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運命のミオ  作者: 鎌月
38/64

帰還2

白い竜がそこらに生えている果物の木からもらった果物をうまうまと食べていた。その果物を瑠奈達が与えており、ユナが次こっちと背伸びをし果物を向けると白い竜がパクりと食べる。

「何もかも驚きだし、危ういな」

ダンガンが水を飲み蘭丸とマルクルが頷く。

ーはい。あと、あの龍は聖獣ではないとのことでしたね。

「ああ。その通りの竜だ。しかし見たことない個体だな」

「ああ」

ユナが目を輝かせ乗せてとせがむと龍が首を降る。

「えー」

『私はあまり人や物を乗せたくありません』

「えー」

「ユナ」

ミオが下がらせ、龍がミオをじっと見る。

『巫女の子』

「え?」

『以前葵という方にお会いしたことがあります』 ミオが驚き、龍が話す。

『あの世とこの世の境と申せば良いでしょうか。わたしはこの世に出るまではあの世とこの世の境で眠りについているのです』

「はい…」

「へえ」

「異空間みたいなところ?」

『いえ。魂の道。生と死の狭間。葵はその狭間で出会いました』

ミオが驚き、龍が話す。

『娘の元にいるにはどうすればいいと言われたのでその方法を教えました。私に直接触れる。話せる魂は力の強い清いもののみ。そしてこの世に未練を残したもののみ。葵は娘であるあなたの成長を見届けたいと』

龍がミオの後ろを見る。

『自分自身のことを全て話さなかった事、この世界の知っている全てを娘に残さずに話せなかったことに悔いを残したとの事です。なのであなたという娘を母として大切に想われていたようです』

ミオが口をつぐみ涙を滲ませる。

『後はユナですね』

「私?」

『はい。葵を通じてあなたの慕う方。あなたの母が健やかに賢く強くなりなさいとのことでした』

ユナが頷きミオが鼻を鳴らす。

「もう一体。対となる竜はいるか?」

「え?」

「この世とあの世となると、どちらがあの世でどちらがこの世になる?」

勉が話し、龍が告げる。

『私があの世。黒龍がこの世』

「いるんだ。もう一体は?」

『呼ばれたもののもとに行ったようです。そして、今までになかったことをされた。私は何度かありましたが黒龍は初めてですね』

「どんなこと?」

『契約したのです。そして初めて名を与えられた。私は過去に2度ありましたが黒龍はありませんでした』

勉が面白く頷き、瑠奈がふうんと声を漏らす。

「ちなみに聞くけど呼ばれたってことは呼ばれて来たという事でその後は自分で好きなようにできるの?」

『はい。ただ』

龍が瑠奈に頭を近づける。

『呼ばれたのはあなたと同じ血を引くものたちです。そして、私は特に血を強く受け継ぐあなたの元に来ました』

瑠奈が顔を顰める。

「いや来なくていいし」

「えー」

「そこえー言わない」

「となると、タイシの元に黒龍がいるわけか」

「なんかあんの?」

瑠奈が尋ね、勉が話す。

「さあ。わからない。ただ、古の国は竜を崇拝する国なのは知っている」

「竜を」

「ああ」

『はい』

瑠奈が竜を振り向き龍が話す。

『そして私達は人に造られました。こちらでは大賢者ラファエルと呼ばれているものです』

「ラファエルかあ」

「こっちの世界だと大天使ラファエルのことを言うな。神の治療者。癒しの天使。そして旅の天使」

「癒しに旅かあ」

「うん。そうなると、あなた達竜を作ったってのは納得かも」

『はい』

「でもその血で選ぶとか余計な条件作るのはない」

龍がダンマリとし勉がおかしくくくっと笑い紬が話す。

「だそうだよ」

『そのようなことを申された方は初めてです』

「だって私にとってそれが当たり前で、血の繋がりがどーとかと言われて、突然崇拝されたりするのって嫌」

『私がそうでしたが』

「それで自分は特別だって思ったんでしょ?」

竜が頷き、瑠奈が話す。

「確かに姿とか見れば特別。だけどそれはあなただから」

『私?』

「そう。そして、ここにいるみんなどう?違う姿で特別」

龍が周りを見渡し顔、髪の色、肌などを見る。

「私は対等でいたい」

『対等…』

「そお。そして、相手の上に立つならば、それだけの努力を惜しまず立ちたい。もちろん、初めから決められた運命。人生ってのはある。貧乏人のところに生まれた。王達の元に生まれた。それだけで一気に生活に差は出る。でもそれは家族の恩恵を受けてきたから。そして、大変だろうけどその家族からの恩恵を抜けることだってできる。家族がいなかったら?そうしたら自由」

『自由…』

「そう」

龍がゆっくりと頷く。

『ラファエルと話しておりました。自由に好きなように生きよと。私はラファエルではない外のもの達の言葉により特別な存在でやらなければならないことをしておりました』

「それは何?」

『王の選定です。ただそれは私と黒龍が選ぶ事になっております』

「ならそれは両方一致で?」

『はい。ですが、ほぼ私の意見になります。私は力の強く知能あるものを選びます。黒龍は何も。私に丸投げです』

勉が吹き出し、蘭丸が話す。

「いや丸投げかい」

『はい』

「ちなみにここで一番力強いのは誰だ?」

ダンガンが楽しく話し、龍が頷くとミオを振り向く。

『そちらにいるミオです』

ミオが驚き、蘭丸があーと声を出しダンガンが納得し頷く。

「やはりか。将軍の力は凄まじいからな」

「確かにあの威力の力を使って本人は元気だからな」

「それは…、イーロンの戦が起こったきっかけでもあるドームの」

「そうだ」

「ああ」

ミオが口をつぐみ悲しみの表情を浮かべ龍がミオへと近づく。

『あなたはまだ力を制御できていないようです。ですが、力の制御は日々力を使うことでできます。知る事で。それだけ苦しいのであれば力を知ってください』

ミオが頷き龍が頷くと瑠奈を見る。

『その次はあなたですね』

「そこも納得」

「ああ。あいつがそうだからな」

瑠奈が呆れる。

「あ、そうですか」

「ああ」

「そうそう」

『特別ではない…』

龍が嬉しくニコニコする。

『私は特別ではない。なら私が行っている選定も意味のなさないこと』

「でも、私の国で王が」

「それは扱える道具とかが力が強い人しか扱えないからじゃないですか?」

「あー確かに」

『はい。そして、この子』

「瑠奈」

『はい。瑠奈の場合は強い遺伝があるからです。力は親から子へ渡ります。そしてさらに外側の力が強ければまたその子に渡ります』

「じゃあサラブレッドってやつかな」

「サラブレッド?」

「とても出来のいい子供を作るために出来のいい親同士で子供を作るんです。出来のいい子供を作るまで交配を続けたりもします」

「ああ」

「なら、それがアルスラン将軍だな。聞いた話イーロンで親同士決められて造られたって事だったからな」

「ああ。あと、ミオの場合はー、まあ自然とか」

「ああ。親同士自然と力のあるものだったわけだ」

「ああ」

ミオが複雑そうにするも頷き、勉が話す。

「ならか。お前達の出来がいいのは俺のおかげだな」

「本当よく言えたもんだよっ」

「あははは。あ、そう言えば名前何?」

『名前、は……』

龍が右、左と見ると紬を見る。

『私は契約はされた方から名付けしていた抱いておりました。あなた方も契約されているから名前があるのですか?』

「違うよ。親とかからつけてもらった」

『親から?』

「そぎゃん」

「ていうか、わたしの名付けって誰?」

「祖父だな。だからタイシと一緒だ」

「あ、そう」

『親…となると、ラファエルですが、もうとうに死んでおりますので』

「じゃあ名前こっちで考えよっか。契約とか関係なくさ」

「うん。嫌じゃなかったらね」

竜が目を輝かせ頷きにこにこしていった。そして、進軍しながら名前を考える。

「えーと、マリア」

龍が頭を横に振る。

「はな」

再び横に振りミオ達もまた名前を告げると横に振る。そして龍が声を上げる。

『名前って難しいですっ』

「そぎゃんな」

「あともう物事分かってるからこれがいいって自分で決められるしね」

「なら自分で決めたら?」

『それはそれで嫌です』

「いや、いやなんかい」

紬が突っ込み龍が強く頷く。

「難しかなあ」

「決めるなら今日中にしよう。長々するのと決まらないし」

「そぎゃんね」

「うん。ちなみに、ミオ」

「ええ」

「ミオはユナちゃんの名前はどう決めたの?ミオが決めたんじゃない?」

「ええ。ユナのお母さんの名前がユシだったからそこから貰ったの」

「そーだよ」

「うん。なら、ラファエルから行けばラファかな」

『ラファ?』

「ヘブライ語で安らぎ、癒しだな」

勉が告げ、瑠奈が話す。

「へえ」

「ラファエルも似た意味だったよ」

龍がこくこくと頷き嬉々とする。

『ラファ。ラファエルと同じ名前。同じ意味』

「そぎゃん」

『では、私はラファにします。これからもこの先も私の名前はラファ』

竜の額が光ると深い青が澄んだ青へと変わる。

「額の石の色が少し変わった」

ヒュンと何度も大きな音が響くとダンガンが声を張り上げる。

「防壁いい!!!」

巨大な岩が猛スピードで落下しており術師達が結界を張り突如現れた岩の奇襲を防ぐ。

「古のだな」

「え?」

「そこらの魔術師では使えない芸当だ。力が強いのも感じる」

「へえ」

「ていうか、そっちもその古関係者じゃなかとか?」

瑠奈が呆れ勉へとつげ勉がないないと手を振りバッグから古文書を出す。

「違う。俺の持っている、俺が以前手に入れた奴ら術者の虎の巻だ。ハリソンという男が残したものだ」

『ハリソン。ラファエルの弟子の1人です。真面目な方で自分が知っている術を弱いものから強いものまで全て書き残していました』

「どれだけ?」

『わからないです。見習い時代からでしたので』

「瑠奈。手の甲になんか模様入っとる」

「ん?」

瑠奈が手の甲の模様を見てダンマリとしラファを見る。

『契約の印ですね』

「…うちした覚え」

『名前をつけてくれましたので。一応しておいた方が』

瑠奈がラファの首を掴み振っていく。

「その一応はいらん!!」

『な、な、んで』

ラファが頭をぐらつかせ、エリスが止め瑠奈の手を取り契約の印を見る。

「これなんとかできますか?」

「いえ。あと契約の印で間違いはありません。それと、隠すには手袋をはめるか、化粧で誤魔化すしかありません」

「……」

瑠奈がラファを再び掴み無言で揺らすとラファが朝を滲ませ揺らされていった。


タイシが重い瞼を開けるとその視界に自分を覗く紅蓮を見ると自然と手を挙げ紅蓮の顔に触れ紅蓮がその目を閉じ大人しく撫でられていく。

「から、だは」

紅蓮が僅かに驚くもタイシへと返事を返す。

『はい。もう元の状態です』

「ああ…。あと、元の、話し方でいい」

紅蓮が頭を振りタイシが僅かに息をつき周りを見てユリアーナがいないのがわかる。

『あの者は父親に呼ばれました』

「父親に?」

『はい』

ー父親に…。

タイシの胸がざわつくとタイシがベッドから降り靴を履きふらつきながら歩いていく。紅蓮がその後をゆっくりと追う。

『タイシ殿』

「タイシでいい。風雅」

タイシの影が濃くなり白い犬の風雅が姿を見せる。

「先に行け」

『はい』

風雅が走ると紅蓮がぽつりと告げる。

『我の方が早い…』

「悪いな。どこまで早いか俺は知らないからな」

紅蓮がむかっとし、タイシが息を弾ませる。

「競うのはまた次だ」

紅蓮がはいと渋々返事を返しタイシがああと答えた。


ユリアーナが頭や腕など血まみれになりながら息を切らし腹を庇っていた。だが、体が浮かび上がると壁に引き寄せられる。ユリアーナが結界を張り身を守るもそのまま見えないものに抑えられていくと苦しく声を漏らす。そこに2人の女と男。そして部下である者達が3人の計6人いた。

「中々抵抗するな」

「急いだ方がいいわよ」

「なら畳み掛ける」

さらに重圧がのしかかるとユリアーナが鼻血を出し苦しく声を上げる。

「問題ない。死ぬのはその腹の子のみ。その腹の子が生まれれば困る。そして我らは不死だからな。終わった後は遠ざける、そうすればやつに全てを奪われることはない」

ユリアーナが顔を歪め壁に体をめり込ませる。

ータ、イシ、さ。

「ま……」

男の腕に風雅が強く噛み付くと男が歯を噛み締めその目を赤くさせユリアーナを睨み腹へと手を向ける。

「っあ」

男がゾワっとし周りもまた一瞬で鳥肌を立てるとその場に崩れ倒れる。だが、全員意識はあり目開けたまま震え上がっていた。風雅が男から離れユリアーナの元にいるタイシの傍による。

「あ、が、ちゃ…」

ユリアーナが涙を流しながら手を向けるとタイシがその手を無言で握る。その場にエルハルトが現れくると周りと血に塗れたユリアーナを見て男を見る。

「我が妹に何をしっ」

エルハルトが両膝の力をなくし倒れるとその目を見開き震える。男がエルハルトを睨み、エルハルトが苦しく口を開けなんとか息を取り込もうとするも突然、お互いの金縛りのようなものが解けるとその場に各々倒れたり荒々しく息を荒げたりするものと現れた。

「こ、れは」

『ここの階級支配による術を我が解いた』

エンドレが姿を見せた紅蓮を見る。

「支配を」

『ああ』

タイシが立ち上がり男達を振り向きながら宙から長方形の幾何学模様が刻まれた剣を出す。男達がそれを見て顔色を変え紅蓮が告げる。

『アイネスの剣。全てを葬り去る剣だ』

タイシが奥歯を噛みく、紅の目をより赤くさせる。そこにユリアーナ達の父親が到着した途端タイシが1人目を縦に両断し、続いて逃げようとした部下の男の首をはねる。

「え、選ばれたと言ってっ。調子に乗るな小僧!!」

男が声を上げ、タイシへと銃を向け引き金を引くと銃弾がタイシの体に当たりタイシがふらつき止まる。そして心臓近くから血が流れると男がトリガーを再び引くも風雅が体当たりし邪魔をする。

「この犬!」

大きな心音のような音が部屋中鳴り響くと風雅が止まり紅蓮がその目を見開きユリアーナの父親達が目を見開きエルハルトが武者震いする。

ー変化。いや。覚醒した。そして。

「絶対敵支配者となった」

タイシの髪が異様に伸び始めその胸の傷が綺麗に消えて無くなる。そして体に古代文字が刻まれタイシの周りも飛び始める。男が冷や汗を流し震えるとその隣からどさっと音が響く。男がすぐにミイラとなった男や女達を見る。

「ひいっ」

風雅が震えすぐさま紅蓮の元にかけ尻尾を腹の下へと隠す。紅蓮が気にせずじっとタイシを見る。

『阿呆め。全ての人種の上に立つ始まりの者。始祖の血を引くものに仇するとは』

「お、おゆるし。す、すぐに。すぐにでも、治癒を」

男が目の前まで来たタイシを見て恐怖しその体に皺を、その髪は白髪となり、歯は突然抜け下へと落ちると目の前のタイシが剣を振りかぶった。

「ほ、ほゆるひ、ほおー」


ーん。

ユリアーナが目を覚ますとすぐに腹に触れ急ぎ起き上がりかけるが手が当てられる。ユリアーナがはっとしてを当て抑えたエルハルトを振り向く。

「腹の子は無事だ」

「ほ、本当」

「ああ」

ユリアーナが力を抜くと腹に手を当て大粒の涙を流す。

「しばらく安静にしたらいい」

「ええ…」

ユリアーナがしゃくりを上げ周りを見る。

「タイシ様は…」

「お前と腹の子に治療をされて休まれている」

「え」

「ユリィ。今は体を休めるように。タイシ様もそれを望まれている。あと、お前に危害を加える者はもういない。タイシ様が制裁した」

ユリアーナが複雑な面持ちをさせながら頷く。

「ええ…」

エンドレが頷き水差しをユリアーナへと向けるとユリアーナが涙を拭いながら水を飲んだ。


ユリアーナの父親が木の根元で剣を抱きながら無言となったタイシを見ていた。そのタイシの元には紅蓮。そして細い管が突き刺さった小型魔獣達がタイシを囲み眠っていた。それをユリアーナの父親が見ていた。そして父親の部下であろう金髪に眼鏡の男が傍へとくると頭を下げる。

「周りは?」

「はい。支配が解けたことによる反乱が起きております」

「ああ」

『立場が入れ替わる』

父親が紅蓮を振り向く。

『お前達はお前の娘が娘がタイシ殿のお相手だから守護を受けている。だが、裏切るような真似をすればああだ』

紅蓮が顔を横へと向ける。その先に顔面岩が複数回あり男がゾッとし紅蓮が父親達を見る。

『破壊されるまで苦しむことになると思え』

「…承知しました」

紅蓮が頷き父親がヒヤヒヤとし眠るタイシへと視線を向けた。


ーお前ら手伝えるなら手伝えっ。

「シルフィ」

エリスに呼び出された精霊達が風を起こすと風が吹き荒れ荒くれ者達が吹き飛ぶ。そこは辺り一面乱戦と化しており術による攻撃、剣など打ち合う音がけたたましくなり響く。

「面倒くさい…」

勉がやれやれとしカードを飛ばし敵兵たちの首や額に当て絶命させながら倒すとミオの張った結界の中にいる瑠奈がすぐさま声を上げる。

「こらそこ!我が子の前で人殺すな!!」

「突っ込んでくる奴が悪い」

「ああもおお狂う!!」

瑠奈が叫びミオがユナを抱きながら戸惑う。そして結界の外にいる紬が鞘に収めた刀を奮いながら男たちを昏倒させる。

「どっからどう湧き出てきたとかこいつら!!」

「あー確かに人数多いよね」

「そぎゃんたい」

瑠奈が頷き自分の手を見て周りを見るとラファを見る。

「ちょっといい?」

『はい』

「ここって、イメージすればあらかた術が使えるって分かった。だから、これできそう?」

ラファがやや首を傾げ瑠奈が教えるとラファがふむふむと頷く。

『できます。ただ力を相当使います』

「私の力ではどう?」

『十分です』

「じゃあ行くね。合図は重ね」

ラファがはいと返事を返し淡く光を放つ。そして瑠奈がそのラファの手に触れるとぞくりとする。

ー合わせる。集中。

瑠奈が目を閉じ僅かに輝く。

ー今。

「重ね」

ラファの目が群青色へと変わり瑠奈の瞳もまた群青色へと変わる。エリスがすぐに振り向き2人が光となり重なる。そして瞳は青、白髪に白銀の鎧を身につけた姿に変わると紬がポカンとし、ミオが驚く。周りが僅かに固まると瑠奈が顔をみるみる赤くさせる。

「おー!変身!!」

「マジはず!!ああもおおおおお!!そこ笑うなあ!!」

瑠奈がおかしく笑う勉を何度も指差し今度は宙から白い細い棒が現れる。

「展開!!」

槍がざっと幾重にも分裂し空を飛び地面に刺さると放電を始める。蘭丸が汗を滲ませ、瑠奈が地面に手を当て放電する。

「痺れろ!!」

白い雷が地面を走り敵兵のみ放電していく。

「よかなあっ。これうちにもできっかな。焔!」

焔が紬の元へと光りながら飛ぶ。そして紬と重なると紬が赤い目に赤い髪をさせ炎を纏いその背中に赤い翼を生やす。

「炙り出す!」

「早く終わらせて元に戻る!」

「べつよくなかか?」

「よくないっ。いっけこら!」

「よっしゃ!」

紬が空を飛び鞘から刀を出し炎を浴びせ瑠奈が三叉の槍を手にし目の前の戦車へとお互いに狙いをつける。

「吹き飛べ!」

「いっけえ!」

放たれた三叉の雷撃、そして炎の刃が宙を飛び敵兵たちが逃げ魔人となった戦車に当たると放電し火焔を浴び爆発した。


ーほう。

「どれ。私もやろうか」

キヨが手を上へと向けると楓がその手に乗る。

「重ね」

『わあい』

キヨたちが光ると羽衣を身につけ翡翠の目に緑の髪へとキヨが変わり周りに風を帯びるとすぐさま周囲が反応を示し玄海が話す。

「おー」

キヨが風を帯びる扇子を広げ戦車への向け振り払うと風が竜巻へと変わり戦車を飲み込む。

「おーっ。すっげ。望ちゃんもしてみるか?」

「いえ。俺はああ言ったのはいいです」

「えー」

望が手を向けると松風が額を望むの手に当てる。

「と、言いながら?」

「いえ」

「ん?」

松風が光ると装着されていた装甲が浮かぶ。

「んん?」

「防壁です」

装甲が分裂し回転しながら敵の銃撃を防ぎつつ吹き飛ばす。

『後は攻撃です。特に疲れる相手達ではありませんから』

「余力は残しておかないといけませんから」

「かっくいー」

「ざっと訳せば面倒なんでしょう?」

ーバカにするな…。

黒髪の少女が突如現れると血に濡れた拳を光らせ身を逸らし望へとその拳を向ける。だが装甲が受け止め火花を散らす。

「この弱虫野郎!私と戦え!!」

横塚が驚く。

「子供?」

「にみえて俺らより年上だ。ただちびなだけだ」

別の拳が光、装甲に再び当てられると装甲にヒビが入る。

「邪魔すっ」

かちんと音が響くと少女が目を見開きいつのまにか少女の背後にいた望が告げる。

「これで楽になったはずだ」

少女の背中の服がさけ青い血が吹き出すとそれを見てキヨが眉を寄せる。

「なに?」

「青い血?」

少女の背から真っ二つに切り裂かれた虫が落ち少女がその場に崩れ小さく唸る。

「虫っ」

キヨが男の1人に狙いを定め風で背中を切るとその男も青い血を背中から吹き出しその場に崩れる。

「背中を狙え!!虫に操られている者がいるぞ!!」

ラダンが声を上げ周りが敵兵の背中に狙いを定めていく。横塚が最後の痙攣をする虫を見る。

「この虫は古のやつ?」

「ああ。あと、こいつはジルナールのじじいだな」

『名前と力がわかれば分かります』

松風が光ぐっと身を引く。そして突然光となり望達の元を離れるとその先で眩い発光が起こる。

「しとめました」

「松風ちゃん優れてんな」

「む」

玄海が拍手し、キヨが嫉妬すると。

『土の聖獣を使うお兄さんはしっかりと力を理解してるね』

周囲が上を見上げアルスランもまた上を見上げる。そしてそれはミオ達がいる場所にも聞こえていた。

『本当は黙っていようかと思ってたけど私が作り出した子たちと仲良くしてくれてるから出てきたよ。私はあなたたちが知る大賢者ラファエルの知恵。そして前世の記憶を持つ者』

奏が楽しく微笑みながら地下洞窟の光る湖にうつる者たちへと語りかける。

「アストレイ国元国王たちの裁きによってことは大きく動き出した。ラファエルが住み世話になった国でラファエルが授けた知恵と薬により不死に近い古き者たちが動いている。そして、ラファエルであり私はこう言っても何だが天才だ」

「は?」

瑠奈が呆れ声を出す。

『絶対唯一の存在の人種を生み出してしまってな。まあそれが今回の騒動の一つでもある。ちなみに絶対唯一の存在は今この場に2名いる』

ミオ、紬が瑠奈を見ると瑠奈が違う違うと頭を振るが。

『名前を言えば鬼坂瑠奈と今村勉だな』

「名前を言うな!!後そんなこと知るかあああ」

勉が眉を寄せる。

「なぜ俺が?瑠奈と大志ならわかる」

「って!分かっててあんたは子供を作ったのか!」

瑠奈が疲れ果て、紬が驚く。

『今村勉の問いに答えれば隔世遺伝だ。私は隔世遺伝という組み合わせを考慮して作ったからな』

奏が興奮していく。

「魂の輪廻があるならば肉体の輪廻も出来ると思った。君ら親子には悪いと思うがそれがたしかに証明された」

『なるほど』

『そこ納得するなっ』

『間違いだ』

奏が目をぱちくりとさせ、勉が楽しく笑む。

「俺は俺自身で進化を遂げた。俺の力は相手をコピーする。相手に触れ相手の持つ遺伝子もだ。そうやって相手が使うはずの力が使える」

勉がそばにいた紬の肩を叩く。そしてその手から炎を出すと焔がギョッとする。

『紬の力!?』

「そのまま?」

『はいっ』

「俺はあの女に触れた。だからあの女の情報が俺に全て流れた。それでお前が作った人種とその人種のコピーである俺が交えたことでより濃い血を持つ子供が生まれたわけだ」

「よく言えたもんだよ……」

「ええ」

瑠奈がミオを振り向きミオが話す。

「遊びなんですか?」

勉が面白く話す。

「ああ」

「あーもういいよ」

瑠奈がやれやれとミオの肩を叩く。

『……な、なんてこと』

その声が上擦ると奏がさらに興奮する。

「素晴らしいっ、こんなことあるっ」

瑠奈がむすっとし、奏がぞくぞくとする。

「隔世遺伝ではなかったけれど、そのようにして作るとは」

『また作る気?』

「まさか。作らないよ。更なる争いの火種になるし、まあどうあれ私は生まれ変わり。おかしな所は変わらないけど私はラファエルじゃないしラファエルに飲み込まれてもない。後そのコピーは対象者に触れてある程度時間が経てば消えるようだね」

『ああ。ある程度使えるということで生かされた。生かされて大志と瑠奈の母親にまんまと寝取られたからな。そこはあの女にいっぱい食わされた所だ』

「へえ。なら、またどうして子供を?」

「1人は寂しいだろう?」

瑠奈が呆れ果て、勉が楽しく笑む。

「あいつはそうだからな。大志は」

ミオが僅かに驚き奏がうんうんと頷く。

『分かるなあ。私も彼が小さい頃に会ったことがあってね。1人ポツンと何もせずにただそこにいたから声をかけたんだよ。その後も別の日に彼は私が来るからとその駄菓子屋の前で待っていたのを覚えているよ。懐かしい。でもその大志君がある意味のピンチかな』

「ピンチ?」

ダンガンが言葉かわからず眉を寄せる。

『さて、そこの瑠奈ちゃんが集めている欠片は私も持っている。各国をあちこち回って今5個ある。そして瑠奈ちゃんが持ってる1個。古さん達が2個。あとは、まだ未発見が3個。個人的に所有している物で5個だ。ここまでどうして分かるかは瑠奈ちゃんなら知ってるよね?』

「…あの時の地図」

『正解。本当は彼。ルイスに伝言お願いしてたけど聖獣達が出てきたからご挨拶しようと思ってね。伝言だけど競走しよう。これは瑠奈ちゃんがルイスと決めた事。私もそれに便乗するよ』

瑠奈がむっとする。

ールイス。いつの間に。

アストレイに紛れた者が悔しがり奏が話を続ける。

『瑠奈ちゃん。私。そして古の者。私たちが残りをどこまで早く集めれるか。最後に誰が一番多く集められたか集計しよう。そして、私からハンデだ。私は4ヶ月の間に集めたから4ヶ月は行動を自粛するよ。4ヶ月経ったら動くからね。あと、4ヶ月の間に私を見つけたら欠片を無償であげる。ただしその後は集めるもの同士。競争しよう。私からは以上。またね』

「腹立つっ」

瑠奈が中指をたてると紬がどうどうとなだめながらその指を下ろす。

「なかなかな変態だな」

「あんたもたいこんバカっ!!」

ゆながハテナを浮かばせ勉が肩をすくめた。


ータイシ様…。

タイシの指が僅かに動く。そして目の前の涙を流すユリアーナを見る。タイシの体には幾何学模様を避け木の根が至る所皮膚に張り付いており、紅蓮がやれやれとする。

『ただ回復を早めるためだ』

「嘘よっ」

『嘘ではない』

ユリアーナに手が向けられるとタイシが泣きじゃくるラダンを抱き寄せる。ユリアーナがさらに大粒の涙を流し唸っていく。タイシがその目を閉じゆっくりと息を吐く。

「暖かい…」

ユリアーナがぐうと口をつぐませ、タイシが抱きしめ直す。

「体は、もう、いいか…」

「は、い。子供も、です」

「ああ…。よかった…」

タイシが柔らかい笑みを浮かべる。するとタイシの体の幾何学模様が僅かにひかる。そして眠っていた魔獣達が目を覚ましたと共に木の根が離れ地面へと潜る。魔獣達が起き上がり発光をはじめるとユリアーナが驚き魔獣達が成長しその光が消えたと同時にまた違う形へと全て変わる。一体は一本角を生やした馬へと、もう一体は白い羽を光らせる鳥へと変わる。

ー聖獣…。

『聖獣はラファエルが作った半獣達の進化した者たちだ』

「え…」

『今いるこの魔獣達はラファエルの力を用いて生まれた半獣。元々この世界には魔獣と共にこの半獣が住んでいたが見ての通りの美しさだ。毛皮や羽を求め人が狩り、ほぼ絶滅した』

「絶滅…」

『ああ。ラファエルは絶滅させないように研究し生み出す方法を作り上げた』

タイシから木の根が離れるとユリアーナがタイシをすぐに振り向く。

ー紅蓮。

紅蓮が立ち上がり頭を下げその場を去ると周りの半獣たちもあと若い次々とさる。

「紅蓮様。どこに」

突然引っ張られるとユリアーナが驚くもタイシに強く抱かれたと分かると感情が込み上がる。

「抱きしめてくれ」

「はい…」

ユリアーナがタイシを抱きしめタイシがユリアーナの頭に手を当て愛おしく軽く頬擦り笑む。

「お互い、生きていることを感じよう。全て」

ユリアーナが頷くとタイシが力を緩める。そして自然とユリアーナがタイシから離れお互い見つめ合うと今度は近づきあい口付けを交わし合った。


瑠奈がむかむかしながらスコーンを食べ、ミオもまたもくもくと食べていく。その周囲は野営をし兵士たちも各々休息や見張りを交代しながら食事を行なっていた。そして、その場にエリスやユナ、紬、蘭丸がおり蘭丸がスコーンにジャムを乗せ口を開けばくりと食べ、ラファもまたうまうまとスコーンを食べていた。

「あーでも腹立つ」

「そぎゃんなあ。いいたいこといってさよならだけんな」

「ふぉ」

蘭丸がじいと瑠奈を見る。

「なんていうかー、タイシはそんなに感情を表に出さない淡々としたやつでもあるな」

瑠奈が蘭丸を振り向き蘭丸が話す。

「まあても、伝えることは伝えて変わることは断ってたしな」

「兄はそっちでどんな生活されてたんですか?」

「んー、まあ、5個あるうちの一つの隊長で年齢問わず部下達に好かれていた。あと、飯美味いし、種族差別とかしないな。それから礼儀作法よくてご令嬢方にめっさ好かれてて狙われてたなー。そんで家族のお偉いどもも」

瑠奈が驚きながらへえと答え、蘭丸が続けて話す。

「あと、魔導局っつってそこにいる魔導士達からも人気だったなー。まあもちろん、嫌ってる奴もいたけどそれは一重に異界人だからって理由が一番だな」

「そっか。向こうの私の故郷。兄にとっての故郷では兄個人として憎む人、なんでもしていいと、危害を加えても何しないやつと思って兄を的にしていた人が大勢いたから。だから、兄にとってここは本当居心地いいって話聞いたらすごく分かる」

「好いてるやつが、味方でいる奴が多くいる方がそりゃ居心地いいだろうな」

瑠奈が深く頷き、紬が話す。

「えーと、瑠奈はもしさ」

「私は向こう。兄も家族だけど他にも家族がいる。紬とかの友達もいるし上のお兄さん達もいるから。だから私の居場所は向こうで目的済ませたら向こうに戻る」

紬が深く頷き、ミオがやや寂しそうにしんみりする。

「ミオとはその時別れるけど、でも離れても友達だから」

「そぎゃん」

ミオが頷きエリスがふっと笑む。

「ユナも同じ歳のお友達ほしー」

「自然と出来ますよ」

「そぎゃんねー」

エリスが頷く。

「はい。ところでお聞きしたいのですが」

エリスがすっとワインを出す。

「こちらはここでも作れるのですか?」

「お前いつの間に飲んだんだ。くれ」

「嫌です」

「同じ品種の葡萄あるかな…」

『お調べしましょか?』

「出来る?」

ラファが頷き少しばかり私にと伝えるとエリスがワインを器に注ぎラファに向けラファが液体を浮かせ匂いを嗅ぎ口に含み飲み口を動かし飲み込む。

『こちらには酸っぱいマスカーナに似たものはありません』

「そうですか…。残念です」

「マスカーナ?」

ラファが水を出し映像として葡萄に似た小さな赤い身が連なる果物を見せる。

『こちらです。こちらの成熟した実を使ったのをワインとしてこの世界では飲まれております』

「へえ」

「酸っぱいってことは甘いんだその実」

『はい』

「瑠奈。酸味があると美味しかつ出来ると?」

「できるよ。言えば梅干しとかもそう」

「あー」

「甘いとなるとワイン自体も甘いかな?飲んだことないからよく分からない」

「タイシさんとか」

「あーあいつ飲まない奴だったから酒はさっぱり。ちなみにナガハラも飲まない奴でさあ」

「そうなんだ」

「1人いるじゃんここの世界知ってて飲むやつ」

瑠奈が温めた酒を飲む勉を指差すと勉が話す。

「面倒だからしない」

「面倒だからってことは知ってるわけだよな?」

蘭丸がすかさず突っ込むと勉がやれやれとする。

「知識としてはな」

「酒の話なら聞きてえな」

勉が舌打ちしダンガンが隣に座る。

「他に聞け」

「そう言うな」

「それ清酒だよね?」

勉がうんざりとし瑠奈が話す。

「ここ米とか麦は?」

「似たようなのあるよ」

「じゃあ、ワインはワインでもライスワイン」

ミオが頷き、エリスが話す。

「ライスワインとは?」

「ミオ」

「うん。向こうだとお米。ここだとハイルが近いけどその穀物を使ったお酒」

「はい」

「手っ取り早く。ほら父」

「やらん」

「お猪口少しだけやりなよ。そしたらよってたかってが無くなるからさ」

勉が舌打ちするもじいと自分を見る蘭丸達をみてため息を吐く。そして、ダンガン、蘭丸、エリスが少しばかり試飲をするとエリスがほんのりと微笑み蘭丸が声を上げる。

「うっまっ」

「だな。これがハイルに似たやつから作られてんのか」

「ああ」

「ここだとどう食べられてるの?」

「お肉と混ぜたスープとか、潰して干した保存食で食べてる」

「とてもふくよかでほんのりとした甘味もあって喉の通りも良いですね」

ラファが飲み込みふむふむと頷く。

『確かに。ハイルに似た物です』

「なら、清酒は作れるね。道具とか方法は知ってるからあとはお酒を作るための道具を作る人がいたらいいかな」

『はい』

「でもその酒造って向こうのだろ?イーロンみたいにあと残りするか?」

「いえ。木製の道具で作れるので問題なしですよ」

蘭丸が強く頷き、ダンガンが話す。

「てことは、作れるわけか」

「はい」

「ダンガンっ。俺先戻ってドワーフの奴らに言うわっ」

「ああ」

「おう。ならー、木製つったろ?木は何の木だ?」

「ミオ」

「ええと、杉に近いのは、マクラスの木。あと、大きな樽に似た入れ物と小さな樽とか作る必要があるよ」

「それから混ぜたりする道具もいるなあ。あと、大きな樽で高さ十メートル横五メートルのがいる。それに酒の原酒入れて作るから。出来そう?」

「おう。なら、後でその道具の絵とか描いて見せてくれ。材料だけ先に集めるわ」

「うん」

蘭丸が立ち上がりそれじゃと走って離れる。

「わざわざ面倒なことを」

「別にいいじゃん」

「ああそうだ」

勉が鼻を鳴らし、ダンガンが瑠奈を振り向く。

「さて、あとは問題なく国に戻れる。だが国に戻る前に魔導局の局長から会いたいと言う話だ。タイシがよく世話してた爺さん局長でな」

「世話って何を?」

「ああ。魔術の研究に必要な素材集めと自分の飯だな。確かトーフってやつか。この世界になくてタイシが作って持って行ってたんだよ。局長がそれが好きなんだとさ」

「豆腐好きとは」

「お年寄りだけんがじゃなか?」

「だろうね。あと、お豆腐ならミオ作れるね」

ミオが頷きエリスが微笑み話す。

「あちらで料理を覚えてきたのね」

「はい。あと他にも色々な事を教えてもらいました」

「ええ」

「それから甘いものば食べに行ったりもしたたいね」

「甘いもの?ミオたくさん食べたの?ズルい」

「えと」

「ずーるーいいい!!」

ユナが気まずく視線を逸らしたミオに飛びつき叩いていくと紬が笑いながらユナを止めミオがごめんねとほおを大きく膨らませたユナへと頭を下げた。


ユリアーナが目を覚まし目の前で眠るタイシを見ると体を起こし見慣れた寝室を見渡す。

ータイシ様が運ばれたのかしら…。

ユリアーナがタイシの伸びた黒髪を軽く掬い触る。

ーこの髪だけでも力を感じる…。

髪を下ろし今度は自身の腹に触れる。

ー…不安で仕方ない。生きているのか、分からない。

ユリアーナがやや表情を曇らせる。

ー無事に生まれてきてほしい。

ユリアーナの目の前に手が伸びるとユリアーナが目を覚ましたタイシを振り向く。

「どうした…」

「いえ、何も…」

タイシが起き上がりユリアーナを抱きしめる。

「気づくのが遅れて済まなかっな。本当に」

ユリアーナが顔を赤らめ涙を滲ませる。

「いえ…。私こそ、信じたばかりに」

「ユリィは父親が苦手だから仕方がない

。だから俺が守るよ。ユリィも子供も」

タイシが涙を流すユリアーナの頭を撫でる。

「怖がらなくていい。心配をしなくていい。俺がユリィ達を守る。大切な家族を守るよ」

ユリアーナが大粒の涙を流しタイシを強く抱きしめ頷いて行った。


ーここのことを知る必要があるな。

「紅蓮」

『はい』

泣きつかれ眠ったユリアーナのそばに寄り添うタイシの前に紅蓮が姿を見せる。

「お前が知るこの場所に暮らす者たちについて知っている限り教えてほしい。親族。敵対者から」

『御意』

「あと、ここは古代の国ではなくどこになる?真似たところなんだろう?」

『はい。イーロンという国の地下になります』

「やはりというべきか。調査した時にどうしても入らなかった場所があったからな。それも、上はそれを知りながら放置していた」

『技術の提供を行う代わりの住処だからです』

「いや。隠れ家。隠れ蓑だ。イーロンという国は」

タイシがベッドから降りる。

「ユリィの傍にいてくれ。何かあればすぐに俺に知らせてほしい」

『御意』

「ああ。外に出る」

紅蓮が再び御意と答えタイシが部屋を出る。そして姿を隠しながら転移魔法を踏み外へと出ると瓦礫の街とかしたイーロンを見て後ろを振り向き破壊されたドームを見る。

ー俺が見つけた一つの入り口。だとすれば他の入り口も同じでどこか繋がっているのか。

『ターイシ君』

タイシが前を振り向くと光浮かぶ球体が姿を見せる。

『びっくりした。うわ。髪からもエネルギー感じるね』

「…誰ですか?」

『あはは。どこかで聞いたことある声だなと思って疑問に疑問めいた問いかけしたね。うん。それは当たり。駄菓子屋でひとりぼっち仲間と話したお姉さんだよ』

「あの時の」

『そう。そして、あれは偶然だからね。君が1人だったから話しかけたの』

奏が光る勾玉へと話ながら柔らかく笑む。

『引っ越す前に毎日通おうと思って私は来てたから。もうあの駄菓子屋も駄菓子屋のお婆さんが亡くなって終わったけどね』

「そうでしたか」

『そうだよ。そして、まあ驚いた。あの時いつもどこか怪我してた子がここにいるとはってね』

「名前を聞いてなかったです。俺は名前を教えたのに」

『あはは、ごめん。私の名前は天崎奏』

「天崎…」

奏がふっと笑う。

「そう。天崎。知ってる?」

『はい。俺と同じクラスの男子が天崎でした。けど、自殺した』

「あはは。世間ではそうだね。実際は行方不明なんだ。私の弟はまだ見つかってないの。学校が勝手に自殺扱いして消したの。タイシ君に声を私がかけたのは同じ学校の制服を着た子で怪我をしてたし同じ学年だったからというのが本当の理由」

『はい。なら、なぜあの時俺に天崎音也の事を聞かなかったんです?』

「同じ被害者だろうと思った。感じたから。音也も暴力、差別によって傷ついて苦しんだ。そして、話そうとはしなかったし話したくなかった。迷惑をかけたくなかったという理由もだけど私たち家族に危害が加わるかもしれないと恐れていたから。だから私はあの時君に音也の事は聞かなかったの。そして、引っ越しをしたのは音也を探すため。音也が消えた海の近くに引っ越したの」

「海に?」

『そう。神奈川の海。ただ今はまた別の場所にいるし私は私でこうしてここ。そしてあちらと行き来しながらここで探しているの。音也をね』

「ここにいると分かっているんですか?」

『うん。もちろん。イーロンのリストに音也の名前が書かれてたからね。売人の手に渡って売り飛ばされたみたい。そして、そのリストにはねタイシ君。自殺として消されたあの学校の生徒たちが複数書かれていた。となると。意味はわかるよね?』

「学校の上がつながっていた。この世界とですね」

『その通り。そして消されたの。事実がわかったのは本当ごく最近でね。そのことについて匿名で警視庁にも送ったの。そうしたら、お手紙が来てさ。極秘捜査として扱うとね』

「極秘捜査…。長原さん」

『正解。そしてこれは君に関しても関わりがある問題なの。勾留していた男が逃げた。いなくなったの』

「平原か」

『正解』

「あいつの時と同じで警視庁にまだいるわけか…」

『長原さんは重責を感じててね。だから、支援者を送ったの。誰を送ったかはタイシ君が見てみてね。そして、学校で自殺と断定されて消された行方不明者の生徒は5名。そのうちの1名は私の弟の音也。君と同じ年の同級生』

タイシが頷き奏が話す。

「まだ君はうまく外での生活はできないと思う。だから紅蓮を使って。あの子は今君に対して信頼に値する人として考えてるからね。ある程度の無茶な願いは叶えてくれるから」

『まずどうして知っているんですか?』

「私の記憶にある前世。その関係で知ってるんだ。あと、私は預言者とかじゃあないから。この先の未来については分からない。そして、弟がここで生きているのかすらわからない。あと、私は私でまた向こうに戻る予定だからね。だから、頼るなら紅蓮を頼ってね。そして、君に流れる血についてだけど、私が思った以上に特殊になってるし加護が多いねー」

光る玉がタイシの周りをうろうろするように回る。

『お腹の中に神の子を宿ってる子がいるでしょう?私は紅蓮と繋がってもいるから』

「なら、何かあれば紅蓮に話すこともできるんですか?」

『勿論。監視も可能。タイシ君が必要ならしてあげるけど暫く留守にするからその間は無理。でも、この世界にいる間は可能だよ。だけど、勿論ただじゃないからね。この世界も向こうの世界も同じ。同じ対価。等価交換を』

「何をすればいいですか?」

『音也を探して保護してほしい。勿論、音也の意思を聞いてから。そして、君はアストレイ国の国民としてこの世界にいるのかな?』

「はい。今は、無理ですが俺にとっての居場所はあそこです」

『オッケー。なら、少し頭痛くなるけど君の力になる人材を教えておくよ。これからもこの先も君は大変かもしれない。でも、強きものが弱きものを救う。君が英雄になれとかじゃないよ。君が強すぎるからその強さを弱い人のために使ってね』

「俺は強くは」

『君は強い。それは君個人じゃなくて君が守りたい。君を守りたいという人がいるからだよ。この世界に大勢』

タイシが胸をとくんと鳴らす。

『今の君にとって必要としたい人もいる。でも、君を本当に必要としている人もいる。悪巧みしている人以外でだからね』

光がやや強まる。

『ただ、君。あまりにもギフトを持ちすぎてる。持ちすぎているギフトはやがて自分の身を滅ぼしかねない。このギフトは血筋によって決まる。言えば直接ついできたものと隔世遺伝。祖先より受け継がれてきた血のどこかで祖先たちの稀な人が使っていた力を使えるようになったわけ。そして君の場合、アスクレピオスとかの血も入った為に隔世遺伝がまあ結構出てきてるみたい。自覚あるでしょ?ん?』

「はい」

『うん。なら、言わば献血しよっか。必要とする人のために。君が許しを得てくれるなら

私を信頼してくれるなら私が即座にするよ。私はそれだけ知識があり力もある。理由は紅蓮に聞いて。そして、許してくれたならしてあげる変わり、弟を見つけてね。あと、いい人材が欲しいならこれから先の為に私と約束をすること。約束は一つ』

「分かりました。ギフトの件共にお願いします」

『オッケー。そしたらか。あっちに戻って。紅蓮を通して行うから。君の大切な人が寝ている間にね』

タイシがはいと返事を返す。そして紅蓮がやってきたタイシを見て眠るユリアーナを振り向く。

『ラファエル様よりお話を聞きました』

「なら、彼女はここで大賢者と言われた者の記憶を持って生まれたわけか」

『是』

「それもまた苦難だな」

タイシがユリアーナと手を繋ぐと紅蓮の額が光り始める。そしてタイシからユリアーナへと光が流れ腹に流れていくとスッと消える。

『終わりました』

「ああ。なら、音也だな」

紅蓮がはいと答えタイシが頷く。

「エルハルトと話す。そして利用できるやつは利用する。今まで俺を利用し、俺をこれからも利用する奴らをなー」


魔導局ー。

魔導士たちが集まる視線の先に瑠奈とモーガンがいた。モーガンがヒゲを撫でながらしげしげと見る。

「いやはや。タイシもあまり自分の身内のことを言わなかったからなあ。もしかしたら守る為に誰にも言わなかったかもしれんな」

「それは一つの考えとしてはありますね。まあ、そのせいで自分ばかり負担かけて背負ってしまってたので」

「そうだな。以前のアストレイでもそうだった。ことを大きくせず、部下たちを守るため自分を犠牲にして苦労していたからな」

「兄は自分に信頼を寄せている方とかには優しいですから」

「そうしたら他は?」

ハリーが尋ね、瑠奈が話す。

「他人行儀。あとは、うまく利用するか回避するかですね」

「ちなみに?」

ハリーが瑠奈を指差し瑠奈が話す。

「私は無視か適当にあしらう。相手するだけですから」

「うん」

「あれは人をうまく使っていたからな。使えるだけの手腕。才能がある」

ハリーがうなずき、モーガンが告げる。

「今ではどうしようにも行かないところだ。ところで、そちらは古の大国。タハマヤをどうする?」

「まず言いたいのがものすごく言いにくい名前ですよね」

「そこ?そこなの?」

「まあそうじゃなあ」

モーガンが楽しくヒゲを撫でる。

「はい。とりあえず、私自身個人の生活。家族家庭を持っているので迷惑だから、その繋がりを断ちたい。一生」

ハリーが驚きモーガンがふふっと笑う。

「分かった。わしらも協力しよう。そしてタイシにもこれまでも世話になってきたしいないと寂しいからなあ。あれはわしの話し相手であり、年の離れた友人でもある。いないと本当に寂しい」

「そう思ってくれる人がここには大勢いますから、兄にとってここは。この世界はとても居心地いいそうです」

「向こうに未練は?」

「さほど。兄の代わりに兄を思ってくれた数えきれるほどの数しかいない人たちの元には私がいればいいと思ってます」

「あとは、他人かそうでないかというわけか」

「はい。憎む。自分の憂さを晴らすしか能のない連中だけ」

「そうしたら瑠奈は?」

「私も言えばそうです。だから、今住んでるところから違う国に行こうと思います。男女問わず年齢問わず階級なども問わない。多数のことに挑戦し自由ができ、人の持つ個性を才能として認めてくれる国にです」

「つまり、才能さえあればなんでも出来る国か」

「はい。そして協力してくれます。もちろん犯罪は違います」

「ああ」

「こちらにはそのような国は?」

「ないな。ない。階級に関しては特にない。そして、ここでは階級は問わないが魔法のみの挑戦しか挑むことはできないからな」

ハリーがうなずき、モーガンが話す。

「この世界ではその考えを持つこと自体難しい。ただもしあれば、それは素晴らしいことだ」

モーガンが深く頷く。

「なら、目的を果たすことを願おう。ところで話は変わるが、だ」

「はい」

「ああ。まあ、なんだ。タイシには色々、とな」

モーガンがおどおどと話すと瑠奈が話し返す。

「ありますよ。あと、私は兄と違ってそちらの分野は数多くの知識を持っておりますから。先にお部屋にとヒカルさんに伝えて用意してもらってます」

「そうか」

「え?なに?」

モーガンがそうかそうかとうなずきながらすぐさまぱっとその場から消える。

「え?お爺ちゃん」

「なら私はこれで。あとはヒカルさんにお願いしてますから」

「え?え?」

ハリーがしどろもどろとし瑠奈がさて戻るかと集まるものたちの視線を集めながら待っているエリスたちの元へと向かう。

ーなんだ。タイシ。タイシ…。

ハリーがはっとしすぐさま走りモーガンの部屋へと向かう。

ーうううむむむむううう。

ヒカルが湯葉を手にし小さなツボに入った温められた油に入れ上げる。そしてモーガンががんもどき、ピーナッツ豆腐と食べじいんとする。そこには、古今東西の豆腐料理が置かれ、モーガンのそばにはレシピもあった。そしてハリーが到着する。

「あー!ずるっ。じいちゃんずるいっ!」

「なんのことやら」

「食べるなら席つけよ」

ハリーがすぐさま席に座るとモーガンが嫌そうにしハリーがいいじゃんかと文句を言った。


アルスラン、そして勉がお互い向かい合い座っていた。その場にコーヒーを飲むナガハラ、次のコーヒーを淹れる望、横塚、玄海がおり、玄海が何も話さない2人を見て小さくぼやく。

「話聞きてえなあー」

「やっぱり念話してんの?」

「ああ」

「こんな味だったか深煎りは」

「いえ。やはりここに器具がないので深煎りはこれが限界です。なのでナガハラ先生がご存知の味は出ないです」

「ああ。なら抽出か。ドワーフ共に作らせるかな」

「こっちはこっちでコーヒーばっか」

「あはは」

「あと、瑠奈ちゃんも来て早々作らないといけないから道具ってどうよ」

「トープ好きな爺さんたちらしいからなー。早いとこ気に入らせたかったんじゃねえの?」

「そちらは未練は?」

「あるはあるな」

横塚、玄海がアルスランたちを見る。

「ただ、放置していたのは事実だ。ただし、俺も奴らに利用され続けられてきた。その為の仕返しはしたい」

「ああ」

勉が立ち上がるとナガハラを見る。

「しかし、堅物のお前が女に惚れて子作りとはな」

「ちっ。ヒカルだな。あと、そうだ。そして、お前は?」

「俺はしくじって出来たのがタイシだ。そのあとは女が好きで作ったわけじゃない。タイシと会った時に必要と思って作った。その後については俺の部下でもあった男に里親として引き取らせた。隠蔽して」

「その女もよく作ったな」

「2000万払った」

「うわあ」

「まあた最低ね」

「お互いな」

勉が肩をすくませテントを出る。

「さてと、そいじゃこっちも向こうと合流して今後のこと決めていきますんで」

「ああ」

「ええ。望ちゃんどうする?」

「はい。ナガハラ先生について行きます。後ほどくるのは分かってますのでまたその時に合流します。なので紬のことをお願いします」

「りょーかい」

「ええ」

望が頭を下げ2人がテントを出る。

「アル。あの感についてはまず置いておくんだろう?」

「ああ。こちらが優先だ。古いもの達がタイシを使って侵略を企てているようだからな」

「やれやれだな」

ナガハラが肩をすくめ、アルスランが望を振り向く。

「望。よければ私にもそのコーヒーをもらえないか?」

「はい」

「お前は甘党の方だろう」

望が作りアルスランに出すとアルスランが一口のむ。

「苦いなー」


瑠奈が地図を見下ろし合流したサイモンが指差す。

「こちらで一旦旅を止めております」

「はい。なら、私が知ってるのでと」

瑠奈が赤いチョークで地図に丸を書く。ミオが真剣に見て行き、エリスが話す。

「ここにあるということですね」

付けられた13箇所の丸を見て話すと瑠奈が頷く。

「はい。ただし、もう取られた場所もあるので実際にあるかは分からないです。ですが、それでも行き先からこの二つの国」

瑠奈が二重丸を描く。

「ここをよかったら探してみてください。私はアストレイに尋ねて魔導局にお邪魔して調べてからたまに合流します」

「分かりました」

「紬は?」

ミオが紬を尋ね、紬が話す。

「うちはミオたちと行きたかけどー、兄さんと一緒にいるのが条件できたけんね。だけん、兄さんのとこおるたい」

「ええ」

「では、タイシ殿抜きでの旅をまず再開しましょう。ですがその前に、せっかくなのでここに参りましょう。旅ではもうお邪魔しましたがすぐ近くの国で立ち寄りますから」

サイモンがマーリスを指差す。そこにもまた赤丸が付けられていた。

「この世界で人気の観光地でもある国です」

「そぎゃんか」

「水の都って言われてるの。向こうのパリに似てる」

「へえ」

「なら、水路が交通手段?」

「ああいえ。水路はありますがそこまではないです。そちらでは?」

瑠奈が建物と建物の間の道が全て水路と話すとサイモンが興味津々にうなずき、エリスもそうなのですねと楽しく話した。


「私が知っている方々の組織になります」

タイシに呼ばれたエルハルトが紙に8つの名前を書き、更に細かくグループ名を書いていた。そこにタイシがおりタイシが頷く。

「分かった。手始めにこの二つを潰す」

「この方々を?」

「ああ。すぐに殺すわけじゃない。そして俺が直接手を下すわけじゃないが、行動不能にさせ自滅させる」

「それをして何を」

「古き国が目当てというが、彼の国自体もうほぼ機能していない。機能されていない国を復活させるのは立前」

「扉の奥に眠る王家の力とあなたの力を使う為?」

「ああ。だが俺も素直にはいと返事をしたくはない」

エルハルトがうなずきタイシがその手に幾何学模様を浮かばせる。

「この力も試す」

「はい。あと、タイシ様。タイシ様は今後どうなさるおつもりですか?」

「昔のしがらみに囚われているもの達をまずは消す」

エルハルトがぞくっとし、タイシが僅かに光ると顔にもまた幾何学模様が浮かぶ。

「エルハルト。俺もこの地に眠る王家の力を甦らせる。甦らせ俺の力にしようと思う。だがもしお前が欲しいというなら」

「いいえ。ぜひタイシ様の物に」

エルハルトが興奮する。

「ただしお約束を。必ず成し遂げてください」

「分かった。なら手始めにこの2人だ」

タイシが手をつき光の渦を出し、エルハルトが再びはいと返事を返しタイシと共にその渦の中へと入り消えた。

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