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運命のミオ  作者: 鎌月
37/64

帰還1

ーアルスランって人にあわして。

アルスランが部下達を連れ地下牢の通路を歩く。そして尋問下へと来ると縛られた玄海を見る。尋問室にいた兵士たちが敬礼し玄海が大きくため息をする。

「よーやく大将のお出ましだ。あんたの義理の息子に雇われてました。はい」

「将軍になんて言葉をっ」

「いい。タイシは?」

「古の連中の元。ただ、元の故郷にいるよりも、まだここにいて恥晒すよりもいい場所ではあるな。元故郷に戻ったことで精神が相当やられた。今のタイシはあんたが知るタイシじゃない。そして、見せたくない」

「そうか」

玄海が頷きはあとため息を吐く。

「俺がここにきたのは事前に話に来た。一週間後にこの世界にあんたが知っている連中と知らないのを連れてくる予定だ。ただし、俺が連れてくるもんだから場所は一つ。イーロンになる。そこにどうにかして迎えに来て欲しい」

「分かった。あと、イーロンのどの辺りだ?」

「元実験場。あんたがよく知っている場所だ。ただ、胡散臭い連中もいてな。抜けるまで骨がいった」

「どの程度?」

「軍が出るほど。戦車もまたうろついている」

「彼方の兵器が。なぜ?」

「そりゃ、まだ使えるやつが多くあるからだ。そして、今は向こうと通じやすくなっている。その原因は古きもの達が稼働し始めたからだ。元々彼方の世界にわたる手段をつくったのはそいつらだからな。向こうでもいい身分について優雅に暮らしながらこことわるーいことしてるわけ。まあそうでないと生活できないからな」

「迎える準備をする」

玄海が頷き、アルスランが話す。

「そちらは予定通りに来てくれ」

「了解。でも、その前にこれ解いてくんない?」

兵士が軽蔑した眼差しを向け、玄海が口を尖らせそんな目するなよと告げた。


ーミオの母親が好きだった桜だからな。見てから戻るのがいいだろ?


多くの山桜により山が桃色に染まっていた。そして、一つの巨大な一本桜が咲き誇っていた。その桜の周りには大勢の人々がおり写真を撮ったりしながら楽しんでいた。だが、そこから離れた山の中にミオの姿があり、ミオが山の桜を見ながら胸を熱くさせていた。

「ミオこっちこっち」

「よか特等席たい。瑠奈よく見つけたね」

「まあね」

そこに紬と瑠奈がおりミオが2人の元へと行きましたの巨大な桜を上から見下ろす。

「綺麗」

「そぎゃんな」

ミオが頷き胸に手を当て嬉しく笑みを浮かべた。


ー信じられないがその前に。

「寂しくなるな」

祖父が告げヒカルが話す。

「俺も。長い間お世話になりました」

「短いさ。短い」

「本当ね」

祖母が話す。

「向こうでも元気でね。タイシ君をお願いね」

「分かってる」

「ええ」

「もう会えなくてもな。元気でいてくれたらいい」

「本当」

ヒカルが頷き荷物を持つと頭を下げた。


ー瑠奈様はお元気になられました。

ー何もしなくても筋力が衰えていない。

タイシが自分の腕を触りその手を下ろす。そこは閉鎖空間だが周りは緑に囲まれ小さな魔獣や小鳥達が多くおりタイシが軽く手を挙げると小鳥がその手に止まる。

ー何もされてない小鳥の魔獣か…。変わらない姿はこの場所の影響だろうな。

「タイシ様」

タイシがユリアーナを振り向きユリアーナが近づくも止まりうなだれしゃがみ込む。タイシが足早に向かいユリアーナの側に座る。

「ユリィ。無理をしなくていい」

「申し訳ありません」

「謝らなくてもいい」

タイシがユリアーナをその場に座らせ自らも座る。

「部屋にいれば良かったな」

「いえ。お身体の具合は?」

「今日はいい。多分、外が雨だからだろうな。本当は晴れの時がいいはずなんだが」

「水の加護を持つ血ですから」

「ああ」

「失礼致します」

タイシが振り向きユリアーナが頭を下げあの神父服を着た男を見る。

「お休みのところ申し訳ございません。お尋ねしたいことがあります」

「ああ」

男が頷き、水晶を出す。そこにあの龍人と興奮し笑んだ女がいた。

「このもの達をご存知でしょうか?」

「体が龍?亜人?」

「一度。向こうで見た」

ユリアーナがタイシを振り向きタイシが驚愕しながら女を見る。

「女性の方だ。確か、両親はいないと」

「お父様。その方達が何か?」

「…見つけたかけらを奪われた」

「え?」

男が悔しく奥歯を噛み締める。

「かけらを集めている。私たちがようやく探し当てた鍵のかけらをだ」

「王の間の…」

「ああ。分かっているだけで2個だ」

「女性は、俺より年上で一度しか会ったことがない。ここにいたのも今見て初めて知った。ただ、初めて会ったときに不思議な感じではあった。どこか遠い存在のようか。だが、懐かしかった」

ユリアーナが不思議に思い男が頷く。

「分かりました。あと、お休みのところ失礼致しました。ユリアーナ。お前も体は大切にしろ」

「はい」

男が頷き頭を下げその場を離れる。ユリアーナが離れていく背を見ながら腹に触れる。

ー大切にしろはこの子がいるから。

「ユリアーナ」

ユリアーナがはっとしタイシが抱き寄せ口付けするとユリアーナが顔を赤くさせタイシが離れユリアーナのほおに触れ抱き寄せる。

「…」

ユリアーナが鼓動を跳ねさせタイシがユリアーナを抱きしめ包み込んだ。


ー遠い存在で懐かしい。

エルハルトが考え男が苛立ちながら話す。

「ああもうされたということはだ。こちらの縁に違いない」

「はい」

「ああ。ルイス。奴の行方はどうだ?」

「まだ掴めていません」

「くそ。なんとしてでもルイスを見つけ捕まえるんだ」

「父上。動いてばかりでは疲れるだけです。いずれ姫がこちらに来ます。ルイスもそのときに姿を見せるはずです。その時を待った方が得策です」

男がゆっくりと頷く。

「分かった。ならば先にこの一行だ。まだ何もわからないもの達について少しでも情報を仕入れろ」

「承知しました」

男が頷きエルハルトから離れる。

ー煩わしい。

「いつまでもその地位にいられると思うな老害」

エルハルトが囁き背を向けるとその場を離れ去った。


ーきさっ。

龍人が男を真っ二つに切り裂くと周りが悲鳴を上げ逃げ女が天井に足をつけながら告げる。

「逃げろ逃げろー。おっと」

女が目の前に小さな結界を出し雷を弾き防ぐ。魔術師が歯を噛み締め女が指を振りながら天井を逆さになり歩く。

「どんでん返し」

突然空間が歪み地面が逆さになり天井が地面へと変わると魔術師達が声を上げ落下しその天井にその体を打ち当てる。

「ふふ」

『…おい』

女が苦笑し苛立ちこちらを睨む逆さにおち天井を破り落ちた龍人を振り向く。

「ごめんごめん。雷電」

『ごめんで済む問題か』

ー地下にきてくれ。

雷電が上を見上げ、女が雷電を見る。

「聞こえた?」

『ああ。あの女だな。半人の』

「マナだね。行こう」

女が雷電達を浮かばせ空間を元に戻す。そして地下へと入り地下牢にいるマナを見つける。その隣にマーラックもおり雷電が剣を抜くと振り下ろし牢を破壊しマナの手枷も外す。

「またいいものを持っているな」

「マナ殿。知り合いか?」

「いいや。初めてだ」

『そちらもか』

「ああ」

「これはまた。はあ」

女がマーラックの元へときて見ていく。

「人型キメラかあ。ここに繋がれている間何を食べてた?」

「…」

「人の一部だ。一応生かされていたからな」

マーラックが舌打ちし雷電が牢を破壊するとマーラックが外へと出る。

「人に戻せるか?」

「材料がいるよ」

「戻せる?」

マーラックがマナと女を振り向き、女が話す。

「2人。私が戻した人たちがいて今は私のために動いてくれてる」

「必要ない。このままでいい」

「すまんな。桜という伴侶を奪われたんだ」

「伴侶?」

マーラックが眉を寄せ、女がほうと頷く。

「それで」

「ああ」

「マナ殿。その伴侶とは」

「ん?」

「桜。久しぶり聴いた日本語の響き」

「日本語?彼方の世界の言葉?」

「いたぞ!」

兵士たちが両方囲むと雷電が構える。

「雷電。私がやるからさっきのはチャラ」

『何がチャラだ』

雷電がむかむかし女がやれやれとすると楽しく手を上へと挙げる。

「なら酒奢るよ。オープン」

周りの景色が突如惑星や椅子、机、岩などが浮かぶ空間へと変わる。兵士たちが驚愕しマーラックもまた見渡す。

「テレパシーか。広範囲だな」

「テレパシー」

「はいちゅうもーく」

女が楽しく手を叩くとニコッとする。

「このまま武器をみんな置いてくれたら解決。おいてくれなかった人はもう大変」

兵士たちが汗を滲ませ雷電が武器を床へと置く。

「5.4」

兵士たちに緊張が走る。

「いけ!すぐにやめさせろー!」

兵士たちが声を上げ向かう。

「さん、に、1、ぜろ。にっげろー!!!にゃあ」

周りが輝き突如その体がネズミへと変わる。ネズミ達が驚き慌てふためき悲鳴をあげ、今度は猫が現れると必死に逃げていった。

ーなんだこれはっ。

駆けつけた応援が全員その場で倒れ気絶した兵士たちを見て唖然とする。


ー古のものの人体だ。

雷電が持ってきた腕をマーラックに投げ渡す。

『食べろ。人肉を食べるよりも持てば力もつく』

「ああ」

「雷電。マーラックさんを人に戻そうか」

「だからいいと」

「私も賛成だ」

マーラックがマナを振り向きマナが話す。

「その状態で捕まったのなら同じ状態で挑んでも返り討ちだ」

「…それは、その」

雷電がマーラックから腕を取り上げ、女が話す。

「雷電が鍛えるよ。腕も魔法もそこらの英雄と言われた連中より遥かに上」

『ああ』

マナがふふっと笑い、女が話す。

「ただし、鍛えてもらうなら雷電に一つ貸し。今回助けたのは運がよかったでなし。ただし、人に戻るためには私の力とその雷電の持つ古の者の血肉が必要」

女が腕を指差しマーラックが話す。

「その古のものというのはなんだ?」

「タグラハマ。一夜にして消えた古代の国とその一族達」

「ああ。だが確か作り話でもあるとも聴いた」

「答えはノー。本当にいた」

雷電が頷き、女が話す。

「今回使う人肉はタグラハマの一族で端に近い体を持っているの。その血肉を使ってあなたの体を再構築する。元の体には戻せないけど元の体に近い状態に戻せることが出来る」

「近い状態に?」

「そう。やるなら場所を変えてしないとね」

『ああ』

「なら次いでいい寝床を探している。どこかないか?」

『それならば未開国の地にある元は俺が使っていた家がある。そこに今から行こう』

「ああ」

「そうね。マーラック。暫く体は動かない。なので聞くけどその伴侶は命が危ういとかはない?」

「…」

マーラックが拳を強く握る。

「ない。どれほどの時間がいる?」

「2人の時は平均半月程。ただ目的がなくゆっくりペースだったから。急ぐなら急いで行こっか。2人もその雷電の元家に呼ぶから聞けばいいよ」

「ああ」

その場に突如ルイスが姿を見せる。

「奏。姫達がこちらに来るようだ」

「分かった。待ちに待った瞬間。そして競争だ。ルイス。こっちはまた一つ手に入れた」

奏が懐から破片を出す。

「残り8個。ハンデをつける。二月はこっちは休憩するってね」

「分かった」

奏が頷き雷電が話す。

『古のもの達もより活発になってきたな』

「王の候補者がそばにおられるからな。その候補者の是非を上もだが下も早く知りたいだけだ。王が復活すれば再び巨大国家が蘇る」

『ああ』

「ルキウス。いいところに来た」

足音が響くと今度はフードを被ったルキウスが姿を見せる。奏がマーラックを指差す。

「再構築して戻した後雷電とマーラックを鍛えて。伴侶を取られたから取り返すって」

ルキウスが止まり、奏が話す。

「無理?」

「いや。分かった」

「オッケー。なら、雷電」

奏が金が入った袋を雷電に投げ渡すと雷電が受け取る。

「私は送ったらのぞいて来るから。お詫びはまた後で」

『分かった』

「ええ」

白い棚を持つ鹿が姿を見せる。奏が地面に逆三角を描くとその図面が光る。

「私の分身が相手するから。それじゃ」

奏と鹿以外全員が姿を消すと奏が地面の三角形を消す。そして鹿が光白い竜の姿に変わる。

『イーロンか?』

「勿論。王嘉。聞くけど今おかしな感じはしない?」

『ああ。奴らに命じられる術は感じない』

奏が王嘉の背にのる。

『わかった。なら行こう』

王嘉が頷き空を飛びよりさらに飛んだ。


ー元気で。

ミオが涙を滲ませ唯子やミオにとっての祖父母を抱きしめると頷く。そこは海がを見渡せる展望駐車場で軽ワゴンが止まっていた。そしてそのそばにダリス、ヒカル、キヨがおり、玄海が運転席で古い懐中時計を見ながら海の様子を見ていく。

ーいい感じだな。

「映画のワンシーンのようだな」

「あーまあ」

玄海が後ろを振り向くと勉が楽しく座っていた。そして祖母がミオにピアスを渡す。

「あの子の20歳のお祝いに用意していたものよ」

ミオが頷き祖母が話す。

「ミオ。本当はね。あの子は1年もない命だったの」

「え…」

「余命宣告を受けていたの。あの子がいなくなった日は闘病中の合間に家族で旅行に行った日だったわ。あの子が突然消えたから私たちはあの子が知らないところで自殺したと思ってとても悲しんだわ。あなたのお祖父さんは悲しみのあまり私たち家族の記憶さえ失ったほど」

ミオが頷き祖母がミオの両手を包み込む。

「ミオ。あなたが私たちの元に来てくれた。お祖父さんもあなたに会ってお話を聞いたおかげで私達のことを思い出してくれた。後わずかな命だったあの子が生き延びてあなたという宝を残したわ。私たちはあなたが来てくれたこと何より嬉しかったわ」

ミオが頷いていき、祖母が涙を流す。

「ミオ。これから先か何もあるだろうけど幸せもあるわ。とにかく元気で生きて。あなたに幸有らんことを。そして、私たちは遠く離れても家族よ。これからもいつまでもこの先も」

ミオが涙を流し祖母がほおを撫でえむ。

「いつまでも一緒よミオ。私たちは繋がっているから寂しくはないわ。どうか元気で」

ミオがしゃくりを上げ祖母がミオを抱きしめ包み込んだ。


車の中でミオが目を腫らし鼻を赤くしながら涙を堪える。瑠奈が頭を撫でていたが窓をノックされると窓を開ける。すると兄が長い袋を瑠奈の膝に乗せる。

「もってけ」

「えー、別に」

「いいから。後ちゃんと帰ってこいよ。いいな」

「分かった」

兄が頷き拳を出し瑠奈がその拳を拳で突き返すと兄が頭を下げ離れる。後ろにいたヒカルが話す。

「それは?」

「笛です。後一つはー」

「懐刀。脇差だな」

「見せて見せて」

「いいですけどそんなの家にあったけ?」

瑠奈が袋から脇差を出すとヒカルに渡しヒカルが軽く抜き光る刀の刃をみる。

「それまじものじゃないですか」

「あ、マジで切れる?」

ヒカルが指で触るとすっと指の腹が切れ血が流れる。ヒカルが口に咥え、勉がおかしくふふっと笑う。

「何してんですか…」

「触っただけで切れた」

「なら出発するぞー。怪我したくなかったらシートベルトしっかり締めとけよー」

玄海がエンジンをかけながら伝えると瑠奈が頷きシートベルトをしヒカル達も行い、助手席に座ったダラスも締める。ミオの隣にいたキヨもまた締めると玄海へと話す。

「荷物も締めたのはやばいことをするからか?」

「そうそうその通り。めっちゃどっきどきするから」

玄海が車を動かすと見送る香苗や祖父母、そして唯子達が手を振る。ミオがほろほろと涙を流し瑠奈がミオの頭を再度撫で兄と早希へと軽く手を振りその手を下ろした。


ー来たわ。

横塚が玄海の運転する車を見て後ろを見る。そこにバイクに乗る望。サイドカーには荷物と共に紬が乗り込んでいた。そして横塚がヘルメットを被り望の後ろに乗る。

「横塚」

「はい」

横塚が誠一を振り向き誠一が古い本を横塚の手に乗せる。

「まだ目の覚めない真島教授の家で焼かれなかった本だ。これだけ火事で燃えずになぜか残っていた」

「はい」

「持っていけ。使えるかもしれん」

横塚がはいと返事を返し紬に渡し紬が受け取りすぐにサイドカーの窓を閉じる。

「必ず戻ってこい。以上だ」

横塚達がはいと返事を返し望がバイクを走らせ誠一から離れた。


「…なんとなあく、分かってきたというか予想はしてたけど…」

ヒカルが汗を滲ませ、玄海が楽しく話す。

「予想してたならいいじゃねえか。あとお前ら竜巻に巻き込まれてきてんだからこっちはラクショー」

「いやこっちもたまったもんじゃないって」

ヒカルが突っ込み近づく地平線を見る。だがその先は荒波が見える崖しかなく、ダリスが冷や汗を流しシートベルトを強く掴み、瑠奈が汗を滲ませミオが小さく喉を鳴らす。そしてキヨが楽しく話す。

「臨死体験が出来るな」

「くくく」

「いやしたくないしそれが出来るかわかんないって!」

「そんじゃ覚悟しろよ」

ヒカルが口をつぐみ玄海がにいとしアクセルを強く踏み込む。

「いっくぜー!」

車がスピードを上げる。だがその車の後ろを望のバイクが追いかける。横塚がロープ付きのかぎ針の矢をボウガンで狙いを定め放った。それは軽バンよりも早く飛び後ろの荷台に当たる。

「よしっ」

「行け行け!」

軽バンが崖を飛び今度は海へと落ちる。車の中でミオ達が悲鳴を上げる中望のバイクも崖から飛び降りる。玄海がそれに気づきギョッとするも懐中時計が回り強く光る。そして海が光渦を巻くと軽バンもだがバイクもまたその中へと入り姿を消した。

ーちゃんと戻ってきてよ望くん。紬ちゃんも。

「結婚して、出来てすぐなんだから」

唯子が小さく文句を言う。その隣に鈴子もおり鈴子が手首に嵌められたシルバーのシンプルなブレスレットを握りその目を閉じ祈った。


広いベッドの上でタイシがユリアーナと共に眠っていたが目を覚ますとその体を起こすか。ユリアーナがその振動により起き上がり外を見るタイシを振り向く。

「瑠奈が来た」

「瑠奈様が?」

「ああ…」

タイシが拳を握る。

「瑠奈は目の前のものしか信じないから連れて行けと言われたんだ」

「そうだったのですね」

「ああ。ただ、それは何もなかった時だ」

タイシが自らの手を軽く握る。

「タイシ様」

「ユリィ。エルを庭園に呼んでくれ。頼みたいことがある。ユリィはここにいてくれ。すぐに済む」

「分かりました」

ユリアーナがエルハルトを念話を使い呼び寄せた。


「ひあっ」

強い衝撃が来るとやや揺れ車が止まる。玄海が汗を滲ませふううと息を吐きすぐに車から降り周りの瓦礫と建物の中を見る。

「よし。すぐ降りろ。将軍さんにお迎え頼んだとはいえ周りは敵さんだらけだ」

「ああ」

「あーもう勘弁…」

「確かに」

ダリスがややふらつき降りる。そして瑠奈達と降りていく。

ーあれ俺の見間違いじゃあ。

「なんか刺さってる」

玄海がすぐに後ろのボンネットへといき切れたワイヤーと刺さった矢を見て汗を滲ませる。

「まじかああ」

「え?」

勉がカードを出し飛ばすとカードが宙で止まり血が流れる。そしてカードが刺さった魔術師が姿を見せその場に倒れる。

「音に誘われきたみたいだ」

「あれだけでかいとですね。これ車は?」

「あー、沈めとくわ。荷物だけすぐに出してもて」

ミオがはっとし手を向ける。すると車と周りを包み込み結界が張られた途端、瑠奈、ダリスの近くで銃弾がけたたましい音を立てる。

「見えない壁。シールド?あと銃?うーん」

瑠奈が唸り、勉が自分にも向けられたのがわかると楽しくダリスへと話す。

「ミオちゃん以外は殺していいということらしいな」

「…」

「ええ」

「はあ。俺何もとらえない身分だからここでは…」

「ふふ。私は不気味に思われてるからかな?」

「1617っ」

玄海が顔をしかめ、軍服を着た金髪の男が限界を睨みながらうすらと笑う。

「生きていたとはなっ。そしてあのタイシと同じ隠れた当たりというわけかっ」

「いや隠れたあたりって。もっとかっこいい言い方してよ…」

「36もか」

「36って言われたてたの?」

瑠奈が尋ね勉が話す。

「ああ。番号づけによって選別されていた。千番代は廃棄。10から50はスパイ。その後は兵士もしくは兵器。1から10は英雄聖女番だ」

「でも、その順番だと人数的におかしくない?」

「最後の順になったらまた1から数えての適当な管理で行ってきているんだ」

「あー」

「ちなみにタイシくんは1932だぞーっと」

軽バンが玄海の能力で沈み消える。ミオが結界を張り続けるがヒカルがとけとけと肩を叩き告げるとミオが結界を解く。

「さて、瑠奈」

「…なに?」

勉が折れ曲がった鉄棒を拾い瑠奈の元へといき肩に手を乗せると瑠奈が呆れる。

「何?」

「さて、握ろ」

「…」

瑠奈が鉄棒を握る。

「狙いはそうだな。指揮官の足元でいい」

「…まあ」

「そこに投げろ。投げる時はどうしようか想像したらそれでいい」

「いや、どうしようかって…」

声を上げた男が眉を寄せ瑠奈と勉を見る。

「まさか、お前の子供?」

勉がくすりと笑い男を見る。

「ああ。俺の娘で俺の息子タイシの妹だ」

「な」

「投げろ」

瑠奈が振り翳し指揮官の足元はと目掛けなげる。すると棒がスピードを突如上げ光る。

「は?」

「な…」

「やべって」

玄海が泥の壁を作り出し棒が足元に強く深く刺さると強い光と強い音を立てる。

「音っっっ」

玄海が苦しく声を上げるもヒカルが掻き消す結界を瞬時に張るとみみをとんとんと叩き治癒を施す。そして目を回し倒れたミオを見てすぐに抱き起こし揺らす。

「ミオー。起きろー」

「中々な威力だ」

キヨもまた耳を治癒しダリスもまた自ら治癒をする。

「ええ。ですがおかげで場所を伝えられますね」

「敵にもだがな」

光が消えると指揮官や兵士たちがその場で泡を吹いたりし伸びており、瑠奈が勉の胸ぐらを掴み大きく揺らし勉がやれやれとする。

「爆発と思えば奴ら全員爆死出来たのに」

「思うか!あと分かったわ本当わかったわ!!自分やばすぎって!!」

「ああ」

ミオがくらくらしながら起き上がると一つの影が現れ着地し暗部の服を身につけマスクをしたサイモンがマスクを外す。

「枢機卿っ。ミオ様ご無事でっ」

「サイモン」

「さ、サイモ、ん、さん」

「音と光にやられて回復中です」

ヒカルが告げ、瑠奈がすぐに飛び込み土下座し何度も頭を下げる。

「ごめんミオっ。ほんとごめんっ」

「い、いい、よ」

「それくらいで済んだからよかっただろう」

「よくないこのバカ!!」

「敵がわらわらきてるぞ」

キヨが扇子を広げ楽しく仰ぐと扇子を光らせ前へと向ける。

「サイモン。案内を」

「はい」

『やっほおお』

風が集まり小さな鹿の角をはやし下半身が渦巻く風を持つ子鹿の聖獣が姿を見せる。サイモンが驚愕し、キヨが楽しく話す。

「名前は颯がいいな。私と遊ぶか颯?」

『いいよー。たのしみい』

颯が扇子に移ると扇子が光り緑の渦を巻く。キヨが扇子を右から左へと動かし大きく振る。すると渦巻く風が現れ隠れていた敵を飲み込み吹き飛ばす。

「キヨちゃんいいねいいねー」

「さて行くか」

キヨが外へと出ると扇子を縦にし両手で握る。そして前へと放ると扇子が大きくなり浮かぶ。

ーへえ。

隠れながら様子を見ていた奏が楽しく扇子に乗るキヨ達を見る。

ーかっこいいー。

扇子が浮かび空を飛ぶ。それをエルハルトも部下と共に隠れ見ていた。

ー偵察だけにしておいた方がいい。瑠奈は来たばかりで制御ができない。そうなると巻き込まれる。あと、キヨが来るのもわかっている。俺の養父と血の繋がりのある妹で預言者だ。

「タイシ様のお話通りでしたね」

「ああ。だが、他にもいるようだ。叔父と叔母のもの達も来ている。必ず姫を奪いに来る」

2人が頷きエルハルトが告げる。

「別れて偵察しろ」

2人がはいと返事を返し姿を消す。

ー他に2人。ルイスと正体不明の女達もいるな。

エルハルトもまた姿を消し場所を移動しながら姿を現したり消したりとした。


「はあ」

サイモンが扇子の上から下を見下ろす。その真下にはヒカルが張った結界が張られており瑠奈が申し訳なくミオへと話しかけミオがいいよと頭を振る。

ーあの子がおそらくタイシ殿の妹。

「サイモン」

「はい」

サイモンがダリスを振り向く。

「教会は変わりましたか?」

「はい。複数」

「分かりました。落ち着いてから聞きます」

「はい」

火球に雷が纏い結界に当たる。

「うっ」

「むっ」

結界が光り爆発する。サイモンがダリスを抱き落下し、瑠奈がミオを抱き同じく落ちていく。キヨがむうとし逆さに落下しながら屋根に上がる2人を見る。

「己。お気に入りの一つであったのに」

「いいいっ」

「ん?」

光が現れ赤い炎を挙げた巨鳥が姿を見せる。

「たああ!!!るなあ!みおお!」

ミオが驚き瑠奈がギョッとする。

「なんでいんの!?」

2人を巨鳥が拾い、また近くのヒカルと勉拾うと玄海がその足にワイヤーを巻き引き寄せ掴みふうと息を吐き上を見上げる。キヨがサイモンとダリスを新たな扇子に乗せ浮かぶ。

「なぜあの子が」

「これについては私も分からなかったなあ。まあ、この先の未来はわからないのが一番いい。私たちはこのままここを脱する」

「はい」

「ああ。颯。あちらに伝えよ」

『いいよ』

風が飛びキヨがさらに高く風の結界を使い上がる。

「くそっ」

「げっ」

男が1人その場に倒れるともう1人がすぐに後ろを向くが顎に蹴りが当たると上へと飛び倒れる。蹴りを放った横塚がまったくとぼやく。

「いたぞ!」

横塚が下を向く。その下に脇差を腰に下げた望がいた。その望の元に軍服のもの達が迫ると望が鞘から刀を抜き前へと向け構える。

「ちょっと平気?」

「はい。あと、ここの戦い方は理解できましたし教えてもらいました」

「だれから?」

望の隣に光る渦が現れると軍服のもの達が止まり光る渦から装甲を身につけた馬が姿を見せる。

「何あの馬?」

望の刀が光、足元が光ると足に力がこもった途端望むが姿を消す。そして、軍服のもの達の後ろに現れるとそれらが気付きいつのまにか後ろにいた望を振り向く。望が鞘に刀を納める。

「いい切れ味だ」

武器が粉々に切れ服もまたズボンだけの姿となると横塚が呆れ男達がさあと青ざめるもその後ろからぬっと馬が現れると今度は悲鳴をあげ四散し逃げる。

「あんたは石川五右衛門か!」

「いえ。ただ斬鉄剣は欲しいですね。それと武士の情けプラスアルファは残しました」

「…」

「横塚さん後ろ」

横塚がすぐに振り向き巨大なハンマーを避ける。屈強な男が舌打ちする。

「女性にそんなものを本気で向けるとは。性根が腐っているな」

「だったらあんたはいう前にその素早さでさくっと助けなさいよさくっと!!襲われる前に!!」

「どいたどいたあ!!」

男がギョッとし、玄海の足が男の顔にめり込み蹴り飛ばされ屋根からそのまま下へと落ちる。

「よおしいい!あたりっ」

「あ、そう」

「あーなんか寂しい言い方。ていうか、なんで来ちゃったの?」

「ああまた後で話すわ。あと、あの鳥とあの馬何?2人のとこに突然来たけど」

「ああ。あれは聖獣だな。いわばこの世界の元素の超集合体。精霊の上ランクの召喚獣」

「へえ」

望がその馬にのり屋根に上がると馬から降りる。

「望ちゃん様になってんなあ」

「いえ。後勝手についてきてすいません」

「いやまじで心底驚いたわ。後あのバイクは?」

「私」

「ん?」

横塚が箱を出すと中を見せミニチュアサイズになったバイクを見せる。

「うっひゃあ。こりゃまた便利」

「奴隷の時に使えたのよ。ま、バカのふりして黙ってたけど」

玄海が横塚を抱きしめると横塚が苛立ち押しやる。

「さすが俺が惚れた女」

「しるか!後暑苦しいわ!」

横塚が玄海の顎を殴ると玄海が顎を抑え唸る。瑠奈が呆れ見下ろし紬もまた見ていく。

「馬鹿だ」

「そぎゃんね」

「ていうか、なんで来たとか」

「なんでって、親友ほっとけんたい。兄さんにもおとん達にもお願いして兄さんと横塚さんと一緒に黙ってきたと」

「ばってんが帰らんかも」

「帰れるし帰れんかったら瑠奈だって帰れんたい」

瑠奈が複雑な面持ちをし、勉が話す。

「ここまできて、聖獣にも選ばれたら今帰ったとしても苦労する」

「…」

「焔は聖獣なんだ」

『はい』

焔が体を僅かに傾け術師の結界を避ける。

『その通りです』

「うん。瑠奈たちには悪かったばってんね、うちら瑠奈のこと家族と思っとるけん。だけんが瑠奈。なんかあったら言ってよ。ミオもたい」

瑠奈がややじんとし、ミオが頷く。

「うん。ところでどこ行けばよか?」

「あー」

『呼ばれております』

「誰に?」

『精霊です。エリスというものが呼んでいると』

「私の親変わりの人です」

「だって。焔行って。兄さん達にも伝えて」

焔がはいと返事を返しまっすぐに進む。そして小さな炎が望の元へ届くと馬が話す。

『焔からです。ミオ殿の知人の元へと向かうとのことです』

「分かった」

「なら、話に聞いたエルフのお姉さんだな」

玄海が告げ、望が頷くも悲鳴が聞こえると共に振り向く。そこに先程玄海が屋根から蹴り落とした男が怒り頭や至るところ血を流しながら軍服を着た女の頭を掴み浮かせその首に斧をむけていた。

「げげ」

「下種やろうね」

「そこの変わったメガネをかけた男!!てめえこいやあ!!」

「いああっいあっ。ひあ、あ」

女が口から唾液を流しその男の手を必死に掴み悶えていく。その足元には首を落とされた仲間であろうもの達の死体が二体あった。玄海がやれやれとするも望が通り過ぎる。

「味方であれ怒りのままに殺すか」

望が刀を引き抜く。

「引導を渡す」

「なにを」

男の腕が落ちると男が目を見開き血の流れない腕をみる。そして体中一斉に細かい切り傷が現れ吹き出すと男が白目を剥きその場に倒れ女を抱いた望が刀をひゅっと音を立て降る。

「男が女にすることか」

「望ちゃんかっけえー」

「その前にあいつ腕切られて血出てなかったわよ」

「そりゃ、望ちゃんの力のせいだろ」

望が女を下ろすと女が震えひっひっと声を漏らす。望が手を向けると女がビクッと震える。

「痛い場所は?」

「…え」

「顔に目立つ傷がないのがよかった。女性にとって顔もその髪も大切だ」

女が目を見開き、望が背を向ける。

「あ、の」

「松風。安全な場所に運べ。敵味方は関係ない」

『はい』

「ああ」

「わ、私を、みくび、らないで」

女が震えながら立とうとするが望が再び振り向くと女の前に座る。

「な、に、よ」

「そちらは弱くないしみくびってもいない。ただ今は体を大切に。また俺に挑むなら挑んでいい。相手をしよう。ただ」

望が女を軽々と抱き上げる。女がどきっと心臓を跳ねさせる。

「俺は君のような女性を相手にしたくはない。君のような人を傷つけたくないからな」

女が心臓を跳ねさせ顔を赤くしぽうとする。

「落ちたな」

「あいつは本当、ど天然の無自覚たらし込み男なのよね」

「だから望ショックが起きたのかー」

「ええ」

望が女を松風に乗せると松風が女を連れ離れる。

「勘違いしない?」

「しないしない。勘違いしても聖獣が否定するからな」

「すみません。妹達のところにどうやって行きましょうか?」

「玄海。あんたバイク運転できる?」

「出来るぞ」

「俺のはダメです」

望がじいと見ると横塚が呆れ玄海がしょうがないなあと周りを見渡した。


キヨ達がアルスランたちの元へと到着するとハリス達がすぐさまダリスの元へと来る。

「ダリス枢機卿っ」

「ご迷惑をおかけしました」

「いえ。ご無事でなによりです」

「初めましてだな。兄殿」

「ああ」

ダリスが振り向きハリスたちが驚きアルスランと対面するキヨを見る。

「知ってはいたか?」

「玄海というものから聞き知った。全て終わらせたと思ったからな」

「ふふ。それは残念で終わらせるなとも言いたい。まあだが、私達は廃棄物でその後の扱いはぞんざいだったからな」

キヨが義手を手にし外して見せる。

「イーロンが落ちる5年前。人柱としてあちらとの道を繋ぐ時に自らその道へと逃れ向こうに渡った。代償は片腕で済んだ」

アルスランが頷きキヨが楽しく話す。

「私を他の兄弟たちと同様に楽にさせるか?」

「いや。それはない。あれらは全て人格を無くしていた。おそらく、お前が渡ったせいでもあるな」

「そうか」

キヨが再び義手を取り付ける。

「私の故郷はこの世界。私はこれからこの世界で余生を過ごす」

「ああ。好きにしたらいい」

「勿論だ。でもまずは知人たちの問題を私はどうにかしたい。兄殿の義理の息子の事もだ。勝手まがいな連中から未来ある者を好きにさせてはならないからな」

アルスランが頷くとナガハラがそばへと来る。

「ひかるは?」

「あれは別と一緒だ」

光る渦が現れ望と共に松風に跨った玄海と横塚が来る。横塚が緊張し軍たちを見ていき玄海もまた降りる。

「やっぱり中までは難しかったですか?」

「ああ」

「瓦礫だらけだからな。ただこの先があちらよりも険しい」

「確かになー」

兵士たちが松風やキヨたちとかわるがわる見ていく。

「そちらは聖獣と見る」

「そうそう。望ちゃんのー。後妹ちゃんもまた別に聖獣持ってたから驚き」

「ああ、突然現れたのよね」

「はい」

「私もだ」

『ねー』

颯が姿を見せ、横塚が話す。

「全部姿は違うのね」

「ああ。ところで望殿。そちらのその聖獣の空間移転はどれだけ運べる?」

「その前にヒカルだ」

ナガハラが前に出ると望がナガハラへと話す。

「警視総監にお話伺って」

「ヒカルがいるなら呼べ」

「おります。ヒカルくんからお話しされました」

「わかったからどこだ」

ナガハラが苛立ちキヨがふふっと笑うと望へと松風を示し迎えに来させるよう伝えた。


ギルドやアストレイ軍の元にエリスとユナがおり、ミオが2人を見て涙ぐむ。

「火がついた鳥!」

「聖獣ですね」

焔が降り立つとミオがすぐに飛び降りユナがミオをまた顔を歪め走る。

「ミオー!!」

「ユナっ」

ユナがミオに飛び込みミオが受け止めお互い涙し抱きしめ合う。そしてエリスが嬉しく笑みを浮かべ2人を抱きしめる。

「感動の再会だ」

「そうだね」

「アストレイか」

「アストレイ?」

「国の名前だ」

勉が降りると紬と瑠奈も降りる。

「兄がいたところ」

「すっげえ。聖獣だ」

2人がやってきた蘭丸を見る。蘭丸は焔に近づき興味津々に見ていく。そしてその場にマルクル、マルクールもおりマルクールがミオを見て安堵する。

ー話されたミオ殿のあちらの世界の知人達か。

「ああ。そのうちの1人が聖獣に選ばれたのだな。でももう、鈴子嬢みたいなことは勘弁だ」

ーそうだな。こちらも対応に追われた。

「さて、まずは。聖獣持ちは誰だ」

「はい」

紬が手を挙げると瑠奈がその手を下げる。

「つむ。何事も素直なのはいかん」

「はははっ。こちらは何もしないが、聖獣持ちはいい対応をしないとならない」

「なんでですか?」

「幸を運ぶ。その国に幸運をもたらす。そして守り手になるからだ」

勉が話しダンガンが頷く。

「その通りだ。それでそちらは?」

「勉と言う。元はイーロンの奴隷兼工作員として育てられた。今もまだ秘密を隠し持っているという事で消そうとされている」

「またお気の毒に」

「ああ」

ー似てるな。まさかとは思うが…。

ダンガンがじっと見て行き、気付いたものが落ち着かない様子をしていた。蘭丸がじっと勉を見る。

「タイシに似てるな」

「似ても当然だな。あれの実の父親になる」

「まぢかっ」

「こっちは実の妹」

紬が瑠奈を見せると瑠奈が呆れ顔をし周りが大きくどよめく。ダンガンが驚愕し勉がおかしく笑い、瑠奈が呆れる。

「あの馬鹿はミオが話した通りなーんも話してない。あの変人も」

「そぎゃんなあ」

エリスもまた驚いており、ダンガンが瑠奈達に近づきまじまじと見る。

「いや、驚いたな」

「家族云々聞いてません?」

「聞いたとなると祖父くらいだな」

瑠奈が舌打ちし、勉が話す。

「育てられたのはとしか聞かれなかったんだろう」

「質問にしか答えない馬鹿だからね。あー腹立つ」

「となるとか。兄にも劣らない力を持っているとか?」

瑠奈が紬の手を掴むとその手を挙げる。

「こっちが強いです。あとはその兄が強い」

「確かにな。小鳥遊家はこちらの世界と縁がある」

「そう縁が…は?」

「まあ昔話みたいに継がれてきたけどそぎゃんよ」

瑠奈が紬を振り向き紬が話す。

「だけん代々話もばってん武芸に全員秀でとると」

「いやそう言う家庭はどこでもある」

「あーでも確かにタイシに似ているなあ」

蘭丸が近くに来ると瑠奈と紬が蘭丸をじいと見る。そして紬が蘭丸の耳を摘む。

「あったか。え?これ本物?」

瑠奈もまた触る。

「本物だ。血管見えてるし」

蘭丸が呆れ2人の手を払いダンガンがおかしく大笑いする。

「さわんじゃねえ…」

「じゃあ尻尾触らせて」

「誰が触らせるか」

『ダンガン殿』

その場に鳥が現れる。

『枢機卿とサイモンとあちらのものが1人こちらにきた』

「こっちはミオ殿とヒカル。あとは向こうの連中が3人だ」

『ああ。あと、また追加だあちらのもの達が3名。一枚は以前将軍の元に訪ねてこられた者だ。もう一名は聖獣持ち。馬に近い』

「こっちも1人いる。鳥だ」

「はい。馬ならうちの兄さん」

「あー、聖獣持ちについてこっちは妹。そっちは兄だそうだ。またすげえ」

「そんなに?」

『私達は私達が絶大な信頼を得られる者。私達にとってたとえ他人であれ兄弟であれ私達が私達という存在と力と対等でいてくれる者の元に行きます。これは私達の遥か昔の契約』

「契約?」

『私達聖獣を作り出した方の想い。私たちもまた作られた存在。この世界と同じ作られたもの』

「へえ」

「それ初めて知った。局長が聞いたら喜びそう」

ヒカルが話し、ダンガンが告げる。

「さて、まずこのイーロンを抜けないとな」

「ここはまだ安全な場所じゃないんですか?」

「ああ。この後が本番だ。まあ、聖獣もいるから行きよりはマシだ」

「ここは首都の中心近くになる」

紬が頷き勉が話す。

「首都の周りは軍の管轄域だ。ここはあちらの技術を外に流さない。もしくは外に行方不明者の深い意味。存在を知らせない。逃さないために作られた国の防壁だ」

「ああ。まだその防壁は残ったままどころか、作り直されているところもある。イーロンの残党や、野盗達が住処をそこに作ったんだ。中にいた軍の連中はそいつらだ」

「じゃあ、まだイーロン国民として戦争しているんですか?」

「ああ。そして、上がいまだ生きている限りそれは続く」

「イーロンの住民達は?」

「壁の向こう側にもいるが、まだこの首都内に残っているのもいる」

ミオがそれを聞き胸を痛める。

「アストレイの支配下。植民地になったがまだ抵抗するから参っている」

「戦争…」

「まだ首都にいる連中は早いところ去ったほうが得策だがな」

瑠奈が勉を振り向き、勉が話す。

「あの首都には原子力施設がある」

「え?」

「原子力?」

「あちらの世界の技術だ。原子力により生活に必要なエネルギー供給を行っている。ただその原子力はわずかな物質で大きな力を使える。たかが一粒の小石で人1人簡単に殺せるほどの力を持っていると言うわけだ。その原子力施設はまだ破壊されてないようだが知らない連中が破壊すれば首都もだがその周囲も死の領域と化す。その領域に足を踏み入れれば体は侵され一生苦しむ。そして大地は生き物が住めない死の大地へと変わる。戻るには何百年も時間を費やさないと戻れない」

『やはり、そうなのですね。私達もその力に脅威を持っておりました。この世界に本来はなかったものですから』

「ああ。あちらからわざわざ運ばれてきたものであちらでも危険物扱いされたものだ」

「ていうかよく持ってこれたよね核燃料を」

「うちも思ったそれ」

「それよりもって来るなだし」

「ふふ。だがもうここにあるからな」

ダンガンがむうと声を漏らすも光の渦が現れ装甲を身につけた松風が姿を見せるとダンガンが目を輝かせ蘭丸がすぐさまより前から後ろからと見る。

「やっぱり松風は男の人から人気たいね」

「そぎゃんね」

紬が引っ張られると下を見て目を輝かせるユナを見てしゃがむ。

「焔に乗りたか?」

「うんっ」

『ヒカルという少年があると聞きました』

「俺」

松風が頷く。

『長原殿がお呼びです』

「あ、わかったけど…」

『私にお乗りください』

「俺っ!俺も行く!」

「蘭丸。おい」

蘭丸が顔をしかめダンガンがてめえは残れと下を指差した。


ヒカルを連れ松風が戻ると望のそばで指を苛立つように動かしていたナガハラが目をぎろりと向ける。

「はいはい。なんかわかってる」

ヒカルが先に出していた分解可能なプラスチックのコップに入ったコーヒーを向けるとナガハラがすかさず取り上げ一口飲みじいんとする。

「望さんすみません。迷惑かけて」

「いや。向こうは?」

「怪我人はなしです。あと、こっちに将軍とかいると聞いたんですけど」

「キヨさんと話されている」

ヒカルが頷くとラダンが近づく。

「ヒカル。ダンガン殿の元にお前と共にきた全員はいるか?」

「ええ」

「ああ」

「ヒカルー」

ハリーが手を振り他の魔術師たちと来るとヒカルが近づき久しぶりと笑顔を見せる。望が見ていくも松風が軽く頭で小突かれると松風を振り向く。

『近づいてくる一団がおります。その中に変わった音のあるものがきております』

「敵か?」

松風が頷きラダンが声を上げる。

「戦闘態勢!周囲をすぐに確認しろ!」

兵士たちが急ぎ動きハリーたちがヒカルから離れ移動する。

「忙しい奴らめ」

「こちら、警視総監から」

望がバッグから医学書を出すとナガハラが受け取りやれやれとする。

「俺のだな」

「カオナシを追ってきました」

「カオナシ?」

望が頷きヒカルが話す。

「イーロンの工作員。医者に成り代わって患者殺しをしてるやつ。実験をして殺しているのがここにきてるだろうって」

「ああ」

「あと、今村勉さん」

「あいつがきてるのか。面倒だな」

ナガハラがやれやれとし、ヒカルが話す。

「向こうも会うのはどっちでもいいとか」

「だろうな」

「ああ。あと、仕方ないから2年分のコーヒーと」

「コーヒー豆です。俺の家の親戚が豆作って売ってる農家なので栽培法知ってます」

「そう。ここの材料とかでも作れるらしいから教えてもらったけど本人が来たならやってもらったほうがいいですか?」

「ああ。構わない」

「…」

ナガハラが望の肩を強くひと叩きしその場を離れる。

「なんかすいません。父さん素直じゃないんで」

「いや」

『空気が震えております』

「え?」

『私たちと同じではないものが空間を割いて来ます』

ヒカルが目を丸くする。そして瑠奈たちの目の前で宙にヒビが入ると瑠奈たちが驚愕しそのヒビから赤目の白い竜が姿を見せた。


ー痛い。

タイシが脂汗を浮かばせ顔を歪めながら頭に手を当て項垂れていた。

ー瑠奈が来たせいか…。違う。別だ。

脳裏に赤い両目と黒い巨大な翼が映り込む。

ー何か…。来ている。わかってるけど、ぐう。

タイシの目の前に全長三メートルほどの赤い瞳をもつ全身黒い竜が立っていた。それはタイシに近づき額の角をタイシに当てる。タイシが閉じて目をわずかに開ける。

ー龍を二体。私と同じ姿のものを殺めたのは何故?

ー…危害を加えていた。人に。そして、よくある話だ。弱肉強食と。弱ければ負け強ければ勝つと。

タイシがわずかに顔をあげ睨み、竜がすっと目を細める。

ー今のそちらは私でも簡単に殺めそうだがな。

ー殺めたところで、俺1人。そちらに何か徳があるか?俺はある。

ー何故そちらに?

ー弱いからだ。何もできないからだ。

竜が鼻を鳴らし角を離す。そしてタイシの耳に雑音が聞こえ始める。

ーでは、私と同じもの達はお前より弱かったわけだ。

ーいや。強かった。ただ、運がなかっただけだ。

竜がおかしくひと笑いする。

ー力があっても、そのときの運によって勝敗が決まる。何事も。そして、お前は突然俺のところに来て何がしたい?どこから来た?

ーおまえがこの世界に来てから常におまえのそばにいた。そしてようやくその姿を見せることができた所だ。

ー聖獣?

ー近いが少し違う。そして、選定だ。

ーせん。

タイシの頭痛が激しくなると竜が深く笑む。

ー人の加護。精霊の加護。世界の加護か。

タイシが歯を強くかむと何かが当たる感触がその体に伝わる。それはユリアーナでユリアーナが汗を滲ませタイシを黒い竜から庇っていた。

「ユリアーナ!!戻れ!!邪魔をするな!!」

父親である男が声を上げる。ユリアーナが小さく頭を振る。竜が男と選定者達とを見てくすりと笑いユリアーナを見るとタイシを指差す。

『我がもう一つの分身はこれの妹の元にいる。我が出てきたならあちらもまた出てくるだろう。そして、この千年の時の流れで随分と変わったものだ。以前はおまえのような相手は全て傍観していた』

「…」

『我の力がいる。この国の力を取り戻したければ竜玉を捧げよ。しかし竜玉は今王の間にあり、その王の間の鍵は閉ざされている』

ユリアーナが頷き、黒い竜が話す。

『私がそのものの元にいた時点でその者は選ばれている。王としてだ。しかし、王としてなるべく力は封印されている』

「、に、なって、なにに、なる」

タイシが小さく辿々しく告げると竜がふっと笑う。

『なった後についてはおまえ次第だ』

ー龍は意地悪だからね。

ー意地悪?

ーうん。私はそう思うの。人を下等に扱う。だから。

竜が突如地面に叩きつけられそのまま見えない何かに押されながら汗を滲ませ苦しくうめく。ユリアーナ達がタイシを振り向きタイシが鋭く睨みつける。

『き、さ』

「こん、比べだ。これが」

竜が奥歯を噛み締め口をなんとか開け光を集めるがその口が突如現れた槍により突き刺され繋がれる。

ーぐむう。

竜が冷や汗を流し赤い瞳を見る。

ーこ、ぞう。う。ぐう。

さらに圧をかけられると鼻からも血を流し目からも血を流す。

「タイシ様!おやめください!!」

ユリアーナが声を上げ、竜が徐々に震える。

ーこの、人間…、我を、道連れに。

『け、ひゃふ、ふる』

タイシの圧が止まりその槍が抜かれる。

『契約、する。お、おまえと…』

タイシもまた鼻や目から血を流し息を荒々しくし切らしながら小さく頷く。

「ぐ、れん。だ」

タイシが親指の腹を噛み切り手を向ける。竜が奥歯を噛み締めゆっくりと進む。

ー我が、こんな、小僧に…。この我がー。

ーいい名前。

竜がわずかに目を見開く。

ー紅蓮。今までにない名をつけてもらったのならそれでいいだろう。君を君と認め君を。

「一つの命あるものとして見てくれている。名付けは君の誕生を意味するよ」

奏がイーロンの原子力施設の屋根に上がり空を見上げ楽しく笑む。

「紅蓮。ようやく君である個体。神と崇められた君の全てを認めてくれる人が現れた。それでも否定して神として生きるかい?」

『…ラファエラ』

紅蓮が額の赤い石をタイシの指の腹に当てると光を灯す。

ー紅蓮。彼は優しければ優しすぎる子だよ。

紅蓮がタイシの記憶から竜達の墓を見ると目を細めその目を閉じる。

ー側にいたらいいよ。そしてお互いに守るべきものを守るんだ。それが生きることだ。誕生日おめでとう紅蓮。

奏が後ろを向き遠く離れる焔の影を見る。

「向こうも現れて名付けたみたいだね。さてと、私も行こうかなあ」

奏が伸びをしながらその姿を消す。そして紅蓮が目を開け誰もいない周囲を見渡し体を起こすと自らの体にかけられた大きな布を見た。

タイシがやや青ざめた顔をさせながら静かな寝息を立て深く眠っており、傍には小型魔獣達とユリアーナが付き添っていた。そこに、ゆっくりと紅蓮が来るとユリアーナが立ち上がり紅蓮が眠るタイシを見る。

「その、黒龍様…。タイシ様はもう」

『何もしない』

黒龍がタイシの近くへと来ると身を丸めその頭を下げる、

『あと、紅蓮だ…。我の名だ』

紅蓮が目を閉じ再び深い眠りにつく。

ー最初と違う、穏やかね。

ユリアーナが安堵し再び座り直した。


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