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運命のミオ  作者: 鎌月
19/64

カルドア4

ーちょいと出るからなぁ。

発掘用の道具を持つドワーフの背が見えると誰かが手を伸ばす。

ー師匠。

ジョイが涙しながら目を開けるとドワーフ達がジョイを覗き見ていた。

「ジョイ。起きたか?」

「体はどうだジョイ?」

ジョイが視線を巡らせる。

「師匠…は」

「…」

「あいつは殺されて死んだ。この世にはもういねえ」

「ああ」

ジョイが再び涙し、レオナルドがタイシに言われくるとすぐさまジョイの体を診察した。


マーラックが壁に頑丈な拘束具により磔にされていた。そのそばにオリハルコンの檻で作られた子龍がしょんぼりとしながらいれられていた。そして壁を隔てた隣では鉄格子の中マナがやれやれとしながら白いガラスのような球体の中に入り座っていた。その鉄格子の先に金髪の若い男がおりマナが話す。

「一体どこで龍の檻を手に入れたのやらだ。それとサクラは?」

「彼女はまだ眠っております」

「そうか」

「サクラに手を出すな」

男がくすりと笑い睨むマーラックを見る。

「それを決めるのは私だ」

「あれの腹にはマーラックとの子がいるからな」

男がマナを振り向きマナが話す。

「なるべく丁寧に扱ってもらいたい」

「…」

男が無言でその場を去る。マーラックが悔しくはを噛み締め、マナがやれやれとした。


男が執事を伴い豪奢な通路を歩く。そして、1人部屋へと入るとぼうとするサクラがイスに1人で座っていた。男がサクラに近づきサクラの腹へと手を伸ばすとサクラが腹を抑える。

ーまあいい。どうにでもなる。そして。

男がサクラを抱き上げベッドへと下ろす。

ー行為で流れたらその時はその時だ。

男がサクラに覆い被さり口付けするとサクラが小さく声を漏らし自然とその目を閉じた。


ー人か。

ラドンが荒らされた住処を見て周りふんと鼻を鳴らす。

ー変わり者の使いの匂いもあるな。

ひゅんと森からいくつもの触手がラドン目掛け伸びるがラドンがすぐに切り裂きその伸びた先を見る。そこにいくつもの赤い点が現れヒソヒソと話し声が響くとラドンが鼻を鳴らす。

『まあいい。俺も退屈していたからな。そして、腹も減っている』

巨大なもの達が姿を見せラドンが斧を両手で持ち死徒たちへと向け走った。


ー魔人の…。

ジョイが弱々しく話す。

「家の前に箱が置かれてたんです…」

「箱?」

ハゲのギルド長とタイシやサラの部下達が話を聞いておりジョイが小さくうなずく。

「はい…。私宛で。それで家に入って開けたら黒い足のようなものが。それを持ち上げた途端にわからなくなりました」

「ふむ。ティーチくん箱あった?」

「ありました。細長い箱がテーブルの上に。蓋は落ちてましたね。あと、確かにジョイさんの名前で書かれていました。サラ姫の軍の方が保管してます」

「はい」

「そっか。なら、誰かが仕組んだのかな」

「魔人の部位は触れればすぐに取り込まれるからな」

ナガハラが淡々と話す。

「制御できるやつはできる。ただそれは肉体的にも鍛えている奴らのみだ。ギルドのB級程度なら可能だがそれ以下は無理だな。すぐに飲み込まれる」

「見えている部分ですが顔の半分は残った状態でしたね」

「あとは半身だ。左側だな」

ジョイが口をつぐませ涙する。

「今後は義足生活になるからな。そして両手は無事だったんだ」

ジョイがナガハラへと視線を向けナガハラが話す。

「職人としての仕事はできる。なら仕事をしろ。何も考えるな」

「いや何も考えるなってなー」

「うるさいハゲ」

ハゲたギルド長が顔をしかめる。

ー同じ事を、師匠からも言われたな。

ジョイが両手を強く握り弱めると動く両手の感覚に嬉しく涙した。


ーえ、と。

ミオが戸惑いつつ指輪を見るジョイを見ていた。そこにドワーフ達もおり、ドワーフが話す。

「あんまり無理すると体に祟るぜ」

「先に確認するだけですから。あと、見た方がない石だ」

「そうそう」

「こっちの世界にない向こうの世界のものらしい」

「向こうの?」

ドワーフ達がうんうんと頷きジョイがふむと考えた。

ーこれだな。

ドワーフの1人がヒカル付き添いの元、ジョイの家の倉庫から箱を手にし病院へと戻る。そして古びた箱をジョイへと届ける。

「これか?」

「はい」

ジョイが受け取り箱を開け中にあった白銀の延べ棒を出すとさらにその下の板を取る。ドワーフがんっと声を出し、ジョイが布に包まれた青く四角い原石を出すとすぐさまドワーフが近づきまじまじと見る。

「この石、なんだ?初めて見るぞ」

「青水晶ですか?」

タイシが告げ、ジョイが話す。

「ああ。あちらの世界のブルートルマリンという名前の原石だそうで、師匠が若い頃にこちらに迷いきた異界人の世話をしたお礼にその異界人からもらったそうなんだ」

「はあ」

「あいつ。俺らに秘密にしやがって」

「その石を見てあったなと思って」

ミオが頷き、ガイが話す。

「隠してたのはなぜだ?」

「アストリアです。今はもう王が死んで、女王達も降ろされたので」

「ん?」

「そいや、ダグが話してたな。女王が飾り物作れとかすげえうるさく言われたとか」

「ああ。あと、何度か盗みもあって制作中の宝石の類も盗まれて腹立ててたな」

「なら、没収した中にあるかもしれないですね。所在不明の宝石の類をー」

「タイシさん」

タイシがミオを振り向き複雑そうにしミオが話す。

「私は気にしませんけど。恥ずかしいとかですか?」

「何がだ?」

「ああ親父とかいうのがだろ?」

「いや、まあ……ちょっとまだ、慣れてないもんで…」

タイシがぎこちなくしガイがそれくらいなんだよと背を叩き、ヒカルが代わりに言う。

「そこにいるミオの実父でタイシの養父のアルスラン将軍が管理してますから言えば持ってきてもくれますよ。どうします?」

「なら、お願いしたい。師匠のもあれば、陛下に頼まれていたサラ姫の物もあるんだ。盗まれて落ち込まれてたし」

「分かりました。そしたら俺。ハリー連れて取り行くから」

「ああ」

「それじゃ」

ヒカルが離れるとすれ違いに鈴子が中へと入りジョイを見て安堵する。ジョイがやや緊張し、鈴子が話す。

「目が覚めてよかったです。あとは、しっかり治されてください」

「は、はい」

ガイ達がジータ見ていくと白百合が話す。

『そんなに人を見ないのよ。貴方達は面白い事で共有するんだから』

「んなこたねえぞ」

「そうだ」

『あるわよ。あと、その石綺麗ね。何に使うの?』

「あ、その、お礼にと…。そしてあちらの世界のものですから」

『向こうのものなのね』

白百合がベッドに飛び乗り見ていく。

「トルマリンですか?」

「あ、はい。ブルートルマリンです」

「はい」

「向こうでいくらくらいになる?」

タイシが尋ね鈴子がふむと考える。

「種類にもよるけれど、加工したものでこれくらいの大きさなら10万はくだらないとおもうわ。アクアなら30万ね」

ミオがポカンとしガイ達がおおと声を上げその石を見る。

「向こうでそれくらいならこっちはまだ価値あるな」

「ああ。言えば世界で一つだけの石だ」

「ジョイ。礼につったけどいいのか?」

「はい。ずっと持っていては石もかわいそうですしお礼にこちらを差し上げます。お金とかいらないから」

「え!?いや、あ、あの」

ジョイたちがミオを振り向きミオがワタワタとする。

「指輪の加工だけで。加工だけでいいです。代金はいらないとかは」

「ふふ」

鈴子が失笑しジョイが話す

「加工にも使おうと思っているから」

「いや、えと、でも」

「流石にただは申し訳ないので本来の費用の半額分でお願いします。他に必要なものがあればサラ姫に伝えて揃えます」

ジョイが頷きミオが慌てるも受け取る分は受け取っておけとタイシがミオを説得し大人しくさせた。


夕方ー。

「お待たせー」

「あー、疲れた」

ナンバーの紙が紐でくくりつけられた宝飾の類が病院の一室に密かに運ばれ置かれるとガイやドワーフ達が目を丸くし、厚手の布を引いた上に背もたれのある椅子に座ったジョイが早速腕輪を指差す。

「あれ。あれ師匠のです。向こうのも」

「ておーい」

ーなら窃盗物か。

その場にマルクルもきておりマルクールがやれやれとし指差したものを手にしジョイに渡す。

「確かにあいつの加工したやつだな」

「ああ」

「わかるのか?」

「勿論だ」

「仲間のもわからなきゃあな」

マルクールがへえと声を出しつつこれとこれはと隠れていた宝飾の類をジョイやガイ達にも見せる。そこにサイモンもおりサイモンがマルクルへと話す。

「すべて窃盗された品とかなのですか?」

ーええ。調べは付いてますしナガハラ医師の尋問によって分かっております。

「なるほど。あと、あの方もまた怖いですね」

「あの医者先生だろ。嘘言えねえもん」

「それ。サラ姫に渡そうとされていた品です」

「これか」

マルクールがペアのバングルをガイに渡す。

「結構シンプルだな」

「ええ。ですが中央はお分かりになられる通り守り石と言われるハマスの石を使用しております」

「ああ」

「それ聞くと本当ゾッコンだなあ。あんなやば姫なのになあ」

マルクールが次々と見せる。

「あ、そちらは見たことがあります」

「ん?」

マルクールが鷲の羽のペンダントを見るとジョイが話す。

「確か、マクシュア国の姫様のものではありませんでしたか?以前、幼い頃にこちらに鳥が好きだからとこられてブローチを師匠が作って差し上げたんです。その時に宝物だと国の異界人の職人が作られたペンダントを見せてくれました。作りがこちらと異なってますしただ一つのものとか言われて」

しんと場が静まるとマルクルが硬直し冷や汗を流す。マルクールが気まずい笑みを浮かべドワーフ達が周りを見る。

「なんだ?やべえのか?」

「あー」

「国際問題になりそうな感じ」

ーなりそうなではなくなるんだっ。なんて事だっ。

「落ち着けマルクル。さきにその宝石を届けて報告してくれ」

マルクルが頷きすぐにマルクールから受け取ると慌てて出ていき、ハリーが僕いなくちゃ通れないですと急ぎついて行った。

「やれやれだな」

「他にこの手のやつで似たのあるか?」

「俺はこれしか見た事ないのでよくは」

ドワーフ達が確認して行き、ジョイも他にはと見渡した。


茶髪の少女が写された羽のペンダントを見て驚く。そのペンダントをアルスランが箱に入れ持ちながら水晶の前に立っており少女も同じく水晶越しから見ていた。

「私のです。以前、狩の時にテントに盗みが入り他の宝石と共に盗まれたのです」

『それは八年前の?』

「はい」

『それは申し訳ございません』

「お前が謝るなお前が」

老齢の男がやれやれとする。

「然るべき対応をしてくれればそれでいい。作った異界の職人もまた別の形で作り直してくれたからな」

少女が頷く。

「はい。あと、そちらの国での異界人やその親族の方の差別は落ち着かれましたか?」

『現時点では罰則を与えているところです。なので、落ち着いたとは言えません』

「そうですか…」

「彼らこそ被害者だ。我々この世界のものの手により勝手にここに連れてこられたのだからな。まだ阿呆な事をする国民がいようものなら排除でもしておけ。あと、盗まれたものを即刻返すように。以上だ」

「ああ待ってまだお話。もう。お父様」

少女がむうとし、老齢の男がやれやれとする。

「私はまた仕事に戻る」

「分かりました。はい」

男がああと返事を返し背を向け離れ少女がやれやれとし部屋を出ると今度は別の部屋へと入り中にいた金髪の腹を膨らませた女と金髪の男の元へといく。

「お母様。おじ様」

少女が女を抱きしめ男が話す。

「お邪魔してるよ」

「いつでもどうぞ」

「ふふ」

「そうだ。おじ様」

「なんだい?」

「おじさまが作ってくれた盗まれたペンダント見つかったの」

「え?」

「本当に?」

「ええ。あのね」

少女が話して行き、女が頷き男が話を聞きやれやれとし見つかったならよかったよと少女の頭を撫でた。


ーマクシュア国。

ミオが地図を見下ろしエリスが話す。

「暖かい気候の小さな国よ。小さいけれどとても豊かな所なの」

「豊かというと」

「人も優しい人ばかりなのよ。旅行としても人気のある国でね。ただし、審査がとても厳しい場所としても知られているわ。そして、不法移民や避難民の受け入れに関しては受け入れない国でもあるの。理由として犯罪を減らすため。国民を第一に考えるためなの」

「犯罪…でも、わかる気も」

ミオがポツリと告げ、エリスが話す。

「何度か見てきたものね」

「はい」

「ええ」

「国民を守る為にされているという事ですけど、その、戦争孤児とかは」

「多分条件付きで受け入れはしているとは思うわ。孤児院もあればその孤児院もまた学問など行き届きている場所だから。そこは教育を必ず受けるようにと国から多額の資金が出されているの。だから、国民の人たちはみんな文字も読めてかけるのよ」

ミオが頷き、そばにいたタイシが話す。

「あと俺のような異界人の受け入れもしてくれる」

「え?」

「国によっては拒絶される場合があるの。つまり、国民としての籍を入れてはいけない。もしくは滞在は短くとか」

「あと、扱いの悪いところもあれば窃盗の被害と多々ある。容姿が似ていればそこまでないが俺の場合完全に分かりきっているから尚更それが多い」

「その、タイシさんでもですか?」

「んー、まあ昔はというところだな」

「今はどちらかと言えば受け入れるからその力を渡せ。協力しろという感じですね」

「はい」

ミオが頷きタイシが話す。

「そのマクシュアの王妃は異界人だ」

「そうなんですか?」

「ああ。ちなみに王との年の差は30違う。王が今58で、王妃が28だ」

「はい。聞いたお話ですとこの国と同じ。とても熱愛されてとのことでしたよ」

「ああ」

ミオが驚き、タイシが話す。

「あと結婚されたのは12年前だ」

「なら。18の時に?」

「ああ。そして、今子供は3人だな。今回羽のペンダントの持ち主が最初の子供で姫になる。マルクルが慌てたのはその国とは昔から長い付き合いを持っていたからだ。聞いた話だと300年ほどとかだ。けれど、アストレイ元王とマクシュア王の仲は相当悪く国民も心配していた」

「ああ」

「こちらも知っております。異界人賛成と反対ですからね」

「ええ、まあ。結局のところはこうなって、アストレイは次の王を決めるまではサラ姫が務めるからな」

「はい」

「なら、今回の窃盗についての責任者はサラ姫が追うのでしょうか…」

「少しはだろうな。サラ姫はもうここに嫁に来ているから」

「そうなるんですか?」

「ああ。何せ実家を勘当されたようなものだしな」

「確かに。あと、お尋ねしたいのですが、マクシュア王からタイシさんにお誘いなどの話はなかったのですか?ご活躍なさっておられるのならあるかと思います」

エリスが尋ねタイシが複雑そうにする。

「以前話しましたよね?俺への手紙や俺が宛てた手紙は勝手に破棄されたりしていたとか」

「はい」

「多分、あったんじゃないかなと思います。一度、ギルドの調査でマクシュア国の王に仕える方と話す機会があって。まあその時に、なんか誘われたけど断られたと聞いたとかって。全く見に覚えも聞いたこともない話だったので俺じゃないのではと思ったんですけどそうではなかったようで」

「まあ」

「とりあえずじゃないですが…その件は、今回の件を含めて……と、うさん」

エリスが吹き出し、タイシがぎこちなく告げ、ミオが突っ込む。

「そんなに照れますか?」

「言い慣れてないんだ……」

「では、慣れるようになさってください」

「…まあ少しずつ」

エリスがはいと返事を返しミオもまた頷く。そこにサイモンとマルクールが来る。

「わかさーん」

「なんだ?」

「ダリス枢機卿が明日来るそうです。サラ姫と話し合いらしいですよ」

「ああ」

「何もなければいいのですが」

「どうしてですか?」

「ええ。お二人は仲がいいのか悪いのか…。まあ、悪いとも思います」

ミオが目を丸くし、マルクールが話す。

「そんでまたナガハラ先生が世話してたんだとさ」

「ダリス枢機卿を?」

「ええ。話じゃダリス枢機卿も放置子だったらしいですよ。それでサラ姫さんとは言えば同じ放置子同士の幼馴染らしいです」

「ええ。私もナガハラ医師に聞いて初めて知りましたし、どうしてお二人ともあんな毎回会うたびに空気がピリついてたのかの謎がとけはしましたが、それがいつもなのか。仲が悪いのか」

「ぴりつくんなら仲悪いんだろ?」

サイモンがいやまあと答えタイシが話す。

「話は2人だけですか?」

「いえ。ナガハラ医師と陛下。それからステラ殿とリュウ殿、テオバルトギルド長が話し合いをなさるそうです。私はその間外で護衛と待機になります」

「分かりました」

「テオバルトギルト長?」

ミオがきょとんとしマルクールが話す。

「姫さん知らねえのか?あのハゲのギルド長だよ」

「テオバルトさんが名前?」

「いやそうだけど」

「まあ、みなさんたいていギルド長か。ハゲしか言いませんからね」

「あーまあ」

「酷い…」

サイモン達が唇を尖らせ扉から半分体を覗かせたそのテオバルトを見る。

「僕は傷ついたね」

「ええと」

「お名前知りませんでしたが、今知りました」

「ゆにゃもお」

ユナが話し、テオバルトがうんうんと頷く。

「ミオちゃんとユナちゃんはいい子だ。うん。それに対し野郎どもはひどいなー。僕だって傷つくんだぞお」

「ちょいテオ」

リュウがその場に部下を伴い来る。

「何かよう?」

「そっちこそ」

「タイシ君に用があるの」

「えー、なら僕が先に来たから僕ね」

「なんですか?」

タイシがそばへと来る。

「先ず、ギルドの手伝いしてほしくてさ。明日ね」

「えー、そしたらこっちも手伝いしてほしいんだけど」

「なんの?」

「兵隊さん退治」

「こっちは魔獣退治。こっちが先」

「いやいや。こっちでしょ普通」

2人が愚痴を言い合うように口論を始める。

「どっちも近くならその魔獣を兵隊に押しかけるとか」

「ここから魔獣は20離れてるところなんだけど」

「こっちはアストレイだから」

「アストレイに?」

タイシが驚きリュウが目をきらりとさせすぐに近づく。

「そうそうだから」

テオパルトが押しのける。

「リュウ。お前が対応したらいいだろう」

「私は海なの。陸は違うの。あと魔獣ならお兄さんが相手すりゃいいでしょう」

「僕は上の立場があるし話し合いがあるの」

部下達がやれやれとすると。

「どけじゃまだ」

『げ』

2人同時にやってきたナガハラとマルクルを見て発言しナガハラが話す。

「何してるんだお前らは」

「何って、タイシ君に手伝い頼んでる」

「こっちもだし。こっちは大型魔獣の討伐」

「こっちはアストレイに敵兵がきてるからその対応」

「お前ら2人でやれ」

「いや立場的に無理だって」

「相変わらず簡単に言ってくれるけど出来ないから」

「なら俺の息子たちを貸す。アキラが兵士。ヒカルは魔獣だ。小僧」

「あ、はい」

「いや、まあ」

「うーん…」

2人が黙り込みナガハラが話す。

「アルがお前にお使いだ。あの羽の宝石を直接マクシュアに行って届けろだと」

「はい」

「ああ。あと俺からも。マクシュアにある魔防石を買ってこい。これは俺が使う分だ」

「分かりました」

「魔防石?」

ミオが目をぱちくりとさせ、タイシが話す。

「ミオが前持っていた魔獣とかを寄せない蒼さんが作った石があっただろ?」

「はい」

「あれのまだ比較的弱い石で小型魔獣を寄せ付けない石なんだ」

「そうだ。ネズミどももだからな。アストレイの俺の家に置く。うるさくて嫌気がさす」

「アストレイは多いですからね」

「下水道整備をいいようにしてないからな」

ミオがほうほうと頷き、リュウが話す。

「あー、そう言えば君の家。アル君が」

「あいつがしたところでアホどもが散らかしてくれてるからな。だから魔防石もない。おまけに元王が輸入拒否してくれたからまだ流れてこないからないんだ」

リュウがあーと苛立つナガハラを見て告げるとナガハラが話す。

「そこのハゲにはヒカルを貸す」

「ちょっと…」

「そっちのおっさんはアキラだ」

「おっさんってひどくない」

「お前ら2人の顧問名称だろうが。小僧はお前の部下から話を聞いて明日届けろ。そして金はやるから10個買ってこい。以上だ」

ナガハラがその場を去る。二人が顔をしかめマルクルが気まずそうに若と呼び中へと入った。


「本当君のお父さん口悪い」

テオドアストがぶつくさいい、ヒカルが一時ギルド入り書類を書きながら話す。

「今更ですよー」

「君の亡くなったお母さんはなんか言わなかった?」

「んー。毒舌もいいとか」

「えー、ああでもどっちも毒持ちか…」

「あはは。じゃあこれで」

「はあ。ならお願いね」

ヒカルが了解と頷き返す。


アキラが兵士達を集め、ノーラが口を尖らせるリュウの隣で心配な面持ちをする。

「ごめんねー。新婚前なのに連れ出して」

「えっ。い、いいや、え、ええと、その」

ノーラが顔を真っ赤にしわたわたとする。

「君のお父さんになる人はどう?優しい?」

「え、と。厳しくもありますが、お優しいです。その、知らないことがあれば教えてくれまします。たまにお会いする時に、応急処置とか…あ、あとはその」

ノーラがかあと顔を真っ赤にする。

「え、えと」

「…え?ナガハラ何話したの?何々?」

「将軍」

女性部下がじとおと見る。

「だからおっさんという顧問名称がつけられたのですよ」

「……つけられては」

そこに、アキラが来ると即座にノーラをリュウから離し女性部下の隣に立たせそのまま離れていくとリュウがしょんぼりとし部下がまったくと漏らした。


レオナルドの許しを得たジョイが家へと帰ると早速工房に入り道具を出していく。それをドワーフ達が手伝う。

「すみません。お手伝いさせて」

「いいっていいって」

「俺らもリハビリってやつだ。あと、やっぱり道具はいい」

「ああ。あそこじゃ掘り出すもんしか持たせられなかったからな」

「…その、師匠はどうして殺されたんですか?」

ジョイが尋ねると一人が話す。

「俺らの中で一番あいつが腕が良かったから宝飾品を作れと拷問されたんだ。そんで、作らねえなら掘り出せと俺たちと同じように石を掘り出す作業をさせられた」

「ああ。そうしたらか。人の子供とかをあいつらが虐げてな。見るに見かねたあいつが出て行ったわけよ。それで、馬鹿な奴が剣で突き刺したんだ。子供は助かったがあいつは死んだ」

「ああ…」

ジョイが表情を曇らせ、ドワーフが話す。

「そのあとその子供もな。どこか連れて行かれてわからねえ」

「ああ」

「そうですか…」

「…その、だ。あいつの骨はねえ。ただ、あいつが残したのはここにあるしお前だってそうだ」

「ああ。だから、あいつの代わりになるけど良かったらお前には職人としての仕事を続けてほしい。そうしたらあいつも喜ぶ」

「だなあ」

ガイもまた頷き、ジョイがわかりましたと答えるとドワーフ達が頷き答えた。


ーその水晶の加工はわかるか?

ー研磨しながら削ると聞いています。

道具を揃えたジョイ達が早速作業する。ジョイが水晶を足踏み製の研磨機で削る。その足踏みをドワーフの一人が様子を見ながら、ジョイの指示を受けながらレバーを踏み速度を調整する。そして丁寧に作りたい形へと研磨をしながら整えた。


「実際に門から見るのは初めてだな」

タイシがマクシュア国の門の入り口にマルクルもだがミオと鈴子、サラの部下でもある女性の護衛騎士共に立っておりミオが興味津々にしマルクルがタイシへと話す。

ー初めてなのですか?

「ああ」

「私は2度目です。その時もサラヤさんについてきてもらいました」

「はい」

「私は初めてです。ここは、先に来て良かったですか?」

「ああ。進路からは外れる国でもあるしアストレイ近くでもあるからな。だからたまに外れる国でこう言った機会があれば連れて行くことにするか」

「国やその国の人を見ることもいい刺激になりますし勉強になりますからね」

「ああ」

ミオが頷き審査の番になるとドキドキしながら旅券と身分証。そしてタイシがアルスラン達からの手紙を渡すと兵士が受け取り頭を下げ急ぎその場を離れる。その後肩まで白髪のある貴族が来るとマルクルが話す。

ーアレスター侯爵です。城では国内の整備などをなさる国土大臣をされております。

「なら建設関係もか」

ーはい。若が提案された職務になります。

「アストレイにはないのですか?」

鈴子が尋ねるとタイシが手を振りマルクルが頭を振る。

「ないな」

ーええ。アルスラン様も賛成なさられたのですが却下されたのです。

「その、元王によって?」

鈴子が思わず声を顰めると二人がその通りと頷く。そしてアレスターがその場にくる。

「お初にお目にかかります。アレスターと申します。タイシ中佐殿について、ご活躍の方はよく耳にしております」

「ありがとうございます。あとこちらからご挨拶をするのが」

「いえ。構いませんよ。タイシ中佐殿のおかげで我が国が迷惑していたワーグウルフが去っていきましたから」

「ワーグウルフ?」

ーウォーウルフの亜種になります。この辺りを根城にしていたウォーウルフの王のような者で言葉を話します。

「ウォーウルフの王…」

「ゴブリンと同様、ウォーウルフにはメスがいないので娘達が攫われ無理矢理産むための道具にさせられていたのです。厄介なのはゴブリン達と違い攻撃が強く、素早いですし知恵が回るのですよ」

アレスターが説明しタイシが頷く。

「まあ、それも流れもののだったし、今思えばになるがイーロンが開発した魔獣じゃないかと思う。イーロンはここを目の敵にもしていた」

「それは、異界人を国民としていたからとか」

「はい。それもですが王の妻。王妃の存在です。王妃とその双子の弟に当たる方がイーロンに囚われていたところを同じ異界人でこの国に住む国民が助け出したのです。その事がイーロンに知れてからは嫌がらせも多々ありました。そして、ワーグウルフがウォーウルフ達を連れ突然この国の周辺に根城を作ったのです」

「でしたね。で、ギルドのAランクが行ったがやられ続けて俺とS2人の3人で相手したんだ。数も多ければ罠も結構凝ったのされていたし、ここの国の攫われた人たちもいたからな。だから、頭脳戦と乱闘戦と繰り広げて結構苦労した。そして、ワーグウルフの首を討ち取った」

アレスターがその通りと頷いていき、マルクルが話す。

ー若も手負で帰ってこられましたからね。

「ああ。人質取られてたからなかなか思ったように行かなかった上に、あいつらゴブリンもつかってもきたからな」

「ええ。それで、その後、まあ、アストレイに送ったのが間違いでした」

「その、こちらはどれだけ送られたか事件後調査で知ったんですよね。今回のペンダントについても大変申し訳ありません」

「いえ。あなたはずいぶん苦労なされたのです。あれだけ国のため、人の為と若いながらと身をこなされたと言うのに」

マルクルが同感と頷き、鈴子が苦笑する。

「失礼ですが、お礼のお品を送られてそれを盗られていたのですね」

「はい。おっしゃる通り」

「2人は受け取ったと聞いてはいたけどな。流石に、何かいうにもと言えずにいて」

「そうでしょうね…。そのあとですが、受け取られたなどの返事がないと話していた時にお一人が来られましておそらく元王が勝手に摂取したはずだから本人は分かっていないと言うお話をして頂きました」

「でまあ、改めてギルドにとも言われたけど断ったんだ。お礼の品は国から出されているから流石にこれ以上は」

「アレスター」

アレスターがはっとし、ミオが近づいてきたシャツにズボンの少女と籠を持つ女を見る。

「お客様なのだから立って話すより座って話せる場所に案内しないとダメでしょう。あなたはついついその場で話しすぎてしまうのだから」

「申し訳ありません…」

アレスターが慌てて行き、少女がもうと声を出す。

ー姫になります。エイダ姫です。

「ええ。この格好で失礼。今、孤児院に行って子供達と遊んできたの」

エイダが優雅に頭を下げる。

「ようこそ皆様。エイダランペルージと申します」

エイダが頭を上げ城を示す。

「お部屋は用意してます。私も着替えて向かいます。その間はまたお話好きなアレスターがお相手致します」

「姫様…」

「本当の事」

アレスターが苦笑し、エイダが告げる。

「ならまた後でそのお部屋で。私のペンダントもその時もらいますね」

エイダが軽く頭を下げ城へと徒歩で向かう。ミオが目を丸くし鈴子が話す。

「この国では王家の方達は国民の方と近い距離での交流をされるの」

「はい。ならその、危険とかありませんか?」

「ありますね。なので常に影をつけております。国民に化けた護衛です」

「え?」

「まあ俺達が住んでいた世界でもそう言った感じだったからな」

「はい」

ミオが驚き、アレスターがではご案内いたしますと頭を下げた。


部屋へと入るとミオが見た事がない飴細工の菓子を興味津々に見ていき、タイシがアレスターへと話す。

「異界人の料理人ですか?」

「はい。イーロンに捕まっておられた者です。こちらで菓子職人として働いております」

「はい」

「これは、どう言ったお菓子ですか?」

「砂糖を固めて作った飴のお菓子よ。飴細工というの」

アレスターがその通りと頷き、ミオが砂糖と驚き見て行く。

ーこの国は砂糖の生産国にもなります。

「はい。なので、各国にも輸出しているのです。あとは魔防石です」

「はい」

「その魔防石ですが、こちらの知り合いが個人で使いたいので購入して欲しいと頼まれたのです。アストレイ国のもので医師のナガハラです」

「ナガハラ医師からですか」

「はい。一応、話しておかないとやはり今は流通を止めておりますので」

アレスターが少し考える。

「それはまだダメ」

扉を振り向き正装に着替えたエイダが中へと入る。

「お父様の許可がないと。勝手に置いたらその国の国民達が盗むわよ。今魔防石はアストレイにとって希少価値が高くて、勝手に高値で売られたりしていると報告が上がってるもの」

「そうなのか?」

タイシがマルクルに尋ね、マルクルが話す。

ー私はよくわかりません。

「整備されているところならわからないわ。整備されていない城下町で行われているのよ」

エイダがアレスターが下げた椅子の席へと座る。

「ありがとう」

「いえ」

「なら、物流が解消しない限りはダメという事ですね」

「ええ。そうでないと市場価格がおかしくなるし、ここで不法に手に入れて売り込む商人達まで現れるわ。だから、ナガハラ医師にも悪いけどそれは却下。話してくれてよかったわ。こちらが困るしナガハラ医師も困るわ」

タイシが頷きミオが話す。

「国外のことを、よくご存知なんですね」

「それはもちろんよ。国内外を知っておくのは大事なことよ。些細な事でもそう。それによって国の発展、存続が左右されるもの。あとそう言った話は旅の商人達もだけどギルドからも聞いたりしてるわ。もちろん雑誌や広告からもよ」

ミオが頷き、アレスターが話す。

「姫は広い見聞をなされておりまして国のためにと自ら動いてくださります」

「当たり前。ここに生まれたのならみんなから得ている分ちゃんとお返ししないといけないわ。私の師匠ね。作法の先生で異界人の御息女の方が言われたのよ。人の嫌がることよりも人が喜ぶことをする事が自分にとっても喜ばしい事。たとえ見えていない場所でも、見られてなくても細かいところまでしなさい。そして見聞を広げ知識を高め自分の糧にしなさい。そうすることにより将来苦労することは減るしこの先の子供達も周りも幸せになると」

ー幸せ。

「あとは、たとえどんな世界でも世間でも働かざるもの食うべからず。そして等価交換がある。等価交換により、欲を出せば身を滅ぼすだけであると言われたわ」

タイシが頷き、鈴子が話す。

「その御息女のご親族ですが私たちと同じ黒髪の方でしたか?」

「違うわ。金髪。でも、その国に住んでいて教わったという話だったわ」

「鈴子。日本語かと思うけど新約聖書だ。日本にその言葉は渡ってきたんだ」

「そうなんですね。ずっと日本の言葉かと」

鈴子が驚き、エイダが楽しくする。

「物知りであり博識であるのは本当のようね。アストレイ国の内情については、どこぞの元王が行動とかも制限していたからあまり細かいことまでもだけど、政治や暮らしについてもわからないでしょう?」

マルクルが強く頷きタイシが複雑そうに頷く。

「ええ。その通りです。国に入った後は屋敷か軍施設くらいだけでしたので」

「でしょうね」

「なら、城下町とか」

ミオが驚きタイシがないと手を振る。

「ここにいるマルクルや蘭丸たちから話を聞いたりしてだくらいだ」

ーはい。そこで、若が町の改善計画などを話を聞いて作られたのです。

「でも却下でしょうもう。ま、今はもうその障害物達もいなくなったからアルスラン将軍や代理達が国の改善のために働いていくわ。でも一つ問題があるわね。イーロンでの突然の戦争。襲撃」

タイシが頷き、エイダが告げる。

「それによって国内外で家族を失った人たちが多いわ。そのせいで、攻める国じゃないけど領地民がいるわ。イーロンに親族がいたところがね。だから、アルスラン将軍は仇討ちの相手にされているわ。王が死んだとしても実行者は将軍だもの。将軍自らが赤子や妊婦。子供まで含めた戦争に関係のない無害な国民達を大勢殺したから。その事実は曲げられない。否定できない。これから先もアルスラン将軍は英雄ではなくて殺戮者として言われるわ」

ミオが拳を握り、タイシが話す。

「その養父も話していました」

エイダがチラリと見てやれやれとする。

「でしょうね。ちなみに、まあ中佐については養子ということもだけど多数の国の助けをしているからそこまでないのよねー。逆に言い寄られたり、結婚の申し出されたりが多いわね」

「…まあ」

「はいでしょう。ただ問題なのが実の娘」

エイダがミオを振り向く。

「もう知られているしさっきの話を聞いてわかるはずだろうけど、アルスラン将軍を恨む人達が大勢いるわ。今はまだ会えていないだけ」

「…はい」

「ええ。だから、旅と聞いたけど気をつけること。貴方は何もしていないわ。けど、親がしてしまった。それにより恨む人たちもいるけれど、恐怖や倒してしまえという親族が殺されたとか関係のないでしゃばりが襲ったりもする可能性もあるわ。自分らが周りから囃し立てられて気持ちよくなるために襲う馬鹿な連中。偽の正義の執行者と言ったところね。そいつらが言えば一番厄介よ」

「正義の執行者…というと、具体的になんですか?」

エイダがテーブルにガンと頭を打ちつけ、鈴子が苦笑しタイシが話す。

「学び中ですのでご協力いただけたら幸いです」

「学び中というか、こう、ズレてるわ。なんかズレてるわ。貴方いくつ」

「16です…」

「私より3歳上じゃない」

ミオが戸惑い、アレスターが苦笑し話す。

「姫様。学ばれているところとのことでしたので、姫様と違い恵まれた環境におられなかったのでしょう」

「そう言うことは分かる。分かるけどなんか違う。ズレてる。いや、でも考えのズレはいい方向にも繋がるわ。でも」

エイダがそう告げ体を起こす。

「場を読む。その学習。つまり、私は許すわ。貴方のさっきの質問の意義を。だけど、許さないのもいるのよ。その答え方で腹を立てる人が。だから、本当になんでも知りなさい。知らずに答えることはいいわ。でも、答える相手をよく見なさい。そうでなければあなたが危険よ」

「…」

「以前も話したことに近い」

ミオがタイシを振り向き、タイシが話す。

「人によっては答えられないことがある。異性同性間でも」

「そう。女性のことについて同性じゃなく異性である男性に相談したり、聞いたりすると答えに困惑することもあるし、同性でもうまく答えられない場合がある。でも必ずその時助言をする人もいるけどそれは、身近であなたを知っているから答えられるの。わかる?」

ミオが頷きエイダがやれやれとする。

「あなたが知るのはまずしっかり相手を見て話すことね。そうやって頷いて答えるのもいいわ。けどそれを相手がどう受け止めるか。頷いてそれで納得してくれた人もいればそうでない人もいる。答えになっていないとね。その頷きについてはいいけど、話し合い手が変わったらやり方を変えて相手をみて合わせなさい。観察力を高める。それは見聞を広げることにも繋がるし危険を防ぐ効果もあるわ。あとは、人との交流。それが一番大事。どんな相手であっても話しなさい。でも身の危険があると思えば、わかれば身を引きなさい。身の引き方についても知っていも聞いたりして知りなさい。いいわね」

「はい」

「ええ。で、まあ話について。正義の執行者について。自分を正当化して力を使うのよ。神の代理人。悲しい人たちの代わりに自分が犠牲になって相手を倒す。そうやって自分を正当化させ、自分は正義であるといい含めて破壊、殺しとかを簡単にやってのける。弱いものいじめをするようなものね。私はそう思うわ」

「弱いものいじめ…」

「ええ。だって、そうやって正当化して力を振るうもの。そして、その被害を多く受けるのが犯罪を起こしたものの家族よ。強い力。正義によって悪を退治する」

ミオが戸惑い、エイダが話す。

「アルスラン将軍は国の為にと言われているけれど自分が行った行為であると十分理解しているし、それを実行したものであるとも理解しているわ。つまりそれだけの重荷を背負って生きていく決心がついていると。けれど、まさかの貴方。実の娘が出てきた。大分苦悩してるはずよ。その重荷が娘にものしかかってしまったのだから」

ミオが口をつぐみ、エイダが告げる。

「養子と実子じゃ立場が同じじゃない。全く違うわ。話した事がない。知らない父親だとしても血の繋がりを持つ実の子供。それは父親の責任を追えというものよ。縁が切れたとしても変わらない。それがその親で生まれた運命でもあるわけよ。イーロンの件がなければ殺戮者とまでは言われなかったしその時までは言われなかった。けれど、今はそうじゃないわ。言われているし、殺戮者の娘だから、巨悪であると思われてもいる可能性もなくはない。それを覆す為には良いことをといっても、いいことしたところで恨みは晴れない。戦争だからとあきらめればらそれでいい。けれど、突然の襲撃による大虐殺を行った後の突然の戦争開始。普段の日常が突如として破壊された。1人の手によってね」

ミオが僅かに青ざめ、エイダがタイシを見てやれやれとする。

「貴方の周りは優しいわ。でも優しいだけじゃ世の中うまくいかない。だから教えるけど貴方の実の父親は一瞬で1200人を殺したわ」

ミオがか細く息を吸い吐き出し、エイダが話す。

「イーロン生誕祭を行なっていた大きな会場で巨大な術を使って一瞬で大勢を殺したの。そこにはもちろん国の責任者達も集まっていた。大統領と言う国の王も。その王を含め、1200人の命が一瞬で消えた。そして戦争が始まりより多くの国民達が死んだわ。ミオ。1200人の命。その重荷を貴方も背負ってしまっている。外に出られなかった命も含めてよ」

ミオがぐうと強く口をつぐませ、タイシが話す。

「ミオの出生について何かご存知ですか?」

「イーロンの山奥の村と聞いたわ」

「なら、貴方に情報を送っていたのはナーシャですね」

エイダが僅かに目を開け、ミオがタイシを見る。

「突然な」

「極秘ですから。部下で話したのはナーシャくらいです。養父の部下は一言も話しませんからね」

エイダが僅かに口をもごっとさせる。

「流石だな。そしてエイダ。お前も話しすぎるのを自重しろ」

突如壁が回転するとエイダが気まずくし、老齢の男が冷や汗を流すナーシャと共に姿を見せるとタイシがやれやれとし左目を指差す。

「そこに初めから居られるのはわかっておりました。アスクレピオスの力を私が伝承しておりますから」

「そうか。ならば、すまないな」

老齢の男が座りナーシャがそろっとエイダのそばにつく。マルクルがやれやれとし、タイシが話す。ミオが鼓動を跳ねさせながら老齢の男を見る。

「ナーシャ」

ナーシャがぎくりとし深々とタイシへと頭を下げる。

「名前は?」

「その、ままです。申し訳ございません」

「いい。まだ嫌がらせする奴らよりもいいし、よく働いてくれてもいた。今後はそこの姫のですぎる言葉を多少なりと抑えてくれ」

「ですぎるって」

「エイダ」

エイダが縮こまり、老齢の男が話す。

「タイシ中佐の話す通りだ。お前こそ危険を伴う。よいな?」

「…はい」

「あ、の」

タイシが軽く息をつき、ミオが僅かに手を振るわせる。

「実父の…、事は」

「ミオ」

ミオがタイシを振り向きタイシが話す。

「犠牲はそれ以上だ。あの場にいたのは3万人ほど。倍の倍だ」

老齢の男が頷き、ミオが唖然とする。

「アルスラン将軍のその巨大な力は災害級に匹敵する。私も含め他国もまたその力に恐れをなしている。そしてその力は子供にも必ず半分は受け継がれる」

「ええ。実際港町で同じ現象をミオが起こしましたから。ただし、まだ未熟すぎたので死人はでず、気を失ったものしかおりませんでした」

「あ、の時、その、こ、混乱した、時の…」

「そうだ」

ミオが胸に手を当て、老齢の男が話す。

「力の制御についてはしっかり身につけていたほうがいい。実の娘である以上気をつけなければならない。母親の力のみではなくその父親の力を狙うものもいると言うことを常々忘れるな。そして、例え父親が殺したとしても戦は戦だ。戦により多くのものを無くすのは考えれば分かる。そして戦を起こしたのは父親も含めたアストレイ国。個人としての恨みようもあろう。だが、元は国が行ったこと。全てを背負うには難しい話だ。まして、戦争に加担していい娘に」

俯くミオへとゆっくりと丁寧に話す。

「その力さえなければアルスラン将軍は素晴らしい人物である。ただ、使えた者が間違いだった。その点が評価を下げた。もし別の王へと使えればこうはならなかった。だがもう過去の話。あとはあの国で生きていくしかない。そしてその将軍を扱う。いわば抑え込む王を誰にするかが一番の課題だろう。将軍の性格から突然災害級の力を使う事はないが、何かあれば使うかもしれない」

「その何かはミオも含みますから。娘ですし」

「そ、そう、したら、タイシさんも」

「俺はない」

「そうだな」

「ど、どうして、ですか」

「一番の理由として、葵さんの娘でもあるからだな。ナガハラさんの話じゃ相当1人の女性として好きだった。愛していたそうだ」

「愛して…」

ミオが驚きタイシが頷き、老齢の男が話す。

「葵については他の男達からの求婚を断りアルスランを夫にしたからな。それは今の鈴子以上だ」

「今の鈴子以上なら相当数か」

「ええと…」

鈴子が苦笑し、老齢の男がはあと息をつく。

「エイダはゼロだ」

「お父様…今関係ないのでは」

「女性として男性を立てられないから。生意気に見られるからでしょう?」

「貴方失礼なことばかり」

エイダがむすっとし、老齢の男が話す。

「その通り」

「でしょう」

「エイダはいささか人を小馬鹿にしてしまう」

エイダが鼻を鳴らし、老齢の男が話す。

「そして人を試せば事実を話す時と話さない時があるし多少話を偽る」

「小根が悪いと」

「私は失礼致します!」

バンっと音を立て苛立ちエイダが出ていく。ミオが汗を滲ませ、アレスターが複雑そうにする。

「お手紙通りの姫ですね」

ミオがタイシを振り向く。

「申し訳ない。本来、イーロンで起こった話は伏せておかなければならなかったのだ」

「え…」

「ミオさん」

ミオが鈴子を振り向き鈴子が話す。

「今のお話はね。貴方個人で知らないといけなかったお話なのよ。つまり、貴方が調べないといけなかったこと。貴方が貴方自身で知ろうとする意思を持ったお話になるの。貴方は多分自然と避けていたのだと思うわ」

ミオが口をつぐみ小さく頷き、タイシがやれやれとする。

「奥様。王妃様のご心配も分かりますね。そして命を狙われていることもあの様子でははっきりとわかっていないでしょう」

「ああ。どうにかならないだろうかとは思うがどうにもな。知識があり国のためにとよくしてくれるのはいい。だが、人を馬鹿にしすぎる性格がな。子供だからとてもう物分かりもわかる年だ。だからこそ、分かって欲しい」

アレスターが頷き、タイシが話す。

「教師の方も相当辞められたのでしょう?」

「そうだ。あの性格についていけずにな。どうにか出来ないかと困っている。そして、ナーシャから話を聞いて手紙を送ったわけだ」

ナーシャが頷き、マルクルが話す。

ー若はいつからナーシャがこちらのものだとお知りに?

「ここに来る前。手紙に書かれていた。ただし、ナーシャには知らされてなかった。だから、陛下と共に隠れていたんだろう」

「…そうだったのですね」

「ああ」

「勝手に諜報部員まで作って。本当に」

老齢の男が頭を抱え、ナーシャが申し訳なくする。

「その諜報部員によって他国から敵視されております」

「ああ。分かっているもの達は私が命じて引かせたが、また勝手に作って送っている…」

「それで暗殺者が送られてきているのですね」

鈴子が話し、老齢の男が頷く。

「そうだ。もうこちらの手に負えなくなってきている。だと言うのに本人はわかっていないから頭を抱えている。あの頃の素直さはいったいどこに」

老齢の男が頭をさらに抱え嘆き、タイシが突っ込む。

「成長すれば素直ではなくなりますよ」

「その、あのお年で見聞を広めすぎなのでしょうね」

鈴子が苦笑し、タイシがやれやれとし鈴子をみる。

「あの子煩い奴を教師にしたらどうだろうか?」

鈴子がふむと考えるとポンと手を軽く合わせニコッと笑む。

「そうね。身をもって知りそうね。あと彼女なら問題ないわ。打たれ強いもの」

「ああ。あと、似たもの同士ではあるからこそだな。多少なりと怖さを知ったほうがいい」

「そうね」

「…誰かいいものがいるのか?」

2人が頷き、タイシが話す。

「はい。ただし、あらかた許しを得でいただかないといけない者です。一応問題児ではありますが実力としては確かですから」

「ええ。あと、似た者同士です。彼女も知りたがりです。ただ違うのは言葉にしない事ですね」

「あとは自分で率先して行動するだな。危険を顧みずに」

「ただ、それはあの子が力があるから出来ることね。力のない姫でしたらどうなるか。今はお父様のお力で守られていますが、それを断ち切って仕舞えば」

鈴子が断ち切る仕草をする。

「どうしようと考えるはずです。怖いことも覚えさせるのは大切なことでありますし彼女がついていれば問題はありません」

「ええ。あと、あらかた勤勉もできるので明日教師としてここに連れてこさせます。それで手紙のご相談の件はよろしいですか?」

王が頭を上げわかったと頷く。

「ああ。ならこちらも迎える準備をする。それと、魔防石について。隠せる場所さえあれば問題ない」

「はい。あります」

「ああ。なら、購入したものをナガハラ医師へ届けてくれ」

タイシがはいと返事を返し、老齢の男が頷きミオを見て娘が申し訳ないと謝罪するとミオが暗くいえと答えた。


街の噴水広場の椅子で、タイシが買い物をしている間にミオ達が座り待っていた。そのミオが落ち込み、鈴子が隣で慰めていく。

「現実を知ると言う事は怖いわね」

「…はい」

「ええ。私の故郷でも同じことがあったの」

「え?あちらの世界で?」

「そう」

ミオが驚き、鈴子が話す。

「違うのは突然戦争が始まったわけではなく戦火中よ。その時に、二つの爆弾がそれぞれ一つずつ二つの都市に落とされたわ。一方は14万人。もう一方は7万4千人。その命が一瞬で奪われたの。そして、落とされた後もその爆弾の影響で病になり一万人程亡くなったわ」

「そんなに…」

「そう。だけどそれで戦争が終わった。そして、犠牲者は一般市民なの。その爆弾を作った人は激しく後悔し、上の方に自分の手は血に濡れていると抗議のようなことを発言してしまったが故、怒らせたのよ。そして、職務を辞した後はその職務さえも追放された挙句常に見張られる生活を余儀なくされたのよ。それは家族にも影響を与えた。その後、時が流れてまた彼の名誉は回復された後は、彼はお詫びをしに爆弾を落とした都市のある国へと赴いたの。でも、多くの命を消し去った都市には行かなかったわ。その後は病で亡くなったのよ」

ミオが頷き、鈴子が話す。

「貴方のお父様は確かに大勢を殺したわ。そしてその苦しみを今でも背負っている。一度王の命令で処刑されかけたのでしょう?」

「…はい」

「ええ。その時、多分苦しかったんじゃないかしら?大勢を殺してしまったことに苦しんで楽になろうとしたはずよ」

ミオが頷き、鈴子がミオの頭を撫でる。

「タイシさんから話は聞いたの。その時貴方が止めて欲しいと。助けて欲しいとアキラさんに頼んだって」

「それは、約束があるから…」

「ええ」

鈴子が手を下ろす。

「その約束もだけど、貴方のお父様の周りにはまだ死んでほしくないと願う人が大勢いるわ。戦争被害者もまたそうだと思うの」

「どうしてですか…」

「真実を知りたい。はっきりとした真実をよ。なぜ戦争が起きたのか今もまだ曖昧とした答えしかわかっていないからよ。貴方もでしょう?何のために宣戦布告なしで戦争が起こったのか。それを知るのはお父様と亡くなった王や他の重役達。そして関わった人達よ。その人達からはっきりと真実を聞きたいの。なぜと?貴方が疑問に思う事は他の人たちもまた同じなのよ」

ミオが頷き、鈴子が話す。

「約束ががあると言うのはお父様に会うための約束?」

「はい…」

「ええ。その約束はなぜ?」

「その、自分で、自分の足で国に入ってあって、ほれから、いろんな話をしたいからです。その戦のことも。母の事も…。何故は、疑問はたくさんあります。あるので、約束破りは、嫌です」

鈴子が頷き、ミオが表情を曇らせる。

「どんな事であれ、私が過ごした村の人たちはとてもいい人たちばかりでした。その人たちを母と共に失いました。そして、ユナの親も。子供までもです。なぜ、そこまでしなければならなかったのか。いろんな人からこうであったからと聞きました。けど、やっぱり聞きたいのは父本人の話です。村を襲ったのは父の部下の方々でしたから…。なら命じたのは父しかいません」

「部下ならそうね」

「はい…」

「ええ。そして、貴方のような考えを持つ被害者も大勢いるわ。だから、まだ死なれては困るの。そして、加害者として償うための行動をしなければならないわ。そのためにはまだ生きないといけない。生きることを続けさせないとだめ。2度と同じことがないために次の世代に伝えないと行けない。加害者としてよ」

ミオが頷き、鈴子が頷くと手を握る。

「ミオさん。あなたはたくさん重く考えなくていいわ。とにかく、知りたいことを知るためにお父様のところへと約束を守るために行きなさい。そして、貴方がすべきこととして私が言えるのは後世に伝えること。私の親族もまた戦争を起こしてしまったことを常に伝え続けているわ。それが国の代表としての責務でもあるし、二度と同じ過ちを起こさないように敵味方関係なく多くの人を守るために伝え続けているわ。親から子へ。子から孫へ。時が経つに連れ忘れ去られていくかもしれないけど、二度と過ちは犯しては行けない。戦争を起こしては行けない。戦争は敗者も勝者も苦しめるだけの負の遺産よ」

ミオが強く頷き、鈴子が話す。

「貴方もその被害者として伝えるの。苦しみはわかるわ。けどそれが戦争という悲惨な行為を繰り返さないためでもあるわ。貴方は知る事もだけど教える語り部として、人にわかりやすく教えるためにはどうすればいいかしっかり学んで旅をして。言葉をうまく伝えるためには言葉を知ることが大切よ。その為には知識を得て、人を見て、しっかり話せる自分になりなさい。あとは、焦らないこと。どんな時でも冷静に。落ち着いて。深呼吸をする」

鈴子がミオのほおを撫でる。

「相手の目を見てしっかり話した時は話さなさい。そして自分の話ばかりでなく相手の話も聞く姿勢を持つこと。共感し共感させることよ」

「はい」

「ええ。そして、重く思わない。思いすぎると貴方が苦しんで心が苦しんで病で体が思うように動かなくなるわ」

鈴子が手を引く。

「苦しいなら周りに言いなさい。遠慮はしなくていいわ。何が苦しいのかちゃんと言えばいいの。そうしたら、どうして苦しいのか相手にも伝わるわ。いいわね」

ミオが頷きはいと返事を返し、鈴子がふっと笑むとミオの頭を撫でる。

「ええ。あとミオ。私も苦しんでいたけれど、貴方が話してくれた家族がいるわ。だから、もしその時が来たら私はお祖父様とお祖母様の元に行くわ」

ミオが頷き、鈴子がええと返事を返した。

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