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運命のミオ  作者: 鎌月
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ワルシャワ国

ー行く前にまず目の色を変えるぞ。

ミオがタイシからもらった水を目に入れる。そして何度も瞬きしたあと鏡を見て茶色の目になっている鏡の中の自分をまじまじと見ながら驚いた。


そして、飛龍が空を強く羽ばたき滑空すると再び空を上がり下へとゆっくりと下降しながら素早く前へと進む。

「綺麗ですね」

「はい。あと、飛龍は久々に乗りました」

「乗られたことあるんですか?」

「はい。ずいぶん昔に。200年ほど前です」

「200年前」

「見えてきた!」

ミオがハッとしタイシが指差す。

「あれがワルシャワだ!」

「はい!」

ミオがうずうずとしエリスがふっと笑んでみせた。そして、飛龍がギルドの建物の一部。塔の上に降り立つと飛龍を世話するもの達が二名くる。

「ティーチさん。ご苦労様です」

「ああ。どうも。また明日もだから飯食わせて休ませてくれ」

「はい」

エリスたちも降りる。そしてミオが飛龍を撫でるユナを見て驚く。そのユナはタイシに抱かれ飛龍の鼻を撫でていた。ミオが乗ってきた飛龍を見てそろおと手を伸ばすと飛龍が口を開ける。エリスがミオの手を引っ込めてすぐにばくっと口を閉じるとミオが心臓をはずませながら汗を滲ませる。

「気をつけろよ。そして触るなら横からだ。正面だとエサくれると間違えて噛み付かれるぞ」

「……」

「ミオ。触るならここですよ」

エリスが横から触って見せると飛竜が気持ちよく声を出す。ミオが今度こそと横から手を向けピタッと触るとよしよしと若干腰をひかせながら触った。


「魔獣やああ言った人の手で慣れさせたにしてもまたは魔獣に関してある程度知ってから触れるか聞いてから触れるようにな」

ギルドの建物の中でタイシがミオへ注意するとミオがやや落ち込みながら頷きタイシがああと返事を返す。

「ふふ。では、入国審査はこれでおりました。ようこそワルシャワへ。楽しまれてください」

ギルドの受付嬢が告げるとタイシがどうもと返しギルドカードをまとめて受け取り2人へと渡す。

「ならまず、髪だ」

「え?」

「ミオとユナの髪を切りに行くぞ」

ミオが驚き、エリスが話す。

「そうですね。これからの旅となると、ミオほどの長さでは手入れが大変ですし」

「ああ。それに虫の住まいになるからな」

「虫…」

「言えば寄生虫だ」

「はい」

ミオが冷や汗を流し、タイシが話す。

「旅に慣れてきた人は、自分で虫除けの油を髪につけたり、香を焚いたりする。あとは、術で虫を避けたりする。ちなみに、エルフのエリスさんは逆に髪を切っちゃだめだ」

「え?」

「私たちの髪全てがマナ。つまり命の源なんです。髪があることによって自然のマナ。生命を取り入れます」

「ああ。つまり、人は食べないと生きていけないだろ?エリスさん達もそうだが、髪もまたそう言った生きるための糧を自然の風や空気から得て体の力を作っている」

「はい。そして、自然の力を取り入れておりますので精霊達の話なども、聞き入れることができます。私の髪ひとつひとつが生きているということですし、私たちは髪は切りません。切ったとしても同じ長さになるまで伸びたら自然と止まるんですよ」

「そうなんですね。だから、アリスさんの村の人たち。男の人たちでさえも髪がながかったんでふね」

「はい」

「ああ。でも、ミオとユナは違うからな。下手したら寄生虫他の虫の寝床になる。だから切るぞ」

ミオがこくこくと頷き、タイシがああと返事を返した。


ユナが興味津々に椅子に座り布を首に巻かれ体全体を薄い皮で覆われるとユナがワクワクしながらそのなめらかな皮に触る。そこは町の床屋で、早速ユナの髪が切られていく。その様子を後ろでミオが椅子に座り見ていた。

「ユナの髪…」

「病気にならない為にもだ。その後はミオだからな」

「はい…」

召喚獣の小鳥が滑空しくると今度は地面に激突し震えていく。タイシが拾い上げ震える小鳥の頭を撫でる。

「ご苦労さん。今度クッションかなんかつけないとな」

タイシがやれやれとし小鳥から手紙を受け取り中を見る。

「話したそうだ。明日には間に合うようくるらしい」

「はい」

「はい。終わりました」

ミオがドキッとし椅子から降ろされ髪を肩まで切ったユナを見る。ユナが髪に触れウキウキとしミオの所へと走り膝に顔を埋めるもすぐに顔を上げる。

「えへへへ」

ミオがふっと笑みを浮かべユナの頭を撫でる。

「可愛いね」

「うん」

「なら次はそっちの大きなお嬢さんだ」

「は、はい」

ミオが軽く跳ねると立ち上がりゆなが座ってきた席へと座ると皮を巻かれる。

ーい、よいよ。切られるんだ。ユナくらいかな…。

「ん?」

女がミオの髪をまじまじとみるとタイシを振り向く。

「お兄さんちょっときてみてごらん」

「はい」

タイシが近づき女がミオの髪を一房すくいタイシに見せる。

「この子染めてるもしかして?」

「え?」

タイシが髪を手にし眺める。そこに数本金髪が混じっていた。

ーこれ。まさか。

「あー、すみません。ちょっとつけねらう悪い男がいたもんでしばらくそのままにしてたの忘れてました」

「あらそうかい」

「ええ」

ミオが目を丸くする。

ー髪の色が変えられている。多分君のお母さんが術をかけていたんだ。君があの村で何事もなく生活できるように村に馴染みのある髪の色に。

ミオが驚きタイシが髪をまとめる。

ー術を解く。

ミオがどきどきしながらはいと返事を心の中で返す。そしてタイシが念を込めると髪が茶系から金髪へと変わる。ユナがタイシに捕まりながらうわあと声を上げうきうきと体を跳ねる。

「お日しゃまの色」

「そうだな。あとこれでよし。お願いします」

「ええ」

タイシがユナを抱き上げ後ろに下がり、ミオが目の前の鏡に映る金髪の自分を見て驚愕しつつも髪が濡らされていくとドキッとし体をこわばらせた。


ーわ、私を?

ーああ。詳細はタイシに。あと、ワルシャワにまず向かうそうだ。

ー急いだ方がよろしいですか?

ーああ。向こうにも教会はあるから必要なものは後でどうにでもなるだろう。なので今はそのままでいい。向かって欲しい。


ーすぐに向かわせたと書いてありますからすぐにきます。なのでエリスさんには迎えに行って欲しいです。ちなみに特徴は糸目に耳まで髪がある焦茶の髪の30前の男。

エリスが教会の近くでサイモンを待っていた。

ーあとは、司教の服を着ています。でも、目立つからこの服に着替えさせてください。最初は何故と考えると思いますが着替えてこないと会わせないと伝えて欲しいです。一応手紙にも書いてますが念を押してお願いします。

ーあれね。

教会からやや慌てたサイモンがその教会の神父とともに出てくるとエリスが近づく。サイモンがエリスに気づく。

「初めまして。サイモンさんでしょうか?」

「はい」

「ええ。彼女の保護責任者を務めていますエリスと申します。早速ですが彼から預かっています」

エリスがサイモンにタイシからの手紙を渡す。サイモンが早速手紙を開け中を見て苦々しい笑みを浮かべる。

「ええと、服を」

「はい。こちらに入っている服に着替えて着て下さいとのことです。先方にも伝えていると話していました。急いでそのまま来るようにと言われたのはそのためでもあると、言うこととお聞きしてます」

「…そうですか。ええと、でも服」

「でないと、会わせないとの事です」

サイモンがダンマリとするがため息をしわかりましたと告げエリスがはいと返事を返しサイモンに服が入ったバッグを渡した。


ー首元がスースーする。

ミオが肩上まで短くなった髪に触れるがちらりと店の窓に映る自分を見てその金色の髪を見る。

ー私の髪。元々はこんな色だったんだ。お母さんはあの色だけど、確かにあの村で過ごすには目立ってたな…。

「きたきた。あの人がサイモンさん。あと、宿屋の息子の借り物でよかったわ。やっぱりズボンが少し短かったな」

白いシャツに茶色のブーツ、僅かに丈が足りない茶系のズボンを着たサイモンを連れエリスが戻る。

「エリスさんありがとうございます」

「いいえ」

エリスが少しばかりミオを見て驚き、サイモンがじいとミオとユナを見る。

「ええと、初めまして、で」

「ああ。こっちがミオ。そしてユナ。ミオがそう」

「…あの、髪とか、聞かされておりました色とか」

「ええ。まあそこはギルドの中で。そこでまた詳しく話しますからいきましょう」

サイモンがはいと返事を返しタイシの後に続いた。

ーなあっ。

ギルドの借りた応接室の一室で、サイモンが驚愕し固まりタイシが戸惑うミオを指差す。

「旅に同行。各国巡って最後にアストレイとその植民地に入ったイーロンへと行きますから、サイモンさんもそのお供として呼びました」

「いや、えっ!?聞いてません」

「詳細はついてから俺にと言われたでしょ?アルスランさんには話してましたし、おそらくサイモンさんが行かれてからダリス枢機卿にアルスランさんから話をされたと思います」

「う、まあ、その、な、なぜそう」

「彼女の意思尊重および、まだ知らないことが多いからです。ある程度の一般知識はあれど世間的な知識はまだ不足しています。挨拶や所作諸々身についてないんです。あとは魔獣についてもわからないことばかり。村ではあの魔物よけの石があったから獣以外魔物を見たことがないそうですしね。現に飛龍の正面から手を伸ばして触ろうとしましたから」

「え?それ本当ですか…」

「……」

ミオがコクっと頷きタイシが話す。

「俺たちには一般的な常識で彼女も知ってたと思ってたんですけど知らなかった。まあ、このままだと通常に飼われている魔獣で怪我もおったりしますし、毒を持った魔獣と知らず触る可能性もありますからね」

「まぁ…」

「あとは、話した通り一般的な常識はある程度知ってるくらいで世間は知りません。村では何も教えはなく母親から文字だけ教わったのみ。そして教会で2年ほどしか暮らしていませんでしたからまだ半端しか教わってないんです」

「はい」

「ちなみに教会の祈りについてもなぜいない神様に祈るのかずっと疑問に思っていたけど聞けずにいたそうです」

「ええと」

サイモンが困惑し、ミオがやや恥ずかしく俯きながらこくこくと頷く。

「あとは、そっちのアサシン。何か話は?」

「ええ。ダリス卿が話をされに行かれましたが、元々よく思われていませんので聞いてくれたかは分からないけれど聞いてくれていないだろうという」

「でしょうね。ならまた来るはずです。なので流石に最初からあのアストレイに連れていけばどうなると思います?もみくちゃにされますよいろんな方から。そして下手すれば廃人です」

「た、確かに」

「ええ。なので今回の目的について。彼女の知識を広めること。そのためにはやはり現地に行って学ぶことも大切ですし、実際の魔獣を見せて危険性を覚えさせます。あとはその教会のアサシンをなんとしてでもその期間にあらかた取り除いていただきたい。大体元はそっちのダリス卿せいなので即刻対応をされるようにとまた伝えてください」

「わ、わかりました」

「ええ。取り敢えず、旅の期間として5年内とします。そうすればあらかたの国は見て回れますし知識も身に付きます」

「ええ」

「で、勉強についてはサイモンさんにも教えてあげてください。それから、旅なのであの司教服は教会に預けて、旅の装いをしてください。つまり通常の服。ちなみに今は大体体格が似ていた宿の息子の服を借りてるのをサイモンさんに着せてますから。あとで服を買ったらお返しします」

「あ、はい。えーと、まあ、分かりました」

「それからサイモンさんについて教会から人を天に召すことを許されてますが旅の間はそれはなしでお願いします」

「え…」

「俺たち同種族と同種族に似たエルフや獣人といった人と関わりのある種族の殺しは無しです」

「……」

サイモンがタイシの隣に来て必死に囁く。

「な、なぜそんなっ」

タイシが不安な面持ちのミオを親指で指差す。

「で、でももし追っ手などきたら」

ミオがじいとサイモンを見つめるとサイモンがぎこちなく視線を逸らす。

「あらかた痛ぶることはできるでしょ?あと、ミオとユナはまだ子供。また嫌われますか?」

「……う」

「なら決まりです。後もし行えば即刻報告します。規則破りということでダリス枢機卿にです」

「わ、分かりました…」

タイシがよしと頷きエリスを振り向く。

「元アサシンの方ですから暗殺が主な仕事なんです」

「はい」

「はあ…他にも諜報も行ったりしてましたけどね…」

サイモンがぶつくさといい、タイシが話す。

「はい。なら、今から買い物に行きましょう」

「買い物なら、私は一度戻らなければ路銀も」

タイシがミオを指差すとミオが用意していたお金を出す。

「それはいけませんっ」

「えと、でも、雇うので」

「いえいえっ。私の場合」

「副将軍からの慰謝料ですから」

サイモンが止まり、タイシが話す。

「その一部もないくらいです。護衛費用や護衛対象が事前に渡す準備費用の前金です。受け取ってあげてください」

ミオが頷き、サイモンが大きくため息をし分かりましたと弱々しく告げそのお金を受け取った。


服屋でエリスがミオとユナの服を選ぶ中、タイシもまたサイモンと服を選んでいた。サイモンがシャツを手にしため息をする。

「なんか、嵌められた感覚あります…」

「嵌めたつもりはないんですけどね。サイモンさん近接行けます?」

「ああええ。どちらかと言えばそちらが得意なんですよね。銃を使っていたのは意外にも遠方から狙われることが多かったからなんですよ。ダリス枢機卿」

「なら術とかも?」

「ええ。後呪いとか。銃は弾にも術が込められるものもあるでしょう?私はその銃を使って呪いを打ち消したりします」

「え?どうやって?」

「ええ。目に見えますからね。至近距離。もしくは近づいてくる前に呪いに有効な銃弾。言えば聖水や光に関連したものを放ちます」

「へえ」

「まあ、それは枢機卿の護衛の時でここのところはそのようなことをされる方は居なくなりましたは。理由としてはアルスラン様の部下がその対応をなさってくれるようになったからです。そのおかげで特にこちらも護衛は御前の周りしかしなくなりました」

「ええ」

ーそれ俺も関わってんだけどな。

タイシが心の中で思う。

「ちなみに、近接武器とか自前のものはありますか?」

「あー、常に使い捨てでないです。ちなみにあの銃は教会からの支給品ですしね」

「じゃあ、そちらの調達もしましょうか。あとで知り合いのドワーフの店にも行きます。その隣は調理とかに必要な品を売ってるところでそのドワーフが下ろしてるんです」

「それは珍しいですね」

「ええ。まあ、始めたきっかけはその人のお弟子さんが薦めてされたそうです」

サイモンがへえと驚くもタイシにユナがぶつかるとタイシがユナを抱き上げユナがもつピン留めを見て前髪にさすとユナがにこにこと笑顔を見せた。

ーあれくらい私も子供に好かれたみたい…。

サイモンが寂しくふっと笑い、買う品を店員へと渡した。


がっしりとした腕に蓄えたヒゲを前で結んだ背が小柄のドワーフがカウンターに座り店に来ていた客が持ってきた鉱石の鑑定をしていた。そこに店に入ってきたタイシを見て、顔を上げる。

「ティーチ。久しいな半年ぶりか」

「えっ」

客の若い男と小柄な斧を背にした男、杖を持った女とがすぐさまタイシを見る。

「ああ。ナイフとか見たいけどいいか?」

「いいぜ」

すぐさま3人がタイシによるとミオが驚く。

「Sランクのティーチさん。初めて見た」

「どうも。サイモンさん達。向こうがそうです。あと、ガルド。よかったら奥から魔剣関係も持ってきて欲しい」

「分かった。まあでも待ってろ。そこの奴らの持ってきたの鑑定したからだ」

「ああ」

「最年少でSランクになったんですよね?やっぱり龍を退治して?」

「まあそれも評価の一つではあるな」

「なら他にもあるんですか?」

「日頃の態度と勤勉さだな。Sランクになると討伐関係なく、貴族が気に入れば護衛もしなきゃならない」

ミオが目を丸くしタイシを振り向く。

「え?その、討伐は、討伐だけじゃ」

「Sランクは全部門を統括する。言えば時期ギルド長の候補者になるんだ」

ガルドが答える。

「だから、討伐だけじゃねえ。貴族のやつらのことや所作。ダンスも下手したら覚えなくちゃならねえからな。あとは、魔獣については特性を全て把握、記憶する」

「それから、チームでのまとめ役指示役としてこなせるか。たとえ勇者と言われてもギルドランクには関係ない。全て評価されて全てのギルドの長が全員Sランクに推薦し最終判断として、国の王五名が認めない限りはなれない」

「そーだ。ただ強いからだけじゃあだめだ。それだけの強さ。技量。知識と統括力が必要になる。見た目がどうとかじゃねえ。いかに他よりも優れているかだ」

「なら、ティーチさんギルド長や王様達に認められてなったのか。すげえ」

「どうも」

「ほら初心者ども。鑑定終えたぞ」

「はい」

3人がカウンターへと向かい鉱石全てを路銀に変えるとタイシと最後に握手を交わし興奮冷めないまま出ていく。ガルドが裏へと行き、サイモンが話す。

「どうやって王様型に取りいったんです?」

「子供に好かれるようにですかね」

「…またそんなことを言われて」

「ほら持ってきたぞ」

ガルドが店の空いたテーブルの上に剣が入った箱を開く。

「魔剣だ」

サイモンが珍しく、エリスたちも見る。

「エリスさんとサイモンさんは使えると思います。ミオはまずこっちの通常の小型ナイフからだ。中級の術を覚えて時間があれば魔剣も試してみよう」

「はい」

「聞いたこと、見たことはあります。しかし、実際に使った事はないですね」

「ならまず触ってみろ。適当に」

サイモンが頷き剣を握る。そして心臓が跳ねるとぞわっとしすぐに手を離す。

「どうだ?」

「何かこう、のし上がってくる感じが」

「なら、こいつとは相性が悪いな。魔剣は触ってから魔剣が認めてくれないと持たせてくれねえんだ。とりあえず触っていけ」

「ええ」

サイモンが触りエリスもまた触れていきお互いに剣を外に出していく。

「タイシさんも持ってらっしゃるのですか?」

「ああ。五振り。それぞれ特性と特徴があるから場によって使い分けしている」

「五振りもちはなかなかいない。せいぜい持ったところで3振りだ」

「あ、これは」

サイモンが切先が赤い魔剣のダガーを持つ。

「問題ないばかりかしっくりきますね」

「私はこちらですね」

エリスが細剣を手にする。

「そのにいちゃんのは土属性の魔剣だな」

「土ですか。見た目から火に見えます」

「色がな。だがつちだ。エルフの方は水だ」

「はい。触れれば濡れます」

「え?」

「おっと、他は触んじゃねえぞ。切れ味が良すぎる上に今は抑えてるが術を出しかねないからな。魔剣は魔術を出す剣で意思を持つ。ちなみに材料は精霊の力や精霊の好物を使っている。そして魔剣に必要な魔石を使う」

「魔石を?」

「ああ。魔を引き寄せる厄介な代物だが俺たちが加工して鍛えれば魔術を使える武器や防具に作り替えることができる。ただし、作れるのは俺たちドワーフしかできねえ。精霊云々で、エルフがうるさく言うがな」

ガルドがちらりとエリスをみるもエリスがくすりと笑う。

「私は言いませんよ。お父様達800年を生きる長たちは言いますでしょうけど。あと男のエルフたち」

「ふん。そりゃ良かったぜ。まあ、買うなら買うで?どうすんだ?」

「買います」

「私もですね」

「なら、2本で金貨10枚だ」

「え…」

サイモンが汗を滲ませ、ガルドがやれやれとする。

「それだけこっちも命懸けで打つ代物であれば魔剣は偽物も出回るからな。その値段なのはそのせいであり俺たちが打った本物の魔剣と言う証明を出す。いえば保証と保険だ。あと、魔剣も扱いによっては壊れるからな。そこは注意しろよ。で?」

「あるある」

タイシが金貨10枚を出すとサイモンを見て手を挙げる。

「じゃ、ダラス枢機卿に周りしとくんで。請求書」

「な、なんですって!?」

「なんだ。そこのにいちゃんは聖職者か」

ガルドが金貨を確認し、タイシが話す。

「ええ。あと、苦労代などで」

「そ、それなら、こちらの購入は」

「ありがとうございますサイモンさん」

サイモンが口を引くっとさせ、エリスがにこやかに話す。

「と、枢機卿にお伝えください」

「…」

「人様の金だからとよく言うぜ」

ガルドがやれやれとし、サイモンが引くにも引けず何も言えなくなり頭を落とした。


「ほら」

ミオがタイシから大きな焼かれた肉がついた串を受け取ると目を輝かせみていく。そこは食事の屋台が並んでおり串以外にも甘い菓子。または、乾燥させた日持ちの良い干し肉などが売られていた。ミオが熱いうちにと言われると早速串を横に持ち肉を噛みちぎると口に油をつけながら夢中で食べる。

「これ何の肉ですか?」

「魔獣のタガの肉だ。若いのは柔らかくて臭みがないからな」

「はあ。これが魔獣の」

サイモンがしげしげと見ると口に含み食べる。

「アストレイでは魔獣の肉とか喰いませんからね」

「ええ。ああでも確かに普通に美味いですね。あと、臭みということはやはり臭いんですか?魔獣の肉は?」

「ああ。大人のだと特にな。ちなみにあのジャイアントベアも場合によっちゃくえるんだよ」

「あの凶暴魔獣が?」

「ああ」

「人を食ってないのと谷底に生息する奴らは臭くないらしいです」

「そうだ。だが、谷底しかいないんで結構値ははってな。お貴族様たちくらいしか食べないって話だ」

「ええ。栄養価が高く柔らかい。後,女性に人気なんですよ。太らない。むしろ痩せる食材として」

サイモンが驚きミオが目を丸くする。

「脂身が少なく赤みが多いからなんですよね。後女性にとって嬉しい肌の栄養もその肉にあるから競争するんですよね」

「その肉を求めて?」

「はい」

「ギルドに話してきたらすぐに取り寄せるように伝えてるらしいぜ。まあだから、こっちでは拝めない」

「おーい!!討伐隊が帰ってきた!」

「見に行こう!」

周りがすぐさま向かい、タイシが肉を焼く男へと話す。

「大物が出たんですか?」

「ああ。沼地に主が雷龍が現れた。200年ぶりに。それで、Sランク1名、Aランクが五名とB、Cの合わせて30。あと、魔法砲が2」

サイモンが驚き、タイシが唸る。

「それらで討伐に行ったんだ」

「いや、いったのはいいですけど、その雷龍は何かしましたか?」

「詳しいことは分からねえな」

「えと、その雷龍って、どういった」

周りがざわつくとエリスがユナを抱き人の後ろへと下がりタイシが男に手をあげミオの背を押す。

「サイモンさん。まだ見慣れてないんであとで報告お願いします」

「わかりました。あと、雷竜のこともですね」

「はい」

ミオが汗を滲ませるが人の間から僅かに包帯に巻かれ俯いたもの達がギルドへと向かっていくのを見てぞっとした。


二時間後ー。

ー討伐は失敗。

メガネをかけた女のギルド長が、タイシが来ているのを聞き宿へと赴いておりタイシの隣に座ったサイモンが頷く。

「はい。被害として、Aランクが三名。B、Cランクの方が二十名亡くなられたそうです。残り全員重軽傷。Sランクはヤイスと言う男性の方です」

「槍使いの方ですね。年はサイモンさんより少し上のSランクとしては8年の実力者です」

「ええ。あと、雷竜が今寝床にしている沼地の近くに私たちが管理している牧場があるの。そこが被害に遭ってるし、その牧場から牛を別の場所に移動させたら今度はそこに来るし、人の被害も出たの。だから討伐を私たちギルドから出したの」

「ええ」

「でも、討伐は失敗。ヤイスも片足を失ったわ。雷竜に食べられかけてなんとか逃げられたけど足をね」

タイシが頷きギルド長が汗を滲ませる。

「あの雷を防ぐためにと対策は施したけれど無理だったわ。あと、雷竜はおそらく1000年の年をいく老龍」

ー1000年。

タイシがふむっと考える。

「1000年…は、本当に?」

「ええ」

「そして沼地にいると、肉を食う」

「そうよ」

「なら、近くに卵は?ありませんでしたか?」

「え?」

「卵?」

「はい。その年つきの龍ならもう余命も幾許もない。なので、世継ぎとして自分の分身。子を産みます。龍は互いなく産めることができる珍しい生き物です。肉を食っていたのは、そのための栄養補給。沼地を選んだのは自分の弱った力を補うためでしょう。雷竜は電気。雷を得意とする術を持っている。そして沼地では人も他の生物達も足を取られどうしても動くのは難しい。龍は自分にとって有利な場所を選びそこを寝ぐらにします。なので、おそらくその雷竜は卵を産んでいるはず。そして、今回の討伐は言えば親として子を守るために薙ぎ払った行為です。がむしゃらに」

ギルド長が頷き、タイシが話す。

「ただ、それでも被害は出ていますからね」

タイシが立ち上がる。

「卵があるかだけ確認します」

「え?」

「気が立ってはいるので気をつけはしますが、卵の大きさを見て後どれだけで生まれるかを見れたらと思います」

「そうすればどうなる?」

「余程でない限り、被害は出ません。あちらもたまごに気を配り動くことはなくなるはずです。まずはその確認でこれからの対応が変わりますし、その場で相手をします」

「えっ」

「分かったわ。許可します」

タイシがはいと返事を返しサイモンが心配だなと思う。


ー沼地。あれか。

崖に大穴が開かれており、あの周りには血や焦げた後。そして、ちった遺体がそのままの状態で残されていた。タイシが術を使いその大穴の奥を覗く。そこに疲れ切った巨大な黄金色に輝く龍が身を丸め寝ていた。そしてその胸元に卵があった。

ーあった。大きさとして、まだ産んでまもない。

龍が目を開け顔を上げるとタイシが身を潜める。龍の目がタイシを捉え、タイシが冷や汗を流す。

ー騒々しい。騒々しいものども。抵当な者ども。

雷竜が電気を身にまとい起き上がり大穴から身を出す。

ー小虫め。

雷撃がタイシへと向かうとタイシが体に大きな黒い物を身に纏い雷撃を防ぐ。雷竜が目を見開き更に雷をタイシへと向け落とした。

雷の音が沼地から轟く。ギルド長が冷や汗を流し、街の者たちもまたその雷音を聴き恐れをなしていく。そして、雷龍が息を弾ませ黒い物を身に纏うタイシをみる。

ーそれは、なんだっ。それは。

タイシが黒い厚手のゴムの布を剥がす。

「絶縁体。電気を通さない植物の樹液で出来た布だ」

ー樹液だとっ。

タイシが目を黒くさせ髪も黒くさせると雷竜が歯を噛み締める。

ー異界の者かっ。

「ああ。だから、電気には詳しいっ」

タイシが空間から剣を出し沼地下手向けなげる。そして沼に触れた途端一瞬で氷つき竜の足元も凍らせる。

ー魔剣っ。こざかっ。

竜の目が見開かれる。そして目の前にタイシがおりタイシが龍の首に剣を当て喉を切ると竜の首から血が吹き出したとたん、龍もまた血を吐きその場に崩れ倒れる。タイシが髪と目の色を再び変えひゅーと息を吐く龍を見る。

「ここだけじゃないな。この血の匂い。他のところでも人を食い続けた奴だな」

龍がにいとしくくっと笑う。

ー貴様らとて、肉は食らう…。

「そうだ。だが」

「食べ過ぎは禁物だな。雷竜」

タイシが硬直し雷竜が鋭くマントを着た汗を滲ませるタイシの後ろに立ったものを睨みつける。

ーきさまっ。マナっ。

「ああ。あと、みろ。食べすぎて動きが遅くなっている。こいつが見えないほどの衰えと鈍足。おかしくて仕方がない」

マナがおかしくくくっと笑うと緑と赤の雷竜と同じその竜の目を面白く向ける。そしてそのマナの腕の中に大きな卵があった。

「お前よりマシな子が生まれ育つよう、私がこの世のことを含めこの子供に教えてあげよう。お前の代わりにな」

ーき、さ、まあ。

「ふふ。絶望の中死ね。老害」

雷竜ががふっと大量の血を吐き出し白目を剥き舌を出し動かなくなる。

「…師匠。あんた、その卵」

タイシが後ろを見るも消えていた。そして大きくため息をしその場に座り込み顔をしかめうんと悩んだ。


ー最初から雇っておけばよかったんだ。

ーああ。無駄な犠牲を出さずに済んだ。

ーどうしてSランクティーチを呼ばなかったのよっ。龍ハンターをっ。

ーもう1人もSランクだったのに何も役に立ってないじゃないか。

反感が反感を呼ぶ。サイモンが夜中でもギルドの前に集まり文句を言う住人やギルドのもの達を見てやれやれとしその身を引くと宿に戻り椅子に座りうんざりとするタイシの元へと戻る。そこに、眠ったユナを抱いたエリス、ミオもおり、戻ってきたサイモンが話す。

「タイシさんは今日は外に出ないほうが良さそうですね」

「ですよね。はあ。というより、あの師匠…卵持ち逃げしやがって」

「一度、見てみたかったです。その師匠という方ともお話してみたかったです」

エリスが残念そうにぽつりと告げ、タイシがやれやれとする。

「文献の通りですよ。あと、師匠は気儘すぎる神出鬼没な方です。そして、飛龍を使うのが難しくなった」

「なら、教会の」

「いえ。多分もう悪さする枢機卿が止めてますよ」

タイシが紋章の入った紙をサイモンに向けるサイモンが受け取りはっとする。

「跳ね返りの」

「はあ。ええ。おそらく。しばらくの間になるでしょうがその転送装置は壊れたと言うことになるでしょうね。後それはうつしで、転送装置の見にくい場所に張り付いてました」

「嫌がらせですね」

「そういったもんでしょ?まあ、あらかた買い物は済ませてたんで、明日ここから出発して旅に出ましょう。だから、ミオ。最初の目的地からアストレイに行くまでの道のりが大きく変わる」

タイシが地図を広げ出す。ミオが頷きタイシが東のワルシャワから西のアストレイを指差す。

「初めは南から北、そして西へと全て陸地で進む進路できたが、それができなくなった」

「はい」

「では、ここからですとまず砂漠とその先の巨大な湖を渡るのですか?」

「はい」

「砂漠もですがあの湖か」

「砂漠?」

ミオが分からないと小首を傾げ、タイシが話す。

「迷わなければ3日で着く距離ではあります。もちろん大人の足にはなりますが」

「ええ。しかし、子供連れの砂漠越えは中々華が入ります」

「はい。なので、キャラバンを頼りましょう」

ミオがどきりとし、サイモンが頷く。

「それなら」

「商人、ですか?」

サイモンが不安な面持ちをするミオを振り向きタイシが話す。

「そうだ。もちろん、しっかりとしたところだ。砂漠越えとなるとそこらの商人とは違い砂漠と言う屈強な地の中で商売をする人達についていく。まだミオは砂漠のことは知らないようだから言うが全て砂だ」

「砂?」

「ああ。それもさらさらとした砂で俺たちが歩く地面のように固まってはいない。なので足元は常にとられて歩きにくい中を進む。そして砂漠の生活に適した姿を持った砂漠特有の魔獣達もいる。砂漠越えでの護衛は常にAより上。そして商人達もAより上の連中しか砂漠越えはできない。君が被害にあった商人達のランクは聞いたらBになったばかりだ。まあまた、Cに戻されたそうだけどな」

「えと、B…」

「Bランクの商人は私たちの元に荷物を届けることができる方たちです。私たちエルフの元にです」

ミオが頷きタイシが話す。

「ああ。で、Aランクになると自分らで身を守るほどの実力がなくてはならない。つまり、ギルドの護衛部門で言えばBランク程の腕前を持つ奴がその商人チームの中に2人いると言うことだ」

「チーム?」

「ああ。商人部門は必ず最低3人での登録が必要なんだ。だから、家族での登録が多い」

「そうなんですね」

「ああ。勿論他人同士でもいいが他人同士の場合は別に同意書が必要なんだ。売上金は必ずお互いが最初に決めた配分で行うこと。歪み合いや仲間割れを防ぐための同意書で結託してもギルドは責任を持ちませんと言うことだ。つまり、ギルドが思った以上に金をくれなくておかげで仲間割れした。喧嘩したと言っても知りませんとなる」

ミオが頷き、タイシが話す。

「で、Cランクだと国内の街から街へと行ったり街の中で店を開いて売ることができる。Bは人と交流のあるエリスさんといったエルフや、まだミオは見たことはないと思う獣人達の村へと商品を売りに行ったり配達にいくことも可能になる。あとは、国外での売買が許される。Cはまだ国内だけになる」

「はい」

「ああ。で、Aが屈強な地や海、湖といった地上ではない危険な進路を進んで売買する人がなれる。もちろん国内外全てにおいての売買も許可される。そして、危険な場所を進むからAランクについては商人であっても5人中3人は必ず護衛のBランク程の実力を持った商人が必要だ。あとは、険しい道のりを進むための知識。天候を読む知識も必要となる。もちろん商人だからギルドに言い渡された目標を越えなければ評価にならない。それらを含めたものが5名集まり全てクリアできたら晴れてAランクとして認められる。ちなみに商人の最高ランクはAだ。Sランクについてはギルド長候補の今もあるとして討伐部しかないランク付だ」

ミオがふむふむと頷く。

「で、今回の砂漠と湖越えだ。商人ランクは全てAランクの実力がないと出来ない。それは必ず襲われるから。魔獣もだが、人もいる。地上で言う山賊。盗賊達の類いだ」

「その、険しいところにもいるんですか?」

「ああ。これがいるんだな。そして、そこが言えば自分の生まれ育った場所でもなるんで場慣れしている。手強い奴らしかいない」

ミオが頷く。

「はい。あと、タイシさんはそういったところでも護衛とかされたことがありましたか?」

「護衛はないな。ただ、貴族の令嬢が身代金目的で砂漠の盗賊達に道中襲われて攫われたのを助けた時はあった。ミオくらいの年の子だった。砂漠には家族で旅行できてたらしい」

「なら、中々上の貴族の方ではありませんか。どこの方です?」

サイモンが楽しく聞き、タイシがやれやれとする。

「砂漠越えの先のマーリス国の公爵令嬢です」

「うわ、またすごい」

「マーリス国侯爵となりますと騎士団長。もしくは議員をなさっておられるところですか?」

「その通り。で、まあその誘拐が裏がありまして。本当は貴族同志の仲の悪さで起きた誘拐だったわけなんですよ。盗賊の頭がどうせ殺されるならとペラペラ話してくれましてね。それを俺が報告。聞き取りやその盗賊団たちのアジト調査をされて事実であると判明し、その盗賊団を雇ったその方のライバルといいますか、一方的な恨みを持った方といいますか。国の法律により罰せられ国外追放されたんです」

サイモンがぽんと手を叩く。

「不倫妻事件」

「え?不倫?」

「その通り。公爵の奥さんとその犯罪を犯した貴族の家長が不倫していたんですよ。で、その公爵の娘さんは言えば不倫妻にとって前妻の娘さんで邪魔な存在だったわけなんですよ」

エリスが頷き、ミオが不倫?と頭にはてなを浮かばせる。タイシがそれを見て話す。

「夫婦じゃないもの同士が夫、妻を裏切って仲を深め合う。つまり、隠れた擬似夫婦になっているわけだ。まあ、例えでいやかもだけど、君の亡くなったお母さんが、お父さんという人がいるのに別の男を連れ込んで君の前で抱きしめあったらどう思う。君がお父さんのことを聞かされてたのに、お父さんの特徴を持たない人がなぜか、目の前で抱き合うんだ」

「……その、嫌です」

ミオが腕をさすりタイシが話す。

「ああ。家族の中でも嫌な思いをする。それが不倫だ。悪かったな」

ミオが頭を振り、タイシが話す。

「で、その事を娘さんが知っていたんだ。後できたお母さんとその貴族が不倫して悪巧みを考えていたことを」

「なら。その人も見られたと言うことですか?」

「ああ。だから、その後妻が娘を消すために旅行に誘い誘拐させたわけだ。父親は憤慨。そして娘に申し訳なく何度も謝罪していた。元々父親の方も仕事ばかりで家に目が向かなくなった。娘を見て、まあどうしても病死した最初の奥さんのことを思い出して目を背けていたのが悪かったそうでな。それで、娘が寂しくないよう縁談をして後妻を持ったがそれが失敗。逆に愛する娘を傷つけたし一生の傷を負わせてしまった」

「一生?」

「忘れられないほど苦しんだ事。それと同じで、彼女の場合はギリギリではあったが、女性としての威厳を傷つけられた。つまり、複数の男に襲われた。今でもまだ夢に見るほどだろうな」

ミオがずきりとし、タイシが話す。

「君が商人や女性の護衛の人。そして軍人を怖がるのと同じ後遺症を持ったわけだ」

「はい…あと、えと」

「避けてたしエリサさんの方に必ず寄っていたし、怖がっていた。ただ、よかったら少しずつ慣れてほしい。俺たちがいるからそこは安心しろ」

ミオが頷きタイシがよしと頷く。

「力強いですね」

「はあ。あんたも行動に注意してくださいよ。そちらの行動で聖職者も嫌われますからね」

「ど、努力します」

エリスがくすりと笑い、タイシが話す。

「宿の店主と話し終えてるので明日の明け方前にここを出立します」

エリス達が返事を返しミオが息を吐き緊張した面持ちではいと返事を返した。


ーふふ。

深い森の中の家で、卵から黄金の子龍が生まれると殻を体につけたまま卵から這い出るもべしゃっと転げ倒れる。マナがふふっと楽しく笑い子龍がきゅうとなく。

「さて、無事にかえったな」

『おかしなものを持ってきたな』

家の開かれた窓の外からぬっと巨大な人語を話すオーガが姿を見せる。その足元には馬と人がバラバラになり縄で縛られ置かれていた。

「いいだろう?私の親族になる」

『ふん。まあだが、どんな味か気にはなるな』

オーガがにいとすると子竜がぞわっとしマナにしがみつく。

「よせよせ。これは私の飼い犬だ。後久しぶりにタイシと会った」

『ほう。あの小僧とか』

「ああ。いい男になってたぞ。お前を殺す日が近くなってきたな」

オーガが大笑いする。

『果たしてできるかな?』

オーガがおかしく笑いながらその場をさりマナが恐々する子竜を指でくすぐり楽しく触った。


マーリスー。

ーまた。Sランクのティーチが竜を倒したそうだ。今度は雷竜らしい。

ー他のSランクでは歯が立たなかった強敵をたった1人で。それも一振りだそうだ。

少女が廊下を足早に移動し、メイドが慌てて後を追う。そして、少女が興奮した様子で開けられた執務室の老齢の男と執事、そして、男の客であろう部屋へと来る。

「お父様」

「ナターシャ。どうした?」

興奮したナターシャが中へと入る。

「はい。後失礼致します」

ナターシャが頭を下げ嬉々とし話す。

「ティーチ様の事をお聞きしたのです。ワルシャワで悪さをしていた雷竜を退治されたと」

「ああ」

「こちらでも早速話にしていた。彼の力はとてつもないと」

「ああ。話では喉へと一振り入れて退治したと言うことだからな。恐れ入った」

「はい」

「だが、ナターシャ。今私は友人とは言え客人の相手をしているからな」

「はは」

ナターシャがかあと顔を赤くし俯く。

「も、申し訳ありません」

「下がりなさい」

ナターシャがこくっと頷き頭を下げ部屋を出る。

「まったく」

「ふふ。しかし、元気になってよかった。あの時の落ち込みようはこちらも見ていていたたまれなかったからな」

「ああ。本当に今でも後悔しているしナターシャには申し訳ないことをした。そちらにも心配をかけさせたな」

「私はいいさ。あと、あれからどうだ?元妻から何かあるか?」

「今のところはない。ただ、いつが何かするのではないかとは思っている。娘が街に出かける時などは常に護衛をつけている」

「そうした方が良い。しかし、まさかの良縁と言われたのがまんまと騙されたな。先方に」

「見抜けなかった私も恥ずかしか頭が痛い」

男がこめかみを揉みはあと息をつく。

「陛下からも直々に頭を下げられた」

「陛下の従兄弟になられる方であったからな。なら、そちらの見張りもついてるわけか」

「ああ。そうだ。そして護衛については費用を出してくれている。奴も何をするかわからないからな」

「まだまだ、心配事が多いな」

「そうだな」

「ああ。まあ、また誰かがそれを今度は根絶やしにしてくれたら」

「その誰かは話に出た龍を2匹退治したものか?」

「お前の娘を助けたハンターだ」

「都合良くは行かない。それにまた、迷惑ばかりかけてはな」

「彼は若いが実力は確かだ。それに、ギルドの者。金を出せば迷惑など関係ない」

「まあそうだが、こちらのことばかりに関わらせては巻き込むかもしれないからな」

男がふうと息をつくもノックが響く。そこに、従者がおり手にしたトレイには手紙が2通が入っていた。

「失礼致します。こちら陛下からのお手紙とギルドからの速達です」

「ギルド?」

「まさかまさかかな」

知人が立ち上がり向かうと男がやれやれとし立ち上がり向かう。そして知人がギルドの手紙にTの字が書かれた封筒を手にし見せる。

「話をすればだ」

「勝手にとるな。後まずは陛下の手紙が先だ」

男が手紙を開け中を見る。

「次の国賓を招いた夜会の誘いだ」

「アストレイだな」

「ああ」

「イーロンを植民地化においた後も大変な目にあっているからなここも含めた他の国も」

「そうだな。こちらにも逃げてきた輩が迷惑をかけていればスラムにもなり増えている」

「ああ。まあ、戦だからそうなるとは分かっていたが突然仕掛けた結果だしな」

「ああ」

男が今度はギルドの封を開ける。そして、中にある手紙を読む。

「字が上手いな。噂の彼か?」

「ああ。すまないが下がって扉を閉めてくれ」

「はい」

従者が頭を下げ出ると執務室の扉を閉める。

「今、依頼を受けて護衛の旅に出ているそうだ。その依頼者は、噂となっている聖女の娘」

「なに?」

知人が驚き、男が話す。

「内密にとのことだ。だからお前も黙っておけ」

「分かった。それで」

「ああ。ここでもし良ければ三ヶ月から半年ほど令嬢としての教育を行って欲しいとのことだ。まだ何も知らない。何もわからないままだからと」

「その理由は、アルスラン伯の娘」

知人が驚き、男が話す。

「このままでは他貴族や王家に好きなように使われるばかりか差別される。なので、教育してもらいたいとのことだ。旅についても何も知らないので各地を見巡り実際に見せて学ばせる旅でもあるそうだ。そして、今はその娘とわからないようにしているが、欲まみれなもの達に少なからず追われてもいる。危険も承知でお願いしたいとのことだ」

「ああ。また、驚いたな」

知人が顎を撫で、男が手紙を灰皿に入れる。

「どうする?」

「考えるさ。まだ、ワルシャワを出たばかりとのことだ」

「では、砂漠を超えてここにくるのか」

「ああ。二週間程度はある。それまでに答えを出す」

男がマッチに火をつけ灰皿の手紙を燃やす。

「聞いた通りだ。お前も内密にしてくれ。そしてもし、そうなった場合協力してもらいたい」

「分かった。その時は知らせてくれ。人手もかそう。もちろん伏せてな」

「ああ」

知人が椅子に座り男が燃えるのを見終えるとまだ手紙の形を残した灰を置かれていた小さな鉄の棒で叩き粉々にした。


「なら送ったからな」

人が通りできた旅の道をタイシや一向が歩きながらあの手紙をくくりつけた鳥を飛ばし告げるとミオがはいと返事を返し、サイモンが話す。

「先方は難しい悩みになりますね」

「ええ。無理を承知ですから。ただ、もし実現できたら助かりまします。やはり実際にその環境下で受けた方がわかりやすく覚えるのも早いですからね」

「ええ」

「すみません。我儘を聞いてもらって」

「いいさ。あとは向こうが答えるまで待つだけだ。それと、街までは歩いて3日の距離だ。近くに来たらマスクを必ずするように。細かい砂が飛んでくるからな。多く吸えば病気になると思え」

「はい」

「ミオー抱っこ」

エリスに抱かれたユナが手を向けるとミオがユナを受けとりユナがミオをぎゅうと抱きしめミオが抱きしめられると微笑んで見せた。

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