東京10
『お前の妹はうまいところを知ってそうだ』
レンタカーの予約待ちでルーカスが話すとタイシが呆れ、カルロスが話す。
『食べるの好きだからさ』
『有朋の運試しで知っている』
「えー、俺も行けばよかったー。明日行くか」
のちなど合流した有朋がレンタカーの手続きを先に終えた唯子とミオを前に羨ましそうに告げる。
「トンカツ桜は学生とかにとって並ぶの大変だから」
「そうね。二時間は当たり前だし」
「二時間も待つんですか?」
「ええ」
「俺が初めて行った時は三時間待ちで諦めた」
ミオが驚き、ルーカスがタイシを責めるとタイシがうるさいから離れろと押し問答した。
「あらまあ」
「なに?」
夕方になりタイシから飯好きなやつがうるさいからどこか案内してくれたメールが来ており、瑠奈がやれやれとし先ほどの定食屋の老婆へと話す。
「今日来た兄の知人の中でご飯好きさんがいるから美味しいところ案内してくれって」
「あら。そぎゃんか」
「はい。あ、美津子さん帰ってきたんですね」
「ええ。ついさっきよ。疲れてるから休んだよかとに」
せかせかと注文を取る女性を老婆が見て話す。その足元には頭巾にエプロン姿の少女がいたが呼ばれるとご飯を取りに向かいお客さんの元へと運ぶ。
「さっちゃん大きくなりましたね。離婚してどれくらいですか?」
「もう三年ね」
「養育費は?」
「切れた。だけん催促して給与天引きに変えたって話したい。ほんなこて」
「不倫ですもんね」
老婆が強く頷き瑠奈へとはなす。
「瑠奈ちゃんも騙されんようにね」
「その前に相手がおらんです」
「母ちゃんあがったぞー」
「はあい。待っててね」
老婆が離れると今度は少女を連れ土産用の袋に入れたトンカツを少女に持たせ持ってくる。
「瑠奈ちゃん。はい」
少女がトンカツを向けると瑠奈が話す。
「ありがとうさっちゃん。久しぶりだね」
「うん」
「瑠奈ちゃんも帰るけんがばいばいしようね」
「うん。また来てねー」
「またくるよー。美津子さん頑張ってくださいね」
「ええ。忙しくてごめんね。また来てね」
「はい」
瑠奈が袋を下げ立ち上がり店を出ると今度は電話のコールが鳴る。
「はいはい。はいもしもし」
『お前は勝手に電話をかけるなっ』
『食うためなら』
『あーはいはい。連絡あった人か。別いいけど日程とか教えてよ。予約とっておく必要あるところもあるから』
瑠奈が英語で話しやれやれとしながら歩き会話を続けた。
ーただいまー。
瑠奈が玄関を開けるとぎょっとし荒らされた玄関前に仰向けになり横たわりいびきをかく広島にいた小太りの男がいた。
「は?え?はあああ!!」
瑠奈がすぐに男の胸ぐらを掴むとほおを叩く。
「こら無職ジジイ!!起きろ!!!」
そこに兄が帰って来るとギョッとする。
「んだこれっ」
「このおっさんたいおっさん!!」
「むううう。あと、一ひゃい」
「呑むな!!」
「あーあーたく」
兄が上がりやれやれと小太りの男の腕を肩に回し持ち上げる。
「叔父さん。たく。帰ったら帰ったで飲兵衛か。ていうか鹿児島に帰ればいいのに」
「そぎゃんたい。警察の世話になってクビになってバカかっ」
「あ…」
瑠奈が気まずくいるメガネの兄の婚約者を見て顔を顰める。
「あー、こんばんは…。すぐ片します」
「いいわ。手伝うわ。ガラスも割れてるし」
「あーそっちはうちがします」
瑠奈が慌てて止め、兄が奥に寝かせてくると話し引きずり連れて行った。
「すみません本当」
扉越しに響く男のいびきを聞きながら瑠奈が紅茶を出すと兄の婚約者が話す。
「いいえ」
「悪かな本当。先に家に送ればよかった」
兄がやれやれとしながら隣に座る。
「いいわよ。気にしないで。あと、タイシくんと会ったんだ」
「あー、まぁ」
「同じ施設だったけんな」
「ええ。覚えてたらもだし、驚きそうだし」
「そぎゃんですね。そしてまさかのご縁ですけん」
「ええ」
瑠奈が頷き、兄が話す。
「なんか今度飯食いにこっちよるらしか」
「そうなの?」
「ああ」
「海外の食通が知り合いにいるみたい。兄ちゃんは休み取れそう?」
「なんとか話して見る。俺もひさしかぶり食べたかしな」
「美味しいものね。お肉」
兄が頷き、瑠奈が茶を飲むとぴろりんと音が鳴りスマホを見る。
「じいちゃんが明日から泊まり込んだ後連行するって」
「ああ。なら、逃げんようしとくか」
「無理無理。おじさん二日酔いで3日は寝っぱなしになるけんな」
「そぎゃんな」
「たしか、お店に迷惑かけて警察のお世話になって仕事もクビになって戻ってきたのよね?」
「ああ。あと嫁さん達もいい加減にしろで出ていかれたらしい」
「あったりまえたい。んとに」
瑠奈がむかむかし、兄がやれやれとする。
「まあ、徘徊したり吐いたりと、後の迷惑はかけんけんな」
「ばってん酒はくさか」
がしゃんとおとともに窓が割れると婚約者が驚き、瑠奈が呆れながらバイクの音を聞く。
「また片さないかんな」
「監視カメラついとるけん明日うちが行ってくる」
「その、まだ続いてるの?」
「若干だな。もし、続くようならこの家売って別のところ住むけん」
「にいちゃん達には申し訳なか。うちんせいで」
瑠奈がしょんぼりとし兄が手を振る。
「気にすんな」
「そうよ。そして、タイシくんを悪く言ってた人が元は悪いの。それに便乗した人たちもよ」
「そぎゃん。あとお前も悪くなかけん謝らんでよか」
「ええ」
「そぎゃんかな…」
瑠奈が表情を曇らせ、兄が気にすんなと頭を撫でた。
翌日ー。
ー昼に来る。
「なんでここに」
二日酔いの男が汗を滲ませながら父親を目の前に萎縮し父親が静かに怒り男が怒られ落ち込んでいく。
駅構内ー。
「きたきた」
瑠奈がやってきたタイシ達を見る。
「お疲れー。鹿児島巡り早かったね」
「ああ。いくところは決まってたからな。あとこっちも駅前のホテル取ってるから」
「うん」
「田舎だー」
『何もないな』
「田舎ですよー。でも老舗のレストランカフェとかいいところ結構ありますから先にそこ案内してお昼にしますね。そのあと商店街とか他にもカフェとかあるので時間潰しててください」
春樹達とが頷き十四郎がダリス達に話した。
ーまず一軒目が帝国ホテルの元シェフが営んでいる地元のカフェです。
ーうま。
古い喫茶店で出されたタンシチューをヒカル達が食べ、唯子がタンのオムライスを食べ嬉々として行った。
「じいちゃんただいまー」
瑠奈がミオとタイシを連れてくると老人がやってくる。
「おかえり。どうも初めまして」
「初めまして」
「にいちゃんの実家のじいちゃん。鹿児島の方のだよ。今ここにいるのはじいちゃんの息子がうちに上がり込んでるけん」
「ああ。迷惑かけてすまんな」
「はあ。合鍵の場所教えたのが悪かったけんよか」
「なんかあったのか?」
「あったとよ。店に迷惑かけて警察の世話になって会社をクビになっていいかげんにしろでお嫁さんたちからあいそつかされてこっちに来たと」
「はあ。よかとこに長く勤めてたとに。ほんなこて」
「しゃんなか。意地悪な性格もあったけんな」
「聞こえてんぞー」
ーん?
「え?」
よろよろしながら小太りの男が来ると顔をあげタイシ達をみて目を細めるがカッと目を開け指差す。
「あーっ。おまえらっ。いつうっ」
「は?」
「広島の事件のあったの店で迷惑かけた人だな」
「はい」
「どう言うことだ…紀夫」
老人が圧をかけ、叫んだ拍子に激しい頭痛で頭を抱え込む紀夫がまってと必死に手を向けた。
「まあた縁に縁だ。なんかありそう」
瑠奈が3人に茶を出し、紀夫には昆布茶を出す。
「女口説いて店のドアを破壊しちゃあそりゃクビになるし愛想尽かされるって」
「あと、運悪くじゃないが会社の代表の娘がいたからな」
「そ、そん、な」
老人が紀夫の背中を親指で押し紀夫がぐううと声を漏らす。
「そしてにいちゃん世話しとる刑事さんもいたわけかー」
「ああ」
「ついて、ない」
「わるかこっば最初からするけんたい」
「そぎゃん。ほんなこて。明後日帰るけんな。帰ったら畑仕事して働け」
紀夫が顔をしかめ、瑠奈がそうそうと頷く。
「でもまさか事件の店。それで兄のとこの施設の人と家族の店だったなんて」
「ああ。あと、こっちもまさかか」
「うん。施設の人だったのはうちも後で知ったけん。家に彼女連れてきて、兄がしまった写真見てから知ったからねー」
「…」
「写真は…」
ミオがきょろきょろとし、瑠奈が上を指差す。
「アルバム部屋があるとよ。そこに飾っとると。親しくなった人とか友達とか身内しか見せとらん。後でミオにも見せるから」
「うん」
「こういった部屋には飾らないのか?」
「まあ飾ってたけど、まあ、悪さする連中がいてさ。だけん、一つの部屋にまとめて飾るようにしたの」
「それは、俺が指名手配されてた時か?」
「ま、そぎゃんね。ただ今はこっちが訴えて金取る予定。なにせ、窓わられたりにいちゃんに嫌がらせしたりしたけんな。学校に行かなかったのもそれが理由。ネット社会はこわかけんね。すぐにうちの兄って流れたとよ」
タイシが頷き、紀夫がぶつくさ話す。
「殴り返せばいいんだ」
老人が再び親指で紀夫の背中を押すと紀夫が苦しみ唸っていく。
「それができたら苦労せん。で、逆に迷惑してきた奴らが今度は苦しむ羽目になったと。ここあたりは繁華街で周りのみんなよくしてくれる人が多かけんね。うちらに対して虐げてきた連中は出禁になっとるとたい。友人が連れて行ってもそいつらだけは入れん。そして、逆に警察の世話にもなったけん学校に入るのにも苦労したとか聞いとる。それは当たり前。犯罪行為を行ったけんな。社会的制裁たい。そして昨日もまた嫌がらせしてきたけんな。あー腹立つ」
「割れてた窓か?」
瑠奈がむすっとしながら頷く。
「そぎゃん」
チャイムが鳴ると瑠奈が立ち上がり玄関へと向かう。そして扉を開けるとむさ苦しいスーツの男達を見て眉を顰める。
「どちら様ですか?」
「鬼坂瑠奈さんですか?」
「そぎゃんですけど」
男が紙を出すと瑠奈が受け取り見る。
「連帯保証人。何か覚えは?」
瑠奈がちらりと男の数名の袖口から見える刺青を見てはあとため息する。
「まったく。と言うよりなんでうちに嫌がらせしてる馬鹿の保証人にうちがなってるんですか。それでうちに何かしますか?」
「いやいや。確認だけです。おい」
「へい」
「確認?」
「瑠奈」
「ってくんなし」
瑠奈が呆れながらやってきたタイシへと突っ込み男がタイシを見る。
「ああ。元手配された苦労人君か」
「兄貴。本人がそこの嬢ちゃんに書かせたって言ってますぜ」
「本人は現在進行形でなんばしとっとか」
瑠奈が呆れ果て、男が話す。
「金返さねえからな。あと、警察さんに俺らが暴行したと嘘吐いてくれたり、俺らの家に石投げてくれたもんだからな。カメラに映ってるんですぐにわかった」
「あいつは馬鹿か…」
タイシが保証人の瑠奈の名前を見る。
「なの文字から間違ってるな」
「そぎゃんたい…。あと、あいつの家の家族は?親はどうしたと親は」
「今行ってもらってるところだ。それと誘拐も換金も脅しもしてねえ。俺の女1人に任せて隠れて見張ってるだけだからな。電話はそのガキが出て答えてるだけだ」
「なら自由にしてるってわけか…」
「300万か。瑠奈と同じ歳なら中々ではあるな」
「同じ歳。後そいつがSNSにうちらの関係ばらした本人でいじめの主犯。うちが今裁判で争っとる相手とその家族」
タイシが頷き、男が話す。
「地主だとかなんとか口だけの連中だからこっちも参っててな。あと、そのメガネが来たら俺らがきたこと伝えといてくれ」
「はあ。ま、伝えられたら伝えます」
「ああ。後それはやる。行くぞ」
「はい」
男達が去っていくと瑠奈が呆れつつ見守る。
「八坂邦弘。名前は立派だな」
「そぎゃんね。あと、これやると言ってもなあ」
「とっとけ。後八坂。どっかで聞いたな」
タイシが考えながら中へと入りスマホを出し畑中の番号を出す。
「確認?」
「ああ。畑中さん。お尋ねです。八坂といえ苗字で思い当たる人知りませんか?」
『八坂?』
「ええ」
『あー、待ってろ。掛け直す』
ぷっと通話が途切れる。
「瑠奈ちゃん。なんだった?」
「ヤクザさん方の来襲。嫌がらせしてる馬鹿がヤクザに借金しててうちの名前使って保証人にさせてた。といっても名前違うし文字違うし。向こうも知ってて相手を泳がせてるって話」
「全く迷惑なやつめ」
老人がやれやれとしながらその紙を見る。
「それはやるって言われて渡されたコピー。あと、ヤクザさん達の家にも石投げた嫌がらせしたみたい」
「ああ」
スマホが鳴るとタイシが耳に当てる。
『八坂あったぞ。お前に対してSNSに嘘八百言いふらして開示請求した1人だな。侮辱と名誉毀損で裁判所から訴えられてるとこだ。熊本だろ?』
「はい。話した妹宅に石を昨日も投げて窓を割ってます。あと先ほどヤクザの方が来て妹の名前を勝手に使って300万の保証人にさせてますね。向こうもわかってるので念のためと妹に本人確認させにこられましたし、そのヤクザの方の家にも石を投げて逃げたそうです。八坂邦弘という妹と同じ歳の未成年です」
『やれやれだな。受験のうっぷんはらしか。なら、話して調べてもらう。後証拠写真とか送ってくれ』
「はい。お願いします」
『ああ』
通話が途絶えると瑠奈が呆れ果てる。
「兄のとこでも訴えてんだ」
「ああ。俺以外にも名指しで嘘八百ついてるけど俺が酷いから代表で出してるんだ。同一人物だ」
「救えない馬鹿…」
「ああ」
「…たく。がきってのは」
「お前はいい年して警察の世話になっただろうが」
「そぎゃんたい」
紀夫が顔を顰める。
「奥さんと話は?」
「…してねえ」
「はあ。俺からまずする」
とつじょチャイムが何度もけたたましくなると瑠奈が苛立ち立ち上がるがタイシが抑え座らせる。
「ちょっと…」
「隠れてスマホで映しとけ」
瑠奈がため息しミオがオロオロする。そしてタイシがスタンバイした瑠奈を見て扉を開けるとフルフェイスのライダー二人のうち1人が拳を向け襲いかかる。瑠奈が驚き、タイシがつかみかかってきた男の腕を掴み止めもう一人は首を掴みフルフェイスをぶつけ合う。
「がっ」
「い」
男達がよろめき一人が尻餅をつくとすぐに後退りする。
「な、なんだよ。おいっ」
「っだれだよ、こいつ」
「お前ら何しようとしたんだ?正直に話せ」
2人が震えすぐ何気の態勢に入るがタイシが2人を掴み地面に押さえ込む。
「す、すみませんっ。ごめんなさいっ」
「いいますっ。いうからっ。痛い痛いっ」
瑠奈が動画を撮りながら姿を見せ呆れる。
「兄。そいつらあいつから金で雇われた下っ端。ヤンキー」
「そうか」
そこにパトカーが到着すると警官2人が降りる。
「う、嘘だろっ」
「お前らこい!」
警官達がタイシに代わり抑えるとフルフェイスを外す。そして金髪に染めた青年達の顔を出し立ち上がらせる。
「俺らまだ何もしてねえっ」
「いや。兄に殴りかかってんからね。拳向けて」
「おい」
2人がどきっとしタイシが話す。
「もらうなら自分たちで時間かけて真っ当な仕事した金だけにしとけ。楽にもらってやる金の仕事はやめろ」
2人が押し黙りタイシが話す。
「まだ怪我人も壊されたものもないからな。だからよく理解しておけ。そして自分のこれから先の一生を今みたいなただの数分のための行為で棒に振る事はやめろ。俺からは以上だ」
「…」
2人が小さく頷き大人しく警官達に付き添いパトカーへと乗り瑠奈が話す。
「どうもありがとう」
「はあ。それは俺の担当者に送るからくれ」
「分かった」
瑠奈が送信するとそろっと兄の婚約者がやってくる。
「早希」
「えと、久しぶり。後何かあった?」
「嫌がらせ連中の下っ端が連行されました。兄に言われて反省してるのでもう何かするとは思いませんね」
「ええ」
「あとー、人目あるんで中に」
近所のもの達が心配そうに見つめており瑠奈が話すから中先に入ってとタイシに告げるとタイシが早希と共に中へと入った。
ーもしもーし。
眼鏡の青年が十四郎とガタイのいいヤクザの男の間に入り縮こまり項垂れ、後ろで唯子が学生証を見ながら父親へと連絡する。
「聞こえてますか八坂さん?オタクの息子さん。私の服汚した上にいちゃもんつけてきたんですよ」
『そ、その』
「知らなかったではすみませんけど。あと、場所教えますからすぐこれます?オタクの息子さん色々問題起こしてるようですからその件についても詳しく教えて」
からんと音が鳴るとタイシとミオが来ていかつい男がああと声を出す。
「また会ったな」
「兄貴お疲れです」
「何してんだ?」
「ならまた後で」
「あ、服」
ミオが唯子の傍へとくると唯子がむすっとしながら汚れた服を見せる。
「そうよ。虫の居所が悪かったからとかでわざとジュースかけられたからおさえたわこのクソガキを。それで学生証の名前見たらタイシくんの誹謗中傷した餓鬼な上に十四郎君のお父さんのとこの知り合いのお家から金借りてんでしょ。さらに調べたら私の父の会社の下請けって分かったから今父親を呼び出したのよ。これオーダーメイドで10万するのよ」
「十万…」
ミオが汗を滲ませ、タイシがやれやれとする。
「こっちはさっきその八坂邦弘の下っ端が家に押しかけてきて殴りかかってきた。俺が出たから止めてそのまま警察に渡した」
「はあ?」
「なあ」
青年がびくっとし、男が睨み圧をかける。
「未成年だから謝って済むと思うなよ。あと、俺らがヤクザだからと警察にさえいえば大人しくなると舐めてきたよな?」
「そ、の」
「この服と私に対する傷害で訴えるから。10万以上の請求させてもらうわよ」
「こっちは300万貸した金返してもらう」
「俺の方は自分と妹の訴え分。それから妹宅に対する器物損害の賠償金も含めて合わせて600万だな」
「ああ?」
青年が震え唯子がいらっとする。
「あんた。やっていい事悪いことの区別ついてないわね」
「う、う」
眼鏡の青年が震え涙を落とした。
「ちよっと!邦弘ちゃんは何もしてなっ」
パトカー2台が店の前に止まっている場所で唯子が声を荒げた母親の口を手で塞ぎ苛立ちながら服を見せる。
「してんのよ。ばっちり。被害にあったみーんなの分。分かってるだけで合わせて被害額であり訴える額約1000万。オタクの息子さんがやってきたことよ」
母親が汗を滲ませる。その足元に父親が土下座して震えていた。ミオがぎこちなく動き止めようとするもヒカルがミオを押し遠ざける。
「やめとけやめとけ。ミオとか何もされてないししてないからな」
ヒカルがミオをダリスの元に連れてくる。
「しかし、唯子の家兼ミオの親族の力はすごいな。でもそれだけ実力出して仕事してきた結果でもあるからな」
「その、はい」
「ああ」
そこに黒塗りの車が来るとやれやれと畑中がおりタイシのところへと来る。
「唯子嬢にジュースぶちまけたのか」
「ええ。腹いせのようです」
「たく」
「おつかへははれす」
有朋が芋を潰し混ぜた餅を食べながらくる。
「それなんだ?」
「牡丹餅。ただここの牡丹餅は潰したから芋を餅と混ぜて作ったやつで地元の名産品。俺の好きなものの一つなんだ。ここからも依頼くるから行ってる間にお邪魔してお祓いしてもらった」
「そうか」
有朋が頷き牡丹餅を食べる。そして青年がパトカーへと乗り両親が車に乗りパトカーの後を追う。
「あーーーっ。腹立つわ。んっとにあのクソガキ」
唯子がむすっとし畑中がやられたなと服を見ていくと唯子が強く頷きムカムカしていった。
翌日ー。
じゅーと音が響く中、唯子が目を輝かせながら店員が鉄板で焼く肉をスマホ動画で撮りながらうきうきと待っていた。そこにミオ達一同も揃っておりミオが真剣な眼差しで焼かれる肉を見ていく。
「なら、このままでもいいですがお好きな焼き加減に焼いて召し上がってください」
「はい」
ミオがこくっと頷き、早速ナイフとフォークを使い切り出す。
「神社の人かー」
「そうだよ」
有朋がニコニコし瑠奈が話す。
「なら春光寺と田原坂の」
「そこは行きたくないねー」
「知ってんですね」
「もちろん」
「西南戦争?もしかして」
唯子が尋ね、瑠奈と有朋が頷く。
「そうです。激戦地で今も出るので有名なんですよ。あと、激しい銃撃戦が行われた場所。言えば銃弾が撃ち込まれた壁とかあちらこちらと残されたままなんですよ」
「へえ」
「特に田原坂は行きたくない。一回じいちゃんにこれも勉強と言われて連れて行かれたのが最後。恨みつらみの怨恨ばかりで東京までしつこく着いてきたもんですから参りましたね…」
「悪霊の類?」
「ええ」
ミオが驚き、瑠奈が話す。
「春光寺は西南戦争の西郷軍の傷病場所でもあったんですよ。まあただ、無理矢理そのお寺を使われたということもあります。あと、そのお寺ですが天皇家やこちらの地元の将軍と縁深いところでもあり、将軍家の方々のお墓も管理されてるんです」
「なら立派なお寺なのね」
「はい」
「あと、宮内庁が管理する天皇家のお墓もその近くにあるんです」
「後醍醐天皇の息子の懐良親王王子の墓ですね。平安時代に波瀾万丈だった方の息子です」
「そうそう。その皇子もわずか八歳で将軍の地位を授けられた苦労人でもあるんですよ」
「その通り」
「へえ」
「八歳で将軍…」
「そう。彼方で最後はなくなったからお墓があるの。あと、第二次世界大戦頃なら人吉に海軍航空部隊司令部があるよ。墜落した零戦の残骸とかも博物館に飾られてる」
「海軍航空部隊」
「あった。最近できたのね。後魚雷製造をしていた壕もある」
「魚雷というと、海の爆弾」
「ええ」
「そう。薄暗い狭いところで危険を省みず作られてたって話。あと、若い人たちの兵舎もあるって」
ミオが頷き、瑠奈が話す。
「後そう言えば、ここじゃないけど空襲もあったんだ。そこも幽霊スポットになってるんだけど今じゃ大型ショッピングセンターがたっているのよね。ショッピングセンターが立つ前は工場。その前は空軍基地だったけどそこは空襲にあって全滅。そしてその後その工場地帯になって工場が立ってたんだけどただ廃業したあとしばらくは建物がそのまま残されて廃墟になってたの。そして、そのショッピングセンターを作るってことになった時に調査したらいくつもの首吊り自殺者の骨があったそうなんだよね」
「はあ」
「そして、供養された後建てられたけどしばらくそのショッピングセンターの2階の柱に頭だけが出て買い物客を覗き込む幽霊がいるって話」
「それは初知り」
有朋が話、瑠奈が告げる。
「地元民しか知らないことですから。あと覗くのは男の人とかって話ですよ」
「ええ」
「行ってみようかな」
有朋が考え、ヒカルが突っ込む。
「シュンコウジ」
「そこはご遠慮」
「ならなんでそこはいくんだ?」
「まあ、霊との会話で知り得られる情報もあるからと言うところか。あと会話というか念のようなものかな」
「念ねー」
「そうそう」
「いくなら場所ここですよ」
「ええ」
瑠奈が教え有朋がここかと覚えた。
ー明美ちゃんが。
店の外で眼鏡の女が表情を曇らせ、タイシが話す。
「まだ行方知れずだ」
「ええ」
「同じ施設の子か」
兄が話し、女が頷く。
「そう。元気な女の子なの。後でおじいちゃんに引き取られて施設を出たのよ」
「ああ」
「両親が絡んでるそうで捜査網してたんですが逃げられたそうです」
「そうか。ならまだ発見も逮捕も時間がかかりそうだな」
「ええ」
「せめて、怪我とかなかったらいいけど。酷いこととかされてなかったら」
「そうだな」
「そこは警察に任せるしかない。それより、式を挙げるんだろ?」
「ええ。12月に。もしタイシ君」
「いや。俺はいい。祝いだけ渡しておく」
「そう…。分かったわ」
タイシが頷き、兄が話す。
「でも、なんというかよかった。八坂がようやく大人しくなったからな」
「そうね。ずっと困ってたから」
「早希には何か嫌がらせとかは?」
「私は無かったわ。この人が気を使ってくれてたから」
「ああ。まあ、あとは家の嫌がらせと瑠奈をターゲットにしてたからな。あいつは瑠奈が頭が良かったのが気に食わなかったのもあったみたいだ。瑠奈がテストで一位を続けて2回経った時からいじめがエスカレートした。最終的に俺と瑠奈の両親が事故死してから家への嫌がらせも始めたんだ」
「そうだったんですね。なら、守る大人が消えたから」
「ああ」
「それから、タイシ君の手配ね。最近そっちもタイシ君個人の恨みで行ったってニュースで流れたから驚いて」
「はあ。まあこっちも学校がらみの継続になるな…」
「そう」
「瑠奈も頭が良いからな。でもそれに嫉妬して妨害するのはおかしな話だ」
早希がそうねと頷き兄がやれやれとする。
「にいちゃん。唯子さんがお土産にってお肉買って貰った」
「うわ、またありがとうございます」
「良いですよ。こちらも美味しいかったですし今度家族連れてまた来ます」
唯子が兄に肉を渡すと兄が頭を下げた。
翌日ー。
「ならおじさん。働け」
紀夫が顔を顰めながら老人に押され車に乗り込む。そして瑠奈が見送る中老人が運転する軽トラが走り去る。
「あー、これでまず一つスッキリ。そして、別に謝りにこなくていいのに」
瑠奈がやれやれとしながら家の中へと入る。そして昼、項垂れた青年2人が保護者の母親達ともに瑠奈の元に謝罪に来ていた。
「その、すんませんでした…」
「すいません…」
「はあ。反省してるならよか。あと、貰ったお金は八坂に返した?」
「ああ」
「俺も返した…」
「ならよか」
「本当ごめんなさいねえ。息子が」
瑠奈がわずかに笑んだ母親を見て更に項垂れた青年を見る。
「あとこれでいいかしら?」
「こっちもね」
もう1人の母親はすましており、瑠奈がやれやれとする。
「2人は結婚する気ある?彼女いる?」
「えと、まあ」
「いる…」
「あらそうなの?誰?」
「誰って、教える必要ねえだろ…」
青年が力無く答え、笑んだ母親が話す。
「知りたいけどなあ」
「うちの母親もまともじゃ無かった」
その笑んだ母親が止まり、もう1人がわずかに睨む。
「も?なに?あなた犯罪者の子でしょ?一緒にしないでくれる?」
「私も同じ。同感」
その笑んでいた母親がうんざりとし、瑠奈が話す。
「誠意を込めて謝罪しに来た2人なのに、母親がその誠意に応えずにいる。だから子供と話し合えない分かり合えない思うことがわからない。この歳で反抗せんのはあんたらに関わるのが嫌だからでしょ」
2人が鼓動を高鳴らせ、瑠奈が話す。
「甘やかせて好きにさせて子供がやったことだからでなにもかも終わらせる。親なら親で責任持たんか。そして子供が嫌と思うことを嬉しく思って肯定する。つまり、あんたらの子供に対する地味な嫌がらせがストレスの原因たい。あんたら2人はこれから先絶対に嫌なお姑さんになるね」
「何言って」
「あんた達こそ反省しとらん。子の責任は親の責任。そしてうちは何も悪さしとらん。なのになんで犯罪者の娘だからと頭下げる必要なしと決めつけると?あんたら母親2人の行動が子供を悪い道に走らせる。今のあんたら2人の言動や行動はこれから先の子供のためを思ってなか。それが子供を持つ母親のやり方か?」
2人が黙り込み、瑠奈が話す。
「子供を放置せずに子供の責任を他人任せにせずにすんな。ちゃんと子供にも他人にも向き合って先の事や何が悪かったか話し合わんか」
「そ」
「ごめん…」
「こっちも、ごめん…」
青年達がさらに項垂れると母親達が無言となった。
ー疲れた。
瑠奈が家の中へと入り大きく息を吐く。
「たく」
ピンポーンとチャイムが鳴るとルナが顔を顰めながら玄関へと向かい扉を開ける。そこにアロハシャツに冬のコートを着た小麦色の肌にサングラスの男が笑みを浮かべたっていた。
「アロハー」
瑠奈がげんなりとした顔をさせスマホを軽く上げ110の番号を見せると男が慌てて止める。
「まってまって。あやしいのじゃないから」
「怪しさ満点ですけど。あんた誰ですか?」
「はいこう言ったものです」
男が名刺を出す。そこに工藤玄海と書かれており、何でも屋と書かれていた。
「何でも屋…。玄海」
「そうそう。名前の通り自分限界までなんでもしますって事で。なんちゃって」
「…」
瑠奈が扉を閉めると玄海が話聞いて話とチャイムを鳴らしノックを必死に行った。
玄海が家の中へと通されると瑠奈が呆れぶつくさいいながら茶を作っていく。そして茶を出すと玄海がどうもと手を挙げ早速飲む。
「で?実母に頼まれたって何をですか…」
「うん。君の事を裏から守る事だね。人身売買組織が動いててね。タイシ。君のお兄さんを追ってきた連中が君の存在を知って狙ってるんだよ」
「はあ…」
「ま、それで刑務所からの手紙で頼まれたんだよ。それがさっき見せた手紙」
「まあ、はあ」
玄海がケラケラしながら話す。
「信じきれないのは仕方ないね。ままとにかく、瑠奈ちゃんも危険。そして、瑠奈ちゃんの家族も巻き込まれるかも知れない。タイシ君の知り合いのお家みたいにね」
「同じ施設で居酒屋さんしてたところの?」
「正解。明美ちゃんだったね。まだ見つかってないでしょ?そして祖父を殺した両親は捕まってない」
瑠奈が頷き、玄海が両手を合わせ楽しく話す。
「瑠奈ちゃんはもう一つ世界があること。信じる?」
「もう一つの世界?」
「そう。それも魔法や魔獣と言った危険な生物達がいる世界。もちろんそこに人もいるよ。だけど人以外の人種でエルフ、ドワーフ、小人もいる。ここで言えばファンタジーの世界だ」
「はあ」
「タイシ君はその世界に連れ去られてまたこの元の場所へと戻ってきたんだよ。わかる?」
「……」
「やっぱ信じらんないよねー」
玄海が楽しく手を振り瑠奈が呆れる。
「まあとにかく、そんなこんなでその世界から元はタイシ君とともに来た子を求めた連中がついてきたけど、今はタイシ君目当てできた連中が隙あらばで狙ってるんだよ。知り合いについては両親がカジノで借金をした返済と金欲しさの目的で出来のいい若い娘がいるって事で売買組織に高値で売りつけたあと、また金欲しさに店を襲った結果だ。そして、その子はもう向こうの世界にいる」
「なら、その両親は?」
「んー、僕の勘だと同じく向こうかな」
チャイムが鳴り響くと瑠奈が今度は誰だと立ち上がり扉へと向かう。
「やっぱ簡単には信じないね」
玄海が小さく声を漏らしずっと立ち上がる。そして瑠奈が扉を開ける。
「はい」
かちゃりと音が立ち銃が額に当てられると瑠奈が目を見開く。
ーえ。
「あちょ」
玄海が男の顎に手刀を当てそのまま男を昏倒させ倒すと瑠奈がよろめき玄海が後ろで支える。
「分かったかなー。あとそいつちょっと縛って話したいから家あげてもいい?裏の人間だから」
「……」
瑠奈がすっとスマホを出し視線を玄海へと向ける。
「そのタイシ。兄が来てます」
「ん?」
玄海の背中に硬いものが当たると玄海があははと笑い両手を上げる。
「ここ裏口あったっけ?」
「ない」
「窓から入った。中に入れ」
「いいよ」
「どっか別のとこにしてよ」
瑠奈が呆れ突っ込みタイシが無理だと告げると瑠奈がため息をした。そして、玄海が昏倒させた男をタイシが縛り上げ、今度は口の中を見て歯などを確認する。
「あるな」
「毒仕込んだのが?」
「ああ。そのニッパーを取ってくれ。あと、そこの棒と布」
瑠奈がため息し、両腕を後ろ手に拘束され椅子に座った玄海が話す。
「手慣れてるね」
「そうだな」
タイシが棒を加えさせ布を当てるとニッパーで歯を挟みひく。すると男が目を開け頭で唸り苦しむもタイシがそのままその場を引き抜くと男が汗を流しふうと息を荒々しく吐き出しながらタイシへと視線をむける。
「それどうするの」
「燃えるゴミにだす。血が落ち着くまで噛ませとく。そして先にそこのアロハシャツの男だ」
「ああアホシャツの男ね」
「ひどいなあ。工藤玄海って名前だよ。君には名刺見せたでしょ?」
「あんた確か捕虜じゃなかったか?」
「は?捕虜?」
「ピンポーンっ。正解」
「は?」
玄海が楽しく笑み、タイシが話す。
「どうやって逃げ出してここにきた?」
「普通に脱獄して。元々ここが僕の住む場所だからね。そして僕は何でも屋だ。イーロンには仕事できていたんだよ。ちなみに雇い主は大統領」
「イーロン…」
瑠奈がタイシを振り向くもタイシはまっすぐ玄海を見ていた。
「なんでここに来て瑠奈に接触した?」
「君の実母からの依頼だよ。君が話して相当反省して君がここにいるなら自分の娘でもあるその子が目の前の奴みたいな連中に連れ攫われると予測したみたいだね。どんな形であれ、どんな事情であれ腹を痛めて生んだ子供だからこそ心配したんだろうね」
「今さら心配されても困るんだけど」
「それを僕に話してもというところだ」
「大統領は生きている死んでいる?」
「死んだよ。だから僕の依頼は依頼主が死んだ時点で終わり」
「…えと」
「なんの依頼かは教えてくれないのか?」
「別に教えてもいいけどー、これ外してくれたら教えるよ」
「あのさ。あのさあ」
瑠奈が声を上げ複雑そうにする。
「兄。その、もう一つの世界って本当にあるの?」
「だそうだよ」
タイシが気まずくする。
「ある。ここにはない力を持つ世界だ。そしてここにはいない凶暴な生物もいる」
「そう。話した通りファンタジーの世界でね。そして見た目は中世に近い世界でもある」
「ああ」
瑠奈が顔をしかめ、玄海が楽しくし自分を睨む男を見る。
「そんな睨むなよー。なんでもやって話したじゃん」
「元仲間か?」
「ああ。イーロンの諜報員でね。俺と同じ向こうとここを行き来する1人。ただし、行き来きの方法は違う」
玄海が男から視線を外しタイシを見る。
「君も知ってると思うけど異界の扉。その扉を開けるために人柱。いわば生きた人間を材料に使って扉を開けないと開けられない。彼はそうやってここに来た」
「ならそちらは?」
「僕は特別な人間で特別な体質でね。自分で自分専用の異界の扉を開けられることができる。それもノーリスクで。ただし、通れるのは僕だけであり、開けられる場所は限られている。だけど、持ち物は持っていける。僕が身につけられるもののみに限るけどね」
「なら、車に乗れば車ごと通れるな」
「勘がいいね。そうだよ」
「大統領の命令の中にはそれも含まれるわけか」
「ズバリその通り。僕があの国にここの機械を送っていた。武器も何もかもね」
タイシが頷き、玄海が話す。
「でも、あの戦争が突然起こったのは僕も予想外。そして、君があらゆる手を使って重要人物を即座にとらえていった。僕の場合その中の連中に紛れて逃げようとしたら君の見事な罠にかかって捕まったというわけだ。あと、僕今結構日焼けサロンに行って小麦色に焼けてるんだけどよくわかったね」
「日焼けサロンって…」
「わかるだろ普通に」
「あははは」
瑠奈が呆れ、タイシが話す。
「拘束をとくから話して欲しい」
「了解。あ、瑠奈ちゃん。よかったらまたお茶おかわり」
「するかっ」
瑠奈が呆れ声を出し玄海がいいじゃんかあと文句を言った。
瑠奈が呆れつつ茶を飲み、玄海が瑠奈が入れた茶を飲みつつ拘束されたままの男を指差す。
「名前はショーン。元イーロンの諜報員で今はイーロンに協力していた組織の一つに所属というか、部署変えだな」
「複数の組織があったことは確認できている。ただ、わかっているのはオラクルとミゼラルのみだ」
「その二つは雑魚組織だ。いい人員がいない。いい人員がいないと言うのは瑠奈ちゃんを襲いかけたみたいな奴がいない。つまりここと通じている関係者にわりかしいいのがいないと言うわけだ。そして、その二つの組織を隠れ蓑にしてさらに二つの組織がいるんだな。その二つは組織名は名乗ってない。隠れ蓑にしているからってのもあるけど、組織として一団を作ってない。担当者のみいる。その担当者がそれぞれ役割を果たして活動をする。あと、担当者がいるからと言って組織じゃと思うけど違うだなー」
「受け持ちってことでしょ?学校で言えば担任でその担任は生徒を請け負っていると」
「そうそうそう。その通り。あと、学校だと生徒は選べないから、工事やプロジェクトと思えばいいかな。そしたら人員が」
「どーでもいい」
「どーでもいいって言うなよ瑠奈ちゃん」
瑠奈が無視をし、タイシが話す。
「なら、死徒について、仲間と連携した連中もいたがそれは隠れ蓑の奴らか?」
「本当君頭良すぎるし勘が良すぎるね。だから君恐れられてるしその力を使いたい。もしくは君の意思を多少残しつつ一応おどしでもなんでもいいからで君を使いたいって連中が狙ってるんだよ。イーロンでも結構話上がってたし、タイシくん。来た当初はただの雑魚と思われて使い捨て扱いされたけど、その雑魚が、まさか国を潰すほどの力を持っていたなんてと思った連中が多々いたよ」
「国を潰す?」
「そう。イーロン国の裏の立役者が彼。イーロン国に潜入して大統領やら国にとっての重要人物達にもう大胆にも接近し情報を集めてアストラルという国の彼の養父に情報を送っていたスパイとして働いていたんだよ。僕は大統領の近くにいたからね。君のことはその時初めて見て疑いとか、興味とか持たなかったよ。ただただ、大統領の知人の子供かと思ったよ。そうしたら全く違ったからビックリしたもん。知ったのは戦が始まった時で君の罠にはまった時だよ。成長した上、アルスラン将軍の直近部下として若くして部下達の指示をしてた君を見て驚いたもん。今の瑠奈ちゃんくらいの歳で50人ほど従えてるって聞いたから」
「まあ、兄ならそれくらいやってのけそう」
「お?またどうして?」
「なんていうかさあ」
瑠奈がやれやれとする。
「この兄。学校行かずに学校の仕事させられてたんだよ」
「仕事?」
「そう」
タイシが気まずく話す。
「いや、その前になんで…」
「そりゃ、にいちゃんの婚約者からの話。警察にそのことも伝えたのかなって言ってたし」
「…」
「なになに何してたの?子供が、大人の手伝いをしてたわけ」
「聞くな」
「いや聞きたいじゃん」
タイシがうんざりとし、瑠奈が話す。
「本人から聞いて。あととにかく50人従えるのは出来ると思うよ兄なら。あとなんだかなあ」
瑠奈が両手を前に出し机に突っ伏す。
「一応血の繋がりのある兄だよ。でも実際会ってたのは覚えてるだけでも10回もないくらい。それが突然の行方不明の後バカ警官とバカ男のせいで手配されてさ。まあ後々それも取り下げられて今じゃ可哀想な人になってるけどさ」
「でもさ瑠奈ちゃん。君も苦労したんじゃない?」
「あー、もうその前からだからいいわ。あと、うちみて嫉妬したバカボンのみ付き纏いしてきたからさあ。いまそのバカボンもよーやく警察のお世話様になったからうるさくなくなったって奴。まあこれからどうされるかもどうなるかも知りませんけど」
「神のみぞ知るって奴?」
「神なんて人の妄想だし」
「ロマンないね」
「ロマンで生きてもいけないし腹も満たされんわ」
瑠奈が呆れつかれながら突っ込む。
「ていうか、異世界云々についてウチは実際見て行ってからじゃないと納得しないから」
「えー」
「えーじゃないし。後あんたしか通らないならあんたの血を全身に纏っていきゃ通れんじゃん」
男が玄海へと視線を向け、タイシが確かにそうだなと向け、玄海がけらけらと笑う。
「いやそんな吸血鬼みたいな怖いこと言わないでくれる?後そこの2人はその視線何?いや本当マジ怖いんですけど」
「出来なくないんじゃない?」
「ああ。出来なくはなさそうだな」
「……」
玄海がふっと笑うと慌てて答える。
「いやまじやめてよ。どうあれ俺の血がいるならどんだけの血液量になると思ってんのさ」
「人1人の体重の13分の1が血液だ。だからあんたが70ないなら約5リットルほどでそのうち致死量は1リットルを越えなければ」
「マジな計算と話やめてくんない!」
「別に一日かけて取るんじゃなくて、日数分けて取ればいい話じゃん。あとはその血液の保管場所だよ保管場所。でも精製してから保管しないと」
「ああ。あと、精製した時に赤血球、血小板と分かれるからその方法も利用しなくはないな」
「あーなら、赤血球がよくない?数多いし約1ヶ月は保管できるし」
「君らさらりとすごい会話してくれんね。あとそう言ったのどこから仕入れてくんの」
『ネット』
男が視線を向け続け、タイシが話す。
「なら、俺も金払うから血液を提供してくれ」
「マジですんのかよっ」
「当たり前だ」
「兄」
タイシが瑠奈を振り向き瑠奈がやれやれとする。
「もうそこに兄の場所があるの?」
「ああ」
「…ふーん」
「何寂しい?いなくなったら寂し」
瑠奈が足で玄海の股間を蹴ると玄海が突っ伏し震える。
「まだ実感ないけどさ。ないけど、兄にとってここは居心地いいとは思ってない感じはしてたから。感じというか、兄だけど別のところからここに初めましてーで、なれませんよーと言う感じ。そして、なんか早く戻りたいってうずうずしてるもん」
「ああ」
玄海が腰を叩きながら聞き、タイシが話す。
「その通りだ。みんなには悪いが」
「別に悪くないよ。みんな分かってる」
瑠奈が体を起こし玄海を指差す。
「ただしかー、私としてはまだ納得してないんだよね。本当にその世界があるなら見たい。見た後はこの人の血で行き来できるならまたここに戻る。私の場所はもうここにあるからね」
「ああ」
「いやああじゃないよオタクら兄弟」
玄海が呆れ両手をつき立ち上がる。
「俺の扱いひどくないか?」
「別に」
「献血代は払う」
「献血代言うな」
男が鼻を鳴らし、玄海が指差す。
「だいたいそいつも行き来してるぞ」
「人柱を使ってだ。その方法はなるべく行いたくない」
「だねえ。あといいじゃん。400mlくれるだけだし。そして血液が元に戻るまで3週間ほど」
「ああ。そして保存期間を考えると合わせて800は」
「あーもう分かった!」
玄海が声を上げる。
「車に俺と一緒に乗れば向こうに行けるっ。前もそうやって大統領含めて人員移動させたっ。俺と、一緒にだっ」
2人がダンマリとし、男がおかしく鼻を鳴らす。
「やっぱ出来んじゃん」
「ああ。なら車は中古のファミリーカーを買って使おう。向こうでまた帰りに使えばいいな」
「だねー。それなら人数も荷物も充分運べるし」
「ああ」
「俺お前ら嫌い!」
玄海がだんと音を立て机に突っ伏し、瑠奈がどうもと告げ、タイシが輸送賃は払うと告げた。
ー稀血ですね。
ダリスが顔をしかめ疲れ果てた玄海を見て話す。そこは繁華街の中の空き店舗で中にはダリス、タイシ、ヒカル、気まずくするミオと縛られた男がいた。男はくつわをされたままの状態で直接床に座っており、タイシがシャッターを下ろし隠すとヒカルがその男のくつわを外す。
「さあてと。あんたは日本語。英語。どっちも話せる?」
男がヒカルへと視線を向けるがすぐにそらす。
『あの、稀血とはなんですか?』
『ええ。彼みたいな人にはない特別な力を持つ方のことを言います。それはその人物しかない力。ミオ殿の場合予言に関しては稀血に近いものです。近いと言うのは父親母親が同じ力を持っているからになります。つまり、複製になります。ですが彼のような彼自身のみしか使えない力は複製はおそらく不可能。そう言った力を教会では稀血と呼んでいます』
ミオが頷き、ヒカルがタイシから聞き話す。
「魔導局。こっちは奇跡の子だな。いや外見に関しては別としてだけど」
「なんだよ。いいじゃねえか人の見た目くらい好きにさせろ」
玄海がむすっとしながら答え、タイシが話す。
「ギルドやアストレイとかではないな。特に特別な力を持つとか関係ない仕事や国でもあるからな」
「まあ大体マッチョがーと、そうだそうだ。そのギルドだ」
「ギルドがなんだ?」
「ああ。まあ、オタクらが消えてからすぐになるからな。つまりここにきてすぐだ。砂漠のギルドを仕切っていたテオドロスギルド長がAクラス5人と共に殺された」
タイシが驚愕しミオもまた驚く。
「致命傷は腹部に風穴を開けられたことだが、四肢も全て切断された状態でおたくらがここにきたきっかけとなった海から引き揚げられたそうだ」
「そんな…」
『なんです…』
男が小さくハッと笑う。
『最強と言われたギルド長もたいした事がなかったと言うことだ』
ダリスがおかしく笑った男へと視線を向けタイシが話す。
『テオドロスギルド長が何者かに殺されたそうです。俺たちがいたあの海でその時に』
『あそこで?』
『ええ。おそらく、あの時集まっていたもの達かまたは別でしょ』
男がタイシを睨み、玄海がやれやれとする。
『無理無理。こいつら人の死とかさらりと受け流すぞ』
『さらりと受け流してはいませんから』
『はい。重く受け止めはしている』
『ああそうかよ』
ミオが唇を噛み締め、ヒカルが汗を滲ませうーんと考える。
「となるとー、不味くないか?追ってる連中も長崎で襲ってきた奴より雑魚じゃない」
「ああ」
「んじゃこいつは雑魚なんだな」
男が玄海を睨みつけ、タイシが話す。
「頭はいい。瑠奈の居場所を特定したからな。そっちは実母から依頼してきたんだろ」
「まぁ…」
男が鼻を鳴らし、玄海が呆れこいつぅとぼやく。
『タイシ殿。こちらはどうしますか?』
『玄海が見ます』
『いや俺がかよっ』
『金は払う。一日保険も含めて5万だ』
『なんでも金で解決するな』
タイシが札束を見せる。
『だめか?』
『いやもらう』
男が舌打ちし、玄海がどうもと早速数えていく。
『都合のいい男め』
『どうもっと。後俺は金が好きなの』
『後もう一つ。明美の両親の行方を知りたい』
『ん?本人じゃなく?』
玄海がきょとんとしタイシが頷く。
『ああ』
『まあ、別いいけど。はいどうも』
『残りはその証拠と話で七割増しで支払う』
『了解。後そんなにいいのか?金あんのか?』
新たに金をもらい数える玄海が告げるとタイシが話す。
『ああ。株のトレードをしているからある』
『頭いいやつって本当憎いねえ。はい了解』
玄海がやれやれとし男の首に手刀を当てる。男が顔を歪め力無く頭を落とし玄海が担ぐ。
『さてと。そんじゃ、瑠奈ちゃんについてはこっちからまた別人員派遣して安全確保させとくわ。俺が選んだのだから文句言うなよ』
『わかった』
『ああ。そんじゃわかったら非通知で連絡するからなー。それと、しゃあないから行く準備できたら事前連絡しろよ。後シャッター開けてくんない?』
タイシが頷きシャッターを開け周りを見ていき、玄海がそんじゃと手をあげ店を出る。タイシが再びしめ、ダリスが話す。
『信用は?』
『出来ます』
『その、タイシさん…』
タイシが哀しく表情を曇らせるミオを見る。
『テオドロスさんはとてもお強かったんですよね…』
『ああ』
『私が今まで会ったエスランカーの方達と比べてどうですか?』
『強いな。後俺も何度か手合わせをしたことはあるがまだ勝ったことがない。そんな人がやられたとなるとか、ここにいま来ている連中もおそらくテオドロスを殺した相手の命令できている可能性が高い』
『それは、さっきの方も』
『可能性はあるが、あいつが話した通り元はイーロンのスパイだった男だ。おそらく下見で瑠奈の元に行かせた可能性もある。けれど、奴が瑠奈を見つけた。俺の関係を全て調べ上げて。そうなるとその情報はもう向こうにしれていると考えていい』
ミオが小さく頷きタイシが話す。
『ミオ。とりあえずの狙いは俺と血の繋がりの持つ瑠奈だ。ここは向こうと違い世間の目があるからそこまで心配はするな。それより学びたいことを優先しろ』
『でも…』
『私も学ぶことを優先します』
『え…』
ミオがダリスを振り向きダリスがややムカムカとする。
『あの、女性に言われたからではありませんが私も知らないことばかりですし、知識でしたらいくらでも持ち帰りは可能ですから。この機会をいま見過ごすわけにはいきません。彼方に戻れる手段が出来たのなら知りたい事を知り学んでいきます』
ミオが戸惑い、タイシがなんの話と待っていたヒカルへと話す。
「あー、まあ、俺も同感。あと、父さん達のこともまだ知らないことばかりだから。明後日父さんの兄さんと会う予定だしな。タイシも一緒だ」
「ああ」
「ちなみにミオは唯子のとこの父親。まだ叔父さんとはあってないだろ?」
「はい…」
「なら、もうさあ。唯子にいっそ伝えておじさんの職場に行って職場見学したらどうだ?」
「えと、会社を?」
「ああ。多少はいいはずだ。調べたら人員募集のための大学生や高校生のインターンシップ。職場見学も実施してるって話だしさ。あと、個別で見学もオッケーってあったし。もちろん事前に話してからになる。その時にさ、せめておじさん見てきたら?まだおじさんすら見てないんだろ?画面でしかさ」
ミオが複雑そうに考える。
「まあとにかく唯子に話してみたらいい」
「…はい」
「ああ。で、タイシ。そうなるとタイシは?」
「俺は玄海と連絡をとりつつ連中の足取りとかを探す。アジトは作らなさそうな連中だから手間がかかると思う」
「そうだよな。あとは警察とかだろ?」
「ああ。まだ色々話もあるし。最初のじいちゃんの傷害とか、俺の手配の件諸々途中だからな。裁判も。面倒くさい」
タイシが困った顔をし、ヒカルが告げる。
「そこは仕方ない。ま、とにかくか。一応各々目的をとりあえず持ったところで戻るか」
「ああ」
「え、と、あの」
「ミオ。テオドロスさんについて、向こうでないと何もかもできない。今は何もできない」
ミオが小さく頷き、ヒカルがミオの頭を撫で戻ったら会いに行こうと告げるとミオが再び頷いた。




