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運命のミオ  作者: 鎌月
21/64

東京1

ーテオ。

ギルドの者たちや海賊達などの死体が回収されていく。回収するのはアストレイ軍と調査要請を受け来た砂漠のギルドの者たちだった。アルスランが船の残骸があがる砂浜を歩きながら海を見るも砂浜に座り込むマーサを見る。

「エスランカーのマーサか」

後ろにいたダンガンが話す。

「はい。ギルド長で夫でもあるテオドバルトが死んだとのことです。遺体の回収は済み、検査に回しています」

「ああ」

ーあの男がやられたか。

「原因調査を急がせろ。あの場にいた捕らえた者たちからなんとしてでも聞き出せ」

「はい」

「ああ。あと、元王子について行方は?」

「はい。アレクがおっております」

「なら、問題ないな」

アルスランがマーサの元へといく。そして同時に娘がマーサを後ろから抱きしめ震え唸る。アルスランがマーサの元へと来て声を掛けマーサが拳を強く握り伏せた顔。その目から涙を流しながら頷くと泣く娘と共に支え合いながら立ち上がり砂浜を背にギルドの部下たちがいるテントへと向かった。


ー鍵は俺たちだ!異界人でここで生まれた子供だ!

ヒビが入った引き上げられたあの大岩がオーガンたちの元へと届く。ハリーが説明しオーガンたちが頷きその岩の残った魔術の残留を探し調べていく。


マルクールがぐったりしながらうつ伏せになっていた。そして、ミーアがマルクールの隠されていた模様を見る。

「あなた大祭司候補だったのねー」

「そーですよ。でももう、関係ないんで…」

「ええ」

「…おい、おいこら、サイモン」

椅子に座りずうんと激しく落ち込むサイモンを呆れながら見ていく。

「お前はいつまでそーしてんだよ。おいこら」

ミーアが肩をすくめるとしがみつくユナを抱いたエリスがきたのを見て振り向く。

「まだねせてたら?」

「いえ。起きてしまったので。ヤン殿は?」

「予言の目が開眼したままだから封印の結界の中で拘束中」

「俺が気絶してる間に自殺未遂起こしたって聞いたんすけど…」

「はい。話ではあちらに戻っても家族はいない。売られて自分も売られてしまう未来を見たとの事でした。信じていた。愛していた家族からの裏切りに絶望したようです」

「ええ」

「予言は必ず起こるものね。あと、彼についてはこのままこっちで保護するわ」

「はい」

「預言者として使われるからだろ?」

「それもだけど、見た相手の未来までわかるからよ。だから危険。特に今ね。まだ開眼したばかりか強いのよ。封印かけてたとしても見られるかもしれないほど」

「それじゃ、誰が相手してるんだ?」

「精霊や獣魔。予言から外された者たちにあたる契約者よ」

「へえ」

アルスランがその場にくるとミーアがマルクールの頭を掴みベッドにつけ頭を下げる。

「べつ、自分で下げんのに」

「おうおう」

「俺俺将軍までいんですか…」

そう、ダンガンへと話すとダンガンが告げる。

「いるな」

「はい…」

「あの大岩を今魔導局が調査している。そして、今日の朝に砂漠のギルド長。テオドバルトの死体が回収された」

マルクールが驚愕し、サイモンも頭を上げる。

「ギルド最強と言われた…。一体なぜです」

「その何故を今調査中だ。ギルド長以外にAランク5人やられてんだ。死因はそれぞれ。そして、ギルド長が死んだと分かったのは身につけている魔術の腕輪だ。ギルド長となると変わりがすぐに見つからないからな。だからもし、死んだ場合そのギルド長の管理する塔のギルドの鐘が3度なる。それはギルド長が死んだという知らせだ」

「なら」

「おじさん死んだの…」

エリスがユナを振り向きユナが涙をこぼしていく。

「おじさん……」

エリスがしゃくりを上げ始めたユナの背を叩き慰める。

「知らないってことね」

「はい」

「俺も初めて知ったし、それどころじゃなかったですから。何せガンガン攻撃受けてたんで。治ったのはー、まあ、若さんたちが渦に飲まれた後か」

「…やっぱり反対しておけば良かった」

「いやお前のとこの枢機卿は本人が行くつったんだろうが」

「それもだが分かっての攻撃を行なっているからな」

「あ、まじで?」

ダンガンが頷く。

「まじだ。止めた連中や、脅され仕方なく撃ったというものもいる」

「ああ。教会の枢機卿に向けての砲撃だからな。あの場にいた中で一番向けてはいけないものに向けた」

「はい…その通りです。はい」

「なんで?」

「あなた知らないんですか?」

サイモンが呆れ、エリスが話す。

「教会からの寄付や援助が止まるのです。特にダリス卿はその影響が強い方ですし、アストレイにとっては王位継承者に数えられる方となります」

「そーですよ…。つまり、アストレイも敵に回したという事です」

「その通り。だもんで早速断罪中だ」

アルスランが頷き、マルクールがはあと驚き声を出す。

「ただお偉いだけじゃなくてあの場でお守りみたいな」

マルクールの眼前にナイフが突き刺さるとサイモンが冷ややかに殺気立つ。

「これ以上その口を開いたらどうなるか分かってますよね?」

「わ、わかった」

ダンガンがやれやれとする。

「ま、お前が言いたいお守りだったってのは確かだ。そのお守りを攻撃した連中を今こっちで枢機卿殺害未遂の罪として断罪しているし出来るからな」

「ああ」

「そ、そーしたら、ですか。おじょーさんと若さんとか…」

アルスランが僅かに胸を痛ませ、ダンガンが話す。

「まあ、将軍の前で悪いですけど弱いな。立場上」

「ああ」

「そすか」

「ミオオオオ」

ミーアがため息しユナが唸っていく。

「あちらに渡っているなら、無事ではある。あとを決めるのは、渡ったものたちの意思だ」

「ええ。そして、今は禁術ですが召喚の術。あれを使って、まあどうにか呼ぶしかなさそうですね」

「だが、人柱がいる。生贄が。今わかっている段階では使うわけにはいかない」

「ええ」

「ならこの方を人柱にして呼び寄せましょう。いますぐにでも」

「お前がやれや」

マルクールが呆れながら手を向けたサイモンへと突っ込む。ダリスがダメだと手を振り、アルスランが背を向け離れダンガンがその後に続き部屋を出る。

「何か干渉できたらいいのですが」

「むずかしいわねそれ。向こうは力のない世界よ」

ミーアが話し、マルクールが告げる。

「流石にあの預言者の力借りるのダメっすよね?」

「もちろんだーめ」

「どうにか…。人柱をと言ってもそれを使って、本人が来るわけでもないですし…」

「その通りよ。あと私も行くわー。それとここ二日使っていいから」

ミーアが手をあげ部屋を出る。

「サイモン。お前枢機卿どーなんだ?」

「どうなんだと申しましても今は、大怪我を負って療養中にして頂いてますから…。ただそれがいつまで持つか」

「だよなー」

「私はユナを連れて何か方法を探してみます」

「ええー、でも、途方なさそう」

「留まるより、待つよりいいですから」

「私も教会で探してみせます」

マルクールがため息しなら俺はアストレイの捕まったやつらに聞けるか確認する話した。


ダリスがミオたちの手を借り体を起こすと起きていたタイシの様子がおかしいことに気づいた。

『タイシ殿』

タイシがはっとしダリスを振り向く。そしてヒカルが鈴子を揺らすと鈴子が目を覚まし体を起こす。

『ここは一体どこですか?』

「…」

「英語?」

「え?」

「ダリスさんが英語で話されてる。なら」

鈴子が胸を熱くさせ、タイシが汗を滲ませる。

「寺の裏の森。俺が消えたところだ」

「え?」

『タイシさんがここであちらの世界に連れて行かれた場所です。なら、東京』

「トウキョー?」

ミオが不思議そうに告げる。

『私だけが言葉が違うようですね』

『はい』

「俺全くわからない。鈴子は」

「私は英語を習ってきたからわかります。ただ、ここでの言葉は日本語という今ヒカルさんたちが理解して話す言葉です」

「じいちゃん」

ミオがタイシを振り向きタイシが前へと進む。

「ちょっと待てって。いてっ。足岩当てたなやっぱ」

ヒカルがなんとか立ち上がりダリスが、ミオたちもたちタイシの後を追いかける。

「岩というとあの光って脈打っていた岩に?」

「そうだ。あとは石つぶてだ。ってああ走るな!」

目の前のタイシが走り出すとミオが狼狽える。

『ミオさん追って。ダリスさんも先に。ここは安全です』

「は、はい」

『ええ』

ミオとダリスが走り鈴子がヒカルに手を貸す。

「ミオ理解してたか?」

「はい。もしかしたら。生まれた故郷の血で話せる。言葉がわかるかもしれません」

「あー、なら、俺は2人とも同じ故郷って聞いたからわからないのか…」

鈴子が頷き風が吹くと前に映る白百合の幻影を見る。そしてその幻影が背を向け前へと進み消える。

ー白百合…。皆さん。

「ありがとう…」

「え?」

ヒカルが涙を流す鈴子を見ると何も言わず顔を背ける。そして、タイシが寺の裏口の竹の扉を開け敷地内へと入る。その敷地内の駐車場に数台の車が停まっていた。

「おいっ。住職っ。頼むからまだ死ぬなよっ」

怒鳴り声が響くと医師達や年配の男、女達が怪訝な顔をさせつつやや怒りの表情を浮かべながら布団に寝込む老人へと声をあげるスーツの男を睨んでいた。そして、もう1人の背の高い男がたち見ていたが止めもせずうるさそうに背けていたが突如庭先から現れたタイシを見て眉を寄せる。

「じいちゃん」

医師達、そして年配の男達が振り向き、怒鳴っていた顔のいかつい男もまた振り向く。

「まさか、タイシ君」

「大志だと?中村大志かっ。やっぱ隠してたなジジイっ」

いかつい男が立ち上がりにやと笑う。

「指名手配の孫だなっ」

「じいちゃんっ」

タイシの耳にそれは届かずすぐに靴を脱ぎあがるといかつい男が道を阻む。

「まてやっ。その前に話聞かせろっ」

そのいかつい男の足をしわがれた手が掴む。

「てめじじい」

いかつい男が蹴り押し退けると、土足でダリスが素早く動きいかつい男を投げ飛ばしそのまま押さえつけると年配の男達も押さえつける。

「な、にしやが」

いかつい男がゾッとし冷ややかに見下すダリスを見るも年配の男達の怒鳴り声が響き渡る。

「指名手配じゃねえつってんだろこのサツやろう!!」

「何和尚さんの手を蹴ってんだよクソやろうが!!」

「こ、のはなせこらっ。おいエリート!!てめえ止めろ!!」

「タイシ君」

女がすぐに手を引き老人の前に座らせる。そして、ミオが戸惑うも老婆がそばへとくる。

「あなたも上がりなさい」

「え、と」

「じいちゃん…」

ミオが口をつぐませ、タイシが老人の手を握る。

「た。いし…。もど、ったな」

タイシが口をつぐませ、老人が小さく笑む。

「い、い。さ、さいご。だ。お、お前、好き、に。生きろ。お、れが、つけた、名前。だ。俺、息子、だ」

タイシが奥歯を噛み締め、老人が目を虚にさせる。「み、らい、き、ぼう、だあ」

老人が涙を滲ませ流しながら目を閉じるとその手の力をなくす。

「和尚」

「和尚さんっ」

「な、にが、希望だ。犯罪者で」

「指名手配?」

男が振り向きその目を見開く。そして鈴子が怒りの眼差しを向ける。

「説明をなさい。誰が、なぜ?犯罪者なのです?私は彼に救われ続けてきた。彼のおかげでここに戻れたのです」

「春日宮鈴子ないしん」

「元です。連絡なさるならなされてください。ただし、彼と彼が愛したお祖父様の別れの邪魔をされないで下さい」

ダリスが老人に伏せ震えなくタイシの背を見る。

「くそ…」

いかつい男が小さく漏らすとダリスが力を込めた途端いてえと声を上げ今度はダラスを睨みつけた。


パトカー、そして葬儀車が到着する。続けて菊の紋様が入った車が到着しすぐに年配の男や女達。警護の者達が降りる。いかつい男が背の高い男と追い出されていたがそこに上司と思しき男達が来るとその場で怒鳴っていく。

「これは折れてはないけど捻挫してるかもなあ」

「だから痛い。本当痛い」

「そうだね」

診察を受ける椅子に座りヒカルが顔を顰める。その側に老齢の看護師に手当を受けるダリスがいた。

「本当、外人のイケメンさんはよくやった。あの悪徳警察を投げて抑えてくれたから嬉しいよ」

「そうだな」

「あのおっさん警察?最低じゃん」

そして制服を着た警察官達がその場に来るとスーツの女性が2人来る。

「今手当してるところですから後にしてほしい」

「ていうか、あんたらのとこ」

「申し訳ありませんでした」

看護師がイラっとしヒカルが話す。

「女性は隣。でも、そこ開けたら俺たちから見える。内親王も。開けるか?」

「なら移動」

「見ての通り無理」

ヒカルが足を指差す。

「先生達も爺さん先生だから。ここまでおっさん達が運んできてくれたから無理」

女がいらっとするともう1人がオドオドする。

「先輩…」

「運べとか言って騒ぐなよ。その心のこもってない申し訳ありませんでしたという話じゃ、同じ仲間さんがやった行為は冒涜な上に暴行だ。全く動けなくなった老人を蹴っているからな」

医師たちがうなずき、ヒカルが話す。

「暴行行為は多数目撃している。だから、俺じゃなくても他が訴える」

女が口をつぐみ奥歯を噛み締めヒカルが話す。

「そこの人は暴行行為をしたあんた達の仲間を抑えた。これは正当防衛だ。だから訴えることはもちろんできない。だが、そっちは違う。そこで大人しくしとけ」

「ちょっと君生意気すぎじゃない?」

「そりゃ、俺は生意気なガキだし。あと、タイシが手配犯になってる意味がわからない。父親や母親達が相当達の悪い悪玉菌とは聞いてはいるがタイシは違う。強盗殺人もしていない。その作り話は一体どこでどう作られた?」

「捜査に関係することについては」

「目撃者がいる」

女がきっとやってきた背の高い男を睨みつけると上司が唸る。

「畑中」

「あと、防犯カメラにも姿が映っていたうえ、患者を実験体にし殺した実父が息子だと話したから手配を行った。ただし、ここにいる和尚他は違うと。勝手に決めつけるなと話していた、でしたね?」

「そうだ」

「あのおっさんとどうしてあんたはいたんだ?エリートさん」

畑中が舌打ちする。

「上の采配だ。俺だってあんな奴といたくはなかったからな」

襖が開き鈴子がミオを連れて姿を見せる。

「鈴子様」

スーツの男や女達が胸を熱くさせ、鈴子が頭を下げ、ミオが鈴子の手を握りながら萎縮するも畑中を見る。

「た、タイシ、さん、どこか、つ、連れていくんですか…」

「警視庁での事情聴取だ。鈴子さんの話と実際の手配での話と食い違う」

「はい。あと、彼は10年前に行方不明になったのでしょう?」

「その通りですよ。その間に実父を逮捕しましたから。患者を実験体にし大勢殺しましたからね。そして鈴子さん。あなたも。だがあなたの場合遺書が置かれていた。それはあなたが書いたんですか?」

「ええ。私が書きました。とてつもなく途方もない苦しみからの解放を求めて」

鈴子がミオが握るその自分の手の力を強めるとミオが鈴子を見て手を軽く力を込め握り返す。

「今は違います。私は私を助け救ってくれたタイシさんや他の方に恩が有ります。そして、私のそばに常にいてくれた私の唯一無二の親友で有り大恩人から生きろと言われたなら、私はもう、生きなければなりません」

ミオが小さく頷きヒカルがじっと見ていく。

「監視カメラに写っているのがタイシさん本人なのかもう一度今の本人と特徴を照らして確認をされてください。そして彼の家族や親族は全員彼を虐待し彼の生活さえ、勉学のことでさえ阻害した方達なのですから彼らの証言は全て嘘吐き。ですがこちらで先ほど亡くなられた和尚様は違う」

「私達もですよ」

医師、看護師が頷く。

「あの子は優しくてそんなことはしない。むしろ、なぜ犯罪者の言葉を信じて手配したのか。行方不明なのをいい気になんでもしていいわけがない」

「本当そうよ。そして和尚様にもあんな仕打ちをして。ずっとタイシくんの帰りを待ってたのにあんなバカなやつが言いたい放題言って。最後に和尚様の手を蹴り上げた。何もできない体なのに」

「蹴りを」

鈴子を知っている者達が気まずくする女や無表情の畑中達と見る。ヒカルがやれやれとする。

「ここで言い合っても疲れるだけだからひとまず違うところで。そして、タイシについて明日明後日と葬儀とかしなきゃいけないなら、その時間は作ってほしいですね。喪にふくす時間を。あと、鈴子だけど家族との面会はなし」

「え?」

「鈴子からまだ何も発言ないのは言いたくないほど会いたくないからだ。実の母親と義理の父親に。その2人が原因で自殺未遂をしたんです。そこを俺が知っている恩人たち。タイシも含めて助けた。自殺未遂の原因とあわせない。なるべくなら2度と。今は俺が言います。鈴子が言えるなら鈴子の許しが得た時のみ会えるように手配を。ですが、それまで顔も声も一切見せたり聞かせたりしないで下さいね。手紙とかも」

俯く鈴子を前にヒカルが話を続ける。

「俺から代弁じゃないですけど言わせて貰えば吐く。人として無理。というか、精神的にも肉体的にも受け付けたくないんで。ま、そういうことで無しで。多少なりの代弁は受け付けるけれどあとはなし。もし、電話に面会に手紙にと一つでもあれば」

女がはっとし、医師が驚愕し拳銃を握るヒカルを見て汗を滲ませる。

「自殺しますよまた。あと、これあのおっさんの落とし物。中重いんですけど」

「あいつ…」

畑中が出てくるとヒカルからすぐに取り上げ中に入っていた弾を二つ外しとりだす。

「確認したほうがいいんじゃないですか?」

「おい」

上司がすぐに部下たちを連れ向かい畑中がいらつく。

「調子に乗るなよクソガキ」

「だーかーらそのクソガキだっての。大体これもあんたらの不始末で起こった話だろうが。あと、俺は医者の息子でもあるからな。鼻が効く」

ヒカルが自分の鼻を指差し可笑しく笑う。

「あのおっさん臭いんだよな。薬してんじゃねえ?あとそこのお姉さん。ちょい香水きつい」

「こ、の」

女がかあと顔を赤くさせ畑中が舌打ちし背を向け部屋を出る。

「お姉さんは行かないのかー?」

「うるさいわね!」

「先輩落ち着いて」

もう1人の女が宥めため息をするとヒカルを見る。

「君、医者の息子って話したよね?いくつで、その医者であるお父さんの名前は?」

「20歳で、多分死亡とか言われてるかも」

「死亡?」

「ニューヨークの飛行機事故。遺体回収ができなかった中に入ってるはず。永原真澄。現在55歳。俺の父親」

「ニューヨークの」

「爆破テロの」

「え?」

「まさか生き残ってたってこと」

女が目を見開き、ヒカルがやれやれとする。

「流されてたどり着いた先で死んだお袋と出会って俺と兄貴が生まれた。本人はここじゃない遠くで暮らしてる。あと、タイシの父親と同期でタイシの父親の小悪党話は聞いてる。とりあえず俺についてはタイシのじいちゃんと無関係だからいつでも話はどうぞだしお姉さんでどうぞだ。でもその香水はやめてくれ。キツイ」

女が向かおうとするももう1人がダメですと抱き止める。

「顔だけいい坊ちゃん風情が」

「顔だけじゃなくて頭もいいけど」

「ヒカル止めろ」

ヒカルがやれやれとし女が鈴子達が出てきた部屋から現れたタイシを見る。鈴子達のさらに奥に横たわり永遠の眠りについた祖父がいた。

「色々事情も何もよくわかりませんけど、強盗殺人はしていません。あと、実父について逮捕されていたことも知りませんでした」

「知らない?」

「それだけ遠くにいた。第一タイシは誘拐されていたんだ。わかるわけない」

「は?」

畑中達が戻るとダリスが話す。

『タイシ殿。私はここの国の言葉は分かりません』

『申し訳ありません。あと、取り乱したことも』

『いいえ。失う悲しみは、共感できます』

ミオがダリスを振り向き、タイシが話す。

「明後日だけ祖父を送る時間をください。あとは俺も全く知らないので聞かせてほしいです。俺の実母達がどうなったかも知りません。なぜ、祖父の死に際にもあなた達がいたかもしりません。実父が逮捕された事も知らないです。俺は知らないことばかりなので教えてほしいです。そして、鈴子については家族と会わせないで下さい。鈴子にとってはもう、苦しみとしか思えない方達です」

鈴子が涙を流し落としていく。

「よかったら最善の配慮をお願いしたい。あと、話すならヒカルを代表としていいですがダリスさんとミオの2人はここにいさせてください」

「俺はいいんかい」

「お前は父親であるナガハラさんから教えられてきただろうが。知ってるからな」

ヒカルが唇を尖らせる。

「冷たい」

「しるか」

「はあ。分かったよ。あと俺からも言ったし」

ヒカルがぶつくさいいタイシが頷いた。


ミオが不安な面持ちで俯きながら車に乗る鈴子を見届け、タイシがダリスへと話していくとダリスが頷き話を返す。

『約束されたのなら二日後ですね』

『はい。よかったらそれまでミオといてください。話しています』

『分かりました』

タイシが頭を下げ、ダリスが車から離れると車がしばらくして走り出す。

ーイーロンに似ているが違うものだな。

『あんた』

ダリスが畑中を振り向き畑中が紙を渡す。

『念の為の連絡先だ』

『ええ。いただきますね』

ダリスが笑み、畑中が舌打ちしその場を離れる。そして、そろそろとミオが来る。

『あの。何渡されたんですか?』

『連絡先とのことです。数字なので、タイシ殿が話された電話をかける番号というものでしょう』

『はい』

「お嬢さんは言葉はー」

「あ、えと、分かります」

ミオが年配の男を振り向き男が安堵する。

「ああ。なら、和尚さんのな。近所の知り合いの人の家に行こう。すぐ隣だ。お寺は明日の和尚さんの葬儀とかの準備に取り掛からないといけない。タイシ君から話は聞いて伝えたから泊まっていい」

「ありがとうございます」

「いや。なら、案内するよ」

ミオがはいと返事を返しダリスに伝えダリスが頷きついて行った。


ー腕に注射痕があった。

畑中がいらいらとしながらタバコを吸い、女もまたむすっとしながらタバコを吸っていた。そこは喫煙室で周りは暗く夜になっていた。

「だから俺は嫌だったんだクソ。銃取り締まりが上手いから残してるんだとかアホか」

「私にいうな。あとあのクソ生意気なガキ…」

「ちっ」

畑中がタバコを捨て喫煙室を出ると女もまた出る。そして対応に追われている刑事課へと来ると早速上司が2人を呼びつけ2人が腹を立てながらも表に見せず上司の元へと向かった。


ーへえ。

ヒカルが飛行機事故の翻訳された記事を見ていく。そして比較的若い男が話す。

「なら、ナガハラさんは生きてたんだな」

「ええ。あと、2人生存者いたんですね」

「そうなんだ。俺はまだ中学生だったからなあ。話じゃ一番後ろの席にいた2人だから衝撃を免れたって話だ。そして、ナガハラさんも後ろだけどナガハラさんの周辺は行方不明かほぼ死んでる」

「あー」

「トイレに爆破した形跡が残されてたそうでね」

「はあー。いや、父も事故したって話してたんですよね。トイレが爆発したとかわからなかったのか」

扉がやや乱暴に開けられむかむかとしがら女が入る。

「横塚警部」

「あんたタバコ吸ってんな。香水より臭えし肌荒れに歯も黄ばむから止めろって。これ本当な話だからな」

横塚が顔を赤くしながらどかっと顔を顰めるヒカルを前に座る。

「うっさいわ!」

「いや事実だし。俺見ろって。タバコも酒もしてないから肌綺麗だぞ。後歯も白いし」

「だーからうるさい!」

ヒカルがさらに顔をしかめ男が気まずく、そして申し訳ない顔をさせた。


取調室でタイシが渡された新聞の切り抜きを見ていく。

「秋葉原で?」

「そうだ」

男達数名の中に畑中もおり、タイシが眉を寄せる。

「これ、叔父?」

「叔父?」

「ええ。その、叔父は今は?」

「教員として働いている。後、顔は似ていないぞ」

「似てませんけど…。手が叔父の手に似ているんですよね。ナイフの握り方が特徴的ですから」

「は?」

「小学生の時に叔父からナイフでよく脅されてましたから。まあ、言えずにいましたけど」

「今日亡くなったそちらの祖父が話していた虐待?」

「ええ。まあ、成績も誤魔化されてましたし、テストの点数も改竄されてましたから。それで、どうせ学校に行っても邪魔ばかりされるから行かなくなったんです。祖父はもう亡くなりましたけど、祖父と付き合いの長い近所のおじさん達と孤児院の先生達が知っています」

「孤児院に行ってたのは聞いた。そして、そちらを庇った事もか」

「よくとは言いませんが通ってましたから。後しばらく孤児院にもいました」

「ああ」

タイシが頷き違う記事を見て話していくと男達が話を聞き畑中も話を聞きながらじっとタイシを見た。


とある民家ー。

ー美味しい。

ミオがほおを紅潮させもくもくとご飯にオカズにとスプーンとフォークを使い食べていき、ダリスもまた共に食事をする。そこは泊まる民家の中で大皿にはお煮しめ、肉の唐揚げ、刺身、ポテトサラダなどが乗せられておりミオが醤油に軽く刺身を浸し口に含み食べる。

ー生なのに美味しい。

『よく食べますね』

ミオがびたっと止まり顔をみるみる赤くさせる。ダリスが小さく吹き出し吸い物を匙を使い飲んでいく。

「もしかしてちょっと辛かった?」

「い、いえ。えと、いえ」

「そお?我慢せずにいってね」

ミオがこくこくと頷き再びご飯を口にし唐揚げを食べた。


「あら」

食後のフルーツにと梨をむいてきた老婆がダリスの膝を枕にし気持ちよく眠るミオを見る。そして老人が話す。

「今、香苗が布団敷いてるとこだ」

「ええ。じゃあ、梨はまたこの子には今度タイシ君と食べさせようかしら」

「そうだな」

「タイシ?」

ダリスが話すと。

『母が切ってきた梨をその子とタイシくんにまた次回食べさせるそうです。ダリスさんはどうぞ』

ミオほどの少女がその場にくる。

『旬の果物です。今しか食べられない物ですよ』

『ありがとうございます。いただきます』

『はい』

香苗が話し老婆が小皿に盛りフォークと共に渡すとダリスが受け取り食べていく。

ー甘い。向こうと比べ物にならない。

ダリスがやや驚きつつも梨を食べ進める。

「タイシ君は大丈夫かしらねえ。もう1人の子も」

「タイシ君だから問題ないって。頭すごくいいし。悪いことしたことないし」

香苗が梨を直接手にし食べていく。

「そうね」

「まったく。あの父親のせいでタイシも可哀想なもんだ」

「生まれは仕方ない。じいちゃん。お父さんからメールきた。明日昼にお供え用の野菜とってきてくれだって」

「ああ」

「それからお母さんも朝早くから手伝い来るって」

「助かるわ。そうしたら少し準備しとこうかな」

老婆が離れていき、ダリスが話す。

『ここでの葬儀はどのように行われるのですか?』

『はい。えーとまずは、弔問です。親しい人たちとかが夜に来てお祈りする時間になります。大体1時間か2時間くらいかな。お祈りされる人が多いと3、4時間かかります』

『それは親しい方が多いと言うことですか?』

『そうです。多くおられるのは学校の先生。あと、まだ若い人や小さな子供とかです。私は祖父母が和尚の手伝いしてたのでお話聞いて知ってます。小さな棺の時は見てて苦しかったと言いました』

『ええ』

『はい。そして、その弔問。お祈りの時間であり、別れの時間が終わった次の日のお昼に出棺。遺体を火葬しにいきます。その時に最後の別れで棺の中に思い出の品やお花を入れるんです。火葬後は骨になって戻ってきた亡くなった方の前でみんなでお酒を飲んだり食事をして楽しみます。故人の方の生前の思い出話を語ったりするんです』

『では、食事会ということですか。私のところでは火葬、もしくは土葬後はそのまま終わらせます』

『それはこちらにもありますし、今食事会をなくすところもあるんです。理由として手間だからとか。昔は当たり前にしてたんですが今はなくなってきてます』

『手間ですか』

『はい。いえば時代の流れというものですね。なのでここみたいにお食事会をするところが珍しくなりました』

ー時代の流れか。

『明日になりますが葬儀の時間はこちらにいて下さい。人が結構来ると思いますし、今日みたいな方も来られますから』

『分かりました』

『はい。ただその前にもしになりますが和尚さんにご挨拶をされるなら、その前に納棺師の方が来られるのでその時によかったら少しご挨拶して下さい』

『ええ。あと、のーかんしとは?』

『はい。ご遺体を綺麗にされる方です。ここ日本の伝統儀式になります。私から言えばこちらも珍しい儀式になってしまったものです。ご見学にもなるかもしれませんけどそれもまたお別れの儀式で供養にもなりますのでよかったらその時にご挨拶ください。また葬儀とは別になりますがお祈りの場でもありますから』

『お祈りの場が何種類もあるのですか?』

『そうですね。その場その場で違うんですよ』

「香苗。その人酒飲むか聞いてくれ」

「ええ」

老人が頷き身を引き、香苗がダリスを振り向く。

『お話変えて、ダリスさんお酒飲みませんか?祖父が一緒に飲みたいみたいです』

『飲めますが、流石にこれ以上いただくわけにも』

『いいですよ。和尚さんの事助けてくれましたから感謝してるんですよ。それにタイシくんとお話が出来たから喜んでるんです』

『その、和尚殿とタイシ殿ですが皆さん親しんでおられるのですか?』

『はい。2人にはお世話になってきましたから。そこは祖父が話してくれますよ。私が訳します』

ーさて、どうするか。

ダリスが考えそして分かりましたと答えると香苗がならつまみとか準備しますねと告げた。

ミオが布団の中で気持ちよく眠る頃、香苗が赤ワインを開けワイングラスに注ぐ。そして祖父は自前の酒を注ぐ。

『明日忙しいので一杯までにしましょう』

『ええ』

「じいちゃん。明日があるからね」

「分かってるさ。これだけにしとく」

香苗が頷き自分もと赤ワインを注ぐ。

『果物とかに合うイタリアの赤ワインです。飲みやすいです』

ーここじゃない別の国の名前だな。

ダリスが頷き梨のサラダと赤身の魚らしきものを見る。

『こちら赤いのは?』

『マグロのカルパッチョです。酸味が少し効いてますよ。こっちは梨と生ハムチーズのヨーグルトソースがけ』

「うまいな」

老人が食べつつちびちびと酒を飲む。ダリスがそれを見てつまみを口にしワインを飲む。

ースッと入る。

『美味しいです。このワインも』

『よかった。私イタリア店の小さなバーでバイトしてるんです。そのおつまみとかはバーの店長さんに教えてもらったんです。お店も人気なんですよ』

『ええ』

「なんだって?」

「美味しいってさ。あと、私がイタリア店のバーで働いてる事を話したの」

「ああ」

ーこの木の実も美味い。

ダリスがつまみを食べ少しずつワインを飲むと僅かに笑み香苗が嬉しそうに話していくとダリスが再び美味しいと伝え飲み食べた。


翌日ー。

ーあはははっ。傑作だ。あははっ。あいつ生きていたのか!ははっ!

「クソがあ!!」

男が声を上げ刑務所の壁を強く蹴り付ける。そして、泊まり込んだタイシの元に父親から嘘だったという証言が取れたことを畑中が話すとタイシがはあとため息をする。

「お前は実父とどう関わり合ってきたんだ」

「常に暴行されてましたから関わりもなにも知りません。ああでもその時の母はまだすこし優しくはありましたが再婚してからは俺はいない存在でした」

「あの母親が優しいか。俺が聞いた調査の話だと、お前は1歳頃から虐待を両親から受けて3度保護施設に保護された挙句」

タイシが驚き、畑中が話す。

「祖父やその周りがお前を世話していたそうだ。離婚後勝手にお前を母親が和尚の留守中連れ去った。だからお前のその子供の頃の記憶について母親像が美化されているぞ」

「…」

「現実逃避するための記憶改竄。もしくは、マインドコントロールとかだろうな。子供だからかかりやすいと俺は思うな」

ノックが響き苛立つ横塚が中へと入る。

「あのお友達のクソガキどうにかあの生意気な態度」

「父親そっくりと言われてますから難しいです」

「変えなさいよっ」

「文句を言いにきたくらいなら出て行け。うるさい」

畑中がうるさくいい、横塚が鼻を鳴らす。

「あんたの煩い相棒が書類送検されたわ」

「そうか。で?俺の処遇」

「なにもなしよ。そしてまたあんたは事務仕事」

「結構だ。奴に振り回されて疲れたからな」

「祖父を蹴った警察官ですよね?どうしてあんな方と一緒にいられたんです?聞いたら相当横暴だったとか」

「上の采配だ。俺とあいつとで手配犯のお前の情報を聞き取れと言われた。あいつは一応警部補でこ警視庁の中で銃による犯罪取り締まり件数一位だった。ただ、そちらが話しての通り横暴で問題が多くあった。あと、お前の生意気なお友達が拾ったとされる銃か」

「ちょっと」

「その取り締まりで見つかった銃と同じものだ。銃による犯罪取締というのは、やつが見つけた銃の件数になる」

横塚がため息をし、タイシが話す。

「なら今まで見つけた銃は捜査によるものじゃないかもしれないということですか?」

「そうだ。そして、奴はお前の祖父との調査を相当いやがっていた。自分は銃を見つけるとかと上に掛け合ったからな。だが上はそれを断り奴は俺との聞き取りに回された」

「あんたがチンタラしてたからじゃないのよ」

「俺は聞き取ったところで本人がいるわけないと上に何度も伝えたのにやれと言われ続けたからやる気どころかなにもする気もなくなっただけだ」

「馬鹿じゃないの」

「なんとでも言え」

タイシがやや言い合いを始めた2人へと話す。

「分かりましたけど、俺の手配は下げてくれるんですか?」

「上が掛け合い中だ。父親が発言を撤回した。つまり、嘘をついたからな。後は今、お前の叔父。再婚相手の弟を連行しに行っている」

「はい」

「もう来てるわよ。それでそこの中村タイシが本当なのか。いるのかあわせろって話」

「はあ?」

「でないと嫌だというその叔父の駄々こねよ。あの叔父は記者達とお友達でもあるからリークするって脅しにも来てるわ。ちなみに記者とは友達なわけ?」

「おそらくかなと。もしくは弁護士です。俺が小学校にいた頃俺に優しくしてくれた先生2人がことごとく離婚、問題行動を起こしたと懲戒処分などにされました。なので、叔父が何かしたからとしか思えませんしその頃を機に先生達も俺に関わらないよう無視を続けました」

「…」

「お前は生まれてからなにも良いことないな」

「はあ。まあ、祖父以外で、あの家族親族と関わったばかりにとなりますけど。後ヒカルは?」

「ナガハラ医師の親族との結びつきがあるか調査中。あと、いない間について隠してる事もあるし父親が今どこにいるか。遠くで会えないところとしからあのガキは言わないのよ。て言うかなんで私があのガキ担当なのよ」

「文句は上に行って俺に言うな。でこっちも聞きたい。約10年の間どこにいた?それとなぜ鈴子さんもいた?他2人についても気になる」

「組織犯罪に巻き込まれました。ただ、鈴子の場合それにより助かりもしました」

「組織犯罪?」

「人身売買です。俺と鈴子。もう1人見たと言う女の子は母親が巻き込まれたからです。ヒカルは父親」

「ならあの外人は?」

「保護者であり、組織犯罪で逃げた方を追われてる方です。おそらくこちらか他国にいます」

「全員怪我してたのは?」

「命からがら逃げてきたからです」

「何故逃げ場所があそこだ?」

「よく分かりません」

「はあ?」

「横塚うるさい」

横塚が鼻を鳴らし、畑中がやれやれとする。

「お前の父親が何か知ってそうか?」

「実父が?」

「ああ。カメラ映像についてお前じゃないと分かった上嘘をついた。そして、今朝確認したら、笑いながらお前が生きていたのかと声を上げたらしい」

タイシが眉を寄せ、畑中が告げる。

「その実父と直接話さないか?こっちもそいつの言動には参っているし振り回されている。そして罪を認めていないと発言をした挙句控訴までしている。面倒な相手だ。だから、もし息子のお前が話したら変化が起きるんじゃないかと思う」

「…」

「行うなら手配する。上も焦らされているからな」

「話します。生きていたのかと言うのが引っ掛かりますから」

「分かった。ならその前にお前の叔父さんだ」

「はあ」

「会いたくないとか?」

「会いたくないのは確かですけど、あの人はねちっこいんですよ俺の嫌がらせのやり方とか」

「成績とかについて当時訴えたりしなかったのか?教育委員会にも」

「それを子供がして信じる大人がいますか?俺の家族は俺を全否定してきたんです。子供のわがまま戯れとしか言われて相手にされないのがオチですよ」

「確かにな。なら、今からか?」

「ええ」

タイシがやれやれとし、横塚が話す。

「ならこっちよ。後あんたも来る?」

「ああ。こいつの担当だからな」

畑中がタイシを指差し、横塚がじいとみる。

「あんた常に面倒なの回されるわね」

「こいつに関しては特に。話が早くて済むから別に良い」

「あ、そう」

「ああ」

「2人は同期ですか?」

「いや。横塚が二つ上で年も上」

「こいつはナメくさった後輩よっ」

2人同時に発言するとタイシがはあと声を出し、横塚が苛立ち先に進み部屋を出ていき2人が続くもタイシが止まり畑中へと話す。

「あの」

「なんだ?」

「おじさんですが多分、恋人いますよね?その恋人と話できませんか?会う前に確かめて欲しいことがあります」

「家の中を?」

「ええ。あればの話ですけど」

畑中が横塚を振り向き横塚がやれやれとし少し待ってと告げた。


取調室の覗き窓からタイシがシワの深い僅かに小太りした男を見るとボソッと呟く。

「俺が知ってる叔父じゃない…。なんだこの変わりよう」

「10年経ってんだから変わるの当たり前じゃないの」

「…あー、まあ」

「あの監視カメラ映像は2年前だ。2年前ならお前は?年は?」

「18です。今は20ですから。この2年の間になにがあったんだ…。入っても?」

「ええ」

横塚が扉を開けタイシを連れ中へと入る。男がタイシを冷ややかに睨み、取り調べする警官が椅子から離れる。

「犯人がいるじゃないか?」

「俺は違う」

「嘘を言え」

「嘘じゃない」

「甥であるこいつを虐待したと聞きました。成績の改ざんや」

「身に覚えがありません。犯人が捕まってるならこちらは関係ないでしょう?」

「叔父さん。あんた、なんでそんなに肥えたんだ」

男が苛立ち、タイシが気味悪くする。

「おい。なんだその顔は?」

「あんたまだ痩せてた方がよかったのに。贅沢しすぎたのか?それともストレス太りか?」

男が机を叩きタイシに向かおうとするも畑中達が止める。

「人の体見てうるさい」

「言いたくもなる…。後俺はまだ重要参考人で捕まってない」

「その通りで、手配についても取り下げられることになります」

「はあ?」

「父親がホラを吹いたので捜査のやり直しです。これは警察。こちらの落ち度になります」

男が睨みつける。

「監視カメラにははっきりとこの甥が写ってたはずだ。テレビでも俺は見たからな。確かにこいつだ」

「似てはいますが、以前手配していたものにそっくりな軽犯罪者を捕まえた経緯があります。なのでもう一度捜査する必要があると決まりました」

「なにが決まりましただ」

扉が突如開くとわらわらと男達が入る。

「なんだ」

男が汗を滲ませ、横塚が眼鏡の男へと話す。

「あった?」

「あった。田島隆仁」

眼鏡の男がスマホ画像を見せる。そこに開かれた本。だがその本の中央に窪みがあり中に大粒のダイヤのイヤリングが収められていた。田島が顔色を変え、眼鏡の男が話す。

「強盗殺人の被害者のものに似ている。他にも数点同じような作りの辞書が見つかっている。中は全てダイヤだ」

「そ、それは俺の隠し財産で、まさか勝手に家に入ったのか?それが警察の」

「おじさん今彼女いるんだろ?」

田島が脂汗を流しながらタイシを振り向く。

「俺が小学生の頃自慢して同年代の教師に話してたのを覚えてる。おじさんは彼女を切らしたことがないと自慢話をしてた。そして学校で使わなくなった古い辞書をよくもらっていたのも知ってる。不思議に思っていた。それからおじさんの知り合いに映画撮影の特殊メイクを作る造形士の先生もいるのも知っている」

田島が青ざめ、タイシが告げる。

「全部あんたの自慢話とおかしな行動だ。それからあんたは右利きで俺は左。利き手じゃない方でナイフを持って俺を脅した経緯があるからそれも覚えている。理由は不明だけどカメラ映像の持ち手はまさにその持ち方だった。扱い慣れていないんじゃない。持ち慣れていない手の握り方だ。だからまだ踏み込まないこの人達に変わってあんたの切らしたことがない彼女にお願いさせて辞書を見てもらうよう俺が指示した」

「な…」

田島が顔を青白くさせる。

「その肥えた体はカメラにどうあれ映ったから体型隠しで肥えさせたんだろ?あんたは肥えた体にはなりたくない。醜い奴。豚同然だ。だから悪いことをすると、俺を庇った女性の先生に悪口を言った挙句旦那をわざと不倫させて別れさせて学校を自己都合で移動させた。そうやって俺から何もかもとっていった。俺からは以上」

タイシが両手を上げはあと息をつく。

「おじさん。あんた何もかも小さいしかっこわるい」

田島が力無く両膝をつきタイシが呆れた視線を向け背けると畑中がタイシの腕を掴み外へと出る。

「メンタル弱いのかお前のおじさんは」

「弱いですよ。そしてあの人は常に自分が一番じゃないと気が済まない性格でしたからねちっこい方法で頭がいい。けれど歯向かえない弱い先生達を落としてましたから。唯一のあの人が歯向かえなかったのは俺の実の両親やらさらに上のゴマスリ相手になります」

「なるほどな」

畑中がタイシを元の取調室へと戻すと扉を閉め椅子に座らせ自分も座る。

「向こうはいいから話の続きだ。どこからどうきた?あの場所に突然現れてきたとしか俺は思えないな。話し方からしてもな」

「はい。話せば、別の世界から来ました。俺や鈴子達はその世界に飛ばされたんです」

「なぜ?」

「頼まれたか、力の強いものだから。魔術など使える世界」

「今話題の異世界物語か?」

「話題?」

「漫画や本と結構な品数が出ている。主人公は死んで生まれ変わってそこで最強になるやら、モンスターに生まれ変わって最強になるやら,悪役令嬢とやらになって人生取り戻すとか色々だな」

「そう言ったのが今流行っているんですか?」

「ああ。死んだ和尚の家で調べたらいい。和尚はパソコンが使えたようだからな」

「はい。俺が教えました。ネットも」

「そうか。なら後で調べてみろ。そして、その世界で、頼まれてというと?組織犯罪に関わる奴らというわけか?」

「ええ。人身売買の。実際に奴隷として連れてこられた方達もいます。もちろん扱いは酷いですし、俺の場合人が人を獲物と見立てて狩る遊びの的にされました。もちろん本格的な狩なので矢が当たれば死にます」

「その狩にお前以外もいたのか」

「いました。そして、俺は使えないとされて狩の的にされたんです。ただ、運良く助かってここに戻るはずなかったのに戻りました」

「死んだ和尚の戻ってきたなの言葉でお前は嫌な顔をしたからな。和尚も察したんだろ?」

タイシが小さく頷き畑中がああと返事を返すと眼鏡の男が中へと入る。

「田島ですが自供しました」

タイシが顔を顰める。

「はや…」

「そうだな。あと最初から素直に吐けばいいものを」

「はい」

「まだ顔似ていた向こうのほうがましと言うか…」

「そっくりさんがいたわけかお前の知ってるやつに」

「ええ、はい。ただ性格は似てませんね。向こうは思慮深いと言いますか。よく周りを見て行動します」

「そうか」

「タイシ君について手配が取り下げられます」

「そりゃそうだな」

「それより俺今心配してることあるんですよね」

「なんだ?」

「実母です。祖父の家で賽銭とかから金を盗んでいたので。以前は祖父が被害届を出して捕まえさせたこともあるんですよ。実の娘ですけど」

「ああ」

「遺産目当てですか?」

「ええ。来る可能性があります。まあ、今どこにいてどうしてるか全く知りませんけど」

「とりあえずお前の実父について。離婚したから関係ない。文句があるなら和尚にいえ。息子の手配のことなんて犯罪犯す前もだし行方不明の時にすっぱり縁を切ったから知らない、ときた」

「あー、まあ俺はそれでいいですし納得です。俺も縁切ってるとしか考えてませんから。祖父以外」

「ああ」

「あと、お会いしたことあるのですね」

「取り調べでな。あと、化粧濃いな」

「元からですよ」

「俺はナチュラルなほうが好きだがな」

「俺の場合はすっぴんでもいいです。実父の面会ですが葬儀が終わった後がいいです」

「なら。今日から数えて一週間後だ。手配はしておく」

「お願いします」

「お願いしているのはこちらだ。さっさと終わらせたいからな」

ー今日の畑中さんは機嫌がいい。彼のおかげか。

眼鏡の男がやや目を丸くしタイシを見るも横塚が呼びに来ると背を向け部屋を出た。


ー……。

『よく寝られましたね』

ミオが真っ赤になった顔を両手で隠し天を仰いでいた。ダリスが面白く見ていき、布団を片す香苗が告げる。

『そんなに恥ずかしがってかわいいわね』

『う…』

『ダリスさんは先に朝ごはん食べたからミオちゃんご飯済ませて』

ミオがかしこまりありがとうございますと深々と頭を下げると香苗がその頭をよしよしと撫でた。


ーこれがとーふ。美味しい。

ミオがほおとし豆腐の味噌汁を堪能し浅漬けなどもまた食べていき、焼き魚、ご飯と食べるとほくほくとしていった。そして黒いスーツの香苗が持ってきた黒いワンピースに着替える。

「その、これ着てもよかったですか?」

「いいわよ。母が学生時代に買ったやつでタンスの中にしまってあったのだから」

「えと、ならお母さんは」

「もう体型変わってきれない。髪も結ぶわね」

香苗が澪の後ろに回り髪を網結んでいく。

「あの、香苗さんはおいくつですか?」

「21。ミオちゃんは?」

「16でもうすぐ17です」

「うっわかっかいなあ。だからお肌ツルツルだもん。私くらいになったらもうガサガサでケアが大変。あと、タイシくんは20かー。酒飲ませてもいいわね」

「ええと、でもタイシさんお酒は飲まないって話されてました」

「また硬いこと言うわねあいつは」

「あ、ええと」

「気にしないで。それとタイシくんももうその年かあ。行方不明になった時は10歳の頃だったから」

「あ、はい。あの、香苗さんとタイシさんはどういった関係ですか?」

「ええ。ご近所同士。ただし、祖父母が。私はここにたまに泊まりに来てたの。ここが好きなのもだけど両親が2人とも忙しいお仕事してるからよく泊まりに来てたわ」

「えと、どういったお仕事されてるんですか?」

「ええ。父は警察。母は看護師よ。2人とも常に同じ時間に帰らないし、仕事が忙しすぎる時は一週間から1ヶ月近く帰らないことがざら。寂しいもあったけど周りがいてくれたから」

ミオが頷く。

「香苗さんはお仕事は?」

「んー、まだ学生。バイトで飲食店はしてるわね」

「バイト?」

「小金稼ぎっと。はい出来た」

編み込みが終わるとミオを自分へと任せ確認する。

「いいわね。なら、もう納棺師さん来てるから行こう」

「のーかんし?」

「遺体を綺麗にして棺に収める人たちよ。さ、こっち」

香苗が澪の手を握り家を出て寺へと向かう。そして寺の裏口を開け裏から入ると和尚の遺体のそばに喪服を着た男や女たちがおりその中に喪服を借りて座るダリスがいた。香苗が澪をダリスの隣に座らせるとミオがダリスを一度見るが正面、静かに遺体の体を拭う手袋をした男たちを振り向く。香苗がその隣に座り声を顰める。

「今、ご遺体を清めているの。体を綺麗にして髪や髭とかも整えたりするのよ。あとお化粧も」

「お化粧も?男の方なのに?」

「ええ。そう。男の人でも生前に近い姿にする為にお化粧をするの。生きている姿に近づけさせる為によ」

ー生きている姿に?

「えと、その、生き返るとか」

香苗がくすりと笑い頭を振る。

「生き返りはしない。ただ、最後は生きていたときに近い姿にさせたみんなとお別れをする為にお化粧とかするの」

ミオがうなずき香苗が頷くとミオから離れミオが作業を続ける納棺師を見た。

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