カルドア2
ーまずい。まずいまずいまずいくそっ。くそっ。
ゴブリン達がタイシ達を見た瞬間悲鳴に似た奇声をあげ一目散に雪原を走り逃げる。だが、突如大穴が開き今度は悲鳴をあげ穴の底の氷のツララに突き刺さり絶命していく。ヒカルが杖を光らせ、タイシが穴の底を見る。
「うまいな相変わらず」
「当たり前。それと、えーと、ここから見た感じ死者は2人」
「ああ」
タイシ達の視線の先に二つの首が雪原に転がっていた。ヒカルが歩き破かれた服を手にする。
「女性の服だね。まだ間に合うかも」
「ああ。なら、白夜」
ぬっとタイシの影から白夜が現れるとその服の匂いを嗅ぐ、
「久しぶり白夜」
『ああ。森の中です』
「分かった」
「いたあ!」
シータが箒に座り空を飛びその場にくる。
「シータ。変わらないな」
「…貴方には驚いたけど。後、何でまた2人が?ちょうど出ていくと見たから追いかけてきたの」
「ああなら、一緒に行く?シータは防御魔法や魔法防御が得意だからサポートお願いしたい」
「一緒にって」
「魔獣の洞窟。僕たちは僕の父。ナガハラからの依頼で魔獣を退治するだけ退治して死骸を集めないといけない。死骸は今後の医療と防具もだけど、僕たち魔法使いの魔法を底上げする力として使えるから」
「力の底上げとかはわかるけど…医療にも使えるの?」
「そう。まあ、そこは父さんしかわからない話し。イーロンにいて暇な時に魔獣を解剖して徹底して調べたら使えるのがあったらしくてさ。ゴブリンもそう」
「あのゴブリンで…」
ぶんと音が響くとタイシが投げられた棍棒を術で弾き、白夜が唸り牙を向く。シータが体をこわばらせ、ヒカルが楽しく告げる。
「オーガだ。あれはちょっと僕たちの力でも抵抗できるから来るよ」
「ああ」
森から耳の尖った三メートルもの大きさがある緑の皮膚にみにくい顔の魔獣が現れる。その手には首のない死体が掴まれていた。
「首だけ引き剥がして食べてたんだな」
「…あそこに転がってるの?」
「多分ね」
オーガか叫び雪原を力強く走る。
「ひっ」
「きたきた」
「温存しとけ」
「分かってる」
タイシが宙から槍を掴み出すとああと答えその槍を投げる。オーガが胸元に突き刺さろうとした槍を掴み止めるも槍が突如回転し風を纏う。オーガが歯を噛み締め汗を滲ませ必死に食い掛かり、シータが驚愕する。
「あれは」
「魔槍。しかも風の加護を受けてるし、なんか強くない?」
「龍の鱗を使っている」
風がかまいたちへと変わりオーガもだが後ろの木々を切り裂き薙ぎ倒すと魔獣達が切り裂かれたり吹き飛ばされ木々の下敷きになったりする。ヒカルがうわあと声を出し、木々が倒され切り開かれた道の先を見る。
「すごいなあ。さすが龍の力。あと、ちょうど道ができてよかった」
「……」
「よし。なら行こう」
「分かった。シータ。ここまできたなら着いてきて」
「わ、分かったわよ。でもせめてガイに心配させないように手紙だけ送るから」
「いいよ」
シータが2人の後を追いつつ鳥を呼び手紙を急ぎ歩きながら書くと手紙をとりに咥えさせ運ばせ2人の後を追った。
20分後ー。
「すっげえ」
「一体何したらこんな事に」
「こっちもだ」
大穴の先の氷柱。そして、切り開かれた森をサラの軍人達がみていく。ナガハラが早速回収された死体の死因を見ていく。
「首と体が引きちぎられた事による失血死だな」
「その周りの傷が原因とかは…」
「これは後でできたやつだ。生きたままこいつは力一杯引きちぎられた」
軍人達がぞっとし、ナガハラが運ばれたゴブリンの死骸へと向かう。だが、1人の軍人の剣を突如奪い取りゴブリンの喉を突き刺すとげええと声が周りに響く。
「ゴブリンは案外タフだからな。死んだふりもいるから喉切っておけ」
「は、はい」
「ああ」
周りがすぐにゴブリン達の首を剣で突き刺し、ナガハラが死骸はそりにのせて運べと命じた。
ヒカルが毛布に包んだ女を抱き上げ出した転送魔法の元へと向かうと中へと入る。その間に2人が待ちシータが後ろを見てほぼ白骨化しているかろうじて女の死体とわかる二体の死体と共に死んだゴブリンと幼いゴブリンの死骸達を見る。
「その幼いゴブリンの母親たち、よね?」
「はい。その可能性はあります」
「ええ…でも、まあ、複雑でもあるわね。子供ゴブリン」
「確かに子供です。けれど、危害を加える。ただそれは人も同じ。お互いにお互い命懸けですから」
「…そうね」
ヒカルが姿を見せると転送魔法を解く。
「お待たせ。なら先に進もう」
「ええ」
「ああ」
三人が洞窟の入り口に近い場所。ゴブリンの巣穴を通り過ぎ奥へと進む。シータが恐々とし、タイシが灯を灯しながら周りを見る。
「違和感あるね」
「ああ」
「違和感?」
「はい。俺たちが見た洞窟の地図と地形が変わってます」
「というより、通常に掘られてる感じもするし、魔素が噴出したにしては感じない。何かありそう」
「それって…」
タイシが止まり灯りを消す。シータがドキッとしヒカルが目を赤くさせる。
ー人の気配。奥だ。
ーえ?
ー行こう。
タイシが進み、ヒカルがシータの手を自分の肩に乗せ進むとシータが怖がりながらついていく。そして、長方形の形の光が見え始めるとシータが扉と思い、タイシがノブを掴みそっと開く。その開いた先でかんと甲高い鉄と石を叩く音が響き渡る。シータが目を見開き鎖付きの枷をつけられ働くドワーフと痩せかけた人間達を見る。そして、ところどころ屈強なもの達がムチを手にし見回りをしており、シータが汗を滲ませ、ヒカルがやれやれとする。
「なるほどね。戦争孤児や敗戦兵に異界人。そして、ドワーフ。これらを使って裏ルートで稼いでるわけか」
「そんな…」
「魔獣の群れはカモフラージュ。消してたのはギルド長を中心とした連中だな」
タイシ達に男達が気づく。
「きたきた」
「大志じゃないか」
タイシがうんざりとし、逃げた自分の叔父を見る。
「成長したなら。ここで」
「知り合い?」
「叔父だ。時間差で流されてここにきた」
シータが驚き、ヒカルがやれやれとするもすぐに斧を結界を使い防ぐ。シータが驚愕し斧が結界に弾かれ元の持ち主の手元。ギルド長に戻る。
「おいやめろ。まだ話途中だ」
「黙れ異界人」
「あっちは僕が相手するよ。ギルド長。タイシ達が如何あれ相手したらまずいでしょ?」
「ああ」
ヒカルが楽しく下へと降りる。シータが戸惑い、タイシが話す。
「おじさん。悪いがさっさと捕まってくれ。これは如何あれ身内だから言っておく」
「お前も偉くなったな。ここで」
男がからかい、タイシが話す。
「ああ。向こうでは邪魔ばかりさせられたからな。あんた達に。ただここでもだ。けれど、ここでは俺の味方が多い」
「よく言うな」
「あんたは何がしたかった?あそこでも俺に」
男が飄々と話す。
「俺を捕まえたら教えてやるよ」
「へ?」
シータが声を出し一瞬で男の元に移動したのがわかるが男もまたすぐに結界を張り防ぐ。男が汗を滲ませ、タイシが汗を滲ませ固まったシータを脇に挟み剣を抜く。
「怖い怖いだ」
ドワーフやその場にいる枷をされた者達が怯えていく。タイシがシータを下ろしシータが座り込みタイシもだが、ヒカルも見る。
「や、やるなら、さっさと…」
「もうやったよ。俺が」
「え?」
ムチを持った者達が糸が切れたようにその場に倒れていく。ギルド長が周りを見渡し、男が首を撫でる。
「怖い怖いだ。ガスか」
「当たり。タイシのおじさん。意外とやる方?あそこであの場でも1人だけ逃げたから」
「お褒めに預かりだ。ただ、俺もまだやりたいことがある。残っている。おい他に構うことはできない」
男がオリハルコン原石を見せる。
「オリハルコンっ」
「ああ。後悪いな。ここらの鉱石はあらかた掘った後でな。それと、表ではギルド長しているそいつがこの地下の楽園を作ったと話しておく」
「きっ、さま!」
ギルド長が怒り声を上げ、男が話す。
「まあそう言うわけだ」
突如地面が盛り上がり人の顔をさせた死徒が姿を見せる。シータが目を見開き、ヒカルもまた驚く。
「貴様逃げるつもりか!」
「勿論だ」
死徒の肩に男が乗るとタイシをみる。
「追いかけてこないのか?」
「おじさんはそのオリハルコンに用があるだけのようだからな」
「その通り」
『うだうだ喋ってないで行くぞ』
「分かったいけいけ。じゃあな」
死徒が男を連れ再び地面に潜る。ギルド長が顔を真っ赤にし震えヒカルがやれやれとし杖を光らせギルド長を向く。
「じゃあしよっかー。雑魚」
「なめるなこぞおお!!」
ギルド長が立ち向かいヒカルが目を赤くさせながら不敵に笑った。
ー雑魚。
ナガハラや軍人達が洞窟から保護したドワーフ達を暖かくさせた荷馬車に運び飲み物などを出していく。サラがその発掘場所へと足を踏み入れるとタイシが軽く頭を下げ、ヒカルが切られた頬を鏡で見ながら消毒をしつつサラを見る。
「きたきた。サラ姫。悪玉菌は一応生かしてます」
「ああ」
サラが止まり軍人達が血に塗れた岩壁に力無くぶら下がる両足を見上げる。シータが青ざめ縮こまり、サラが告げる。
「下ろして拘束しつつ治療だ。おい。尋問は?」
「終わってます。戻ったら鉱石の行き先話します」
「ああ。あと、あのちびは如何だった?手こずったか?」
「ちょびーっと。いてて」
ヒカルがひりひりする頬にガーゼを当てテープで止める。
「ちょびっとって…。ていうか、あなた魔術師でしょう…は?」
シータが告げ、ヒカルが話す。
「見習いだって。まだ習って2年。その前までは剣とか格闘とか母さんとそのお友達相手にしてたから。ラドンとか」
軍人達がざわっとし、シータが口を引き攣らせる。
「俺の後だから知らなかった」
「いやその前からだから。だから、言えば俺が兄弟子。タイシは弟弟子。でも、筋は弟弟子がいいって言われたから負けないように魔術習うようにしたの。ちぇー」
ヒカルが悪態をつき、タイシがふざけたりするからじゃと告げるとヒカルが口を尖らせふんと鼻を鳴らした。
ミオがちくちくする左胸の横のガーゼが貼られた部位に触れると少し騒がしい外の音をなんだろうと気にしながら聞きベッドから足を出しスリッパに履き替え降りる。そして窓から下を見ると驚き運ばれる保護されたドワーフや人々を見て離れ部屋を出た。
「すまんな」
「なあに気にするこたない」
「レオナルド先生。包帯ありますか?」
他の医師が尋ね、ルナが急ぎ倉庫へと向かう。
「あります。後で城からも運ばれてきます」
「分かった」
「スープできたわ。処置が終わった人は食べて」
街の女達がスープを運ぶと子供達や大人達とが暖かく消化がいいように柔らかく煮込んだ野菜スープを注いで行く。
「これ、エビとかは入ってませんか?」
金髪の男がおずおずとたずねると女がきょとんとする。
「その人の体に害を及ぼすようです。鍋にも使われてませんよね?」
「はい。第一海のものですからこちらには回ってきませんし。なので入ってませんよ。野菜だけでしか作ってません」
男がほっとし頷くと野菜スープを受け取り早速移動しその場に座り食べるとじんわりと涙する。
ー人の体に害を?確か、お母さんも話してたな。
「ちょっとダメよ。お部屋戻って」
ミオがドキッとしルナがやれやれとする。
「えと、その、すみません。ええと、でも私動くことは」
「だめ。手術してんだから安静。後人で足りてるからいらない」
「…はい」
「気にしてもこないように」
ミオがしょんぼりとしはいと返事を返し部屋へと戻った。
夜ー。
ー俺はアメリカから。
あの金髪の男がタイシへと話し、タイシが頷くと褐色の肌の髪を隠した女が告げる。
「私はイスラムからよ。ただ、その前に奴隷として捕まってここに運ばれたわ」
「こっちは中国だな。森で竹を切っていたらここで騙されて捕まったんだ。はあ」
若い男がため息し、イスラムの女が話す。
「ここの人たちに?」
「ああ。もう元の世界に戻れない。ここなら戻る方法があると言われてついていったばっかりに…。もう、やっぱり戻れないんだな」
若い男が悲しみの表情を浮かべ、金髪の男が話す。
「その、俺は、戻りたいとは思わない。ただ、あそこで受けた同じ扱いを受けようとも思わない。俺の家族は麻薬に暴力、殺人と多くの犯罪に手を染めていたからな。俺の弟も薬物中毒になって死んだ。俺は、そう。もう嫌になって海の中に入ったんだ。崖から落ちて自殺して。でも、起きたら砂浜で生きてしまって……。彷徨ってたら捕まった」
金髪の男がずうんと落ち込み女が背を叩く。
「豊かな国でも家庭がそうなったらおしまいね。私のところは必死に生きてたけど家族はみんな殺されて私1人残って奴隷。私は戻ったとして故郷もないしあそこは戦争。戻ること自体無理ね」
「こっちは戻りたい…。弟も妹もいるし。母さん達もだ。でも戻れないよな?」
「今まで戻られたと言う方は聞いたことがありませんし、何度か試そうとされた方もおりましたが失敗に終わってます」
「そうか……」
「私やあなたは帰らなくてもいいと言う考えだけど、この人みたいに帰りたいと言う人も今までいたんじゃない?保護された子の中には?」
「飛ばされてきたのはここにいる俺たちと後は五歳の双子です。双子の方はまだ生死の境を彷徨ってるとのことでした」
「そんな…」
「あの子達だな。餓死しかけていた」
中国人の男が話、金髪の男が告げる。
「無事を願うしかない。あと、俺とこっちの女の人は向こうに帰りたいとも思わないし帰る場所ももうない。ただ、こいつはあるから、まあ、なんと言うかそっちも流されてきて長いんだろう?」
「ええ。俺はちょうど10年です。心残りは育ててくれた祖父達です。実の親や家族からは見放されてます」
「そうか」
「俺は、実の親はいないな。育ての親で俺は誘拐されて売り飛ばされた子供だ」
「え?」
「養子なんだ。物心ついた時には売られていた。両親は高値で俺を買って育ててくれた。子供ができない両親だからだ。そして、また2人弟と妹。こっちは育てられなくなった村の若い夫婦から預かった子供達になる。ただ、その夫婦も逃げてどこにいったかわからなくなったから、如何しようもなくなった。それでとか。俺の両親は俺やそんな兄弟達を育ててくれて学校にも出してくれていた。家族としての仲はとてもいい。俺は学校卒業して働いて案を返したいと思ってた矢先に」
男が頭を再び落としずうんと落ち込む。
「最悪だ…。戻れるならまた家族や村に。元の場所にもどりたい」
金髪の男が涙する男の頭を撫でる。そこにヒカルがやってくる。
「えーと、お疲れ。どんな感じ?」
「元の世界に戻りたいのが一名。あとの2人はとどまるそうだ。家も家族もないからとのことだ」
「ええ」
「その、俺は嫌になって海に身を投げたらここだったからな…」
「あー、俺の父親は飛行機事故にあって流されてここです。やっぱり海がヒントかな」
「海がヒント?」
「もしかして、戻れる?」
男が顔をあげ、ヒカルが話す。
「んー、実験しながら。調査しながらだから。名前何?」
「リュウヤオ」
「リュウが苗字。ヤオが名前だ」
「分かった。なら、ヤオは魔導局で保護するよ。その間魔導局で手伝いして。あと戻れるかはまだ調査とかをして確信が得た時だから。まだかまだかと期待はしないで」
「…わかった。でも、少しでも希望があるなら我慢しよう」
「よし。そうしたら他2人については留まるって話だから、ここのー、ギルドはーどうなんの?」
「アストレイに向かわせる。ハリーを呼んで。そしてここのギルドについては一旦解体。必要ではあるから体勢を整えてまた再興させる予定で行くことで決まった」
「分かった。ギルド長以外にも協力者がいたからね」
「ああ。そしてまだいるかもしれないだ。今、シータさんに伝えてハリーを呼んでもらっている。明日になったらくる予定だ」
「分かった。なら、こっちも移動は明日だ。今日のところはここで休んで。それじゃまた明日」
ヒカルが手をあげ出ていき、ヤオがしょんぼりとし少しの希望でもと呟くと金髪の男が頷き慰め頭を撫でた。
ー夢。
ー心。
痩せかけた2人がベッドに横たわりか細い息を吐き出す。その2人の間にエリスが座り2人の手を握り力を分け与えていた。
ー少し、意識を取り戻しましたね。
「こ、ろ、いる」
少女が僅かに目を開けエリスの手を握り返すとエリスを見る。
「だ、れ?」
「心さんならここにいます。お水飲まれますか?」
少女が小さく頷きエリスがはいと返事を返し術を使い水の入った吸飲みを引き寄せ少女の各地に近づけさせると生じ屋が咥え砂糖など入った水をゆっくりと飲むと吸飲みが離れた途端再び目を閉じ眠りについた。
少しの時間ー。
ナガハラがレオナルドと共に医療についてあちらの医療用語を使い話していた。そして、この世界についての医療の話になるとレオナルドが魔獣について尋ねる。
「持って帰ってきたモンスターの死骸。あれらについてはどうされるのです?」
「細胞を調べる。ここでいちおう電子顕微鏡まではあるからな。奴らの回復力は俺たちと違って底なしのやつもいる。その細胞を使った再生医療ができると思って前から持ち帰っている。現に、目の移植手術の際に使う薬にその細胞を使って移植をすれば視力の回復が早い」
「そうなのですね。あと、移植を?」
「ああ。元々俺はそっちの分野だからな。死体の解剖も行ってきた。向こうで地味で嫌な奴は全部」
ナガハラが舌打ちし苛立つ。
「俺に回ってきたからな」
「そうなのですね…」
「ああ。まあいい。できることが増えたからな。それに、如何あれ評価をしてくれる奴がいたからこそ俺は海外に行くこともできた」
「それはアメリカとかに?」
「ああ。世話になった教授の推薦で。ただ、その時に事故にあっておじゃんだ」
「そうだったのですね」
「ああ。しっかしやつもやっぱり犯罪に手を染めてたか。知ってはいたが口止めされていた。消されていた。証拠を丸ごと」
ナガハラがやれやれとする。
「だが今ここにいたところで関係はない」
「確かに。ただ、息子さんがいたことには驚いてしまって。似ておりますし」
「息子だからな。だが性格は正反対だ。親の犯行と祖父の育て方が良かったにすぎない」
「そうですね。彼についてお話は聞いてますから。母や妹から」
「ああ。あの小僧は女にモテるからな」
「失礼しますっと。父さん」
ヒカルがその場にくる。
「なんだ?」
「兄さんがここに派遣されてくるってさ。依頼で」
「ああ」
「息子さんが2人?」
「ああ。1人は悪魔の騎士とか異名がついている」
「仮面で素顔を隠してましたから。ちなみに俺は女装して過ごしてました。今は汚名返上されましたけど母が当時4大魔獣の一体に数えられてましたから」
「ええ。記事を見てしってますが、話を聞くとさらに実感しますね」
「あはは」
「女装はお前の趣味だろ?」
「違うし。まあとにかく、明後日来るって話」
「わかった。ならあいつがいるなら魔獣集めも楽だな」
「死骸でしたね。もし時間が取れれば私も調べてもいいですか?」
「ああ。別に構わない」
レオナルドが嬉しくはいと返事を返し、ナガハラが頷き答えた。
ーはあ。疲れたもんだ。
オリハルコンを手にした男が扉を開け中へと入ると机に突っ伏したリュウの頭にオリハルコンを置き茶を入れる。
「ごくろー」
「お前もな」
「さいとーお帰り。まだその姿?」
切断された片腕がまた元通りに生えたリーンが中へとはいるとサイトウが話す。
「ああ。暫くはこのままだ」
「タイシ君にバレないためにもね」
「ふーん。あっ。とってきたんだ」
「ぎりな」
サイトウが入れた茶を飲み、リーンが楽しくオリハルコンに触る。
「それで足りるか?」
「んー、まあ、やってみないとわからないと言う量だね。とれなかったの?」
「ああ。ほとんど奴らがとってしまっていたからな」
「ちぇ。残念」
「また僕がルート探してなんとかするよ。でも大事に使ってよね」
「分かった」
「サイトー。リュウ。客よ」
アドリーナが中へと入りよける。そこにランカスターが入るとリーンが話す。
「ヤンガルの元英雄。まだ王様逃げてるから?」
「その通り。で?おたくらがこそこそ何かしてるからきてみたんだよ」
「君結構覗き好きな子かねー」
リュウが顔をあげ、サイトウが話す。
「で?なんできたんだ?」
「目的が軽く似ているからな」
サイトウがやれやれとしリュウが話す。
「んー、まあ、邪魔しなければいいよ。ただし、君の体少し調べさせて」
「やめろ変態」
「そう言わないでよ。あと、いやらしくベタベタ触れたりしないから。血液検査。血の採取。君は蘇った子だからね。血を調べるだけでも役立つ情報がわんさかあるからね」
「ええ」
「分かったいい」
ランカスターが答え、リーンがそうしたら早速とると告げ隣の部屋に来てねと話した。
カルドアー。
ノーラがうずうずとしながら雪原用の馬車に乗り座っていた。その目の前にアキラが足を組み座っておりアキラがノーラへと話す。
「まだかまだかと待ち望んでいるな」
「え?あ、ええと、あっ」
アキラがノーラの手を握り引き寄せ自分の膝に座らせるとノーラが顔をかあと赤くしあたふためく。
「ア、アキラ様」
「嫉妬するな」
アキラがノーラのほおに触れ顔を近づけ口付けをするとノーラが顔をさらに真っ赤にした。
「外は寒いのに中は熱々ですね」
「しっ」
「黙っていた方がいいぞ」
「ああ。彼の方は結構聞こえるからな」
外で馬車の警護をする騎士達がこそっと話、先頭をいく騎士団長が前方を走ってきた馬を見る。
「弟君だ」
ヒカルが馬にのり近づくと今度は騎士団長の隣で止まり反転し横付けしながら進む。
「お久しぶりです」
「久しぶり。この先はこの間の魔獣との戦闘で荒れてるから迂回して国に入れるように俺が案内するよ」
「わかりました。お願い致します」
「うん」
「ヒカル」
ヒカルが再び馬を反転させ馬車に乗るアキラの元へと向かうとまた反転し並ぶ。ノーラは元の席に座り顔を赤くさせ俯き、アキラが淡々と話す。
「父さんは?」
「いるよ。大量の魔獣と腕のいい若医者がいるからお互いに話したりして過ごしてる。暫く留まるみたい」
「分かった」
「うん。あとこの先この間の魔獣との戦闘で荒れてるから迂回路案内するよ。馬車じゃ流石に厳しいからね。団長にも伝え済み」
「分かった。なら頼む」
「いいよ」
ヒカルが先頭へと行き、ノーラが話す。
「ヒカル様とお父様がこられておいでなのですか?」
「ああ。父さんも勤勉であり好奇心でありか。調べること。自分でやれるところまでやることが好きだからな。口で文句ばかり言うがそれでも放っておかない性格でな。死んだ母さんもそこに惚れたそうだ」
「そうなのですね」
アキラが頷き窓を閉め、ノーラが話す。
「お父様はお母様の事をどう思われていたのでしょう…」
「わからない。ただ、血の繋がりのある俺たち兄弟を大切にしてくれている。それは母さんもまた同じことだ。この先も同じだ」
ノーラが頷くがアキラが引き寄せると再び顔を赤くさせる。
「この先というのはわかるか?」
「え?え、と」
ーまさか。
ノーラがかあと顔を真っ赤にしあたふためくとアキラが僅かに笑みノーラを抱き膝に乗せノーラが顔をより赤くさせた。
ー良性。
ミオがほっとし、レオナルドが話す。
「手術で全て取り除いたから心配ないよ。ただ、お母さんが病が元で亡くなられたなら用心はいるかな」
「はい。あと、その病はどうやってわかるのでしょうか…」
「触診。それから目で見てだね」
レオナルドが絵を見せる。
「こっちは皮膚の病。ほくろかと思ったらしいけど実際は病だった」
「これが、ほくろ?」
ミオが異様な模様の黒い絵を見る。
「自分の体の違和感に気づくのは中々わからないんだ。だから、見つけないといけない。そしてこっち。君は良性だったから良かったけど悪性だった場合の感触がこれだ」
レオナルドが上半身の模型を出すとミオがタジタジとする。
「ドワーフの人に作ってもらったんだ。胸の下。この辺りを触って」
「は、はい」
ミオが手を伸ばし触れるとこりとした感触を捉える。
「触りながら自分の体のここと同じ部位に触ってみて」
「はい」
ミオが触り目を丸くする。
「硬い。あと、小石に似たものが…」
「そう。これが悪性の病になる。寮生の場合は柔らかくて体内にいずれ溶け込む。だが悪性は留まり続けて蝕む。悪性の人はみんな共通してこの小石みたいなゴリゴリとしたものがあるんだ」
「そうな」
「何をなさっているのですか…」
ミオが後ろを向き、レオナルドがん?と声を出すとエリスが徐々に殺気立ち睨んでいるのが見えた途端体をこわばらせた。
エリスが気まずくしナガハラが呆れながら座ったエリスの前に立つ。そこに気絶させられたレオナルドとやれやれとベッドに母親と運ぶルナ、落ち着かずオロオロとするミオといたがミオの頭を叩く。
「うるさい。そこいろ」
「は、はい」
「まったく。いきなり理由も聞かずに眠らせて攻撃をしようとするな。だいたいこいつがアホ医者ではないと分かってただろうがバカ」
「はい…」
「まあ、あの模型は確かに少しリアルが過ぎますもんね」
「医療ではあれくらいリアルの方がいい。バカみたいな造形物よりその体の形に近いものの方が説明もしやすい。だいたい俺のところにもあるからな」
「あるんですね。はあ」
「うんともすんとも言わないわねこの子」
「そのまま寝かせとけ。どうせそいつは寝てないんだろう」
「はい」
「それはいいのですが…診察に来られた方とかは」
「今日は俺がみる。お前達も休め」
「え?」
「このエルフがお前達の代わりをする。精霊を使えるんだベッドメイキングとかもの運ぶのにはもってこいだ。何かあればの非常事態もすぐにわかる。責任取らせろ」
ー休み。それも久しぶりに。
ルナがウズウズしながら母親をチラリと見ると母親が苦笑してみせた。
「半年ぶりの休みだー」
普段着に着替えたルナが嬉々としながら早速友人の元へと駆け足で向かい、こっちもたまにはとルイーズとルナの母が病院から離れ遊びに出かけた。
エリスが反省しながら病院にてナガハラの手伝いと精霊を使いベッドシーツなどを変えているのをやってきたタイシが見ていき、ミオがタイシに説明をするとややしゅんとする。
「それでか。まあ、見慣れてないだろうけど一応医者で信頼して預けたからな。あと、乳がん患者の模型があったんだな」
「はい。ええと、ご存知ですか?」
「ああ。俺がいた世界の故郷の国じゃ女性によくある病気の一つだし知識の一つとして当たり前の事だ。子供でも知っている。教えられるからな」
「そうなんですね」
「ああ。子供でもなるし、男でもなる。だが一番は女性。早く見つけた方がいいし、自分で触診して見つけられる病として知られている」
ミオがほうほうと頷く。
「一応この世界でも結構ある病だ。ただ、その知識が浸透している訳じゃないから知らない方が多い。そして遅れて悪化する。アストレイでもがん患者の中じゃ多い。あとは消化器官。大腸だな。それは食生活の影響が強いから貴族が多い。好きなものしか食べない生活からなりやすいんだ。いえば、肉もしくは魚、パンに野菜に果物とバランスよく食べるのが一番だ」
ヒカルがそばでじいーとその話を聞き、タイシが気にせず話す。
「それを肉だけ。甘い果物だけだとがんにもなるが病にもなる。あと酒の飲み過ぎも注意だ」
「はい」
「この子お酒飲むの?」
「飲まない。アキラさん連れてきたんだな」
「うん。今宿に行ってる。なんの話?」
「病についてと普段の食生活でも病になるからという話だ。なんか、エリスさんがレオナルド先生に催眠術かけて眠らせたそうだ。原因は乳がん患者の体をリアルに作った人形をミオが触って勘違いした」
「あー。リアル人形ね。魔導局の医務局にもあるよ。一緒なら確かに女体にリアルに作られてるやつだから勘違いはしそうだ」
「えと、あるんですね」
「あるある。実際に治療中の患者もいたりするから。あと、見たことないなら仕方ないとしか言えないかな。守らないとって一心でやった行為だから」
「ああ」
「えと、その、私も、どうしたらいいか」
「いやどうにもしなくていいよ。遊んできたら」
「遊び…と言われてもどう」
「ノーラさんが来ているから行ったらどうだ?」
「そうだったそうそう。会うの楽しみにしてたんだったよ。案内するからついてきて」
ミオが頷きはいと返事を返し、タイシがユナはエリスさんもいるから心配はいらないと告げるとミオがはいとまた返した。
ーあ。
ノーラが嬉々としミオが近づくとお互い微笑み手を握り合う。
「お久しぶりです。お元気そうで良かったです」
「ノーラさんも。こんな場所で会えるなんて思いもしませんでした」
「私もです」
「はい。あと、アキラさんは?あの時のお礼をと思ったんですが」
ミオが周りを見渡すと護衛の若い騎士の男が話す。
「こちらの国の陛下と謁見です。アストレイ元王女で、こちらに嫁がれたサラ王女と仲がいいとのことでしたから」
「そうなのですか?」
「ええ。話では主君の父君が幼少期の頃のサラ王女のお世話をしばらくされていたとのことでした」
「ナガハラ先生がですか。初めて聞きました」
「父さんはあまり話さない人だからね」
ヒカルが告げ、ミオが話す。
「ヒカルさんはご存知でしたか?」
「全部は知らない。ただ、兄さんが本当物覚えがつくかつかないかくらいの時に一緒に生活してたってのは兄さんから聞いたかな。どんな生活していたのかは俺は生まれてないから知らないし兄さんもあまり語らない人だから」
「そうなんですね」
「ああ。ま、そこは父さんに似たね。あと」
ヒカルがノーラを見る。
「兄さんはちょうど良かったな」
「え?」
「俺たちのことが分かってから今他のところから声かけあったり、婦女子たちの熱のいりようといおうか。あと、兄さんずっと我慢してて素顔を見せてからは中々ね」
「ええ。ナガハラ医師もですが、やはり母君であらせられたアスクレピオス様の美貌を受け継がれておいでなのでよく見られるようになりましたね。女性の方々に。言い寄られることも増えましたし」
「俺も。魔導局はいいとしてやっぱり貴族の女性陣だ。恐ろしい」
「薬を使う時もありますから。でも魔導局でも使いそうですが?」
「魔導局はふざけてるようなものだから問題なし。だけど、貴族となるとちょっとしたことで騒ぐでしょう?それが俺は嫌なんだ」
「確かに」
「あと基本ねちっこいし。金や地位でものいわせたりする場合もあるから好きじゃないんだ」
騎士があーと声を出し、ミオが話す。
「髪を触ったから結婚させられたという男性の方もいると聞きました」
「そお。基本触れるの禁止なんだよ。貴族の女性は。だから扱いが難しいわけ。で、ノーラ姉さんの場合」
「え?」
「まだ、仮面つけて怖がられたり嫌われたりしてた時だから文句言おうにも言えない」
「はい。あともう正式に婚約されましたので。まあ、諦めが悪い方もいますがそれでも少ないかと私自身は思います」
「少ない少ない。それに、母さんが気に入っただけの事はある」
「えと、そうですか?」
ヒカルと騎士が強く頷きノーラがしどろもどろとする。
「だって、生活できるだけの力あるし。料理洗濯身の回りの整理に細かな気配り」
「わかりますね。あと、図々しくもないと申しますか」
「つまりはわがままじゃない。ひどい時は本当手に負えないくらいのご令嬢もいるから。あと、父さんも気に入ってるしさ。口には出さないけどね」
「私たちもですね。メイド達もですから」
ノーラが顔を赤くしあたふためく。
「そ,そんな事」
「私もです。ノーラさんはとてもお料理も上手ですしお話しして楽しいです」
「そうそう。独学で学んできてるのが偉いしけっこういろんなことも知ってるしさ」
「そうなんですよね。あとなんだってあの主君を手篭めにされてますから」
「て、手篭めまではっ」
「いえいえ、その間こちらも」
騎士がすーと冷や汗を流し固まりノーラ、ミオがその騎士の後ろに立つアキラを見る。
「あ、手篭めにされてる兄さんお帰り」
アキラが無言で騎士の襟首を掴み引きずり連行するとヒカルが手を振る。
「ダルメシアンがんばれー。あ、お茶しに行く?ここの国に俺も何度か友達と遊びきてお茶したことあるから。美味しいとこ知ってるから行こう」
「あの、でも」
「問題ない問題ない。いこいこ」
ノーラがしどろもどろとし、ミオが気にしつつヒカルに押され宿から出た。
暖かい暖炉の前でミオとノーラがお茶を飲むとホッとする。そしてヒカルがパイを持ち奥から出てくると老婆もまたやってくる。
「あなた男の子だったのねえ。驚いたわ本当」
「騙しててごめんごめん。これからもよろしく」
「はいはい。なら、お嬢さん達。お茶に合うお菓子よ」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「いいえ」
「ハリーの大叔母さんの家のお菓子美味しいんだよね」
「田舎のお菓子だけどね。あと、ハリーたちは元気?」
「元気。シータも来てるよ」
「ええ。会いに来たからお菓子を持たせたわ。まだ従姉妹から追いかけられてるそうね」
「んー、まあ、そうなるね。捕まったら多分見合い話で連れまわされるだろうから」
「ええ」
ヒカルが頷き切り分けたりんごのパイを食べると2人もとしめし、2人が皿に乗せフォークを使い食べる。
ー美味しい。香りがとてもいいし、味も少し甘い。
「甘いお茶ですね」
ミオが告げ老婆が話す。
「ええ。乾燥させたりんごを入れたお茶なの。そのパイにも使われているから一緒に飲んで食べてみてちょうだい」
「はい」
「リンゴというのですね。初めて食べました」
「私もです」
「え?」
ヒカルが目をぱちくりとさせる。
「2人とも食べたことないのリンゴ。けっこうどこでもあるけど」
「そうなんですか?」
「私は…見るだけでしたので」
ノーラがぽつりと告げ、ヒカルが話す。
「姉さんの家は姉さんを除け者にしてたからか。ミオのところは生産地でなかったし、そうだね。思えば確かにリンゴ売ってるのは貴族かこのあたりくらいだから。この国はリンゴに力を入れてて他の国に輸出しているんだ。つまり、りんごの一大生産国になるね」
「そうよ。リンゴにも種類があるから時間が経つごとにいろんなリンゴが変わる変わる味わえるのよ」
「そうそう。今はサンゼリとマリシャカっていう品種」
「どれだけの種類があるんですか?」
「ええと、ここだけで40は超えるかな。品種改良っていって、人工的に違う種類のりんご同士を作り合わせた新しいリンゴとかもあるから。だから種類も多いんだよ」
「ええ」
「ここにいたー」
ハリーがその場にくるとヒカルを見て顔を顰める。
「まだ慣れてない26号だ」
「なにが26号だよ。ハリーだからハリー。大体詐欺だよ詐欺。慰謝料請求する」
「えー仕方ないだろう。正体を隠すためにはだし」
そこにアキラがくるとハリーがどきりとし横にどけ、老婆がうっとりとし話す。
「公爵。大変お久しぶりです。仮面を外した方が素敵ですねえ」
「なにうかれてんだよ大叔母さん……」
「ヒカル。悪いがノーラを夕方まで見てくれないか?」
「別に構わないよ。理由は?」
「ああ。サラ姫との今後の鉱石の取引だ」
「あー、そっか。わる達に採り尽くされたから」
「ああ」
「分かった。なら夕方。暗くなる前に宿に送る」
「ああ。よろしく頼む」
ヒカルがオッケーと返しアキラがでれでれする老婆に頭を下げその場を離れでていく。
「…なんか妙な気配させるから怖いんだよなあ」
「そう?」
「いたああ!!」
黒髪の女が声を上げ突然くるとミオ達が驚きヒカルが目を丸くし老婆が話す。
「あら元気な子が来た」
「え?」
「異界人の子よ。2年前にここに迷ってきたの」
「ちなみに詳しく言えば聖女と言われてアゲアゲされてたんですけどー、自分の好きなことができなかったんで逃げてきました。イーロンってとこから」
「またよくそこから逃げられたもんだ。しつこかったんじゃない?」
「亡くなった方には悪かったですけど戦争がちょうど始まったんで良かったですよー」
「ナナオ」
タイシがやれやれとし、ハリーが話す。
「あ、やっぱり知ってた?」
「ああ。あと、ヒカルのかと話したら走り出したからな」
「だって、女装したイケメンってキャラいいじゃん」
「キャラ?」
ナナオがデレデレとするとタイシが話す。
「一応じゃないがその戦争の時に捕まっていたりしていた奴隷達の多くを解放をした子でもある。年はミオと一緒だ」
ミオが頷き、タイシが話す。
「それで保護しようとしたらいつの間にか消えていた」
「どうせこの世界で生きるなら自由に生きたかったから」
「桜の次に変わり者だと俺は思っている」
「やだなあ。変わり者なんてそこら中にいますって」
ナナオが手を振りペンとメモを取るとハリーが告げる。
「何すんの?」
「何って話聞くんですよ。私こう見えて魔道局北側広報所属ですから」
「そうなの?」
「はい。アストレイの事件についても出張してあちこち話聞いたり隠れて聞いたりしてましたから。アルスランさんとはお友達ですし」
「快く通す1人だ」
「そこは心底驚くよ」
「いやー俺も」
ナナオがけらけらと笑う。
「どーも。あと、悪い人たち以外の秘密までは踏み込みませんから。ただ、話せるとこまではとことん聞くんで」
「ならタイシも聞かれた」
「この人構ってくんない」
「俺は基本そういった関係者に話したくない」
「そーう。だもんで優しいアルスランさんが構ってくれるわけです。時間のお話もしてくれましたもん」
ミオが目をまんまるとし、老婆が話す。
「ナナオちゃんは他にもいろんなお話も知ってるから話してて楽しいのよ」
「へえ」
「ちなみに今回の取材対象は?」
「ふふん」
ナナオがヒカルとノーラを示す。
「2人」
「タイシが構ってくれないから炭鉱のこと聞くんだ」
「その通り。女装男子については個人的な事なんで、見せてくれたらいいですよ」
「いや面倒だからいい」
「ていうかしないで欲しいし2度と」
「なんだよ。照れてんのか」
「違う!」
「その、なぜ私が」
ノーラが気まずく話し、ナナオが告げる。
「さっきアキラ公爵に聞いたら料理とか美味いとか話しましたから」
「え…」
「いつの間に」
「そうそう。姉さんの料理は確かにうまい。あとお茶もだ。同じお茶使ってるのに違うんだよ」
「あらそうなの?」
ノーラが照れつつ戸惑い頭を振り、ナナオが料理広告を見せる。
「私担当の料理広告出してんですよー。良かったらレシピとそのお料理を作って教えてもらいたいんです」
「ナナオちゃんが作るお料理の広告は私も見るし他も評判あってね。みんながそれぞれの家庭の味を持っててね。同じ料理でも材料が違うだけで味が変わって美味しいし、健康的な料理や時間短縮で簡単に作れる料理とか載せられるのよ」
「そう。ギルドの人たちからも話を聞いたりして時短レシピ教えてもらってんですよ。あ、そうそう。もうぶっちゃけこの場で話すか」
「なに?」
「あの小さな元ギルド長」
タイシが頷き、ナナオが告げる。
「話聞いて即探索してみたんだよね。炭鉱」
「するな」
「いいじゃん。で、あったあった」
ナナオがポケットからオリハルコンを出すと老婆がまあと声を上げ、ヒカルがあと声を漏らし、タイシがすぐさまナナオの頭に手刀を叩きつけ抑えていく。
「お前はそれを勝手に持ってくるな。違反だ」
「ふ、ふふ。場所を知りたくばその違反切符を見逃して欲しいなー」
タイシが呆れ抑え込みナナオが堪えていく。
「まさか持ってきちゃったかー」
「その、持ってきてはダメなんですか?」
ミオが尋ね、老婆達とが頷く。
「ダメだよ。許可なくオリハルコンを勝手に炭鉱から持ち出すのは禁止行為にあたるんだ」
「ああ。まず、そのナナオだから問題ないと思うけどオリハルコンは素手で触れば通常火傷をする」
「そうなんですか?」
「ああ」
「オリハルコンは魔素が結晶化した鉱石だから。それだけ強い魔素を含んでるんだ。ちなみに僕だと軽いやけど」
「俺はなんともなし。タイシもだろうな」
「ああ」
タイシがオリハルコンを取り上げ、ナナオのポケットを漁る。
「ヤダ変態」
「あほか。一旦こい」
「ええー。取材ー」
「あとだ」
タイシがナナオの手を引き外に連れ出す。
「大叔母さん。タイシとナナオっていつもあんな感じ?」
「そうよ。頼れる兄と活発な妹って感じね。でもまさかオリハルコンを持ち出してたなんて驚いた」
「うん」
「まあそれはタイシが対処するでしょ。それより兄さんもまたよく話したなあ」
「それだけノーラさんのお料理が美味しかったんじゃないの?」
「そ、そんな、こと、ないで」
「一回食べてみたいです」
ノーラがミオを振り向くとミオが目を輝かせ両手を合わせながらじいとノーラを見るとノーラが顔を赤くし俯き材料があればと答えた。
縄で縛られながらナナオが炭鉱に連行されていた。その縄をタイシがうんざりとしながら握りつつ軍人やシータ達と立ち合いで捕まっていたドワーフ達とが背負われついてきていた。
「ひーどいひどい。女性差別だ虐待だ」
「お前が悪いからだ」
「本当よく素手で触って持ってこられたわね」
「ふっ。あれしきのことたやすいです」
タイシがナナオの頭を叩くとナナオが顔を顰める。
「暴力ー」
「やかましい」
「元気な嬢ちゃんだな」
炭鉱の中へと入ると背負われたドワーフ達が顔を歪める。
「2度ときたくなかったんだがなあ」
「同胞もここで死んでるからな。心苦しいが少し我慢してくれ」
「ああ」
ガイが頷きナナオが案内する。
「そこの柱に隠し扉があるんですよ。あのおちびのギルド長さん以外が隠してたと思います」
「ああ」
タイシが手綱を軍人に渡すとナナオが話す。
「ちょっと新婚さんな」
「仕事中で君が悪い」
「はあああ」
タイシが柱に触れ隙間を見つけると術を使う。すると柱の壁がずれ横へと開いた途端光る鉱石が転がり落ちる。シータ達とが驚き、ガイが手袋をし転がり落ちたオリハルコンを掴みハンマーで叩く。
「本物だな」
「ハンマーで叩かずともわかるんじゃ」
「今よくできた偽物が大国家に出回ってるのよ。ドワーフが触っても匂いを嗅いでも見抜けないほど精巧なものが」
「それは知らない事なので後でお話聞きたいです」
「はいはい」
「音だけが違うからな。だもんでこの特殊なハンマーで叩くんだ。こいつの先端にはな。オリハルコンを使ってんでわかんだよ」
ナナオが驚く。
「そうなんですね。あと、何ヶ所か同じような場所あったんで見つけたらどうですか」
タイシがナナオの頭を叩き抑える。
「お前はあちこちみて回るな阿呆」
「こ、好奇心」
「何が好奇心だ。罠があるかもしれないから俺とガイさんが見ていきます。その間報告と現場保管とこいつを見張ってください」
「はい」
「逃げないのに」
「逃げる逃げない問題じゃない。罰則行為してるからなお前は」
タイシが手を離しガイと共に柱を調べに回った。
ー今時間は何時だっ。
レオナルドが飛び起き慌てて病院の中へと入ると患者達が和やかにしていた。その上に風の精霊達や水の精霊達がふわふわと浮かび患者達の上で遊んでいたのだ。
「…」
「あ、レオナルド先生」
「ああええと」
エリスが申し訳なく近づき頭を下げ謝罪しレオナルドが手を振り軽く頭を下げ返し急ぎナガハラの元へと向かった。
サラが運ばれていく隠された鉱石の確認作業をしている様子を見ていた。それはドワーフ達や職人達が行なっており解放されたナナオがメモをとっていくもサラに頭を小突かれるとその頭を撫でつつやれやれとするサラを振り向く。
「次はしないように」
「分かりました。私もお縄に縛られながら歩くのはもう嫌なので。歩きにくいですしメモ取れないですし。あと、こちらは量などを決めて輸出されるんですか?」
「ああ。各国の鉱石の価値や量を把握して決めていく。本来なら受けた分を掘って行なっていたが出来ないからな」
「全部掘り起こされましたし、あの場所からまだ4分の3は流出してるからとか?」
「半分だ。違法鉱石の所在も明らかにしないといけないから普段通りのやり方ではいけない」
「確かに。そして、違法鉱石を使った宝飾についても購入された側との話をしないといけない場合もありますしね」
「そうだ。知らずか。もしくは知っててか。それによって罰則を与えなければならない」
「あとは、それらを使った宝飾の没収などについてもですね」
「課題ばかりだ」
ナナオが頷き、サラが話す。
「お前の力について、奴隷を見つけることはできなかったのか」
「そこははっきりと無理です。あと、私の力は秘密ですよ。サラ姫の普段見せない秘密にしたいことと同じですから」
「なら話そうか?」
「えーそうしたらすぐ広告に載せますよ」
サラが再びこづきやめておくと告げナナオがあははと笑いはいと返事を返した。
宿でサイモンが金の鉱石を手袋を使い嬉々と触れる。
「今回の報酬でもらったんですけど俺は使わないんでダリス卿に渡してください」
「よろしいのですか?」
「ええ。ただ、よかったら今後赤坂で何かあった場合、教会より迅速な助けが出せるよう配慮して欲しいと伝えてください」
「分かりました。伝えます」
「はい」
サイモンが箱に入れ、ミオが話す。
「その金の鉱石ってどれくらい価値があるんですか?ネックレスで少し使われたりしたのは見たことあるのですけど」
「ええ」
「ナターシャ達はあまり使わないからな」
「ダリス様もですね。金の刺繍の祭服を着るくらいですから」
「首飾りもされてるところは見たことないですね」
「ええ。あまり好きではないそうです。あと、これだけならここの民家が一軒立ちますね」
「ちなみに向こうであの馬鹿ナナオが無断で持ち込んでミオが初めて見たオリハルコンならナターシャの家の半分の価値だ」
ミオが衝撃を受け思考停止する。
「この金の大きさでくらいでも小さな屋敷一つ買えますからね」
「ええ。少しの量で膨大な額ですからね。だからギルドでオリハルコンを使った防具や武器を持っているのは王位貴族かその親族か儲かっている貴族を持つ者。あとは、Aランク超えしかいません」
「そうでしょうね」
ー見つけたら…。
「その、見つけた場合は…」
ミオがおずっと話、タイシが告げる。
「発掘許可を得ていれば持っていい。ただし、自分のものとしての持ち帰りはダメだ」
「ええ。それだけでも罪なんですよ。それだけオリハルコンは価値が高く扱いも他の鉱石と違い丁寧に扱わないといけないんです」
「はい。で、今回のシータさんたちの依頼について、発掘による発見じゃないから報酬はなし。ただし、オリハルコンの見分け作業をしている分については許可を得て行なっているから報酬が出る。あと、オリハルコンの発掘は極めて危険だ」
「ですねー。出来るのはドワーフ族の方達だけなんです。なぜかわかります?」
ミオが尋ねられると考える。
「その、魔素の結晶だから」
「その通りです」
「他は?」
タイシが尋ね、ミオが考える。
「ドワーフの方は、石は生きているとか…話してたので。共鳴」
「あ」
「正解」
ミオが頷き、タイシが話す。
「オリハルコンは魔素を含んでいる。だからもし魔法を使えば爆発を起こす可能性がなくもないし実際に爆発事故が起きて死者も出ている。そして共鳴だ。オリハルコン同士を接触し合うのも危険だ。ただし、ごく僅かなオリハルコンを使って本物かどうかをその共鳴効果を使い見極めることが可能なんだ」
「共鳴で?」
「ああ」
「偽物であり人工的に作られたオリハルコンの多くはガラス。もしくはガラスに魔素を含ませて作られた特殊なものなんです」
「ガラスに?わかる気がしますけど…」
「それがなかなかわからないんですよ。ガラスならいいのですが魔素を含んだガラスは完全にオリハルコンに近いものになるんです」
「ええ。俺も本当分かりませんでしたから」
ミオが目を丸くしタイシが話す。
「今度持ってくる。見た目も全くそっくりだからな」
「はい」
タイシがああと返事しミオがどんなものだろうとワクワクした。
タイシが部屋を出ると隣の部屋をノックしヒカル達の部屋へと入る。ハリーが不貞腐れながら話す。
「タイシ聞いてよ。ヒカル酷い」
「しつこく言うから無視してた」
「まだ言うか」
「ふん」
タイシがやれやれとしヒカルが話す。
「この国はナナオ以外にタイシと同じ故郷の人たちが多く暮らしてるんだな」
「ああ。後、子孫達がいる。ここは言えば隠れ蓑のようなところなんだ。俺たちみたいな黒髪に黒い瞳のやつはこの世界にいないから人攫いとかに結構合う。だから、サラ姫が保護してくれているんだ」
「ああ」
「まあ確かにいない人種だよね」
「ああ。そして魔法に適したものが多いしギフト持ちが多数存在するし、希少価値が高い」
「へえ」
「タイシもだけど.父さんもこの世界にとって不可欠になってるしな。あと、ナナオについてサラ姫と仲良いし」
「ああ。ナナオはお転婆で迷惑はかかるが助かる面が多いからな一応。そしてもう1人の方は大人しい」
「大人しい?」
「イーロンの王室から保護された異界人。俺の故郷の国の出身者で皇族の親類。ここだと王家の親戚に当たる」
「いるのそんな人」
「ああ。ナナオとは友人でー、本当にお嬢様だが、そこらの貴族のお嬢様達のお手本兼お姉様として慕われているし,求婚も多い。各国の王家の皇太子からも求婚されている」
「へえ。会って話してみたい」
「ああ。だからじゃないが明日会う予定を組んだ。向こうはミオと話してみたいと言うことだからな」
2人が頷きタイシがそうしたら明日呼びにいくと伝えると2人がわかったと返した。




