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運命のミオ  作者: 鎌月
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カルドア5

サイモン、ハリスが気まずく立っていた。その目の前に終始笑みを絶やさないと言った顔をさせたダリス。そして、何偉そうに生意気な顔をしているんだと見ているサラが向かい合いたっていた。

ー何でいつもこうなる…。

ー座るなら早く座ってくれないかなあ…。

その場に先に座ったテオドハスがおり、テオドバルトとリュウがのんびりとしながら茶を飲んでいくとサイモンがそのテオドバルトとリュウへと視線を向け続ける。

ー何か言ってくれハゲとおっさんっ。おいっ。

扉が開きナガハラが中へと入る。

ーナガハラ先生っ。

ーようやく来てくれた。

2人が安堵の表情となるもナガハラが同時に2人の頭を叩くとサイモン達が汗を滲ませる。

「さっさと座れ。いい年してなにしてんだがきども」

「が、餓鬼ではありません」

「…」

「俺から見たらお前らはまだ餓鬼だからな」

ナガハラが椅子に向かうと同時にテオバルトとリュウの頭もバシッと叩くと2人で渋い顔をする。そして続けて苦笑する青年とやれやれとするステラが来るとサイモン達が全員集まったのを見てダリスに一言申して離れ部屋から出て扉を閉めると大きなため息をついた。


ー道も何もかも整備されてる。

戻ってきたタイシ、そして鈴子と護衛名サラヤと共にミオが城下町を歩いていく。そこでは人々が常に笑い合い生き生きとしており、商売である店構えもまた今までと違いどこかその店に惹かれる佇まいだった。ミオが店頭で料理する菓子屋などを興味津々に見ていくと鈴子が話す。

「ああいったお店の作りはここでしかないのよ」

「ああ。治安がいいからできる」

「えと、でも他でも外に出して売られる方もいらっしゃいます」

「食事関係はな。俺がいうのは道具類だ。高く売れるからな」

ミオが頷くと。

「鈴子様だー」

「やっぱりタイシ中佐よ」

子供達が鈴子の元に集まると鈴子がこんにちはとしゃがみ頭を撫でる。そしてタイシの元に老齢の夫婦が集まり以前退治したウォーウルフの礼を直接いい始める。ミオが少し下がり2人を求め集まり出すもの達を見るも子供達の相手をする鈴子へと視線を向ける。

ー鈴子さん。ここで何したんだろう…。

「お久しぶり」

その囁き声にミオが目を見開き後ろへと視線を向けると意地悪な笑みを浮かべるジェシカと目を合わせた。


ーミオさん?

鈴子が気付き辺りを見渡すとすぐにタイシへとミオがいないことを伝える。

ミオが冷や汗を流し倉庫の中へと連れられ入るとジェシカがるんるんとしながら話す。

「本当偶然」

「どうしてここにいるんですか」

「ちゃんと正規の手続きをしてはいったわよ。ま、少し旅券は違うけど」

ジェシカが告げるとさあさあとミオを椅子に座らせる。

「早速質問。あの石は?」

「…タイシさんが実父に渡しました」

「げ…」

ジェシカが嫌な顔をさせると横を向き親指の爪を噛む。

「あんの若造」

「それだけなら戻っていいですか」

「まあだ。なら他。アストレイがまた再建しているのは貴方も知ってるでしょう?そこで、あの強欲女王が集めていた宝石類について聞きたいの。あの若造がいたら少し貴方にも」

すっとジェシカの首元にナイフの腹が当てられるとジェシカが冷や汗を流し反対側を向きタイシと目が合う。

「ミオさんおいで」

ミオがジェシカの横を大きく回り鈴子の元へとくる。

「ミオ悪い。痛ぶる事はないとわかって見ていた」

「いえ。何となくわかってましたし少し視線があったので」

「ああ」

「もう。何があっても知らないわよ」

鈴子がやれやれとし憲兵達へと道を譲る。

「げ…」

「またどこから宝石の情報を得たんだ。まあ有名な盗賊団の娘だからな」

「はあ。はいはいどうも」

「それでなんだ?何かあるのか?」

「あるわよ。その宝石の中に暗号の入った宝石があるの。お宝探しに必要な暗号のねっ」

ジェシカが足元に何かを投げた途端一気に煙が上がる。憲兵達が咳き込み、鈴子とミオ、サラヤも2人を庇おうとするが咳き込んでいく。

ーふふん。

ジェシカが息を止め倉庫の奥へと向かうがゴーグルをしマスクをしたタイシがたちはだかる。

「ずるっ!?」

ジェシカが思わず叫ぶもタイシが掴みそのまま押さえ込んだ。


ジェシカが顔をしかめながら馬車の檻に入れられる。

「そろそろ懲りろ。じゃあな」

タイシが背を向けさり、ジェシカがむかあとする。

「こんのっ。いいかになるんじゃないわよこらっ。覚えてなさいよおっ」

ジェシカが連行されタイシがやれやれとしミオ達の元へとくる。

「まあた脱獄しそうだな」

「…えと」

「とても元気な女性なのね」

「ああ。あなたはしつこく長く生きる。そろそろ戻ろう。何か買うものとかは?」

「私はないわ。ミオさんは?」

「え…と」

ミオがやや戸惑い鈴子が遠慮しなくていいわよと告げるとミオがもじもじとしていった。


ユナがミオが買ってきたプリンを頬張ると目を輝かせんーと声を上げスプーンを握る手をブンブンとふる。そしてミオもまた夢中で黙々と食べていき、ユナも再びプリンを食べる。そこにエリスもおりエリスもプリンを食べつつ鈴子へと話す。

「こちらは初めて食べました。美味しいです」

「はい。私の故郷にあるお菓子なんです。店主の方はイーロンに囚われていた方で私たちと同じ世界に住まれていた異界の方です。あちらには少し悔いはあるとのことですが、ここでの暮らしも長くなったのと、恩返しもしたいとの事。あとは、とても過ごしやすくいい方々ばかりだから家とお店を建てて生活しているとのことでした。あちらの世界ではパティシエというお菓子を専門とした職人を目指しておられたそうなのでお菓子作りが得意なのだそうです」

「はい。なら、お店にあるのはあちらのお菓子ばかりなのですか?」

「そうですね。私も馴染みあるお菓子がありましたから」

「ミオっ。ミオもう一個!」

「だめ。明日にしよう。あと明日で終わり」

「明日で終わり!?毎日食べたい!食べたい!!」

鈴子がふふっと笑いミオがダメだよと頭を振る。そこにナガハラが中へと入る。

「お疲れさまです。お話はどうでしたか?」

「まずまずだ。そっちは?我儘姫の相手はどうだった?」

ー知ってたんだ。

ミオがどきっとし、鈴子が話す。

「その通りでした。孤児院も自分の考えが率先のようで、真似する子も少しおられるようです。お話をしてわかりましたから」

「え?その、いつ」

「街で子供達が集まったでしょう?その時よ」

『鈴子はお話を聞くのが得意だしちょっとした変化もすぐ見抜くもの。それがまた、貴婦人やご令嬢と言った女性達にも人気の秘密なのよね』

白百合が得意気に話し、ミオがほうほうと頷く。

「タイシさんからお話聞きましたか?」

「聞いた。思った以上のバカな姫だとわかった」

「お邪魔しまーす」

ナナオが中へと入る。

「鈴子姉さんから呼ばれてきましたよー。あと、ダリスさんとサラ姫さんと仲良いですね。いつもああですか?」

「そうだ。お互いに頭が硬いし競争心があるからな」

「何となくわかりますね。あとなんですか鈴子姉さん」

「ええ。しばらくよかったら今のお仕事を休んでマクシュアのお姫様の教師になってほしいの。上司の方には伝えているわ」

「あー、あの命知らずの姫ですね」

「え、と」

「知っていると思ったわ。貴方も命知らずだけど、貴方の場合は自分で解決できる力を持っているから」

「お褒めに預かり光栄ですと、事情察しました。そして鈴子姉さんからの頼みじゃあ仕方なしです」

鈴子がふふっと笑い、ナナオが話す。

「いいですよー。準備していきますね。いつからですか?」

「明日から」

「またなるはやで。了解です。それじゃ」

ナナオが手を振り部屋を出る。

「その、ナナオさんと仲良いですね」

「ふふ」

「上司とその部下だろう。ちびは何食べたんだ?」

ユナが空になったプリンの容器をさっと後ろに隠すと鈴子とエリスとが笑う。

「言え」

「…プリン」

「えと、だめでしたか?」

「いや。あと、あいつはマクシュアにいたのか」

「え?」

「もしかしてイーロンで」

「ああ。ジェイクだろう?あいつは教会の菓子作りに回されていたからな」

鈴子が目を丸くし、ナガハラがふむと考えるとその場を離れ去る。ユナが目をぱちくりとさせ、エリスが話す。

「ダリス枢機卿が来られておりますから話に向かわれるのでしょう」

「はい」

「ユナ。容器渡して。汚れるから」

ユナがやや後ろへと下がると後ろを向きぺろぺろと容器をいやしく舐め始める。ミオがもおと声を上げ鈴子がふふっと笑い、エリスがユナの元へといきまた明日ありますからと諭した。


サイモン達がやや疲れ紅茶を飲むダリスの元にいた。そこに、ノックが響く。

「ダリス。ちょっといいか?」

「はい」

ナガハラが中へと入る。

「マクシュア国に逃亡している教会の馬鹿に詳しい専属菓子職人がいるそうだ」

「え?」

「アズマン元枢機卿の元に?」

「そうだ。捕まっていた若造で夜の相手。いわば性被害にもあっていたのだ。あのバカはあちこちやってたから性病もっててな。だからそいつも性病被害にもあっていた。戦争の後は一応無事に保護はされたようだな」

ダリスが頷き、ナガハラが座ると告げるとダリスがはいと返事を返し座ったナガハラを見る。

「行くなら、お前の部下のうちの1人とアキラが明日戻るからその2人に行かせたらいい。名前はジェイクで年は今だと24。6年前にここに来させられて腕とその顔と体を見込まれて専属になった。そのバカについて場所まではわからないと思うが夜の相手もしていたからな。油断して何か話した可能性は否定できない」

「確かに」

「ああ。ただし、その行為はジェイクにとってトラウマだ。書き出すなら明日じゃじゃ馬な小娘が馬鹿姫に危険な行為がどこまで危険かを教えに行くということだ。城に行かせる前にそこにまず連れて行って話をさせろ」

ダリスが頷き、ナガハラが以上だと告げ立ち上がり部屋を出る。

「専属菓子職人ですか」

「話には聞いておりましたが行方不明ではありましたからね」

サイモンが頷き、ダリスが告げる。

「少しでも得られるものがあればというところです。ハンス」

「はい」

「明日マクシュアに向かわれてください」

ハンスがはいと返事を返した。


翌日ー。

「……」

顔立ちの良い深い緑の瞳に金髪の青年ジェイクが椅子に座りダンマリとしていた。その目の前にナナオとアキラ、ハンスがおり、ナナオが話す。

「話すと嫌ですよねー」

「…思い出したくなかったのに。帰ってくれ」

「それ」

ナナオが言いかけたハンスを手で制すとニコッとする。

「ならちょっと2人で話ししません?お互い国は違えど同じ場所から来ましたから。ね」

「…」

ジェイクが頷きナナオがハイと返事を返し2人に退出を促した。そしてアキラとハンスが出るとハンスがはあとため息をする。

「一度、奴を捕まえかけたのですが。うまいこと逃げられたのです」

「どのように?」

「はい。イーロンが製造した彼方と似た乗り物です。タイシ殿に特徴をお伝えしたら装甲車という乗り物で全体が盾の凶器との事でした。あれを止めようとしたのですが当たったものは一瞬で吹き飛ばされたり、ひかれ死んで行ったもの達が30余。道を開けざるを得なかったのです」

「魔術では?」

「対応しましたし、結界を張りましたがそれさえも破壊されました。話では鉄の壁なども速度を上げてぶつかりさえすれば壊されるとか…。あちらの世界では戦の最前線に使われると聞きました」

「それを持っているとなると厄介ですね」

ハリスが頷きアキラがわずかに悩んだ。


20分後ー。

扉が開きナナオが姿を見せ扉を閉める。

「どうだった?」

「話してくれましたよー」

ナナオが封筒をハリスに渡す。

「持ち帰ってみてください。機密事項です。あと、んー」

「なんだ?」

「彼に隠れて護衛とかつけたほうがいいかもしれませんね。お話を聞けば、結構な執着ぶりでしたから。なるべく強い方の護衛がいいと思います」

ナナオが再び扉を開ける。

「私からは以上です。まだちょっと話たいことがあるんで。色々記事掲載の分でです。そしてご要望の話はそれで全部ですから後は戻っていいですよー」

「ああ。感謝する」

「いえー、なら」

ナナオが扉を閉めジェイクの元へと行く。

「お待たせお待たせですっと」

ナナオが椅子に座りメモを出す。

「それじゃ家庭でもできる簡単なお菓子作り教えてください」

ジェイクが頷き教えていくとナナオが早速メモをしていった。


ー…。

ダリスが考え込む。そして、ナナオが書いたメモをナガハラも読む。

「さて。これが本当なら確かめる必要があるな」

「ええ。そして、アズマンの行方について、もしかしたら」

「ここではない可能性が高い」

ダリスが頷き、紙を暖炉へと放り投げる。

「知られたらまずいからな。何か非常事態があった時は俺かお前が動く。それでいいな?」

「はい」

ナガハラが頷き紙に火をつけ燃やす。

「ナナオという者は?」

「あれは口が硬いと小僧や鈴子から聞いた。そして、ジェイクもだ。ただあいつの場合はその変態からの恐怖で黙っているようだからな」

紙がチリとなるとナガハラがダリスを振り向く。

「ダリス。アルから聞いたがアルの娘と婚約関係を結んでいるんだろう?」

「はい」

「ふうん」

「…なにか?」

「一応忠告しておく。女も男も心変わりする」

「心変わりですか」

「ああ。そうだ。どうなるかはお互い様であり、その時次第だ」

「なら、ナガハラ殿は」

「俺は死んだあいつに一目惚れしたから子供をこさえた。以上」

「…その、事実で」

「事実だ。あいつにとっては多少遊びではあった様だがな。まあでも、子供にはよく向き合っていたし、次が欲しいとも考えていたからな」

「それで、タイシ殿を」

「そうだ。昔の俺に似ているとかなんとかとは聞いたがな。以上だ」

ナガハラが部屋を出るとダリスが見届けた後心変わりかと考えた。そしてナガハラが部屋の外にいたサイモン達の間を通る。

「アルから聞いたがあいつの愛人隠しは大変だな」

「…」

「…」

2人がダンマリとし、ナガハラが気にせず通り過ぎる。

「…やはり、アルスラン将軍はご存知で」

「ご存知承知でなぜっ。何故だっ」

「声が大きい」

サイモンが思わず嘆いたハリスへとしーと声を立て注意すると大きくため息をついた。


ー出来た。

ミオが水晶の腕輪、花びらの腕輪を二の腕に装着して見せる。エリスがいいわねと頷き、ミオがややウズウズとする。そして、ジョイが話す。

「二層の腕輪にしてみた。そうすればおかしくもない」

「はい」

「とても素敵ですね」

ミオが頷きガイがはなす。

「窮屈なところとかはねえか?」

「ないです。あと、ええと。この半分の金額で…」

「本当はお礼にそのままもらっていいのだけど」

「そりゃだめだぞ。ちゃんとこっちは材料、道具、人も使ってんだからな」

ジョイがはいと頷き、エリスが話す。

「ドワーフの方の力も借りたのですね」

ガイを含めたドワーフ達が雰囲気を変える。そしてにこやかなエリスに圧をかけるとミオが目を丸くしジョイが汗を滲ませた。


「ドワーフとエルフは基本仲が悪いの」

鈴子が話すとミオが目を丸くする。

「仲が?」

「ええ。どうしても性格上合わないみたいなの。ドワーフの方達は職人気質で我先に行く人たちが多いけど、エルフの方たちは思慮深い人達ばかりで深く考えて行動するわ。つまり、ドワーフの方達は気にせずさっさと終わらせたい。エルフの方達は気にしながらしっかりと終わらせたい。そういった考え方の差がどうしても出来てしまって自然と仲が悪くなったと言われているの」

ミオがほうほうと頷く。

「でも、お互いに戦争とか、喧嘩とかは起こさないわ。理由としてそれだけのことだからであり、お互い性格の合わないのは知っているからよ」

「そうなんですね」

「ええ」

ミオが頷き、白百合がとことことやってくるとミオの膝に座る。

『おはなしちゅうごめんなさいね。ミオ。出来たブレスレット見せて』

ミオが頷くと一枚服を脱ぎ袖をまくり見せると白百合がいいわねと声を掛け、鈴子も素敵になったと告げた。


ーいーやーーーーーー!!!!

ナナオが仮面をはめ、同じく仮面をはめた姫とぐったりとする諜報部員の女を両肩に担ぎ暗殺者の手から颯爽と逃げていた。そして、用意していた移転魔法の扉へと飛び込み潜り抜けすぐに閉じるとお互い転がり壁にぶつかり止まる。姫が震え泣きながら体をこわばらせ、ナナオがどうもーと協力してくれた国の魔術師と汗を馴染ませるナーシャへと手を挙げる。

「危うくそちらの方が殺されるとこでしたよ。少し拷問受けましたけど」

「すぐに運んでちょうだいっ」

「は、はい」

「姫様っ」

「姫様が無事ですかっ」

周りが慌てふためきナナオが立ち上がり仮面を外すと姫の前に来てにこっとする。

「どうでした?実際調査の感想は?また違ったでしょう?」

「う、うう」

「流石にや」

ナナオがナーシャの口を手で遮るとナーシャがダンマリとする。

「その部下の方の話聞きましたね?そして私の様にお互い納得しあった実行契約ありならいいですけどなしでの調査は後々遺恨も残りますし遺恨の残らない様にまあた」

ナナオがぬっと顔を近づけなきっつらの姫の鼻を摘む。

「責任を持ってお迎えに行かないといけませんよ。姫様ご自身で」

「う、うう」

ナナオがパッと手を離す。

「はい。わかったところでやることは?」

「み、みんなに、う、かえ、って、きて、も、もらって、お、おかね、はらって、う、お家、帰すう」

「はあいその通りですよ。なあら。ちゃんとしてくださいね。後私は納得契約した通りこれで済みましたからお終いです。それではお部屋でお休みください。お疲れ様でした姫様」

ナナオが離れ姫を抱いたナーシャにどうぞと手で示すとナーシャが頭を下げ部屋を出る。魔術師がやれやれとしナナオを見る。

「みていたけどよくあの暗殺者や兵士たちから逃げてきたわね」

「あれくらいはどうにでもってとこですよ」

「そうなのね。あと流石、イーロンから大勢の奴隷を助けたことは有るのかしら」

「あはは。あれは幸運に幸運が重なっただけ」

ナナオが白磁の面を回す。

「あれくらい怖い思いしてもするならもう私の手には追えませんと王様に伝えてください」

「ええ」

そこに腹を膨らませた女性が来ると魔術師がはっとし頭を下げ、女性がナナオの前にくる。

「王妃様よ」

「そこに座ってください。お腹大きいですね。何ヶ月ですか?」

女性がふっと笑う。

「なんだかそういった言葉久しぶりに聞いたわ。ありがとう」

女性が椅子に座りナナオへと娘の事でお世話になった事。自分も悩んでいてどうしても聞いてくれなかったと話すと、ナナオがうんうんと頷き話して行った。


そしてー。

ジェイクの店の前でナナオがシュークリームを頬張りミルクをごくごくと飲むとぷはと声を上げる。

「美味い。労働の後の糖分はいいねー」

「なんだか酒呑みの様な言い方だな」

「本当」

表に立ちながら菓子を売るジェイクが可笑しく話、買いに来た女性達がくすくすと笑う。

「だって事実ですから。後この香りいいのなんですか?」

「ああ。タルスと言う果実の種子を酒につけて乾燥させたものなんだ」

「あの見た目発狂した顔の果実?」

「ああ」

ナナオがメモをし、ジェイクが話す。

「旅をしているエルフの人が教えてくれたんだ。バニラビーンズのことを話したらエルフの保存食の香り漬けに使われているのと似ているかもしれないと」

「なるほどお。今私の近くにエルフの方がいるから聞いてみようかな」

「ナーナオおっ」

「ナナオだあ!」

「ナナオあいたかったー!」

子供らがナナオに飛びつくとナナオがおおーと目を輝かせ子供らを見る。そばにシスター達が三人おり、シスターがいると聞いてとイーロンの奴隷となりナナオに救われた子供達を示す。子供達がナナオとハグしていきナナオが大きくなったーと1人の子供を抱き上げ高い高いと嬉しくあげた。


ーミオ。

ミオが頭を撫でられながらその頭を上げると母親の葵がうつる。

ーお母さん…。

ー大きくなって。

ミオがはっとし自分が赤子だとわかるとその小さな紅葉の手を必死に葵へと向けると葵がその手を握る。

ーミオ。あなたはあなたらしくどうか健やかに。これからも元気で明るく生きなさい。私は貴方のそばにいる。あなたと共にあなたを見守るわ。どんなことがあっても。どんな時でもよ。ミオ。

ミオが目を覚まし体を起こすと涙を落としていく。

「…お母さん。お母さん」

ミオが呟き小さく啜り泣く。

ーお母さん。

とくんと心臓が跳ねる。そして頭の中に海が。海の上に竜巻が突如現れ空へと上がる。ミオが目を見開き、その竜巻に飲み込まれる影を見る。そして、今度は深い緑が広がる森が現れる。

ーこれ。これは。なに?

「ミオ」

ミオがはっとし顔をあげ心配な面持ちのエリスと目を合わせる。

「ミオ。うなされていたわ」

「…」

エリスが抱きしめるとミオがその心地よさに胸を熱くさせた。


白百合が目をギラギラとさせミオの顔の前にくるとミオが汗を滲ませ若干後ろへと引く。

『みえたっ。みえたのねっ。どこっ』

「白百合。もう」

鈴子が白百合を抱き上げミオから離しミオがホッとするとしどろもどろとする。

「その、海でした。海でも突然渦を巻いた風が上まで上がって…。それに飲み込まれ後、森が現れて」

『ええ。ええ』

「その、そこまでで。詳しい場所は」

『いいわ。それで十分。あと、その風ね』

白百合がふむと考え、タイシが話す。

「海となるとどの海かだな」

『ええ。後渦を巻いたなら竜巻が答えだと思うけど…。周りの風景は?』

「わからなかった、です」

『んんんー。そこは、こう』

「困らせないの」

白百合がだってえとぶつくさいう。そして、タイシが話す。

「その前に、この世界に竜巻が起こるところはあったか?海で」

「私は聞いたことないわ。白百合は?」

『そー言えばないわね。と言うより、渦を巻いた風は魔術よ』

「え?」

『自然現象じゃないわ』

ミオが目を丸くし、タイシが話す。

「ないのか?」

『ないわよ。はっ、なら魔術で作れるっ!』

「私はそうではないと思うわ」

「俺も同感だ。ただ、自然現象で起こるわけではなさそうだが…」

『だから。魔術。魔術だって』

2人が考え込むとタイシがミオへと尋ねる。

「ミオ。その渦を巻いた風か。下から上に上がったのか?」

「あ、はい」

「ああ」

「なら、おかしいわ。通常竜巻なら空から渦巻いて現れて下のものを吸い込んで出来上がるもの」

「ああ。下から上に向かうなら」

『風じゃないわね。作れないわそんなの』

2人がその通りと頷き白百合がむうと眉根を寄せる。

『何かしら…』

「ナガハラ先生達にも聞いてみる?」

「そうだな」

鈴子が頷き白百合がなにかしらと頭を痛くさせ考え込んだ。


ーそれって。

「ランドレア現象じゃん」

ナガハラと共にいたヒカルがナナオが買ってきたお土産プリンを食べつつ尋ねたタイシ達へと答える。

「ランドレア?」

「馴染まないもんなあ」

「俺も初めて聞いた」

ナガハラが答え、ヒカルが話す。

「ああ。まあ、100年に一度とか、千年に一度とか突如として起こる自然現象の一つで逆さ現象とも言われてるんだ。その現象は言い得て妙で海から天に向かって渦が起こる。風もなく天へと吸い込まれる様に海が風を起こして向かう」

タイシが頷き、ヒカルが話す。

「でー、それ聞いてちょっと面白いじゃないけどさ。ランドレア現象が起こる海域はイーロンの海域だけなんだ」

「だとすると、何かあるな」

「ええ」

ヒカルが頷きナナオがほうほうと頷く。

「そうなんですかー。あと、それは魔導局で?」

「ああ。研究対象として上がってるんだ。何度か俺もその海域にいって泊まり込んだらして調べたけど何もわからない。不明」

「はい」

「人工的なものか。ここに呼ばれたのも召喚術によるものだ」

「ああ。なら、それに似たもので作られてるかもしれない。文献でしかまだ解明されてないけど、およそ200年前。その現象に遭遇した魔術師2人が近づいて飲み込まれてとうとう見つからなかったって話。もしそうだとしたら向こうの世界に行ってそのまま帰ってこなかったのかも」

「ああ」

「じゃあ…イーロンの海域に行けば」

「出会う可能性はある。あと、海上らしいからもしいくとしたら限定していかないとダメ。でないと関係ないのが飲み込まれる」

「リュウの頼んで小舟を出させたらいい」

「それはできるけど念のための護衛いるじゃん」

『そこは私が』

白百合が話し、ヒカルがうーんと声を出す。

「でもまだあの海域は危険すぎるから。イーロンの兵士たちが海賊になってるし、大型の海獣もいるから」

『ああそうだった。海獣は説得できるわ。でも人は難しい』

「白百合はお話しできるんですねー。すごい」

『はいどうも』

「いくだけいって現地で考えてみたらどうだ?」

「まあだ簡単に言うなあ。行ったら行ったで隠れ場所と考えないといけないんだ」

「ならお前がついて行け」

「いやいいけど別に」

ナガハラが頷きヒカルがやれやれとしタイシを見る。

「なーら、俺が以前隠れ場所にした場所を使おう。そして、海の上まではー、その現象が現れるかもしれない。その時におろしてもらうか自力で行こう。巻き込まれならまずいから」

「ああ」

「で、まあそうなるとお別れはすることだな。今住んでいる家も何もかも引き払ってから行く」

タイシが頷き鈴子がゆっくりとはいと返事を返した。


「お姉さん相変わらず元気?」

リュウがかきかきと書類仕事をギルドの部屋の一室で行うテオドバルトへと尋ねる。

「元気姿も言いたいけどこの間久しぶりに風邪ひいちゃってなー。息子達が何か起こる前兆だとか言ったら怒っちゃって」

「そりゃ起こるでしょ。後、ここのギルド長決めとかどうすんの?」

「とりあえず代理おいて運営を続けてもらうしかないなー。ティーチ君でもいいけどティーチ君は忙しいから無理そうだし。代わりにアーサー君かなー」

「あーエスランカーの」

「まあ、女の子好きなとこ以外は問題なくできるでしょっと。はいこれ出しといて」

「はい」

手伝いに来た王宮騎士へと手紙を渡す。

「軍もあるけどやっぱりギルドもあったほうがいいからね」

「はい。魔獣関連に関しては専門家の方が一番ですから」

「うん」

「結構同じだろうと言われるものの軍とギルドは全く別物なのに」

「そうなんだよねー。そーこがまた困りよう」

「わかるなー」

ー話し方から似ているな。

ほのぼのと会話する2人を歌詞が見ていくと頭を下げ部屋を出た。


ミオが鈴子の手伝いを行なっていた。そして、村の年配の女達もまた手伝い、若い女がそわつきながら鈴子が使用していた服などを見せると鈴子が快くどうぞと答え若い女が頭を下げる。そして、鈴子が買い集めたものや服など手分けして無料で配布されていくと女達が名残惜しく、男達が落ちこんでいった。


ーランドレア現象か。

「タイシ殿」

サラと話をしていたタイシが振り向き、サラがムッとしながらダリスを見る。

「少しいいだろうか」

「はい」

「ええ。その、ランドレア現象ですが、その海域に私も同行してよろしいですか」

サイモン、ハリスが驚き、サラが話す。

「ダリス。お前には関係ないだろう」

「確かに。ですが、気になることがありますから」

「いったいどんなことだ?」

「それはサラ殿には関係ありません」

2人が火花を散らし、サイモンが気まずくする。

「まあ、構いませんが危険であることに間違いありませんから護衛をしっかりおつけください。後服装については動きやすいものが良いかと思います。あそこはイーロンの敗残兵達が根城にしている海賊がいます」

「分かりました。なら、支度をして参ります。いつ行かれるのです?」

「三日後にここを立ち、魔導局を通じてその海域近くに行きます」

「分かりました。では、よかったら魔導局で待ち合わせしましょう」

「はい」

「やめておけタイシ。こいつは常に裏がありすぎる男だからな」

「あなたに言われる必要は何もございませんが?そしてそろそろその言葉遣いと行動を治されてはいかがでしょうか?」

再び火花が散るとサイモン達がやめてくれと思い、タイシが気まずくしていくがナガハラが青年と共に来るとすぐさま空き部屋を借りタイシ達のみている前で2人を連れ部屋へと篭った。


暖炉の前でノーラが顔を赤くしながら俯くアキラに後ろから抱きしめられていた。その隣にヒカルもおりヒカルが気にせず話す。

「姉さんごめんな」

「い、いえ」

「いやいや。て言うか兄さん寝てるし」

「え?」

ノーラがそろっと顔を見るとアキラが静かに寝息をたて寝ていた。

「終わって急いでこっち戻ってきた上にみんな休ませた後も仕事してたし」

「はい…」

ノーラが少しずれヒカルが手伝いノーラの膝にアキラの頭を乗せ寝かせるとヒカルがノーラの膝掛けをアキラにかける。

「俺も姉さんみたいな彼女欲しいな」

「そ、そう?」

「ああ」

ノーラが照れ臭くし、ヒカルが話す。

「父さん遅いなあ。なあにしてんだ」

「あ、ええと」

「隣で話すから」

ノーラが頷きヒカルがああと返事を返しほんとよく寝てるよとアキラを見て話すとノーラがはいと返事を返す。

ー20分後。

「悪いな。馬鹿2人の説教をしていた」

やってきたナガハラがヒカルへと話し、ヒカルがやれやれとする。

「分かった。しかしあの二人の仲のいいこと悪いことだな」

「ああ。ガキの頃から全く変わってない」

「飲み物なんかいる?」

「いる」

ヒカルが頷きならお茶用意すると伝えキッチンへと向かいナガハラは先に部屋へと入った。


鈴子がふうと息を吐き出し何もなくなった家をゆっくりと歩き見渡す。その足元に白百合もおり白百合が話す。

『寂しいわね』

「ええ。少しの時間だったかもしれないけど…その少しの時間でもここでよくしてもらったから」

『そうね』

鈴子が頷き家の壁に触れくっつく。

「今までありがとう。あなたのおかげで暖かく過ごせたわ。また新しく来た人の家になってその人を暖かくしてあげてね」

鈴子が壁から離れ白百合を連れ家を出た。


ー鈴子嬢がいないっ。

ー王達は何を隠しているっ。

ー探せっ。すぐにでも探すんだっ。


鈴子が目の前に広がる海を、そしてミオが以前暮らしていた村がある方角の山を見ていた。二人は元イーロン国内の海岸沿いに来ていた。そこにタイシ、サイモン、エリス、ユナ、マルクールもおり、鈴子の足元には白百合もいた。そして、シャツにズボンと動きやすい服を着たダリスと護衛としてハリスに帰りたいと願ったヤン、砂浜に触れ印を探すヒカル、ハリーとがいた。

「あったあった」

「そこ?」

「ああ。開錠」

ヒカルの声と共に砂浜の一部が光ると蓋が開く様に砂浜が上がり梯子が現れる。そして下へと降りるとミオが驚きながら地下空間を見る。

「お部屋がたくさん」

「地下壕か」

「そう。イーロンの貴族の元隠れ家」

ヒカルが告げ、サイモンが驚きながら扉を開け豪奢な作りを見る。

「いや、確かに中も贅沢に作られてますね」

「ここ死んだ元大統領とかのか?」

マルクールが尋ね、ヒカルが話す。

「惜しい」

「惜しい?」

「死んだけど元々大統領の隠れ家。見つけたのは俺だけど、教えてくれたのはその元々大統領にこき使われていたイーロン出身の軍の人だ。今は爺さんで魔導局の掃除をして生活してる」

「イーロンの方がおられるのですね」

「もちろん。全国民が悪いわけじゃないし、爺さんみたいにそうなるのは当たり前だったとかと母国について母国のやり方に納得しないで家族を連れて出て行った人もいるから。爺さんはそこそこの地位にいたらしいけど、大統領命令によって部下の無駄死もあったり、金の支払いをしてもらえなかったり。挙句に脅されて家族の一人。娘が襲われて心の傷をおったことがきっかけで家族を連れて国を出たんだ。その時頼ったのが友人であった魔術師らしく、しばらく魔導局で体術指導した後引退して孫の小遣い稼ぎの為に掃除の仕事をしているんだって。あと孫はその娘の子供。その娘は友人の知人の息子でもある魔術師と結婚して今はいい暮らしをさせてもらってるって話。その知人はハリーの爺さんの息子」

ハリーがそうそうと頷き、マルクールがへえと告げ、サイモンが頷く。そしてダリスが話す。

「その方がここをあなたに教えたのは分かったのですが、どうしてですか?」

「ええ。現象の調査に行くっていったらならいい隠れ家があるって教えてくれたんですよ。護衛として一度ここに元々大統領が来たことがあって知っていると言うことで。ここを知る人物は爺さんを含めた三人だけらしく。三人は料理人と直近の従者と若い愛人との事でした。妻子は連れてこなかったそうですよ」

「ええ。たしか、その方は、愛人関係が多数あったから批判を受けた大統領ではなかったですか?」

「その通り。最終的に愛人達に殺されたんですよね。寝ている間に」

ミオが驚き、ダリスがそうそうと頷きタイシが話す。

「愛人大統領というあだ名をされていたな」

「ああ。で、その愛人大統領が作った隠れ家兼実際は愛人と過ごす部屋のひとつな訳」

「ああ」

「因みに」

ヒカルが面白く奥の部屋を示す。

「あそこから俺女装衣装を持ってきてたんだよ。あそこが言えば夜の営みの部屋」

ハリーがうんざりとし、マルクールが面白く向かい扉を開ける。そこには丸いベッドにいくつものクローゼットがあった。

「うわすげえ。寝床丸」

「四角よりも丸がやりやすいからじゃないかって話」

「照明器具もここだけ特殊だな」

「私には目が痛いです」

エリスが告げユナが部屋に入りベッドに飛び込み弾むとミオが慌てて止める。

「そのクローゼットの中は服もだけど大人向けのやつがまだ眠ってるから開けないほうがいいぞ。子供いるし」

「ですね」

「こういった場所は好きではないです」

鈴子がやや青ざめながら小さく囁くように呟き背を向け離れると白百合がついていく。

『鈴子。ここいや?』

「…ああ行った部屋が後はなければいいわ」

『ええ』

鈴子が戻りはあと息を吐くとミオがユナを抱き慌ててついていく。

「鈴子さん。顔色悪いです」

「ごめんなさい。あの部屋見ると、嫌なことを思い出すから」

「お部屋が眩しいから?ユナも目が眩しかった」

鈴子が小さくふっと笑いユナの頭を撫でる。

「そうね」

「うん」

「あの部屋マルクールさんが使う?」

「いやだ。落ち着かねえよ」

「確かに」

タイシ達が戻ると白百合がヒカルへと話す。

『ヒカル。残りの部屋は?』

「ああ。キッチントイレ。後シャワールーム。それから使用人部屋が三部屋。あと武器庫が二室。武器庫の中にあったやつは全部俺が魔導局に持って行った。ハリーの爺様。局長の許可をもらって」

「ああ、なら海岸沿いの隠れ家にあった武器ってそれか。丸い長い筒みたいなのがあっただろ?」

タイシが話すと、ヒカルが頷く。

「ああ。それから小型のりんごくらいのよく分からないやつ」

「小型爆弾だ。ピンを外せば爆発する。殺傷能力はもちろんあるからな」

ヒカルが汗を滲ませ、鈴子が話す。

「手榴弾がここにあったのですか。あとバズーカー」

「ロケットランチャーだ。以前イーロンで俺が結界間に合わなくてサイモンさん達と吹き飛んだやつ」

「あれですか…。後で遠方から狙い撃ってきたと聞きました。魔力反応も何もなかったので全くわかりませんでした。タイシ殿のおかげで命拾いしましたよ」

「いえ」

ミオがこわごわとし、ヒカルがドキドキする。

「やばかったー。ピンってあの上の鉄の部品だろ?丸いの」

「ああ。あれ外したらすぐにじゃないが時間をおいて爆発するからな」

「一回外してまた付け直したんだけど」

「え?」

「あれはお前の仕業か。ひとつずれてたからすぐに爆破処理した」

「あっぶねっ」

危なかったのはこっちだとヒカルの頭をタイシが叩きため息をつく。

「なら空き部屋二つだな」

「おう…」

「まったく。そうしたら使用人部屋を女性に。見張りがここ。ダリス卿はどうされます?」

「私はどこでも休めます」

「では武器庫に。強度のある部屋だと思いますから」

ダリスがわかりましたと返事を返す。そして空になっている武器庫にくるとサイモン達が残された棚を見渡しヒカルが話す。

「端に寄せれば三人寝られる広さにはなりますよ」

「ああ」

「ここは空気が乾燥していますね」

ダリスが話、タイシが告げる。

「火薬は湿気に弱いので乾燥させるよう風の循環を常にさせている様ですね。空気孔を半分塞いでここを開けておけば乾燥はあらかた防げます」

「ではそうしましょうか。多少なりと湿度のあった方が喉が乾きにくいですし」

タイシがはいと返事を返し、ヒカルが心の中でそこまで気にするものかなと思って行った。そして、ミオが鈴子と白百合と同室の部屋となると鈴子が埃防止のベッドカバーを外す。

「ここ、お金どれくらいかけてるんでしょうか?」

「そうね。高額なのは確かよ。家が何十軒も建つくらいと思うし」

ミオが頷き、鈴子が話す。

「ミオさんはこのイーロンの山奥の村に住まれてたのよね?」

「はい…」

「ええ。私は街の中で生活していたから」

ミオが頷きそわつく。

「あの、鈴子さんはどうしてこの世界に?どうやって?」

鈴子がやや俯く。

「樹海」

「え?」

「あちらにも入れば2度と出られないという森があるの。入り口までならいいのだけど奥まで行ってしまえば方角すらわからなくなる場所があるの。私は、とても苦しく、辛く」

鈴子が胸を掴み顔を僅かに歪める。

「死にたくてその樹海に入ったの。遺書を置いて。私はもう、汚されて、助けは誰も」

鈴子が涙を落とし、白百合が頭を鈴子へとつけこする。

『皇室の親族ということもあって話せなかったの。唯一理解してもらいたかった母にも裏切られたのよ。母親は娘では無く、自分の再建相手を選んだの』

鈴子が両手で顔を覆いながら頷き、ミオが頷く。

『あちらに戻る決心ができたけど、また同じ目にあえばと私は心配しているわ。だからすぐに祖父母のところに助けを求めに行きなさいといったし、ミオ。あなたの言葉が支えにもなったの。もし戻ったとして、どうなるかその時次第だけど、鈴子はここにいてはいけない。同じことが起こる可能性も高いし鈴子を狙うもの達も大勢いるから』

「はい」

『ええ。心苦しいかもしれない。でも、立ち向かう勇気も必要』

白百合が涙を流す鈴子に寄り添う。

『鈴子。あなたに幸あれ。そして、もし戻ったとしても私はあなたを見守るわ』

「白百合…」

鈴子が白百合を抱きしめる。ミオが胸を疼かせ静かに落ち着くまで見守った。


ー戻ったとして…。

「どこに戻るんでしょうか…」

ヤンがパンを食べながら暗く話すとタイシが話す。

「ミオの話じゃ森の中って言いましたからね。ただどういった森かは不明です」

「そうか…」

「はい」

「まあ、そん時はそん時でなんとか出来るだろ」

マルクールが話、サイモンがやれやれとする。

「攻撃的な方がいる場所でしたらどうされるんですか」

「逃げる」

「はあ」

「だってそれしかねえじゃねえか」

「俺の考えとして、おそらく向こうで消えた場所のどこかに繋がるんじゃないかなと思う」

マルクールが目をぱちくりとさせ、ダリスが話す。

「同じ場所に戻るということですか?」

「ええ。その場所がここの世界の力が反応した場所だと思いますから。ただ恐らくになりますし、下手したら全く知らない場所の可能性も高いです」

「ええ」

「でももしそうなら…やはり故郷の村の森に直接帰りたい」

ヤンが落ち込みながら告げ、タイシが話す。

「まだ知っている場所の方がいいですからね」

「ああもちろんだ」

ーもしそうなら。私は。

鈴子がやや息をつき軽く頭を振るも白百合が寄り添うと胸を暖かくさせた。


ー寂しそう、だから、です。

鈴子が一緒の布団に入り眠ったミオを見て小さく笑むとその頭を撫でる。そして白百合があなたも寝ないとと囁くと鈴子が頷きその目を閉じた。


朝ー。

ーなんかウヨウヨいるんだけど…。

『タイシ君ごめん。無理。なんか、他国の船とか海賊さん達が争ってて』

リュウの呆れ声が水晶を通しタイシ達へと響き渡る。

『いや、海賊さん達はどんどんやられてるのはいいとしてさあ。やってるのが貴族の船とかー、なあんか見たことある追放した元王子が乗った船もあるのよねー。没収したんだけど隠してたのかあ』

「情報が漏れていたということですか?鈴子嬢の」

ダリスが尋ね、鈴子が汗を滲ませる。

『それしか考えられませんね。なので、今いる連中は鈴子嬢を狙うのばかりでしょう。こっちは船は用意してますけど出せない状況ですはい』

「わかりました」

「だーから朝からばかすかうるさかったのか」

ヒカルがやれやれとし、ハリーが話す。

「ねえ。ここ居場所わからない?」

「出てしまえばみつかる可能性は大だ。そうなると集中攻撃というか…。鈴子は白百合がいるから問題ないとして、俺らの場合はまずい」

ハリーが顔をしかめ、鈴子が話す。

「その、私だけ出たら」

「だめだ。そうしたらここがすぐ狙われるから一人で絶対に出るな。俺たちがここで死ぬ」

「…え、ええ」

「その。俺まだ少ししか話したことないんだけど…、君大変だね」

ヤンがぽつりと話すと鈴子が小さく頷く。

『だからここだと鈴子は不幸な目に遭うだけだから帰さないとダメなのよ』

「ああ」

ミオが冷や汗を流し両腕を掴む。

ー何か、寒気がする…。

ダリスもだが、タイシもミオの様子がおかしいのに気づき、白百合が肌をピリッとさせミオを見る。

『ミオ』

「で、出たほうが、いい」

ミオが小さく震え始める。

「急いで出るぞ」

「ええ」

「ならハリー。出たらすぐに結界準備。そんで森の中に」

「海…」

白百合がハッとし、ミオが喉を動かす。

「なら、俺が運ぶわ。というか道作る」

「は?」

マルクールがはあと息を吐く。

「本当はー、しられたくなかったんだよなあ。エリスは手伝いしてもらいたい。水だし」

「分かりました」

「何するんです?」

「まあそこは見ててからとー、使ったらまあじしばらく動けないからどうにか俺守ってくれよマジで。若さんも頼みます」

タイシがああと返事を返した。


ー行け。

先にヒカルが外へと飛び出しタイシが続いてハリーを引っ張り出す。そして三人を見つけすぐに砲丸が向かってくる。

「すぐきた!!」

「分かっている!」

タイシが雷の剣を向け雷撃を放ち砲丸に当て撃墜し、ヒカルが外れた砲丸を鱗模様の結界で防いでいく。その間にミオ達が外へと出るとマルクールがミオを引っ張り出す。

「はいじょーさん!どっちだ!方角!」

ミオが頭を上げ周りを見渡し胸をずきりとさせ、船が3艘集まる場所を指差す。

「あそこ…」

「向こうに移動だ!!」

タイシが声を上げ、周りがタイシ達と共に一斉に移動する。白百合が肌を更にぴりつかせるとヤンがぞっとする。

「な、んか、こう」

ヤンの目が黒から緑と青に変わるとヒカルがハッとし、ヤンが額、そして顔に手を当てる。

「くる。わからないのが……」

「ちょっ!あんたのそれ予言の目!」

「まじ!見せ」

「ハリー!!」

ハリーがすぐさま結界を強め、タイシが声を上げる。

「集中しろこっちに!」

「みたいいいいい!!」

ヤンが膝を崩し今度は唖然とするとすーと涙を流す。

「そんな…」

「ハリスっ」

ハリスがすぐに動きヤンを肩に担ぎ上げすぐさま走り追いつく。

「こっちだ!!」

マルクールが声を上げ砂浜に手を入れ両手、そして背中を光らせる。

「岩の所っ。海中の岩が」

ミオが叫んだとともに地揺れが起きる。そして波が大きく唸るとマルクールを中心に両方に突如避けて別れる。そしてその中央を光る鯨が進み道を作り波の壁を作る。エリスが驚愕しながらも水の精霊達に命じ波の壁を維持させ、サイモンが汗を滲ませ声を上げる。

「ちょっ!あなた大祭司!」

「う、せええっ!早く!行け!」

「鈴子!!」

タイシが声を上げ、鈴子の手を掴みすぐにその道を走る。ミオがその目の色を変え二人を見てスッと立ち上がると走り出す。

「ちょっ!おじょーさん!」

「ミオ殿!」

ダリスが小さく舌打ちしミオを追う。

「ダリス様!!」

「二人はそこにいなさい!!」

ダリスが追いかけミオが汗を滲ませる。

ーだめ。まだ、足りない。なにか、かけてる…。

「あ」

ミオが振り向きヒカルと目を合わせるとヒカルが目があったのを見てハリーを見る。

「ハリー!!」

「な、なにっ」

「俺が必要だ!!」

「え?」

「俺が鍵だ!」

ヒカルが自分の髪を握りナイフで切り落とすとその髪を宙へと放り前へとかける。すると髪が突如動き格子型のドームへと変わりハリーやエリス達を包む。

「何これ!!」

砲丸がそのドームに当たるが弾かれ元の船に戻り着弾する。

「なっ」

「加護です!」

「ミオー!」

ユナが叫び、ヒカルが急ぎ走り目を赤くさせる。ミオが先についていた二人の元に到着しその岩に触れ、ダリスもまたその場にくると鼓動を放つ岩を見てぞっとする。

ー岩が。

「2人だ!鍵はここで生まれた異界人だ!」

ヒカルが到着し岩に触れる。すると岩が突如震え始める。白百合が毛を逆立て空を見上げ渦を見る。

『みんな!!服でもなんでもいいからお互い掴んで!!絶対に離しちゃダメよ!!』

ダリスがミオを抱きヒカルの腕を掴みタイシもまた鈴子を強く抱きしめヒカルを抱く。ヒカルが鈴子を掴み鈴子はタイシにしがみつく。そして強い風が突如現れる。

『鈴子!!』

鈴子が白百合を見下ろし、白百合が話す。

『幸運を。これからのあなたに』

鈴子が涙し、白百合が光り白い球体へと変わる。そして、囲む船たちへと突撃し船を破壊していく。

「白百合!!しらっ」

突如渦が起こり上へと目掛け上がる。タイシやミオ達が苦しく顔を歪めるも必死に離れないようお互いを掴み合っていく。マルクールが倒れ息を切らし、サイモンたちが空へと上がる渦を見ていき、ヤンが力無く見上げる。

ー俺は……いらないと、売られて。

ヤンが力無く項垂れすすり泣き、ユナが涙を流しミオーと声を上げ泣き喚いた。


ー行っちゃったなあ。

リュウがやれやれとし頭を撫でる。そこは森の中で、女の部下が話す。

「中々危険な道で戻りましたね」

「しー。でも、帰れるは帰れるから。ただし、ランダムで」

「ふーん」

部下がはっとし、リュウが息をつき後ろを見る。そこに、テオドバルトが部下達を連れ現れる。

「やあ。兄さん」

「やあ。でさ、なんか長年の勘というか。妙な感じが弟君からしてねー。その話だと、いろいろあたりかな。そして、今回お馬鹿さん達に情報流したのリュウ。君だよね?」

「そこは正直にその通り。本当は止めるつもりだったんだよ。タイシ君にはいて欲しかったから。鈴子ちゃんもだね」

「どうして?」

「タイシ君は必要な人材だから。とても大きく。そして鈴子ちゃんは鈴子ちゃん狙いのお馬鹿さん達を使えるからだね。でも、もう行ったし。白百合がそのお馬鹿さん達を追い払ったからもう無理だな」

「そう」

テオドバルトが手を挙げると部下達が各々武器を抜く。そしてテオドバルト自身も剣を抜く。

「まだ他にあるよねいうこと」

「あるねー、言わせてみるしかないけど」

「勿論」

女性の部下が息をつくと崖から複数人飛び出し姿を見せる。リュウが銃を手にし、女性の部下が杖を出し構えた。


ミオが小さく唸りその目を開ける。そして薄暗い空と緑の葉を見る。ミオがぼうとしながら隣を見て目を閉じ血を流すダリスを見ると体をなんとか起こす。そして、周りに倒れたタイシと鈴子唸るヒカルを見る。

「い、だあ」

「ヒカルさん。ヒカルさん」

「あー」

ヒカルが体を起こし顔をしかめ、タイシもまた気がつき体を起こす。

「ダリスさんが血を流してて」

「ま、って。見る。からだ、重い。重すぎるうう」

ヒカルがなんとか動きダリスの容体を見る。ダリスが目を覚まし、ヒカルが話す。

「切り傷と打撲くらい。おきました?」

ダリスがぼうとし眉を寄せる。

「ダリス殿」

『なんと、言ってるんですか?』

「え?ん?言葉」

「ここは…」

ミオがタイシを振り向きタイシが周りを見渡しその目を見開いていった。


テオドバルトの部下達の死体が海へと浮かんでいた。そして、頭から血を流すリュウが岩に座り込み涙を流す。

「何も知らなきゃ良かったのにさあ。バカだよなあ。本当、バカすぎだよ。バカだよ兄さんは。バカだ。なんで知ったかなあ。知ってても黙ってくれてたら良かったのに」

女の部下が近づきぶつぶつと呟くリュウの腕を支え立たせると何も言わずに崖から離れ森へと歩く。

ーテオっ。

怒った声が。

ーテオ。

呼ぶ声が。

ーテーオ。

優しい声…。

両手足を失ったテオドバルトが海に沈みながらその声を何度も頭に響かせる。

ーああ。ちゃんといるよ。怒らないでくれよ。僕は、ちゃんとここにいる。ああ。傍に。いるよ。いるよ。君の、傍に。

テオドバルトが静かに海の底へ底へと沈むと最後は暗い海の底へと消えた。

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