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運命のミオ  作者: 鎌月
23/64

東京3

ーあの時、か。

香苗がタイシが受けた虐待の写真を見て表情を曇らせる。そこには封筒の中にあった写真がだされ置かれており、横塚達が確認していく。

「一度提示されたんですよね?」

「勿論です。はい。ただ、父曰く何もなされなかったと言われてました。父も今は警視庁にいますが以前は地方勤務でしたからあまり相手にされなかったみたいです」

「ええ」

「横塚警部」

その場に女の部下が来ると正座をし座る。

「加害者の大家が供述した者の中に当時の画像を保管したものがいたそうです。他にも被害を受けた子供が写ってました」

「分かったわ。そこに母親の姿はあった?」

「まだ分かっていません。バラバラに保存されているので」

「ええ。ならうつってたら決定的な証拠にはなるから急がせて」

「はい」

横塚が頷き写真をもらいますと香苗に話すと香苗が深く頷きはいと返事を返した。


ー何食ってるんだ?

目を腫らしたタイシが振り向く。そこに黒い影と男が映る。タイシの口には草が入れられておりその男がかがみ口から草を取ると口の中へと飴を放る。タイシが飴を転がしながら男を見上げる。

ー飯は?

ー今のがご飯。

ー変わった飯だな。

ー変わってる?

ーああ。あとがき。お前はそれでいいのか?

ーえ?

ーいいのか?舐められたままで。

タイシがきょとんとする。

ーお前は頭がいい。力も強い。俺の血を引いてるからな。俺の血を引いてるなら恥じずに生きろ。くそどもなぞけりちらすほどにな。


深くシワのあるタイシに似た男が面会室の椅子に座ると目の前の疲れが残っているタイシをみておかしく鼻で笑い目の前のマイクを通し話す。

『そんなに疲れた顔をしてどうした?』

「思い出したくもないことを思い出した。ただ、それでも俺はあの母親を母親と思っていないし知らない母親だ」

『そうか』

「だけどあんたは覚えていた。その顔も。自分の父親であることも」

『遺伝的にはそうだな』

「遺伝的か。ならどうしてあの時舐められたままでいいのかと言ったんだ」

『言ったか?』

「言った。これは覚えている。俺のことを頭がいい。力も強い。血を引いてるなら恥じずに生きろとあんたは俺に言った」

男がつまらなさそうにし、タイシが話す。

「なぜ俺を作った?」

『勝手にあの女が作って、勝手に婚姻届出して、勝手にでっちあげた不倫話作って多額の慰謝料と養育費をもらって出て行った』

「どれくらい?」

『二千万ほどだな。煩わしかったから従って払った』

「そうか」

『ああ。そうだ』

「じいちゃんのところに来たことあるだろ?世話になった人が話してくれた」

『そうだな。二度来たな』

タイシが置いていた紙袋を出し通帳などを取り出して見せると男がやれやれとし、畑中がタイシの名前の書かれた通帳と遺書を見せる。

「俺の父親であるあんたは誰だ?本当のあんたは何だ?何がしたいんだ?答えてくれ」

畑中が写真を取りタイシに似た子供を見て眉をよせ目の前の男を見る。

「子供?」

「あんただろ?俺を向こうに連れて行くよう指示させて連れて行かせたのは。じいちゃんもそれに同意した」

『知らんな』

「知っている」

『知らん』

男が手を振る。

『いずれにしろ俺は殺しているからな患者を』

「それは認めたでいいのか?」

畑中が話し、男がやれやれとする。

「違う。あんたはやってない」

「やってない?」

男が目を細め、タイシが告げる。

「あんたは俺の父親だが違う。あんたはダミーだ。患者を選んで殺したのはあんたに似せた奴だ」

『頭が狂ったか?』

「狂ってない。ここに来る前にあんたの犯罪についての記事を見た。学生写真も全部見た」

タイシが防犯ガラスに並べた写真を写した紙を貼り付ける。畑中が一枚手にし似た2人を見ると眉を寄せる。

「患者を殺した時に出てきた写真とあんたの特徴が複数箇所一致しない。耳の形と口の形。ホクロの位置も違う。こいつは首筋の左だがあんたは右だ」

『…』

「俺の行き先は行方不明者達を奴隷にさせた奴隷商だ。海外でも同じ案件が多数あれば、そのまま帰って来られなくなった人もいる。あんたはそれに加担していたか、加担されていたか。どうあれ犯人隠蔽に」

『くだらない』

男がはあと息をつきそっぽむく。

『知らん』

「俺は真実を聞きにきた」

男がタイシへと視線を向け、タイシが僅かに顔を歪めながら話す。

「答えてくれ。俺は、俺の居場所はもうあそこしかない」

『…』

「頼むから」

男がふうと息を吐く。

『俺は患者を殺していないし医者でもない』

畑中がじっと見ていき、男がはあと息を吐く。

『タイシ。お前の話した通りの身代わりだ』

「なら本物はどこだ?」

畑中が尋ね、男がやれやれとする。

『奴ならここ日本にはいない。あれは顔を変えて仕事を楽しむ。まあもちろん、楽しむのは人を使っての仕事になる。つまりは実験だ。そして一つの仕事で決まっている活動期間は10年。奴は俺の二十も歳が上で、カオナシと言われている。整形ではなく、特殊メイクで顔を作る。何故奴がそれを行なっているか。孤児を探している。もしくはお前のような虐待を受けて居場所をなくした奴だ』

「そして向こうに?」

『ああ。そうだ。そして俺は使えるが使えない孤児としてその当時の連中に連れて行かれた後、使えるための教育をさせられた。その後は、お前の言う奴隷商人の一員としてここ日本に連れてこられた。俺の本来いた場所は中国四川省。俺は日本人じゃなく中国人だ。あそこは人身売買が盛んに行われているからな。そして、孤児は金になる。ある程度育てられた後は組織のものが来て選定して連れ去る。連れ去った後はお前も知っての通り。そこで選別される』

「奴隷。捨て駒。実験台」

『あとは裏から操りやすいように崇拝者として使う。聖者、神の子と言った類だ』

「俺について何か話は?」

男が面白く笑む。

『あった。お前のおかげで全て台無しになったと言われた。お前の息子とその協力者達が一番の市場を壊してくれたとな』

タイシが拳を握り、男がふふっと笑う。

『その後はすぐだったな。ただ、奴らは俺を殺しはしなかった。理由をいえばまだ利用価値があるからだ』

「おどしの?」

『それもだが、一応俺はお前の父親でもある。血の繋がりを持っている。お前は俺の分身だ。俺は奴らにとって使えないが使える存在にもなる。あちらにとって血は絶大にして強い力だ』

「ああ」

『お前という息子ができたことについて、俺はあの女に少し感謝だ。人が疲れているところに薬を盛られてやられて出来たからな。それも一度の行為でだ』

男がやれやれとする。

『まあ、それが功をなしたとも言える。奴らにとってお前という脅威が作られたからな。そして、組織についてこの際だ。教えておく』

タイシが頷くが突然停電が起こる。畑中がはっとし、男の背後に影が現れるも突然防犯ガラスにヒビが入ると畑中が驚愕し男がヒビの入った防犯ガラスを貫いたバールの先端を見てさらにその先端に肩を貫かれたナイフを持った刑務官を見る。刑務官が膝を崩し、パールでガラスを貫いたタイシがそのままガラスを叩き割る。

「おいおい…」

防犯ベルが鳴り響くと刑務官達が中へと急ぎ入り、男が後ろへと下がるも1人の刑務官の胸ぐらを掴み片手でバールを突き刺された男の上に投げ倒す。

「おい!!」

「何をする!!」

刑務官達が男を押さえつけ、畑中が唸る男達の服を握り開くと腹部に巻かれた箱型のものを見てゾッとする。

「おま」

タイシがすぐに動き男2人を掴み力一杯元いた面会者用の部屋へと向け声を上げながら投げ飛ばし、畑中が声を張り上げた。

「伏せろ!!爆弾だ!!!」

男が押さえていた刑務官二名を掴み床に叩き伏せる。タイシが伏せ、そして畑中が近くにいた刑務官を掴み伏せた途端大きな爆破音と衝撃と共に面会室が吹き飛ばされた。


三日後ー。

ニュースで刑務所の爆弾テロが報じられていく。それを頭や首に包帯を巻いた畑中が病院の一室でテレビを見ながらやれやれとしていく。

「畑中さん。またよくご無事で」

そう、同室となった澤田が恐々しながら話すと畑中がため息をする。

「懲り懲りだがな。まさかそこまで力の強い人身売買組織が動いていたなんて聞いていない」

「それは誰もですよ」

ドアがノックされ頬と頭にネットをつけたタイシが頭を下げ中へと入る。

「失礼します。昨日退院しました。今から警視庁に事情説明に行きます。後これ見舞いです」

「…」

「君結構頑丈?」

「まあ」

「タイシ頑丈ですよ」

ヒカルが手をあげ中へと入り、畑中がやれやれとする。

「俺は腹にガラスが刺さったんでまだだな。残りもだ」

「全員ガラス?」

「いや。澤田と同じ頭にヒビが入ったのが1人。2人は肋骨や腕骨折。もう1人の頑丈だったお前の父親は軽い火傷と頭の怪我のみ。今は別の刑務所に重要犯罪人として収監されている」

「まじで?」

「ああ。そして、罪状について犯人隠蔽などに変わる予定」

「そうだ。人身売買についてもか。殺人よりかは軽い。そして、その組織についてより詳しく話せばいいとは思っている」

「はい。またそこは俺が協力することになった」

「まあ、お前の観察眼あってこそになったからな。後あの刑務官達偽物だったんだろ?本物は?」

「いない。全て偽装刑務官だ。そこもまた、うるさく言われるが俺は関係ない。あと、バールの持ち込みについてはお咎めなしだそうだ」

「聞いたけど何でまた持ち込んだの?後どうやって」

「分解して運べるように知り合いに手伝ってもらって作ってもらいました。多分。その絡みだと刑務所にいるかと思いましたから。後防犯ガラスは強い力で先端の圧力に弱いですし」

「いやでも一発で貫いたんでしょ?どういう筋肉?」

「こいつは大の男2人を面会室の防犯ガラスを飛び越えさせて投げたからな」

「タイシはそれくらいなんてことないですよ」

ヒカルがタイシの長袖を捲り上げ鍛えられた筋肉を見せると澤田が点滴棒を持ち移動し触る。

「うわかった。太いなあ。えー、握力いくつ?」

「測ったことないです」

「澤田戻れ。たく」

畑中がやれやれとしタイシが袖を下ろす。

「俺の勘ですけど実父を殺さなかった。うまく消せなかったものについては死んだと思います。役立たずは死をという奴です」

「あとは口封じでもあるな。そいつらはまたお前の父親を襲うか?」

「いえ。見張るだけかと思います。どうあれ、力は弱っているのは確かですから。あとは、父に化けた相手のいどころがわかればいいのですが」

「俺はもうここにいないと思うけどな」

「ああ。俺もそう思う。今回の件でさらに追い込まれたはずだし、これ以上目立つ行為を行えばあいつらにとって害でしかない」

「だな。あと、向こうは向こうでお前の協力者。その組織にとっての危険人物もいるからな」

「ああ」

ヒカルが面白くし、畑中が話す。

「取り敢えず、お前しばらくあの寺に篭ってろ。つうか籠もれ。休ませろ俺を」

「えと、はい」

「畑中さんまだ君の担当外されてないから」

「そうだ」

タイシが申し訳なく頭を下げ、ヒカルがじゃあこっちもいきますと告げると畑中がしっしと手を振り澤田がありがとうねと手をバイバイと振った。


ーだーかーら。

受付でばんとあのアパートの女がむすっとしながら困る事務係の男女を前に話す。

「私はもうあそこにすまないの住みたくないの。原因作ったのそっちでしょ?」

「作ったと言われましても。元は大家のせいですし」

「大家のせいであってもよあってもっ。とにかく引越しとかどうにかして」

「困ります」

「困ってるのは私よっ。どうにかするのが警察でしょっ」

タイシ達が中へと入るとヒカルが受付で声を上げる女を見るもタイシが離れ向かうと後についていく。

「とにかく新しい部屋探してよっ。後引っ越しっ」

「すみません」

「なにっ」

女が振り向きタイシを見て指差す。

「あっ。あー…えーと」

「その、お世話かけました。俺のせいです」

女が気まずくし、ヒカルが話す。

「なに?」

「まあ、問題のアパートの部屋で、暮らしてた方で」

「あー、はいはい。じゃあお姉さん。俺が話するから行こう。後俺こいつの友達」

「…」

女が頷きヒカルがじゃあ俺そっちで話すと手を挙げ女を連れ離れタイシがすみませんと受付に頭を下げた後、待っていた横塚の部下の元へと向かい奥へと進むと女性事務が困惑しつつ男性事務の上司へとこっそりと話す。

「あの子が今騒いでた方の部屋の被害の」

「ああ。助かったですますぞ」

「はい」

2人が離れ再び各々の業務を行った。


『いた。ありました』

ダリス、ミオ、そして香苗が警視庁きており男が行方不明者リストから自身の母親の若い頃の葵の写真を持ってきて見せるとミオがその葵を見て話す。

「母です。18の時に…」

「ええ。ご本人は?」

「…病死です。元々癌を患っていたと聞きました」

男が頷きミオが表情を曇らせ、香苗が澪の頭を軽く撫で男へと話す。

「これはまだ、行方不明ということで情報提供中ということですよね?」

「はい。その通りです。なので、こちらからあちらに報告をいたします。その後、こちらの葵さんと親子でしたら親子関係を証明する為にあちらと娘さんであるミオさんのDNAを調べます。そして、親族と分かりましたら、お話は事実で、あちらとおそらく面会などの話があるかと」

「はい」

「ええ。ただそちらは弁護士を通してのやりとりになるかと思われます」

香苗が頷き、ミオが小さく頷く。

「ミオちゃんにとって祖父母になられる方は御存命ですか?」

「そちらは確認しなければ分かりません。なので、確認したい場合は同意書などの必要な手続きをお願いいたします」

「必要しない場合は?つまり、会わないとか」

「申し訳ありませんが、それは出来ません」

「んー、ですよね」

「えと、私はいいですよ。その、母の家族がどんな方なのか、母からも少し聞いていましたから気になってて…。もし会えるなら私もその、お会いしてみたいです」

香苗が頷き男がならと告げこれからの手続きなどの話を行った。


「あの大家多分払う気ないからタイシの金で払うよ」

外でヒカルがジュースを飲みつつ話女がコーヒーを手にしながらえーと声を出す。

「それ悪いって。あの少年君に払わせるの」

「いいですよ。どうせあいつの母親が元凶だし。後、なんだかんだでやったと認めましたからね。で、被害を受けた我が子供の慰謝料を払わないといけませんから。そのなけなしの金を渡すというか、警察がぶんどって確保しますし」

「いやでもさあ」

「いいですよ。あいつは祖父の遺産金もらった時に寺の修繕と近所の歩道の修繕と孤児院にかはするって話してましたから」

「いや善人すぎるから」

「でまあ、あいつ言えばお姉さんにもちょっと迷惑かけましたし、混乱してる中でお姉さんに正気に少し戻してもらいましたから。お礼ってことで引っ越しとか手伝いますよ」

「いやそう言われてもそれ君の考えでしょ?」

「確かに俺の考えですけど、同じこと言うところか倍にして払う可能性はありますね」

「えー、でも私そこまでしてほしくないわ。ただ、あのアパートの部屋からは出て行きたいのよね。そんで今ネカフェしてるから」

「ネカフェ?」

「ネットカフェ。簡易的な寝泊まりどころ。ただベッドなくてソファとか椅子だからしんどいのよ」

「あー」

「それに、問題の部屋でしょ?そこに私住んでるから周りの同期のバカ女どもからいちいちネタにされて言われてたまんなくって」

「お姉さん何の仕事してんの?」

「キャバクラ。これ店のカード」

女がカードをヒカルに渡すとヒカルが受け取り見る。

「そいや君いくつ?」

「二十歳」

「なら、そこ入れるから一回くる?君みたいな子くれば相当盛り上がるし」

「どんな意味で?」

「顔がいいで寄ってくるのよ。その後喧嘩もあったりするし。ああ、表じゃなくてスタッフしか入れない裏の部屋とかでさ」

「それはつまり女の修羅場?」

「あははそうそう。ま、私は興味ないけどねー」

「男に?」

「そお」

「なんで?」

「うーん。なんでとなるとなあ。何というか、自分の理想の男じゃないからかなあ。何度か付き合ったこともあるけど1年も持たなかった。なんか私が飽き性だからってみんな話してたわ。ま、自覚はあるけど」

女がタバコを出しタバコいいと尋ねるとヒカルがどうぞと手を向け女がタバコを口に加え火をつけ吸っていく。

「じゃあ。お姉さんは独身なんだ」

「そう。男の経験ありの独身。そんで話聞くのは好きなのと夜仕事が金になるからしてんのよね」

「お姉さんの家族は?」

「地方の田舎にいるわよ。ただ、さっさと男作れとか、夜仕事するなとかうるさいのよ。だもんでほぼ絶縁。あそこだけ古いしきたりと言いますか。昔から男尊女卑が激しくてさあ。今では男も子育てするのに向こうはたとえ忙しくても女が育児に家事。そんで仕事仕事。男は?飯用意しろ。子供がうるさいから外に出ろとかあほくさってさあ。そんで、姑とかの女達が同じ女だから味方してくれるか。しない。おまけに勝手に見合い話まで持ってくるときた。だから出たのよ」

「お姉さんたまってんなあ。あと、まあた古い考え」

「でしょー、でー、ま、私が男に興味持たないのそれも原因の一つだわ」

「あー」

タイシがその場にくると女が苦笑しタバコを吸い殻へと入れる。

「タイシ。このお姉さん部屋いづらくて今ネカフェで生活してんだってさ」

「いやいいって」

「いやいや」

「本当申し訳ありません」

「あー、いいからいいから。そう言ったの私あんまり好きじゃないし…」

「でー、どっかお姉さんの年収にあった住まい探しと」

「だからそこまでは」

「いやいやいや」

「じゃあ一つ貸家が持ってるのでそこお貸しします」

「貸家?」

女が目を丸くし、ヒカルもまた目を丸くする。

「貸家持ってたのか?」

「正確には死んだじいちゃんのだな。俺がまあ、前じいちゃんが金困った時に貸家でもしたらと言ったら本当にし出して。それで遺産の中に貸家もあったから。今相続とか弁護士とか通じて精算中なんだ。ただ、2件は俺の名義にしている」

「なんで?」

「将来的に俺のものになるようにってじいちゃんが俺名義になるよう契約してたんだ。その2件については俺の貸家だから問題なく貸せる」

「ふうん。場所は?」

「西銀座の地下鉄から徒歩5分。二件ともだ」

「だって」

「うーん…徒歩5分かあ」

「あの場所なら駅利用するなら15分の距離ですし」

女がうーんと声を出し、ヒカルが話す。

「寝床とかは?そこアパートの部屋とか?」

「団地だ。寝床は準備してもらわないといけない。そこは俺が貸布団とか用意するから。冷蔵庫も。あと、風呂は歩いて2分のところに銭湯があります。部屋にもついてるけどそこも広い場所なので一応おすすめではあります。コンビニとコインランドリーはその隣ですし」

女がもんもんと考え唸り、ヒカルが迷ってる迷ってると頭の中で思って行った。


タイシが団地の部屋の鍵を開けると短い通路の先に広い部屋が一つ。そして右にキッチン。トイレバス別の部屋に屋根付きの洗濯干し場に二室の寝室にも使われる襖戸を挟んだ部屋があった。女がやや興奮気味に見て行き、ヒカルが話す。

「おー、結構広い」

「ああ。元々この辺りは小学校と工業団地もあっだところでここはそう言った工業団地で働く家族が暮らしていた専用団地だったんだ。だけど、時代の流れで小学校も廃校。工業も石炭を多く使う鉄鋼業だったんだ。その石炭から出る有毒ガスによる健康被害が問題視されたのと、その工場の責任者たちが違法賭博やら賄賂やらで逮捕されてからは工場の先行きが立たなくなり倒産。そして、ここ団地は買いたいされずに不動産に出されてそのまま。知ってる人は借りるけど知らない人は借りないし、貸家だからしれる情報が極端に少ないんだ。この辺りに住んでいるか、貸家の住人と知り合いかじゃないと借りる人はそういないところなんだよ」

「そうしたら儲からなくないか?」

「儲けとかは特に考えてないし、元々ここを貸家にしたのはじいちゃんが俺が住むならという話からなんだよ。ちなみに一月家賃は土地代含めて6万の物件になる。安い理由として建物自体が40年もので、耐震があまりされてないからだな。でも鉄筋コンクリート製だからそう簡単には倒れないところだ」

「へえ」

「ただし、家電製品とか必要な道具は自前で揃えないとダメだ」

「揃ってるところもあるからな」

「そうだ」

女がむうと考える。

ーなかなかいい。部屋は広い。駅近い。コンビニもコインランドリーもある。いっそこのまま借りたい…。

女が悶々とする。

「今後ここの管理は俺の知人に変わる予定です。後二日は」

「タイシタイシ。お姉さん聞こえてない」

ヒカルがむうと考え込む女を指差すと女がはっとし我に返りぎこちなくした。


ーわあ。

婦警に囲まれたミオがやや顔を赤くさせながら指でつつかれたり、頭を撫でられ愛でられていた。傍には香苗とダリスがおり、ダリスが面白く香苗が警察官と話していく。

「可愛いー」

「肌白いしすべすべ」

「ミオちゃん可愛わあ」

ミオが頭を軽く振り、警官がやれやれとする。

「香苗」

「あ、こっちこっち」

香苗が父親へと手を振ると父親がたむろう婦警達を見る。

「何してるんだ」

「ミオちゃんが愛でられてるところ。詳しい話は塚田さんに教えたから」

「ああ」

「タイシ君の方どう?」

「ここではな。こっちだ。ほらそこも自分らの業務に戻れ」

婦警達がはいと答えミオから手を振り離れミオがぎこちなく頭を下げた。


応接室へと来ると3人が並び父親が用意された茶を飲みやれやれとする。

「まず、タイシ君についてしばらく寺にいてもらう。何せ担当のあいつが怪我して入院してるからな」

「ええ。ちなみに担当者は1人だけ?」

「ああ。今のところはになる。理由として今現在刑事課の入れ替わりが行われているからな。だからそのままだ」

「あー、やっぱり。なら懲戒免職?」

「当たり前だな。私的な事で振り回された挙句無駄な税金を使ったからな。上も懲戒免職までとはいかないが責任取りをしなくてはならない」

「かわいそうに。でも、勝手に手配したんでしょ?よく通ったわね」

「そこは以前いた元上司浅野が原因でもある。今は退職していない。そして、退職したから関係ないで終わらせている。聞いた話、その人はさっさと終わらせたがりな上司だったそうだ。つまり杜撰管理だ」

香苗がやれやれとし、父親が話す。

「そして今回に繋がったわけだ」

「分かった。ま、手配取り消されただけでもいいわね。あと、和尚さん蹴った奴は?」

「懲戒免職で即座にクビの後の勾留だ。薬の売買。取引も行っていた。保管していた麻薬を少しずつ抜いてそれを売り捌いていたようだ。暴力団達に」

「あーあー…」

「信頼のガタ落ちになる」

「そうよね」

「ああ。あとタイシ君だが母親があわせろあわせろとしつこくてな。ただ本人も面会拒否してるから会わせない」

「でしょうね。なら、実の父親は?」

「話だと、特に話す必要は無くなったというその父親の言い分だ。タイシ君もまた聴きたい時に面会しますって話だ」

「じゃあ父親とは言いわけね。オッケー」

「ああ」

「それじゃ、タイシ君に酷いことした連中。ある程度拘留した」

「分かっているところはな。あとは、タイシ君が辛いかもしれないが思い出した時にはなる」

「そうよね。分かった。そうしたら、タイシ君はお寺、お父さんとの面会は本人もいいってわけね。了解」

「ああ。それと、タイシ君と一緒にきたこの方達は?」

「一緒がいいでしょ?あと」

香苗が回り込みひそひそと父親だけにしか聞こえないよう話す。

「分かった。ならその時は母さん達が相手するな」

「ええ。私も学校あるしね」

「ああ」

香苗が立ち上がる。

「なら、買い物してじいちゃん達の家に今日まで泊まるから」

「ああ」

「ええ。ああ、あと」

香苗がまた近づく。

「見舞いと称してばか言いに行くんじゃないわよ知人通じてバレてんだからね」

「う、ぅ」

「はい。ならお仕事頑張ってね」

香苗が青ざめる父親の肩をポンと叩き話し終わったからとミオ達へと告げた。


寺ー。

タイシが祖父の骨壷と写真に手を合わせ静かに1人拝んでいく。その頃。

「お引越しのお手伝い?」

ミオがヒカルに尋ねヒカルが話す。

「そう。ま、タイシのせいじゃないけどタイシがらみで迷惑かけたお姉さんがいてさ。タイシはここで自粛しなきゃだから俺と手伝ってくれるって近所のおっさんがトラックって荷物運び用の車出してくれて手伝ってくれるそうだから。そんで俺1人じゃ時間かかるし、お姉さん。ま、女性だからさ。男じゃあ扱えないのとかあるからミオいてくれたら助かるんだよな。明日何かある?」

「明日はないです。あと、いいですよ」

ヒカルがヨシヨシと頷く。

「なら、ダリスさんとか手伝えるかなぁ。まあ向こうじゃお偉いさんだけどもー」

「えと、話してみます」

「ならお願いするよ。俺言葉話せないし。なんでかなあもお」

ヒカルが口を尖らせ、ミオがそれはわからないと頭をふり、庭で手伝いをするダリスの元へと向かった。


翌日ー。

「外人のイケメンまで連れてきたかー」

「人で多い方がいいから」

ヒカルが女へと話しミオが頭を下げダリスがミオから説明を聞き手袋を受け取りはめていく。

「ミオが通訳できるから。後女性同士だからさそっち系の荷物の入れ込みとか使っていい。そしてこっちで運ぶ」

「助かるー。いやほんと感謝」

「いやいや。迷惑かけてるから」

ヒカルが手を振りなら早速と話し女がああと返事を返した。

「キャバクラというお仕事は接客業なのですね」

「そう。主に男相手のね」

ミオが下着などを箱に入れながら女と作業をする。

「男性と?どんな?」

「お酒注いだり会話したり」

「会話ってどんな会話ですか?」

「まあいろんな話ね」

女がミオの質問に答えミオがほうほうと頷く。そこにヒカルが来る。

「ミオー。おーい。持ってるもん持ってるもん。てーとめるなー」

ミオが真っ赤な紐パンを見て顔を真っ赤にし、女が話す。

「ああそれ変態客からもらってさあ。一回もつけないで引き出しの中にしまいこんでた奴。捨てていいわ」

女が下着をつまみゴミ袋に入れる。

「いらないのにもっとくんだ」

「いちいちはいてる?持ってるなら持ってきて言われてきたからさあ。まあでも問題起こして出禁になったのよねー。若い子ストーカーして襲って逮捕。その若い子も相手しなきゃよかったのにー。太客でも迷惑なやつだったわー」

女がこれもねーと薄いブラウスを見せるとミオがぎこちなく頷き女が頷くとそれも捨て後まだ他にあったなーと下着を捨てたり残したりと分けた。


昼ー。

「やっぱぬか漬けの高菜の塩握りがいいわね」

女がもぐもぐと作ってもらった握り飯を食べ、手伝いに来た男が話す。

「そらよかったわ。あと家で食べてたのか?」

「ええ。でも、昔の堅苦しい家なんで出てきちゃったのよね。男尊女卑って奴で」

「あるあるだなあ」

「お寺の周りは?」

ヒカルが尋ね男が話す。

「以前はあった。俺が若い頃は。だが、タイシくんの件があって大きく変わったなあ。まあなんだ。タイシくん。男みんな拒絶してなあ。俺たちもまさか、あんなことされてるなんて微塵も思わなくてな」

男が悲しい笑みを浮かべる。

「だもんで、俺のカミさんや婆さん達とが交代で看病したり見たりしてな。そんで、俺らは代わりに今までやってなかった家事とかしてさ。んで、そこをカミさん達が利用したというか。あれしろこれしろ。出来るじゃないかと強く言い始めたもんだからもうその流れでなあ」

「へえ」

「やっぱり男の人たち拒絶してたんですね。泣いたりして?」

「泣くというか、叫ばれたかな。怖いとか嫌だとか言わずにただただ叫ばれてなあ。精神科の女医さんも来てくれたけど何も言葉もなくて質問にも答えなかったそうでな。だから、PTSDと診断されてしばらく病院にいて、それからもカミさん達が見舞いに行ってはあの母親が来ないよう見張ってたわけさ」

「えーと、PTSDと」

ヒカルが電子辞書で調べる。

「スマホは?」

「持ってないんだー、心的外傷性障害。あー、でも当てはまるなあ」

「そうそう。それでタイシ君にはまた秘密にしててさ。やっぱあの母親が来たわけだ。面会禁止なのに。そして、香苗ちゃんいたろ?あの子がまだ小学校に上がらない頃だったかなあ。会わせないって立ち向かったもんだからさ。あの母親がよこっつら殴ってさらに子供相手に馬乗りになって殴り続けた」

「うわ…」

「またそれで逮捕。香苗ちゃんはそのまま入院。そして、タイシくんには言わないでほしい言ってな。その後あの女は2年間刑務所生活してまた出てきてだ。タイシ君連れ攫おうとしたけど警察がそこは止めて連れて行ったんだ」

「ねえ。なんでそこまで執着してるわけ?我が子に」

男が頭をかき首をかしげる。

「分からん。そこが俺らも分からん。なぜかがな。金目的なのか、なんなのか不明なんだ」

「不明ねえ」

ミオがダリスに話していき、男が麦茶を飲む。

「んー、なんか、あるかあ。タイシに」

ヒカルがふむと考え、男がコップを置く。

「あったとなると、実夫かもしれねえなあ。あとは特に普通の子だしな」

「んー、でもつっても実夫からも多額の金もらっておきながらですし。もやっとする」

ヒカルが考え男が話す。

「ま、らちあかねえからここまでにして10分したら運ぶぞ」

「はい」

「助かるわ本当」

「いいさいいさ」

男が手を振りつけものを食べ、女もまた自分もと食べた。


ーあの人がなんで俺をそこまでか。

タイシが寺の中の祖父の部屋を片付けながら棚の中。そして本の隙間と調べていくと本を閉じうーんと考え本を棚に戻す。

ーじいちゃんだからな…。何か、ヒント見たいな。話の中で…あるか?

タイシが棚から離れ本堂の中へと入ると祖父の遺骨と写真と見て畳をとんとんと蹴り音を立て下はないなあと音を立てるのをやめ周りをゆっくり見渡し天井から金色の仏の像を見る。

ーちゃんと拝むんだぞタイシ。

ーなんで?金属の塊でしょ?

ーなんでお前はその歳でそんなくだらんこと言うかな全く。

祖父が幼いタイシを膝に座らせながらやれやれとし、タイシが足を揺らす。

ーだってそうでしょ?

ーまったく。まあとにかく、ちゃんと拝むんだ。神様仏様はどこでも。

ー神様は神道で仏様は仏教で。

ーええいとにかく両手を合わせて拝む。今日も元気でいます。見ていて下さいとな。

タイシが渋々としながら拝み祖父もまたそうだそうだと頷き数珠を手にし静かに拝んだ。

タイシが仏の像を叩いていき空洞。そしてまた別の音がするのがわかるとその場所を爪でこすったり触ったりする。

ーじいちゃんだから…。傷つけてまでしなさそう…となると。

タイシが頭を見て仏の頭を掴む。そこに近所の者がお参りに来るとタイシを見て驚く。

「なあにしてんだタイシ君」

「あ、いや」

かぽっと頭が外れる。

「あっ!?」

「あ…あーえーとお。すぐもどすからっ」

タイシが素早くライトを手にし頭の中からその中を覗くとミイラ化した何かと真新しい紙を見つける。

「即身仏、か?」

「え?」

「即身仏があるんだ。しってる?」

近所の者達が頭を振り、老婆が戸惑う。

「聞いたことないね」

「ああ…。念の為警察にいって調べてもらおう」

「あー、タイシ君。その即身仏様はどう言った姿だ?」

「どう言ったとなると…髪があるし、女性の着物を着てる。女の人ぽい」

場が静まり返ると、タイシがその静まり返った場を見渡し戸惑いつつゆっくりと下りるとスマホを手にしあーと声を出し申し訳なく畑中に連絡した。


鑑識達が中へと入りその女のミイラを写真に写し残していく。外では規制線が貼られておりその規制線の中だが本堂の外で複雑そうに立つタイシ、呼び出され立会いさせられた香苗の父親がいた。

「女のミイラか」

「あー、まあ、あと古い感じにはー確かに思えない」

「ああ」

「出しますっ」

仏の像に回転する鋸の刃が当てられると背中が剥がれ3人がかりでその着物の女のミイラを出す。

「やっぱり上からは取り出せなかったんだ」

「ああ。あの形だと難しいな。だから死んでから入れられたんだろ」

女のミイラがブルーシートに覆われ更に鑑識達がブルーシートで周りを覆い隠す。

「手紙」

「待て」

捜査員が袋に手紙を入れ香苗の父親とタイシの元へと来る。

「まだ中は見れないです」

「分かってる。外の文字は見たことあるか?」

タイシが見せられた文字をじっと見る。

「じいちゃんの字に似てますけど、なんか違いますね。跳ね方が。でも、どっかで見たなあ……」

タイシがうーんと考える。

「祖父の、部屋に似たのがあるので見てみます」

「はい」

「ああ、なら回してくれ」

男がはいと答えその場を去りタイシが祖父の部屋へと向かうと戸を開け中の本を数冊出す。

「タイシ君がいた部屋と一緒でほんの山だな」

「あ、おじさんは初めてですか?」

「ああ」

「俺がいた部屋はじいちゃんの第二の書庫なんです。じいちゃんたくさん本読んでたから。あった」

香苗の父親がタイシが開いた日記を見る。

「これは?」

「じいちゃんの弟のです」

「和尚さん弟がいたのか?」

「ええ。戦争で死んだって聞いてます。遺体はないそうです」

「そうか」

タイシが日記の後ろにあった軍服を着た男の写真を見せる。

「これが弟。正嗣」

「ああ、あと、こうなってくると謎めいているな。その日記はなら、弟さんが書き残した日記か?」

「はい」

「あ、いたいた」

ひょこっとヒカルが現れ中へと入る。

「お疲れ」

「ああ。引っ越し終わったから来たらなんか女の人のミイラが出たって」

タイシが複雑そうに頷く。

「そうなんだ。いや、なんであの母親と思う人が俺にそこまで執着してたか原因見つけようとして」

「あー、俺らもそれ話してた。酷いことばっかしてて。でもなんかまだ私のそばにいろ。いるんだってくらいしつこいし」

「ああ。だから探したら、か。仏の像の中に女の人のミイラがあったんだ」

「へえ。それ、和尚さんの相手とか?」

「だろうか…」

「そこは調べてからだな」

「ああ、あと、手紙。このじいちゃんの弟が書いた手紙を握ってたんだ。遺言としか書いてなかった。まだ表しか見ていない」

「なんで?」

「指紋が出るかもしれんからな。なので調べて終わってから返す」

「はあ。細かいなあ。あとそのミイラって何か傷とかあったか?」

「見た感じではなかった。ただ着物着てたからその下はわからない」

「そっかー。で、その日記、だよな?」

「ああ。じいちゃんの弟が残した日記」

「ふーん」

ヒカルが手にし中を見ていくと日記を閉じからと見ていき表紙にも触る。

「特にないなあ」

「ああ」

ヒカルがタイシに返しやれやれとする。

「芥川さんの引っ越しは住んだんだな」

「済みました。なんかお礼したいからって、店に来てと言われたんでどうぞー」

「いや俺はいかんからいい」

キャバクラのカードをヒカルに返し、ヒカルが結構もらったからと渡すと香苗の父親がやれやれとする。

「そうだ。タイシ」

「なんだ?」

「俺ずっと不思議に思っててさ。いやこの場でなんだけど気になって」

「ん?」

ヒカルが手招きしタイシがヒカルについていく。そして庭先の手動式ポンプを示す。

「あれなんだ?何するんだ?」

「ああ。手動式ポンプ。水を汲んで出すやつだ」

タイシが近づきハンドルを前後させると水がじゃあと流れる。

「へえ」

ヒカルが目を輝かせ、タイシが話す。

「向こうにはないからな」

「ああ。この中の水は?」

「ああ。井戸水だ」

「中見れるか?どっから来てるんだ?」

「湧水だから地下水だな。あと多分見れると思う」

香苗の父親がやれやれとし、タイシがまずポンプのハンドルを外しポンプ本体を外すとその本体から中をライトで照らしつつヒカルと共に覗き見る。そして吊るされた大きな布の上に軍服を着た骸骨と目が合うとタイシが汗を滲ませ、ヒカルが驚く。

「あ、骸骨」

「どけっ」

ヒカルが押しやられ香苗の父親が中を覗き同じ遺書の文字が書かれた紙と共に骸骨があるのを見ると大きくため息し、報告した。


「お前のじいちゃんの寺って何?」

「俺が知りたい…し、知りたくもなかった…気もする」

香苗の家でタイシがダンマリとする。そして香苗の祖父母達もまた困惑していく。

「俺らもなあ」

「ねえ、まさか、和尚さん隠してたのかね?」

「分からん…。まあとにかく、ちゃんと調べてもらうしかない」

ミオが複雑そうにし、ダリスが話す。

『遺書ですか』

『ええ。どちらも同じ筆跡でした。中身はまだ…』

『見ていないのですか?』

『はい。一応、香苗さんのお父さんの監視で調べてもらっています。まあ、刑務所の方とかありましたから』

『はい』

「あらやだもうこんな時間。ミオちゃん。ご飯手伝える?」

「あ、はい」

ミオが会話を気にしつつ離れ香苗の祖母からエプロンをもらうとそれを身につけキッチンへと向かった。


ーせな。せな。1人にしない。俺も一緒に行こう。

「どうやら死んだと思われた弟が病気の恋人を心臓を突き刺して楽にさせた後、井戸の中に入ってそこで自死したようだ」

香苗の父親がタイシへと報告し、タイシが話す。

「えと。なら。祖父知ってそうですかね?」

『分からんなあこればかりは。ただあのポンプの下だからなあ』

「はい。外から出ないと開けられませんから第三者がいたとは思います。ただ、もうそれも50年も前だと」

『ああ。仏さんもどっちもなんか入ってるからな。ただ今分かったのは遺書の中身。そして女のミイラの死因と思われる胸の傷と病気と言うことだ。骨の中がほぼ空洞とのことらしいからな。これは病を持っていたと言う証でもある』

「はい。白血病とかもそうなりますもんね。もしかしたら、原爆でかもしれませんね」

『それも分からんがとにかく検死は続いている。分かり次第また話す』

「お願いします。なら」

タイシが電話を切りはあとため息をしヒカルがなんてと尋ねるとタイシが話しヒカルと部屋に戻った。


ー…あるんでしょっ。だしなさいよ!!

ミオが小さく唸る。

ーないものはないっ。お前はまたなんでそんな嘘話を信じるっ。

ー金になるからよっ。

ミオが玄関で言い争う男と女を見る。

ーお前とはもう離婚したんだっ。

ーええそうよ。だからその宝を出しなさいって。

ーだからそんなものはここにはないっ!

ー宝?

誰かに服が引っ張られるとミオがはっとし軍服の男を見る。男が背を向け歩きミオがその後に続く。

ーなんだろう…。

男が裏口の扉を開け敷地外に出て庭先に出る。そして枯れた池の前へと来るとしゃがむ。

ミオがその隣に座りしゃがみ池を見下ろす。

ーありがとう。本当にありがとう。

ーえ?

ーようやく、みつけてくれた。彼女も。これで一緒にいける。これはその礼だ。

ミオが目を丸くし男が光に包み込まれるもその直前に着物の女が現れると2人が微笑み抱き合う。

ミオが鼓動を跳ねさせ女がすっと嬉し涙であろう流し男と共に姿を消した。

ーお礼。

ーい、たっ。

ミオの肩に何かが乗るとミオがドキッとしすぐに振り向くとエルフの動く人形を見る。

ー繋がったっ。ミオ。

ミオが驚くと同時に突然景色が変わった。


ミオがはっと目を覚ましすぐに起き上がると周りを見渡す。そこにはまだすうと気持ちよく眠る香苗の祖母がいたが、むくりと起き上がったエルフの人形を見る。ミオが驚き人形を抱き上げ、人形が動く。

ー聞こえるか?

ミオが頷く。

ーああ。

「あなたはサイさん?」

ーそうだ。

ミオがまじまじと見てつんつんと人形を突く。

ー……。

そして今度は自分のほおを軽く叩き立ち上がり部屋を出て廊下を出るが外の寒さに震えると再び中へと入った。

その後上着を着込みスリッパで裏口を開け庭を出る。

ーあの男か?

「サイさんもみた?」

ーああ。ここにオーガン達が繋げてくれた。今、私が意識を集中すればまた向こうに私が意識を飛ばして私を通して話が出来る。

「じゃあ」

ミオが枯れた池の前に来てしゃがむ。

「あちらで皆さんが戻るようにしてくれてるんですね?」

ーそうだ。色々試したり話したりなどしてな。あと、ここだったな。

「はい」

ミオが唐揚げの中に入り人形を石の上におき枯れ池の大きな石をどかす。そして日が差し始め明るくなるとミオが石をどかし続けていくと四角いものが姿を見せる。

「あ」

ーこれだな。

「ミオ」

ミオがはっとするとタイシが中へとはいるも気まずくするサイの人形を見てつかむ。

「えと、サイさんを通じてわかるそうです」

「わかった。あとよかった。俺は、まあ、もう、あそこしかないから」

「…」

ミオが頷きタイシが人形を渡し岩をどかす。

「それで?何か見えてここに?」

「あ、はい。夢見たいな。でもそうじゃなかったです。軍服を着た男の方が見つけてくれてありがとうって。そのお礼って」

「見つけてくれてか。確かにあそこはわからないっ」

最後に大岩を出しタイシが息を弾ませながら錆びた巨大な鉄の箱を見る。

「大きい…」

「流石にこれはショベルカーじゃないと無理だな。おっさん達起こして手伝わせる」

「ショベルカー?」

「見ればわかる」

ミオが頷き、タイシが池から出るぞと告げるとミオがハイと返事を返すが痛みが走ると自分の手の皮が剥けているのに気づいた。


「血が出るまで」

「えと、すみません」

起きた祖母がミオの手をその場で消毒していく。そして、1人の男がショベルカーに乗りくるとミオが驚く。

「おおい。庭木は?」

「踏んじゃっていいです。そうしないと入れませんから」

「分かった」

男がレバーを操作し庭木を踏みつけ池のそばへと来ると早速箱の周りの地面を掘り進める。

「ショベルカー?」

「ええ。あと、また色々出てくるわなあ」

近所の者達も集まりだし見物する。そして、周りの堀越が終え箱の蓋の開戸が見えるとタイシがおり男がショベルカーから降りバールを持ちタイシの元へといく。そして、バールを隙間に入れタイシと共に力を込める。

「くうううう」

「しっかり。してる」

ぎっと音が響くと男とタイシが更に力を込めた途端箱の上蓋が壊れる。2人が体制を崩すもすぐに立て直し中を見るとタイシが驚き男が目を見開き大判小判に大量の古銭。そして、まだ真新しい宝石の類を見る。

「すごいなぁ。はあ」

「たぶんこれだ。あの俺の母親みたいな人が欲しがってたのは」

「これか」

「ああ。俺が知ってると思ってたかもしれないけど俺は知らない」

男が頷き周りもまた中を見て驚愕しミオもまた驚きながら見て行った。


ーそれよ!

興奮した女が机を叩く。

「全部私のよ!!」

「なぜ?」

「母がいいのこしたのよ!!あのじじいも」

女が喚き散らし、警官達が相手にしつつ興奮した女から情報を聞き出せるだけ聞いた。


ーつまりはこうだ。

香苗の父親がやれやれとしながら香苗を含んだタイシ達関係者へと話す。

「和尚さんの嫁さんであり、タイシくんの実母の母親が弟さんの恋人さん。そして弟さんを殺して死体を隠したようだ。遺書については見つかった時のアリバイ工作をしたらしい」

「なんてことを…」

香苗が呆れタイシが複雑そうにする。

「それで…、それを、遺書というか、まあ、我が娘に話したと。死に際に?」

「ああ。最後に和尚に手紙も送ったそうだが、俺が和尚を見た限りというべきか。手紙は全部見ずに焚き火にくべていたんだよな」

「……」

「それタイシのじいちゃんも悪いじゃん」

ヒカルが突っ込みタイシが顔をしかめ、香苗の父親がやれやれとする。

「そうだ。で、まあ、それを実の息子に言ったはずだであの女が言うまで手放さないと言うことだった。あと、あの埋蔵金が入っていた箱についてか。箱には扇子の家紋が彫られていた」

「なら、ここの土地を納めてた江戸の城主ですね」

「ああ。そうだ。歴史学者の話もそうだろうとのことだ。ただ宝石については違って後から入れられたんだろうと言うことだ」

「ええ」

「ねえ。それでどれくらいの価値があるの?」

「ああ。まあ、20億じゃないかと言われている。一枚一億の大判が3枚入っていたからな。そして小判と宝石。宝石の中には希少なルビーがあった。それもまた専門家が今詳しく査定中だが、おそらく5億は超えるはずという事だ」

「うわおっ」

「そんなのがなんであの池に…」

「そら隠されたこの土地の城主の埋蔵金だからに決まってるからだろう?宝石は別としてだ。あと、そうなってくるとここに人も集まる」

「他に埋蔵金が眠ってないか探しによね?あそこに記者たちがいたのが参ったわ」

「仕方がない。その前に人のミイラと骸骨が見つかったからな。鑑定の結果、行方不明になったご近所のお嬢さんと戦争で戦死されたと思われる和尚の弟さんで間違いない」

ミオがおずおずとしながら話す。

「もしかして、こちらに帰ってこられた時に殺されたのですか?」

「ああ。そうとしか考えられない。そして、その埋蔵金のことについてはおそらく彼は知らなかったと思う」

「え?」

「あの宝石が気になる」

タイシが考え込み、香苗の父親が話す。

「あの箱に封されていたノリだが、調べたら動物性と植物性ののりで出来ていた。あとは錆だ」

「動物?」

「にかわだ。骨とかを茹でた時に出る粘着性のものを昔のりにしてたらしい。あと植物なら米とかの穀物」

タイシが説明し香苗の父親がそうそうと頷くと香苗がへえと声を漏らす。

「それらで固定した上で閉じられていた。もともとは鍵がつけられていたようだが外されて、その鍵の代わりか知らないが蓋を固定するために合成されたその糊をつけられていたようでな。そしてあの池の底に隠された」

「だからか。じいちゃんからまだ若い頃に池に水が入ってたけれどなぜか水が突然枯れて無くなって。調べたら池の水の筒が壊されて流れないようにされてたって。また直してもよかったそうですけど地面の中に埋められてた筒からやり直さないといけないからそのままにしたって」

「じゃあ、だれかが故意にそこに隠したわけよね?元からそこには埋蔵金はなくてただの池だったってことじゃない」

「ああ」

「そうなる。そして、タイシくんの母親の母親が知っていた。ただもう本人がいないからな」

「そうね。あと、一応お宝でしょ?それって大体土地の管理者と見つけた人が分け前するわよね」

「え?」

ミオが目を丸くしタイシが話す。

「俺はもう遺産金で十分だから見つけたミオに全額やろうと思う。あの母親と思う人には一切やらない」

「言い切ったな」

「そこはな」

ミオが汗を滲ませ、香苗がダリスに話しダリスが頷く。

「え、で、も。その、その、貰ったとして、使う、やひかた」

「落ち着け落ち着け」

「わ、私っ。ふ、不法入国してますっ」

しんと場が静まると香苗が話す。

「それはそれ。これはこれ」

「ああ。あと、言ってしまえばミオちゃんの場合お母さんの親族がここの住居権を持っている。そしてそのお母さんの子供なら不法入国ではない。むしろ新たに戸籍を作らないといけない」

「そうなんですよね。ヒカルもだ」

「ダリスさんは?」

ヒカルがダリスを示しタイシが話す。

「悪いがダリスさんの方が不法入国になる。戸籍を持たずしてもだ。理由として戸籍を持たない避難民が戦争によって避難しているからになるし、ダリスさんの場合、ヒカル達のような特例じゃないからだ」

「なら今は?」

「本来なら勾留されている」

ヒカルが香苗の父親を振り向き父親が話す。

「しかし、行方不明者になった子らの責任者という事情な上、鈴子さん。行方不明だった国の皇室の方をお連れしたが故、特別扱いになっている。なので勾留はせず、付き添いと見張りありでの生活を許しているということだ」

「見張りって?」

「警察関係者。あの引っ越し手伝ってくれた人も警察関係者になる」

「ああ」

「まじか。知らなかった」

ダリスが香苗から聞きふむふむと頷く。

『話は別の方から聞いてましたから知っています』

『はい』

『あと、私はそれでいいとしてミオさんについて。お金は?』

ミオがドキッとしぎこちなくなる。

『全部ミオのものですね』

『よかったわねミオちゃん』

『つ、使い方っ』

『そこはまた話し合ってからになるな』

ミオが混乱し、ヒカルが香苗の父親へと話す。

「あの大判一枚でこの土地の広さは十分買えるんですか?」

「十分どころか建物作っても十分なお釣りが来るぞ」

「ですね。通常暮らす方の一生分を超える金ですから」

「ああ」

「おー」

ミオがさらなるプレッシャーを受け、香苗がそこまで緊張しなくていいわよと頭を撫でた。

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