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運命のミオ  作者: 鎌月
36/64

東京16

ー瑠奈が?

タイシがホテルの受付で目を丸くする。

「なぜ?」

『はい。お袋が前バーガー店のポテト好きだったんで買いに行ったらその店にいたんですよ。なので俺の方が無理言ってきてもらったんです』

「ああ」

「お待たせいたしました。ルームキーです」

タイシがスタッフに会釈し鍵を受け取り軽い荷物を持って受付を離れる。

「そうか。分かった。後もう帰ったのか?」

『はい。そんでその時にですよ。瑠奈さんですけどまだなんかややこしいことになってるみたいでして』

「トラブルか?」

『はい。豊橋っていう女教師がらみで』

タイシがエレベーターの中へと入る。そこに待ち合わせしていた玄海が楽しく並んでいた。

「豊橋奈美恵か?」

『あ、はい。そうです。ご存知ですか?』

「ああ。瑠奈の元教師で俺がいた学校の元教員だな。接点はないが、実父によく近づいては言い寄られていたと本人から聞いた」

『ええ、まじですか。なんかその女の元手下が瑠奈さんの事自分の子供だから探して欲しいって探偵に依頼したそうなんですよ。横塚って刑事さんご存じですか?今日瑠奈さん達と一緒に来られたんです』

「ん?その人まだ謹慎中だがな…」

『そうなんですか?』

タイシがああと返事を返し部屋へと玄海とともに入る。

「もしよかったら詳しくラインで送ってくれ」

『分かりました』

「ああ。それじゃ」

「豊橋奈美恵は俺ももちろん知ってるぞっと。後いい部屋」

玄海が嬉々とし風呂場などを覗く。

「チャイニーズマフィアと手を組んでいたな。あと、あのカジノ船にも乗船していた」

「ああ。リストに名前があったからな」

タイシのスマホがなるとタイシが中を見る。

「玄海。豊橋奈美恵を探してくれ。あいつの狙いは俺か瑠奈だ。俺たちが子供のうちにどうにかなると思っていたようだがうまくいかなかったようだな」

「りょーかい。いい預言者もいるみたいだしな」

「実行者は古き者じゃないな」

「たぶんなー。あとこれは俺の勘」

「俺もだ。こっちはこっちで話を聞く」

「オッケー。上のババアによろしく」

「その言い方は良くないんじゃないか?」

「だって事実だし。それじゃ」

タイシがポケットから札束を限界に渡し玄海が嬉々としまいどとたが受け取ると内ポケットへと入れ部屋を出た。


ーお前何してんの?

横塚がむすっとし、瑠奈達が焼き鳥を食べながら横塚を見る。

『なんかやーのところに2人のお嬢さんつれて』

「付き添ってあげたのよ。ていうか誰あんたに話したのは?」

『俺が担当している青年くん』

「あのすましたがきんちょ」

『言い訳できないようなことするなよ』

「ご忠告ありがとう。じゃあね」

横塚が通話を切り、ビールを飲んでいく。

「すましたガキンチョってのは兄ですか?」

「そーよ」

「なら、十四郎さんかな話したのは。LINE来てたし。あとミオは今日までうちに泊まる?」

「へえ」

ミオが食べながら返事を返すと瑠奈が頷く。

「オッケー。なら8時の電車に乗らないとね」

「私はあなた達2人送ったら帰るわ」

「いやいいですよ」

「よくないわよ。未成年だし今日聞いたこともあるから」

「じゃあ、お願いします。ありがとうございます」

「いいえ」

横塚がレバニラを噛み締め食べると瑠奈にLINEが入り瑠奈がラインを見る。

「兄から。Tには気をつけておけと横塚さんいるならここを見て欲しいだそうです。地図」

横塚が瑠奈に見せられた地図を見る。

「住宅」

「みたいです。いきます?」

「そうね。あと、駅の通り道かあ」

「ついて行っていいですか?」

「んー。まあ、危険が分かったら即逃げるでいい?」

「はい」

横塚が頷きなら食べ終えたらと目の前のもも肉を啄み食べた。


ータイシ様とパーティー。

ユリアーナが指先のマニキュア、化粧、髪、最後に香水をかけるとウキウキしながらホテルの部屋を出る。そして待ち合わせのホテルの前に到着するとそこにスーツを着たタイシが待っていた。

ーいたああああっ。もういいっ。オールバックが、ん?

そのタイシの隣にサングラスをかけ注目を浴びている望がいた。

ー…なぜ?まあ、でも。いい。

ユリアーナが隠し撮りをし2人の元へと向かう。

「こんばんは。お待たせいたしました」

「いや。こっちもさっき来た所だ」

「そうなのですね。ところでそちらの方ですが小鳥遊望さんですよね?ご婚約されたとニュースで拝見しました」

「ええ」

「同じ会場のパーティに招待されたそうなんだ。警視庁で何度か話したことがあるし瑠奈のことで世話になってもいる人だ」

望が頷きユリアーナが営業スマイルを行う。

「まあ。そうなのですね。それと、失礼ですがご招待とのことでしたが主催者の方からでしょうか?今回のパーティは不動産関係者が主になりますので」

「はい。CM起用されたのでその関係で社長からお話を受けました」

「CMですか」

「丸大不動産らしい」

「ああ大手のですね」

ユリアーナが名刺を出し向ける。

「それとご挨拶が遅れました。春川不動産のユリアーナと申します」

「はい」

「役員だったんだな」

「あ、はい。申し伝えておりませんでしたね。海外とタワマン部門の兼業役員になります」

「よく働いてるな」

「ふふ。忙しくあちこち飛び回ってますがね」

タイシがやれやれとする。

「少し早いですが行きますか?」

「ああ」

ユリアーナがはいと返事を返し3人でホテルを出た。


ーここか。

暗い二階建ての古い家を横塚とミオと瑠奈が見上げる。周りは木造の住宅やアパートがあったがしんと静まり返っていた。

「なんか静かすぎて怖い」

「うん…」

「夜勤の連中が多く暮らす場所のようね。だから静かなのよ」

ミオがぼんやりと光った窓を瑠奈達とともに見る。

「光った」

光がちかちかと変わりずっと消え静かになる。

「なに?」

「モールス信号だ。てかな。にげて?助けて?」

「よくまたわかるわね。んー…」

横塚がスマホを出す。

「応援頼むわ」

ーはいって。

「入って」

「え?」

「早く入って。くる」

「来るって」

瑠奈が横塚とミオの手を握り急ぎ敷地内へと入り草陰に身を隠す。

「ちょっと」

「静かに…」

横塚が道路を見る。そして明かりのついた車が家の前に止まると扉が開かれる。横塚が石壁の隙間から道路を見ると向かいの家の扉が開き人が入ったようなビニールに包まれたものを運ぶ男達を見つける。

ー…うわ最悪。

それがトランクに乗せられ車が走り去る。

「…やばいの見たわ」

「なんでした?」

「いやちょっと」

扉がかちゃりと開かれると横塚達がはっとしミオがぽっちゃりとした女が恐々とコチラを覗き込んで見るのが見えると横塚がすぐに移動する。

「下里」

「入って。また来るから」

瑠奈とミオもまた来ると家の中へと入る。そこは何もない寒々とした中であり瑠奈が白い息を吐き横塚が寒さなのか恐怖なのか震える下里を見る。

「あなた、ここで暮らしているわけじゃないわよね?」

「助けて欲しいの。お願い」

下里が横塚の腕を握るも横塚がぞわっとしすぐに下里の手を払い除けると瑠奈とミオを自分の後ろに追いやる。

「ドアが開かないっ」

ミオが汗を滲ませ鳥肌を立てる。

「後ろに何かいる…」

みしっと音共にトゲのある犬よりも大きな肉塊の四足歩きをする鎖に繋がれた生き物が現れる。

『触るとわかるわよねえ』

下里がけたけたと人形のように笑う。その頭や両手足には光る糸のようなものが見え後ろの生き物のさらに後ろに繋がっていた。

ー術…。

「死体をどうやって動かしてんのよ」

『どうって、ここにはないことを使って。何故あなた達がここに来たのかわからないけどちょうどよかったわ。あなた以外その2人は必要。でも、あなたはいらない』

下里が後ろへと引き戻されるように動く。そして生き物の前に出されると生き物がその口を開け下里を噛み砕き血や肉を落とし撒き散らしながら食べる。横塚が青ざめ、ミオが震えるが手を強く握り震えを止める。

「ここに、呼ばれてきました」

『呼ばれてきた?』

「あー、まあ、呼ばれてはきたなあ」

「ええ」

家が突如明るくなると横塚の頭上から玄海が突如現れライフルを向ける。

「こんばんわん」

引き金が引かれ生き物を通り過ぎ後ろへと銃弾が向かう。そして声が上がる。生き物が後ろを向くが鎖が強く引かれると頭を振る。

「玄海っっ!」

後ろに殺気立つ女が頭から血を流し睨みつけており、玄海が銃弾を装填する。

「あれ外したわ。もう一丁」

玄海の手首に硬いものが当たると手錠をかけた横塚が声を上げる。

「ちょっと説明しなさいよ銃刀法違反!」

「えっ。ちょっと待って今の状況考えてくんないっ!?」

「横塚さん。兄がそんなライン送ってないって」

「はあ?」

玄海がぺろっと舌を出しおちゃらけて見せる。

「ごめん。俺が誘い込むために送った」

「…」

「…」

「最低」

「待って!ミオちゃんから言われると思ってなかったい!!」

玄海が3人に飛び込む。そして頭上に鎖が通り過ぎ壁と扉にぶつかり音を立てる。生き物が頭を振り鎖をふるう。

「いったいじゃないのこのばか!ていうかなんてことしてんのよこの変わり者の銃刀法違反にわいせつ野郎!」

「その前に手錠外してくれ手錠!!本当まじで!!」

「誰が外すか!!」

瑠奈が呆れ生き物と姿を見せた豊橋を見る。

「最悪…。あと何あのでかいの。キメラ?」

「違う。向こうの生き物」

「ええ。でも頭にチップを埋め込んでいうことを聞かせているのよ」

豊橋が指から糸を出す。すると後ろからゆっくりと武器を持つ数体の首なし死体が姿を見せる。横塚が驚愕し、豊橋が笑みを深める。

「なんなのあれ…」

「あの人豊橋じゃない。誰?」

豊橋がふふっと笑うとその顔に触り目の色を緑にその顔を全く違う別人の顔へと変える。

「アルファーナと申します。豊橋はあなたとあなたの兄君に危害を加えた事によりその家族共に処刑しました。先ほど運ばれたのがその豊橋ですよ」

「さっきの車の死体が豊橋」

「そうよ。そして預言者。でも頭がなってなかった」

アルファーナが頭を指でつつく。

「後は私たちに情報を送っていなかった。これは罰よ。そう」

ふぎゃあと声が響くとミオがはっとし後ろから声を上げなくオムツだけの裸の赤子が宙を浮かび現れる。その首や体の至る所には糸が巻かれており玄海が立ち上がり横塚もまた手錠の手に引っ張られるように立つ。

「豊橋の姉の子供よ。売りに出すつもりで生かしてたの」

瑠奈の胸が強く打たれ、アルファーナが告げる。

「はやく済ませたいので、瑠奈様。良ければ来ていただけません?そうすればこの子供はすぐに解放します」

「あんた」

赤子の首が締まり血が出ると赤子が強く泣き叫び横塚がぐっと口をつぐませる。

「部外者は黙ってなさい」

ー玄海。

玄海の体が動き横塚に手刀を当て気を失わせる。そしてアルファーナが後ろを向きルイスを見ると赤子の糸がぷつりと外れルイスの腕の中へと入る。

「るっ」

ルイスの手がアルファーナの首を掴み壁に当てられ上へと持ち上げられる。生き物が口を開けるが電撃がその全身に流れると声を上げる。そしてあたり一面が暗くなり周囲が停電する。

「クソジジイの言うこと聞いちまったっ」

「ル、イスっ」

『アルファーナ。お前もやりすぎたな』

『どう』

アルファーナがゾッとし横へと視線を向けると紅の二つの光がコチラを睨みつけており、玄海が冷や汗を流し僅かに笑うもその体をこわばらせる。

ーなんだよこの圧はっ。

『お、おゆる、じ、くだ、さい。わ、わたじは、わだしは、あ』

ミオが驚愕しアルファーナの手や顔に皺が現れると更に現れ萎びていく。

『あ…』

「瑠奈!」

瑠奈がはっとしミオが瑠奈の肩を掴む。

「力に飲まれちゃだめ!」

瑠奈の瞳が黒へと変わるとアルファーナが倒れ咳き込む。

『ひ、いっ。ああああっっ』

アルファーナが這うとなんとか立ち上がり奥へと走り逃げる。

ー何…。

「これだめなやつだ。だめだ」

瑠奈が汗を滲ませ、玄海がライフルをルイスへと向ける。

「おいジジイ」

「ここのところこの世界にも彼方の影響が強まっている。お前もわかっているはずだ」

「説教なら」

「聞け阿呆が」

ルイスが片目のみ赤へと変える。

「あれはあちらでは雑魚だ。雑魚でもこの世界では強い脅威になる」

「ならジジイもそうじゃねえか」

「あの雑魚と比べるな」

サイレンの音が響くと玄海が舌打ちする。

「あの音か。つうか」

ルイスが瑠奈、そしてミオの元へと来ると赤子をルナへと渡す。瑠奈が受け取りミオを掴み共にルイスに抱かれる。

「っておいジジイ!嬢ちゃんたちおいてけ!そして俺の手錠を外してからいけえ!」

ルイスが足早に2人を連れ奥へと進む。

「因果応報だっての」

「…」

「飛びます」

ミオがルイスを見上げる。そして外へと出るとルイスが高く飛び屋根に飛び移りまた人気のない場所を選び飛び移る。そして廃ビルの屋上に着地すると2人を下ろす。

「船の…」

「あの妙な感じ。今まで私にはなかったあの変な感じはどうすれば取り除けますか?」

ミオがルイスへと尋ねた瑠奈を振り向く。

「私にはわかりません。わかるとなれば彼方にある我々にとっては開かずの間である王座の間に行くとしか」

「やっぱりそう言ったのか。あと私みたいなこと兄にも起こるわけですね。そして、影響があるなら」

「はい。あと、推測になりますがタイシ様の方がその影響を受けるかと思われます。彼方に行かれ彼方におりましたから」

「そうなると無意識に起こった時がやばいな…。でも、その力を受けるのはルイスさんたちみたいな方だけでしょうか?」

ルイスが考える。

「もしくは、彼方の世界に足を踏み入れたものと、おそらく敵意を感じたものに限定されるのではないかと思われます。私がいた。まだ繁栄していた国を収めていた王は私たちを触れずに殺めていた。処刑されておりましたから。もしくは命じて操ってもおりました。そうなると私達は逆らえません」

「嫌な血ですね。最悪」

瑠奈がため息をするもミオに引っ張られると振り向く。

「あー、ごめん。ルイスさんって言う人で向こうの人」

「…船で、タイシさんと戦った人で、その、電気」

「ん?」

「……お話ししておりませんでした」

「あー、兄が入院した原因」

瑠奈が軽く呆れ、ルイスが静かに頷く。

「なるほど。まあ、当人は元気ですから。後それで嘆いたのはさておき、警告を伝えたのは何故ですか?」

「……それは、お話しできません」

ルイスが黙り、瑠奈が軽く息を吐く。

「私達はこのまま行ってもいいですか?」

「はい」

「わかりました。あと、もしまた同じことがあればルイスさんも気をつけてください。そして、上があなたに圧力をかけたのなら私の事は気にされないで何もかも話してください。私が彼方に渡れば私はその因果を解くために行動します。あんな力もですが、突然告げられた勝手な身分も何もかも必要ない。自由に生きるために生きます」

ルイスが僅かに口をつぐむと悲しく笑む。

「出来ますでしょうか。そのようなことが」

「出来ます。やってみせます。私はその第一人者としてやり遂げます」

ミオが瑠奈を、そして悲しく笑むルイスを見る。

「少しばかり、期待いたします。では」

ルイスが頭を下げその場を離れビルから落ち姿を消す。

「縛られてるのかな…」

「そう。自由がないの。あと、あー、最悪だけど、横塚さん平気かなあ」

「…うん」

「まあ、あの変人いるから問題ないでしょ。暗いけど気をつけて降りよう。あと赤ちゃん保護してもらわないと」

「えて」

ミオが頷き瑠奈がスマホのライトをつけミオと手を繋ぎ屋上階段から下へとゆっくりと足元に気をつけながら降りる。


ーちくしょおおおっ。

気を失った横塚を玄海が肩に担ぎながら逃げていた。そして、阿久津が車に乗り迎えに来るとすぐさま乗り込みぜえぜえといきを荒げる。

『なんですかその荷物』

『ほんと、荷物だよ。阿久津ちゃん行って』

『はあ』

阿久津が車を走らせ玄海が大きく息を吐き出し手鎖を見て横塚のポケットを探る。

『あーくそ。鍵どこだ鍵』

工事現場の道路に来るとがたついた道により車が大きく上へと振動する。そして玄海の手が横塚の胸を掴むと横塚がすぐに目を覚まし玄海の顎を殴る。

「おごっ」

「こっの変態!さわんな犯罪者!!」

「だ、だったら、鍵」

「っるさい!このままムショにいれてやるわ!」

「じーさん。困りますよ。ガチで」

「わかってるわ!あーもう大人しくしろっ」

玄海が横塚を押さえつけ横塚がじたばたする。

「ちょっ」

「離れなさいよ!」

がたんと再び揺れると玄海が前に崩れ倒れる。阿久津がため息をし信号で止まる。

「じーさんここ道路工事で道悪いっすかそろそろ」

阿久津がいいながら後ろを巻いた途端2人がキスをしていた。阿久津が前を向く。

「んーーっ」

「ゴム入ります?」

「んんんんっ。んんっっ」

横塚顔を赤らめ玄海を叩く。玄海が口を離す。

「こーなったらおい!鍵よこせ!でないとせっくすするぞ」

「だったらこっちは出るとかあんたを出してやるわよ!警視庁に!あんたを連れてええ」

横塚が玄海を上へ押す。

「覚悟しなさいよおおおお」

「無理」

玄海が再び横塚を押さえつけキスをすると横塚が唸って行った。


ー気分が悪い。

望がふらつくタイシに肩を貸しホテルの部屋へと来る。そしてタイシをベッドに寝かせ上着やベルトを外す。その側に心配な面持ちをさせたユリアーナがおり、望がタイシの青ざめた顔を見る。

「タイシ様」

望が汗ばむタイシの額に手を乗せ今度は手の平を乗せるとタイシが目を覚ましその手を掴む。

「望さん。休めばいいので…」

「あの場で何かされたんだろう?」

「…これ以上、ことを荒げたくありません…。俺の我慢で済むくらいなら…」

タイシがその手を離し、望が告げる。

「分かった。何かあればすぐに連絡をするように。俺はまた戻る」

タイシが頷き望がああと返事を返し離れるとそのまま外へといき、ユリアーナが見送る。そしてユリアーナのみ戻ると汗ばむタイシの汗を拭い今度は水をコップに入れる。

ーあのじじい。飲み物に何か入れたみたいね。側についていなかったのが悪かったわ。そしてタイシ様の弱みを付け狙って。

「タイシ様。お水です」

ユリアーナがタイシへと水を向けるとタイシがユリアーナに体を支えられ僅かに体を起こし水を飲む。そして再びベッドへと体を寝かせる。ユリアーナがコップを置きタイシの胸に手を当てる。

ー何を飲まされたの…。何。

ユリアーナが目を閉じる。そして蝕むものを見てすぐに目を開けタイシの手を握る。

「タイシ様。すぐに病院に参りましょう。毒です。このままでは何が起こるか」

「いい」

「しかし」

タイシが頭を振りユリアーナが歯を噛み締め顔を歪める。

「あちらでもそう。何故そこまでご自分を犠牲にされるのですか…。だから相手は、あなたが何も出来ない。何もしないからと苦しみを与えるのですよ」

タイシが僅かに目を開け、ユリアーナを見る。

「連絡をします。小鳥遊様にも」

タイシがユリアーナの手を掴むとユリアーナがタイシを見てハッとする。そのタイシは目を紅へと変えておりタイシが告げる。

「いい…連絡も何もしなくていい。頼む」

「…わかりました」

タイシが頷きユリアーナの手を離しユリアーナが力無くその手を落とす。

ー命令、に、背けない…。

ユリアーナが汗を滲ませる。

ー逆らえない…。

タイシが閉じた目を再び開けるとユリアーナの手を掴み今度は強く引き寄せる。ユリアーナが力なくタイシの上に倒れ乗るとかあと顔を赤くさせその目を閉じる。タイシが息を荒げながらユリアーナを今度は抱きながら位置を変え自分の真下へとこさせ覆い被さる。ユリアーナがさらにかあと顔を赤くさせ、タイシが苦しく息を弾ませながら顔を近づけると口付けをする。ユリアーナが思わず目を見開くもその目を閉じ小さく顔を歪める。タイシが息をゆっくりと吐き出し吸いながら何かをその体へと吸収していく。

ー力が…。私のを…。

ユリアーナがタイシの肩に手を当て押すもすぐにその手の力を緩めると今度は震えながら手を挙げタイシを抱きしめる。

ータイシ様のためなら…。私は、死んでもいい…。

タイシが僅かに顔を歪めユリアーナを離し離れると息を荒げ咳き込む。ユリアーナが青ざめながらぜえぜえと苦しく息を荒げる。

「や、めろ」

ユリアーナがタイシを見上げタイシが顔を歪めながら頭を抱え項垂れユリアーナの肩に顔を埋めうめいていく。

「俺、ばかり、何故……。どうして…」

ユリアーナの肩が暖かく濡れるとユリアーナが口をつぐませ涙を流すタイシを抱きしめる。

ー幼い頃から…この方は、ずっと。彼方でも、此処でも。それでも、強く人のために尽くされて。人を思われて。

ユリアーナが僅かに涙を滲ませすっと流す。

「あなたは優しすぎます…ですが、ご自分を犠牲になさらないでください。そして少しでも私があなた様のお力に。その苦しみを分かち合えれば…」

ユリアーナが手に力を込め強くだが優しくタイシを包み込む。

「私がおります。ついております。タイシ様」

タイシが小さく嗚咽を漏らしユリアーナを抱きしめた。


ー本当にまだ子供なのね。

ユリアーナが成長期のタイシを見る。そしてタイシが部下達へと命じつつ見回りをしていた。

ーあんな子が部下を持つ身なんて。ああでも、私のいたところではもう最初から持ってるのもいたわ。

ユリアーナが息をつきタイシに近づく。

ー早く見つけられたらいいけど。いなかったらさっさと行こう。

ユリアーナがタイシの元へといき営業スマイルを見せ挨拶をするとタイシが挨拶を返した。

ーなんだかんだで長くいるわね。

ユリアーナが返り血を浴びつつ戦を終えたその戦場を見渡す。そして成長したタイシを見つける。

ー…惹かれるのもだけど、だんだんと私好みにもなってきたし……。

アルスランがタイシへと話しかけにいくとその顔は何故か緩まり若干照れているように見えた。

ーあと、可愛い。

アルスランが離れタイシが今度はこちらへと向かってくるのが分かると鼓動をはねさせる。

ーとても、大きく見える。凛々しくも。タイシ様…。

「タイシ様……」

ユリアーナが裸となり覆い被さるタイシを抱きしめ身を僅かにそらす。タイシが息を弾ませながらユリアーナを抱きしめる。

「ユリィ」

ー嬉しい。嬉しい。とても、嬉しい。

「タイシ様」

ユリアーナが涙を流し微笑んだ。


ー姉はどうでしたか?

「我が王」

眠るユリアーナの傍に座ったタイシが目を紅に染めながら暗闇に立つ金髪に翡翠色の瞳をさせたユリアーナに顔立ちの似た男を見る。

「俺は王じゃない」

「ふふ。王ですよ。あなたは紛れもなく。彼方にもまた戻ればあなたの居場所は決まったも同然」

「…」

「ふふ。さて」

男が膝を立て座り頭を下げ、そしてその頭をあげタイシを見る。

「御命令を。まず貴方様や妹君に多大な危害を加えたものについてどういたしましょうか?」

タイシが僅かに口をつぐみ男がふっと笑う。

「貴方が慕うもの。貴方が大切に思うものには何も致しません。しかし、強い悪意を向けたものについては別。貴方を苦しみ追いやってきたものについていかがしましょうか?」

タイシが強張った体を緩める。

「生死は問わない。そちらのやり方に任せるエルハルト」

「仰せのままに」

エルハルトが深く頭を下げ立ち上がりさを向け壁へと向かいながら姿を消す。

ー何故、俺ばかり苦しむ。俺を苦しめた奴はのうのうと生きているのに。

「何故俺ばかり…」

タイシが手で顔を覆うとその目を見開き奥歯を噛み締める。

「ん…」

タイシが視線をユリアーナへと向けると体を緩める。ユリアーナが僅かに頭を傾け動くとタイシがユリアーナへと手をやりその髪を人束すくい引き寄せ口付けする。そしてその髪を離し今度はユリアーナに近づきキスをする。ユリアーナが目を覚まし僅かに目を開けるもその目を閉じると顔を赤らめながらキスをしたタイシへと手をやり抱きしめタイシもまた抱きしめていく。そしてタイシから離れる。

「ユリィ」

タイシが名を告げユリアーナへと覆い被さる。

「いいか?」

ユリアーナが鼓動を跳ねさせ頷くとタイシが再びキスをし、今度は首筋など吸った。


ーははっ。

「よくやったユリアーナっ。我が娘よっ」

緑の目をさせた神父服を着た男が誰もいない教会で思わず声を上げる。そしてその両手を合わせ強く握る。

「まだだ。まだ決まったわけではない。だが、決まったも同然だ」

男が不気味に笑うと今度は高らかに笑う。それを教会の屋根からサイモンが隠れ覗き聞きしておりサイモンが男が出たのを見てその場から退散した。


ーやった。

朝、目がはっきりと覚めたユリアーナが眠るタイシの隣に座りながら拳を握り喜びを噛み締めていた。

ーやったわ私!タイシ様に群がる他の女どもに勝った!っしゃあっ!!

ユリアーナが喜びを堪え深呼吸をする。そして気持ちよく眠るタイシを両手で赤くなった顔を覆いながら見ると身じろぐ。

ーああもう。なんて言葉にしたらいいの。ただ今言うなら。

「幸せ…」

タイシが目を覚ますとユリアーナがはっとする。そして目の前でタイシが起き上がる。

「タ、タイシ様。お身体は?」

タイシが頷きユリアーナに体を傾け抱きしめるとユリアーナが顔を耳まで真っ赤にさせる。

「きの、より、いい」

「は、はい」

タイシが頷き離れるとユリアーナへとキスをする。そして再びユリアーナを抱く。

ーあああまえてらっしゃるうっっ。

「ユリィ…」

「は、い」

「いた、きゅ、なかっ、は?」

ーきゆっていった!きゅっていったああ!!

「えと、そ、そこまでは」

「ほんろに」

「はい」

タイシが頷きユリアーナをそのまま押し倒し抱きしめ眠ると、ユリアーナがタイシの背中に手を回し軽くその背中を触った後タイシを抱きしめた。


焚き火の火をキヨがジッと見つめておりその焚き火へと箒を使い落ち葉を履き入れる里帰り中の有朋がいた。

「キヨ姉。早く掃除済ませて中入ろう。作業が、寒っ」

「この年末最後に嫌な予兆ばかりだ」

「予兆?」

「ああ。年末年始は警察も大忙しだ。とんでもなくな」

「それって死傷者が多く出るってこと?地震?」

「いや。じゃない」

キヨが膝に手をやり立ち上がる。

「有朋。確認するから都内に向かう。師匠に伝えてくれ」

「えー、忙しくなるのに」

「すまんな。終わったらすぐ戻る」

有朋がやれやれとし分かったと頷くとキヨから箒を受け取り見送った。


ユリアーナがタイシに後ろから抱かれお湯が張られたジャグジーに身を浸していた。そしてタイシの紅に染まり続ける瞳を見て話す。

「瞳の色が戻りませんね」

「そうか。もしよければカラコンを買ってきて欲しい。此処だとそれでしか隠せない」

「はい」

タイシが頷き体を傾けユリアーナに身を寄せ抱きしめる。

「暖かい」

ユリアーナが微笑み優しくはいと返事を返した。


ーなんで玄海ちゃんがあんな女とっ。

ーさあ?

ーさあじゃないの!止めなさいよ!

「っるさ…」

横塚が痛む頭を抑えながら横を向き布団にくるまり眠る玄海を見る。

ー…。

激しく降る雪と血に染まった雪原。そして叫ぶ声が響く。

ーあーーーーー、最悪。

横塚がはあと長く息を吐き軽く呆れる。

「1096号か…」

「なつう」

玄海が横塚に覆い被さると横塚が押し除ける。

「はい今日で関係おしまいさようなら」

「やだ」

玄海が抱き止め、横塚が苛立つ。

「あのねっ。わたしは昔のわたしじゃない訳わかる?とにかく今回は見逃すから離しなさいっ」

「えー」

「えーじゃないのっ」

玄海が口を尖らせ横塚がその腕から離れ下に落ちている下着を拾いつけていく。

「まったく。それで今何でも屋?あの奴隷屋からよく逃げられたわね」

「売られたの。まあそのあと逃げたけどな。そんでなんでそっちは記憶喪失とあの怪我でよくまた無事でいたな」

玄海がやや暗く告げ、横塚がやれやれとする。

「運が良かったのよ。記憶喪失だったのは向こうを思い出したくなかったから。古の者だかなんだか知らないけどどうにか出来ないの?」

「あー俺には出来ない」

「そう。て言うか服着なさいよ」

「もっかいしたい」

「却下」

玄海が不貞腐れ横塚がセーターを着る。

「昨日のも奴隷小屋から連れてきた子達?」

「そう。取り残された此処と向こうの世界の奴等。ところでまたよく警視庁に入ったなあ」

「努力の甲斐あってよ」

「玄海ちゃん!」

扉がけたたましく開かれると玲華が声を荒げる。

「その女なに!」

「俺と元同期ーで玲華ちゃん達の先輩。つまり元奴隷。あと玲華ちゃん女の子が好きじゃん」

「玄海ちゃんも好きなの!」

「わあ。ありがとう」

「こんな変人好きにならないほうがいいわよ」

「んなこと言うなよ」

「玄海さん。ニュース」

玄海がベッドから降りるとタオルを腰に巻きスタスタと部屋を出る。

「たく。真面目なとこはクソ真面目ね」

「そうそう。そこが俺のいいとこ」

「どこが」

玲華がむすうとし、玄海がニュースを見る。そこに単独事故を起こし死亡した男の名前と電柱柱に衝突した車が写されていた。玄海がリモコンを手にしチャンネルを変えていく。

「今の事故の人物が何?」

「ああ。今村タイシに毒を持った医者だ」

「毒?」

「昨日飲み物に入れたんですよ。不動産関係のパーティーにいたんで」

「ああ。話じゃ向こうの世界でクライアントのタイシ君の部下で古の者がなあんと不動産で働いててさ」

「ああへえ」

「そっちもいるの?」

「ええ。記憶は失ってはいたけど、どことなくね。普通じゃないのがいたから気になってた。多分そいつが向こうの世界のやつね」

「そっか。ま、こっちじゃいいとこの会社のいいとこの役職ついて暮らしてる訳。そんでそのパーティで、毒盛られたんだよ。さっき単独事故起こして死んだ医者からな」

「誰かに依頼されて?」

「ああ。接点がなかった。そこはまた探してもらってる最中。ただ、こうも都合よく死ぬのはおかしい。動いたかもしれないな」

「古の者が?」

「ああ。何せタイシ君は選ばれた者だ。じじいやばばあ達にとってなくてはならない存在。それを死ぬほどまでとはいかないが傷つけてきた。黙っているわけにはいかない」

「管轄外。地方でやって欲しいけど」

「あははそりゃ無理だ、天下の警視庁さんだからな。あと、動いたならこっちも動くか。阿久津ちゃん。わかる連中の居所教えて」

「はい」

「玲華ちゃんはお友達見張ってて」

「分かったわよ」

「そんできらりちゃん」

「その名前言わないでくれる?」

玲華がバカにしたようにひと笑いすると横塚が話す。

「刑務所や勾留中の連中ね」

「その通り。よろしく」

「他に頼むわ。それじゃ」

「最後にハグキス」

「いや」

玄海が不貞腐れ横塚が不貞腐れる玄海を置きその場を後にした。


ユリアーナとタイシが抱き合いキスをしていく。そしてゆっくりと離れるとタイシが顔を赤らめたユリアーナへと告げる。

「離れたくないな」

ーはあうっっ!!

ユリアーナが大きく心臓を打ち鳴らす。

「その、また、お会いできますから」

「…ああ。分かった」

ユリアーナが頷きタイシが最後にともう一度キスをし求めた。


「昨日は大変すぎ…」

「ええ」

2人がやや寝不足のままタイシ達が泊まったホテルの前に立ちタイシを待っていた。

「あの変人。おかげで酷い目あったし」

「本当」

「まあ、赤ちゃんだけでも無事だったのが良かったけどなあ。だけでもってのはおかしいか」

ミオが小さく頷き瑠奈が頷く。

「悪い。待たせた」

タイシがその場にくると瑠奈が話す。

「いいよ。あと、あの変人どうにかして」

「あー、話しておく」

「おいて、それと。兄。なんか変なこととかあった?体調不良とかは?ない?」

瑠奈が尋ね、タイシが話す。

「まあ、少し。今は平気だ」

「いや平気じゃないじゃん。顔色悪い」

「そんなにか?」

瑠奈が頷きミオが心配そうに見るとタイシが気まずくする。

「ご飯は?」

「まだ」

「なら、ご飯食べなよ。食べなきゃ体にもよくないって。和食のいいとこあるから行こう」

「ああ」

瑠奈が頷きすぐ近くだけどもとタクシーを捕まえタイシを乗せる。そして小さな古い和食屋へと来るとタイシが味噌汁を飲みホッとし瑠奈とミオがきな粉餅とあんこ餅のスイーツを食べつつ様子を見る。

「少しよくなったね。昨日なんかあった?」

「…まあ」

「あのパーティで何かあった?」

「…」

タイシが味噌汁を吸い、瑠奈がため息をする。

「気をつけなよ。兄に嫉妬してるのまだうるさくいるから」

「えと、それってたくさん?」

「いるよ。大抵は小学校時代の連中の子供や親。親がなんで兄に嫉妬したか。言えば孤児の単なる子供が自分たちの子供より優れているからだよ。そして、兄の時はいじめがひどい時代だったみたい。2人自殺者がいたしね」

「俺の同級生でか?」

「そお。あと、兄がいた進学校。今でこそ校内良くなったけど、昔は落ちこぼれ進学校と呼ばれてて貧困差が激しいところだったから」

「確か、そうだったな。クラス内でも階級制度があったし、その学校の隠れた伝統だった」

「今じゃ相当問題視されたからなくなったみたいだけど」

「階級制度は貧困差の?」

「そう。あとは親の勤め先やその役職で決められてた。決めてたのは生徒と先生。当時は本当にひどくて今でもその制度のせいで兄みたいに苦しめられてる人もいる訳」

「俺みたいなのがいるのか?」

「兄ほどじゃないけどいるよ。うち知ってるからちょっと話してみる?あと兄の二つ下で最後の階級制度の犠牲者。そして兄みたいに天才さん」

「ああ。俺のことは知ってるのか?」

「勿論。あと、被害者の会にも入ってるから」

「そう言ったのもあったのか?」

「あるある。ま、注目されてないからないにも等しいけど。あとその人も行方不明なんだよね」

「名前は?」

「わかんない。調べればわかると思う」

「ああ」

「調べてみる?」

「そうだな」

瑠奈が頷き、ミオが話す。

「その差別はいつから始まったの?」

「うん。噂じゃ兄が入学する20年前かららしいよ。当時は結構階級差別が酷かったらしいから他の学校でもあったそう。で、特に酷かったのが兄がいたところ。でもよく入れたよね。そこお受験でしょ?」

「ああ。あと、両親は用意された両親だった。当時俺の他に2人くらいはいたそうだ」

「はあ。サクラかあ。今じゃ考えられないや」

「さくらっていうの?どうして?」

「隠語。わかる?」

「少し…。でも、綺麗なお花の名前が隠語…」

「結構花の隠語多いよ」

「確かにそうだな」

「うん、まあ、そこはまた自分で調べてね。性的な言葉で使われることもあるから」

「そうなのね…」

2人が頷きミオが複雑そうにするとタイシが再び味噌汁を吸う。

「ここの味噌汁うまいな」

「そうそう。まあまだ他に種類あるから食べにきたら?」

「ああ」

瑠奈が頷きタイシが魚を食べた。


『玄海ちゃん。私のお友達だけど朝飛び降り自殺したそうよ』

『玄海さん。マークしてた野郎がヤクザに連行されました』

「きたなやっぱり」

玄海が街中を足早に歩きながらスマホを操作し耳に当てる。

『なに?』

「ごめーん。今どう?聞けた?」

『まだ確認中。そっちは?』

「やっぱ連チャンして起こってるわ。各自違うやり方でな。なんとなーく誰がやってるかはわかる」

『古の連中?』

「ああ。それも厄介なの持ってるやつだ。とにかく変化があれば報告してくれ。俺はクライアント君のとこ行くわ」

『わかるの場所?』

「まあな。そいじゃ。何も起きないでくれよ」

玄海が歩きながら焦る。そしてキヨもまた移動しておりキヨが周りを見渡しながら前へと進む。

ー先程は間に合わなかったが、どの糸なのかは分かった。その糸を辿って頑強に辿り着ければいいが…。

「これ以上のことは避けたいな」

キヨもまた焦りを感じながら進んだ。


ー早く。早く。

3人が店を出て街中を歩くと瑠奈がタイシへと話す。

「兄。初参りとかは行く?」

「あー、まあ行くとして、白鷺か」

「うちたちは近くの神田神社」

「多そうだな」

「明治神宮とかの方がやばいよ」

「明治神宮か」

「行ったことある?」

「ああ。じいちゃんが寺もだけど神社とかも勉強になると言われて連れて行ってもらった。日光もある」

「そうなんだ」

車のけたたましい音が響く。そしてミオがハッとしタイシの背中にぼんやりと映る影を見る。

ーおばあさん…。

ー逃げて。逃げなさい。避けてっ。

ミオが後ろを振り向き猛スピードで迫る車と車に撥ねられ飛んだ人を見る。タイシ達も気づきミオがタイシに触れる。

ーだめっ。だめっ。

ーえ。

激しく音が鳴り響き車が人を跳ね止まると今度はほぼ全裸に近い男が泡を吹き笑いながら車から現れる。周りが阿鼻叫喚に変わりその場から逃げ離れる。そして、その周囲には車に撥ねられうめくものや倒れ動けないもの達がいた。

ーっつ。

ミオが体を起こしすぐに周りを見渡しハッとし立ち上がりどこかへとかける。

ーぐっ。

タイシが頭から血を流しながら起き上がり前を見るとほぼ全裸の男が包丁を手にし人々を追いかける姿が見えた。

ーあいつ、か。

「兄……」

タイシが周りを見てガードレールに体を預ける血に塗れ、鼻や口から血を流す瑠奈を見つけるとすぐに駆け寄る。

「瑠奈。おい」

「…け、が」

「俺は軽い」

「そ、か」

瑠奈がはあと息を吐く。

「よか、た」

瑠奈が力をなくしタイシが瑠奈を掴む。

「瑠奈。瑠奈おいっ」

「タイシっ」

袖が千切れたキヨがその場に来るとすぐに瑠奈の服をナイフでちぎり腹部に刺さったパイプを見る。

「このまま止血しかない」

「キヨ。お前が話したことはこれか…」

タイシがキヨの腕を掴むと顔を歪める。

「このことかっ」

「違う。これは突然起きたことだ。私でも予測はできない」

「ならどうしてこうなった!」

「私に聞くな。今は止血をして少しでも食い止めないといけない」

キヨがタイシの手を払いのけ袖を細く切り作った紐でパイプの周りを体と共に巻いていく。

「いやああ!!」

タイシが後ろを向き、子供が親であろうものにしがみつきながら包丁を手にした男を見て叫ぶ。その男の頭をミオが男が落としたバットで殴り落とすと男がその場に倒れ血眼でミオへと向かうも玄海が男を横に蹴り倒す。

「ヤクザの薬注か。たまったもんじゃねえな」

伸びた男をすぐに駆けつけた警官達が取り押さえる。ミオが息を弾ませ、そのミオの頭を玄海が叩く。

「ミオちゃんよしだ」

「よ、よくない」

ミオがバットを落としすぐに瑠奈を振り向く。その瑠奈は救急隊員達が集まり救急処置を施していた。

「瑠奈…」

「任せるしかねえな」

キヨが離れていくのが分かるとミオが瑠奈達の元へと急足で向かう。そこに頭から血を流すタイシもいたがタイシは瑠奈の血で塗れた手を震わせながら自分の顔へと当て顔を大きく歪めその場にうずくまり小さく嗚咽を漏らした。


城谷の鐘が鳴り響く中、手術を終えた瑠奈が手術室から外へと出る。そこに瑠奈の兄や祖父母がおり手術を行なった医師が3人へと説明していく。そしてICUへと瑠奈が運ばれ措置がされる。兄が息をつくとその兄の元へとヒカルが近づく。

「お疲れです。手術は?」

「うまくいったそうだ。あとは目を覚すのを待つだけらしい」

「はい」

「タイシ君は?」

「はー、ショック大きいってことで先生が鎮静剤投与したそうです。元々精神薬治療もしてたんであまり強い薬は打てないから、暴れかねないんでベッドに縛られてます」

「そうか…」

ヒカルが頷く。

「死者11名。負傷者36名。そのうち意識不明含めた重症者が5名だそうです。瑠奈もその1人です」

「…ああ」

兄が表情を曇らせ、ヒカルが目が覚めるまで待つしかないですねと告げると兄が力無く頷いた。


ー何故…。どうして俺ばかり。瑠奈…、瑠奈。

面会謝絶の部屋の中で頭に包帯を巻きベッドに縛られたタイシが力無く天井を見上げていた。

「俺が何をした…。なんで、俺の場所を無くす…」

タイシを縛っていたベルトが突如緩むと黒い服を着た屈強な腕がタイシを持ち上げ抱き上げる。

「深い意味はない。危険だからだ」

窓が開かれその腕がタイシを外へと出すとタイシが冷たい夜風を浴びながら力無く手足を落としていた。

「死ね。古の亡者ども」

「そこまで恨むか?」

屈強な腕の男の隣にいた細身の男がすぐに後ろを向きタイシの父親の勉を見る。

「1162」

「懐かしい。あと、そいつは俺の息子だしお前の手におえるやつじゃない」

「今まで無関心だった男が何を言う」

「そのままお返ししよう。何故お前も今になって命を取ろうとする?」

「彼方との繋がりがまた出来たからだ」

「そこまで危惧しないでもいいんじゃないか?そして、俺の息子達はお前が思うよりも利口で強い」

勉が笑み、ルキウスが睨む。

ーっ。

ルキウスがハッとしタイシを振り向くとタイシの姿がなく消えていた。

「あいつら」

「ルキウス。子供らをやったところでこの世の終わりはない」

「その言葉のようになると思うかっ」

「なるさ。この世の終わりはここも彼方もない」

ー好きなことばっかり言って。

ルキウスが上を見上げ生霊となった瑠奈がむうとする。

ーその古の問題とか終わらせるから協力してよ。こっちだってまたこんなことになるのは嫌。

「ふふ」

ルキウスが勉を振り向き勉が話す。

「あの天変地異はエルハルトだな。奴の力」

ー天変地異?

「災厄を招く力になる。ただ、どのような災厄が来るかは本人にはわからないよだ。さてルキウス。お前は恨んでもいるんだろう?好きだった女のひ孫を。本来なら共にいるはずが追手のしつこさに悩まされ最終的にここに流すしかなすすべなかった。だが、それでも奴らに捕まってその呪われた体か」

瑠奈がルキウスを振り向きルキウスが奥歯を噛み締める。

「古のもの達の奴隷となる体だ。ただ、自分である程度は解いて自由の身のようだな」

「……」

「さて、俺ももういく。肝心の息子は奴らに渡ったからな。娘だけでも拐われないようにしなければならない」

ー…なんでこうなったのかなあ。あーもう。

瑠奈がハッとし顔をしかめ姿を消す。

「お前も早いとこ退散しろ」

勉が扉を開き外へと出るとルキウスが項垂れ歯を噛み締めくそと声を漏らした。


看護師達が倒れる中、心音装置をつけられた瑠奈へとアルファーナが見下ろし笑んでいた。

ー今は何も出来ない。

アルファーナが瑠奈のベッドを点滴棒と共におし外へと出ると足音を聞きすぐに止まり銃を手にする。そして暗闇から勉が姿を見せる。

「お前…」

「結界を張って人の出入りを妨げているのか。もうここまで侵食が起きているんだな」

「はっ。そうね」

「娘をどうする?」

「彼の方たちに届けるに決まってるでしょ?そこを退きなさい」

どけといって退くわけにはいかない。そして、横を見ろ。

アルファーナがはっとし瑠奈を見ると瑠奈がその目を赤くさせアルファーナを苦しく睨みつける。

「私を、元の、位置に、戻しなさい」

アルファーナが震えその目を虚ろにさせながらルナをまた所定の位置へと戻す。

「お、もお」

すると手が伸び肌へと触れる。瑠奈が目を開けルイスを見上げると僅かに安堵する。

「遅くなりました」

「いい、え。あと、その人…」

「連れて行きます。おやすみください」

瑠奈が頷きその目をとじ安心し眠る。ルイスがアルファーナを掴み部屋を離れる。

「娘は癖が強いぞ」

ルイスが勉を見て軽く会釈した後、アルファーナをつれて姿を消す。勉が俺も戻るかとその目を閉じる。そして目を開け刑務所の自分の部屋へと戻ると体を起こし楽しく笑んだ。


ーにいっっ。

タイシを瑠奈が押し車の直撃を回避する。その光景がなん度も繰り返される。

ータイシ様。

ユリアーナが唸り涙を流すタイシを抱きしめ、タイシが苦しく息を弾ませ手を振るわせる。

「る、な…。瑠奈…」

「タイシ様。妹様はご無事です」

「ユリィ。ご様子はどうだ」

エルハルトがその場に姿を現しユリアーナが答える。

「エル。あなた何をしたの?」

ユリアーナが睨み、エルハルトが笑む。

「私は指示に従った。悪意あるものに。タイシ様に苦しみを与えたものに生死を問わず制裁を与えよ。これは私に任せるとおっしゃられた」

「だからといって、瑠奈様に大怪我を負わせるのは」

「そちらについては誤算だった」

「それで済む問題じゃない」

「生きている。ならいいじゃないか」

「あなたは」

ユリアーナがぞくりとしエルハルトがすぐに右へと避けると備え付けられた棚に丸い穴が開く。ユリアーナが手を震わせ、エルハルトが冷や汗を流し殺気立ち鋭い視線を向けるタイシを見て鼓動を早めるとその場にすぐに跪く。

「出過ぎたことばかりを申しました。申し訳ございません」

ユリアーナがタイシを強く抱きしめる。

「タイシ様…。私の弟です…。どうか」

エルハルトが冷や汗を流し続け体にゆっくりと圧がかけられると小さく声を漏らし、ユリアーナが震える。

「タイシ様」

ータイシ君。大切な人が出来たらどうする?

タイシが鼓動を打つと僅かに目を開ける。

そして、目を腫らしたタイシのその瞼にハンカチに包まれた半分に割れたパピコが当てられる。

ー大切なひと?

ーそう。

柔和な少女が笑みを浮かべ半分に割ったパピコのもう半分を食べる。

ー大切な人ってなに?

ー温かい人。でも、たまにひんやりしたほうがいいね。

ーどうして?

ーかっかっと怒った時に冷やしてくれたら怒るのも冷めるからだよ。

ー理屈。

ー理屈なんてただの言葉。タイシ君は頭いいけど考えが硬いなー。大人から可愛くないってよく思われてるんじゃない?

ーなんで知ってるの。

ーうわかわいい。

ー僕は男。

タイシが不貞腐れ、少女がにししと笑いタイシの汗ばんだ頭を撫で冷たく冷えたパピコを食べる。

ーお姉ちゃんは?大切な人は?

ーいるよー。

少女がタイシの目に当てたパピコの口を開けタイシの口に入れるとタイシが持ち食べていく。

ーでも前はいなかった。

ーなんで?

ー孤児。だから私は実の両親を知らない。今私の両親の代わりは里親のおじいちゃんとおばあちゃん。タイシ君は?

ー僕は、じいちゃん。あと、近所にいる人たち。

ーいいねー。

ータイシ。

タイシがあった声を上げてを振ると日傘を刺した祖父が慌てて駆け寄りタイシにかがむ。

ー目はどうした。

ーこけた。

ー優しいな。

祖父が少女を振り向き少女が話す。

ータイシくん。優しいのはいいことだけど、優しければ優しくするほど相手は調子に乗るしタイシ君は我慢ばかりして苦労するよ。

ー…。

ー大切なおじいちゃんに心配かけさせたくないんでしょ?

タイシがこくりと頷くと祖父が僅かに息を吐く。

ーお話しするだけでも楽になるから。吐き出すのは大事。はいこれおまけ。

少女が開けられてないパピコをタイシの目に当てる。

ーおじいちゃんと一緒に食べてね。また、会えたらあおっかー。

少女が立ち上がりバイバイと手を振りその場を離れさる。祖父が頭を下げタイシが去っていく少女の背中に手を振った。


ー大変大変。

木の枝に足をかけ逆さになりぶら下がった若い女が声が上がる国を見ていた。その真下に全身鱗の龍の姿をした人が座り、隣には白い角を生やし死体に赤い宝石が埋め込まれた鹿が座って同じ方角を見ていた。

「どこでも絶えず戦争は起きる、か」

『ああ。致し方あるまい。本能でもあれば独自の考えを持つものたちだからな。私達は』

「そうね」

女が木から降りポケットから袋を出しルナが持っていたものと同じだが模様が違う3個のかけらを出す。

「古の竜の子孫が見つかって動いた。あのお調子ども達がさらに調子に乗る」

『厄介な事だ』

鹿が話がわかるのが頷き、女が頷くと後ろを振り向きルイスと汗を滲ませ座り込んだアルファーナを見る。

「あなた達のお姫様のお加減は?」

「跡は残ってしまうが無事だ。エルハルト達がタイシ様をこちらに運ぶようだ」

「分かった。でもまだその段階じゃないから平気」

女がアルファーナの元へと来るとしゃがみアルファーナが震える。

「な、なぜ、あなた様が…」

「私は受け継いだものだから、あなた達の知る大賢者じゃない。でも、大賢者の知識は持ってる」

女がアルファーナに触れる。

「協力してくれるなら縛りを緩めるよ。少しでも上の圧力がかかるのを防ぐ」

アルファーナが口をつぐむと項垂れる。

「いっそ、楽にさせてください…。私はもう、苦しいのです。いつまでも自由はない。お願いします」

アルファーナが顔を赤くし涙しながら深く頭を下げる。

「もう、嫌なのです…」

龍人が立ち上がり近づく。

「無理難題な事を」

『俺がしよう』

龍人が幾何学模様の彫られた剣を抜く。アルファーナがその剣を見て目を見開くも表情を緩め僅かに笑む。女がアルファーナから離れ龍人がその剣をアルファーナへと振り下ろした。


「ルイス」

背を向けさろうとしたルイスが女達を振り向き女が話す。

「こっちは地図の通りかけらを集めていくよ。そしてお姫様に今、3個手に入れた。お姫様の持つ一個で残り11個」

『ああ。次のカケラも手に入れば4個だ』

龍人が戦が起こる国を振り向く。

「タイシ君について休息ってことで向こうに任せよう。どうせ向こうもタイシ君がいても何も出来ないけどタイシくんを殺すこともできない。向こうよりもいい」

ルイスが頷き女が楽しく話す。

「私たちを見つけたらカケラはあげる。ただし、お題をクリアしたらの話。まず最初のお題は私たちを見つけること。そして私達はガンガン集めていくからと伝えておいてね。あなたのお姫様に」

「分かった」

「ええ。それじゃお願い」

ルイスが頷きその場を離れる。女が見届けるも横から花が現れると花を咥えた鹿を見てその花を受け取る。そして木の下に立てられた足の前にか花が置かれると2人と一匹が争う国へと向かった。


畑中が申し訳なく香苗と話し香苗が表情を曇らせ頭を振る。そして一般病棟に移った瑠奈が窓から雨が降り落ちる外を眺めため息をする。

「兄め。また迷惑かけて」

ノックが響くと瑠奈がダリスを振り向きダリスが頭を下げ中へと入る。

『体調はいかがですか?』

『ぼちぼちと言ったところですけど、退院出来るまでには回復できそうです』

『それはよかったです』

『はい。あと、また兄がなんだかんだで迷惑かけてます』

『いえ。迷惑はかかっておりません。あと、あちらの世界に運ばれたと考えられます』

『はあ。まあそうですね。でも、兄を手に入れたところで無理ですよ』

『どういうことですか?』

『知り合いというか、船で暴れた電気男と私知り合ってるんです。今は対等な関係を持ってます』

『対等?』

『お互いに目的は一緒であり、身分は関係ないという事です。私が持っている切り札の一つが集まらないもあちらは何もできないそうです。そのあいだ兄は向こうで誰にも阻害されることなく休息期間が得られるということです』

瑠奈が片目を指差すとその目を紅に染める。ダリスがじっと見て行き瑠奈が再び黒目に変える。

『驚きませんね』

『驚いてはおります。ただ、玄海より話は聞いておりますから。ここよりも確かにあちらの方が休まりはしますでしょう。あと、ここでもあの事件を含めて過去の学校でのやり方。あなた方兄弟のされてきたことが公となり国に訴える方が出てきましたからね』

『別に私がやれって言ってないんですけどねー』

瑠奈がやや呆れつつ答えため息をする。

『不動産会社のユリアーナさん。会社を辞められて行方不明です』

『あちらに行かれたということですか』

『はい。ちなみに、ユリアーナさんって兄の恋人ですか?』

ダリスが不思議そうにし、瑠奈が話す。

『あー、なら多分、兄。ユリアーナさんに気があるからユリアーナさんが辞めて兄のそばに行ったと思いますよ。ユリアーナさんは私と初めて会った当初から惚れてましたし』

『…そうなのですか?』

ダリスが心底驚き、瑠奈がそれを見て話す。

『まあ、恋愛などに縁もゆかりもなさそうな堅物兄ですからね。はい。で、ユリアーナさんがいるなら任せましょう。兄は心も病んで苦しんでますから。あそこにいた。こことは違う場所にいたからこそ自由が出来た。居心地が良かったんでしょう』

ダリスが頷き瑠奈が頷く。

『まあでも、突然また行方知れず。私も困ってますよ。心配で。たとえ任せたとしても根本は変わらない。問題が残ったままですし、私もまた自由を失います。なので、兄には言いましたが私も向こうに行きます。ダリスさんが生まれ育った世界に。わたしでもあり、兄の問題を解決したら、私はまたここに帰ります。兄にとっては向こうが兄の世界。でも、私にとっては私の世界はここ』

『はい』

瑠奈が頷き自分の手を見る。

『兄が話してました。桜が散ったときに戻ると。それまでなら私も動けます。そして、もし向こうの世界に行ったらまずは、兄の暮らしていた場所に行きたいです。兄を慕っている方達に会ってみたい』

『分かりました。そちらは私がその方達がいる国にいる間責任者としてあなたを連れて行きます。ただ、こちらの言葉の通り。剛に入れば剛に従えです』

瑠奈がはいと返事を返し、ダリスもまた頷き答えた。


身軽な軽装をしたユリアーナが白か柔らかい布を持ち薄暗い通路を歩く。その先にせせらぎと小鳥の鳴き声が響き聞こえ始めるとその森の空間へと入り奥へと進む。そして木に背を預け座り眠るタイシの元へと向かう。そのタイシの手元や肩には小鳥や小さな魔獣達が集まりくつろいでいた。ユリアーナが持ってきた布をタイシにかけるとタイシが瞼を開け紅に染まった目を見せる。

「起こしてしまいました」

「いや…いい」

タイシがユリアーナに手を向けるとユリアーナがその手を取りタイシに引かれ隣に座る。タイシがユリアーナの肩に頭を傾け乗せその握りしめた手を握る。

「側にいてくれ…。夢ばかり見る…。起きれば忘れてしまうわからない夢ばかり」

「はい」

タイシが頷きユリアーナもまたタイシに体を少し傾け預けた。

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