腱が切られると龍人が倒れ唸り、望が刀を鞘へと収める。

「鱗を切る必要はない」

玄海がニコニコしながら親指を立てると横塚がその手をはたき落とす。

ーなんだこの異界人。一体なんなんだ。

龍人が唸りながら望へと視線を向ける。

『小僧…。お前は、誰だ…』

「あちらで警察とオリンピック選手と道場の師範をしている。こちらの世界について遠い昔の祖先がいたとの事で物語として語り継がれてきた」

『そ、せん…』

「ああ。確か、レーガン」

龍人が目を見開き、玄海がまじまじと見る。

『レーガンだとっ』

「ああ」

オーガンが眉根を寄せ、龍人が冷や汗を流す。

『奴の…、子孫…』

赤と紫の瞳を思い出すと龍人が起きあがろうとするがすぐさま倒れる。

「恐れてる?」

「へえ。これは初めて見る光景だ。あと俺も知らない名前だな」

「わしもだ」

『古の国を封じた方です』

オーガンたちが欠伸をするラファを振り向きラファがねむねむとしながら話す。

『語り継がれていないのは致したかありません。なにせ、語り継ぐ方がこの世界におられませんでしたから。かの者は古の国王室を滅ぼしラファエルを殺し根絶やしにした方です。まあですが、うまく逃げおおせたもの達により王室の血でもある龍の血をこの世にまでなんとか繋いだのです』

「これはまた、なんと」

「大賢者を殺したのか」

『はい。それはラファエルが望んだ事になります。そしてレーガンは人でありながら人智を超えた者でもあり、私たちラファエルが作り生まれし龍を気高い者と褒めてくださいました。私達はこの者達の血であり肉。もしくは闘技場や処刑人としてあの国で繋がれておりました。私もまた人を食べたことがあります。それが唯一運ばれてきた食事でした』

ラファが頭を振る。

『まだ、瑠奈や以前の契約者達がくれた食事が美味しいです。人の肉を好んでいたのはごく一部の龍だけです。そして、やっぱりレーガンの子孫だったんですね』

ラファがニコニコする。

『彼は私たちや苦しんでいたラファエルの解放者。私達は自由となった事でこの世界で暮らせるようになったのです。あと、レーガンの特徴が継がれてましたのでもしやと思いました』

「どの部分が?」

望が尋ね、ラファが話す。

『肌の色。それから模様です。紬達とお風呂に入った時に紬の腹の横にあざがありましたから』

「俺にはない。紬と父がある」

『ではそちらのあざも残っているのですね』

「そうなると、中々強い遺伝だな」

『私も驚きました』

龍人が望の喉目掛け鋭い爪を向けるが望がその手を掴み止める。

『彼は4代元素の術をマスターしておりました。火、水、土、風』

『ひぎっ』

『そして、古の国のもの達以上に力が強く』

龍人が苦しみもがく。

『古き精霊達に愛された者でした。国が滅んな後の行方はわからなくなりましたがあちらの世界に渡って余生を過ごされたのですね』

「祖先について分かったとして、いつまで押さえたらいい?」

望が頭を落とし苦しむ龍人の手を離し鞘から刀を抜き龍神の前に向けると龍人がビクッと震え望を見て長い髪に屈強な男。そして赤と紫のオッドアイの目を思い出しぶわあと汗を流す。

『れ、れー、が』

龍人が倒れながら望から逃げるも結界に阻まれる。

『出せ!頼む出せ!奴が!!レーガンがあ!!』

ラファが驚き首を傾げ望が話す。

「俺はレーガンではないんだが……」

望が刀を鞘へと収め、ラファが恐怖し結界を叩く龍人へと近づく。だが真下がひび割れ紅蓮が突如姿を見せる。

「なっ」

『黒龍』

紅蓮が龍人の喉を噛みそのまま首の骨を折ると龍人が白目を剥き力無く倒れる。紅蓮が口を拭い威嚇しながらオーガン達を見る。

『黒龍』

『白龍。相変わらずお喋りな奴め』

紅蓮が再びキズの中に潜り姿を消すと傷がふっと消える。オーガンが冷や汗を流し、ラファがおろおろのする。

「首の骨が完全に折られています」

ラファが望を振り向きオーガンが小さく唸り玄海がやれやれとする。

「ならもう復活はしない。死んでる。あと、はあ。思わぬ邪魔が入ったのと、妙すぎるなあ」

「まるで幻覚を見るように恐れたことか?」

「そう。なのに術が使われた形跡がない。あの祖父があそこまで怖がるのがおかしい」

「そうだとすればタイシの仕業じゃろうな」

「ああ。俺も同感だしなんか、瑠奈ちゃんに話せないようしてくれてるからな」

『はい。あと私でも解くのが難しいです』

「そうか」

「望ちゃん。終わった」

望がはいと返事を返し龍人から離れ玄海の元へと来た。

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