カルドア1
ー寒い。
防寒着を身につけたミオが鼻先やほおを赤くしながら白い吐息を吐き出す。ミオが見る先は白い雪山に白い雪原と雪が被った木々がうっそおと茂った森があり、その後ろには三メートルは超える巨大な木製の柵に囲まれた国があった。そして門には門番達がおり入国審査を行なっておりミオがさまざまとしながら軽く体を揺らしつつ荷物番をマルクールと共にしていた。
「おじょーさんは雪国はじめてか?」
「はい。雪を見るのも初めてです」
「え?まじか。イーロンは降らなかったのか?」
「私のところは降りませんでしたね。こんな寒いのも初めてですし。後、私がいた教会もです。寒くはありましたが…」
「なあら温暖な気候だったのかー」
「はい。マルクールさんの故郷は?」
「俺のとこは降るどころか灼熱だ。砂漠に近いとこだからな。ただ別の砂漠地帯では雪が降るところもあったらしい」
「そうなんですか」
「待たせた」
タイシがサイモンと共に入国証を持ってくる。
「エリスさんは先にユナ連れて入った。俺たちは宿見つけて荷物置くぞ」
「はい」
「了解。あた、まあだちびだから熱出しますもんね」
「泣いてる声が聞こえたんですが起きたんですか?」
「ああ」
「はい。近くに旅人のお医者様も居られたので少しだけ様子を見ていただきました」
「はい。で、風邪の少しタチの悪いものかもしれないってことでその医者の口聞きで2人だけ先に入れてもらえたんだ。それで、また後で俺たちに会いたいとか」
「そうなんです。なんでもナガハラ医師と話がしたいとか」
「はい」
「ナガハラ先生あちこちで人気っすねー」
「でもどうして今まで何もなかったといいますか…」
ミオが小首を傾げタイシが荷物を持つ。
「俺もそれ。急いでたから蘭丸とか知ってるやつに聞き忘れたんだ。その医者は知ってそうだから聞いてみよう。いない間になぜ何も話がなかったのかつてな」
「はい」
「噂のってやつだけでしたからね。っと」
マルクールがエリスの荷物を背負い、ミオが自分の荷物や軽めの荷物をもつと全員で門へと向かい国の中へと入った。
「うー」
顔を腫らし真っ赤にしたユナが気持ち悪いのかベッド上で何度も寝返りしていた。エリスがそばに付き添い若い男性医師が腫れた幹部を見て行き特に膨らんだ足を見る。
「虫か」
「はい。その足です」
「ええ。もしかしたら虫に噛まれた細菌性の病の可能性が高いですね。ここまでどうやってきました?どの国、平地を通って?」
エリスが説明し医師がふむふむと頷きぴんとくると立ち上がり本を出し開いていくと虫のページを見せエリスへと説明した。
ー3日入院だそうです。
サイモンが目を丸くし、タイシが戻ってきたエリスへと話す。
「この国で入院ってのは珍しい医院ですね」
「はい」
「入院というのは、医院でお泊まりのことですよね?」
ミオが尋ね、エリスが頷く。
「そうよ。でも、大抵の国では医療関係のところは自宅療養かこういった宿で過ごすの。そしてお医者様が診察に来られたりするのよ」
「そうなんですね」
「ええ」
「でもこの国は前はこんなことしてませんでしたけどね」
「変わったんじゃねえの?」
「なら、ユナの服とかはその医院に運んだ方がよさそうですね」
「はい。先生も着替えを持ってきて下さいということでしたから」
タイシが頷き、マルクールが話す。
「ならそっちは女性陣で。俺らはその旅人の医者のとこ行って話してきましょ」
「ああ」
ミオもまた頷き早速片付けた荷物からユナの着替えなどを手にした。
医院の中ではユナが気持ちよくすうと寝息を立て眠っておりミオが安堵しながらユナの頭を軽く撫でる。
「失礼します」
ミオが振り向き厚手のワンピースを着てエプロンをした金髪の少女が来る。
「この子のお姉さん?」
「はい」
「なら、この子のお名前は?」
「ユナです」
「はい。合ってます」
ミオがきょとんとし少女が話す。
「用心のため。保護者じゃない人が勝手に入ったりして勝手に様子を見るのよ」
「え?」
「俗に言う識別。人の価値。いわば人攫い」
少女がミオが持ってきたユナの着替えを確認しそれぞれのカゴへと入れ直す。
「ルナー。終わったら隣お願い」
「はいはーい。わかってますママ。ここ家族経営なの」
「家族でこの医院を?」
「そうよ。あと、この辺りじゃ結構人気なのよ。私のお兄ちゃんが名医だから。その子起きたら私がその子の体を洗うから持っていくわね。暗くなる前に帰らないと凍えるわよ。そして汚れたものはまた明日取りに来て。それじゃ」
ルナがカゴを持ち部屋を出ると入れ替わりでエリスが中へと入る。
「先生とお話ししてきたわ」
「はい。あの、ここは家族経営されているとか」
「ええ。聞こえたわ。あと、ここは他と比べて患者が多いみたい」
「え?」
「他のところもあるのだけどここだけ常に待つための部屋は満室のようよ。ユナは高熱で重篤かもしれないと言う事で先に診てくれたらしいわ」
「ユナがですか?その、今は」
「ええ。病の元に効くお薬を飲んだから落ち着いたわ。虫の毒による高熱だったそうよ。次から気をつけないといけないわね」
「あの足の腫れですか?」
「そう」
ミオが頷き、エリスが話す。
「先生は若いけど知識が豊富で処置も早いわ。他の患者さんから少しお話を聞いたのだけどこの辺りでは名医で他のところで見れない重篤患者はここによく運ばれて手当を受けるそうなの。それだけ腕も達者との事よ」
ミオが驚きエリスが教えてもらえてよかったわと告げた。
「あそこの若先生は小さい頃から神童と言われててな」
医院を紹介した年配の医師が尋ねたタイシ達へと告げると自分の左足を叩く。
「恥ずかしながら旅の途中で魔獣にこの足を噛み砕かれてなあ。もー、切断しないとおしまいだと思ったがその若先生が処置してくれたんだよ。で、まあ昔のように早く歩けなくはなったがそれでも生活に支障がない程度には回復した。やっぱり足がないと生活できないからな」
「少し引きずられていたのはそのせいなのですね」
サイモンが話し、男が頷く。
「ああ。でも、片足よりかはいいしちゃんと座って立てるし歩けるからな」
「ええ」
「そういや、ナガハラ医師についてなんすけど、なんで誰も何も言わなかったのかなーって。行方不明の時」
タイシが頷き、男が気まずく話す。
「緘口令さ。アストレイの。この国もだが他国でもアストレイの力は元イーロンよりも強かった。強い力によって俺ら医者も圧力をかけられていた。ただ、もうその緘口令もだが、あの異界の素晴らしい医療技術を持ったナガハラ医師がアストレイにいるとわかった以上。俺もその技術を習うためにアストレイに行く予定だ」
「へえ」
「やはりナガハラ医師はあなた方同業者間では有名なのですね」
「有名どころじゃない。神だ。あれだけの医療をものにしている。外科という人体を切開して治療する方法に、内科というその内部の薬学知識なんぞ。私らの何倍。いや何百倍もの腕と力と知識がある。これを習わずにいれるわけがない」
男がやや興奮し足を叩くがはあと息を吐く。
「ま、それをよく思わない同業者もいるが、そう言ったのはほうっておけだ。で、せっかくなのでナガハラ医師に口ぎきをしてもらいたい。習いたいんだ。医学をもっと深く」
男が目を輝かせ、タイシがじっと見ていった。
「よかったんですか?紹介状の手紙渡して」
マルクールが宿へと向かいつつタイシに話し、タイシが告げる。
「あの人はちゃんと医療に向き合っていると思ったから渡した。何かあれば文句は俺にとは書いたから問題ない」
「はあ」
「まあ、良い医者が増えるのはいいことですよ。悪い医者よりも」
マルクールがやれやれとし頷きタイシがはあと白いと息を吐く。
「明日がここのギルドで話し合いでしたね」
「ああ」
「しかし。貴重なオリハルコンの採取とは」
「そしてその採取場所に魔獣たちが住み着いたときたら大変ですもんね。稼ぎがなくなるから」
「ああ」
「ええ」
「正体不明の魔獣となると。なんかアレかなと思うんですよね」
「人のだろ?」
「はい」
「可能性はありますね。向こうも話してましたし」
タイシたちが宿へと到着し中へ入ると先に戻っていたミオたちと合流しお互いに話し合いをした。
ーこの体でも。
マーラックがふむとサクラとマナを前に考える。
「出来たか」
「この歳でもでしょ?マーラックは実際は80過ぎのおじいちゃんなんだからー」
「そこは、否定はしないが」
「はは」
マナが笑い、マーラックがんーと声を出す。
「出来たならしょうがない」
サクラがマーラックに蹴りたおし鼻を鳴らす。
「年の功か何か知らないけどえっそうに。父親いなくても母親いれば子供は育てられるからねー」
「悪かった待て」
マナがげらげらと笑いサクラがつんとしマーラックがおろおろとサクラの機嫌取りを始めた。
若い医師がユナの熱、そして顔や目を見て紙に状態を記入する。その横でルナがじっと書いていく様子を見る。
「勤勉」
「この国ではない病だからな。あとは、この子がまだどうなるかわからないからしっかりみないと」
「そうね。でも、虫に刺されて体も腫れるなんて初めてみた」
「虫の毒だからな」
医師が書き終える。
「よし。ルナ。マーサさんが来てくれたから悪いが交代で見てくれ」
「ええ。ていうか、お兄ちゃん。また寝ない気?懸命なのはいいけど寝ないとって…」
医師がさっさと出ていくとルナが呆れもおと声を落とし出した。
サイモンがふむと声をだす。
「そこまでの方なら他もですが王室なら特にお声がけあるのではないですか?」
「あるけど断ったそうです。その代わりになりますがその先生のお父様もお医者様ですのでそちらが問診をされて難しい症状などの場合のみその息子である先生が行かれるとの事でした」
「ええ」
「アストレイがよく手を出さなかったなと俺は思いますね」
「どういう事ですか?」
ミオが尋ねタイシが話す。
「まあ、アストレイは医学に力を入れている国でもある。だから、イーロンで軍でも軍医は生かされているし、病院は破壊せずに抑えただけにしていたんだ。あとは、医者がいる家とかわかればそこも抑えていた。それはまあ、あの元王の指示にもなる。なぜかの本当の理由についてはか。あの断罪の時。ナガハラさんが術を使っての尋問によって話したそうだ。キメラの製造。人体実験の使い捨ての為とかで」
「……」
「弱く見えてなかなか過激思想と行動をなさってましたね。私は精霊から聞きましたので全て知っています」
エリスが話しタイシが気まずくする。
「俺は周りから聞いてと、会議の王の発言を記した書類を見てですね。ミオにも話した通り。また、お母さんも被害者だからで計算が終わったら振り込みがミオにある。そこは国の法律で決められた相続の過程によるものだから受け取るように」
「はい」
「ああ。あと、いやまあ。俺もあの書類見て、エリスさんと同じ考えでしたし…呆れると言いますか」
エリスが強く頷き、サイモンが話す。
「ダリス卿のご両親も間接的とはいえ殺めておりますからね」
「ええ」
「ところで若さん。残った元王妃とかどうなるんです?末子で私生児って言われてた王子も」
「ああ。チャールズさんは一般人になって今はまだ王室に残って事件調査の協力をしている。あらかたすんだらダリス卿のいる教会に一旦預けられるそうだ。そしてまたそこでどうするかもだが本格的な教育も受けるらしい。中途半端でしか受けていないそうだから」
「はい。でも、チャールズ様はご自分で学ばれて様々なところに足を運ばれて国民の方のお話を直接お聞きして来られた方でしたので、擁護する意見が多かったですし、中々聡明であられますから学ぶものを学べばさらに見聞も広がると思います」
「ええ。マナーもしっかりされてましたから」
「へえ。なら後は?」
「よくて追放か永牢悪くて処刑と聞いた」
「あー」
「元兄王子は処刑だと思います。メイドなど数名殺めておりますから。後王妃はそれを隠していますからもしかしたらですね」
「はい。それから、他国に嫁いだ王女についてはお咎めなし」
「ん?」
「何もしていないし、王女についてはその逆。よく出来た王女らしいし、元々強気な人でもあったから元王ともよく反発していたそうだ」
「まじっすか。でも、聞いた事ないな」
「話すなと言われてましたから。そこもまた緘口令です」
「緘口令をよくだす元王だったんだな。あと相当娘嫌いだったわけか」
「ええ」
「ああ。俺もまだ来たばかりの頃は国にいて1ヶ月後に他国に嫁入りというか体よく追い出されたんだよ。そして、その人とは3回か。会ったけど本当軍事気質。実際に軍に入ってた戦にも出たことあってアーバインとマルクルがよく戦で姫にはこき使われて巻き込まれて参ったとは話してたな」
「まじっすか。ちなみに今どこの国に嫁入に?」
「ここ」
「え?」
タイシが下を指差すとマルクールが目を丸くしミオが話す。
「カルドアに?」
「ああ。ちなみに王との仲は良いらしく子供は三人いる。あと面会予定とかは何もないし渡すものもないからな」
「はい」
「王ですが、確か18ではありませんでしたか?姫が30くらい」
エリスが尋ねタイシもだがサイモンも頷く。
「はい。そうです」
「ええ。選ばれた理由として権力者としても幼いので弱く従えることができたからです。あと、大臣たちが賄賂などの報酬を得ていたからなんです」
「まぁでもマーガレット姫がきたのが仇になりましたね。早速弱く幼い王を支配していた大人たちを全員追放。姫に対して悪戯まがいなことをしていた従者とメイドは即解雇。そして、姫に付き従ったアストレイの姫の部下や姫が選んだ従者やメイドと軍人たちがこのカルドアを建て直したんです。元々ここは貧困さが激しく凍え死ぬことが多かったのですが、姫が言えばこの国に来てから三年余りで餓死者や凍死者の数が格段に減ったんです。そして街の発展が加速しています」
「はい。私も何度かダリス卿と共に姫の元に尋ねたことがあるのですよ。その度に国や国民の方々の様子が変わっておりましてね。最初に来た頃は入国からすぐに凍死された方のご遺体が放置されてましたから」
「その、なぜ放置を…」
「魔獣の餌、だそうです」
ミオが驚き、タイシが話す。
「ただそのやり方は逆に魔獣を呼ぶ事になりますからね」
「ええ。なので姫が遺体回収。そして軍やギルドを頼り魔獣を徹底して遠ざけたのです。なのでこの国に近い場所であっても魔獣と遭遇する回数は減りましたし無くなりましたね」
「そうなんですね」
「はい」
「ああ。そして民衆からの厚い支援を受けているし、今の王も聡明と聞くし開発が得意だそうだ」
「開発?」
「ああ。魔獣よけや罠。それから建物の構造から寒い冬を凌ぐ為の方法を考えたりされているそうだ。実際にアストレイでもその知能を借りて建物内の空気の循環をさせる為の構造を書いてもらった。アストレイの建物の多くは石造りで暑いとなると熱がこもって熱中症や脱水症状になっていたんだ。死ぬ人もいたし」
「教会もですねー。ただこれも修行だと言われて見習いの子達に無理させた馬鹿もいましたから。おかげで見習いの子達の中に障害を残した子も出てしまいました」
「障害ですか」
「はい」
「熱中症は重篤になると障害が残る。だから暑くても我慢はするな。もちろんその真逆の環境でも同じ事だからな」
ミオが頷いていき、タイシがああと返事を返す。
「で、そのカルドア王がもつ知識。そしてここにある豊富な資源。石や鉱石を使った建物の改修によって改善されたんだ。風通しを良くさせ、冬は暖かく熱がこもり、夏は涼しく換気できる石を使った事によって」
「そんな石があるんですか?」
「ああ。ある。だが、今その採石場が今回の依頼。魔獣に占拠された」
「こちらは関わってませんでしたから全く知りませんでしたね」
「俺もですね。アストレイでは多分また緘口令敷かれてたんでしょう。騒ぎのあと多くの事が情報として流されましたから。というより緘口令を敷かれていた事を記者たちが一気に流したんです」
「たまってたんですねー」
タイシが頷き、マルクールが話す。
「俺の故郷のこともありましたもんね」
「え?」
「ああ。昔のアストレイがマルクールの故郷を消した」
ミオが驚きマルクールがやれやれとする。
「旗印も何もない。本当わからない軍が押し寄せて年寄りと男は子供以外全員殺されて俺もやられて奴隷商人に渡されておしまいだったんですよ。まあ、ようやくどこの国が攻めてきたのか知れたんで。あと攻めた理由が俺たちの力を調べる為らしいんでふよ。女は子作りのため。子供はその次もしくは力の継承がどのようになされているか見るために。残りは奴隷行き」
ミオが僅かに表情を曇らせマルクールがため息をする。
「ま、あのまた王様が死んでしれたことと、まだ実験に使われてた奴らや俺みたいに子供から大人になった奴らがいて保護されたっていう話だったんで良かったですよ。今後はアルスラン将軍たちが面倒見てくれるらしいです。多分また生き残りで一族の再建を図ると思いますね」
「ああ。俺も何人かと話聞いたら故郷に戻ってまた作り直すそうだ。あと、悪魔の王がと言われてたな」
「でしたね。あんなひょろくてよわっちいのが中々凄まじいことしてくれてましたもん。本当、することだけ他にさせて自分は言うだけ」
「支配力があれば言葉だけでもなんでも思い通りに行きますから」
「だなー」
ミオが頷き、エリスが話す。
「他の部族もでしょうか?襲ったのは」
「いえ。後については養父がアストレイ国の国民となって、王室で働く事になってから全て裏から引き留めていたそうです。マルクールについてはまだそうではなかったから止められなかったそうです」
「ええ。ま、遅かったってやつ。そして以前のについてはまだ調査中らしい。小さな部族は結構あちこちから襲われててさ。特に移動しながら国から国へと渡るところが多い」
「え?」
「家畜を育てる部族でしてね。放牧民ってやつですよ。家畜を育てるために草原地帯のある国を行ったり来たりとして生活してます。ちなみに俺のとこもですけど俺のとこは定住型でしてそこの土地に留まって家畜を育ててたんですよ。そして、一応そこもまた国の一つとして言われてましてね。俺たちは風の民の部族。そして東が水の民。北が水。南が土」
ミオが目をぱちくりとさせ、タイシが話す。
「ミオがお母さんから習った向こうの四神の方角と同じ元素記号で言われている」
「はい。あと、初めて知りました。本にありません」
「そりゃ多分俺らが勝手にそう呼んでたからだ。いつからかは不明だけど、若さんからそれ聞いてもしかしたら異界人がその呼び名を広めたんじゃないかなーって。俺らの部族の中に異界人の血が混じった奴らもいたんで」
「ああ」
「そのオリエンタルで呼び合うということはそれに似たものをその部族で使われている。継承されておられたからなのでしょうか?」
「ああ。火の民は草原を焼いて肥料にして次の草原を作る事をしていた。水の民は湖付近に住んでいた。そんで俺がいた風の民は天候が分かるやつが多かったとこ。そして土の民は言えば俺がいたとこや他部族の総まとめのとこ。つまり、国であり王がいるとこだ。今王は俺と同じ年のやつがついてるそうでその王と将軍が再建について話し合いしてるとこ」
「はい」
「草原を焼いて肥料に?」
「ああ。草原の草は何度も生えるからな。でも上の草をなくさない限り硬くなって牛たちが食ってくれねえんですよ。だもんで年に二回。その部族さんたちが草原を焼いて硬い草をなくしたら、またその土から新しい柔らかい新芽が出てくるんです。草は根っこさえ無事ならなーんどでも生え変わりますし、土の清浄化も火の熱でできるんで毒素がない新たな柔らかい草が生えてくるんです」
「私のところも同じ事をしております。土を焼き毒を消した後、その土とまた新しい肥料や種を与えて作物を作ります。そうする事により良い作物が出来るんです」
「そうそう」
「そうなんですね…。私のいたところではやった事ないです。土についての処分はお役人さんのとこに持って行ってましたから」
「え?なんで?」
ミオが首を傾げさあと答え、マルクールがタイシを見る。
「若さんは知ってます?」
「ああ。残土として処理されていた。だから、山の中にはあちこちその土もだが都市から出たゴミが山積みされていたところがあった。産廃処理場というところだな。そこに捨てられていた」
「はあ」
「産廃?」
「とにかくゴミ処理場だ。多種類のゴミの上に土。そしてまたゴミに土と折り重なりあいながら山積みに捨てられていてな。その周りは木が枯れている。理由はゴミや土から出た毒素が原因でな。ゴミの中には危険な薬物ゴミもあった。そして、自然分解が難しい状態な上分別や処理しようにもあまりにも多い上に土も被せられているから重すぎてどうしようにも出来ない。それが俺が知る限り8カ所だ。そこもまたイーロンの問題と言われている」
「そうだったんですね…」
「ああ」
「木がかれるほどってどんだけ毒強いんですか」
「それだけ強いから困るほどだ。とにかくその処分もどうにかしたいという問題が起きている」
「でしょうね」
「イーロンも色々と問題を残してくれましたね」
「そうですね」
ミオが複雑そうにし、タイシがミオへと話す。
「ミオ」
「は、はい」
「ああ。明日ユナの所にはマルクールがいく」
「何故俺?」
「俺とエリスさんとミオはギルド所属だからな。だから行かなくちゃいけない」
「ならサイモンは」
「私は教会です」
マルクールが顔をしかめ、ミオがお願いしますと告げるとマルクールがため息しわかったよおと口を尖らせ答えた。
翌日ー。
「マルクールかあ」
「なんだよ。悪いかよ」
マルクールがうんざりとしユナが微妙といった顔立ちをさせた。
ギルド、会議室ー。
ガイ、シータ、そして他三人と小柄な男のギルド長にタイシ、ミオ、エリスが揃う。
「なら、きてくれて感謝。それからここのギルド長も含めた話し合いよ」
「うむ。オリハルコンの採掘という事だからな。しかし今その採石場が危険な魔獣たちな住処にされている」
ギルド長がテーブルに乗せられた各々目の前にある紙を手にする。
「分かっているだけの魔獣のリストだ。まず見てほしい」
シータたちがさ早速手にしタイシも手にとり見ていく。そしてミオがゴーストを見て目を丸くする。
ーここに?
「竜がいるかもしれませんね」
「ええ」
ミオがシータたちを振り向き、ガイが顎を撫でうーんと声を出す。
「竜の子分たちか」
「これ俺だと相性悪い奴らだ」
拳闘士の男がぼやき、ギルド長が話す。
「物理的な攻撃が効かぬものが多いからの」
「ええ」
「資料は魔獣だけですか?洞窟内の構図は?」
「ああ。あるぞ」
ギルド長がベルを鳴らすと秘書が入りすぐに構図を持って来させる。タイシが見ていき、エリスが話す。
「やはり採石場なので入り組んでますね」
「ええ。ただ妙だな。竜ならもう少し大きな穴蔵に入るのを好む。こういった場所を住処にしないはずです。特に人が作った洞窟は」
「はい」
「そうなの?」
「はい」
「竜は自然体を好みます。なので、今回の場合。おそらく採石場で当てたかもしれません。魔素の根源を。源泉を」
「げっ」
「それやばすぎ」
ミオが僅かに首を傾げエリスを見るとエリスがまた後でと答える。
「ギルド長。で?」
「当たりだ」
ギルド長がやれやれとする。
「だからこそわしは反対でな。魔素が治るまでなんとか周りの魔獣だけの退治。若しくは危険でない採石場の採掘だけを指示している。しかしのお」
ギルド長が大きくため息する。
「お前たちのように行こうとするものが多い。なので、しっかり分かっているかまずここで第一の判断をする。そして、悪いがどうあってもわしからストップをかけさせてもらうしこの国を出るまで見張らせてもらう。理由として警告を無視しギルド長のわしの言葉を無視してその採石場にいき帰ってこなくなったものたちが20余いる。中にはSランク候補者もいた。名はセルド」
「あの若いのか」
「確か俺より年上のハンマー使いでしたね」
「ああそうだ」
ドアがけたたましく蹴り破られるとかっと甲高いヒールの音が響き渡る。ギルド長が頭をくらりとさせ抱え込みシータたちが驚愕しタイシが気まずく厚手の軍服を着て入って来たゴーグルの女を見て話す。
「サラ姫…」
『え?』
「久しぶりねタイシ中尉じゃなくて、今は中佐ね」
サラがゴーグルを上げギルド長がうんざりとしながら話す。
「姫殿…頼みますもう何度目ですか。その扉がかわいそうです」
「ならボロ使ってんじゃないわよ」
ミオがタイシを振り向きサラを示す。
「アストレイ国の元王女殿下」
「そうだ」
「ええ。あの頭の悪いバカの根暗のひ弱で難癖がましいくそ親父と他が悪かったわ。中佐についてもごめんなさいね」
「いえ。俺はまだ憎まれ口だけですから」
サラが空いている席座る。
「他もでしょう?アストレイの使者に私が王の代理として伝えておいたから」
『え?』
「え?」
「まあ、まだ秘密でしたので…」
タイシが一言添え、サラが告げる。
「別に秘密ごとにしなくてもいいのに。段取りとか鬱陶しいのよ」
「はあ。姫殿。また何のご用ですか?」
「ええ」
サラが屈強な男に担がれたマルクールと汗を滲ませるサイモンを指差す。
「来るって聞いたからついで連れて来たわ中佐の連れ。こいつらは先に連れてくからあとで城にきて。で?ここは何の会議中?」
「えーまあ、あの採石場。オリハルコンの採掘を」
「あああそこ。行けば」
ギルド長が頭を振る。
「どれだけ犠牲が」
「準備不足な馬鹿どもが言ったからでしょう。あと、警告していった馬鹿どもの犠牲」
「ですからいうとるでしょうこの馬鹿姫!」
「あ?今何つった?」
ギルド長とサラが罵り合い喧嘩を始める。エリスがやれやれとしシータが苦笑し話す。
「一旦お開きで…、いいかしら?」
「はい。こちらも呼ばれましたから行って来ます。また翌日話しましょう」
「ええ」
「だな」
「随分前に異界人から教えてもらったな。触らぬ神に何とやらだ」
「祟りなしですよ」
「おおそれだそれだ」
シータ達が席を立ち、ミオが気にしつつもエリスに押され2人を残し出ていった。
ーあんたがマルクールね。
「あの方なんなんですか…」
目覚めたマルクールが疲れ果てながらタイシへと告げる。そこは城の中にある客間でタイシが話す。
「何と言われても、姫だとしか」
「姫ですかあれが」
「ああ」
「何度かお会いしましたが相変わらず強引ですね…」
サイモンがやれやれとし、ミオが話す。
「その、ユナは」
「あー、まだ病院だと思う。流石に連れ出したりはしないから。あと、昨日よりも体調はいい」
「そうですか」
ミオがほっとし、エリスが話す。
「あなたは何故気絶させられて連れてこられたんですか?」
「歯向かわれるのも面倒だからと言われてやられた」
「迷惑ですね」
ノックが響き、扉が開かれると軽装でタイシほどの青年が中へと入る。タイシ、サイモンが立ち上がりすぐさま頭を下げ青年が手を向ける。
「いい。こちらも突然訪ねて申し訳ない。サラについても申し訳なかった。話は聞いた」
ー王様?
「王様ですか?」
サイモンがマルクールの頭を掴み下げ、タイシがやれやれとする。
「そうだ。サラ姫にここに来るようにと言われてまいりました」
「ああ。あと、本当にすまない。どうやら、久しぶりのそなたらアストレイの知り合いの訪問に興奮したらしく。はあ」
「いいえ。慣れてますから。ただここではされてませんか?」
「一度行ったが私が注意してやめさせた」
「はい」
「まじで?あんなお転婆ひめっ」
「言葉が過ぎますっ」
「いやいい。最初は命を何度も狙われるほど暴れていたし、嫌われたりもしたからな。私が注意したらやめてくれたし」
ーえ?やめたのか?事実なのか?え?
「謝るようにと言えば相手に謝った」
ー謝ったところを見たことがないし謝ったと聞いたことがない。
サイモン、タイシが心の中思い、青年がやや苦笑気味に話す。
「本当に今回はすまない。ただ、サラは素直で国のためを思ういい妻だ。養父については残念だが、それでも私の妻と巡り合わせ妻を私にくれたことに感謝したい」
ーあのどうしようもない王にこのような言葉を言われるなんて。とても心がお広い方なのですね。
エリスが思い、ミオが頷き微笑み話す。
「サラ姫と陛下はとても仲がよろしいのですね。お互いに敬い支え合われているようですし。サラ姫も陛下とお会いできたこととても嬉しく思われておいでですよ」
「え、と、そうか?」
青年が照れながら答え、ミオが素直にこくこくと頷く。
ー姫さん本当素直に言う人だなあ……。
「ええと、その、つかぬことですけど…。何でここにこられたんですか」
「あなたは言葉遣いが」
「気にするな。こちらに来たのは採石場のことについてだ。それから、まあ」
青年が後ろにいた従者から筒を受け取り手にする。
「サラやアストレイ国の者に頼まれた建造物の設計図だ。ただこれは5年前もになる。これは私とサラとそのものが単独で行ったことだ。養父にもこの設計図を送ったが何も返答なく、数度送れば嫌われてしまってな。なので、遅れずしまっていた」
タイシが頷き青年が話す。
「その養父も亡くなり、国の再建と聞き、サラがアストレイ国の王代理として一月後に出立する予定だ。ただ、そのサラが代理とは言えまだ立場上は弱い。そしてどうあれ養父の子でもあるからこそ、忌み嫌われる可能性もなくはない。なのでそちらのタイシ中佐に頼みたい。アルスラン将軍ならばこちらの設計図の意図を知ってくれると思う。サラも了承済みだ」
「はい。ではまず、その設計図とはどんなものですか?どのような建物の設計図ですか?」
「ああ。療養院だ。あとは上下水になる」
「あー」
「なんだ?」
マルクールがそう声を出したサイモンを見るとサイモンが話す。
「いえ。今アストレイの水はほぼ上から下に。つまり城から城下町。さらにその下に流れていくんです。剥き出し。もしくは隠しもしない水路を流れるんです。その水路は街の中心や人通りの多い場所ではなく、スラム街と言われる場所や住宅の裏手を流れます」
「あったのかそんなの?」
「ありますよ」
「ええ。あと、そうなると水道管を利用した下水道」
「その通りだ。ああ」
青年がやや興奮し設計図を持ちテーブルに広げる。そこには水道管とその素材。そして、何処に配置するかの位置図を見せる。サイモン達が興味深く見ていき、タイシがダムや貯水池機械を見る。
「なんですそれ?」
「水を貯める施設と浄水施設。あと、魔導石を使った汲み取り機械だな」
「そうだ。その通り」
「魔導石って、確か、魔素を含んだ貴重な石」
ミオが話し、タイシが頷く。
「ああ。何度か繰り返せば劣化して壊れるがそれまでは何度も利用できる石だ」
「はい。教会でも足元灯など魔導石を使って照らしています」
「後は療養院もだ」
「ユナが入院している療養院にもありました」
「ああ。アスター療養院だな。レオナルド医師が腕がとても良い」
「そのレオナルド医師ですが、他国からこちらに来てもらいたいなど声掛けはなかったのですか?」
「ありはしたが、そちらは私が止めさせた。レオナルド医師にも確認しここで良いとのことであったのでレオナルド医師とその家族を引き抜きに来るものには断りをこちらからも入れている。あとやはり何度か脅しや誘拐未遂もあった。その対応はサラとサラの軍隊が捕縛したりもしたな」
「やはりここでも作られたんのですね自軍を」
「ああ、まあ」
青年が苦笑し、マルクールが告げる。
「何つーお方だよ…」
サイモンがマルクールの頭を叩き、青年が話す。
「他国の姫達と比べると男まさりではあるのは確かではあるな。ただ、外ではで、中では私にしか見せない一面もあるからな」
青年がほのぼのと話すとエリスがくすりと笑う。
「愛しておられるのですね」
「ああ。もちろん子供達もだ。愛おしくて仕方がない」
ー嫁ぎ先がとても良い場所で嬉しく思いますサラ姫。今までの暮らしを感じれば。
ー良縁と言うことか。良いことだ。
「陛下。採石場についてですが、こちらの建造物の材料に使われるのですか?」
ミオがじーと設計図を見ていき、青年がはっとしそうそうと頷く。
「そうだ。ああ。ただ、そこで問題がある。ギルド長から魔獣の話があっただろう?」
「はい」
「ああ。私が求めている鉱石もそこにあるんだ。魔導石。それから鉄鉱石」
「鉄鉱石なら他国の採石場でも取れますよね?」
「とれはするが、ここのはまた格別であり特別なんだ。魔導石の影響を受けた鉄鉱石になる。なので、他国の鉄鉱石と比べ強度も強く簡単に錆びることがない」
「ええ。カルドア産の鉄鉱石は軍でも使われているし、献上品としても使われる。市場価値は普通の鉄鉱石の三倍だ」
「まじっすか。はあ」
「そこの採石場でしか取れなくてこちらも参っている」
青年がはあと息をつく。
「ギルド長の気持ちはわかるが、こちらもどうにかあの採石場を元に戻すまでは良い。とにかく魔獣達の数を採石ができるほどの量に減らしたいんだ。それで力を貸してもらいたい」
サイモンが頷き、タイシが話す。
「でしたらまず、現地調査だけ行っても良いですか?周囲の状況などのです」
「ああ」
「はい」
「私が精霊を使って中に入れるところまで見てもらいます」
「分かりました。なら、採石場について現地調査を行います。ただ、もう1組。最初にこちらに採石場のオリハルコンの発掘で依頼したもの達も一緒に連れていきます。そのことについてよかったら先にギルド長にお伝えください」
「分かった。伝えよう」
「はい。で、もし行けるところまで行けそうなら準備をしていきます。無理でしたら諦める方向でよろしいですか?」
「ああ。それでいい」
タイシが頷き青年が話す。
「こちらも命が危ぶまれるほどの危険なことはさせたくはないからな。無理なら無理でいい。すまないが頼む」
タイシがはいと返事を返し、青年がサラには私から伝えようと告げるとタイシがお願いしますと返事を返した。
「きたきた」
ルナが顔をしかめ戻ってきたマルクールを見て話す。そこに、エリスとミオもおり、ルナが告げる。
「サラ姫やばいでしょ?でもいいお姫様だから許してあげてね」
「いやいいお姫様じゃねえよ。気絶させて攫ったところでよくねえよ…」
「そこはね。あと、ユナちゃん熱下がったから。薬があったみたい」
「そうなんですね。分かりました」
エリスが告げ、ミオがほっとする。
「はい。今は寝ていますから行かれるなら静かに行かれてください」
「分かりました」
タイシがその場にくるとルナが素早くタイシの前に来て自己紹介し目を輝かせ興奮しながら話す。ミオが目を丸くし、マルクールが告げる。
「若さんあちこちで人気者だなー」
「そうですね」
「はい」
「ルナ」
ルナがぎくりとし、年配の女が軽く睨む。
「仕事なさい仕事」
「もう少し」
「早く」
ルナが顔をしかめ頷きトボトボと離れる。
「まったく。すみませんね娘が」
「いえ」
「ええ。ところで誰かお相手いませんか今は?あんな娘ですけど」
「いやまだそのつもりはありませんから」
「そうですか」
「はい」
ルナの母親が頷くも目をきらりとさせる。
「お相手はいないという事ですね。わかりましたでは」
母親が頭を下げつつ離れていく。タイシが気まずくしマルクールが話す。
「あちこち知られてますね。ところで何でまたここに?」
「ああ。気になることがあって。レオナルド医師について」
「ん?」
「時間がある時でいいから話がしたいと思って尋ねてきた」
「気になることっすか」
「ああ。少しな。それじゃ」
タイシが離れ角を曲がった途端女達の声が上がる。エリスがふふっと笑い、マルクールがうわあと声を出し、ミオが目を丸くし驚いた。
30分後ー。
「率直に申しますと、あなたは異世界転生された方ですよね?魂だけで」
あの男の医師が若干何故か怯えながらタイシを見てぎこちなく頷く。
「その、はい。ええと、記憶と言いますか…。前世は竹永和人と言う、名前で」
「はい」
「…君の、お父さんって、医者だよね?名前は板原純」
「ええまあ」
一瞬静まり返るとタイシが気まずく話す。
「その、ナガハラという名前はご存じですか?」
「すまない。知らない。まあ、その」
レオナルドもまた気まずくする。
「少し、取り乱して申し訳ない。君についてここでの活躍などは知っているし母や妹達も、もし来たらすぐに、あー、説き伏せてとか言う始末で。その、わたしはやめろと何度も父と話していて。えーまあ、君について、ここだとニュースもないし、あったとして手配書や記事とかになるが、その手合いもないから見たことがなかったんだ。ただ母達は、絵画か。それを見てたから多分知ってるんだろあと思うから気をつけてほしい。俺は、興味なかったから見ずに…、しかしそこまで彼に似てるとは思ってもなくて…すまない」
「あ、いえ。あともうお二人とは正面入り口で。父についてナガハラと言うこちらに俺のように勝手に送られてきた方で父の同僚でもある医師です」
「ああ。なら、あのアストレイの。その人も知ってる人か」
「はい」
レオナルドがはあと息を吐き椅子に力無く座る。
「すみませんが、俺の父に何かされたのですか?」
「…まあ、ここであり、時効でもありか。俺は生まれ変わったからな。あと」
レオナルドがタイシを見ると申し訳なく手を向ける。
「本当に申し訳ない。ここまで術を使って若返ってきたのかと思った。君がまさか彼の息子とは思わなかったから」
「いえ」
レオナルドが手を下ろしはあと息を吐く。
「俺は父親から愛情というものを注がれてませんし、虐待を受けてました。そして、五歳の頃に母親と離婚し母親の方に引き取られました」
「そうか」
「はい。ただ、その母親からも、母親の選んだ次の相手である養父。その家族からも2人の弟が生まれた後は冷遇視されてました。その後については母の父親が育ててくれたんです。そして、ここに流されました」
レオナルドが深く頷き、タイシが話す。
「ナガハラさんから、父について医者としても良い医者ではなかったと聞いています。あなたは父と同僚なのですか?」
「いや。医者と患者だ。ただ、わたしは医者でもあった。あちらでは年寄った医者になる。長年アメリカを含めた多くの病院を渡り、その後日本に帰ってきた時に、倒れてな。年が祟ったのと日頃の生活習慣によって体が限界になっていた。脳内出血を起こして倒れた。起きた時には病院でその時の、担当者が君の父親なんだ」
レオナルドがぐっと手を握る。
「彼は、私のことは知らなかったようだが、誰かから私のことを教えてもらったようで何も話せない私に私の事を話し始めて。最初は何故だろうと思いながら聞いていた。そして、次の日」
レオナルドが手に汗を滲む。
「何故そうしたのか私には理解できない。彼は私と言う患者を実験台の道具にした。投与してはならない薬物を投与し私の苦しむ様を見る。そして、私が死ぬ間際。離れていく際に見たのは彼と数名の看護師がいる手術台で私の頭を切り開いて写真を撮っていた。これが医者なのか?なぜ、笑っていられるんだと恐ろしくなりながら真っ暗になって…。そして、三歳の頃にここで大病を患い生死の境を彷徨った時にフラッシュバックするかのように医者としての技術もだがその時の記憶が蘇ったんだ。それからは、か。運命でもあるが、この医師家族の息子として医者としてこの昔の片倉直敏と言う者の記憶を持ちながら生きている」
レオナルドが息をつきタイシを見る。
「本当に申し訳ない…。君はそうでないのに」
「あーいや、その、流石にそれは俺も、すみません。父親の行動にドン引きと言いますか。恐ろしさを感じるのは当たり前だと思いました」
「ああ」
「…もしかしたら、あなた以外の被害者もいるかもしれませんし、今それがわかって逮捕されたか。もしくはまだ隠されてるのかと思えば…」
「まあ、そうだな」
しんと静まり返るもレオナルドが口を開く。
「その、まあ、すまない」
「いえ」
「それで、何かようで」
「ああええと、まず、あなたがその転生者と分かったことと、もしそれでしたらよかったら見てもらいたい子がいるんです」
「ああ」
「そのナガハラさんに言われまして」
タイシが説明し、レオナルドが頷いて行った。
夜ー。
ミオが連れてこられ椅子に座らされるとレオナルドが聴診器、そしてその部位を触り触診する。ミオが緊張と恥ずかしさで僅かに体をこわばらせる。
「確かに、ここに腫瘍があるな。明後日まで何かあるかな?なければいま時間あるから切開しようか」
「え?その、今から?」
「ああ。気になる大きさでもあるからすぐ調べたい。君がまだと言うならまた次回になるが、10日はかかる」
「…」
「どうする?」
ミオが汗を滲ませぎこちなくする。
「い、たくは」
「全身麻酔と言う方法で痛みをなくすがしばらく眠りについてもらう。それは痛みをなくすための眠りだ。ただ、目が覚めた時に傷口が痛む。体を切っているからな。そして、術後観察で一日入院後の退院だ。悪い腫瘍かいい腫瘍かの結果は早ければ退院後の翌日になる。腫瘍をいろんな薬剤につけて調べていかないといけないからね」
「はい…」
「ああ。それで、するなら書類に書いてもらってすぐに行う。判断については君でもいいが君は未成年だそうだから今いる君の保護者に記入してもらって」
レオナルドが書類を向け説明しミオが頷く。そして、
「悪いものは早めに分かった方がいいです」
エリスがテキパキと名前を書き、サイモンがタイシへと話す。
「そのあちらの世界で生きられた方の記憶を持って生まれた医師脳ではどうですか?あちらでのご活躍とか何かご存じですか?」
「はい。名前を聞いてわかりました。向こうでスーパードクターと言われた方です。つまり、凄腕の医師です。主にがん治療。ミオのような腫瘍摘出の手術を得意とされた方として本でも紹介された方です。たしか、亡くなられたのは八十九歳。亡くなられる一年前。八十八才まで現役で手術されて患者を救われてた方です」
「はあー。それは素晴らしい」
「はい。記憶を継いでおられるのは確かで、腕前や技術も次いでおられるようですから。だからミオ。怖いかもしれないけどこれから先のことを考えると今しかないわ」
ミオが書類を受け取りこわごわと頷き母のことを思うと確かにと自分に言い聞かせるとエリスがふと思い良かったら私も立ち会いしてもいいか聞いてみると告げた。
ー全身麻酔は薬品で行います。
緊張するミオの口に麻酔薬が数的落とされる。抗菌服にマスクをしたエリスもだが、手伝いのルナが見ておりミオがわずかに咳き込み顔を歪め息を弾ませる。
「副作用の幻覚です。どうしても出てしまうものですから」
「はい」
「お、かあ、さん……。ま、て。待ってよ…」
ミオが涙を流すも徐々に落ち着くとすうと深く眠る。ルナが針を出し手足などの皮膚をつつき、レオナルドもまた切開する部分に針を刺す。
「左手右手共によし。左足右足もよし」
「ああ、なら、手術に移ろう」
「はい。エリスさんは後ろの椅子に座ってください」
「わかりました」
エリスが下がり椅子に座る。そして、レオナルドが開始すると告げるとルナが頷きレオナルドの言う通りに消毒。続いて道具を出し渡すとレオナルドが自然に印をつけた場所を切った。
ー片倉直敏だと?
ギルドの通信を使いナガハラとタイシが連絡を取り合っていた。そしてナガハラのわずかに興奮した声が響く。
『そのカルドアに前世の記憶を持った奴がいるんだな小僧』
「あ、ええとはい。います。ごぞ」
『おいおっさんっ。俺をそこに連れて行け』
『なんでそうなるの?私仕事だし。まず君もおっさん』
『ぐずぐず言うな』
『もおおおおお』
ぶっと連絡が途切れる。そばにいたサイモンが苦笑し、若い通信係が話す。
「ナガハラ医師でしたか。なんだか強気と言いますか。結構乱暴者なんですか?」
「乱暴者じゃなくて傲慢か。あと深夜帯にすまない」
「初めて言われましたね。仕事ですからいいですよ」
タイシが金を払い若い男が嬉しくどうもと返した。
ーとれた。
ミオの中にあった腫瘍が取られるとレオナルドがすばやく縫合しルナがせっせと保存液に腫瘍を入れ瓶に名前を書いていきエリスに見せる。
「これを私たちの母が検査します」
「はい。あと、体内になぜこのようなものができるのでしょうか?」
「んー、まあ、親から子に受け継がれてできる場合とー」
「細胞が突然変異を起こして固まるんです。人の身体は細胞により作られていますからね」
レオナルドが縫合を終えガーゼをミオへと当てテープで止める。
「それによって本来は体内にないものが出来るわけです。そして、その細胞の突然変異の内、細菌によるもの、親から子は受け継ぐ遺伝的なもの、不健康な食生活によるものなど原因は様々です。今回ミオさんの場合お母さんが癌ということでしたのでもしかしたら受け継がれて同じものになっている可能性が少なからずあるという事です。今見た時点では悪質性は感じませんが念のため調べて」
「お兄ちゃん。それはミオさんの処置を最後まで終えた後にしようよ。病室運ぶから」
「ああ。すまない頼む」
ルナがやれやれとし頷き行動する。エリスがならまたお時間ある時にと伝えるとレオナルドがはいと返事を返した。
翌日ー。
「もう」
厚手のマントを着たヒカルがやれやれとしナガハラと共にカルドアの首都を歩く。
「突然来たかと思えばリュウさん巻き込んでカルドアに連れてけって」
「奴は暇してるから問題ない」
「はあ」
ナガハラ達が医院へと到着するとヒカルが話す。
「カルドアには来たことある?」
「2度ある」
「お待ちしておりました」
白髪混じりの小柄な男が出迎える。その隣にタイシがおりナガハラが話す。
「わざわざ待たずに出迎えはしなくていいルイード。お前の息子は?」
「今患者さんの診察中です。後そういうわけにはいきませんしご無事でよかったです」
「どうもだ」
父親ルイードが2人を案内する。
「知り合い?」
「しばらく教えていた」
「はい。ただ、その途中で行方知れずとなられて泣く泣く帰ってきたんです。元々アストレイに他の医師達と共に学びにきていたんですよ」
「こんな遠くからですか」
「もちろんです。こちらも医者として出来ることがあるのならやりたいですからね。目の前の患者さんを失う程辛いものはありませんし」
ルイードが客間に案内し中へと入る。
「あのうるさい馬鹿姫が来るんじゃないのか?」
「えと、いや、ないですが」
ルイードが苦笑し、タイシが尋ねる。
「サラ姫が何歳ごろからの知り合いなんですか?」
「三歳ごろからだな。ガキの頃からちょっかいばかり出してうるさかった。アルにだけは大人しくしていたのは覚えている」
「そうなのですね」
「ああ」
ナガハラが座り、ルイードが茶を作る。そこに、母親が顔を覗かせ中へと入る。
「すみません。貴方」
「ん?」
「緊急。野良ギルド」
母親が急ぎその場を去り、ルイードが慌てて茶を入れるとヒカルが尋ねる。
「なんですか?緊急野良ギルド」
「命令無視したギルドの人達が運ばれてきたんですよ。仕方ないなもう」
ルイードがすみませんと茶を置き出ていく。ナガハラが茶を持ち飲みながらスタスタと歩きでる。
「ちょっと父さんは。もう」
「魔導局だがあれからどうだ?」
「んー、まあショックから徐々に落ち着き始めたね。そこまでショック受けなくてもいいのになあ。そっちは?」
「何というか、いく先々で声がけが多くて困ってもいるか」
「それはそうだ。タイシは異界人もあるとして、力あり、財あり、いい後ろ盾あり兼養子。養子は実子より扱いやすいから好かれやすい」
「そうか?」
「そう」
「ヒカル。小僧」
ナガハラが空の器を置きに戻るとルイードが後を追ってついてくる。
「運ばれた奴が伝言残して死んだ」
「はい…。まだ仲間がいるとか」
「ああ。ゴブリンの群れだそうだ」
「あ、なら沢山とれそう。分かった」
「何を取る気だ?」
「ゴブリンの血。父さん達の研究材料でもあるんだ」
「ああ。奴らの細胞は他の魔獣と違う特殊な細胞があるからな。武器としても使える」
「武器としてですか?」
「そうだ。あと、洞窟に魔獣がウヨウヨいるんだろう。ちょうどいい」
ヒカルが杖を光らせ箱を出すと中を開き大量の金貨をタイシ達に見せる。ルイードがギョッとしタイシもまた驚く。
「殺した奴らの死体をもってこい。そいつらを解剖して血や肉。皮膚から全部採取する」
「いや、まあ」
「ギルドとかは信用ならん」
「え?」
「色々あったらしくてさ。だから個人的な父さんからの依頼」
「そうだ。別にギルドが管理する場所じゃ」
「失礼っ」
サラがその場にくるとぜえぜえと息を切らし、ナガハラが振り向く。
「来たな馬鹿姫」
「だ、れがばか姫ですっ!」
サラが顔を真っ赤にし声をあげ、ナガハラが片耳を抑える。
「でかい声を出すなうるさい。洞窟の管理者は国で間違いないな」
「はい…」
ナガハラがタイシを親指で示す。
「ならこいつとヒカルに行かせる。2人で十分だ」
「本当ですか?」
「無理なら無理なだけだ」
サラがいい止まり、ルイードが戸惑う。
「まさか。あの魔獣の住処になった洞窟に?」
「そうだ。魔素が出たと言ってもこいつらには無意味だ」
「無意味?」
「血。それから受け継がれた力」
ヒカルが自分を示し今度はタイシを示す。
「死んだアスクレピオスの力が継承されているからな。そこらの魔獣でも即座に逃げる。向かってくるのはある程度の知恵のある魔獣のみだ」
「あ、だから道中魔獣が来なかったのか」
「そうだよ。それは死んだ母さんの加護でもあるよ。なら準備して行こっか。確か採掘したいってグループもあるって聞いたけど俺たちでまず行ってから行こう。彼らの力はAランクの下からB。足手纏いになるから」
「ああ」
「行くならさっさと行け。死骸について馬鹿姫軍隊が運ぶ」
「ですから馬鹿姫ではありません。あと、あの脅しのような手紙をっ。陛下に送らないでくださいませんか?」
サラが震え、ナガハラが話す。
「物覚えがある時から下の世話をしたのが俺だと」
「ですから!!!」
「はい行こう行こう」
ヒカルが金貨の箱をタイシに渡しタイシを押し出て行く。
「あー、サラ姫の親代わりでもあったんだなあの人」
「そうだよ。1人でいたから声かけたそう。まあそれから父さんのとこによくくるようになったって話。使いの人とか連れてなかったからほぼ放置されてたってさ」
「ああ。なんだかんだで、か。ナガハラさんは世話好きだな」
「あはは。そうだよ。口は悪いけどね」
タイシ、ヒカルが出るとタイシが一旦宿に戻って準備すると話し、ヒカルがわかったと答え宿へと向かった。




