東京12
ーんんう。
小鳥が鳴き朝日が照らされると明美が動き体を起こしうんと両腕を上へと伸ばす。そして両手を下ろし下を向き眠るリュウを見下ろす。
「リュウはん。おきいや」
明美がリュウを揺さぶりリュウが小さく声を漏らしその手を握り引くと明美を抱きしめる。明美がはあと息をつき仕事とリュウを叩き軽く押し除けるもより更に強い力で抱きしめられた。
「おはようございます」
女がニコッとし着替え終えたリュウがじっと見る。
「いい笑顔だねー。今まで」
「心当たりがあるなら分かりますよね?」
「リュウはんが仕事とは関係なしに迷惑ばっかかけたからやろ朝から晩まで。なんか今日から泊まり込待って聞きました」
「はい。海の保安で1週間は船の上になります」
「はあ。僕ももういい歳なのに。誰か早くかわっ」
「リュウはん。いい歳やったらもう70超えてから。リュウはんは50手前。誰かに変わってもらうなんてまだない」
「…」
「同感です。では」
女が資料を向ける。
「こちらはこの国の地図です。色分けしておりますので確認ください」
「はい」
「後こちらが食べ物に関しての書物になります」
「はいはい」
「それから」
女が本を渡していき明美が受け取っていった。その後2人がいなくなると明美がまずはと国の地図。続いて食物に関して書かれた辞典を開き見て行った。
「彼女の前から怪しまれておりますよ」
軍船の中で女が艦長室にいるリュウへと話しリュウが頬杖しながらやれやれとする。
「だよね。分かってたけど。まあでも、無理でしょ。分かったとしてもね」
リュウが女の隣の男へと視線を向け男が軽く視線を逸らす。
「…どうしてこちらを見たのですか」
「あーいや」
「共犯者」
男がわずかに反応し、女が話す。
「あなたもまた、身内殺しに加担して」
「はいはい。やめる。僕が悪かったよ」
リュウが体を後ろへと傾け椅子に深く座る。
「マウロ。次の観測域は?」
「はい」
マウロが持っていた資料をめくり伝えるとリュウが聴き終え指示を出した。
ーちょうどよかったわ。持って。
ー…おい。
しかめっつらの蘭丸が買い物中の明美のところにいたがその手には明美が買った荷物があった。
「次どこだよ」
「とりあえず家。その後キャラバンやったか。そこ見たいからリカ連れて行くわ」
「あー、あの獣人かー」
「せや。蘭丸はんは?なんか用ある?ないならついてきてほしいわ」
蘭丸がため息をする。
「ねえよ。分かったよたく…」
「おおきに」
「その言葉のやつわかんねえ」
「ありがとう」
蘭丸が頷きやれやれとした。
ー…。
リュウがもやもやとし机に突っ伏しはあと息を吐く。
ーなんかなあ…。やっぱり興味本位で行って、連れてこなければよかったかな…。きついなあ。
リュウが再び息をつき体を起こすと飲み物と立ち上がるが。
『艦長。緊急です。デッキに』
ずんとわずかに揺れるとリュウがため息をしつつ飲み物を入れ艦長室を出る。そして操舵室へとくると飲み物を飲みながら艦長席へと向かいつつ水晶から映された敵艦と思しき映像を見る。
「残党かな」
リュウが席へと座る。その隣にマウロがおりマウロが話す。
「海賊でもあるようです。海賊旗を揚げました」
「んー、なんか珍しいな」
「艦長。敵艦より通信です」
「繋げて」
魔術師がはいと返事を返し水晶を操る。そして水晶から眼帯の女が浮かぶとリュウがすぐに嫌な顔をする。
「げっ」
『げっ?第一声がそれかい!』
女の怒鳴り声が響くとリュウが顔をしかめる。
「誰ですか?」
「僕の下にいた元アストレイ海軍中尉。キャスリンハイデンリヒ。マウロが入る前に辞めて海賊になったって風の噂で聞いた」
『ああその通りさ』
マウロが驚きリュウが女を指差す。
「そしてカリーナ大尉の従兄弟の姉」
「はい」
『さっさと辞めなと言ったのになんでそんな奴の下につき続けてんのかね』
「私の勝手になります」
『はあ?ぐうたらな上に飯の支度さえ部下に頼むバカだってのに?』
リュウが顔をしかめ、カリーナが告げる。
「それより、何故攻撃したのですか」
『ご挨拶だよ。後よくも私の妹分を捕まえたね』
「あー、はいはい。アンジュちゃんね聞いてるよ。後彼女はヤーク海賊団にいたからもあるからさあ」
キャスリンが舌打ちし、リュウが面倒臭そうにする。
「それでキャスリンちゃんは何したいわけ?アンジュちゃんはしばらくしたら解放するから」
『しばらくってどれくらいだい?』
「後二月程度。一応ヤーク海賊団の厄介払いの手助けはしたから猶予が与えられたわけ」
キャスリンがわずかに考え鼻を鳴らす。
『なら結構。最後に一つ。古の黒翼に聞き覚えはないかい?』
「古の?」
『その様子ならないね。二月後にアンジュたち連れてまたここに来な。でないと』
キャスリンが下に手をやり何かを掴み上げる。すると周りの顔色が変わり、リュウが泣きべそをかく男児を見る。
「ちょっと君…。その子」
『知ってるよ。クリシア国の皇太子ヨーグだよ』
「ああ…」
『う、あ、ご、ごめんな、さああい』
リュウが顔をしかめ、カリーナがため息をつくとキャスリンが話す。
『あんたの遠縁でもあってたまにこっそり遊びに来てるのも知ってる。海に私たちを見に来てたから捕まえたのさ』
「ヨーグくん。君船には近寄らないようにってあれほど言ったのに……」
『と、いうわけだ』
カリーナが契約書を見せる。
『今からこいつをそっちに送るからサインしな。その後この王子様をやるよー』
蘭丸とリカがガツガツとカツ丼もどきを食べ、明美がもらった紙に使った素材と味をメモにしかいていく。
「似た感じの素材でも味がちゃうなあ」
「ほーか?ふまいけど」
「おおきに。せやけどうちがしっとる味ちゃうねん」
蘭丸が飲み込む。
「仕事何してたんだ?」
「え?ああ。言うてなかったな。ご飯屋しててな。もう死んだけどじいちゃんとしてたんや。まあ人気なとこやったで」
「へえ」
「おかわり」
リカが米粒を口につけながら皿を向け、明美が受け取る。
「はいな。そっちは?」
「んー」
急ぎかきこんだ蘭丸が空になった皿を向けると明美が受け取りご飯を注ぎあげたカツを乗せる。そこに扉が開き疲れ果てたリュウがくると蘭丸が受け取りつつリュウを見る。
「なんで君いるの…」
「荷物運びの手伝いしたから礼に飯くってる。お前確か1週間」
すっとダンガンが来る。
「またうまそうなの食ってんな」
「うまいぞ。後何かあったのか?」
「ああ。ま、将軍の元部下。キャスリンだ」
「ああ。確か、海賊になったんじゃなかったか?」
「そないなん?」
「ああ。ならそいつにあったのか。しばらくぶりでそして?」
「ああ。港にいた将軍の遠縁に当たる王子を攫ってな。人質開放の条件で収監されているジュリア。収監後また同じ海域に仲間と共に連れて渡すようにで解放されたと、今報告にきたんだ。それで戻ってきたわけで俺はまた送り届ける予定だ」
「なーるほどな」
「はあ。まあ、それとちょうどよかったじゃないけどさあ。彼女がなんか変なこと言ったわけ」
「変?」
「古の黒翼という言葉は知っているか、らしい」
蘭丸がきょとんとする。
「古の黒翼?」
「ああ」
「聞いたことねえなー。それ以外は?」
「ない」
「ないか。ところでなんでサイモンもいるんだ?」
サイモンが頭を下げ、ダンガンが話す。
「そこにいるタイシの知り合いと話がしたいんだそうだ」
「そう。それもあって僕もきたわけ。まあまた戻るけど」
蘭丸が頷き明美がはいはいと頷いた。
「ダリス様のご様子はと思いまして。お話とかされたりしませんでしたか?」
昼食の片付けを終えたテーブルでサイモン、明美、そして蘭丸、リカが椅子に座り話を聞いていた。明美が頷き答える。
「金髪碧眼の」
「そうです」
「言い終わる前に答えんなよ」
サイモンが申し訳なくし、蘭丸がやれやれと茶を飲む。
「少しだけお話ししましたよ。私となくなった祖父が作った食事が好きな味とかおっしゃってくれました」
サイモンが目を丸くし、蘭丸がふーんと声を漏らす。
「そうなのですね。こちらではお出ししたものについて何も感想など述べることはありませんでした」
「そりゃ、教会のやらは薄味もしくは油ばっかのとかだからじゃねえか?」
「まあ…」
「後はですか、私がタイシとどう言った関係ですかと尋ねたら保護者だとか」
「あー、向こうではそれで通してるのか」
「まあ、歳の差など考えると」
「おいくつですか?」
「ええ。35です」
「うわ。見えないですね。あと、ダリスさんって鍛えてますよね?指だこすごいですし、引き締まってましたから。シャツ越しでも分かりましたから」
「ゆびだこは…。鍛えているについては」
「まあ普段から体隠すような服着てるから分かんねえよな」
「教会ってことは厚い布地の服着てるってこと?」
「ああ。それも重ね着」
「あー、なら、向こうだとシャツだったから。それで聞いたら朝から衰えないように鍛えてるって」
「初めて知りました」
「そりゃずっと一緒にいるわけねえからな」
サイモンが頷き明美が話す。
「あとは、日本で何するんですかと聞きましたら知らない事が多いから多くのことを学ぶって話してましたね。この時も過去に起きた大戦について学ぶために一緒に旅行してますって」
「大戦ですか」
「向こうの世界だろ?」
「そう。世界大戦で、何十カ国の国が各領土侵略のために戦争を始めたの。そして何百万人もの死者が世界各国で出た戦争で、主力がその日本。そして大国アメリカ。最終的に日本が負けて全ての世界大戦が終了したの」
「へえ」
「小さな島国なんだけど千年以上内乱があちこちあって耐えなかったところだから戦闘民族の島国でもあるのよね」
「千年以上もですか?」
「はい。だから殺しについても知り尽くし、死ぬ覚悟もできている恐れをしない国でもあると言われてるんですよ。教育に関しても世界の他の国と違って熱心で文字や言葉もいいところの生まれでもまず浅いところの生まれでも無料で教えさせてましたから。今はまたかわりましたけど、100年ほど前はそうでした」
「凄いですね」
「ああ。つうか、千年以上内乱があるって言うけど100年空いたりとか」
「あるけど、確か小さなものでも百は超えるほどあったから。全部領土侵略の為の内乱。そして世界を侵略しようとして負けたの。負けを認めたのは巨大な爆弾を各地域に2箇所落とされたから。その爆弾によって死んだ数は合わせて約21万人。爆弾による後遺症。つまり、爆弾の毒によって重い病気を患った。それも後から生まれてくる子供にも影響を与えるほどの毒を持ったものだから詳しい数は不明。そして、すぐに戦争が終結したんです」
「ああ」
「なら、その大戦のことを学ぶために?」
「はい。あの大戦だけでも多くのことが学べますからね。後は今現在の技術とかお仕事とかも見学されるって話でした」
「はい」
「へえ」
「お話はそれくらいでしたね」
「はい」
「ならタイシとかミオは?」
「そっち2人も同じ。ただ、旅の目的に関してはミオちゃんの学習のためとかってのは聞いた」
「ああ」
「ミオ様の。ならあちらでも学んでおられるのですね」
「はい。そうらしいです。ちなみにミオちゃんはここでは、階級と言いますか。様付けされてるのは特別だからですよね?」
「はい。彼女はこちらの国の陸軍将軍アルスラン公爵を父に持ち、言えば彼方から拐われ聖女として名を残された葵様の娘様になります」
「公爵ということは貴族階級で上級に当たりますか?」
「はい。タイシ殿が階級に関しては彼方と同等とのことでした」
「同等か…。なら、どちらかがあわせた可能性ありますね。そしてミオちゃん。どうして戦争について知らないといけなかったんです?」
「それはアルスラン将軍の事もですが、ご自身が戦争を経験されましたから。故郷の村を、えーと」
「親父の軍が攻めたんだ。そしてミオとミオの妹分になる村で生まれたばかりの赤子のみが生き残った。母親である葵はそこで死んだ。重い病に侵された体で最後は娘を隠して死んだんだ」
「それでか。あと、重い病で、隠して守ってじゃなくて?」
「正確には楽になりたかった。病からもだけど魂だけでも故郷に帰りたかったみたいだ」
サイモンが頷き、明美が話す。
「なら、殺した人がいるわけか。それもお父さんの部下で」
「ああ」
「それ知って部下な人は」
「めっさ後悔してるな。知らなかったとは言え親愛なる将軍のこれまた親愛していた女性だったからな」
「そうよね。だけど戦争。どうしようもないことよ。あと、アルスランさんでしょ?一回こっちにきたことあるから知ってるけど、許したの?」
「許してるし逆に申し訳い感じだったし、あいつもあいつで自分で見つけられなかったから後悔している。まさかそこにいるとは思ってなかったらしい」
「ええ」
「でー、ミオとはまだ対面してねえんだ。お互い認知しあってるけど、ミオが旅の最後にここにくるまでは会わないという約束をしたらしい」
「そうなの。でも、なんとなくわかるなあ。2人とも約束とかは頑なに守りそうでそれで自分の首絞めそう」
「いやがちでそれな」
サイモンが苦笑し頷き、うとうとし始めたリカを見て抱き寄せた明美がでしょうねと告げた。
ー古の黒翼って。
「黒い原石と同じかな」
船へと戻り艦長室へとまた戻ったリュウがカリーナ、マウロがおりカリーナが話す。
「私も思いました。同じではないかと」
「自分もです」
「だよね。あと、そうなるといずれ。いやもうわかってるかもね。アルなら」
リュウがポケットから竜が彫られた緑の石を出す。
「古の王家。その血筋が見つかれば今でもどこで眠っているかわからない幻の古代国タハマヤが見つかる」
「あのイーロンを超える都市だったとのことですからね」
「そう。そして未来都市と言われてる。その国を三千年制圧していたタハマヤ一族は人智を越える力を持ち、竜たちを従えてもいた。けれど、最後は突然国ごと姿を消し滅亡した。実際にあるのかとなると、分かんないんだよね」
リュウがやれやれとし、マウロが話す。
「けれど、そちらの石はその国のものだったのですよね?」
「そう言われてるけどね」
リュウがその石を手にし竜の模様を見る。
「本当にそうなのか分からないしさ。石が見つけると言って待たされてるけど何も示さないし反応ないしさ。はあ面倒臭い」
リュウが石をポケットに入れる。
「黒の原石で、龍が掘られた石だからー、なんかタイシ君ぽいかなーと思ったけど何もないし」
「はい。確かに」
「うん」
「艦長」
「なに?」
リュウがマウロを振り向きマウロが話す。
「私は艦長のご意志に心打たれてついてきました」
「いや、心打たれてまでは…」
「その古代の国は何か目的と関係があるのですか?」
「あるよ。もし本当なら僕達の目的が果たせることできる。それはマウロ。君にも話した事だ。そして、本当にそうならぼくが考えてるほどの犠牲が無くなる。そしてイーロンのあの技術だけじゃダメだったのは分かってるよね?」
マウロが深く頷きはいと答え、カリーナが話す。
「未来都市と言われたその古代の都市にありそうですね。不死の秘薬が」
「不死まではいい。ただ、戻せたらいい。そして、改革。革命だ」
リュウが椅子に深く座ると大きく息を吐く。
「だからあちこちとお邪魔虫が増えたりしないでほしいよ本当」
「増える可能性はありますよ。古の黒翼」
「あーやだやだ。ぼくももう若くないのにさあ」
「引退考えるのは70過ぎてからと、言われましたね」
リュウが顔をしかめ、カリーナがニコッとする。
「お仕事。勤しまれてください」
「……なんでこんな子に」
「なにか?」
「いや」
「艦長。あの少女はどうなさるのです?」
「あー」
「お仕事されている間はいてもらうことになってます」
リュウが顔をさらにしかめマウロがはあとやや困惑した声を漏らした。
ーその頃。
「なあなあ。買い物とか手伝うからさ。昼飯とか夜飯とか食いにきていいか?」
「リュウはんの許し得てからな」
夜ご飯の支度をする明美の隣で蘭丸がおり蘭丸がなら話しとくと告げると明美が頷き了承した。
長原晃司を前にタイシ、ヒカルが座っていた。そこは一見のみしか入れない高級料亭で目の前にはお膳がありヒカルがうまうまと食べタイシがゆっくり味わい食べる。
「お前達は酒はいいのか?」
「はい」
「いらない」
「分かった」
ヒカルが頷き鮑を食べる。
「船のことについてお話聞きましたか?」
「ああ。極秘で進めているが、なかなか難しい」
「難しい?」
「領地問題ですか?」
「え?」
「そうだ」
ヒカルが驚く。
「船だぞ」
「船でも国の領地になる。だから必ずその国のものであるという身分を証明するパスポートが必要なんだ。あと、他国になるから向こうのルールが適用される。つまり銃火器の使用だ」
「ああ。なので、取り締まることも難しければ船がある場所は接続水域の近く。排他的経済水域内だ」
「超際どいとこ行ったなあー」
「主催者側が用心すぎる人なんだろ」
「くそっ。ただでさえ面倒なのにより面倒な所に」
晃司が苛立ち酒を注ぎ、ヒカルが話す。
「てことは、見て見ぬ振りになるかもしれないと」
「ああそうだ。一応動いてはいるが危険と判断したら即中止する」
「そうだよな」
晃司が頷き酒を飲み、タイシが話す。
「何かあれば」
「いや」
晃司が言葉を遮る。
「それよりもそいつらを貸せ。こちらも猫の手を借りたいからな」
「話しておきます」
「ああ」
「なら、これは?」
ヒカルが親指と人差し指をつけお金とジェスチャーすると晃司が話す。
「払う。まあ勿論正規の支払いはしない」
「別ルートで?」
「そうだ。取り敢えずはこれだな」
晃司が指を一本立てる。
「前が5.後で5だ。あの2人を生かしたまま渡せば5。無理ならなしだ」
「えーと」
「桁8と7だ。まだ出せる余裕は?」
「ある程度は残してある」
「分かりました。では、そちらで話します」
「ああ。ならばか。弟についてだ」
ヒカルが頷き、晃司が告げる。
「あいつは医者としてまだいるんだろう?」
「はい」
「いる。いやいやいいながら自分から突っ込んで仕事してる」
「ああ。ならいい。あいつはいつもそうだったからな。畑仕事も文句を言いながら最後まで納得するまで残ってやっていた」
「へえ」
「ヒカル。お前の母であいつの嫁はどんな人だった?」
「まず美人。そして強気に活気。我が強かったけど、頭もよかったし、俺と兄さんを思ってくれたし可愛がってくれた。寄宿学校とか行ってからも会いにきてくれてた。最後は病死だった。俺たちも覚悟して最後は見届けたし、苦しんだ顔はしてなかった。すごくいい顔してた。解放されたって感じ」
晃司がじっとヒカルを見ていたがそうかと告げ酒を飲む。
「おじさん。父さんって付き合ってた人いたんでしょ?聞いたから」
「ああ。幼馴染だ。今は別の相手と暮らしているとしか分からない。実家のある地方から別のところへと引っ越したそうだからな」
「そうなんだ。父さんそのこと気にしてたから」
「気にはするだろうな」
ヒカルが頷き、晃司が話す。
「ヒカル。あいつがいる場所。お前達がいた場所はこことは違うところなんだろう?ここは俺たちしかいない。だから話してもらいたい」
ヒカルが僅かに戸惑いタイシへと視線を向け、タイシが話したらいいと告げるとヒカルが頷き戸惑いつつ話した。
ーお父さん、お母さん泣かないで、決して泣いては嫌です。褒めてください。
ミオが特攻隊で散った若者達の遺書が記載された本を開き見ていた。そして、子を頼むと妻へと残された手紙。大切な家族。先生にと伝えたい相手へと向けた遺書を読む。
ー私より若い人も戦争で大切な人を守るためにいったんだ…。とても綺麗な字。
ミオが本に記載された遺書をなぞる。
ー死にたくなかったんだろうな。生きていたら子供の成長も、家族と暮らす未来もあったんだよな。
ミオが村での惨劇を思い出す。
ーみんなは、どうだったんだろう…。もし、みんな生きてたらどんな事に、どんな事があって…。
ミオが涙を落とすと本で顔を隠し上を見上げる。
ーお母さん…。生きて欲しかった。まだ、一緒にいたかったよ。お母さん…。
ミオがぐすっと鼻を鳴らし本を顔から離し涙を拭った。
ーまあまあいい仕事きたんでやるぞー。
からからとルーレットの上を玉が回る。そして、くほんだ番号の中へとからりと入る。客達が落ちた番号の結果にどよめく。そのルーレットを目元にマスクをし顔を半分隠した玲花が動かしていた。そこは船の上のカジノで乗客や船員達は全て目元をマスクで隠しながら過ごしていた。
『入場券をお見せください』
カジノ船のカジノ入り口でスタッフが手を向けるとマスクをした阿久津がチケットを渡し中へと入る。
ーえーと確かー。例の2人はー。
阿久津がカジノコインを受け取り周りを見渡す。そしてスロット、カードゲームに打ち込むそれぞれの男女を見つける。
ー見つけた。
玲花が阿久津を見つけスロットの玉を握り次は誰に賭けますかと言いながら合図を送る。
ーあー、暫く泳がせ。了解。ならなんかして時間稼ぐか。
阿久津がすっと離れサイコロを転がすテーブルへと来るとじっと客達の後ろで観察した。
ーあれか。
タイシが小型船からカジノの客船を見る。その隣に玄海がインカムをつけながらiPadを手にし暗視付きの望遠鏡を覗く。
「お?また客乗せた小型ジェット船がきたな」
「絶えず来るな」
「そりゃ、人気のあるカジノだからな」
「人身売買は?」
「あそこではしていないが、払えなくなったやつに関して降りた後ごあんなーいとかはあるな。そんで現地で売るか密かな公開処刑のどちらかが待っている。ま、闇カジノだからな」
客達がその船へと移り中へと入る。
「あの船でもし問題発生した場合の避難船はあるか?」
「一応はあるな。その予定でもあるのか?」
「いや。もしになる。向こうの癖みたいなもんだ」
「戦での経験ってやつか」
「後はギルドだ」
「ああ。しかし、うまいの食ってんなあ。あー肉食いてえ」
「成功したら奢る」
「そいつはどうも。それと、もし向こうに戻るとしたらいつ戻るんだ?」
玄海が顔をあげ話、タイシが告げる。
「4月ごろだ。それまでには終わらせるのは終わらせる」
「りょーかい」
ヒューと音が鳴ると玄海、タイシが高く上がった光を見る。そしてパンと花火が複数回上がる。
「花火?」
「ああ言った事一度もないぞ。そばによる。阿久津ちゃん。玲花ちゃん」
ざーと音のみが響くと玄海が横付けされた小型のエンジンが乗った小舟に乗り込み急ぎエンジンをかけ進ませ、タイシもまた乗り込む。
「お前が言ったからー。くそお」
「俺のせいにするな。通じないのか?」
「ああ。電磁波攻撃されてる。金かけてんな」
悲鳴が上がり始めると船の上で影がいくつも逃げ惑う。そして、何体かの影が海へと落下する。
「あらら」
「玄海。俺が落ちた相手を拾う。お前は先に中に」
「りょーかいと言いたいけどどうやって拾うんだ?」
「水上スキーバイクだ」
「運転できんの?」
「やってるうちには覚える。あの船着場にあったのをみた」
「りょーかい。ま、近づけるかの話だけどなあ」
玄海がスピードを上げると船の上から玄海達が乗る船へと向け発泡を始める。玄海が上、前と確認し船を動かし横ハッチに開かれた船着場へと進むとそこに小型船を突っ込ませる。銃を向け構えていた黒づくめたちが声を上げ慌てて逃げ、タイシ、玄海が船から飛び降り、船が壁にぶつかり破壊され動かなくなる。
「おったまげー」
玄海が銃を出すもタイシがそれよりも早く動き1人目を投げ床に強く叩きつけ、もう1人は後ろに周り首を絞め固定する。
『があ』
「流石流石」
タイシがそのまま意識を落とすと力をなくした黒づくめの男を床に置く。
「予定変更。狙い撃ちされるから中に入る」
「オッケー。後どうせ落ちた奴らは助かりはしない」
「分かった」
タイシが銃を拾い弾数を確認すると今度は気絶させた男たちの服を玄海とはぐと金髪や黒人の外人たちが素顔を見せる。
「まあ普通のチンピラだなっと」
玄海、タイシが縛り船に乗せシートを被せ隠すと服を変え覆面をつける。
『さあて行きますか』
『ああ』
『ドッグ。そっちはどうだ?』
タイシが視線を向け玄海が喉を叩くとおいと声を出す端末へと男の声で答える。
『乗り込んできた奴らがいたが始末した。問題ない』
『了解。こちらは制圧した。お前たちはそのまま見張っていろ』
『了解』
『いい声をしているな』
『七色の声の男と言ってくれ』
『その呼び名をお前が使うな。正しく生きてる人に楽しませてる人が呼ばれてるからな』
『なんだよ知ってんのかよ』
玄海が面白くなさそうに告げ、タイシがああと返事を返し玄海とともに船内へと入った。
ー海の音。波の音。
ざあと音が響くとミオが海の中へと静かに沈む。そしてゆっくりと目を開け輝く水面を見るも今度は下の破壊され散った船、飛行機、そして若い当時の日本軍人たちを見る。そこに日本の旭日旗も沈み揺らいでいた。
ー戦争…。あ。
すっと見たことのある顔を見つけると下へと手を伸ばし沈む。そしてそれが目を開くとふっと笑む。
ーギルド長。テオドバルトさん。
すっとミオの手が空振り上へと上がる。
ー待ってっ。
ーミオちゃん。マーサに伝えてほしい。
ミオがはっとしテオドバルトが離れながら告げる。
ー孫ひ孫まで長く生きてたまに私に見せに来てくれってね。息子たちも弟も仲良くしてくれ。どんなことであっても信じてほしい。
ミオが涙を流し、テオドバルトがありがとうと告げ姿を消す。そして船や飛行機が光り、光の泡となり浮かぶ。
ーミオ。
ミオが前を振り向くと葵が手を向け顔を歪める。
ー起きなさいミオ!術が!
ーえ?
ミオがはっと目を覚ます。そして下に落下するがすぐに床に当たる。
「う、いた…」
がしゃがしゃと音が鳴るとミオが顔をあげ向けられた銃と銃を向ける覆面の男たちを見て体を硬直させる。
『いったいどこから現れたんだ』
『ああ』
ミオが青ざめ僅かに後ろに下がる。
『動くな。死にたいか?』
ミオが止まり震え息を弾ませる。
ー術。でも、どうして…。私確か、本を読んでて、それから。
『驚きました』
仮面をつけたスーツの男がその場へと同じ仮面をつけた船員の男、女と連れ来る。
『予言の通りね』
『ああ。それでどうするんだ?この後は』
『彼女は必要な人材になりますから連れて行きます。ただその前にするべきことがあります』
スーツの男が手を挙げる。そしてミオへと銃を向けていた者たちの額に5センチほどの風穴が次々と空きそこから血が噴き出ると白目を剥きながら力無く崩れる。男の後ろにいた者がサイレンサー付きの銃を引き弾をその場に落とし装填をし、ミオが口元を手で覆い震える。
『見られましたからね』
『そうね』
『はあ』
『な、なんで、ころし、て』
ミオが必死に声を出し、男が話す。
『まず、あなたのそのお顔。そして、突然現れたところをこの者たちが見たからですよ。見られては後々面倒ですから』
『おい』
我慢の男が横を振り向くと1人の男が竜が刻まれた石を見せると龍が僅かに淡い光を放っていた。
『信じられない。まさか』
『いるということね』
『ああ。あの客たちの中か?』
『いいえ。この船全てになるわ。ここにいる導きの巫女の力とこの海域のせいね』
ー導き…。
『ああ、こんな嬉しいことはない』
男が震え両腕を掴む。
『何百年。いや、何千年。この時を待ったか。失われていなかった』
ミオが興奮する男へと視線を向けながら僅かに後ろに下がり落ちている銃を見てゆっくりと向かう。
『古の黒翼。我らが王子がいる』
『もしくは王女ね』
『ああ』
ミオが震えながら銃を向けると男たちが振り向きスーツな男がミオを見てふっと笑う。
ー怖い。怖い。
ミオが引き金に指をかけ力を込めひくもかちりかちりと空振りする。
『安全装置よ。お嬢さん』
女が淡々と話し、ミオが心臓を跳ねさせ苦しく息を弾ませると涙を滲ませる。
「た、すけ」
突如部屋の壁が爆発すると男たちが吹き飛びミオも吹き飛びした合わせに壁に当たりうめく。するとすぐに引き起こされ担がれる。
「いやっ。い」
「落ち着けっ」
ミオが体を僅かにこわばらせ、タイシがミオを肩に担ぎ部屋を抜け走りすぐに通風口へとミオを上げると玄海が引き上げる。
「急げ急げ」
玄海がミオを引き摺りながら後ろに下がりタイシが通風口に上がりすぐに蓋を閉めはって進む。そして客室へと来ると玄海がおり椅子を使いその上に立ちミオを下ろす。続いてタイシが降りる。
「まあた無茶な救出して」
「ああしないと無理だと思ったからな」
タイシが覆面をあげ浅だらけの素顔を見せるとすぐに医療キッドを出しミオの顔や足の擦り傷に消毒液をつける。
「ど、うし、て。こ、ここ」
「違法なカジノ船だ。ミオもどうしてここにいる?」
ミオが震えながらわからないと頭を振ると涙を落とす。
「連れ去りかな?まあとにかく、阿久津ちゃんと連絡とれたからそろそろ逃げますか」
「ああ。ミオ。玄海が運ぶ」
「そうそう。彼が強いのと俺は逃げ道の案内役だから」
「そうだ」
どんと音が響くとミオがビクッと震え、玄海が話す。
「俺の仲間。とりあえずこのカジノ船。今わけわかんないのに占拠されてんの。だから、強硬手段。沈めるのさ」
「し、沈めるって」
「周りは日本の海自とアメリカ海軍の船が囲んでいる。救難信号を出した」
「ああ。事前の下調べで海軍の母艦が20海里先を航行する予定でさ。で、予定通り来たわけ。あと、運んでいいか?」
「その前に防弾チョッキだ。着せるぞ」
タイシが急ぎミオの体につける。
「そんであとで浮き具とこの仮面な。で、海軍にはアメリカ国籍の船が沈み始めている。それも海軍少将の船だ」
「し、少将?」
「ああ。まあ正確に少将の従兄弟の船さ。それを伝えてこっちに来ているわけだ。後10分くらいだな。海自は到着まで待機中だ」
「出来た。ミオ。いいか?」
ミオが小さく頷きタイシが頷く。
「ああ。みたくなければ目を閉じて頭を下げろ。だが暴れるな。玄海の言うことを聞け。以上だ。玄海」
「オッケー」
玄海がミオを抱き上げる。
「しっかりしがみついてて」
「は、はい」
悲鳴があちこちと響き銃声も響く。タイシが覆面を付け直し部屋のドアを開け周りを見て合図を送る。
「行くぞ」
「了解」
タイシが先に出るとミオを担いだ玄海が後を追った。
ー阿鼻叫喚。
『黙れ!さわぐっ』
銃を手にした男が阿久津から蹴りを喰らわれそのまま卒倒する。そして玲花がもうと声をあげテーブルを盾にしながら銃弾を装填する。その隣に仮面をつけた山陰の女性たちが震えており玲花がトリガーを引く。
『なあんでこうなるのよっ』
上から銃を持つ男が姿を見せ銃を向けられるも顎から頭にかけ銃弾が貫通すると後ろにそのまま倒れる。引き金を引いた玲花がぶつくさいいながら手をふる。
『いったーい。本当銃嫌いなのに使わせないでよ』
阿久津が滑り込み玲華の隣に来る。
『じーさんが来る』
『はいはい。ていうか近いから離れてよ』
『無理』
どおんと音を立て近くで爆発すると女性たちが悲鳴をあげ2人がテーブルを掴み爆風を堪える。
『なんなのよもう!』
『爆発』
『まさかあんたじゃ』
『違う。別だ。先にターゲットたちを海に捨てた』
『りょーかい』
『いきのいいのがいるな』
阿久津が横へと視線を向けると火傷や傷を負い服があちこち破れた男が苛立ち笑みを浮かべながらくる。その手には血まみれで頭が曲がった乗客の男が掴まれ引き摺られており、男がその男を床に放り投げる。
『今虫の居所が悪くてな。遊んでくれるよな?』
阿久津が立ち上がり、玲花がため息する。
『暑苦しいから向こうでして』
男が向かい阿久津が玲華たちから離れ男の拳を受け流し今度は蹴りを足で受け止める。
ー重い。
『やるじゃねえか!!』
男がそのまま阿久津を横へと流すと阿久津が体勢を立て直し男の蹴りを避けていく。
『ああもう最悪』
ごとっと音が響くと女が足元に転がった生首を見て発狂する。
『いやああああ!!!』
『伏せて!!』
玲花が近くにいた女を押しやり倒す。そしてテーブルが突如切れ女2人の首がその場に落ちる。玲花が舌打ちし、1人押し倒された女が震え上がる。
『外れ』
仮面をつけた火傷だらけの女が待ちのようにしなる剣を操り来る。玲花が顔をしかめ立ち上がると女の周りの切り刻まれた死体たちを見る。
『初めましてだけどあんたたち2人。相当苛立ってるわね。何があったのかしら?』
『ちょっとね』
『その火傷と怪我が関係してるのがそう?』
『ええ』
女が剣のようにしなる鞭で床を叩くと床が抉られ切られる。
ーど、どうしよう。無理。
玲花が冷や汗を流す。
ー無理無理無理無理っ。何よあの女ゴリラ!?ゴリラ女??阿久津ちゃんはっ。
阿久津が男と交えていた。
ーああもおおおお!
女が柄を強く握り振りかぶる。そして阿久津が拳を向けようとするが何かが投げられるとすぐに掴んだ。
「まってむ!?」
女と玲花の前に六角形の細長い筒が投げられると玲花が伏せた途端眩い光が広がる。
『っあ』
『うっ』
2人が光に目がくらみお互いに目を覆うと阿久津が男の頭にかかと落としを喰らわせ床に叩きつける。そしてタイシが女の腕を掴みそのまま後ろに捻りおると女が悲鳴をあげるもすぐに今度は昏倒すると力無く床に倒れる。
「えーちゃんナイス。アールちゃん無事?」
「はあ」
「もおっ。早く来てよっ」
「悪い悪い。ちょいと問題発生と」
タイシが玲花へと走ると玲花の隣の女をすぐに掴むが女がタイシの腕を握りひねろうとしたがタイシがその捻りに合わせ体ごとはなり女の頭に蹴りを向ける。だが女が手を話し素早く転がりすぐに銃を向け楽しく笑む。
「あちゃあ」
「かばわなければよかった最悪」
「そうね」
「玄海」
玄海が口笛を吹き、火傷にあちこち傷を帯びた画面の男がその場にくる。
「俺じーちゃんだって冗談だめか」
「その巫女を渡せ」
ミオが震え玄海が告げる。
「やーだね。後残念でした。オタクらここしか動かないんだろ?それから向こうの世界だけだ」
「え?」
「ここさえ切り抜けりゃあ何とかなる」
タイシが銃を構え、女が冷ややかな視線を玄海へと向ける。
「この国賊め」
「おいおい。俺は元々そっちのお国様の民じゃねえからな。まあ、いろいろ教えてくれて感謝ではあるか。おかげで助かってるぜ」
「どんな知り合いだ?」
「ししょーだ。でも、後で使われてポーイされる駒であり弟子の1人が俺だったわけ。で、この2人は超がつくほどの長生きのジジイとババア。そしてぶっ倒れてるのは子孫ってやつかな。そして、一夜にして消された国の亡霊たちさ」
男が手を光らせ、女が銃の形を変える。阿久津、玲花が驚愕し、玄海が引き攣った笑みを浮かべる。
「がち?ここでそこまで使えんの…」
「そちらは巫女を。貴様らはここで死ね」
男の手から電撃が迸り男が手始めに阿久津へと向かう。阿久津が汗を滲ませるがタイシが前に出るとゴム手袋で男の電撃を放つその手を握る。だが僅かに帯電するとタイシが堪え奥歯を噛み締める。
「たふぁ」
「だめだめっ」
玄海が慌ててミオの口を塞ぐと今度は有象無象に動く弾丸を避ける。
「それで防げるものかっ」
「ある程度はっ。防いでいるっ」
「アールちゃんとえーちゃん先いけ先!!」
阿久津、玲花が走り会場を出る。タイシが周りを見て腰につけた手榴弾を掴むと男の目の色が僅かに変わると男がさらに電撃を強める。
「私は死なないっ!そのようなも」
「この死地で関係あるか!」
男が汗を滲ませタイシが鋭く睨みつけ男を押す。
「それだけの覚悟で!その程度で!」
タイシが手榴弾をのピンを外すと男が電撃を消しタイシが拳を強く握る。
「勝ったつもりでいるな!!」
男の横面にタイシの拳が食い込み男が横に飛び倒れ、手榴弾がかこんと落ち転がるも爆発しなかった。
「アルファ!」
女、サルーシャが声をあげ、玄海が銃を出しサルーシャへと引き金を引くとサルーシャが避けカウンターに逃げ込む。
「クソはええなババア」
「だめ!」
玄海がはっとしふらつくタイシへと頭から血を流した男がタイシの腹へと拳を当て吹き飛ばす。タイシが死体に当たり止まると力をなくす。
『ち、くしょうがっ!』
『そりゃこっちのセリフだ寝とけっ』
玄海が男の顎を殴り蹴りを放つと男が倒れ力をなくす。玄海がタイシを振り向くとその目を見開く。そしてサルーシャもまた目を見開き驚愕しながら男が待っていたはずの龍が刻まれた石を見る。それはタイシへと向かい動きながら光を強め、タイシに触れると緑の石が黒へと変わり龍が金の刻印へと変わる。
「ま、まじかあ…」
「タハマヤ一族」
玄海がはっとしミオがぼうとしながらタイシを見る。
「黒龍のけつぞふ」
「しーしーしーしいいいい」
サルーシャがすぐに飛び出しミオの口を塞いだ玄海がすぐさま向かう。
「ちょい待てババア!!」
「王子!私たちの希望!!」
「ちげ」
『違いますよ』
サルーシャの両足に銃弾が貫通するとサルーシャが倒れ苦しく呻きつつ銃を握るダリスを睨む。
『己、小僧…』
ダリスが無視しタイシを肩に担ぐ。
『迎えが来てますし半分沈んでます』
『がちでっ。急げ急げっ』
『ま、て』
ダリス、そして玄海かタイシに殴り飛ばされたルイスを振り向く。
『お、うじ、は』
玄海が銃を向け引き金を引く。そしてサルーシャにも向け引き金を引いた。2人の頭にその銃弾がそれぞれ貫通しその場に崩れ倒れる。
『これで死んでくれたらなあ』
『死なないのですか?』
『わかんねえっ』
船が傾くとダリスが急ぎますよと告げ走り玄海が慌てて後を追う。そして下で待っていた阿久津の操縦する船へと乗り込むとすぐに沈み始める客船から離れる。玄海がふううと息を吐き出し、ダリスがタイシの覆面を外し火傷を見ていく。
『電気を浴びたんだ。あの野郎の攻撃』
『ええ。ところでなぜミオ殿がここに?』
『まだ聞かなきゃわからねえ。ただもしかしたら奴らが呼んだかもしれない。ここは向こうの世界に近いところでどこかの医者の先生が飛行機事故で落下したのもこの辺りなんだよ』
『そうなのですね』
ごおと音が響くとダリスが沈んでいく船を見る。その沈む船を海軍の船やヘリから放たれたサーチライトがいくつも照らされる。
『もーつかれたあ』
『じーさん。報酬』
『ちょい待て待て。向こうから連絡あって振り込んでからだ』
『ぶー』
『ちっ』
『ぶーいうな舌打ちすんな。たくよ』
ダリスがやりとりを見て視線を逸らし怪我と火傷を負ったミオを振り向きその頭に触れる。すると視線を感じぞわっと鳥肌をたてその手や腕を振るわせる。
『ん?どし』
ダリスが玄海の首へと手を向けるが即座にもう一つの手で掴み船の淵を掴ませる。
『あー』
『ミオ殿がなぜいたのか分かりました』
『だーから私がいると話しただろう?』
ダリスがいらっとし、小麦色の肌に焼けたキヨがその場にくるとミオに触れる。
『どうどうキヨちゃん?』
『まあ待て』
キヨが顔を歪め始めたミオの胸に触れる。
『母君殿と守護者が守ってたか。さて、逆に覗かせてもらう』
キヨの手が僅かに光るとキヨが笑みを深める。
「っう」
ミオが小さく声を漏らすと目を開けキヨへと視線を向け手を震わせ向ける。
『さ、いやく、の、子、があ』
「その災厄の子に負けるお前は低俗術師だ」
ミオの体が一度はねるとミオが強く目を閉じ咳き込む。キヨがミオを抱き起こし持ってきたリュックから飲み物などを出す。ミオが辛くその目を開ける。
「キヨさん…」
「ああ。さてまずはこれを飲め」
キヨがボトルの飲み物を飲ませるとミオが僅かに口からこぼし飲む。そして飲み終えるとはあと息を吐く。
「はちみつミントレモン水だ」
「それ欲しいー。ない?」
「冷蔵庫に入ってるぞ」
「ええ」
「俺ももらう」
「阿久津ちゃん。飲みながら船運転してなー」
「ちっ。了解…」
2人が向かい、キヨが今度は白い柔らかいフルーツを食べさせる。
「怖かったです…」
「ああ。死者も多く出ているからな。いくつも見えている」
船が動き出すとミオが涙を流しながら頷くがフルーツが口に入るとゆっくりと咀嚼し飲み込む。
「だが、生きている。ミオ。お前もお前が知っているもの達も。死んだもの達はそのもの達の家族が想いはぜよう。だからミオ。今は眠れ」
ミオが頷きキヨが頭を撫でるとミオがしばらくして静かに寝息を立てる。そして同時にタイシが顔を歪め目を覚ますとダリスがタイシを見る。
『ダリスさん』
『はい』
『よお大将。みんな無事と船は沈んだ。あとはここから退散』
『ああ…』
『動けますか?』
『無理です…』
『高圧電流を浴びてるからなー。そのあと腹パンだ』
『腹に来たのは、分かったが、後はわからん』
『そりゃ気を失ったからな』
『タイシ殿。見ますので服を脱がせます』
『はい…』
ダリスが頷き服を脱がせ青あざが目立つ腹部を見る。
『触りますよ』
『はい…』
『あの感じだと思いっきりいった気がしたけどな』
『後ろに、飛んだからな。っつ』
タイシが声を漏らしダリスがやや強く抑える。
『陸まではもつな』
『ええ。あとは、病院で診てもらうしかないですね。火傷などの方も』
『ああ。まあそこはポリさんの上の方が世話してくれんだろう』
玄海の端末が鳴ると玄海が耳に当てる。
『もしもーし』
『おいこら!そこにバカガキがいるだろ!』
『あ、そうそういますいますっと。次いで電気浴びたもんだから病院手配を』
『何させたんだ!』
タイシが顔をしかめ、晃司の怒鳴り声が響く。
「いやあ元気元気」
「まいったな…」
『聞こえているからなバカもんが!!』
「すみません…」
『ちっ。あの2人は回収できた。残りの始末はアメリカが行うっ』
「まあ、アメリカさんのとこですからね。了解。そうしましたら病院手配よろしくお願いしますと」
『ちっ。分かった』
「はい、でー」
玄海が眠るミオを振り向く。
「ミオちゃんもいます」
『は?なぜ?』
「連れ去り。俺らもこれに関しては予想外です。そんでミオちゃん。助け出す際にちょいと爆発に巻き込まれたんで軽い火傷と怪我してます。なんで病院2人」
『分かった。その件については後ほど詳しく聞く。中での様子もだ』
「了解。そんで報酬」
『聞いてからだ。以上』
ぶっと通話が切れると玄海が口を尖らせる。
「ちっくしょお偉いさんめー」
『こーじ殿か?』
『そお。中の様子とか聞いてから金渡すんだってさ。ちぇー』
『じゃあじーさんよろしく。私はゆっくりホテルで休むわ』
玄海が顔をしかめ、玲花がバナナをもぐもぐと食べる。
『ひでえ。つうか俺にもくれ』
『冷蔵庫にあるぞ。冷凍庫にはアイスがある。持ってきた』
『ならアイスー』
玄海が嬉々とし向かう。
『キヨ殿は、どうするんですか?』
『私か?またあの海域に戻る。その迎えの船もきたからな』
一隻のアメリカ軍の船が来るとゆっくりと動きながら並ぶ。そして橋が渡される。
「流石プロー」
「ほーふね」
棒アイスを食べながら阿久津が運転し答える。そしてキヨが軍人の1人の手を借り橋を渡る。
『ではなっ』
橋が外され軍船が離れ迂回し再び船が集まる場所へと戻る。
『キヨは、どれだけ知り合いが、いるんですかね』
『分かりません。あと、飲み物を飲まれて休まれてください』
タイシが頷きキヨが残したタイシの分のレモン水をダリスノ手で飲ませてもらう。そして静かにタイシもまた寝息を立て眠る。ダリスが上に薄手の毛布をかけカップアイスを食べる玄海を振り向く。
『さて。王子というのは?』
『やっーぱきくかあ』
『ええ。タハマヤ一族というと、一夜にして消えたあちらの世界の古代の巨大国の名で王族の名でしたね?そしてその国の紋章は龍』
ダリスが黒に金の竜へと変わった石を見せる。
『なかなかな勤勉。正解』
限界がやれやれとし座る。
『俺もびっくりだし。その石は本来は緑に龍は白だった。そのタハマヤ一族の術師が作り出した一族。言えば国を統治していた王族の血筋を探し出すための石だ。俺が銃を額に撃ち込んだジジイ。あいつの親族が作り出した代物でな』
『ジジイですか。見たところ若い方でしたが?』
『いやいや。見た目だけ。中身はじじいでエルフよりも長生きだ。そして言えば古代人』
玄海が手を振りタイシを見ると指差す。
『そんで、そこの大将に石が反応したわけだ。奴らは国を復活させる為に王族の血筋を探してんだ。何百年も何千年も時間をかけてな』
『まずなぜそこまでして?そしてなぜ見つからなかったのです?』
『そこまでについてはまた国を再建させて周りを支配させる為じゃねえの?その当時もそうだったらしいからな。そして、見つからなかったのは不明だ。だが今回見つかったし、大将が相当な力を持ってた理由がなんとなーく分かった気もするな。タハマヤ一族は1人で何百人を超える相手をしても勝てるほど。言えば龍を超える力を持っていると言われていた。そして不死でもあるとか』
玄海が後ろ手で船があった方角を指差す。
『奴らはその一族に仕えていた血の繋がりを持つ親族になるらしい。前ジジイから話聞いたからな』
『では王族の血筋は?』
『ああ。竜の力を引くか引かないかとか。なんか、選定があるらしく一族で竜の力を継いだものが次の王族になるとかでさ。多分その石も一つ言えばその選定のための石になるんじゃねえかな』
『では、その前提に選ばれたわけですね』
『そう言うこと。そしてか。まあそうなると大将は少なからずとも向こうの世界で生まれた祖先の血を引いてるわけだ。しかもそれが稀なやつ』
『彼の実母が妹の瑠奈殿に渡した手紙に書いてあったそうですよ。自分もだが2人は特殊な血だと』
『ふうん。そうなると母親は知ってたわけか。まあだが詳しくは知らなさそうだな』
『どうでしょうか。あなたのことを知っておりましたからね』
『んーまあ、そうだなあ。でも俺もあちこちネットやらに何でも屋してますって載せてっからさ。本当に知ってて分かってて雇ったのかはわからねえ。まあそこは、本人にちょいと会ってみようかな。あのジジイどもも動いてるってことは向こうの世界でも大きな変化が起こる前触れだ』
『イーロンという国が無くなってからでしょう?もしかしてですが、あの国はタハマヤを真似た国家でもあったのでしょうか?』
『あーー』
玄海があごを撫でる。
『言われてみれば確かに…。そこも調べてみるか。俺も気になるしな。ちなみに、教会ではタハマヤについて何かあったりは?』
『噂にはなりますが数名の司教達が探しているとかは聞いたことがありますね』
『その噂はどこから?』
『秘密を探るのが趣味でして。まあ、私の部下が情報を集めてくれてますからね』
ダリスが面白くし、玄海が話す。
『相手の弱みを知ってたか狙うかー』
『誰もがやってますよ』
『教会も根暗というか怖いもんだねー』
玄海が溶け始めたアイスを見てまずいまずいと急ぎかきこみ食べた。
後日ー。
「お前もバカだな」
畑中が入院中のタイシの元へと来る。そこに本を開き見ていたヒカルもいたが畑中を見て気まずくするタイシを指差す。
「昨日は俺のおじさんからしこたま怒られましたよ」
「そりゃそうだな」
「はい」
「…はい。ええと、畑中さん。船ですが行方不明者は?」
「テレビ見てんだろ?あの通りだ。こっちはアメリカ任せだからな」
「船客リストは結局なかったんですか?」
「ないみたいだ。だから難航している」
「あらら」
「こんにちはー。あ、畑中さんもお疲れ様です」
唯子がやってくる。
「ああ」
「唯子。おばさんから何か聞けたか?」
「ええ。苦労してるし忙しいから答えられないだそうよ。仕方ないわね。話じゃ議員も数名いたとかいないとかって話だったから。タイシ君が見たことある人たちにいたものね」
「ああ」
「それも殺されてだからなあ」
「よくまあそんな中で生きて戻ってこられたな」
「運よくかしら?」
「一番はそれかも」
「まあ、こっちも爺さん殺害の犯人捕まえられたから良かったけどな。ただやっぱり否認されてるもんだから面倒なところだ」
「あー」
「そういったもんでしょ。あとそうそう。ミオちゃんは明後日退院するから」
「ああ」
「なら俺行くからな。あとこれはとあるお偉いんからだ」
畑中が重たい紙袋をテーブルに乗せじゃあなと手を挙げ離れる。ヒカルが中を開け大量の資料と本を出す。
「あ、俺が頼んでたやつだ」
「先生が持ってた本か?」
「ああ。医学書」
「いた兄」
タイシが呆れ、唯子が目を丸くしリュックを背負った瑠奈を振り向く。
「瑠奈ちゃん」
「お久しぶりです」
「ええ」
「なんで来た?」
「見舞いだし見舞い」
「それこじつけてこっち来たんだろ?」
「そうでーす。後から食べ物ダメってことだったのでよかったら持って帰ってください。ついで兄がお世話になってる人たちのお土産もいいですか?」
「いいぞ」
タイシがため息をし、瑠奈が唯子さん達のところにもと地元菓子屋のお菓子を向けると唯子がありがとうと受け取った。
ーミオはこっちか。
瑠奈がミオがいる病室へとくると本を見ていたミオが瑠奈に気づき顔を上げる。
「瑠奈」
「久しぶりー。あと具合良さそうね。あと兄の見舞いってことで東京来たよ。とりあえず1週間いるから」
「泊まる場所は?」
「ホテル。ミオのお見舞いとかお土産はヒカルさんに渡したから帰ったら貰ってね」
「ありがとう」
「どうも。座っていい?」
ミオが頷き、瑠奈がリュックを下ろし抱くと椅子に座りリュックを膝に乗せて抱く。
「ミオ。こう言ったらだけど災難だったね」
「…ん」
「ええ。そして兄はバカたい本当。でもおかげでミオも助かったとは言えるか。一通りのことはとある変わり者さんのお仲間さんで私の護衛でついてる人から聞いたから」
「玄海さんの?」
「そう。一応本人にもその人を通してお土産とか渡したから」
瑠奈がリュックを開け中にあった細長い封筒を向ける。
「これ。良かったらミオに。私の兄さんと姉さんの結婚式の招待状」
「え?その、私に?」
「そう。兄は参加しないしその代わりにはなるけど良かったら来てよ。唯子さんがちょうど兄の所にいたからなら、その時に一緒にまた付き添いで行くって話してくれた」
ミオが招待状を受け取り、瑠奈が話す。
「あと半月後だから急ぎでハガキ出して返信してね。料理の準備とか式場が把握しとかないといけないから」
「ええ。でも、私で」
「よかよ。それに結婚式とか滅多に見れない祝い事だし、大勢の人たちにお祝いされてもらうのがいい事だから」
ミオが頷き封筒を開け中にある自分宛の名前と返信ハガキを出す。
「そっち書いてね。あと唯子さんがまた用事終わったらこっちに来てその話するって。パーティードレスとか用意したいとも話してた」
「ええ」
「うん」
ミオが招待状に書かれた結婚報告の文言。そして、出席、欠席の文字、アレルギー表記の文字を見て瑠奈に尋ねると瑠奈がこれはと答えた。
ー兄には内緒にしてたけど分かってそうだな。
瑠奈が刑務所へとくると刑務所の門番に予約表を見せ話していく。そして待合室で待たせられたあと担当者と中へと入り通路を歩くと今度は防弾ガラスで仕切られた面会室へとくる。その後、そのガラス越しにタイシ、ルナの母親が来るがそのほおはわずかにこけ前に比べ痩せていた。




