東京9
ー犯罪者たちとわかって行動されたのですか?あなたは。
項垂れた男へと警官たちが質問をしていた。その隣の部屋でタイシが早苗と鈴子の護衛の1人。そして複数の警官たちと男と警官の質問をマジックミラー越しに見ながら聞いていた。
「養父は話してくれると思う?」
「黙秘を続けますね。あの様子だと」
「はあ。そうよね。じれったいわ」
「俺が話せたら話したいんですけど」
「なら面会という形で話ばさせますか?」
「そぎゃんな。こっちも跡が詰まっとる。よかよ」
タイシがダンマリとすると気まずく話す。
「あの、決断早くありませんか?」
「仕事はさっさと終わらせたか」
「別にこっちの捜査のやり方に苦情を言われてもはいそうでさかですませるけん問題なかよ。なら隣行こうか」
タイシが頷き、警官の1人に付き添われ扉を二つ通り隣の部屋の尋問室に入る。
「高嶋琢磨さんですか?」
高嶋がすぐに顔を上げタイシを見て腰を浮かせたが警官たちが肩を抑え座らせる。
「お、おまえ。娘とホテルに。鈴子とホテルで何をしたっ。言えっ」
タイシがやれやれとし早苗が簡単な男と呟く。
「何もしていませんよ」
「嘘をつけ!手を出した!」
タイシがスマホを出しLINEの時間報告を見せる。
「手は出しませんし出せません。10分おきに鈴子の護衛の方に状況報告と画像を送っていました。鈴子自身、なかなか寝てくれなかったので画像を撮影して送るのが大変でした。信用されないなら護衛の方をお呼びします。名取という方です」
「……そ、そう、か」
高嶋が汗を滲ませる。
「ちなみに俺から質問です。よくホテルに2人でいると分かりましたね。見られたんですか?」
「し、心配して、ついていっただけだ。それより、鈴子だと…。なぜ呼び捨てを」
「友人を呼び捨てにしてはいけませんか?友人なら階級も異性同士でも関係ないと俺は思います」
「ある。いいやあるっ。お前は犯罪者の子供だっ。あの子の友人と名乗る資格はないしあの子の名前を言う資格もっ」
「名取さんをお呼びしましょうか?陛下たちは俺に鈴子の友人でこれからもいて欲しいとお話ししてくださった。電話でですが」
「え…」
その場に名取が来ると高嶋が冷や汗を流す。
「話したことについて、事実です。鈴子様のご友人として助けて欲しいとおっしゃいました」
「そ、そんな…。犯罪者の子だぞ」
「関係ありません。彼は鈴子様の恩人でありご友人です。鈴子様が大変信頼なさっている方になります」
高嶋が唖然とし、タイシが話す。
「ところで俺から質問です。鈴子の左腿に火傷の跡がありましたけどそれはあなたが火傷を負わせたのでしょうか?」
ー左腿?
「あと、腰の辺りにナイフで切られたような十字傷が」
「あの子の体は傷ひとつないっ!白く柔らかい肌だでホクロも何もひとつもなかった!」
その場が静まり返ると警官たちが唖然とし、早苗が冷めた目で見る。
「馬鹿な男ね」
『あんた何言ってんですか?』
タイシがやれやれとし、高嶋がどっと汗を流す。
「そ、の。ち、違う。その、だ。て、ては、だだしてな、い。きききょ、ぜつ、されて」
名取がその手を震わせ、タイシが話す。
「あなたがされた鈴子にしてきたことは本人にとって相当な苦しみです。大切な母の再婚相手。これから2人のことを思えばどうしても我慢せざるをえない。そして、皇族の血を引くものとして世間に晒して仕舞えば批判を受けると言うことで苦しみ自殺を図った。あなたはその弱みに漬け込みさらにヒートアップさせて見たと言うことですね。彼女の裸を。そして触れた。俺が話したのは彼女が全て自虐した部分ですよ。あなたに触れた場所をすべて彼女は彼女自身で消そうと自分の体を傷つけた」
「そ、そん、な」
「あなたが言われた彼女の体の全てはもう現存しない」
「……」
「あと、あなたが共に行動された人達は全員不法入国な上に銃火器の所持をしていた。あなたも確か、俺が抑えた時持ってましたね拳銃を。しかも実弾入りだ」
「し、しら、なかった、んだ。本物」
「そんなはずないじゃないですか。俺に向けて一発放ちましたから。サイレンサーでしたから音は出ませんでしたけどしっかりあなたは引き金に指をかけて俺に向かって撃ちました」
高嶋が震えていく。
「その証拠は隠れていた友人が撮影していましたから残っていますので言い逃れできません。そして、あなたの鈴子に対する行為についてここにおられる方全員が聞きましたのでこちらも弁明不可です。黙秘をした所で罪は罪」
だんと音が響くと高嶋がひっと声を上げ顔をすぐに上げるとテーブルを叩いたタイシが手の包帯を見せる。
「これ、あなたがやったと同じようなものですから被害届出しておきますね。後鈴子からです」
タイシがスマホを操作し録音していた音声を聴かせる。
『高嶋琢磨。私に二度とその顔を見せないで。その声も私に触れた手も何もかも気持ち悪く吐き気がする』
高嶋が固まり、あの時のホテルの中で鈴子が苦しく憎々しくタイシが向けたスマホの録音へと告げる。
「私の苦しみをわかっていながら自分の快楽へと変えたお前が憎い。憎くて憎くてたまらないっ。私の苦しみを理解しない母も憎い存在にさせた。今の私は母を見ただけでお前を思い出してしまうっ」
鈴子が両肩を握り震わせ涙を流す。
「高嶋琢磨。地獄に堕ちろ。地獄に堕ちてしまえっ。それが私にとっての、私の唯一の救いよっ」
タイシが啜り泣く声が続く録音を停止させ力無く天を仰ぐ高嶋からスマホを遠ざけポケットに入れる。
「こちらがあなたに向けて彼女からの実際のボイスメッセージです。そのご様子ですとご理解されたようですからよかったですし、彼女の苦しみをわかったと言うよりかは彼女に完全拒絶された事に茫然自失されて居られるようですね」
タイシが答えない高嶋を見て苛立ちその胸ぐらを掴み強く引き寄せると高嶋がビクッと震える。
「お前の味方はここには誰もいない。外にもだ。そして俺はここだからこれ以上お前に手は出せない。だがもしお前がまた苦しみを鈴子や鈴子以外にも与えた場合容赦しない」
タイシが高嶋を離す。
「あと、陛下からもありがたいご伝言だ。姪を苦しめたお前に対して、お話をされてくれた」
タイシがボイスチェンジャーを出す。
「陛下から?」
「ええ。もし、話す場合があったらと言われて鈴子を通して俺に。本当ならこの行為自体いけない事ではあるのですが、陛下ご自身が姪である鈴子の苦しみを慮り残したメッセージです」
名取が頷き、周りが緊張の空気を持ち、高嶋が歯を僅かに震わせタイシがボイスチェンジャーのスイッチを押した。
ー高嶋琢磨。私は鈴子の家族としてこれからも鈴子をお前から守っていく。鈴子に二度と近づくでない。私にとって鈴子は大切な家族の一員だ。そしてお前は家族ではない。断言する。お前は赤の他人であり、鈴子にとって畏れる存在だ。二度と近づくな。私の大切な姪に。私の大切な家族に傷を付けたものを私は認めない。高嶋琢磨。私はお前を家族と認めない。認めることは一切ない。全てにおいて私はお前を否定するー。
ー大叔父様。陛下。ああああっ。
ボイスメッセージを聞いた鈴子が大粒の涙を流しながら嗚咽する。そばに早苗が付き添い鈴子を抱き鈴子が苦しくしゃくりを上げなきじゃくり、反対に高嶋が力無く拘置所で横たわりぴくりとも動かなかった。
ーうん。
旅館先でヒカルも特別に聞きタイシに親指を立てる。
「迫力ある。いや、ボイスでもすごい威厳感じるな」
「本人に会えばよりさらにだからな」
「ああ。これは、あれのアストレイの王様と比べると天と地の差だな」
「はあ。比べる相手が違いすぎる」
「あはは。でもお前も将軍も言いなりだったじゃんか」
「お互いに面倒と思っていたからだ」
「ま、そうだな。今じゃその面倒も面倒でないように行動してる感じだな」
ヒカルがボイスチェンジャーを返す。
「でもまだ終わってない感じ。鈴子狙いだ」
「ああ。俺もそう思う。あと、どうもなんか俺を狙ってる連中もいるみたいだ」
「お前を?」
「ああ。隙あらばで。常に見張られている。相手も気付きながらつけている」
「お前も大変だな。あと、メリットあるか?」
「知らない。まあとにかく、俺もだが俺も周りとの付き合いを控えたい」
「控えたいつってもなあ…」
ノックが響き唯子の声が響くとタイシがドアを開け浴衣の唯子が姿を見せる。
「ミオは?」
「寝たわ。あと、戻ってきた叔母様から聞いたわよ。陛下のお話の事もね」
「ああ。あと中にいい」
「ええ」
唯子が中へと入り座椅子に座る。
「ダリスさんは?」
「その戻ってきた人とバーだ」
「2人ともよく行くからな」
「お互いに情報集めとかも兼ねてでしょ。で、ミオちゃんだけど、今日の事みたいなの前もあった?」
「似たことはあった。その時も俺や知人が注意した。まだ本人は危険かどうかその判断。区別がわかってない」
「そうよね…。これから先もああだとこっちがはらはらよ。もう、ころっと変わったから。人格とかじゃなくて雰囲気ね。あの子自体一緒に過ごしてみてきたけど私達のような人と付き合う事。人と接する事に対してなんだか違うのよね。変わり者云々じゃなくて、生まれからかしら。うーん…」
唯子が頭を抱え、ヒカルが話す。
「父親がまず全てにおいてパーフェクト人間だし、万の部下を抱える相手だし」
「それは少なからずいるわ。まあでも、そのパーフェクトを子も引き継ぐものね。そして、オーラね。天皇家のような特別すぎる存在」
「ここの陛下は圧倒するなあ。声だけで」
「当たり前よ。2000年近くも血を絶えずに神の子としてこの国を治めてきた一族なのよ。そこらの国と比べたらそれこそ失礼よ。数多くの代表でさえ必ず会えば敬意を表す事もだけど自然と頭を下げるのよ」
「はあ…」
ヒカルが驚き、唯子が話す。
「そしてミオちゃんの場合は、圧倒させる力を持ってるわね。ただそれが今回は相手が弱かったからあれで済んだ。済んで助かったの。そうでなければ危険」
「ああ」
「確かにな」
「ええ。まあ、タイシ君にもだけど他も注意したし心配したからしばらくないとは思うけど見ておかないとだめね。あの子はまーだまだ世間知らず人知らずで育っているわ。あの子がバカに襲われた時も他人事のようにもう気にしていない」
「そうか?」
「そうよ。私は鈴子もだけど他に男に襲われて苦しんだ女性を見たことあるもの。その人たちは男が恐ろしくて近づけない。もしくは家に籠る。自虐行為を行う。精神を患う。全員がまともな生活を送ってないのに、あの子はまたいつも通りに過ごしてるもの…」
唯子がはあとため息する。
「図太いとか度胸がある云々じゃないわ…。あの子自身もトラウマになってるところはあると思うけど…。それもあってでこっちは心配心配ではらはらよ」
「あー」
「ミオは慣れている」
「慣れている?」
「生まれ育った場所での扱いが常に力で押さえつけられていたからだ」
「聞きはしたけど…」
「聞くと、実際とは違う。ミオの場合はまだ話せない当時のことが多いはずだ。ミオが思い出したくない程でもあり、ミオが当たり前でよくあることだと認識してしまうほどの行為をされてきた。それをミオはまだ分かっていない」
ヒカルが頷く。
「まあ、ミオが育った場所では子供を大人がおもちゃとして扱っていたところでもあるからな」
「おもちゃとして?」
「ああ。村自体は問題ない。その村を管理していた兵士と国に問題があった」
「どう言うこと?」
「言えば、ここで言う爆弾テロの道具として使われるほど命を軽く見られていたと言う話だ。使い勝手のいい道具。おもちゃとして。ミオは保護されるまでそこで過ごしていた」
「俺が聞いたのはそこで人狩りを行なっていたと言う話だ。人が人を的にして狩をする。兵士たちの遊び道具として子供たちが利用されていた。ミオもまた使われていて何度も大怪我をしたと聞いたし、その狩で亡くなった子供もいる。そして、ミオの常識は確かに俺たちが思う常識じゃない」
「と言うより、俺それ初めて聞いたけど?」
「本人が言いたくない事の一つだったからな。まだ他にもあるようだが、本人がまずそれを話すのか話さないのか判断出来ていない。つまり、無知による当たり前の常識として身についてしまっている。そして今回の旅行で少しでもこれは常識じゃないと分かれば疑問に思って問いかけをすると俺は思う。ミオはどうしても気になることは問いかけるからな。だが、今段階では気にしていないことが多いと思うな」
「それこそトラウマじゃない…。そう言うことね…」
唯子が突っ伏しはあとため息しうーんと考える。
「ここは言えば、平和過ぎるものね」
「わかる」
「はあ。まあ、あらかた分かったけど、注意してみていくし本人がその問いかけをするまでこっちから何も言わずに見れるところは見るわ。そしてタイシ君。広島の強殺と誘拐事件。叔母様の話じゃ、アメリカで待ち構えていたらしいけど現れなかったと聞いたわ。現れなかったと言うか、来てはいたと聞いた」
「来てた?」
「そう。監視カメラに映ってたそうよ。でも、2人は別ルートから外に出されたそうなの。スタッフの格好をさせて。それから行方不明」
唯子がやれやれとし、タイシが話す。
「こっちも畑中さんから聞いた。早苗さんもその件については合同捜査を行ったほうがいいと上に伝えたそうだ」
「正規のルートではなく別ルートで密入国したものね。それも、空港スタッフに化けて」
「ああ」
「なら、合同捜査するまでか。わかったわ」
唯子が立ち上がりやれやれとする。
「よかったら、私があの子をしばらく見る保護者だからまた何かあの子のことで思うようなことがあれば聞くし教えて」
「分かった」
「ええ。それじゃまた明日。おやすみ」
唯子が立ち去り、ヒカルがタイシを見る。
「まあ、話そうにも話せない事もあるからな」
「そして話していいかもだな。向こうもそれが分かって追求はしなかった」
「ああ」
「俺も休む。鈴子には骨がいったからな」
「寝なかったんだろ?」
「ああ。我慢していたし、俺自身も寝たふりしながらだったから疲れた。寝てくれたほうがまだ疲れはしなかったがな」
「わかる」
タイシが頷き欠伸をし敷かれた布団に横たわると即座に眠る。
ーそう言えばタイシ。前みたいに唸る事なくなったなあ。
ヒカルが不思議に思いつつ電気を薄暗くし縁側に来ると手元の明かりをつけ持ってきていた本を開き読んでいった。
ーリュウさん。あんた寂しいんやろ?
全裸の明美が同じく全裸でいるリュウの頭を抱きそうリュウへと尋ねる。リュウが力のない目を向けつつんーと声をだす。
「なんでそう思う?」
「勘。自分で自分の勘がいいと思うねん」
「そっか」
「せや」
リュウが息をつき、明美が話す。
「あと、じいちゃん亡くしたうちと同じ。苦しい感じ」
「…一緒にしないでほしいな」
「事情は違うけど一緒なわけやな」
リュウが体を起こし明美に覆い被さり、明美が力無く見るリュウを見上げる。
「僕は親しくしていた兄を殺した。殺さないといけなかった」
明美が頷きリュウが再び明美を抱きしめ明美がリュウを抱く。
「身内を殺して身内に殺されて。結局どっちも親しい人血の繋がりのある人物に殺されてんな」
「まあ、言えばね」
「事実や。そして、お互い寂しいんや。とても寂しい」
リュウが黙りながら明美を僅かに強く抱き明美もまた抱きしめ直す。
ー初めての感じがした…。なんだろう…手放したくないな…。とても。
寝息が聞こえると明美が涙を流し眠りについたリュウを見て軽く息をつきそのリュウを体を捻り隣に寝かせると手で涙を拭う。
ーいい年してほんまに…。あほやな。
明美が布団を掛け直しリュウのごつく皮の厚いその手を握り僅かに鼓動を跳ねさせるとリュウに寄り添いその目を閉じた。
ー申し訳ない…本当に。
「春樹っすけど扁桃腺の発熱でダウンしたそうです」
十四郎がタイシたちへと話し、ミオが軽く首を傾げる。
「扁桃腺?」
唯子がここのこととミオの首に触り説明しミオが触りながらなるほどと頷いていく。
「なら仕方ないか。そうしたら浦上天主堂とか有名どころいくか」
「そうっすね。ところで手の方は問題ないっすか?」
「ああ。慣れてるから平気だ」
「一応戦争経験者だからタイシは」
「苦労されてきたんすね」
「まあな。後そうしたら。俺はあんまりわからないからな」
「そこは私が案内するわ。路面電車使えばすぐだし」
「ああ」
「兄貴は警察とか用事は?」
「なし。終わった」
十四郎がはいと返事を返し唯子がそうしたらとスマホを出し行き先の検索を行った。
ーカステラ。
長い坂道沿いにずらりと土産屋が所狭しと並んでいた。そしてミオがカステラの店で試食品を食べてはどれにしようかと迷い、昼食では皿うどんを食べ、おやつにと角煮まんじゅう、チリンチリンアイスと食べる。
ー食うなあ。食わせるなあ。
ヒカルが思い、唯子がそのミオへとこれもこれもと食べ与えながら写真を撮っていった。
ー雰囲気はなんとなく似ているな。
別行動をとったダリスがタイシと有朋と共に教会の中へと入る。
『あちらとやはり違いますが空気と申しますか。似てはいます』
『そうですか?』
『ええ』
『神聖たる場所はどこも似てますよ。それは人が思う気持ちだからです』
有朋が告げタイシを見る。
『さてと。で、タイシさん。なんかダリスさんと一緒の時だけ八重子が落ち着いてきているんですよ』
『そうなのか?』
『はい。ミオさんの場合、危険から守られている。ただ、ダリスさんの場合、見た感じ大人しくしているんです。恐らくダリスノがここで言われた形は似ていない。けれど雰囲気は似ていると、言う感じかと思います。となると、ギルドではあるけれど、どこかの聖職者の方だったかもしれませんね』
『ああ』
『それを聞けば一人該当者がおります。ただ、聞いた名前と少し似ていただけで違うと思いましたので』
『どなたですか?』
タイシが尋ね、ダリスが話す。
『ええ。ルキウスフォルマデスと言う方です。聖職者であり戦士でもある方です。彼は50年前、勇者と共に旅をしていた一員でした。そして、魔物を退治し英雄として讃えられた一人。ただ彼自身それを否定した後、教会から批判を受け聖職者としての地位を剥奪。その後、国を去り一人で未開拓の地へと向かいその地を開拓し新たな独自の領土を作られたのです』
『それはハルメデス領ですか?国ではないけれど国のような存在のある領土』
『ええ。領土に入るまでも厳しい審査の元入らなければなりません。ルキウスはそこで亡くなったと聞きましたがまだ生きているとも聞いたりはします。タイシ殿は行かれたことはありますか?』
『ないですね。なにせ、見張られ生活でしたから。後その領主はギルドを嫌っていましたのでギルドでの仕事として赴く事もなかったです。旅のためと言われても、寄る必要もない場所でしたから』
『はい』
『ルキウスで、当たってるかもしれませんね』
有朋がタイシの後ろを見つつ答える。そこに、項垂れ両手で顔を覆う八重子の姿があった。
『どうにも八重子も色々秘密を持っていそうです。犯罪に手を染めた理由も、ここまで怨恨に染まってしまった事もその当時とルキウスと言う人物にあるかもしれませんね』
『ああ。後そうなるとで』
『トラブルメーカーなのはまだ変わりませんけど軽くはなってきてます。まあでもミオさんと30分ほどいる時間は守られてくださいね』
『分かった』
『ええ』
「有朋君お待たせ」
ぜえぜえと神父服を身につけた若い男が中へと入ると有朋が示す。
「大学の同級生です」
「ああ」
「どうも。あとようこそ長崎に。有朋君が急に来るからここ開けられるかと言われたんですよ。なので祖父に許可もらって巡回後にきたんです」
「なら家の手伝いをされているんですか?」
「ええ。お祈りと冠婚葬祭の時は祖父や父の助手してます。今日は挙式だったので終わって急いできたんですよ。有朋君が来るから開けましたけどここ普段は閉めてますから」
「ええ」
「はい。後から祖父が。この間のお祓いの御礼」
「またわざわざ。ありがとうございますと伝えてて」
「ああ」
「お祓い?」
「憑き物に疲れた信者の方がいたんですよ。お狐様です」
「ああ…。聞くは聞くな」
有朋が頷きタイシがダリスに伝える。
「あれからは?」
「問題なく過ごせてるそうだ。何せここでもお祈り中に突然泣いて驚く人たちが多かったから」
「そういったものだからな」
『狐?』
『ええ。小さな動物の霊がたまに霊感のある方に取り憑いてイタズラするんです。取り憑かれた方は突然泣いたり、夜中にその場をくるくる回ったりされるんです。それらを全て狐が取り憑いたと私たちは言いますし、大抵は神社で厄払いをすれば出ていくのですが、たまにちょっと強めの動物霊が取り憑いた時はそれも難しいので同じ霊感が強いものがその憑き物を調べてお祓いします。で。たまに、悪霊が化けてる場合もあるので厄介なんですよね』
『化けていると言うと、人が動物に?』
『もしくは動物が弱い動物に。亡くなった後の魂は色々な形へと変わりますから』
ダリスがうなずき、青年が話す。
「ほんと、英語話せるっていいな」
「ふふ。今からでも頑張れ」
「はあ。苦手なんだよ英語…」
有朋がファイトとエールし青年がはいはいと答えた。
ーこの可愛さ。安らぐう。
ミオが旅館の部屋ですやあと眠り唯子がスマホカメラで映していき、部屋に来ていたヒカルが話す。
「撮りすぎ撮りすぎ。そしてミオもまた食べたなあ。飯食えるか?」
ヒカルのスマホがなるとヒカルが耳に当てる。
『ヒカル。受付に来た』
「分かった。唯子。タイシたち来たから迎えいく」
「ええ」
ヒカルが立ち上がり部屋を出ていき、唯子が旅の記録と撮った画像をアルバムにして整理した。
ー名前ない?なら、リカでどうや?
ぴんと狐耳を持った少女がエプロンにワンピースを身につけ雑巾を持ちいそいそと床を掃除する。そして、明美が棚の掃除をしていく。
「ほんま、食べるだけのとこやな。リカちゃん水まだ汚れてない?」
「黒いです」
「なら変えないかんな」
明美が椅子から降り拭いててと告げ汚れた水が入ったバケツを持ち裏口から外へと出ると早速水を変えていくが突如男たちが姿を見せるとん?と声を出した。
ー綺麗に、綺麗に。
リカが一所懸命掃除をしていたがけたたましい音が響くと驚きすぐさま裏口へと向かいそっと覗く。そして目の前に男が飛んでくるとビクッと震え身を隠し、投げた明美が手を叩く。
「こんドアホども。なにがうちのせいで見たかったやって?呑気すぎやろ」
リカが汗を滲ませ、明美が唸るボスらしき男の胸ぐらを掴み何度もほおを叩く。
「や、やふえ」
「あ?喧嘩うったんはそっちやろ?」
「あら?」
明美が上を見上げ、箒に座ったミーアが空から降り着地する。
「貴方たち誰かしら?ここリュウ将軍の」
「リュウさんから買われたもんですけど」
「え?買われた?」
「このバカ野郎たちは違いますけど」
明美が男を見せぽいと捨てる。
「買った?となると、商品?奴隷?元?」
「私は両親に売られて商品になってすぐに買われました。あっちの子は私のわがままで買ってもらったんですよ」
「リュウ将軍が……はあ」
ミーアが目を丸くしながら怯えるリカを見て明美を見る。
「ちなみに私の場合は特別購入です。三億で買われましたから」
「リュウ将軍が?それだけ出して?貴方を買い取った?」
「はい」
ミーアがさらに目を丸くしつつ指を上へと上げると男達のみ空へと浮かぶ。そしてミーアが何も言わずに男たちの見たら立ち去る。
「あの女の人誰やろ。まあ、将軍言うてたからええか」
「あ、明美さん。怪我とか」
「ないない。後掃除の続きしようや」
リカが小さく頷き明美がリカを連れ中へと入る。
夕方ー。
汗を滲ませたリュウが慌てて家の扉を開ける。そこに目を丸くする明美と茶を飲むアルスランがいた。
「君…。国から出てんじゃなかったの……」
「終わって戻ってきたらミーアから報告があった。三億で買った少女がリュウ将軍の家にいたと」
「なんで、ミーアちゃんが…」
「うまく逃げおおせた奴隷商たちを捕まえに来たらここに勝手に侵入したから追いかけたそうだ」
「……」
「まあええやん。こっちもタイシのお養父さんのお話聞けたからなあ。後タイシのことも話せたし」
リュウが脂汗を流し、アルスランが告げる。
「ああ。実の祖父が亡くなったこと。実父と実母の関係についても粗方解決したことか。それから、義理の養父についてもだな。あとはミオや他か」
「そのミオちゃんの学習で激戦区や被害が大きかった場所や回ってるって話したんや。あとはうちの大切な祖父が実の馬鹿両親に殺されてうちが高額で売られたのをリュウさんが買った話してな」
「ああ。そうだ」
アルスランが湯呑みを軽く動かし最後の茶を飲む。
「あとはタイシの昔の話だ」
「せやなあ。そんでうちはここでのタイシの話聞いたんや。確かにタイシはここで暮らしたほうがいいって実感したわ。まぁだここがタイシにとっての特別が多いから。向こうはないな」
「そ、う」
「せや」
「邪魔をしたな」
「ええですよ。こちらもおおきに。掃除手伝ってくれて」
「いや」
「君、掃除したの…」
「届かないところをな」
リュウがそうと力無く答え、アルスランが頷きそのまま出ていく。
「タイシのおとうはんめっちゃええ人やん。タイシも新しいお父さんええ人でよかったな」
リュウががっと明美の両肩を掴むと明美がじとおとみる。
「リュウはんうちが頭ええのは知っとるやろ?会話もそうや」
リュウが顔をしかめ大きく息を吐き出す。
「あとここ国の中ならいずれわかるや無いか。サラさんも話してたしな」
「そうだけどさあああ」
「ならそうや。それからお茶あるから飲んでから仕事戻るんやで」
リュウが力無く明美に寄りかかり明美が離し席へと座らせお茶お茶と台所へと向かった。
ーどうでした?
ミーアが話し、アルスランが告げる。
「頭がいい。隙を見せない子だ。あの少女に聞いてもリュウについての聞き取りはできない」
「売買場所も?」
「無理だろうな」
ミーアが頷き、ダガンが話す。
「アルスラン将軍。本当にリュウ将軍がテオドロスギルド長殺害の人物でしょうか?」
「まだ確信はないが、奴は隠し事が多いのは事実だ。そして今の環境の変化で変わる可能性もある。続けて見張っていてくれ」
ミーア達が返事を返し、アルスランが頷き答えた。
ーここどこだろう…。
ミオがどこかの駅構内の椅子でポツンと座っていた。
ーえと、席席。
唯子が周りを見ながら席へと座るとミオもまたその隣に座る。そして、唯子が眠るとミオがトイレと立ち上がりトイレに向かう。その後先に戻るも唯子がどこにもおらずあちらこちらと見渡す。
ー席。
鹿児島とアナウンスが聞こえるとミオがハッとしすぐさまおりに向かった。
ー降りて、なんかぼうとして……。
「……どうしよう。えと」
ミオが辺りを見渡す。
ーどうしよう……。
ミオがポケットを見てお金がないのもわかるとずうんと落ち込む。
「いたいた。あ、起きとる」
ミオが顔をあげると少女が座り警察官と駅員がそばへとくる。
「…」
「その子?」
「はい。具合は?ずっと項垂れてて無反応だったから」
「あ、え?私が」
「そう」
「話しかけても応答なかったからね。鹿児島行きの切符渡されたもんで」
「……あ、はい。鹿児島に」
「うん」
「スマホは?連絡できるのある?わかる?」
ミオが頭を振り、少女が話す。
「にいちゃん。もう鹿児島行きはなかと?」
「ああ。事故があったから今ストップしとるし、動いたとしてももう終電だけんな」
「あー」
「向こうには連絡したけんが連絡あるど」
「うん。じゃあ、どうする?ああそうだ名前は?」
「今村澪です」
「私は田所瑠奈。年は?」
「17」
「ならうちと一緒だ」
瑠奈が嬉しく笑みを浮かべる。
「保護しようか?」
警官が話し、駅員が告げる。
「いやよかよ。お前のとこも事件あって人手足りん言うてきてくれてるけんな。瑠奈がおるけんこっちで預かる」
「ああ、なら、悪かけどそうしてくれたら助かるたい。あと、病気の子かもしれんけん病院はー、明日休みか」
「うちが様子見ときます」
警官が頷き、ミオが申し訳なくすると瑠奈が気にせんと取り敢えず下着とか買ってと告げた。
ー八代。
「ぼうとしながら降りてきたそうです」
唯子達が窓口に来ており、唯子があせあせとする。
「ええとそれで」
「はい。保護したとのことです。ただ今日は事故で新幹線も動かずこのまま終わりますので明日向かわせるとのことでした」
「そうですか」
唯子が安堵し、タイシが話す。
「宿での様子は?」
「寝てはいたけど…。でも、なんか寝てたとしても2回、3回は手洗いしてから布団に入ってたのはあったわね…」
「夢遊病かもしれないな。薬を渡されていたから。もしかしたら飲み忘れて飲んでなかったかもしれない」
「あー……みとけばよかったわ」
唯子が頭を抱え、タイシが話す。
「本人自体薬を毎日飲むと言うことが初めてみたいなものだからな」
「ええ…」
「病気の子ですか?」
「はい。あと、明日こちらから迎えに行きます。もしよかったらあちらにそうお伝えする事は?」
「できます。ただ申し訳ありませんがこちらももうお時間なのでまた明日でもよろしいですか?あちらももう閉めていると思います」
タイシが12時を回ったのを見てわかりましたと返事を返し連絡先を教えしょんぼりとする唯子と共にシャッターを閉め始めた窓口をさった。
一軒家の明かりがつき瑠奈が自分の部屋へと案内すると布団を敷く。
「ならここに寝てね」
「はい…。その、ありがとうございます」
「よかよ。酔っ払いよりたいぎゃまし。ここ繁華街近くだけんたまに家の前に倒れてたりしとると」
「家の前に?」
「そう。ゲロ吐かれた時はほんと参る。あと、にいちゃん。さっきの駅員ね。あっちは仕事で朝帰りだから」
「朝までお仕事なんですか?」
「そう。交代制」
瑠奈が買ってきた豆腐サラダをミオへと渡すとミオが受け取る。
「食べたら歯を磨いて寝よう。ご飯結構食べる?」
「あ、はい」
「よかった。材料たくさんあるけんたくさん食べて。腐らせるより食べてくれた方がよかけん」
「あ、えと、その、材料。お金」
「よか。ただ服代とかだけはもらうけん。あと食費はゼロ。うちのばあちゃん達が育ててくれた野菜使うけん平気。あと食べて早く寝よう」
ミオがこくりと頷き豆腐サラダを早速食べて行った。
翌日ー。
「ただいま」
駅員の男で瑠奈の兄がもどると朝食のテーブルを見る。そこにはパンの他にサラダやスープ、肉、味噌汁と数多くあり、ミオが夢中で食べ、瑠奈が兄を振り向く。
「お帰りー」
「多いな」
「たくさん食べるって聞いたから。あとお昼の分。それからうちも鹿児島に遊びに行くけん」
「ああ。なら天内に話とく。何時だ?」
「10時のがよか。帰りは夜9時。いつもの時間。土産何がよか?」
「トンカツ」
「よく行くの?」
「ええ。買い物とかに行くと」
「後は墓参り。俺の家族が眠ってるからな」
「俺…」
「顔見たらわかるけど俺と瑠奈は血の繋がりがなか」
「そう。血の繋がりはないけど義理の兄弟。うちの父。そしてにいちゃんの母が結婚したと。お互い離婚経験持ったもの同士でね」
「ああ」
「それで、ご両親は」
「5年前に事故で他界した。それから二人で暮らしとる」
「そう。ここはみんなで過ごした家」
兄が席につき、ミオが話す。
「えと、なら、その、ルナは学校は?」
「嫌い。だから行かなかった。そう言う選択もあり」
ミオが頷き、瑠奈がふっと笑う。
「まあでも、ちゃんと自宅で勉強してるし資格も取っとる。あとは、駅員のにいちゃんのサポート。時間がバラバラだから」
「ああ。三交代制だけんな」
「三交代制?」
「朝、昼、晩のうちのどこかで八時間仕事」
「ああ。朝だと3時から12時。昼だと11時から8時。夜で9時から4時までとかだな」
「場合によっては二交代もあってね。大変とたい」
ミオが頷き、瑠奈が話す。
「それで今日は晩。深夜交代。ただし、新幹線が止まってけんね。その引き継ぎもしてからだったから遅かったとよ」
「そぎゃん。トラブルだけはさけたかけどしかたなか」
兄がご飯をとり味噌汁を注ぎおかずを取って行き食べていく。
「大変ですね」
「大変ばってんやりたかった仕事だけんな」
「そう、そのために学校に行って頑張ってきたから。ミオは学校は?」
「私は学校は行ってない。でも、知りたいことがたくさんあるから協力してもらって教えてもらってる」
「そぎゃんか」
「よかこつたい。そうやって周りが面倒見て勉強も教えてくれる」
ミオがどきっとし、瑠奈が話す。
「そぎゃんね。ミオは恵まれとる。ちゃんと周りの人がミオのことみてくれとるけん。うちは、にいちゃんがわからないところとか教えてくれる」
「昔はな。今は全く違う分野だから無理だ」
「違う分野?」
「検定のこと。食べてて。持ってくるけん」
瑠奈が立ち上がり席を離れる。
「あいつにはいつも気ば使ってもらっとるけんな」
「え?」
「俺たちは義理でも他人だ。お互い親戚を持つ身だし、あいつはここに父親の両親がいるけど俺といるといってな。まあでも、半年後にはその両親のもとに行く予定とたい」
「どうしてですか?」
「俺の結婚。婚約者がおってここに住む予定で決まった」
ミオが目を丸くし、瑠奈が本を持ってくる。
「今聞こえた」
「そぎゃんか」
「そう。あとそっちこそ気ばつかっとるたい。後これが本」
瑠奈が簿記やパソコンの検定問題集を見せるとミオがそれを見て開いていく。
「実際にやらんばわからんやつばかりだねんな」
「でも仕事する上ですごく役立つ資格たいね」
「この検定が?」
「そぎゃん。会計とか経理とかお金の計算は仕事する上で不可欠だけん」
「そぎゃんな」
「お金の計算…」
ミオが本を見下ろす。
「いるならもらってよかよ。それもううちいらんで処分する予定の本だったけん。あとうちはノートに書いて覚えるやり方しとるけん汚れも何もなか」
ミオが考え、兄が話す。
「旅行しとるなら荷物にならんか?」
「あー、そっか」
「あの、この本欲しい」
ミオが話し、瑠奈がじゃあ郵送すると尋ねるとミオが頷き答えた。
駅構内ー。
ミオと瑠奈が隣同士の席に座り、ミオが駅内で買ったはちみつサンドを食べる。
「またいつか地元くるならおいしいところ知っとるけん案内するよ」
「うん」
「ええ。あと、鹿児島着いたら着いたでお昼だけん。もしよかったらになるけど穴場の定食屋知っとるけん案内するたい」
「穴場?」
「知らない人は知らない。知る人ぞ知る地元の美味い飯処。せっかくなら美味しかもん食べて楽しんでほしかけんね」
ミオが頷き、瑠奈が後鹿児島にはと話していくとミオが楽しく頷き答えた。そして鹿児島駅に到着し改札へとくるとすぐさま唯子がやってきて抱きしめる。
「澪ちゃん。よかった無事で」
「その、心配かけてすみません…」
「いいわ。それとお薬は?飲んでなかった?」
「なんだ。兄の連れかー」
ミオがルナを振り向くと瑠奈の視線の先に気まずいタイシがいた。ヒカルがすっと指差し、瑠奈が話す。
「そうそれ。うちの実の兄」
『え?』
ミオが驚き、瑠奈がやれやれとする。
「兄?妹いたの?」
「…二度、三度。会った事はある」
「まあね。最後はいなくなる1週間前。母が一緒だけど実父が違って私の父が私を引き取って育てたんです。父親違いの兄がいるって聞いたんでたまに父が住職さんと連絡を取り合って会わせてくれてたんです。写真も一緒に撮ってるのあるんだけどなあー。飾ってたはずだけどなあー。部屋に」
「…全部しまった」
瑠奈がタイシの脛を蹴るとタイシが汗を滲ませる。
「勝手に送ってきた荷物とか送り返すから。こっちは父方の祖父母のとこに引っ越すからいい加減邪魔。引越し理由は再婚して出来た義理のお兄さんが結婚するけんね」
「…そうか」
「そう。はあ」
瑠奈がやれやれとしミオを見てタイシを指差す。
「失礼なことされてない?」
「えと、何も。その、私が逆に迷惑かけて…」
「未成年だから迷惑かけるの当たり前。教えてもらってないこともたくさんあるなら仕方ない。て言うか、連絡先ぐらい渡しときなさいよ。病気持ちの子なら尚更じゃん」
唯子が気まずくし、瑠奈がむっとしながらタイシを見るとタイシが黙り込む。
「その、すまん」
ーうわあ。
「たく。あと、これ領収証。新幹線と服代。ご飯代はよか。野菜とかはじいちゃん達からの貰い物だけん」
「そう言うわけには」
「次困っとる人に飯代使え。うちは困っとらん」
瑠奈が無理矢理タイシの手に領収証を渡す。
「けどそれは違うから。あと、どこかの母親の弁護士は直電あったけん。反省してこれから更生するって聞いた。それから、振り込んでなかったうちに対する養育費が一括で振り込まれたけんな」
「…ああ」
「…はあ」
瑠奈がため息する。
「とにかくそれだけ支払い。そっと病気持ってる子なら連絡先カード持たせておく。そこに百均あるから連絡先を落とさないようなものを持たせる。あとはー」
ミオが連絡先の書かれたカードを挟んだストラップ付きの名札を下げ服の下に隠し、薬もまたその中へと入れる。
「これでよし。御免なさいミオちゃん」
「いえ…。あと、タイシさんの妹さんだったのに驚きました」
「そうね。あと、隠してたというか。彼は余計なこと言わない感じだからただ単に言わなかっただけかも」
「でも、写真とか。しまったって」
「うーん…そこは、本当に知られたくなかったか、色々と守りたかったとかじゃないかしら?彼自身それまでお母さんのこととか問題あったからとかじゃないかしら?」
「あの、お母さんでしたからね」
「ええ」
ミオが頷き唯子と共にタイシ達の元へと向かう。そしてヒカルだけがその場におり、ヒカルが話す。
「いいのあった?」
「ええ。タイシくん達は?」
「持ってきた検定本送るからって宅配便の手続きに行った。あと、妹にも驚きだけど何も言えないタイシにも驚いたなー」
「そうね。それと、妹さんはしっかりしてる感じね」
「ああ」
「兄含めて9人?それであってる?」
「ああ」
瑠奈がスマホを手にしながらタイシの元へとくるとどこかへと連絡する。
「何?」
「食事。知り合いの所に予約をとってくれるそうだ」
「穴場?」
ミオが尋ね、瑠奈がそうと頷き話をしていく。
「はい、オッケー。地図はここだから送って」
「ああ」
「連絡先交換したんだ」
「無理矢理された」
瑠奈がタイシの足を蹴るとタイシが顔をしかめ蹴るなと鼻を鳴らした瑠奈へと告げた。
「こんにちは。瑠奈ちゃん久しぶりね」
落ち着いた和食どころで割烹着を着た老婆が微笑み話すと瑠奈が告げる。
「お久しぶりです。あと、お中元のお肉ありがとうございました」
「よかよ。こっちも太刀魚ありがとうね」
「太刀魚?」
ヒカルが検索し立ち泳ぎする刀のような魚を見ておおと思わず声を出しミオにも見せる。
「いつから知り合い?」
「にいちゃんの爺ちゃんの同級生。後一応からが話してた実兄」
「そぎゃんかあ。まあた苦労してきたですね」
「いえ」
「苦労はしてきたけど、周りがよか人達がおったけん助けられとります。後お部屋はどこ行けばいいですか?」
「奥に用意しとるよ。どうぞ」
老婆が立ち上がり瑠奈が靴を脱ぎ下駄箱へと入れるとこっちと案内する。タイシが脱ぎ他も脱いでいく。そして奥へとくると座布団が並べられメニュー表が置かれており、体調が良くなった春樹が告げる。
「エアコンが年季はいってる」
「もうそれは壊れてますよ。夏はそこのエアコンだけです」
「ああ」
「テレビがブラウン管だ」
「そうそう懐かしい」
「そのテレビは一応つきますよ」
春樹がどれどれと渡されたリモコンを操作し古い画面にニュースが映り込む。
「こんなんだったかー」
「今のテレビと全く違うな」
「なんか見にくい」
ヒカルが目をしぼめ、唯子が話す。
「画素数が違いすぎるもの」
「画素数?」
唯子がこう言ったのとミオへと説明しミオがなるほどと頷く。
「兄。これ亡くなった和尚さんに。前おいてて」
「別にいいのに」
「いやよくないし。当たり前だし。今の所東京行く予定なかったからよかったよ。はい」
無理矢理瑠奈がタイシの手に御仏前と書かれたお金が入った封筒を持たせる。
「瑠奈ちゃん。何がおすすめ?」
「とんかつとしゃぶしゃぶですね。しゃぶしゃぶは土鍋が来るんで自分で茹でます」
「しゃぶしゃぶ。あー、さっぱりしたのか」
「ダリスさんはそっちがいいかもな」
「ああ」
タイシが話し、ダリスが頷きそれがいいと答える。
「私もそっちがいいわね。ミオちゃんは?」
「ええと」
「ハーフなら、しゃぶしゃぶは茹でた状態でとんかつ半分とくるけんそっちにしてみたら?」
「じゃあ、ハーフ」
瑠奈が頷き、春樹が俺もそれにしようと告げ十四郎は体重制限があるからとしゃぶしゃぶと野菜追加のメニューにした。
ーぶあつっ。後綺麗なピンク。
唯子がミオの桜色のトンカツを見て驚くとミオが目を輝かせながら口を開け早速食べ、春樹が見ていく。
「このとんかつテレビで見たことあるような…」
「あると思いますよ。都会で人気のトンカツ桜のとんかつ屋さんで、そのご両親が営んでる場所なんです。ここは取材とかはみんなNGだから地元しか知らないんですよ」
「それでか。ならここが元祖?」
「トンカツに関しては都会の息子さんの方が元祖ですがしゃぶしゃぶはこちらです。元々しゃぶしゃぶのお店だったんですが息子さんがカツをはじめて食べてみたいと言う地元客が増えはじめて息子さんの協力のもとトンカツを始めたんです」
「へえ」
「しゃぶしゃぶの方も美味しいわ。甘くて柔らかい」
唯子が嬉々としながら食べ比べとミオにも出来立てのしゃぶしゃぶを食べさせるとミオが美味しいと食べながらこくこくとうなずく。
「水圧カッターでお肉をカットしてるので薄くて柔らかいんだと思います」
「すい、あふ」
ミオが動かしながら尋ねると唯子がこれと水の圧を使いものを切る機械を見せる。
「前は店主さんが切ってたんですけどやはり歳をとって目が見えなくなり始めたので思い切って購入したそうです」
「ああ」
十四郎がダリス達に伝えダリスが頷き、唯子が尋ねる。
「ここ後継者の方は?」
「はい。います。娘さんが継ぐ予定です。いまは勉強のために広島にいるそうです」
「ええ」
ー広島。
ーそう言えば有朋が話してたのまだ分かってないな。
唯子、ヒカルと思うもタイシが瑠奈へと話しかける。
「瑠奈。出た後の予定は?」
「買い物とにいちゃんの爺ちゃん達のところに少し遊びにいってからまた買い物して帰る予定。食べ歩きの美味しいとこは知ってるけどミオから先に聞いた予定ルートだと外れた場所だから」
「そうなの…」
「レンタカーあればいけるとこだけんね。移動は公共のって聞いたから」
「レンタカーかあ…。私持ってるから借りれるわね」
唯子が話し、春樹が話す。
「免許なら俺と十四郎も持ってる。3台でならこの人数でも十分だし回るところも増えるからいいんじゃないかな?」
「そうね。なら、借りていこうかしら」
「そしたら駅前に二店舗あったと思いますから行ってみてはどうですか?」
「ええ」
ミオがレンタカーと頭をはてなにさせる。そして。
ーなら私はここで。何かあれば。
「そこの兄を通して連絡ください。それじゃ。ミオまたね」
瑠奈が手を振りその場をさり駅へと向かう。ミオがやや寂しく手を振る。
「妹って、実の母と会ったことあるか?というか、押しかけたりしたか?」
ヒカルが尋ね、タイシが話す。
「俺が聞いた話じゃあったそうだ。それで接近禁止令を出したと言う話だった」
「あー」
「ところで東京戻ったらその写真見せて」
唯子が話すとタイシがため息をし分かったと返した。
ー偶然って本当あるもんなのね。
瑠奈が買い物し、そして電車に乗り無人駅で降りると少し歩き住宅地へと来る。その中にある畑が目の前に広がる家のチャイムを鳴らす。しばらくすると扉が開きボサボサ頭のタバコを吸う肌が姿の女が出る。
「あーもうそんな時間?」
「そんな時間。はいこれ。愛しの弟さんから祝いの返礼。結婚式の時はちゃんとした服装でこいよだって」
「分かってるって」
「うん。あとこっちはいつものお土産とか。ばあちゃん達は?」
「お友達と出かけたっぽい。爺ちゃんはデイサービス」
女がふうと煙を吐きながら中へと入り瑠奈もまた入る。そしてキッチンへと来ると女が換気扇をつけ今度はそこへと煙を吐き出す。
「まあだタバコやめきれないんだ」
「そぎゃんね。あんたはどう?向こう世話になるとだろ?寂しくなか?」
「まあ、寂しいは寂しいけど、ただしじいちゃんとちさばあちゃん優しいから」
「確かにそぎゃんな」
「うん」
「学校行かんで高校の卒検資格取ると?」
「まあね。でないと大学とか行けんし」
「あんた頭よかけんとれるよ」
「ありがとう」
「どうも。後あれから嫌がらせはなくなった?弟はなくなったって言ってたけど」
「ないね。むしろ警察の人たちがよくしてくれて特にバカしたのは連行されたから。それからなし」
「なら、よかったよ。警察の方もバカしたせいで偉い目におうたようだしね」
「まあね。あとは実母か。でも、兄が何か言ったみたいで反省して養育費。今まで払わなかった分全額払いましたって弁護士さんから連絡あってさ」
「金?」
「そう。死んだ和尚さんの遺産とか全部兄が実母に相続させたって。税金は取られるけど私みたいに払うの払わなかった人たちの分はあるそうだから払ったってさ」
「へえ」
女がタバコを水につけゴミ箱へといれる。
「よほど反省したんだ。なーに話したんだろうね」
「さあ」
「ただいまー。瑠奈ちゃーんきたとね」
「きたー」
老婆がよいしょと声を出し中へと入る。
「早かったね」
「ああ。なんか孫が熱出した言うて戻って見る支度せなあかんってヨリちゃんがいうたけんがね」
「子供はよく熱引くもんね。これ瑠奈からお土産」
「あら。ありがとね」
「よかよ」
老婆が受け取り、瑠奈と話し瑠奈が楽しく話して行った。




