東京7
「もう俺は知らん…疲れた」
タイシがぶつぶつと言いながら家へと上がると今で食事していた十四郎がタイシを見る。
「兄貴おかえり。おつかれっす」
「ああ…」
「タイシおつ。飯は?」
「いい。寝る」
タイシがそのまま通り過ぎていくと祖父が話す。
「相当疲れてきたな」
「当たり前じゃない。一番嫌いな相手と話したんだから疲れるでしょ。飲み物持って行くわ」
「ああ」
祖母が立ち上がり昆布茶を用意する。そして、食べていたミオが初めて見たと思いつつ、やってきた唯子を見る。
「墓荒らしは?」
「おばさまとお父さんにとっちめられて魂抜けてたわ」
「全く罰当たりどもめ。あんなところに金なんざあるもんか」
「本当そうね。唯子さんはご飯は?」
「ありがとうございます。けどもう帰ります」
「明日だけど平気?」
「はい。必要なことは話せたので問題ないです。あと、ヒカル」
「はいよ」
ヒカルが録画した画像のUSBを渡すと唯子がどうもと告げお邪魔しましたと言いその場を去る。
「いつ撮ってたんだ?」
「見つけた時から。隠れて撮ってた」
「ええと、唯子さんのお父さんとはまた今度、になるんですか」
ミオがぽつりと話、ヒカルがそうなるなと話すとミオがこくりと頷いた。
ーくそくそ。あの馬鹿どものせいで会うことすらできなかった…。
「覚えていろあのばかぞくどもめ…」
移動する車の中、唯子の隣で男が頭を下げ憎々しく呟いており唯子がやれやれとしながら無視をする。
ー疲れた。ガチで…。
昆布茶を飲み終えたタイシが布団に入りはあと長く息をつくと今度は欠伸をした。
ー腹減った。
タイシが起き上がり隣で眠るダリスやヒカル達を見て起こさぬよう立ち上がりキッチンへと向かう。そして電気をつけ日時を示す時計を見る。
ー早朝に近いな。
タイシが水を飲み冷蔵庫の扉を開け野菜などを出し手際よく洗い刻んでいく。
ー僕ご飯作れます!鬼さんの役に立てます!
ーあの時は必死だったな。
タイシがたまごをかき混ぜ卵焼き用のフライパンへと流し焼いて行く。
ーでもまだストレス溜まるよりかは。
「タイシー。おーい。おーーいっ!」
タイシが手を止めパジャマを着ているヒカルを振り向きヒカルがじいと見る。
「お前作りすぎ」
「作りすぎ?」
「新幹線のお弁当にちょうどよかったじゃない。後私たちのお昼ね」
「ああ」
タイシが後ろを見るとテーブルに唐揚げ、卵焼き、ウィンナー、スパゲティパスタ、イワシのソテー、味噌汁、野菜炒め、しょうが焼きなどが置いてあり、冷蔵庫の中にはゼリーが冷やされていた。
「…」
「おにぎりとミニトマトがあったからそれ用意するわね。お米足りるかしら」
「あー、ばあちゃん。その、材料」
「まあた買えばいいからいいわよ」
「昨日は相当ストレスだったってのはわかるなあ。タイシ君は小さい頃ストレス溜まると一つのことに時間を忘れて集中していたからなあ」
「そうね。あら、こっちには桃ゼリーね」
タイシが汗を滲ませ、ヒカルがタイシの肩をポンポンと叩き手にしていたボウルをとりタイシが混ぜていた春雨サラダを見る。そしてミオがどこからか現れじいと唐揚げを見る。
「つまみ食いしていいぞ。俺したし」
「…」
「ミオちゃんはい」
祖母がフォークを向けるとミオが受け取りタイシに軽く頭を下げ唐揚げに刺し口に含み食べていく。
「俺は、朝の分だけと思って。なんでこんなに…」
「無意識怖いな。あとダリスさんも話しかけたそうだけど応答なかったから俺に話してきた。念のため今日のことカウンセリングの先生に話しとけよ。あ、うまい」
ヒカルが春雨サラダをつまみ食いしこれも完成品だなとテーブルに乗せた。
ーうん。
唯子が新幹線の中でタイシが作った弁当を食べ、ミオ達もまた食べつつ広島へと向かっていた。
「美味しいわね。即席で作ったって聞いたけど」
「無意識の即席だな」
隣で聞いていたヒカルが話し、メガネをかけ軽めの変装をした鈴子が話す。
「無意識?」
「ストレス溜まると相当集中するって話。じいちゃん達はな。ただ、声かけても何も応答なかったからやっぱり精神的にはきてるっぽいし。今まさにまた寝てるし。向こうじゃこうなかったけどな」
ヒカルの目の前でタイシが新幹線の壁に寄りかかりすうと眠っていた。ヒカルの隣にはダリス、タイシの隣には弁当を食べる十四郎が座っていた。そして鈴子が頷き、ミオがじいっと見る。
「確かにあちらでは日中寝ることはなかったわね。ただ私もあまりそばには居なかったから」
「俺もだけどこんな爆睡して寝ることはなかった。まあとにかく相当な疲れってわけだ」
「かしら…」
「念の為か。いく前にキヨに問い合わせたら苦手なものやことに対する拒絶が激しくて疲労がピークに達しただけって話。あと、タイシはほぼ都会には済んでないからそれもまた疲れの一つなんだそうだ」
「そうね」
「お寺の方も山の中だものね。あと空気澄んでてよかったし」
「あそこは確かに都内と比べるといいもんな。そしてそのお寺周辺の調査は?この間済んだって聞いたけど何か聞いてるか?」
「なにも。広島で待ち合わせしてるおばさまに直接聞くしかないわ」
「そうか。あと、そっちのお父さん。結局ミオに会えなかったというか、まだ会えてないよな?」
「そうなのよね。会おうとしたらあの墓泥棒のお馬鹿さん達でしょう?相当恨み言呟いていたからどうなるやらね」
ミオがふむふむと頷き、鈴子が話す。
「まだミオさんはお写真でしか見たことがなかったですよね?」
「はい。えと、なので昨日会えるかなと思って待ってたらだったので」
「はい」
「タイミング悪かったんだな」
「仕方がないわ。あとまたお仕事だからこれも仕方がない」
唯子が肩をすくめウインナーを食べていき、ミオは今度は甘めの卵焼きを食べ味わった。
ー不味くはない。
ー食べておきながらそれはないでしょう全く。
タイシが僅かに目を開けると視線を誰かの背中に向ける。そして斜め下、弁当を食べるルーカスとやれやれと普段着の女へと向ける。
「タイシ。起きた」
「兄貴起きました?」
そう、タイシを背負った十四郎が告げる。そこは広島駅の休憩室でタイシが頷き十四郎に下ろしてもらいベンチに座ると顔をしかめ頭に手を当て項垂れる。
「弁当の方は息子に食べさせたわ」
「はい…。あと、今何時ですか」
「二時回ったところよ」
「今交代で駅の中見て回ってる。これ買ってきた軽食」
「悪い…」
タイシがサンドイッチと飲み物を受け取り息を吐き早速蓋を開け食べていく。
「頭痛とかないですか?」
「ない。悪い本当」
「いいっすよ」
「向こうじゃここまで疲れたことなかったんじゃないか?」
「あー、まあ。確かにないな」
「ああ」
「起きたんですね」
豊満なボディに柔らかな顔立ちの女がミオ達と共にくる。
「おはようございます。十四郎の母の久美子と言います。向こうでは十四郎がお世話になりました」
「姉とかじゃなくて?」
タイシが目を丸くし驚き久美子が恥ずかしく手を振る。
「もうそんな。母ですから」
「そうす」
「お前そういうこと普通に言ってのけるとこあるよな」
「そうか?」
「そうだよ」
「若いよねー。私の母より5歳上ってのが信じられない。あと体調どう?」
「まだぼうとはするな」
「寝てたからな」
「そうね。タイシ君はどこか回ってくる?」
「いや。ゆっくりしとく。まだ回るのか?」
「ええ。お土産である程度目星つけたの買って家に送ろうと思うの。先に買ってた方があとは楽だし」
「ああ」
「ええ。あとダリスさんだけど興味なさそうだからルーカスの弟と図書館に行ったわ」
「ええ、あの子もこう言った場所は遠慮するから。宿泊地で合流する予定」
「はい」
タイシがそう返事を返し、久美子が楽しく話す。
「なら、お土産買ってまた戻りましょう。それから美味しいスイーツがあるところ案内するわね」
「楽しみです」
久美子が嬉々としながら頷き再び唯子やミオ達を連れ離れる。
「十四郎のおふくろさん。見た感じだと元気みたいだな」
「ええ。でも本当。あの野郎のせいで夜も寝れなくてやつれてたんで…。あと、病気になる二月前こんなんでしたからね。今でこそ痩せてますけど」
「ん?」
十四郎がスマホの画像を見せるとでっぷりとした久美子がにこやかに映っていた。
「ふくよかだな」
「ビフォーアフターの凄まじさ」
「えらい変わりようね」
「俺も正直びっくりしまして。だって、俺はこのお袋しか知りませんでしたから。ただ親父は昔の久美子だと懐かしんでもいましたけどやっぱり太った方が好きだから早くよくなってほしいってのも話してましたね」
「十四郎さんの親父さんの好みはぽっちゃり系か」
「おう。そんで料理が美味い女が好きだって言ってたな」
ヒカルが頷きルーカスもまた見て話す。
『アメリカ人には多い』
『食べてるカロリーが違うもの』
ルーカスが頷き弁当箱をゴミ袋に入れご馳走になったとタイシに告げるとタイシがいやと食べてもらってこっちが申し訳ないと告げた。
ー美味しい。
カフェにてー。
ミオがいちごパフェをもぐもぐと無言で食べていくと久美子がほんわかと告げる。
「ミオちゃん癒しねー」
「ですよね」
「ふふ」
「ええ」
久美子が嬉々とし、唯子が話す。
「久美子さん、もしよかったらですけど、今はどう過ごされてますか?十四郎さんから事情聞きましたので」
「ええ。まあ、まだ病院には通院してるわね。通院しながらゆっくりとしてるわ。そして、今日みたいにね。動ける日があれば楽なんだけど、どうしても動けずに1日寝続けることがあるわ」
「そうなんですね」
「ええ。だから、動ける時は少しでも運動して、美味しいもの食べて発散してるわ。先生からも好きな事して運動することは大切と言われてるから」
「確かに。あとは。大変ですけどうまく付き合っていかないといけませんからね」
「本当にそうね」
ミオが話をじっと聞き入る。
ーミオ。ミオ。
ミオがぴくりと動く。
ー斜め左。マスクにメガネの客。
ミオがチラリと視線を向けるとパソコンを操作する帽子を目深に被った男を見る。
ーあの人…。
「警察の人が見せてくれた悪い人」
「え?」
複数の席で男女が立つとすぐさまその男を囲もうと動くと男が椅子を倒し電磁棒を出しスイッチを入れるがその腕を掴まれ簡単に押し倒される。客達が驚き、店員達も慌ただしく出る。
「は、なせえっ」
年配の男がノートパソコンをすぐに調べる。
「まさか、東京でやったこと懲りずにまたやっとんのかこいつは」
「そのまさかです」
「え、と」
久美子が嫌な汗を流し手を振るわせる。
「あ、え、そ……ど」
そう、唇を青ざめさせ目が回り始めるとミオがふらついた久美子を後ろから抱きしめ地べたに共に座る。
「平気です。みなさんいますから。深く息を吸われて。吐かれて」
久美子が呼気を荒くさせ、男がその場ですぐに隠密していた警官達に連行される。
「なんでいんだよっ」
「やかましいわ!」
「東京からわざわざつけて嫌がらせか。はよのれや」
男がパトカーに乗せられ両バサミされ怒鳴られながら連れていかれる。
「申し訳ありません。こちらも気づかずにおりました」
「いえ。まさか、ここまでしつこく来るなんて誰も分かりませんでしたから。そして、あれはもうどうしようもないわ」
鈴子がやれやれとし、唯子が過呼吸を起こす久美子を寝かせさを撫で落ち着かせる。
「本当。でも。ミオちゃんもよくわかったわね」
「その、はい…でも、久美子さん」
「落ち着けばいいわ。それよりわかった時点でよかった。つけられ続ける方が迷惑だし不気味よ」
「そうね」
ミオが小さく頷き、店長がその場にきて、救急車が来ると伝えると唯子が頭を下げた。
ー母ちゃん。
十四郎が安定剤を投与され眠る久美子につきそう。そして、タイシが警察署へと来ると受付に地元の男刑事と共にいた畑中がやれやれとし手を挙げる。
「具合はどうだ?」
「はい。まだ少し」
「ああ」
「まだ精神的にやられてるからなあ。あと畑中と同期や。建島いう。よろしゅう」
「はい」
建島へと頭を下げ、建島が部屋へと案内する。
「十四郎はお袋さんのとこか?」
「はい。唯子から連絡を受けてすぐに病院にいきました」
「ああ」
「ほんま、バカは何してもバカっちゅうもんや。なかはいってえな」
建島がドアを開け2人を中へと入れるとやれやれとしながら席へと座り押収したパソコンと中身の写真や文書を見せる。
「盗撮と幼稚な嫌がらせや。付き添いの女の子が気づいて分かってな。こっちも、言われた通り鈴子はんたちがきてるから隠密でおっただけやったからほんま驚いたし呆れた」
「確かにな」
「完全に八つ当たりで相手は反省してませんね。全く」
「せや。明日東京もんが迎えに来る」
「ああ。俺が連絡した。あいつの捜査資料があるのも東京だからな」
「せや。あと、鈴子はんたちは先に宿に行ったっちゅう話や」
「はい。連絡ありました」
「ああ」
「しっかしまあ、ここまで幼稚なことをする」
畑中が手を止めじいと見る。
「どないした?」
「あいつ本当バカだな」
「ばか?」
建島が資料を覗く。
「あの女の子売ろうとしてたんか」
「本当、トラブルメーカーになってるなミオ」
タイシがやれやれとミオと値段。そして金額提示するもの達のメッセージを見ていく。
「これ、早苗さんに話しときましょうか?」
「あー」
「インターポールの局やろ?」
「そうだ。後で資料提示するから、話とけ」
「はい」
「この子のことについて世間に話してないからなあ。知らんやつ多いのはわかるけどなあ」
「あ」
「ん?」
タイシが複雑そうにし畑中へと話す。
「早苗さん分かってて泳がせてたようです」
畑中のスマホが鳴るとしんとあたりが静まる。
「こわ。このタイミングでくるか」
「本当恐怖だなっ」
畑中が嫌そうに声を上げスマホに出る。
「はい。なんですか」
『分かってるじゃない畑中君』
早苗の声が響き、早苗が旅館で不敵に笑む。
『私は容赦しないし、そちらが動いてももう遅い。そこのそばかすの馬鹿もだ。以上』
『いや待ってください以上って』
早苗が通話を切り、畑中がテーブルに両手をつき項垂れる。
「インターポールっちゅうかその人が恐怖や」
「その人もですけど、一族がですよ。ミオのところの。どうなってる現在進行形で」
タイシがiPadを出し操作する。そして、サイトが繋がらなくなっていた。
「…サイトに入れない。ほかは」
タイシが資料のサイトを全て見つけ入ろうとするが閉鎖。もしくは繋がらないと表示される。
「全滅」
「ハッカーおるんやな」
「もう俺は知らん。知るか。付き合えん」
「せやな」
「はあ」
タイシがiPadを閉じスマホを出すと非通知表示と共にベルがなるとタイシが耳に当てる。
「はい」
『非通知で出るかー』
「キヨ」
『なんか悪い卦が出たから気になったんだ』
「誰に?」
『不明だ。どうにも嫌なものだからな。ただ今は残念ながらオーストラリアだ』
「オーストラリア?」
『ああ。海外出張もしているものでなあ』
金髪のイケメン男が運転するオープンカーの助手席にキヨが乗りながら電話をしていた。
「半月ほどバカンスついでの仕事でな。あと、悪い卦と言ってもお前達他になる。つまりこの半月の間に私が出会ったもの達全ての誰かと言うわけだ」
『はあ…』
「後で私が出会ったそちらの知人達のリストとオーストラリアにいると言う証拠を送るからな」
『いや。オーストラリアはいらない』
「まあそう言うな。ではな」
通話が切れる。
「あの白髪巫女か」
「白髪?」
「元々金髪だったのが精神的ダメージによって全部髪の色素が抜けたらしい。その割には変わり者で元気すぎるがな」
「はい。あと」
けたたましいノックが響くと無精髭を蓄えた男がどう言うことやと慌てながら声を上げサイトを見せると畑中がため息し、タイシが複雑な面持ちを見せた。
ー嘘だ…。
男が顔を真っ白にさせ頭を抱え拘置所の中震えていた。そして。
「一仕事の後はいい気持ちね」
早苗が温泉に浸かりながらのんびりとする。そして、唯子がやれやれとし鈴子が苦笑し、ミオが肩まで浸かりながらリラックスしていたがそれを聞き早苗を見る。
「一仕事?」
「ええ。ま、ちょっとしたお仕事よ」
ミオの頭を早苗が撫でうーんと両腕を上へと伸ばし伸びをした。
「聞けばスッキリはしますけど怖いっすね」
旅館に来た十四郎がタイシと話しタイシがやれやれとしヒカルが話す。
「いや。怖すぎだろ?全部暴露された挙句両親のいる会社にまで脅したし。おまけに買い取ろうとした連中全員に加害請求させたしな」
「それを2日かけて終わらせた。元からあの男がつけると分かっていて用意していたんだ」
「流石インターポールと言いますか…」
「いや。あの人の勘が鋭すぎるだけだ」
「ああ。あのおばさん頭の回転早すぎだし。ああでも、ダリスさんと仲良いよな。今日もバーに行って話をする約束してたから」
「ダリスさん頭いいからな」
ノック音が響くとタイシが立ち上がり扉を開けノックした唯子を見る。その唯子もだが鈴子達が浴衣を着ており唯子が話す。
「あ、戻ってきてた」
「ああ。十四郎もいる。今日の結果を知らせにきた」
「っす。ま、何はともあれあいつとあいつの家族の事がスッキリしたって話だったすから。後お袋は親父が面倒見てくれてますから平気っす」
「ええ」
「家族?」
ミオが目をぱちくりとさせ、鈴子が話す。
「他人のことには口を出したり細かく問い詰めて知ったりするのはダメよ」
「そうね。あと、まだお風呂入ってない?」
「ああ」
「じゃあ、私たちご飯前にホテルの中見て回るから。何かあったら連絡するわ」
「わかった」
唯子が頷き手を振り部屋を後にする。
「その家族が突然きたりすることあるだろうか?」
「流石にそれはない。居場所は知られてないからな」
「ああ」
「なら俺もそろそろ家の方戻りますんで。兄貴達も世話になりました」
ヒカルがこっちは特に何もしてないからと手を振りつつタイシと共に十四郎を玄関まで送った。
ーわあ。
ミオがゲームセンターへとくると回転するおもちゃやクレーンゲームの中の人形を見る。そしてワクワクしながらさらにいろんなゲームを見る。
ーいろんなのが沢山。ん?
ゲームセンターの端っこに矢印と個展と書かれた看板が立っていた。ミオが近づきついてきていた唯子が話す。
「受付にあった個展ね。ここのホテルの従業員さんが趣味で絵を描いてるってあったわ」
「絵を?」
「そう。無料だから見てみる?」
ミオがうなずき早速開かれた扉の先にある短い通路を通り絵画が飾られた小さな部屋へと来る。そこには可愛らしい幻想生物の絵画が飾られており、ミオが柔らかい輪郭で描かれた小人やユニコーン、妖精などの絵を見る。
ーかわいい。
「これ、カレンダーの人の絵ね。ここの従業員さんだったんだ」
「ええ。私も初めて知りました」
「カレンダー?」
「カレンダー作家の人」
唯子がスマホで見せるとミオが日付と絵と一体となっている月のカレンダーを見る。そこに老人老婆や、小さな子を連れた夫婦も来て語らいながら絵を見ていく。すると老婆が鈴子を見てやや仰天する。
「あらあ。偶然」
「え、あ」
「どうした?」
「ほら。鈴ちゃん」
老人もまた驚き鈴子が頭を下げた。
「大変お久しぶりです」
場を移動して浴場の休憩室へと来ると老婆が微笑みながら話す。
「本当。あと、お元気そうでなによりよ。前より明るくなったわ」
鈴子が寂しく笑みを浮かべ、唯子が話す。
「どんなお知り合いの方?」
「ええ。お花の先生なの」
「はい。今は引退してこの人と全国を回って余生を楽しんでるところよ」
「ああ。ずっと仕事ばかりだったからなあ。この歳になってからになるが一緒に見て回ろうといったんだよ」
「そうなんですね。仲がよろしいですね」
「実はそうでもなくって。一時は離婚危機にもなったのよ。お互いにすれ違ったりしてね」
「ああ。まあでも、子供達がな。この先の事を話し合って決めあってから考えてと言われてな。それで、お互いに好きな事。嫌いな事。やってほしくない事してほしいことと出し合ってからはかあ」
「ええ。お互いにまだ知らないことばかりでもあったことがわかったわ。そしたら、まあたすきになってねえ」
「ああ。再度小さな結婚式あげたんだよ。妻が求めたかった形式でな」
「ええ。昔は親の言う事を聞かないとダメな時代でね。好きな事。やりたかった事を我慢してきたわ」
鈴子が頷き、老人が話す。
「特に、夏子には俺の親のことで肩身の狭い思いをさせ続けて苦労させてきたからな。それを、自分の子供らがな。俺にいってきてからになるが気付かされてしまったんだ。それからは夏子がやりたかったこと。見たかった事をする為に一緒にいるんだ」
「はい。でもこの人も会社で苦労ばかりだったからねえ。息子に譲ってからは息子から教えてもらったゲームとかにハマっちゃって」
「昔は怒ってばかりのものだったがいざやってみると中々夢中にさせられて…。逆に息子から叱られてしまうこともあったりしてなあ」
老人が苦笑し、唯子が楽しく話す。
「実際にやってみると楽しいですからね」
「ああ」
「本当そうね」
「はい」
「あの、先生方は苦しいと思われた時はどうなさってられるのですか?特に親の…」
鈴子が言いかけると口を止め、老婆がふっと笑う。
「本当、苦労してきたわ。私の親もだけどこの人の親も」
「ああ。常に上に上にと見続けてなあ。プライドが高かったんだろう。俺もその波に当てられて息子達や夏子に厳しく接していた」
「私は常に主人の一歩後ろを歩いて支えなさい。どんなに苦しくても家のことは全て女であるあなたがしなさいと親から言って聞かされていたわ。でも、そのせいでお互いにお互いのことを知らずにすれ違ったままだったの」
「ああ。息子の進路も全部俺が決めようとしたら出ていかれてなあ。あの時は参ったし、夏子にひどく当たったよ。育て方が悪いとかな」
「私も当たってたし、下の子達にも当たったわ。それから、ね。子供達がみんな出ていくと言い出した時に息子が帰ってきてね」
「ああ。息子が中心になって話して、俺たちの親の命令は聞くなと言われたよ。昔の価値観しかない。今の時代通用しないってなあ」
老婆が深く頷き、老人が話す。
「それから、お互いの親がボケ始めたもんだから、息子達が今がチャンスとばかりに、介護施設を調べて勝手にお互いの親をその施設に誘導してと言うべきか…」
「ふふ。入るよねとか強く言って入らせる気にさせて入らせたのよね。ただ、それから干渉がなくなってスッキリしたわ。お互いに」
「ああ。なんと言うか、すっとした。今まで本当に見えない親の圧に縛られ続けてたんだなとわかったよ。それから、はじけてなあ」
「本当。今までできなかった好きなこと。好きなお店と言って回って遊んで」
「ああ。息子達からもワシらが明るくなって優しくなったと。社員からも変わったと言われたし外部の方からも会社が明るくなりましたねと言われたよ」
「私もそうね。鈴ちゃんからも言われたのよ」
「え?」
「先生。すごく優しくなったって。暖かくなったってあなたがそう私に言ったの。それを聞いて今までのことを反省したわ。そして嬉しかった」
「私は、そのことは覚えてなくて」
「そりゃあそうよね。あなたはまだ3歳だったもの。私も変わったのはその時だったから。あなたが入る前までは鬼みたいに厳しかった先生だったのねと思い知ったし、他の親御さんからも同じことを言われたわ」
老婆が告げふっとえむ。
「鈴ちゃん。あなたが親のことで悩んでいるなら他に任せて平気よ」
「ああ。わしらも今まで親に育てられた恩があるからとぐっとこらえながら生活してきた。親が作った会社もそう。自分が後継だからしっかりしないといけないと、家族を守る為にあくせく働いて親にその姿を見せて満足させないといけないと思わない日々はなかった。だが、親がそれらをみるなんて全くないし、逆にこじきだったなあ」
「本当。あれくれこれくれ。嫌がらせもされたし嫌味も言われたし。親族の前でもそう」
「俺は俺で嫁の教育もしっかりしろ。子供もだとか。お前がダメだからダメなんだと下に見られてなあ。お互いにストレスが溜まってたんだ。そして、子供がまた、そうしてくれたし。親族の関係も切ってくれたんだよ」
「それって絶縁されたのですか?」
「ああ」
「だってよ。長男夫婦だからとお金をせびられて」
「そうだ。なのに返すことすらない。会うたびに金、そして何がほしいとわがままだ。夏子の弟さんは良い方でな。その弟さんしか今は関わりを持ってない」
「はい。後はダメね。私の妹も遺産関係で揉めてからは縁を切ったわ」
「俺のとこもだな。土地は全部くれてやると言ってきた。まあ切ったはいいがしばらく貧乏してたな」
「本当。会社も赤字だったから暮らしていた家を売って子供達と安いアパートで15年間暮らしたわ」
「ああ。でも、楽しかった」
「本当。今はもうみんな巣立ってそれぞれ家庭を持ったわ。私たちは子供達が困らないように小さなマンションの部屋を借りて暮らしてるわ。広いお部屋は要らないし掃除の手間もかかるから楽になったし」
「あとは、せびりにくる奴らが知らないとこだから平和に暮らしてるなあ」
「ええ。それに、今は息子達からも援助してもらって旅行しているわ。今まで我慢して苦労してきた分楽しんできてとね」
「ああ。流石に海外はもうきついから国内旅行でいきたかった都道府県を回っている。今度は夏子が行ってみたいと言った山口の鍾乳洞に行く予定だ」
「ええ。広島はこの人が近々ゲームのイベントがあるから行ってみたいと言ってね」
「いやあ、観光がてらになるがなあ」
老人が照れ他にもと老婆が話していき老人もまた楽しく話した。そして、食事の時間となるとお互いの部屋へと帰り鈴子が食事の席でぼうとしながらモソモソと食べる。ミオが食べながら鈴子をチラッとみていき、唯子がつつくと鈴子がはっとし唯子が料理が冷めると伝えると鈴子が頷き答えた。
ー親かあ。
ミオがぼうとしながら外の広島市内が見える夜景を眺めていた。
ー親の束縛からの解放…。わたしは、あるのかな。
ミオが二の腕のアクセサリーに触れる。
「ミオちゃんもぼーっとね」
ミオがはっとし、唯子がくすりと笑い頭を撫でる。
「あ、えと、鈴子さんは…」
「叔母さまのところ。何か決心がついて相談にいったわ」
「あのお祖父様とおばあさまのお話を聞いて?」
「そうよ。あと、はい。食後のデザート」
「ありがとうございます」
唯子がプリンを渡すとミオが受け取り礼を言う。
「どういたしまして。それから、タイシ君の話じゃミオちゃんが見つけた犯人とその家族はー、まあ私たちの親族が痛めつけたみたい」
「痛めつけた?」
「法的なことに触れない程度に痛めたの。多分もう、世間からも批判の嵐をうけるわ。元々問題が多々あったお家だったそうだから」
「問題?」
「そう。ま、人と人との付き合い方な問題とかね。ただ、それで、良かったのか悪かったのか」
唯子がやれやれとする。
「鉄槌下したのうちの人たちだから。ほんとうどうしようもないわ」
唯子がプリンの蓋を開けスプーンですくい食べ、ミオもまた同じように食べる。
「あ、明日の夜は外食だから外で食べるわよ」
「外で?」
「そう。好きなものを好きなだけ」
ー好きなもの
ミオが食べてみたかったお好み焼きなどを思い浮かべこくこくと頷き唯子がにこにこし楽しみねと話すとミオが深く頷いた。
翌日ー。
ーこれが原爆ドーム。
ミオが驚きながら原子爆弾により被害を受けそのままの形で残された建物を間近でみていく。そこには溶けて固まった柱、焼け落ちたレンガなど当時のまま残されていた。
ー爆弾。
ミオがぞくっとし当時を思い出し手首を強く握る。
ー私も、もしかしたら…。
「ミオちゃん」
ミオがドキッとし唯子が話しかける。
「少し休む?顔色が悪いわ」
「あ、はい」
ミオが小さく頷き唯子がならこっちとベンチへと連れて行った。
ーお疲れ。
途中合流した春樹がうわと声を上げ呆れていく。そこに十四郎とタイシがおり、春樹が話す。
「あいつは本当に馬鹿か?馬鹿だな」
「ああ」
「今はとんでもない仕返しを食らって大人しくなったそうです。ネット上では相当叩かれてますし罰則受けてます」
「ああ」
「ところでお前のとこの親父がいる会社は平気か?」
「平気とまではいかないが、とりあえず問題社員は速攻懲戒免職。クビにして賠償金の請求をしたそうだ。流石に億は払えんだろうってことで3千万の損害を払うようにと訴えたらしい」
「3000万かー」
「赤字を作ってくれたからな。もちろん主な原因はその社員の奥さんだ。話じゃ離婚協議中で保護された子供は児童養護施設に入るそうだ」
「虐待していたからなあ」
「ああ。あと藤屋君のとこのお母さんだけど具合は?」
「ああ。まだしばらく入院だ。ただ逮捕された上に相当叩きのめされて2度とすることができないと警察の人からも説明を聞いて落ち着いてはきてるらしい」
「ああ。まあ、手を出した相手が相手だからな。敵に回したらとんでもない相手に手を出したしな」
「おう」
「あの人たちも容赦しませんからね」
「ああ。だから父さんからもくれぐれも大人しく従えとか言われてな。いや従えと言われてもなあ」
春樹がやれやれとし、十四郎が話す。
「仕方ないさ。会社にそれだけ損害が出るほど力を貸してたならな」
「ああ」
「タイシ君」
唯子がその場にくる。
「親族その一」
「はいはい。お疲れ様です。あとお父さんの会社はどうですか?」
「ええ。なんとか通常営業はしているようです」
「分かりました。私の父はほんとうお馬鹿さんですから」
「でも元はその原因となった社員とその家族ですから。あと、子供の方は児童養護施設に住むそうです」
「ええ。連絡ありましたから。お話ししてましたので。あと、次博物館に行きますけど」
「俺は何回も行ったのでいいです。十四郎は?」
「俺もだなあ。ばあちゃんが勉強だと言って連れてかれたこと何回もあるや。兄貴は?」
「俺はないから行ってみる。と言うか県外自体初めてだし」
「タイシ君のとこは問題ありまくりだったからなあ。そうしたら、藤屋君。そこらぶらついてじかんつぶしとこう」
「ああ」
「なら、出た時に連絡します」
春樹が頷き、十四郎がうすっと答えた。
ーまだみんな綺麗だった。
ミオが爆弾により死んだ黒焦げた死体や大火傷をおいしにいくもの達の姿が映し出された写真を順に見ていく。
ーイーロンの首都も、こうだったのかな…。
「気分悪いとかない?」
唯子が気にかけ、ミオが話す。
「今は…、ただここが昔はこんな時代もあったんだなと思って」
「ええ。信じられないかもだけど本当にあったことなのよ。今でもまだ爆弾の後遺症で苦しむ人もいるのよ」
「はい」
唯子が頷き、ミオが手首を握る。
ーキャハハっ。
ーねえお姉さん。こっち見て
ミオが後ろを振り向こうと頭を回すとつんと着物の青年がミオのほおを手で抑える。唯子がすぐにミオを抱き青年が手を挙げる。
「まったまった。ごめんごめん。振り向いたら危険だから慌てて止めたんだ。ここどうしても溜まり場だから」
青年が名刺を出すと唯子が受け取る。
「白鷺の?」
「そう。キヨ姉に頼まれたんだ。原爆ドーム周囲と長崎の博物館周囲とかは溜まり場が多いから」
「…何か聞こえた?」
「えと、子供の声で、お姉さんこっち見てって」
「……」
「敏感な人はよくここでつかれてね。キヨ姉からすぐ行け言われて」
「悪い。俺が向こうって言ったから」
ヒカルが慌ててくると唯子がため息をする。
「もう」
「いやこっちもすみません。振り向こうとしたからすぐ止めたんですよ。振り向いたら取り憑いて後で大変ですから。守られてるにせよ答えてしまうとせっかくの防壁がパーンと破壊されてしまいますからね。ミオさんの場合はまだまだうまく自分を守れてない無防備な状態だから引き込まれやすい。それがトラブル体質の原因でもあります。ごーくまれにいるんですよ」
「トラブル体質?」
「そうそう。で、ここ広島はあちこちあるもんだから多分行った先で必ず何かある」
青年がセンスを出しミオへと向ける。
「一応助力できることはするけどやっぱり異性。どうしても難しい場所もあるからそこは他に任せるしかない。キヨ姉がいたら良かったけどあいにくオーストラリア出張だから」
「て言うと海外?後カンガルー」
「その通り。そして日系人のお客さんの依頼。あと、自己紹介してなかった。宮野内有朋で、21歳。大学は京都大学で今回はキヨ姉に言われて特別出張で来ましたと。好きな食べ物は焼き鳥。嫌いなのは蟹やエビ。何せ攻殻アレルギーだから」
有朋がセンスで手を叩く。
「あと大学以外の普段着はこの通り着物。と言うことでよろしく」
ミオが目を丸くし、唯子がやれやれとしはいはいと頷くも有朋が虫眼鏡を出す。
「で、ちょっと早速手相占いを」
「後。外に出てからよ」
「手相占い?」
「ええ。ま、それで相手の運勢が見れるんだよ。ただし、あくまで占いということだから」
ヒカルがへえと不思議そうに声を出しミオもまた不思議そうに手のひらを見た。
「聞いてない」
「キヨ姉…」
博物館から人気のない外に出たタイシ、そして呆れる有朋がため息しやれやれとする。
「まったく。たまにあるんだよな。まあとにかく、こっちはこっちでホテルとかとってるんで。後キヨ姉が渡したお守りってことでよろしく。代金についてはなんか前に契約書を書かせたと言うことで」
「ああ、まあ」
「契約書?」
タイシが話す。
「かけと言われてな。まあ、こっちも金の使い所がなかったから書いた。何かあった場合の対応対処を行う。ただし、それらに関して緊急対応を含めて必ず支払いをすること。一月契約だな」
「その通り。なので今回出張費と人件費など請求させて頂きます。もちろん。ちゃんと仕事はするんで」
唯子がはあと軽く呆れ声を出し、有朋が新ため虫眼鏡を出しミオを見る。
「それじゃちょい左手を貸してください」
ミオがじいと見ていくも左手を出すと有朋がどうもと告げ手相を見る。
「いいね。金運も中々なもんだ。ただ苦労線が長いからこの先苦労もする」
「苦労線?」
「ここの真ん中にある線でね。短ければそうはないけど手首近くまであるから苦労が絶えない日々があると言うこと」
ミオがほうほうと頷く。
「それからこの小指の線のとこね。これはできる子供の数なんだよ。三番だから三人は子供ができると出てる。あとこっちは結婚線」
ミオがふむふむと興味を持ち頷いていき、有朋が水性ペンを出しミオの手のしわをなぞりこの線はと説明する。そしてヒカルがスマホで検索しへえと自分の右手の皺を見ながら見ていく。
「面白い」
「手相占いはどこでもあるものね」
「唯子。早苗叔母さまはまだ合流しないの?」
「ああ、そういえばそうね。そろそろ時間」
「んー?」
唯子、鈴子が虫眼鏡でミオを見る有朋を見る。有朋が眉を寄せ虫眼鏡を外し懐から文字が書かれた小さな紐がついた紙を出すと、自分の手のひらに乗せふっとミオへと向け吹きかける。ミオが目を丸くし有朋がミオに付着した紙を見る。
「これはー…」
「なに?」
「なんかおかしいなあ。おかしいおかしい」
有朋が糸を引き紙を回収しまた手のひらに乗せると鈴子、唯子、ヒカルと見てタイシを振り向き近づき虫眼鏡で覗く。
「…なんだ?」
「まーさか」
有朋が再びミオと同じようにタイシに紙を吹きかけパンと手を叩く。
「分かった」
「は?」
「元凶君だ」
有朋がタイシを指差しミオの手を握り近くに寄せる。
「こーれは、キヨ姉は無理だな。わからない」
「え?」
「人には得意不得意があるから。キヨ姉の場合、守護霊とか見るの得意じゃないから気づかなかったんだな」
「守護霊?」
「そう。人には必ず守護をする霊体がいると考えられている。そしてそれはいる。大抵守護霊は生前親しかった者。あとはーでなんとなく理解した?」
タイシが顔をしかめ、ミオがそのタイシを見る。
「えと…」
「ならなんとなくなところでミオさん。まずそっちはトラブルメーカーじゃない」
「え?」
「見せかけられたかな。本来のトラブルメーカーはこっちだ」
有朋がタイシを指差すと今度はミオを指差す。
「うまい具合に隠されたと言うか、真っ黒だから見えなかったなあ。ミオさんの守護霊はおかあさんの祖先だ。名前はリュドミーラ」
唯子が驚く。
「緑の目をしたホクロが右目下にあるロシア人の女性だ。狩人でもしてたかな。弓を持ってる精悍な人だ」
「嘘…」
唯子が驚き、鈴子が話す。
「知ってるの?」
「ええ。曾々お祖母様よ。肖像画に残されてる」
ミオが驚き、有朋が扇子を出しタイシをしめす。
「そしてタイシさんの守護霊ではなくて悪霊は高崎八重子。いやあ。うまく隠れるのがうまい悪霊だ」
「どうにかしろ。もうたくさんだ」
「誰?」
「……実母の母」
「あ、そんな名前か」
「え、とお」
唯子が複雑そうにし、有朋が話す。
「とりあえず言えるのはミオさんの守護霊が抑えてくれているからどうにかそれで止まってる感じだ。もしミオさんがはなれたりすればまた苦しい思いをする。つまり、ミオさんがいなかった頃の幼少期になると言うわけだ」
「…それだけ影響が」
「ある。あと、守護霊交代も出来なくはないけども、ここまでどす黒く知恵賢いとなるとそれに勝る守護霊が中々いない。勝るとなるとミオさんの今の守護霊と同等のものじゃないとダメだな」
有朋が袖から木札を出す。
「ちなみにこれでどれだけその悪霊の力があるか分かるから見せるよ。あとこれは本当にただの木札だけど、しっかり祈りを込めたものになる」
有朋がタイシの額に札を当てる。すると札が縦に割れ落ちる。ミオたちが驚き有朋が苦笑する。
「……種か仕掛けかあるのか」
「いや。ない」
「割れたんだけど…」
有朋が札を拾いスマホを出し耳に当てる。
「あ、キヨ姉。ご相談。あと俺がいくの話してなかっただろう?やっぱりほらな」
有朋が話し、タイシのことも話していく。
「あー、んー、分かった。それじゃ。タイシさん」
「なんだ?」
「とりあえずミオさんから一日でも離れないように。はなれてもいいけど、必ず24時間の内30分ほどはいるようにって話だ。そうすれば軽い災厄で済むし、ミオさんの守護霊がその災厄を解決する為の運を引き寄せるから普段通りに過ごしたらいいらしいけども必ず30分はいるように。でないと大厄がくる可能性大と言うことだそうだ」
「そしてそのあとは?」
「キヨ姉が戻ってからだな。もしくはタイシさんがキヨ姉のところ。オーストラリアに」
「無理だ」
「なら半月後になるな」
「…ああ」
「なんともなあ。あと時間かあ」
「食事の時にあればいいって話よ」
「ええ」
「そうそう。取り敢えずは30分。ちなみに鈴子さんの守護霊はーさすがと言うべきか」
有朋が扇子を広げこそこそと耳打ちすると鈴子が驚く。
「苦労された方でもありますからね。その方が見守られてるならこの先も平気でしょ」
「…」
「はい。俺」
「後は別料金。1人一万円」
「たかっ」
唯子がすっと一万円を出しにこにこする有朋の手に出す。
「…金持ちめ」
「否定はしないわね」
「なら見ますねと言う前にタイシさん」
「なんだ…」
「俺は祓うのは無理だけども、ある程度の抑えは可能なものはあるから。えーと」
有朋が胸元から白い風呂敷を出すとミオが話す。
「あちこちから色んなの出てきますね」
「そうそう。だから着物って便利でもあるんだよ。あとこれ。はい」
風呂敷の中から天照の札を出す。
「白鷺神社の天照の札。書かれている赤い鳥居は悪い卦を吸い込んで浄化するよ。それを風呂以外肌身離さず身につけておくこと。そしたらミオさんの守護霊の力も借りつつ」
「あ」
タイシがミオを振り向きミオがタイシの背から視線を慌てて外し戸惑いながら話す。
「目があったんですけど…」
「え?」
「凄い、睨んで……」
タイシが顔をしかめ、有朋が話す。
「平気平気。ミオさんの守護霊がこの中じゃ一番強いから手が出せないよ。あと特徴は?」
「髪の長い女の方です。黒髪で肌は白くて少し太って」
博物館の窓が僅かに動き外れミオの背後に落下し割れる。ミオが飛び上がりすぐさま唯子にしがみつく。
「窓がっ」
「大丈夫ですか!怪我は!」
2階から職員が顔を出し下へと声を上げる。
「あ、えーと、ありません!」
「これはちょっと無理だ。キヨ姉」
タイシが壁に背をつけ大きく息を吐き出し、ヒカルがなんともいえずタイシの肩をポンポンと慰め叩いた。
ーミオがいる。まあそれでも様子は見ておいたら良い。
昼ー。
お好み焼きやでタイシたちがそれぞれ別れて席へと座る間、事情を聞いたダリスが話す。
『呪いを受けた時以上かもしれませんね』
『呪い?』
タイシの隣で食べていた有朋が驚きダリスが頷く。
『呪い受けたことあるなら早く言わないと』
『は?』
『ならその札だけじゃダメだ。呪いを受けてしまうとその人の弱いところに縛りつくし、呪いは外側の力によるもので外側の影響を与えることができる。そのやり方を覚えて外側の力を引き寄せることができる』
有朋が五芒星のみ書かれた札を向けるとタイシが不思議そうにその札を手にする。
『結界。それはつまり閉じ込める札』
『ああ』
『天照と人の力を使って内側の力を浄化し外側の力を抑える効力を持たせる。ただし、注意点として周りから気づかれにくくなる。タイシさんだからそれは今の状況から考えると良いかもしれないけど、意外と気づかれないと言うのは苦労することもあるし精神的にくる場合もある。自分がやってか全ての中で見てもらいたいところを見てくれなかったりすると、そういった感じになるかな。つまりその結界の札で安全は確保されるけど、自分が行った行為が周りから見られずなかったことにされるわけだ』
『ああ。まあ、それはそれで俺にとっては都合がいい』
タイシが札を天照の札と共にもち内ポケットへと入れる。
『それであらかた抑えられるはず。結果についてはー、そうだな』
有朋が別席で食べるミオを指差す。
『昼から寝るまでミオさんと行動すること。そして翌日朝から昼までミオさんとは別行動すること。もうその高崎八重子にばれたから表立って分かるはずだ。つまり、プチ不幸が来ると言うことが』
タイシがため息をし頷き、ヒカルが話す。
『向こうでもあれだけ苦労してまた苦労するのかあ』
『もうしているだろうが…』
『まあとにもかくにも分かったところで何か干渉もあり得るからー、ヒカルさん』
『ん?』
『寝るときはタイシさんと縄で手首縛って寝るように』
『なぜ?』
『夢遊病対策。特に彼の場合、ぼうとしながらなにかしないかな?集中しているからと気にしないかもだけど、それもいわば霊の影響があるんだよ。霊の影響というのは霊が生前行っていたことをする。この高崎八重子を見ると、どうにも怨念が強い。それはつまり人を数多く殺してきたという意味だ。それが高崎八重子というものを作ってしまった原因でもある』
十四郎の通訳を聞いたヒカルと春樹がうなずき、タイシが僅かに鼓動を早くさせる。
『夢遊病によって引き起こす可能性もなくはない。だから、ヒカルさんに止めてもらう。そちらは守護霊に近い守護者がいる。ミオさんもそうだね』
『それは?』
『最近亡くなった親しい人になる。守護者に関しては必ずしも、守護霊のようにその人に1人いるわけじゃない。最後に守りたいと願った時になる想いによって力をその人に宿すんだ。タイシさんもいると思うけど力があまりにも強いから抑えられている感じだ。この高崎八重子をなんとかすれば守護者はそのまま守護霊の代わりとなって見守る存在になる。守護霊交代はまず、その守護者を見てから決めるんだ。悪霊か良い霊かを。そして、交代をしてもらう。そちらは儀式。もしくは自分から願い出ることだ。願い出るにはもちろん外側の力を借りて霊と話す必要がある。そっちはキヨ姉と俺が出来るから。夢の中での会話の仲介がね』
『へえ…』
『ちなみに、キヨ姉からヒカルさんたちがいたところについて小さい頃から聞かされてきたし、一度だけ。ほんの少し。魂になって彷徨ったことがある。彷徨った時にキヨ姉に引き戻されたんだ。それから力が増したんだよね。自分の』
『なら、あちらを見たということですか?』
ダリスが尋ね、有朋が話す。
『はい。ここを真似たところもあるけれど大抵は中世時代さながら。確かにあそこはここだと魅了される世界だけども、恐ろしいといえば恐ろしい。俺が見たのは人の裏側になる所ですから。そして、俺はキヨ姉が戻してくれるまで2週間も寝続けて起きたら体が動かせないし骨が浮き出てましたからね。危うくそのまま死ぬとこでしたからキヨ姉には感謝です』
有朋が水を飲む。
『キヨ姉が話すことは話しておけと言われてましたからまた宿泊所で話しますね。もしかしたらそこに知りたい事もあるかもしれませんから』
『ええ』
『はい。それと、タイシさんは危険なので寝ている時も気をつける事。とんでもなく体が疲れ果てて寝るなら問題ないですけどね』
『と言うと?』
『うまく体を動かせなくなると言う事。まあけど、動かしすぎたらもちろん本人も疲れてしまうから難しい。あとは、精神的な疲れも霊の影響を受ける。つまり、悪い卦をを受けすぎて寝足りるけど足りずに寝続けてしまう。まあその場合も体が動かせないから霊も何も出来ないんだけどね』
『あー』
『…』
『心当たりはありますね』
タイシがため息し、有朋が話す。
『そうですか。なら、また話は後でにしましょう。俺お好み焼き好きなんで集中して食べさせてくださいね』
有朋たちの目の前にお好み焼きが来ると有朋が嬉々としながら箸を手にした。




