東京8
ーはあ。
早苗が肩をままやれやれとしながらルーカスと共に旅館の待合室で待っていたタイシと唯子の元にくる。そこに、少年が顔をしかめ立っており、唯子がその少年を見て話す。
『やっぱりカルロスがしたわね』
『言われたからね。まったく。日本の警察は小言が』
『当たり前よ。ここは日本。母国アメリカでもないんだから。ルーカスは何食べてるの?』
『レモンタルト。待っている時に派手な年配女性たちからもらったんだ』
ルーカスが食べ、早苗が話す。
『待っている間にスマホの操作とか教えたお礼でいただいたそうなの。あとなんか1人増えてるけど?』
『ああええ。白鷺神社の宮司さんのお孫さんとの事よ。キヨさんに言われてついてくる事になったわ。ちなみにキヨさんはそのことを話さずにオーストラリアに行ったとか』
『ええ。あと、そうしたらあの子が例の子かしらね』
『例の子?』
『2週間昏睡していた子で、その前に誘拐されていたのよ。そして山の中で発見された。それもあなたが消えたところ』
『あそこで?』
『そう。その時の記憶が分からなくて犯人も捕まってない。その子は学校の終わりに連れて行かれたそうなの。そしてそこで見た人の話で分かっているのは男。黒スーツの40から50の男って話』
『なら、連れ去ってそして、向こうに?いやでも』
『もしかしたら、本当はその子が行く予定だったんじゃない?けどあなたが先に来てしまったとか?』
『…』
『まあ、これは推測になるけど。とりあえずその子はそのあとその山の近くで見つかって2週間目覚めなかったと言うことよ。その2週間の間に何があったかは佐々木キヨに聞いたわ』
タイシが頷き、唯子が話す。
『叔母様。2人が内緒にしていることってなに?ルーカスたちは知ってるようだけど?』
『こっちも本当かはよくわからない』
『実際行ったことないし話だけだったから。だけど、実際に行った人が目の前にいれば従兄弟もいる』
『ミオちゃんのこと?』
『ああ』
『そう』
『まあでもここで細かくは話せないわ。それと、疲れたから部屋に行くわよ』
唯子がもうと声を出す。
『今知りたい』
『だーめ。とにかくだめ。部屋は?』
唯子が再びもうと声を出しこっちと早苗を案内する。タイシは2人に鍵を渡し2人と共に向かう。
『早苗さんから話があったのか?』
『あったと言うか、俺も兄さんも独自で入手した情報から得たんだよ』
『ああ。俺はそこまでお怒りは喰らわれなかったがカルロスは違う』
『はあ。そのせいであちこち見て回ってたのバレて怒られたよ。そのあとパソコンのネット回線の制限されるわ。やりたいなら手伝え言われて仕方なく手伝ったりとかしてる。手伝いについて他のハッカーを撃退。もしくは今回みたいな母さん要望によって何者かを調べるためにハックして情報を得るんだ。大抵の人はほぼ素人だからわかりやすいけど』
『だが今回はそれで縛られたんだろ』
『あれは俺のせいじゃない。母さんのせい』
『その割には楽しそうだったけどな』
『兄さんだってそうじゃんか』
カルロスがルーカスを攻めルーカスが交わしつつタイシの案内の元部屋へと辿り着き中へと入った。
ーそんな…。
オードブルが用意された店内で老人が頭を抱え、三つ編みにメガネの少女が不安な面持ちをする。そこは和食の酒屋で表には一日貸出の札があり、中には料理が多く並べられていた。
「くそっ!だまされた!」
「お爺ちゃん…」
「今時の若いもんはなんてことをしてくれるんや。くそ」
老人がさらに項垂れ少女が老人に触れる。
「お爺ちゃん。諦めてとにかくお客さん呼ぼうや」
「だけど…」
「私お店の外で呼びにいくから。あと、もしかしたら遅れてくるかもしれないから中で待ってて」
老人が力無く頷き少女がその場を離れ繁華街で人が賑わう店の外へと出た。
ー占いは数多くある。
「例えばこれ」
中華の店で有朋がタロットをミオたちに見せる。
「よく聞くタロット占い。トランプ占いもある」
「ええ」
「ちなみに、どの占いも真偽は不明だから信じるかはその人次第にもなる。そして占いや運勢は行う人の腕次第と欲次第で商売にもなる」
「宗教とかにもあるわね」
「そう。儲けのために全く意味のないものを高く売りつける人もいる。それもまた関わってくる商売なんだよね。ちなみに俺はこれらよりもこっちが好きだし得意なんだ」
有朋が虫眼鏡と丸い半ドーム型の文字が書かれたものを出す。
「手相と昔からある陰陽師でお馴染みの占星術」
「占星術?」
「星読み占い。今日みたいな星が綺麗な日の星を見てこれから先の運命とか占うんだ。これは中国から伝わった占いを日本の陰陽師と言う魔を払う役職を務めていた人たちが作った占いでね。今ではないけれど今でも陰陽師に関したものは人気なんだよ。映画とか漫画とかその他諸々で。で、その人気な人たち。約1500年前の平安時代に作られたものがこの占星術だ」
ミオが驚き、有朋が盤をずらす。
「今日は冬の星が見えたからね。そして秋の星が少し」
「そう言われても全くわからないわ」
「それが占いでしょ。あとこの子の占い八割がた当たるって言う話」
早苗が食べながら告げ、有朋がしーと口に指を立てる。
「それは秘密で」
「あらどうして?」
「いやどうしても…、人が群がるの苦手なんですよ。だからこれも趣味の一環出してるようなもんですから。さてと」
有朋が手を止めると今度は5本の棒を出し手で擦る。
「それは?」
「見ての通りただの棒。で、これは俺独自」
有朋が棒をテーブルに立て離すとパタパタといろんな方角に倒れる。
「これについては俺の守護霊の力も借りて特定の人物を決める決め方なんだ。で、今回の占いの結果。恋愛だね。将来の相手が近くにいると来た」
唯子たちが興味を持ち、早苗がフーンと声を出す。
「そんなのもわかるんですか?」
「信じる信じないかは己次第であり、これはあくまで本人次第だから。で、占いの結果、南東に近い席に座る人。そして将来の相手が近くにいる」
「南東」
唯子がアプリで方位磁針を出し置く。そしてフカヒレを食べるルーカスを指差すと早苗がルーカスを見て目を丸くする。
「あら」
『なに?』
『星占いであなたの将来の相手が近くにいるってでたらしいわよ。今やったのそれ』
ルーカスが飲み込む。
『あのよくわからないのか?』
『そう』
『よかったじゃん兄さん。ここ来る前に振られたばか』
ルーカスがフォークでカルロスの残していた牛肉の炒め物を刺し口にし食べるとカルロスが俺のと思わず声を上げる。早苗がやれやれとし、唯子がむすっとしながら食べるルーカスへとニヤニヤする。
『なに?ついてきたのは傷心旅行も兼ねて?』
『うるふぁい』
『ま、私としてはよかったとは思うわ。向こうは親子揃ってなんか我儘だし、私や夫の職業もあって目立とうとする気満々だったもの』
『…ふん』
ルーカスが飲み込み、カルロスがしょんぼりとする。
『あとこの子はなーぜか、飲食店経営の子を好むのよね。あと日系人』
『知ってる知ってるー。でもこの間騙されたわよねまんまと』
ルーカスが大きく舌打ちし、早苗がはいはいと頷く。
『そうね』
『どうして飲食店経営を?』
ミオが尋ね、ルーカスが話す。
『うまい食事。ただそれだけだ』
『美味しいご飯が食べたくて?』
『ああ。まずいのを食べ続けるのは嫌だからだ』
早苗がやれやれとしルーカスの頭をポンと叩く。
『そこは私たちね。仕事仕事で家庭料理を疎かにして我慢させてたのも悪かったわ。家政婦を雇ってはいたけどこの子だけどうしても残してたのよ。唯一全部食べてたのは我が家の味。唯子ちゃん家族が作ってくれたご飯くらい』
ルーカスが無言となり、唯子がへえと声を出すとルーカスがぷいと顔を背ける。
『俺は特に何も気にせず食べれたけど兄さんは細かいとこあるからな。コーヒーとかもこだわり持ちまくりだし。自分でいれないと納得しないし』
『それは仕方ないわよ。でもこの子の淹れるのは美味しいわ』
『まあそうだけど』
『研究したからな』
ルーカスがぽつりと話、有朋が告げる。
『あくまで占いと言うことは伝えときますね。あと家庭料理というのは確かにいいものですし、元気な源でもありますから』
『もうしないの?』
『しない。今日の星の力を使ったからまた今度。あと、これはその人に対してじゃなくてランダムだから。手相ならいつでもその人に対して見れるけど星占については近くにいる人物のみにしかわからない。ちなみに手相は一回一万円』
『唯子から聞いたわ。どうだった?』
『まあまあね』
唯子が話、有朋がそうそうと頷いた。
ーケータリングする?でも器も買わないと…。
少女が手当たり次第声掛けをするが誰も止まらず去っていく。そして恐る恐る酔う男たちへと向かうも止まり後ろに下がり過ぎていくのを見届けると頭を落とす。
ーどうしよう…。せめて一つだけでも……。
「あのー」
少女がはっとし後ろを振り向くと小太りの男がニコニコしながら話す。
「何かお困り?」
「え、いえ」
「いや困ってるよね?見てたよ。さっきから声かけてたでしょー?」
男が少女の腕を掴むと少女がぞわっと鳥肌を立てる。
「は、はな、はなし」
「ほら何に困ってるの?おじさんが」
男の腕を少女が掴みとり握りしめる。
「え?」
「離しやがれやこのエロ親父!!」
少女が背負い投げしゴミ箱に突っ込む。男がわずかに痙攣し、少女がエプロンで腕を拭く。
「ねえ」
「は」
少女がすぐに女子大生グループを振り向く。
「困り事?」
「あ、え」
「たすかったわー。あのおっさんしつこくてどうしようもなかったからよかったらお礼させて」
少女が目を輝かせてこくこくと頷き実はと話していく。
「まあた、えらい目にあったなあ」
女子大生が少し冷めた料理を食べながらしょんぼりとする少女へと話し、もう1人が話す。
「うちのバイト先でもあってんねん。ほんま迷惑や」
「そうなんですかあ。その時はどうされたんですか?」
「SNSで助け求めたりしたな。余ったのは従業員で分けてったわ」
「せやったな。うちらにもそのヘルプメールきたな」
「せや。少し安くしてもらって買ったな」
「SNSですか…」
「しとらん?」
「はい…。その、昔警察、のお世話にといいます、か。今は、少しでも大人しく…」
少女がこうべを下げる。
「やんちゃな頃あったんやなあ」
「ええやん。うちもあったし。あと、食べるの少しだけで悪いなあ」
「いえっ」
少女が頭を振ると扉が乱暴に開き苛立つ先ほどの男が来る。
「げっ」
「お前あったなクソガキ!」
少女が盆で顔を隠しながら嫌そうな顔をし女子大生たちがいらっとする。
「なんや。おっさんが悪いやん」
「せや。ほんまエロ親父。しつこ」
「なんやと!!」
「うるさいわほんまに」
「せや。あっちいったって」
男が中へと入ると。
「すみませーん」
少女がハッとし顔をあげ男が後ろを振り向き固まる。そこにタイシとタイシの背後にぬっと十四郎が立っていた。
「明美います?」
少女がすぐさま手を挙げる。
「いる!ここ!」
「は?」
明美が素早く来るとタイシの肩をつかみ小声で告げる。
「ちょうどよかった」
「…いやお前明美?なにそのすが」
「うっせえ黙ってろや」
男がこそこそとし出ていくと明美がそれを見て大きく息を吐く。
「あーよかった助かったあ」
「は?」
「そこのお兄さん助かったわー」
「ほんまやおおきに」
女子大生達が集まると十四郎のところへと来る。
「ところでお兄さん何してるん?」
「え、いや」
「えらいがたいええわあ」
「もしかしてプロレスか?」
「お、おう」
「さいっこうやん」
「うちらプロレス好きやねん。明日の広島のホールで行われる大会見に行くんよ」
「あー、高浜さんの引退試合の」
「せやせや」
女子大生たちがにぎわい話していきタイシが軽く離れると大量の料理を見る。
「団体客来るなら明日」
「来ない…」
「ん?」
明美がぼそっと話す。
「嫌がらせされてんねん…。電話してそのまま音信不通。せやから困ってて」
「それでか。十四郎」
「あ、はい」
「十四郎はんいうねんかー」
「連絡先交換して」
「ちょ、まって。えーと、なんすか?」
「予約のドタキャンの嫌がらせ受けたらしい。誰か知り合いいるか?」
「まじすか。なら、連絡して見ます。練習後なんで多分来るかもですけど」
「ああ」
十四郎が早速話していくとスマホを切る。
「俺の知り合いのとこは制限中でしたんで、親父のとこの若集とかがきます」
「ああ」
「お兄さん神様仏様や…」
明美が目を輝かせる。
「久しぶりのところ悪いが俺がお前に預けてたものとかまだ持ってるか?」
「え?ん?ああ。それとりにきたん?わざわざ広島まで?あとよう分かったな」
「まず、ここまでは知り合いの観光付き合いのついでになる。そしてこの間施設に行ってここにいると聞いたからだな。もう縁は切ったのか?」
「切った。もう2人ともどこいるか知らん。タイシはー」
明美が戸惑い、タイシが話す。
「実母とは2度と会わない。実父とは会っているな。あの人から特に何かされたわけじゃないから。ちなみに養父とその家族は警察の世話。俺のじいちゃんの寺の財宝がまだあると思い込んで墓荒らしてくれたからな」
「あほちゃうねんか…」
「その通りだ」
「今お兄さん謹慎中なんか」
「…まあ」
「なあら反省してまた試合でれるように頑張らなあかんで」
十四郎がしょんぼりとするとその背後からひょこっとカルロスが顔を出す。
『タイシー。用済んだ?あと十四郎。なんか男の人が藤四郎坊ちゃんとか話してたけど』
『ああもう来たのか。分かった』
「英語ペラっペラやん!」
「十四郎はんアメリカ行ってたんか?」
「え?いや」
「十四郎は東大出てる」
「まじで!」
「めっさ頭ええやん!!」
「文武両道やんかー。かっこええ」
「ぼっちゃんきやしたでー」
シャツに地味な服を着た男衆たちが来る。
「ああ悪いな。親父は?」
「姉さんのとこですわ」
女子大生たちが驚きながらどくと10人の男たちがこぞって中へと入る。明美が目を輝かせながら両手を合わせる。
「ええと、やくざはん?」
「ああ」
「近くで初めて見たわー」
「刺青すごいなあ」
女子大生達が見ていき、年配の男が話す。
「坊ちゃんその子らは?」
「先に店に来てた人達になる。協力してだったか?」
「それもやけど、逃げて行ったあのおっさんからその子が助けてくれてなあ」
「せーや、人の体触って行こう行こうって鼻の下伸ばして。うちは無視してたら腹立ててその子のとこ行ってな。そうしたら痛い目おうたんねんそのおっさん」
「せや、そんで、この店にいるわかってきたから乗り込んできたけど十四郎はんみて怖がって逃げてったなー」
「ほんまほんま」
「しょーもないおっさんやほんまに」
「ああ」
「たまにいるばかですね。ほんならお嬢さん達が食べた分もわてらが払うんで」
「え?」
「ええですよそんな」
「いやついでや。気にせんといてな」
女子大生たちがなら言葉に甘えてと感謝し頭を下げ男がどうもと手を挙げた。
ーそっちがその気ならっ。こっちだってっ。
小太りの男が腹を立てながらやれやれとする警官達を連れ再び店へと向かう。そして扉を再び乱暴に開ける。
「邪魔するで!」
男達が睨むようにその小太りの男を見る。小太りの男が硬直する。
「なんや?」
「おいおっさん。扉壊れるで」
「……そ、その」
「すみませーん。なんか、暴力振るわれたとか聞いたんで」
「そそそうだ」
「あ?」
「おっさんが女の子の手を勝手に触って言い寄った聞いたでこっちは」
「い、いいよっては」
警官達がはっとしすぐに姿勢を正す。
「お疲れ様です!」
「お疲れ様です警視!」
「は?え?け、けいし?」
タイシに呼ばれ手前でご飯を食べていた畑中がやれやれとする。
「お疲れ。そいつ連れて行け。女子大生と未成年触ったって話聞いてるし店のドア壊したから器物損害。俺はこれの責任者でここ呼ばれて話し合い中だ。以上」
「はいっ」
「行くぞ」
「いや、そんなっ。ちょっと!暴行とかっ」
小太りの男が連行されるとその場にいた唯子がやれやれとし、ミオが唐揚げを食べながら目を丸くし、ダリスは無視し魚の南蛮漬けを食べていく。
『こちらの方が口に合います』
『向こうだと中華みたいなものはありませんしね』『はい』
「さっきの人はなんで怒ってきたんですか?」
「しらないわ。ただドア壊したから警察のお世話になりに行ったわね」
「ほんまタイシ様々やー」
タイシがやれやれとし明美がニコニコしながらミオたちにデザートを出す。
「これじいちゃん特製のバニラレモンシャーベットです。あと口にどうぞ」
ミオがじいと見ていく。
「ありがとう」
「おおきに」
「今日みたいなこと、またあるかわからないからな」
「分かってるわ。あとほんま助かったわ。じいちゃんも喜んでるから」
男達へと感謝を伝えつつお代わりのご飯を提供していく老人がおり、畑中が話す。
「東京でも嫌がらせ予約が横行してるからな」
「私の知り合いのとこもやられましたから。だから、前金制度を取り入れたんですよね」
「前金制度?」
明美が尋ね、唯子が話す。
「予約の前に予約した人数分の半分を前金をもらうの。現金でね。そして、当日来た時に残り半分と追加分を払うというやり方よ」
「現金で…」
「ええ。クレジットでも行われているところはあるけど、顔がわからない上クレジットは後で返金請求が代理を通して可能だからそれで結局騙されてしまうこともあるの。だから、現金。そして現金は直接店に来ないといけないから顔もわかるわ」
「なるほど…」
明美がふむっと考える。
「また今日みたいなことがあるかもしれないなら、取り入れたらいいと思うわ。最初は慣れないかもしれないけど理由を伝えれば分かってくれる人が多いから」
「はい。なら、じいちゃんと相談してみます。おおきに」
「ええ」
「おおきに?」
「関西の方便でありがとうという意味よ」
ミオがレモンバニラシャーベットを食べながら頷く。そして明美が奥へと行くと両手で10冊ほどのファイルを持ってくる。
「あとタイシ。これ話してたやつ返すわ」
「ああ」
タイシが受け取り、唯子が話す。
「それが日記とか?」
「ああ。あと、授業の書き取りとかだな」
「見せて」
タイシが一冊渡し唯子が受け取り中を見ると綺麗に仕上げられた授業ノートを見る。
「うわ。これ小学生がする?」
「タイシはノートとるのめっさ上手かったんだみんなの手本になってたんですよー」
「手本にされるとは思わなかったけどな」
タイシが話し、唯子がミオに見えるように見ていき、ダリスもまた見ていく。
『あちらでも綺麗で分かりやすくて見やすいとサイモンが話してましたね』
『ん?サイモンさん見られてましたか?』
『ええ』
「それ持って帰れる?」
「宅配で送るから平気だ」
「ああ。ほんなら今日お世話になったから」
「いやいい。約束守って持ってくれてたからそれで十分だ」
「そうか?まあ、それでええなら」
タイシが頷き、老人がその場に来て頭を下げる。
「ほんま今日はありがとうございました。助かりました」
「いえ」
「店主さん。後でそこの壊れた扉写真撮って明日警察に出して話しておいてくださいね」
「はい」
「店主はん。酒おかわりええか?」
「へえ」
「うちだすわ」
明美と店主が離れわいわいとする男達に酒を出していく。
「見たことあると思えばか」
「なんだ?」
「あの騒いだ男」
唯子がやれやれとしながら父親の会社の社員名簿の写真を見せる。
「あー」
「伝えておくわ。こう言ったのはいらない」
唯子がLINEで父親に伝えていく。
「父親のとこ把握しているのか?」
「そう。協力しろってね。クリーンで優良な会社を維持し続けたいからという理由。こう言ったプライベートでもそう。悪質とわかれば報告しろと言われてるわ」
唯子が伝え終わるとスマホをポケットにしまった。
翌朝ー。
ーそ、その。ええと。
小太りの男が脂汗を流し縮こまりながら会社の役員達や人事部に質問攻めされていた。
ー前金かあ。
老人が複雑な面持ちをしながら下ごしらえし、明美が話す。
「私はやっていいと思う。またあると思うし」
「せやけどなあ……」
「ものは試しや」
老人がうーんと呻くも分かったと頷いた。
ー今日くらいだな…。
鈴子がドキドキし、タイシが鈴子の隣に立ちもみじ饅頭を食べていく。そこは宮島で多くの人だかりがあちらこちらとできていた。
「結構人が多くて疲れるな」
「観光名所だもの。しかたがないわ」
「お待たせー」
唯子が安堵する鈴子の元へとくる。
「ミオは?」
「鹿とにらめっこ。ヒカルくんがついてるから平気よ」
「ああ」
鈴子がそれを聞きくすりと笑う。
「にらめっこね」
「ええ。あと、鈴子の分のお土産も買ってきたから」
「ありがとう」
そこにソフトクリームをたべながら有朋が来るとタイシの後ろを見る。
「どうした?」
「少し波長が変わってるなと思って」
「波長?」
「タイシさんの後ろの人の。何かの思いがこの場所にあるみたいですね」
「それって、思い出?」
「ええ、まあ。どうあれ誰しも罪もなく過ごす時があったから」
有朋が鈴を出しタイシの前で鳴らす。
「向こうかな。タイシさん来れます」
「私が待つわ」
「ああ」
タイシが有朋と共にその場を離れる。そして、人気のない海岸へとくると有朋が鈴を再び鳴らす。
「この辺りか」
タイシが目の前の海原と岩場を眺め、有朋が八重子の視線を見て岩場を見ると近づき隙間を覗き込む。
「んー」
「教えてくれたら行くが」
「そうですね。多分あのあたり」
有朋が三番目の岩の隙間を指さすとタイシが頷き靴を脱ぎ岩を登り跳び次の岩に移る。
「おお」
そして三番目の岩の隙間を見て袖を肩までめくりあげると腕を伸ばし海水に腕を入れ引き上げつかんだネームタグを見る。
ーこれは…。
「それです」
「ああ」
タイシが再び戻り、有朋が八重子を見ると八重子が僅かに年若くなっているのが分かった。
「波長が大きく変わった」
「これは向こうのギルドのネームタグだ」
「え?ギルドの?」
「ああ」
タイシがネームタグに僅かに残った名前を指をなぞり触る。
「ルシウスか。あとはわからない」
「となると、あちらに関わりがある方だったというわけ?」
「ああ。あと大きく波長が変わったというのは?」
「ええ。恨みが少し消えたということ。生前の思い出を巡ると霊は浄化される。でも、下手をしたらその逆もありき。ただ今回は浄化されたから、何かしらそのルシウスという人物に思い入れがあったに違いない」
タイシが頷き袖をまた下ろすと座り足の砂を払い靴を再度踏んだ。
ー調べてみる。
ールシウス。
サイが頷き、オーガンが髭を撫でる。
「50年から100年前だ。その時にギルドにいたものでルシウスという名の人物を調べてほしい」
「分かった。それとあちらはどうだ?」
「時期があることだけは分かった。あと、まだ本命が近づいてきていない」
「ああ。危険ではあるが、やはりこれからのことを考えると手を打てるならそこで手を打ったほうがいいかな」
「ああ」
オーガンが頷き鈴を鳴らす。そしてやってきた秘書に話を伝え秘書が分かりましたと頷き答えた。
ーくそ。畜生…ついてない。
夜の繁華街で小太りの男が顔を赤くさせふらつきながら道を歩いていた。
ー降格な上に、左遷だ…。おまけにあいつらも俺を除け者にして…。今まで誰が、飯食わせてやってきたと思うんだ…。
男が人気のないところへと来るとどんと誰かにぶつかりいらっとする。
「おひ。きをつへろやあ」
すっと、冷ややかな視線が男へと向けられると男が硬直し鳥肌を立てる。そして、それが離れていくと男がしばらくその場に恐怖で立ち尽くした。
ー雨。
「キヨの言うとおりならいいがな」
ホテルの中でタイシと鈴子が2人きりになっており鈴子が頷き雨を見る。
「そうね。あと、ベッドが二つで良かったけど……」
「お互いにお互い様だから聞いてないことにしたらいい」
鈴子が表情を曇らせ、タイシが告げる。
「あれから接近はないか?」
「ないわ。だから不安なの。でも、解決すると言うなら…」
「陛下は?何か話していたか?それとも話したか?」
鈴子が拳を握る。
「話してはいないわ…ただ、私のことを願うと。これからもこの先も味方でいると大叔父様は、陛下は仰ってくれた」
鈴子の手に涙が落ちる。
「嬉しかった。本当に」
「ああ」
鈴子が涙を拭い、タイシがタオルを向けると鈴子が受け取りそのタオルに顔を埋め肩を震わせ泣いた。
ー凄い雨になったなあ。
明美が暖簾を片し店へと入る。そして祖父と共に厨房を片付け寝支度をする。
ータイシ。今更だけどめっちゃマッチョになってたなあ。
明美がシャワーを浴びしみじみ思いながら今度は自分の体に触れると両頬を挟み赤くなった顔をさらに赤くする。
ー…好きな人おるんかなタイシは。あとまた店来てくれへんかなあ。
明美がはあと長く息を吐きシャワーを止めかけていたタオルで体を拭く。そして脱衣所の扉を開け目の前に突如として立つ黒のコートを羽織り目深に帽子を被ったものと目を合わせると体を硬直させた。
朝ー。
鈴子が疲れ果て、タイシがけろっとしながら共に席を向かい合わせバイキングの朝食をとっていた。
「コーヒー持ってくるがいるか?」
「ええ…お願い」
タイシが頷き立ち上がりコーヒーをとりに向かい鈴子がはあと息を吐く。
ー不安もだけど、やはり聞かれるのが嫌だったからつい我慢したわ。タイシさんは…。
気持ちよくすやあと寝ているタイシを思い出すと羨ましいと心の中で思った。
ーんんんん。
明美が唸る。そして脱衣所で口に布を当てられ抑えられたあとわからなくなったことを思い出すと目を覚ましすぐに重たい頭と体を起こす。
ーなにが、あった。あの、男誰や。
明美が奥歯を噛み締め何もない部屋を見渡し、今度は白髪にアイスブルーの足を組み座りこちらをみる男を見て睨みつける。
『起きたか。言葉はわかるな』
『…』
明美が薄い布団から這い出る。
『爺ちゃんはっ。私の祖父っ』
『私は手を出していない』
『他にもいたのっ。答えなさいよっ』
明美が声を荒げ男の足を掴み、男が話す。
『いた』
明美が体を起こし男の胸ぐらを掴む。
『薬がまだ効いてるのに大したものだ』
『大してないっ。頭はガンガンするっ。でもっ、わたしの家族に手を出したっ。大切なじいちゃんっ』
明美が涙ぐみ、男が息をつく。
『なぜお前がここにいるか。理由を話せばそちらは借金の型に売られたからだ。実の両親にな』
『あいつらに…』
『ああ。アメリカの闇カジノ。それで大敗したからな。そちらは東洋人。そして出来がいいことと、タイシ。あちらと繋がりのあるものと言うことで高値での買取になった』
『タイシ?なんで?』
『彼は特別だからだ』
『ここからは僕が説明するよー』
男が後ろを見て会釈し、明美がやってきたリュウを今度は睨むと男から手を離す。
『そうそう。彼を離して』
明美がリュウをすぐに掴み捻りあげようとするもリュウが明美の腕を握り、両足を挟み床に優しく押さえつける。明美が怒りながら悶え、リュウが話す。
『裸なのに』
『うるさい!だったら寝てる間に服着せろ!』
『元気な子だなあ』
『だまれ!バカにするな!』
リュウがやれやれとし、男が話す。
『まだ薬が効いてるのですがこらえているみたいです』
『また大した子だね』
ごきっと音が鳴るとリュウが目を見開いたと同時にその横顔を殴られ横に体が傾く。男が驚愕し関節を外した明美がリュウの手をすり抜け左肩を押さえながら後ろに下がると壁に腕を当て自分で関節をはめ直す。
『関節を…』
『ははは』
男がリュウを振り向きリュウが笑いつつ赤くなった頬、そして切れた唇に流れる血を拭う。
『ルーク。この子は僕が買うよ』
『わたしは売り物じゃない!!』
『いや。君はどうあれもう商品だ。君は10億円で取引された。売られたんだよ。両親は早速それを持ってまた違う場所で楽しんでるだろうね』
リュウが楽しく笑みを浮かべる。
『ルーク。払っておいてくれ』
『分かりました』
ルークが頭を下げ部屋を出ていく。明美が頭の痛み、肩の痛みを堪えながら近づくリュウを見て構えるもリュウが先ほどよりも早く動き捕まえ関節を外した肩を壁に強打させ抑えこむ。
「いっ、う……」
明美が項垂れ唇を強くかみ涙を滲ませ鋭く激しい痛みを堪え声を押し殺すと震えながら顔をあげリュウを睨みつける。
「凄いな。今まで見た女性の中で一番だよ。そして、僕に手傷を負わせたのも女性じゃ君が初めてだ。ここまで、興味が湧いてきた女性は君しかいない。興奮するのもそう。君だけだ」
明美が抵抗するもリュウが床に押さえつけると明美の首筋を強く噛む。明美が苦痛に顔を歪め涙を流し、リュウが口を離し明美につけた歯形を見て興奮すると今度は流れる血を口に含み舐めた。
規制線をされた明美たちが営んでいた居酒屋の奥、鍵付きの開戸から階段を上がり住居へと入ると今度は血に染まった廊下の中央、人が倒れていた跡を辺りに証拠品がないか調べる鑑識たち。そして、壊れた脱衣所に残された服があった。
ー全くあの方は。
リュウの部下の女が足早に通路を歩く。その後ろをルークがついてきていた。
『時間も限られていると言うのに。何しているのかしら半日も』
『なんとなくは分かりますが』
『はあ。ルーク』
女が止まりルークを振り向く。
『こういった場合この先どうしたらいいかしらわたしは?』
『なんとも分かりません』
女がルークの腹へと拳を向けるがルークが受け止めると女が舌打ちしその手を払い苛立ちまた歩く。そして扉が近づくと突如その扉が開く。
『将軍っ』
そう、気を失った明美を抱き出てきたリュウへと声をあげる。明美の体にはリュウが着ていた服がかけられ、リュウ自身鍛え上げられた上半身が剥き出しになっていたが首元に歯形がついていた。そしてリュウの体を見たルークが話す。
『お年のわりにはいい体です』
『ふざけないの!』
『しー。静かに。あとその前にちょっと僕ショックなんだけど。おとしの割にはって』
『知りませんっ。もうお時間なのですよ。あと、ルークから聞きました。その少女に5億ドル近くも使われて』
『僕の懐からだからいいでしょもう…。あと行くから出てきたの。行くよ』
女がむかむかしリュウが明美を抱きながら前へと進む。
『その少女をご自分のものにされてそれで?』
『んー、取り敢えずは表のみんなには内緒。特にタイシくんとアルたちだね。あと、約束したから大人しくはしてくれるよ』
『約束?』
『そう。それはまた向こうに戻ってからね』
女がわかりましたと答えリュウがああと返事を返した。
ーこっちは俺らがやるからお前たちは予定通りに行ってこい。
「キヨが話していたこと」
「じゃないからまだ注意かな」
移動する新幹線の中で駅弁を食べる有朋がそうタイシへと答え、ヒカルが話しかける。
「予言みたいなことだよな?」
「んー、そう。キヨ姉が話したことは当たるんだよ。だから、自分も危機感を覚えている。理由としてキヨ姉が最近会った中に入っているからなんだよ。でも、今回のタイシさんと同じ施設出身の方のご家族の殺人とその方の誘拐や強盗については別だ」
「ああ」
「俺の勘になるが、明美の両親が行ったんじゃないかと思う。2人とも賭け事が好きで借金をしていたし、明美を使おうとして金儲けをしようとしていたのを明美が聞いて助けを求めないって逮捕されたんだ。元々2人から暴行も受けていたからあっという間だったらしい。畑中さんにもその件は伝えた」
「ああ」
「借金ってどれくらい?」
「その時聞いたのは5千万だったな。そしてこの前の話だと、祖父もだが明美自身店の営業を妨害した場合や、2人に接近した場合は即刻警察が来ると言う契約書を書いたから問題ないってのは聞いた」
「なら今回もしそれを破った場合は即刻警察か」
「ああ。いずれにしろ、調査次第だな」
「鈴子熟睡ね」
タイシが斜め後ろを見ると唯子を見て立ち上がり席へと進む。そこに、唯子と向かい合いながら穴子おにぎりを食べるミオの隣に座った鈴子がミオに体を預けすやあと眠っていた。
「訳あって寝なかったからな」
「ふーん。訳あってかあ」
唯子がチラリと視線を横へと向けるがすぐに戻し、タイシが頷く。
「訳あっ」
「ミオ」
ミオが鈴子の前に座る早苗を振り向き早苗がニコッとしながらプランを出す。
「これ。駅で買ったの。美味しいわよ」
ミオがわずかに興奮しながら頷く。
ー手名付けられてるな。
タイシが席を離れまた座りやれやれとした。
ーまたかたっ苦しい軍服かあ。そしてさらにお堅い。
ーすぐ終わらせればいい話でしょう。
リュウが軍服を身につけだるそうに部下たちと共に廊下を歩く。そして、城内へと来ると部下たちが止まり1人先に歩きアルスランたちが待つ会議室へと入った。
ー明美。無事で元気に生きてくれたらいい。爺ちゃんはいいんだ。そしてすまないなあ。最後まで何もできずに。やらないで本当に。
リュウの居住地で明美が他の建物と共に人の賑わう様子を外から見えない窓を通し見ながらぐっと口をつぐませ項垂れずっと涙を流す。
ー爺ちゃんが、謝らなくていいんや。悪いのはあいつら。
明美が涙を拭い赤くなった鼻を鳴らすと両頬を叩く。
「生きる。爺ちゃんとの約束や。悲しむより、悲しまん。よし。手始めにあのうるさいエロ親父の飯作らな」
明美が髪を一つに束ねゆいすぐさま台所へと入ると新品同様で材料もないその台所を見て顔をしかめると扉からノックオンが響き渡った。
ーテオドロス殺害の犯人の調査は継続。そして新たな長を急ぎ決めること。また、ダリス枢機卿含めたもの達の暗殺を行ったものの特定を。
「同じことばっかり。はあ」
「報告会のようなものだからな」
リュウが自分の部下とアルスランとその部下と共に街を歩いていた。そして、リュウ達を見て街のもの達が道を開けていく。
「本来はあるべき形だ」
「まあ昔はだったからなあ。でも僕はそっちが気が楽だったし自由できたけどね」
「言っておきますが将軍」
リュウが顔をしかめ、女の部下が話す。
「私たちは暇で暇でしょうがなかったですしようやくお給金が払われたのですよ。今まで暮らしができるかどうかほどだったのですからね」
「こちらもではあるな」
「あー、アルもだったんだ」
アルスランが頷き用意された馬へと向かう。
「君も元気だねー。そのままライオット国に行くって」
「若い頃ほどではない」
「君が言うかな」
リュウがやれやれとしアルスランが馬になると直近の部下達を連れ城外へと向かう。そして他の部下達もまたその場で解散し兵舎へと向かっていくとリュウもまたこっちもと話、女の部下のみを連れその場で解散し居住地へと向かった。
そして、明美がいる住居へと入るとふわりとした柔らかい香りが漂う。
「あれ?」
「削り節みたいなもんやなこれ」
「削り節?」
2人が中へと入り女が扉を閉める。リュウが台所に立つ明美とボロボロの衣を纏った狐の耳の少女を見る。少女がぎくりとしすぐさま明美の後ろに隠れ明美がリュウ達を見る。
「ああ、お疲れはん。勝手に使っとるで」
「んー、別に」
「よかったではありませんが将軍」
リュウが顔をしかめにこやかにする女の部下を振り向く。
「ようやくお台所の使い道が出来ましたし、お食事を作ってくれる方が出来ましたから」
「なんか凄い刺々しいんだけど……」
「当たり前じゃないですか。ならわたしは今後お役目ごめんでよろしいですね」
「お役目?」
「ええ。お食事を届けた後の片付けのお役目です」
「はあ?作らん上にそないことさせてたん?あんたしょうもないな」
「ごめん。言ってる意味がよく」
「料理作らない上に部下にそんなことさせてたのか。あなたどうしようにもだらけてますね」
リュウがダンマリとし女の部下が強く頷く。
「では、これからしなくて良くなりましたと言うことで、私はこれで失礼いたします」
「いや、えと」
「もし良かったら料理の材料とかだけ配達出来ますか?やり方知らないんです」
「いや、ええと」
「将軍が知ってます」
「なら教えてや。あんた偉いんやろ?」
リュウがさらに顔をしかめ、女が話す。
「はい。後その子は?」
「奴隷商人から逃げてきたって話でここに隠れてるんですよ。この子が来る前にその手の若い人が来たんです」
「よくこの家にきたねまた」
「あなたがほぼ留守にしてるからではありませんか?お食事の時間以外」
「…」
「では、私はこれで失礼いたします。お呼びがありましたらまた。後お時間が来ましたらお迎えにあがります」
女の部下が頭を下げ家を出る。
「部下はんみたいやけど、相当世話して迷惑被ってきたからあんな態度なんやな」
「…はあ。まず、何茹でたの?」
「わけわからん魚の干物。この子のご飯やて」
少女が頷き、明美が鍋からおたまを使い目が飛び出た魚の干物を出すとリュウがそれ栄養あるけどまずい干物と告げると明美がへえと声を出しその干物から出たスープを飲ませるとリュウが軽く驚き案外いけると呟いた。
ー長崎。
「海外逃亡ですか」
ベンチにダリスとともに座ったタイシが電話口の畑中へと話す。そこは長崎原爆公園で折り鶴を掲げた少女の石碑に、横寝した大きな男の石碑や噴水がありミオが唯子たちとともに回り見ていた。
「なら、事件は両親の確率が高いのですね」
『ああ。監視カメラに映っていたからなばっちり。その後羽田に行ってアメリカに渡ったようだ。まあ、ちょうどおられたから相談したら優先してくれると言ってくれてな。飛行場で待機してくれるそうだ』
「上手くいきますかね…」
『なんか引っかかるか?』
「少し。話を聞いた時に」
『だよな。俺もだ。あそこは一件じゃなくて、二件。誘拐と強殺は別で行われた感じするんだよな。まあとにかく、その親たち捕まえたら何かわかるはずだ。予定外だから少し遅れるがそっちに頼もしい人がいるからな。アメリカの方じゃなくて、日本の警察で俺と同期だ。話している』
「分かりました」
畑中がああと返事を返しタイシがスマホを切る。
『進展があったようですね』
『はい。両親が実行したとの証拠が出てきたそうです。実行後は海外逃亡したとのことですが、その逃亡先で人員を待たせて捕まえるとのことでした』
『わかりました。何事も早く動いて分かった方が良いですし、故人のためでもあり周りのためでもありますからね』
『はい』
ダリスが頷き軽く息をつく。
『ここにきてから見張られてきましたね。視線が痛くて鬱陶しいです』
『ええ。ただ、表立っての行動はやはり控えているようですね。向こうも』
『はい。そうでないと、ここはまた違う世界で違う法のもとにありますから。あとは、一応、こちらにも各個人に護衛がついておりますからね』
タイシが頷き、ダリスが話す。
『タイシ殿。サイからはまだ話は?』
『まだです。ギルドは登録名簿があるとはいえ万を超えますから。それに、1日で亡くなる方もいます』
『そうですか。ただ、名を残されているだけでもいいですね。教会ではありませんからギルドやこちらのように人物の特定のために残すのもいいかもしれませんね。見つけやすくする為に』
タイシが頷くと前を向く。その先に地元の子供達と遊び今度は揶揄われるミオがいた。そしてミオがじゃんけんをし子供達を数を数え追いかける。
『遊んでますね』
『まあ、いいと思いますよ』
タイシが僅かに笑みを浮かべ見るダリスを見て視線を逸らすと今度は鈴子と見守る唯子を見る。
『さすが九州。まだ少し暑いですね』
その場に有朋が飲み物を持ちくるとタイシ、ダリスに渡す。
『ヒカルは?』
『隠れるそうです。視線が気になるしいざと言う時のために待機するそうです』
『ああ』
『役には立ちますからね。顔で』
タイシがまあと声を出し、有朋が軽く笑う。
『十四郎たちは夕食時に待ち合わせだ。それまでか、終わった後に来てくれるが一番だがな』
『ならいっそ誘い込みます?長崎は原爆の爆撃によってあちこち地形が変わり坂が多く場所によっては見にくいところもあります。ここら付近ですと歩いて20分の住宅地から離れた元繁華街があった場所がありましてね。ここらではゴーストタウンと言われて人もあまりいませんし、その先は知り合いの神社で小さなところで知り合いの宮司とたまの掃除ぐらいしか来ない場所です。案内しますので散歩がてら行ってみますか?あと、こちらも何度も足を運んで逃げ道はしってますからいざという時も案内できます』
ダリスが頷き行きましょうかとタイシに話すとタイシがはいと答え子供たちと遊ぶミオたちの元へと向かった。
ー急。
ミオが汗を滲ませながら急斜面を上がる。その下にはゴーストタウンとかした元繁華街。そして正面には小道と人気のない道が続くがそのさらに上に赤い鳥居の端が見えていた。
「結構急なところにあるのね」
「でも眺めはいいよ。長崎市や海が見えるとっておきの場所でね」
有朋が小さく息を切らす唯子へと話す。そして唯子はと言うとミオよりさらに息切れする鈴鹿の背をおし歩いていた。
「み、みなさん、疲れ、ないんですか…」
その鈴子たちの先をタイシとダリスとが歩いており、唯子が話す。
「そりゃあなた以外みんな運動してるもの。ミオちゃんも朝から走ったりしてるし、旅館でも頑張って腕立てしてたじゃない」
「そ、そう、ね」
「その、少し休憩とかは」
「い、え。が、頑張り、ます」
「よーし頑張れ」
「まあ無理しない程度に」
有朋が告げ、鈴子が頷き唯子に押され坂を登る。
『数名はできて、残り数名は息切れてますね』
タイシが耳を澄まし、ダリスが頷く。
『ええ。さすがに気配を隠す余裕がなくなったようです。ちらほらと見えていますし出ますね』
『ダリス殿。離れます』
『はい』
タイシが頷きすぐさま横の藪へと入ると息を切らす小太りの外人の男を見つけ早速拳を引き横っ面を殴る。
『ぐげっ』
男が倒れ斜面を転がり薮に当たる。
「お?」
有朋が楽しく声を出すもすぐさま木の影に隠れ辺りを見渡す。そして唯子が鈴子とミオを樹木の背につけそのまま自分の背を重ね周囲を見渡すとすぐに鈴子の護衛2人が鈴子とミオの横につく。
「分かっているだけで八名」
「はい」
ダリスの元にナイフの男が来るもダリスが交わし横蹴りを喰らわせると男が坂を止まらず転がるがカーブのところで木に激突し止まると唸り声を上げる。
ミオが汗を滲ませ辺りを見渡すとまた藪から1人タイシにやられ身を投げ出し倒れるとタイシが外人の襟首を引き出てくる。
『どこかでみた顔ですね』
『ええはい』
タイシがその男をやや乱暴に離す。
『こう、言ってはですが殴って少しスッキリしましたね』
『ふふ』
男が汗を滲ませ震え、鈴子が苦悶する。
「ここまで追いかけてくるなんて」
「前っ」
ミオが声をあげ唯子が目の前、銃を構える男を見つけると迷彩服を着たヒカルが頭上から現れ男をそのまま潰し押さえつける。
「女装してなかったわね」
「俺別に女装は趣味じゃないから」
ヒカルが男の首に手刀を当て黙らせると唯子が目を丸くする。
「そんな器用なことできたの?」
「出来るぞ。あと、タイシは生意気坊や殴って少しスッキリした感じ?」
「あの外人?」
「ああ」
「他は?」
「押さえてもらってるし先に連行させた相手もいる」
鈴子が痛々しく胸をずきりとさせ、ヒカルが話す。
「そっちがいいと思って」
ひゅっと音が鳴るとタイシがダリスの顔に手を出しダリスを横へと押しボウガンの矢を自らの手で貫通させ受け止める。
『タイシ殿っ』
護衛の2人が鈴子とミオの両方に覆い被さると唯子もまたその上に被さる。
「頭下げてっ」
タイシが坂を飛びながら目の前を素早く通り過ぎ隠れて狙いを定めていたボウガンの男へと向かう。
ー早い。
『くそ』
男が引き金を引きボウガンの矢を飛ばすとタイシが再びその貫かれたままの手で今度は握り受け止めもう一方の手で拳を握り男の顎を殴る。男が足を震わせその場に倒れタイシがボウガンをとり矢を取り外す。
「タイシー。手は?」
「痛いが骨はいってない。毒もない」
ヒカルがああと答えると藪からガタイのいいシャツの男たちが現れる。
「いやいやいや。すぐ病院行かんか。ほんなこて」
1人の男がタイシの元へと来て背を押す。
「いや、でもまだ」
「でもまだじゃなか。はい病院まで連行」
「了解」
男たちがすぐさま後ろ手に手錠をかけ運べるものを運びあるからものは立たせ歩かせると男が鈴子たちの元へとくる。
「お怪我はありませんか?」
「鈴子?ミオちゃんは?」
「ないわ」
「あ、ありません。タイシさんは…」
「頑丈のようだけん問題なか。いたかはずなのにけろっとしとる」
『は、はなせ!私を誰だと思っている!!触るな猿共!!』
鈴子がため息し、ミオが男2人に連れて行かれる元王子を見る。
「猿ねー」
「もううんざりよ」
「ストーカーですか?」
「そう言った類の方です」
『鈴子!』
鈴子が無視し、元王子が声を上げる。
『今まで尽くしてきた!この猿どもをどうにかしろ!』
鈴子が僅かに苛立つとミオがスッと手を挙げる。
『あの、どちら様ですか?』
鈴子がミオを振り向きミオが首を傾げる。
『鈴子さんも私も知りません。あなたのような方ご存知ないですし、気安く声をかけないでください。鈴子さんは皇族の方で、ここでは神の子です』
『な、なにをっ』
ミオが男の頬を扇子で叩くとダリスが驚き、今度は男の頭をセンスで強く抑える。男がミオへと視線を向けるかゾッとしその冷めた目を見る。
『頭が高いと言っているのです。そしてその汚い口を閉じなさいこの下民が』
男が冷や汗を流すなか、ミオの後ろで有朋が拳を握りしめる。
ー練習させた甲斐が。
『猿とか?』
有朋が後ろを振り向きミオがさらに扇子で抑えていく。
『誰に向かっての言葉ですか?言いなさい』
『う…』
「お嬢さん。そろそろ」
『言え。猿とは誰です?』
男がミオの迫力に気押され、唯子が手を向け止めようとする。
『も、もうし、わけありません』
唯子が震える男を見下ろし、男が苦しく恐怖で声を漏らすと跪き頭を地面につける。
『も、もう、しわけ、ありませんでした。許してください。お許しください。お許しください』
唯子が汗を滲ませ有朋がミオに貸したセンスとは別のセンスを出し口元を隠す。
ーキヨ姉が言ったのはこのことか。父親譲りの覇気だなー。
夕方ー。
治療を終え警察署に来たタイシが呆れながらミオの頭を叩くと何度もペシペシと叩く。
「お前は暴走するな暴走。腹立ててどうするんだおい」
「…腹たちましたもん」
「あほか」
むすっとするミオの頭を少し強めにはたき、有朋が苦笑する。
「ちょいと芸仕込んだのが悪かったかなあ」
「仕込むな。あと仕込んだ内容を教えろ」
「了解。それより手は?」
「骨とか異常なしだ。2週間後に抜糸だ」
「うーん。頑丈」
「どうもだ。とにかくミオ。お前は相手が強いならどうする?」
「…」
「周りもいたんだからな」
ミオが項垂れ、タイシが話す。
「相手が強く言える。強い相手なら何もできない。まだお前は守られてる側でもある」
「で、でも」
タイシがため息をし、顔を上げて反論しようとしたミオがぐっと口をつぐみ視線を外す。
「お前はまだ守られてる側だ。危険な行為と行動は慎め。お前も仕込むな」
「いやあ。ごめん」
ミオが項垂れていき、唯子がそばへと来るとミオを見てしゃがみ両頬を挟む。ミオが表情を曇らせ、唯子が息を吐く。
「私からは何も言わないけど、心配したわ。怪我はないわね?」
ミオが口をつぐませ目に涙を滲ませこくりと頷き唯子がええと返事を返す。そして早苗が来るとタイシの肩を叩きこっちと指差すとタイシがその場を離れついていく。そして入れ違いにシャツにスーツのズボンを着た短髪の女が袋を持ちミオたちのところへと来る。
「危機管理を持たない子はこーこ、か」
ミオがビシッと固まり項垂れズーンと落ち込み小さく頷くと女がミオの頭をくしゃくしゃと撫でる。
「いろんな人から注意されたでしょ?それは他人でも初めての人でもみーんな心配することばしたけんたい。わかった?」
「はい…」
「よし。素直な子にはこれやるたい」
女が袋を漁りカステラを出すとミオの口にほりゃと含む。
ー甘い。美味しい。
ミオがぶあっと涙を流しもぐもぐと食べ、女がなでなでとする。
「まあだあるけんね。そっちも食べる?」
「ありがとうございます。いただきます」
「どうぞ。それと、まだ向こうは時間かかるから宿泊場所あるなら送るよ」
「ならお言葉に甘えて。お願いします」
「了解」
「奈美。おーい」
奈美が立ち上がりあのガタイのいい男が来る。
「これ差し入れ。みんなどう元気?」
「ああ」
「もしかしてご夫婦ですか?」
奈美が頷き、男が頷く。
「そぎゃん。結婚して10年目でうちはもとここの警察官で上司だったんよね。それで年下の旦那に口説かれて結婚して2人目の時に引退したと。今はパート主婦」
「ああ。それでたまに顔出しとかに来るんだ」
「そぎゃん。あとは地域活動もしとるけんその報告も兼ねて。今日は差し入れとこの旦那から顔は可愛いけどなかなか気迫のあった子がおるけどまあだ未成年だから話とかんかって言われてな。うち元々地域課におったけんね」
「ああ。まあ、たまにちょっとお願いしたりはするな」
「それ仕事している上で問題ありませんか?ご引退されたのなら」
「無償協力」
「だまっとけばよか。田舎だしよくある」
「はあ…」
ミオがもそもそと食べ、奈美がミオの頭をぐりぐりと撫でる。
「なら、うちはこの子たち連れていくけん。しばらく帰れんどもん」
「そうだな。違法入国した連中の相手せなあかんけんな」
「ええ。なら、ちゃんと気張って仕事せんか」
「わかっとる。それじゃ。チビたちにもよろしくな」
「ええ」
男がその場を離れ、奈美が今度は硬いのとよりよりを出しミオの口に含ませるとミオがポリポリと硬いその菓子を音を立て食べた。




