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運命のミオ  作者: 鎌月
14/64

海賊3

ーくそ。

ナガハラがマスクをしムカムカしながら素早く傷口を消毒し縫合していき、ミオたちもまたせっせと働く。

「ごめんタイシ……」

ハリーが木陰で寝ながらしゃがむタイシへと謝りタイシが話す。

「いや。後ミオが来てくれたからいい。それと、その杖が?」

「そう…。でもまだ改良の余地ありだね…。命令する側の命令通りの所に当ててくれるけど相当力吸い取られて…」

「ああ」

「僕も、まだまだ未熟だ…」

ハリーがずうんと落ち込みタイシが話す。

「完璧な奴なんていない。とにかく今は休め」

「うん…」

タイシが頷くとひょこっとリュウが姿を見せタイシの隣に座る。

「タイシ君。おじさんとこ迎えに来たよ。アストレイの軍船」

タイシが立ち上がり黒い船を見ると他もまたその船を見ていった。


「タイシ。元気か?」

藍丸が船から降りるとタイシが頷く。

「ああ。そっちは何かあったりは?」

「ま、いつもより大人しくしとけってやつ。ただ、今回はリュウに言われて来たわけ」

「ああ」

「そうそう。おじさんが呼んだんだ」

「大佐。そろそろご自分をおじさん呼びなさらないでください」

びしっとした女性軍人が注意する。

「いいじゃんか。あと、ナガハラがいたけど今頑張ってるとこだから」

「まったく。わかりました」

「ああ。あの堅物か」

「知ってるのか?」

「まあね。でも、15年前に攫われたんだよ。それでイーロンにいるとわかって俺とか探したけど見つからず」

「そうそう。それでよーやく、手がかりが見つかってさ。イーロンの連中が海賊に渡したって」

「はい。ですが、今アストレイにおいて異界人差別が少しずつではありますが起こりつつあります」

「そうなんだよね。元々よく思ってなかった連中がいちいちうるさく言い始めてね。王様の言う通りだとか。まあでも、タイシ君と接して変わってくれた人たちにとっては複雑らしい。それでも、差別をしたりはしてないね。そこはタイシ君がどう言われようとも大事にして来たからだね」

「はい」

「ああ。リュウと違ってな」

「おいちび!!」

藍丸が舌打ちしナガハラがイライラしながらその場に苦笑するサイモンに背負われくる。

「お前来てるなら手伝え!」

「だったらチビ言うなクソメガネ!!」

「はいはーい。喧嘩しないでねー。あ、タイシ君。僕達は見ての通り君とミオちゃんたちとか捕まえたりとかはしないから。ただお仕事できただけ。後でカイラス港に送るよ」

「いいんですか?」

「いいよいいよ。あ、でーも、今回ここで騒動した子たちは怪我人含めて悪いけど御用ね」

「はあ!?」

アンジュが声を上げすぐさまリュウの元へと向かうも軍人たちが引き止める。

「私は私の家とか守ったんだ!」

「もちろん重々承知」

「ならなんで!!」

「お嬢。ヤーク海賊団にどうあれいたからですよ」

「それがなんなのさ!」

「殺しもだけどー」

アンジュがきっとリュウを睨みリュウがニコリとしながら話す。

「人身売買、誘拐、それから略奪に破壊行為。どうあれお嬢さんたちはそれを黙認した。1年間も」

「…」

「だから、罪に問われると言うわけ。わかった?」

アンジュがダンマリとし手下達がしょうがないかと疲れ切りながら観念する。

「しばらく女房達に会えねえか…」

「俺も婚約者に」

「母ちゃん朝悪いから」

「うるさい!!あーもおおお!」

アンジュが髪をかき乱し、蘭丸がやれやれとする。

「騒がしい奴」

「元気で何よりだよ。ま、とりあえず長くても5年くらいは更生してもらう予定だから」

「はあ!?」

「長くてもねー。まあ今回大将ほかをやつけたからその分は情状酌量ということになるから」

「訳わかんない言葉使ってんじゃない!」

「お嬢。分かります」

「俺も」

「少し罪が軽くなるってことっすよ」

「お嬢勉強苦手だからな」

アンジュが軍人達を払いのけすぐさま手下達を殴りにかかる。

「猿女め。で?俺は?」

ナガハラが尋ね、リュウが話す。

「まだしばらく隠遁生活しておいて。あの王様の事だから色々とうるさいのよ」

「なんとなくは察してはいるがずっと篭りきりだったからな。後で記事見せて話なり聞かせろ」

「勿論。それから隠遁先は蘭丸君のとこの村ね」

「ちっ。仕方ねえからな」

「まあちびの村ならそう見つからないとは思うな」

「だからちびっつつなよこのエセ医者」

「チビにチビと言って何が悪い」

リュウが襲い掛かろうとした蘭丸を苦笑しながら羽交い締めにし押さえていく。ナガハラがタイシ達を見る。

「話からしてお前。あの王に何かしたか?」

「したと言いますか…。元々嫌われていたのをさらに嫌われることをしてしまったとしか」

「ちげえ!」

「うん。王様の嫉妬と異界人嫌いが重なったのとー、アルスラン将軍の養子になってんのよ彼」

「なるほどな。難儀なものだ」

「え?」

「そうそう。まあそこは送りつつせっかくだから話すよ。後ミオちゃんもさ。ナガハラは葵さんの事よく知ってるし気にかけてたからね」

「一応な」

ミオが頷き、リュウが話す。

「ならそうと決まれば」

「ちょっとそいつに聞きたい!」

「うるせえ」

蘭丸がむかれながら告げ、アンジュがタイシを指差し海を指差す。

「あの海の魔物。あんた呼び寄せたよね?」

「ああ」

「なら、また来るのかいっ」

「来るというか、あれはこの周辺を住処。生息地としているんだ」

シンが驚き手下達が汗を滲ませる。

「呼び寄せた方法は音波だ」

「音波?」

「音だ。本来なら海溝深く。深海にいる。だから海上に出ることはそうそうない生き物になる。今回俺がそうさせたのはあいつを追い詰められると思って利用するために餌がここにあるという音波を放った。音に関しては以前暴れていた海の魔物を解体して分析してわかった後を出した。ちなみにあの海の魔物が海上にいたのは音波を出す体の部位が船の網によって切り裂かれたから深海か海上かわからなくなり最終的に深海ではない。けれどここでも食事に。しかも邪魔なくありつけるからここにいようとなって常に海上を移動し餌を求めたからだ」

「そうそう。そして、この辺りが生息地ってのは海の魔物さん。深海生物、島崩しが住んでいると解剖した体とか調べてわかったんだよ。でー、もしかしたらまた同じことが起きるかもでここに手紙とかタイシ君が送ってたんだよね」

「ええ。でも、まあ、後々王権派が勝手に処分していたことが分かりましたから。他の手紙も」

「酷い話だよね。だから、手紙を送ったのにまだきていないってことになったんだよね」

「ええ。なので、国外で送るようになりましたから。それでここにも気をつけるか引越しを検討されてくださいと理由を書いて送ったんだ。2年前に」

シンが2年前にはと考え、手下達がどうだったんだろうとシン、アンジュと交互に見るとアンジュが心当たりがありかたまり汗を滲ませていた。

「一応、渡されたら教えてくれる鳥便を使って渡したときたからなら後は向こうで決めるとおもってそれいこうは出さなかった」

「ああ」

「お嬢。心当たり、あったりします?」

アンジュがぎくりとし、シンが話す。

「破り捨てたか、無くしたか」

「な、何のこと、だか…」

アンジュがぎこちなく口のつりはしをあげると手下達が呆れんばかりの視線を向けシンがはあとため息を漏らした。


エリスが軍医に治療を受けてもらい、ミオが治療されるエリスを見ていた。

「その、治癒はされないんですね」

「私が断ったのです。これくらいでしたら必要はありません」

「ええ。それは正解。あまり頼りすぎると小さな怪我でさえも使ってしまって中毒のような症状を起こしたりするのよ」

「中毒?」

「そう。自分の体がまた怪我をした。すぐに治さないとと思い込む事があるの。寝ている時に夢の中で。そして少し当てたところに無意識に反応する事があるのよ。それは治癒を頼りすぎたことによるたまに起こる反動なの」

「はい。特に戦いがそばにあるもの。ギルドや軍と言った方々に多くみられます」

「そう。そして治療も長く続くわ。その反動を解くための薬も投与しなければならないし、下手をしたら体を固定させて動かないようにさせないといけないの。そうでないと使いすぎで体力を奪われ続けて死に至場合もあれば急激な老化が起こる事があるのよ。あと、この症状は自分で自分の体を治癒したら起こるのよ。他人ならまだいいけど」

「はい。ですのでこれくらいの怪我で一、二週間すれば治るものは怪我の治療を行います」

ミオが頷き軍医が話す。

「ええ」

「なんでも、使いすぎはよくないんですね」

「はい」

「そうよ。だから理解する事が大切なの」

ミオが頷く。

「ミオー」

とててとユナが来るとミオが驚くが杖を持った女が中へと入る。

「軍船には魔導局に繋がるゲートが設置されているの」

「そうだったんですね」

「エリス。痛い?」

「さわれば痛いですね」

「うん。なら触らない」

エリスがふっと笑いはいと返事を返し女が話す。

「お疲れ。ハリーを迎えにきたらまだ寝てたわ」

「大分体力削られたようだからあの新型の杖と言いましょうか」

「ええ。改良の余地ありか。もしくは持ち手を決めて選ぶしかないわね。ただ、勝手はいいとは聞いたわ」

「その代わり相当消耗するものみたいだから注意が必要よ。研究者にも話しておいて」

「ええ。それから麻薬中毒者ね。数が多いから流石に運ぶには難しいという事で話に来たの。責任者は?」

「今タイシ中佐と話し合い」

「いるの?」

「いるわ」

「…ふーん」

女がそわつき始めるとミオがじいと見ていく。

「私は旦那がいるけどこの子は独身でいないのよね」

「うるさいわね…。あと、うまくいけば玉の輿じゃない」

エリスがふふっと笑いミオが目をぱちくりとさせる。

「タマノコシ?」

「おじさんとーんだ悪巧みな言葉聞いちゃったー」

女がどきっとかすかにはね、軍服へと着替えたリュウが中へと入りタイシ達もまた入る。女が汗を滲ませぎこちなくしていく。

「サリバンさん」

サリバンがぎくっとしタイシが話す。

「がこちらに来られたんですね」

「え、ええ。まあ、代理でね。後ハリーの、迎えとかよ」

「代理?」

「ああ。局長の孫の1人で秘書でもあるんだ。勿論魔法も使える」

「はい」

「そうよ。あと、私とは従兄弟になるわ。私の母の妹がこの子の祖父になる局長の息子のお嫁さんなのよ」

「そうそう。彼女がここに勤めているからゲート自体実は特別でね。言えば身内の特許というところなんだよ」

「はい」

「ミーオー。海見よー。お船の中もー」

ユナが目を輝かせミオを揺らすもエリスが話す。

「ユナ。私と行きましょう。ミオはお話をしなければなりませんから」

「そうなの?」

「うん」

ユナが分かったと頷きミオから離れエリスのそばに寄る。

「なーらエリスちゃんはユナちゃん連れてあちこち回っていいよ。何かあればおじさんの名前出していいから」

「分かりました」

「うん。あ、でも機関室や操舵室、特に武器庫とかは行かないようにね。危ないし企業秘密もあるし、繊細なとこだから」

「はい」

「そこ行きたい」

「だめです。他のところにしましょう」

ユナがえーと声を上げるもエリスが手を繋ぎユナを連れ外へと出ていった。そして会議室へと来るとコーヒーをナガハラが飲み待っており、ミオが黒いそのコーヒーを不思議そうに見る。

「久しぶりのコーヒーどう?」

「不味い。やはり専門店の方がうまい」

「はいはい」

「コーヒー?」

「異界人としてきた人達が広めたんだ。似た豆が生息していたからそれを増やして作ったんだ。ただ、あれ一杯だけで300だ」

ミオが驚きパンを百個と少し頭の中で並べる。

「向こうだと何十種類もあるがここだとまだ数種類しかない」

「ブルーマウンテンが恋しい」

「ブルーマウンテン?」

「コーヒー豆の名前の一つだ」

「ま、よかったら話していこっか。適当に座って」

リュウがそう告げナガハラの隣に座る。そして、タイシが2人の前に座りミオがタイシの隣に座る。

「さあてと。まずはどこから話そうかな。ナガハラー」

「ちっ」

「いや舌打ちしない」

「なら葵について。あの時話した通りだ」

ミオが頷き、リュウが面倒臭そうに告げる。

「以上」

「えっ。えと、その」

「以上って君ね…」

「その、異界人でも術を使い過ぎれば身体に影響があるんですか?母の、病、とか…」

「だって」

ナガハラがやれやれとする。

「あるな。そして、葵は痛み止めの代わりとして術を使って痛みを止めていた。何度か注意はしたがいうことを聞かん」

「その、痛みというと…どこが」

「主に背中。腹だ。病に侵された場所を集中して自分で自分の痛みを治めていた。薬を飲むときもあったが苦いと言った」

「え?」

「あいつは向こうでは我儘なお嬢さんで育てられたんだ。ちやほやされていた。ただし、派手な振る舞いはしなかったな。つまり散財とか声を上げて我儘は言わなかった。しかし頑固。自分の思う事が出来なかったらすぐ拗ねる」

「母が?」

「ああ。そうだ」

ミオがさらに驚きリュウが話す。

「同じ異界人のリュウをよく困らせたってさ」

「ああ。あと、俺があいつに病気治療法を教えてきた。薬の事もだ」

「なら、母が薬学に精通していたのはナガハラさんが教えてくれていたからなんですね」

「言えばそうだ」

「そこ肯定するんだ」

「当たり前だ」リュウが楽しく笑み、ナガハラが話す。

「あいつが死んだことについて。あいつは予知もできたから見えたんだろう。自分の未来が。ただ。その未来は病死なのかもしれないからな。どちらにしろあいつは死んだのは確かだ。ただ言えるのは痛みからの解放と故郷に帰りたい思いだな。あいつほど帰りたいと願ったのはいなかった」

「生まれた世界に…。家族のところに」

「そうだ」

ミオが表情を曇らせナガハラが告げる。

「イーロンに来たのも似てたからだろうな。向こうも同じような国がある」

「はい…」

「ああ。後、お前という娘を守るためにという行動もあったとも思うが、故郷に帰りたいという気持ちが強く増したはずだ」

「はい…私も、育った村で、また毎日が送れたらと願ってました。ですがもう、村もありません」

ミオが拳を握りしめる。

「私は、亡くなった母の分も、村の皆さんの分も生きて」

「なら治療しろ」

「え?」

「治療?」

「あ。何か病見えた?」

リュウが話し、タイシが告げる。

「その、小さな黒い影」

タイシの頭にリュウが持ってきていた書類バサミが当たるとミオが驚きタイシが汗を滲ませる。

「見えているならいえ」

「ま、まだ、この目に慣れてなくて」

「はあ?」

「まあ話した4代魔獣の一体の」

「アスクレピオスか。あの女は腕利の医者でもあるぞ」

「え?」

「あ、もしかして会ったことある?」

「ああ。後、言っておくが元々アスクレピアだからな。俺がアスクレピオスと戒名させた」

「え?そんなかんたんにできんの?」

「似た名前だし、浸透すれば簡単だ。そして。あの女の目は病を見ることもできる。俺は俺独自のここにきた時に養った目の力ではあるがな」

ナガハラがそう告げミオを見る。

「今はまだ小さいが胸に腫瘍がある。悪性なら母親と同じガンという病と考えていい。良性ならただ取り除くだけだ」

「その。いいか悪いか…調べたらわかるんですか?」

「ああ。わかる。ただし調べるには調べる環境が必要だからな。オペの」

「オペ?」

「手術って言ってね。体を切って悪いところを取り除いたり、血が流れていたら直接血管を結んだりとかを体を切って治療する方法だよ」

「ここは向こうと違って治療法が限られてるからな。切開してとらないとわからん」

「向こうではその切開はないんですか?」

「少しばかり切開するが内視鏡を使う。細い管を入れて腫瘍を採取する。ものの五分で済む。ただここだと皮膚に筋肉の奥にあるその部位を見つけるために長く切るからな。だから終わった後の痛みもあれば縫合も何箇所も行わなければならない。下手なやつは血液を流す血管も切りかねないから負担も時間もかかるが今はこの世界ではこの方法しかない」

ミオがほうほうと頷き、リュウが話す。

「イーロン」

「はい」

「あそこは医療についてただの実験としか考えてなくてね」

「ああ。だから俺は全てに反対した。医療は人を助けるためのものだ。医療の進歩のためにと殺すのを問わずにしたくはなかったからな」

「そしてナガハラの意見と考えに賛同するイーロンの若い医師の子達が多くて上がお怒りになったんだよ。それで、なら無理矢理従わせてやると両足の腱をきって拷問もしたそうなんだ」

「やつらも両手は切らなかったがな」

「そこは保険じゃない?君ほどの腕前はこっちにもいないし、アストレイでも医療の至宝と言われていたからね」

「馬鹿馬鹿しい」

ナガハラがコーヒーを飲み、タイシが話す。

「俺はその話全く聞いたことありません」

「そうだろうね」

「あの王は異界人をとことん嫌っている王でな。葵については、違う」

「違う?」

「葵は顔が良かったからな。そのせいでよく男関係に悩まされていた。あの王は葵を見て言葉を失った」

「それ私初めて聞いたな」

リュウが目を丸くし、ナガハラが話す。

「特に話す必要がなかったからな」

「えー」

「うるさい」

「なら、その後は?」

「ああ。どうも王が接触を試みていたようでな。ちなみに葵は迷惑していた。そして、葵だが王の手の者によって騙され倒された隠し部屋にいた王に陵辱されかけた」

ミオが驚愕し、リュウもまた目を丸くし、タイシが話す。

「かけたことは未遂で終わったんですよね?」

「そうだ。といっても薬を飲まされた上、全裸の状態にはなっていたようだがな。その葵を連れてきたのがアルスランだ。それから奴に対しての王の嫉妬と恨みの凄まじさがとんでもなかったな」

「そりゃ、ねえ……」

「母が、父の元を去ったのは、そのことも原因でしょうか……」

「一つではあるな。ただ、国内ではあれど王に知られていない土地に家を設けてそこで暮らしていた」

「2人で?」

「ああそうだ。それからしばらくして葵がお前を身籠った」

ミオが頷き、リュウが頷くもやれやれとする。

「そのことは将軍と葵が秘密にしておいて欲しいって言ったの?」

「葵は違う。アルスランだ。あいつは口数の少ない不器用な奴だからな。それでも大切にしたいものを守ろうとする意思は強い」

「わかるかもしなくはないね。タイシ君のことがそうだし。それに部下も尊敬している人が多いしなあ」

「お前は自堕落すぎるからだろう」

「えー、でも私の元を離れずについてきてるけどなあ」

ナガハラが鼻を鳴らし、タイシが話す。

「なら、死地によく行かせられるのはその事件のせいですね」

「行くならそうだ。そして、あの王も葵を探していた。娘がいてもだ」

「自分のものにするためにでしょうか?」

「しらんが言えば嫉妬だ。そして嫉妬は殺しも含める。あとは独占もだな。そして捕まった場合お前については王もだが王が命じた他の連中が拷問をして殺すだろうが葵の娘の場合は、王自ら何かしでかそうとすると俺は思うな」

「ちなみにナガハラさんは?」

「ナガハラには手は出しにくいよ。王でもね」

「なぜです?」

タイシが尋ねリュウが楽しく話す。

「言ったじゃん至宝って。彼は他国でも国の王族親族を救ってきた腕を持っている。言えば彼を殺せば今のアストレイはおしまいなわけ。だから、攫われてようやく居場所がわかって今しかないと思って左大臣に出すもの出して王の返答待たずに救出に来たわけ」

「あの髭か」

「そうそう。君だけだよ生意気言えるのは。後手紙では勝手にしたことで次の港で一週間僕たちは謹慎という休み。そして君についてはアルスラン将軍と同じ屋根の下で暮らすようにというご命令。話だと見張れということだけ言われたらしいからならその通りにするんだって」

「ああ」

「その、左大臣の方は王権派ではなかったのですか?」

ミオが尋ね、リュウが話す。

「ちゃんと勉強してきてるね。そうだよ。だけど、今までのタイシくんに対する行いに常にモヤついてたんだよ。そして、ナガハラについてだけど王様に極秘でまだ赤ん坊だった娘ちゃんの治療を行ってもらったから恩があるわけ」

「ああ。突然の心停止だ。原因は室内の気温差によって起こったヒートショックによる発作になる。あの時は俺も近くにいた。あの髭もすぐに俺に頼ったから助かった話だ」

「ヒートショックは、聞いたことないです」

「寒暖差だ。大人でも起きるものでな。冷たい体のまま熱い湯に心臓のある胸まで浸かる事で急激な温度変化によって血圧が変動して心筋梗塞を起こす。つまり心臓が立ち所に止まる。血圧は心臓が血液を全身に送るために心臓の壁を収縮させて広げ圧迫して流す圧力だ。運動をして息が上がり心臓が鼓動を早く打つ。血圧が上がっているのはこの時だ」

ミオがほうほうと頷きリュウがじいとみていく。

「ヒートショックはその寒暖差によって血圧が安定せず心臓の動きが通常に作動できなくなり最終的には止まってしまい死に至る。処置が早ければまだ間に合う可能性はあるが遅ければそのまま死ぬことになる。あの娘を助ける時は冬だったからな。寒いからと先に湯につけたのが招いた結果だ」

ミオがほうほうと頷き、リュウが話す。

「君、なんでそんなに細かく説明してるの?」

「二度三度と鬱陶しく聞かれるよりも一度で全部済ませたほうが早いからだ。葵がそうだったからな。それに育てられたなら同じだろう」

ミオが目を丸くし、リュウが話す。

「へえ」

「母がですか?」

「ああそうだ。どうあれ血は血だ。まあただ」

ナガハラがタイシを見る。

「お前は父親に顔は似ているが性格は似ていない。良かったなになくて」

「ええと、まあ、好きではなかったので」

「ならいい反面教師と」

どんと音が響くとミオが驚きナガハラがイラっとしリュウが立ち上がる。

「おっとと。来たかな」

「おい。お前まさかやっぱり」

「あはは」

ナガハラが舌打ちしリュウがラッパの形をした伝声管の蓋を開ける。

「リュウだ。会議室にいる。来たか?」

『こちら操舵室マーゼンです。来ました』

「ああ。今から向かう」

『了解』

「まさか、アストレイ王の手のものですか?」

「その通り。いやあはは。これ裏切り者の船になってしまったんだよな」

「え?」

「元々嫌われ者の俺がアルスランと同じ屋根の下にということがおかしな話だ」

「左大臣が捕まったんだよ」

「だろうな」

リュウが出ていき、ナガハラがやれやれとする。

「追っ手が元味方の可能性はあるが、ヤンガルの連中の可能性もある。リュウからあらかたは聞いていたからな。組んでいると」

「なら、話は本当なんですね。資金援助をしていたと」

「え?その、アストレイ王が?ヤンガルに?」

「そうだ」

「化け物作りの金を渡していたのさ。あれもまたイーロンと同じ事をしていた。いわば、後援者になる。金遣いが荒いのは知ってもいたからな」

「それもまた、自分よりも立場が下の人たちが上に立つのを好きではなくて…でしょうか?」

「自分のプライド。王としての威厳。その出鼻を常に挫かれては腹が立って仕方ない話だろう?そして惚れた女に拒まれた挙句、好きでもない男に弱みを握られた。しかもその事を公表すれば国どころか各国を敵に回すその弱みをアルスランが握り続けてそばに居続けるのは相当なストレスなはずだ。だからこそさっさと殺したいが奴も隙がないから殺せない。逆に味方が増えている挙句だんだんと自分の立場がより弱くなり国民の信頼もなくなっている。瀬戸際という奴だ」

『タイシくん。タイシ君まだいる?』

「はい」

タイシが急ぎリュウの声が響く伝声機の前に来て蓋を開ける。

「まだ居ます」

『よし。なら、中型の軍船が2隻。それもイーロンの軍船だ。あと、一つは教会のみたいだね。隠してはいるけど』

「なら、アストレイ王の刺客です」

『分かった。それと、魔術師達もいる。軍船の方も照準合わせてきたから、揺れるよ』

伝声感がこんと音が響く。

「はあ。面倒臭い」

「移動しましょう」

「ああ」

揺れが起こるとミオが壁にしがみつき恐々としタイシがナガハラの元へときてナガハラを背負う。

「あのバカの息子」

「えーと、まあ、はい」

「ああ。甲板にいけ」

「え?」

「アストレイ王は俺も狙っているからな。理由の一つとして俺が居ないと出来ないことがあるからだ」

「出来ないことですか?」

「ああ。葵の娘も来させろ。的を相手に見せた方が良いからな」

タイシが困惑しながらも頷きミオを振り向くとミオが意を決し息を吸い吐き出し行きますと告げた。


甲板にてー。

軍人たちが慌ただしく攻撃の準備や攻撃に備え動いていた。そしてその看板の船の先にいたサイモンが嫌な顔をさせマルセールが望遠鏡の先の一艘の船を見てポツリと話す。

「なーんか、俺も見たことある教会のやついるなあ。蒔いたことあるけど」

「それはまた運が良かったですね。あと、カイルという名前で元同期です」

船の近くで波の水柱が立つとマルセールが慌てて柵にしがみつきサイモンもしがみつく。

「近くなってきた!」

「ええ」

「ナガハラ医師!ここは危険です!」

「中佐もっ」

2人が振り向くと軍人たちが慌ててサイモンたちの元へと向かう3人を見る。そしてタイシが立ち、ナガハラがマルクールから望遠鏡を奪い軍船などを見る。

「向こうも気づいたな」

「早いですね」

「分かってたことだ。それと、木造船の方。魔人の腕を持つ女がいるな」

ミオがドキッとしマルクールが話す。

「教会の暗部になった元ギルドの女ですよ。お嬢さんの追っ手になったやつらしいです」

「ああ。名前はリリー。ミオを敵視しています」

「女の敵視は目的がわからないことが多いからな。何せ感情のまま動く」

ナガハラが望遠鏡を外す。

「魔人の一部を使った人体実験がイーロンで行われていた。失敗すれば己が魔人とかし、最終的に自我を忘れ人を襲う存在となる。ただ、うまく同化すればその力は人智を超える。俺が知る限り1人いる」

「魔人と同化した人間がですか?」

「ああ。あと、どうかとは言ったが自我を持ったまま生きている魔人だ。つまり、体は頭のてっぺんから爪の先まで全て魔人になった。だが、頭の中は人間であった頃と変わらない。忘却していないということだ」

船から一斉に1人乗りの小型の飛行機が飛び立つとその飛行機の底に人が捕まりぶら下がっていた。

「はあ?」

「あれはなんですか?どうして人が」

「特攻部隊だ。先人部隊になる。あのやり方は危険だから以前禁止にしたんだけどな…」

「お前の話など聞かない連中だろう?後この世界だからな。別にパラシルート入らずに着地可能だ」

飛行機が上を飛ぶとぶら下がっていたものたちが一斉に看板目掛け落ちすぐに魔法で着地すると即座に戦闘へと入った。サイモンが前に出て剣を持つ男のその剣を大型のナイフで塞ぎ止め、タイシがはあと額を手にしため息をする。

「勘弁してくれ」

「え?」

「操られている」

「ですねっ」

サイモンが蹴り倒し、マルクールが顔を顰める。

「こいつら若さんの部下です」

「えっ」

タイシが頭をかきすみませんとナガハラを下ろし即座に後方の船を睨むと柵に片足を乗せ空間から巨大な槍を出す。ミオが驚きリュウがうわあと思わず声を上げる。タイシが体を逸らし槍を投げ飛ばすと槍が炎を纏い進み船の甲板を貫き魔術師たちがいる部屋に突き刺さると一気に炎が巻き上がりその場にいるものたちを包み込んだ。リリーが汗を滲ませ火災が起き煙が上がり失速する軍船を見ていき、男、カイルが小さく唸り先をいくリュウの船を見る。

「流石だな」

リリーが柵に捕まり前に身を乗り出し再び槍を握り逸らすタイシを見る。

「次はこっちよ!!」

カイルやリリーたちがすぐさま左右に分かれた途端、甲板を貫きけたたましい炎と黒煙が上がる。リリーがゾッとしカイルが舌打ちする。

「化け物め」

カイルがすんと鼻を鳴らし冷や汗を流す。

「船を離れろ!!火薬が!!」

かっと光が迸ると木造船が爆発四散する。リュウが息をつきやれやれとし副艦長のマーゼンが呆然とする。

「彼。人殺したくないって話してたのにな」

「え?」

「覚悟ができたってのもあるだろうけど、やっぱり自分の部下を捨て駒同然に使われちゃ嫌になるよね」

リュウがやれやれと頭をかき後ろを見る。そこに縛られ力を失う蘭丸が横たわっていた。

「嫌なやり方。中央の船にまだ彼の部下が生きてるみたいだから」

「わかるのですか?その、中佐殿は」

「分かるよ。だから戦でも味方同士による事故死みたいなのしてないから。あと、使われた時に彼はすぐに助けてたもん。こっちも敵艦やってくれたからやれるだけのことはしないと」

リュウが手を挙げ旋回を促すとマーゼンたちがすぐに答え船の進路を変えた。

リリーが破壊された木造船の破片にしがみつき息を弾ませながら旋回する船を見る。

ー乗り込む気?

リリーが軍船を見て急ぎ足を動かすも突如宙に浮くと小舟に乗せられる。そしてすぐにカイルを見上げる。そのカイルは片腕がなく縛られており、リリーがカイルとカイルに拾われた船員たちを見る。

「悪いがここまでだ。奴はこちらが思う以上の化け物だ」

その船員たちは恐怖に震え上がっておりリリーが口をつぐむ。

「アストレイ王の件は破棄する」

「でもそうすれば私たちも」

「どうせあの王は近い時に落ちる。枢機卿にこのことを伝えしばらく身を隠す」

「…」

リリーが船を見てすぐに魔人の腕を向け伸ばし掴む。

「おい!」

リリーが小舟から離れ軍船へと向かうとカイルが舌打ちするも痛みが走るとなくなった片腕を掴み歯を噛み締め唸った。


ー聞いてないっ。

体中拷問の跡と共に手足を縛りつけられたマルクルを男が殴るとマルクルが睨みつける。

「なぜあんな化け物だと言わなかった!たった一つの槍で船が沈められるだとっ」

「……」

「くそっ。しかも相手はリュウの船だ」

男が爪をかみ汗を流す。

「海軍最強部隊っ」

『司令官!』

伝声管から音が響く。

『すぐに船長室に来られてください!!乗り込まれます!!』

「クソが!!くそ!!」

男が声を上げ部屋を離れる。

ー化け物とこちらも分かっていることだ。竜殺しと言われた方だぞ。そこで分かれ能天気が。

再び扉が開けられるとマルクルがびしょ濡れのリリーを見て眉を寄せる。リリーがマルクルを見て思わず足を止めるが扉を閉め近づく。

「あなた、あのタイシの直近の部下でしょう?」

「……」

「…答えられないの?」

マルクルが息をつき口を開けるとリリーが舌がないのを見て頷く。

「分かった」

リリーが拘束を破壊するとマルクルが力無く床に倒れ唸る。リリーがマルクルの腕を肩に回し立ち上がる。

ー念話は使えるでしょう?

ーああ。お前は誰だ?

ー向こうの敵。

ー教会の暗部か?

ーそうよ。

ーなら、聞いていた元ギルドの者か。

リリーがそうよと答え外へと出ると闘う声の音を聞く。

ー私をどうする気だ?

ー利用するだけよ。私の目的はミオ。ただ1人。

リリーが支え歩きマルクルがふうと息苦しく息をしていく。

ー自分の運命を変えられたからか?日常を全て1人の少女のせいで持ち去られたのを恨んでいるのか?

リリーが奥歯を噛み締める。

ー耐え難い苛立ちを持って、それでどうする気だ?

ー…私だって。でも、こうでもしないと収まらないのよ。何もかも捨ててしまった原因に。

リリーが奥歯を噛み締める。

ー女というのはわからない。すぐに腹を立てて癇癪を起こす。俺の妻もそうだ。

ー家族がいるの?

ーああ。いる。今は違う国だ。危険だからな。他のものたちもそうだ。全員家族を他国へと送った。

ーアストレイ王が、何かするから?

ーすると分かっていた。全員な。

マルクルが顔を歪め、リリーが重くなったマルクルに体を引っ張られバランスを崩し膝をつく。そきてぜえぜえと息を荒げるマルクルを見る。

ーちょっと。立ちなさい。

マルクルが血を吐くとリリーがすぐに寝かせ汗を滲ませ治癒を行う。

ー毒?じゃない。中の方。

「貴様何をしている!女!」

リリーがはっとし先ほどの男が走りこちらへと向かう。リリーが汗を滲ませ近づく男を見る。

ーリリー。あなたは優しくあって。人を守れる人に。

「違う。私はもう違うっ。来るな!」

リリーがすぐに魔人の腕を向け男たちを突き飛ばし遠くにはなし遠ざけるとその手を引き息を荒げる。

「おい」

リリーがビクッとはねすぐに後ろを向きマルクールとマルクールに背負われたナガハラを見る。

「ちょっ。旦那やばいって」

「おろせ。見る」

「はいすぐにでも。いてっ」

頭を叩かれたマルクールが苦しむマルクルのそばに座ると胸を突き叩く。

「そこの女」

「な、に」

「その魔人の指でここを突き刺せ」

「はあ?」

「ちっ」

ナガハラが掴もうとするとリリーが即座にその魔人の腕を引く。

「ふん。ある程度の時間触らなければ問題ない。触られるのが嫌なら刺せ」

リリーが口をつぐみ奥歯を噛み締める。そしてナガハラが告げた部分に指を当て貫く。マルクルが苦しく唸り、ナガハラが抑える。

「まだ深くさせ。指先に貫いた感覚が無くなったら引け」

リリーが口をつぐみマルカールがハラハラとする。そしてリリーが指を引き息を弾ませる。

「上手いな」

リリーがナガハラが指差した先を見るとマルクルが先ほどと違い呼吸を和らげ顔色も良くなっていた。

「え…」

「な、なんで?」

「魔人の力は別に殺すためだけじゃないからな」

リリーがナガハラを振り向く。

「どういうこと…」

「こ、の女っ。そして、ナガハラ!!」

「いちいち怒鳴るなうるさい。デブ」

男が顔を真っ赤にし震える。

「あの王も相当手持ちがないんだな。こんな使えないただのデブを使うとは」

「なんだと!!」

「豚って言われてましたけどあの人」

「豚に謝れ。やつの体脂肪率は俺たち人間の男よりも低いんだぞ。つまりほぼ筋肉と水分だ」

「まじですか?」

「女はさらにその倍だがな」

「おい!!」

ナガハラが苛立たしくし、男が銃を向け引き金を引くとリリーの腹部を縦断が貫通する。リリーが顔を歪めその場に倒れ腹を抑えマルクールがリリーから男を見る。

「この裏切りの雌豚が!!」

「阿呆が」

「え?」

「その女の腕を見ろ」

マルクールが腹を抑えるリリーの魔人の腕を見ると脈打っていた。

「あいつが来る」

「あいつ?」

男の頭に黒い巨大な手が当たり男をそのまま壁に当て潰す。部下たちが唖然とし血に塗れた手をもつ魔人が目を赤くさせのそりと起き上がる。

「ま、じん」

「おい。逃げるぞ」

「え?」

「俺とこいつを抱えていけ」

「そ、そんな無茶なこと」

魔人が男の部下たちを殺しにかかるとリリーが奥歯を噛みながら起き上がるもすぐにたおれる。

ーう、くう。

マルクールが青ざめるも。

「何してんですかっ」

「サイモンまじ神っ。先生抱いてくれ俺ダンナ抱いてすぐ逃げるっ」

サイモンがすぐにナガハラを抱き上げ、マルクルがマルクールを背負い走りかける。

ーなんで、きたの。ここに。

「ど、うして……」

魔人が殺し終えるとリリーを見て近づきすぐに抱き上げる。

「あ、なた、は、何が、したい、の」

魔人が何も答えず先ほどきた穴をくぐり外へと出るとその翼を広げリリーを連れ空を飛んだ。それを甲板にいたタイシが見上げ見ており、竜たちもまた見ていた。そしてナガハラがやれやれとする。

「あれが俺が知っている自我が残った魔人だ。名前は知らん」

「はい」

「あいつが手触れた途端頭潰すわ溶かすわで怖かったわ…」

「それは、相手にしたくないですね」

「したくねえよ」

「マルクルっ」

タイシが駆け寄りマルクールがマルクルを下ろす。

「肺に血が固まっていた。処置は済んでいる」

「あの魔人の指で?」

「魔人の指?」

「追っ手の女に今度会った時は借り一つと思っておけ」

タイシが頷き、ナガハラがマルクルの口を開けるとマルクールが僅かに顔を歪めるもすぱんとマルクルがその頭を叩く。

「その顔やめろうっとおしい」

「で、でも」

「これだけで済んだならいい話だろう?」

「けど、し」

タイシがマルクールの口を手で塞ぐ。

「ここの船長は?」

「お前も見たはず。魔人がやった。あのデブが女を撃ったからな。奴にとってあの女は特別なようだ。だから気をつけたほうがいい」

「分かりました」

タイシがマルクールから手を離しナガハラが切り傷などを消毒し縫合するとリュウが顔をしかめその場にくる。

「ねえ?船長っぽいの。頭がとんでもなくぐちゃみそに潰されてたんだけど…」

「魔人がやった。こいつがここでは一番な重症者だ。処置が終わったら運べ」

「分かったよ。あと、マルクル君もこっぴどくやられて」

「相当な熱意で反論したんだろ」

タイシが僅かに奥歯を噛む。

「海に落下した連中は?」

「教会の方は逃げた。軍の方は拾い上げてる。あと、おじさんタイシくんを敵に回したくないよー。船沈めちゃうもん」

「…」

「龍を二体殺された方ですから分かってたはずです」

エリスがやれやれとその場にユナとミオを連れくる。

「龍は天災とも言われている存在。軍船相手でも太刀打ち出来ません」

「まあ確かに…」

「腎臓も抜かれてるな」

タイシがはっとしエリスが眉を寄せ、リュウが話す。

「なんで腎臓?」

「売れるからだ。仕方がない」

ナガハラがやれやれと頭をかく。

「小僧。あの女を頼れ。アスクレピオスを。あれは再生の力を持っている。ただし、再生ということは何かしらのリスクはありそうだが、今の状態での生活はままならないしこのままだと衰弱死する」

ナガハラが手を下ろす。

「その目を待っているならあの女も聞いているし場所も教えてくれるだろう」

「はい」

「ああ」

「た、たすけてくださいっ。何もかもあの王がっ。王がっ」

リュウの部下が拘束した貴族の男を連れてくる。

「お?パトロンだね」

リュウがその場を離れる。

「支援者?」

「そうだ」

「マルクール。話が出来た。まだハリーたちがいるから連れて行ってもらう」

「はい」

ミオがタイシを振り向きサイモンが複雑そうにする。

「また何かされます?」

「行ってからになります。ナガハラさんもくるようにとのことでした」

「はあ」

「お願いします」

「分かった。面倒臭いがな」

ぎゃあと悲鳴が響くとミオがビクッとし悲鳴の上がった先を振り向こうとするが突如視界が白の世界に包み込まれる。エリスがやれやれと目を丸くするユナを抱きながらそわつくミオへとサイモンが張った結界の中で話す。

「ユナがいますからね」

「はい」

「ここなに?」

「結界の中です。溶けるまで大人しくしましょう」

ユナが頷きミオがエリスに寄り添うとエリスがミオを抱く。そしてサイモンがやれやれとし折れた腕を押さえしゃがみ込んだ貴族と両手をあげ見下ろすリュウの背中を見る。

「あの人今腕捻っておりやがった」

「言わなくても分かりますよ」

「ごめんごめんつい」

リュウがにこっとししゃがむと苦しむ貴族へと話す。

「その話が本当ならさ。そっちも加担したってことだよね。拷問」

「ち、ちが。見てた、だけで」

「みてた?」

リュウが折れた腕の今度は指を摑み折ると男が再び悲鳴をあげた。

「腎臓ぬいたのだーれだ?わかるんじゃない?」

「イ、イーロンの、医師、だあ。王、の、医師も、して、て。してて」

「おいこらおっさん」

「邪魔しないでよ」

リュウがやれやれと立ち上がり気まずくするマルクールに背負われたナガハラを見る。

「傷跡を見て分かっている。それとやるなら個室でしろ個室で。あと、小僧たちと出かけるからな」

「分かったよ。なら気をつけてね」

「ああ。それと、そいつは猫背だ。伸ばしてなおしてやったらどうだ?」

ーの、のばす?

「あ、そうなんだ。分かった」

「ああ」

「ま、ま、っで、ナ、ナガハラ。そち、らは、医師、で」

「悪いな。俺はエセ医師。まがいものの医師だから治せない」

「ち、ちがっ。て、てっか」

男が必死に告げるもリュウが目の前にくるとヒッと声を上げた。そしてナガハラたちの後ろで助けを求める声が響くが無視をしサイモンが話す。

「あのー、大佐は何かされてます?」

「知らん」

「リュウ大佐は若い頃に体術の大会で三度優勝されてる実力者ですし俺も体術を時間がある時に教わりました。型とかない独自のものだったですから」

「ええ」

「どうでもいい。話はついた。魔法使いの小僧を起こしてさっさと言って済ませる」

タイシがはいと返事を返しその場をすぐに離れハリーが休む部屋へと向かった。


ー久しいな。

深い森の中でアスクレピオスが楽しく岩に座りタイシたちを見下ろす。そしてマルクールに背負われたナガハラが話す。

「ばばあになっているかと思えば変わらないな若作りは」

「ふふ。お前くらいだその口からそのような言葉が出るのは」

アスクレピオスが岩から降り着地するとタイシに運ばれ浮かぶマルクルを見る。

「舌。それから腎臓だ」

「一つだけ」

「なら腎臓だな」

「再生には力を使いますよね?」

アスクレピオスがタイシを見てふっと笑う。

「ああ。生命力を使う。このものではなく私のだ。それでもというなら使ってもいいがそれだけの代償は払ってもらう」

「分かりました」

「えーと、若さん…。あー」

マルクールがしどろもどろとするもマルクルの腹部にアスクレピオスが手を当て青い光は放つ。マルクールが戸惑い、ナガハラがやれやれとする。そしてアスクレピオスが手を離しタイシを見て鱗を出す。

「第一の処置は済んだ。あとはこれを埋めればいい。なくなったものの変わりとなる」

「はい」

「おい。向こうに行くぞ」

「ええ、でも若さん…」

「マルクール。ナガハラさんと一緒に先に戻ってくれ」

「ええと」

「問題ない」

マルクールがたじたじとしながら頷きその場を離れ去る。アスクレピオスがマルクルの腹部に鱗を埋め再び光を当てる。

「向こうの世界では腎臓移植をしなければ助からないです。ただ、移植したところで後遺症もあります」

「ふふ。そうか。ここでは力が全て。ただし代償がつく」

マルクルの顔色が良くなるとアスクレピオスがマルクルから手を離しマルクルを消す。すると遠くで待機していたハリーの元にマルクルが突然現れ寝かせられるとハリーが驚き顔色、ケガの状態を見ているところでナガハラを連れてきたマルクールを見る。ナガハラが降ろされマルクルの状態を見ていきマルクールが落ち着かず張られる結界を見て大丈夫かと心配をしていく。

ーこれでいいんですか?

ーああ。

アスクレピオスが裸となったタイシの首筋に牙を立て噛むとタイシが僅かに顔を歪めるも血を呑みながら覆い被さるアスクレピオスを抱きはあと息を吐く。アスクレピオスがタイシの血を付着させながら体を起こすとそのままタイシに近づき口付けを行った。


マルクルが目を覚ますと視線を彷徨わせる。

「おい旦那。おい」

マルクルがマルクールを見て僅かにため息をするように息をつくとマルクルが顔を顰める。

「なんですかその息のつき方」

ー別に。若は?

「アスクレピオスの所だ」

マルクルがナガハラを振り向く。

「お前の体から抜き取られた腎臓。中身の再生のツケを払ってる所だ」

ーな。

マルクルが起き上がるもすぐに青ざめ後ろへと倒れるがハリーが支える。

「おいおい…」

「大人しくしておけ阿呆。あと、早かったな」

「え?あっ」

マルクルがなんとか顔を横へと向けるとタイシがやってくるのがわかり安堵する。

「若さん。なんか落ち込んでません?」

「いや、まあ、その…また、次回」

「次回?」

「お前女とやったことないな」

「はい。ありません」

「いやそうしたら俺もないっすけど」

「僕はあるんだなー」

マルクールがハリーを足でこづくとハリーが止めてよと手を振るい止める。

「後どうせお前だからやり方すら知らないだろ?その手の本を見たりとかもなさそうだ」

「本は…興味なくて捨ててました」

「いや興味なくて捨ててたんですか若さん」

ーお前と比べるな。

「ならお前。自分の何を女のどこに入れるか知らないわけか?」

「え?」

「うわあ。知らないかあ」

「いやー、俺もそれは知ってはいるんですけど」

マルクルが気まずくしタイシが汗を滲ませる。

「きょ、興味、ないから…何も」

「分かった。性教育についてはおいおい子を持つ男の経験者に聞け。それとこのマルクル。あらかたの怪我は完治している。足については歩行訓練さえまた再度行なえば問題なく歩ける。舌に関しては死ななかっただけありがたいと思うしかないな」

マルクルが頷きハリーが話す。

「でも味覚とか…」

「切られたのは半分ほど。舌先に集中する甘味感じない。塩味はあらかたであとは感じる。奥の部分が一番感じやすい所だから感じない甘味についてはあらかたそこで補えることはできる」

「へえ。場所によって味覚違うんだ」

ハリーが驚き、マルクルが話す。

ーありがとうございます。治療についても。

「俺は指図しただけだ」

「マルクル。操られた部下は怪我は負っているが無事だ」

マルクルが安堵し頷く。

ーよかったです。ですが。

マルクルが拳を握り険しい顔つきへと変わる。

ー王が国外で反乱分子との事で処刑を行う手筈を行なっております。その中に左大臣もですが、アルスラン将軍と父もおります。

ハリーたちが驚き、マルクルが話す。

ーそして、第三王子も。

「というと、あのメガネ?」

「うん」

ー彼は私生児で父親である王に反発していた。

タイシが唸り、ナガハラがやれやれとする。

「誘ってもいるな」

「ええ。ただ、リスクが大きければ部下たちが多数操られていた。ヤンガルはオラクル達の国でもあるので魔法に長けている」

「そうなんだよね。でも、王様も必死なわけ?なんか病気持ち?もしくはより自分の立場が危うくなってきたとか?」

「どれも当てはまりそうではある」

「俺としては狙いはお前とミオの可能性が高い。アルスランを出してきたのが引っかかる」

「何故ですか?」

ハリーが尋ね、ナガハラが話す。

「分からんがもやっとする。もしアルスランが処刑されれば諸外国の外交に多大な影響を与える。左大臣のやつもだが、あいつも外交が得意だからな。他国を敵に回す」

ーあの船長が2日後に処刑が始まると話しました。話したのは昨日です。

「なら明日」

マルクルが頷きタイシが唸り頭をかく。

ーミオを連れて行けばいい。

ーでもそうすれば。

ー私も隠れ潜む。騒ぎを起こそう。そして、終わった後にお前は学べ。

ー……今そんなこと言ってる場合じゃないでしょ…。

タイシが悶々としていった。


ーんんんう。

桜が裸体で伸びをし欠伸をする。その隣にマーラックが同じく裸で眠っており桜が起き上がりベッドから降りると服を着て行き朝食の支度をする。そこにマナがリュウを抱きながらやってくる。

「おはよーございます。騒がしくなかったですか?」

「気にはしない。しかしいつそんななかになったか気づかなかったな」

「あー、なんか自然となりましたね」

桜が仕込んでいた魚を壷から出し野菜と合わせ煮込んでいく。そこに上半身裸のまだ目覚めていないマーラックがくるとマナを前に気にせずサクラを後ろから抱きしめ体を預け甘えていった。

ー珍しい。

倒れていた兵士の足をラドンが掴む。その兵士は小さくうめくも意識をなくしたまま動かなかった。ラドンが兵士を下ろし斧を持ち振りかぶる。

「あーいたいた」

ラドンが手を止めサクラが深いカゴを背負い来ると珍しそうに兵士を見る。

「今日のご飯ビーフシチューですよとー、生き餌とってきたんですか?」

『ここにいた』

「ならここじゃなくて家でしましょうよ」

ラドンがやれやれとし斧を下ろし背負い直すと兵士を担ぎ家へと向かった。


ーぎゃああああ!!

目覚めた兵士がラドンを見て叫び自分がテーブルの上で縛られ動けなくなっているのがわかると必死に暴れる。

「ラ、ラダン!?待て待て!頼む助けてくれ誰か!ひっ!?」

顔の横に包丁が突き刺さると固まり震えていく。

『うるさい』

「中々元気な声が上がったな」

ラドンがやってきたマナを振り向くとサクラがツボを持ち来る。

「なんかさっきより元気になられてません?」

「術式だろう。術中にかかっていた」

「へえ」

「異、異界人」

兵士がなんとか声を出すとサクラが頷く。

「そうですよ。でも私のような人」

「マ、マサキっ」

「ん?」

サクラがまじまじとその兵士を見るとマナが兵士の鎧に刻まれ消えかけた紋章に触れる。

「アストレイの者だな」

「あー、なら、タイシ君の部下かー。ラドンさん待て」

ラドンが大きな舌打ちをするとマナが吹き出しケラケラと笑う。

「まあ聞き終えたらあとは好きに」

「そ、それはやめてくれ!死にたくなければ食べられたくもない!」

「冗談ですよ。なら、ラドンさん。今日の分はありますからまた次回で」

ラドンが鼻を鳴らし背を向け離れると男が力無く頭を落とし大きく安堵の息をついた。


「どうぞー。ふつーのお茶です」

鎧を脱ぎ手当を受けた兵士へとサクラが茶を出すと兵士がぎこちなく頷く。そして、マナが子竜を胸元に乗せながらハンモックにのり揺らいでおり、サクラが話す。

「アストレイの紋章が何で削られてるんですか?」

「それは、裏切り者として。捕まって」

「はあ」

「捕まったあとは、訳がわからなくなってしまって。自分がここに、いるのも。わからないんです。その、場所とか」

「はあ」

「弟子に嫉妬した王。ただ他にも弟子を危険視した連中がその王を唆し弟子の部下達を操ったんだろう」

マナが眠る子竜を撫で、サクラがはなす。

「マサキ君がいるなら心配だなー。教会のせいではぐれたし」

「マサキと言う子供なら他の子供達と共に先に魔導局に避難をさせたと聞いた」

「魔道局?」

「弟子の友人達がいる」

「なら、問題ないかな。あと、タイシくんも大変だな」

サクラが座り自分のお茶を飲む。

「向こうでも世話好きだったけど、お家とは仲が悪くて常に嫌がらせされてたからな。学校の成績も改竄されてたし。頭いいのに」

「それは、こちらでも。王が全く認めてくださらず」

男が拳を握る。

「あのような振る舞いばかり」

「アストレイの兵士がここにもだ」

「あ、マーラックお帰りー。マーラックもお土産持ってきたね」

男が後ろを振り向きすぐに立ち上がると縄で縛られそりに乗せられた3人の兵士たちを見る。サクラが近づきまずはとお互いキスをしあうと今度はしゃがみ3人を見る。

「そこらをふらついてうろついていた」

「ここを探してるとか?」

「可能性はあるな。ここは迷いの森基私の術式下にある結界の中だ」

「なら、引っ越しを考えた方がいいですかね?」

「そうだな。ここもよかったが新天地で暮らすのも良さそうだ。それにこれにはもう少し広い土地が必要になってくるからな」

「この森だと龍を育てるのに大変ですからね」

「ああ。あとさて」

マナが楽しく縄を解く男と気絶した男達を見る。

「どうしようかなーー」

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