海賊1
青い空に潮風が吹きカモメがなく港町では漁師達が大漁旗をあげ魚を港へと運んでいた。そして、大量の魚が港で待っていたもの達の手に渡されると早速商売人達がここぞとばかりに集まり良い魚を競争し選んで行った。
ーいたぞつかまえっ。
タイシが簡単に追っ手を跳ね除け、エリスが風を使いタイシの持ってきたギルド専用の檻に入れると印をつけミオたちと共にそのまま追手であり犯罪者でもあるもの達を放置して先へと進む。サイモンがやれやれとしミオが複雑そうに眠ったユナを背負い歩いて原っぱを進む。
「賞金首が賞金狙いにきてばかりですね」
「はい」
「まあおかげでギルドもこっちも懐ほか温まりはしますけどね。ただ、今のところは考えなしの雑魚ばかりですから」
「ええ」
「若さん。今日ここら辺でどこか風除け探して準備した方が良さそうです」
マルクールが手のひらを上へと上げる。
「雷雲が東から来てます。やっぱり嵐ですね」
「そうか」
「風向きも変わり始めてましたからね」
「ああ」
「雷はユナが嫌いだからな…」
ミオが大丈夫かなと心配しタイシが話す。
「子供は大きな音が苦手だからな。この辺りに洞窟があればいいんだが…」
「無かったら穴掘り係がいますよ」
「はいはい」
サイモンがマルクールを示しマルクールがうんざりとし頷くとエリスが話す。
「後1時間ほど東北に歩けばあるようです」
「ならそこまで急いで行きますか」
「まあ、少し雨に降られるかもだけど問題はなさそうです」
「なら行こう。風除けがあったほうがいい」
マルクールがはいと返事を返しミオが頷き東北へと進む。そしてぽつぽつと雨が降り徐々に強まり始めたところで洞窟を見つけると一行がすぐに中へと入りマルクール達と野営の準備を始めミオもまたユナを下ろしせっせと準備する。そして空気穴を確認し焚き火に火がつけられると徐々に薄暗かなり始めた洞窟が明るく照らされる。
「魔獣が掘った穴のようですね」
「この洞窟を?」
ミオが目を丸くしタイシが話す。
「みたいですね。多分、流れ者の魔獣と言われるオオアナグマですね」
「大アナグマ?ベアーの事ですか?」
「じゃない」
「体毛がとてももこもこした歯は前歯しかない二メートル近くの大型魔獣です。この洞窟も前歯を使って掘られた洞窟なんですよ。あと普段は穏やかですが敵とみなせば中々凶暴になりその強靱な前歯と電気を使った攻撃をするんです。なので別名電気アナグマと言われてます」
「もこもこに電気ですか…」
「はい」
「生息域はこういった草がたくさん生えたところだからな。イーロンにもいたが開発とかで一気に消えた。あと、毛皮は高級品扱いだから乱獲もされて数が減っている。だから、ギルドでは討伐対象ではなく保護対象として扱われている」
「ん?ギルドも魔獣の保護とかしてるんすね」
「ああ。生態系に関係してくるからとかで保護活動もしている」
マルクールがへえと声を出すとゴロゴロと音が小さくなる。
「そろそろ本降りだな」
「追っ手も嵐の中きたりしますかね?」
「くるやつは来ますよ。ただ入れないよう結界は張りますけど」
「ええ」
「ミオ。結界は話した通り交代でしましょう」
「はい」
エリスが頷き、タイシがなら最初にするよう告げるとミオが返事を返し早速準備を始めた。そして風が吹き荒れ音が鳴るとユナがびくびくと震えながらミオにしがみつきミオが頭を撫でながらあやしていく。その間にタイシたちが食事をしていくと雷が落ちる。ユナが大きく震えしゃくりをあげミオが泣き始めたユナをあやしていく。
「まあだ雷雲が流れて続いてますからね」
「一晩続きます?」
「多分なー。後海からきてるからな」
「なら向こうもおおしけだな」
「ついてる頃には良さそうですね」
「ああ」
「海もですが魚も久しぶりに食べれそうです」
「エリスさんは肉より魚の方が好きでしたっけ?」エリスがはいと答え、タイシが頷くと洞窟の外を見る。
「荷馬車と人が8人止まったな」
「みてきます。商人などでしたらこちらに招いてもいいですか?」
タイシがはいと返事を返しサイモンが雨除けを身につけながら答え嵐の中外へと出た。
濡れ滴る服の中で洞窟の天井が一杯となると水避けのビニールシートを屋根にしその下でシーツや毛布にくるまる商人や雇われたギルドの護衛達が焚き火で暖をとっていた。ミオが少し落ち着いたユナに食事をさせ、タイシが温めたスープを男女に配ると髭のギルドの男が受け取る。
「本当すまない。世話になってばかりだ」
「いえ。それからあと、少しのところで引き上げたんですか?」
「ああ。そうなんだよ」
「ええ。あと、こっちの方がよほどマシな災難にはなりました」
商人頭がスープを飲みほっこりとする。
「うまい」
「災難と言いますと?港町で何かあったんですか?」
「ああ。海賊が出たんですよ。それもイーロンのはぐれと組んで勢力を増した大海賊ヤークの連中です」
「あのヤークですか。確か元ギルドではありませんでしたか?」
ギルドの傭兵達が頷きタイシが返事を返す。
「はい。手配もされてます」
「ええ」
「教会では何か聞かれてますか?」
「熱心な信者であるとかないとか。教会の信者であれば見逃すこともあると聞きましたね。そちらは?」
「なしだな。聞いたことがない」
「こちらも」
「俺もですね」
「そうですか」
「まあいずれにせよそいつらが港に来たようで街は大騒ぎになって兵士たちもみーんな向こうに行ってしまってたんですよ。で、私たちも入った矢先に攻撃されましたが雇ったこの方達のおかげで荷物も何もかも守られて出られましたから」
「運が良かっただけです。後。悪いですが俺らの横の連中の方が金になる道具を扱っている商人達でしたから」
「ええ。確かに」
「それってどんなやつですか?」
「ああ。貴族さんたち専用の行商人だ。だから高価な流行りのドレスやアクセサリーと言ったものがあるわけだ」
「ええ。で、私たちは海で取れない肉類を運んでいたんです」
「なら塩漬けの肉とかですか?」
「ええ。あとは香辛料につけたものや燻製したものですね。漁師達に人気のあるものを運んでいるのです」
「ああだからこんなにツボが」
避難させた壺をサイモンがみて話すと女の1人が引き寄せ蓋を開け中にある塩漬け肉をみせる。
「ええ。こちらは鹿。他に牛や豚、鳥もあるの」
「そんなに一杯塩を入れるんですか?」
「ええ。だから食べる2日前に水につけて塩抜きさせた方がおすすめね。このまま食べるには辛すぎるから」
「そうです」
タイシがじいと壺を見ていく。
ー何か怪しいものとかは?
ーないですね。人の血らしき匂いもしません。ん?
タイシが小壺を見て指差す。
「あれは?」
「ああええ。こちらは頼まれたんです」
男が引き寄せ小壺を向ける。
「占い師の館がありましてね。そこからいつも注文を受けているのです。その館の主人の友人が届けて欲しいと頼まれました」
サイモン達もみていき、タイシが話す。
「ちょっと触ってもいいですか?」
「ええ」
男が渡しタイシが受け取り見ていく。
「やっぱりこれ骨壷だな」
「へ?」
「ええ。確かハマストラスの民達が使うものです。みたことありますか?」
「いや。ここでは初めて見ましたね。ただ、俺の前の故郷がこういった壺に骨を入れて供養したり墓に入れたりしてましたから。あと、占い師ならなんとなくはわかる気もするな」
「珍しいものを集めたりですね」
男がそうそうと頷く。
「はい。なのでその占いの館も珍しい物ばかり陳列しているのです。ただ、それが骨をいれる壺とは初めて知りましたね。にしては小さい気も…」
「入れる分だけ入れるんです。残りは海に撒いたり、土に混ぜて自然に戻しまいます。そして骨壷については遺族のために残す物です。寂しくないように」
「そうそう。最終的には次の世代がまた地面などに埋めて供養させます。そうでないと墓の中が一杯になりますから」
「確かに。土葬でもそうですからな」
「はい」
「ちなみに俺がいた前の世界では火葬や土葬以外に樹木葬、水葬、鳥葬、風葬他ですね」
「また随分と多いですねー」
ミオが眠ったユナを抱きながら頷いていきタイシがええと返事を返し説明をしていくと周りが話を聞いていった。
朝ー。
嵐が過ぎ去り青空が広がる中で洞窟の中に商人達とサイモンや警備兵達が残る。そしてタイシ、護衛隊長の男とマルクールにそわつくミオの4人が港町へと移動していた。そしてマルクールがあーと声を出す。
「少し血の匂いが港からしますね」
「え?」
「わかるのか?」
「ちょい魔術を使えば」
「マルクールは天候を読んだり風を操るのが得意ですから」
「ああ。中々いい、部下になるか?」
「正確にはアルスラン将軍のですけど」
「今謹慎中ですけどね。あと若さんもまだやっぱ恥ずかしいんですね父とかいうの」
「それはそれ、これはこれ」
「別いいじゃないですか」
「そう言えば養子関係だったな。そして」
男がミオを見る。
「こっちは実の親子だ。もう話の方はあちこちに広まっている」
「はい」
「ああ。あとは、アストレイだな。ギルド長の八割がアストレイ国への派遣を中止した」
「え…」
「なあらアストレイのギルドはほぼ動いてないって話で?」
「ああ。まあ唯一商人ギルドくらいだな。そして稼ぎがないから離れているしギルドが行っていた仕事をアルスラン将軍の軍以外が引き受けているから人手不足との事だ」
「あー…」
「軍力の六割ほど、まあ、部下であり軍力になるからなあ」
ミオが驚く。
「なら、残り四割は?」
「左将軍と他他国の援軍によるものだな。言えば見習いになる。アストレイは軍国家とも言われているがそれはー、一応、力があるから」
「若さん。名前も含めてなかなか言えなくなってますぜ」
「……」
「お父さんとか言うのが、恥ずかしいとかですか?」
タイシがダンマリとし、マルクールが話す。
「照れくさいのは、まあ、若さんの実の父親のこともあるからとか?」
「いや、まあ…」
タイシが気まずくする。
「でも、あるはあるかな…。俺は実もだが後で出来た父親とも折り合い悪かったし、呼んだこともなかったし、息子と呼ばれたことも無かったからな」
ミオが頷き、男が話す。
「異界での家族とは家族でありながらそうでなかったわけか」
「ええ。向こうもそう思ってませんでしたし」
「そいや若さん。ヤンガルの奴らが送ってきたのに若さんの異界の知り合いがとかって。あれ結局なんでしたか?」
「あー」
タイシが複雑な面持ちをする。
「いや。いってもいいやつではあるな。家族の他に教師からも嫌われてたんだよ」
「へ?教師?」
「ああ。あいつらが送ってきたのは向こうでの俺の元教師であり、向こうの養父の弟。上昇思考に学歴思考でもある。そしてその養父の命令なのか俺の成績改変もしてくれてた奴だから常に成績は下の下。そういったことしてくれていたやつがなぜここにいるのかと、人質と言われたが俺としては別に無視していい相手だから無視したんだ」
「まじ若さん向こうで偉い目あってきたんですね」
「ああ。だから意外とあの王様の方がマシなんだよな俺にとって。だって無視しとけばいい話だったからな。でも向こうは家族と言う形式が取られてたから逃げようにも逃げられなかった。精神的な問題でな」
「あー」
「いやしかしこっちも肉体的にと言うか」
「若さんだから問題ない気もするけどなあ。でも家族の仲だと外側の判断とか難しくないですか」
男が複雑そうにまあと答え、ミオが話す。
「あちらの学校の成績はどのように評価をされてたんですか?後教師というと先生のことで、他に先生もおられたんですよね?」
「ああ。成績は授業態度。それからテスト。そして課題の提出で評価される。俺の場合、課題の提出で未提出にされ続け、授業態度は下。テストは向こうが手を加えて改ざんしていた。他に先生はいたが担当教師と学年主任といって、その学年を担当する教師達のリーダー的存在だったからなんでもある程度出来たわけだ。だから、誰も何も言わなかったんだ」
「そうですか……」
「ああ」
「学校でも階級制度ありますもんね。あと見えてきましたねー」
港町の門が見え始めると男が望遠鏡で覗く。
「海賊らしき奴らが門にいるな」
「あー」
「いつもならアストレイ軍が納めにきますけど今回ばかりはですからね」
「ああ」
「ここにもくるんですか?」
「ああ」
「この辺りの領地はアストレイ国の管轄内なんだ。アストレイは飛び飛びで領地を持ち、その領地内に近い国の警備や護衛などを行っては国の公益の役割を果たしている。ただ、それを考えたのはアルスラン将軍であり右大臣だ。あの人はアストレイになくてはならない存在でそれだけの偉業をなしてきている。だから、今回の騒動。各国や各領地にいる領主たちも迷惑しているし反発もしている。もちろんギルドについてもだ。ただギルドについてはそこにいるティーチの立場を考えてのことに繋がる」
「若さん相当ギルドに尽くしてますもんね」
「尽くしていると言おうか。頼まれたら断れない性分だからな…」
「そこで常に依頼を完璧にこなしているのが俺たちから見ればすごいことでもあるからな。あと、他貴族や皇族達からモテるな」
「あ、それアストレイもですねー。若さんが俺で隠れた時冷たい視線をお嬢さん達から向けられたんですよね。後一部は暴徒化しましたし」
「…そうだったか」
「若さん鈍いっすよね」
タイシが気まずくしミオが止まる。
「どうした?」
「何か、変な感じです。その、このまま行けば…」
ミオがたじろぎタイシが話す。
「ならこの道は避けよう。どこから行けばいいか教えてくれ」
「はい」
「俺は何も感じないんですけどね」
「俺たちには感じないものを感じるんだろう。一応、聖女の娘として言われているからな」
「その聖女の娘。何か特別に言われてんで?」
マルクールが男に尋ね男が話す。
「特別にというか、俺たちが聞いたのは昔から聖女葵は特別だったとしか分からないな。それは他の奴らも同じ答えだ」
「はあ」
「ああ。ギルドではみんなそう聞いているらしい。ただし、詳細は不明だ」
マルクールがうなずきミオが特別かと思いつつも右へと指示をしタイシ達が正面を避け右へと回る。そして右手門、海に近い側へと辿り着くとタイシと男が身を隠し潜入し、マルクールがミオと共に建物の影に隠れながら街中へと移動する。その港町は静まりうろうろと海賊らしきもの達があたりをうろつき回っておりマルクールが隠れ場所を見つけ静かに扉を開け中へとミオと共に入るとミオがほうと安堵の息をつきマルクールが静かに扉を閉める。
「やわれやれだ。いつもなら声がでかい漁師とその奥さんがたがうるさくしているのにな」
「そうなんですね」
「ああ」
「私らのリーダーがここ牛耳ってるからな」
ミオがはっとしマルクールがしまったとした顔をするも銀髪に赤目の女の海賊がマルクールの首に細剣をピタピタと当てる。ミオが驚き一歩後退りマルクールがぎこちなく両手を上げる。
「その片手の紋章は光らせんじゃないよ。後お嬢ちゃんはそのまま」
「気配なかったぞ…」
「そりゃ消すの得意だからね」
「お嬢」
眼帯の男が縄を持ってくる。
「はいご苦労さん。その野郎縛って」
「はい」
マルクールが顔をしかめ縛られていきミオが汗を滲ませおろおろとしていく。
「そ、の。あ、の、な、なんで、港を、占拠、して…。け、怪我人」
眼帯の男が視線をミオへと向け、女が振り向く。
「そりゃ海賊だから」
「で、でも。海賊でしたら、1日で、すぐに逃げますよね?次の獲物を求めて。こんな、滞在するようなことないとは、思いますけど……。い、今までの、事件とか、みて」
女がじーとミオを見て顔を覗くように近づくと今度は顎を掴む。
「おい」
「ははーん」
女が楽しく笑みを浮かべ、眼帯の男が話す。
「どうしました?」
「シン。噂の聖女の娘だよ。目に術がかけられている。目の色を隠すなんざそういないからね」
「その娘が?」
「ああ。間違いなさそうだ」
女がミオから手を離し、眼帯の男シンがマルクールを座らせる。
「おい。お前らもしかして元貴族か今も貴族とかじゃねえのか?」
「お嬢ちゃんちょっと尋ねたいことあるんだよね」
「無視かよ」
マルクールが突っ込み女が話す。
「イーロンのカラスはしってるかい?」
「は?」
「どうだい?」
ーイーロンのカラス…。
ーイーロンのカラスがまた海に来たそうだ。
ーいいな。山にも来りゃいいが。
畑の老人達がそう話しており、そしてミオの母、葵下手さの話を持ってきて尋ねると葵が話を聞きああと声を出す。
ーミオ。それは人でもなんでもないわ。
ー人でもなんでもないの?
ーええ。生き物とも言い難いわね。あと、別名なの。ここではイーロンのカラスと呼ばれているものでよくわからないでしょうけど本当の名前ならなんとなくわかるわ。本当の名前はー。
「潜水艦」
「なんですかその」
「そう」
女が手をパンとたたく。
「その通り。異界人の乗り物だ」
「は?え?」
「もぶは黙ってな」
マルクールが顔をしかめ、女が話す。
「イーロンが作り出した戦争の物さ。話じゃこのあたりに眠っていると聞いた」
「その、でもそれを見つけて何するんですか…。母の話だと潜水艦は下手をしたら深海に沈み2度と地上へと上がって来れない怖い乗り物でもあるって聞いて」
「は?」
女がポカンとするが複雑そうな面持ちをしシンが話す。
「お嬢」
「それは困るねえ…。でも威力は相当と聞いたけどね」
「いや威力相当でも使えなきゃ意味ねえだろその乗り物。あと沈むなら厄介に越した事ねえじゃねえか」
女が舌打ちし頭をかく。
「あいつら。そんなの聞いてない。他に其のセンスイカンで」
2振りの刃が2人の首に当てられると女、シンがすぐさま後ろを振り向き刃を向けたタイシをみるとその後ろでのされて縛られた海賊達がいた。
「げ…」
「…」
「確かに戦争では有利にもなるし便利な乗り物だ。だが、ミオが話した通り走行不能となると深海に沈み下手したらそのまま潜水艦の中で飢え死か窒息死の運命が待ち構えている。そして潜水艦には相当な液体燃料がいるしその液体燃料の発掘場所はアストレイが全部抑えているからどうせ動かせない」
「……」
女が大きく舌打ちし苛立ち、シンが軽くため息をし両手を挙げた。
今度は女がむすっとしながら縛られ座り、シンもまた縛られ座る。そしてマルクールが縄を解かれると安堵する。
「すんません若さん」
「いや。あと、ハイルさん捕まった」
「うわ」
「海賊内でも武力争いが怒ってるみたいだな。それに巻き込まれたのがこの港町のようだ」
「まじですか」
「けっ。そうさ」
女が吐き捨てシンがやれやれとする。
「元リーダーが病死して副リーダー達がここを拠点にどちらが上か争ってんのさ。あれこれ手を使ってね」
「うわ、まじ迷惑」
「うっせえ」
「こことは違う連中にハイルさんは捕まったんだ。酔いの魔法か」
「酔い?」
「なあらマジュカだね。あの色仕掛け女」
「え?」
「あー、言えばけしからん魔法でやられた」
「わからないが幻覚に近い感じだな。俺は以前俺の知り合いの魔術師にそういった魔法は逃げて避けた方がいいと言われたから逃げた」
「そうなんすか?」
「ああ」
「そりゃ童貞様どもには強すぎるからね」
女がむくれ話し、マルクールが顔を顰める。
「当たってんだろうが」
「うるせえ」
「童貞ってなんですか?」
ミオが尋ねるとマルクールがだんまりとし女がやれやれとする。
「まあだ男になってない事だよ」
「え?男、ですよね?」
「いや男ではあるが俺ら男からお嬢さんに言うにもなあ…」
「…まあ」
「おい。お前名前は?」
「はあ?私が教えんのかい?」
「だってお前が最適だし。お嬢さんに向こうで教えてやったら縄は解いてやるよ」
「一応言うが逃げてもわかるからな」
女がフンと鼻を鳴らす。
「分かったよ。あと、アンジュだ」
アンジュがミオを連れて隣の部屋に籠る。
「さて、アンジュとお前は側近で貴族か?他そいつらは?」
タイシにのされ起き始めた部下達をマルクールが指差すとシンが話す。
「貴族には違いない」
「ああ」
「アンジュという名前で分かった」
シンがタイシを振り向きタイシが話す。
「海賊であるも義賊でもある」
「義賊ですか」
「ああ。だがなぜ今この場にいるか不思議だ」
「…」
シンが息を吐く。
「あまり話は出来ないが、今ここにいるのは全員お嬢の部下だ」
手下達が頷き、シンが話す。
「今、ヤークの連中が次のキャプテンを決めるために争っている。こちらは特に興味を持ってないので終わるまで待っているところだ」
「ああ」
「へうっええああ」
扉からミオの恥ずかしい声が響くとマルクールが話す。
「一応教えてはいる感じですね」
「ああ。で、まあ、親は?アンジュの親」
「病に伏している。なのでこの場にはいない」
「分かった」
「ちなみに若さんのことは知ってるか?」
「ああ。アストレイ王から捕縛命令が出ている」
「捕縛命令?」
「あの王について俺たちも知っている。哀れでもある王だ。そして今誰でもいい。犯罪者でもいい。お前を捕まえれば報奨金を渡すと言う。使いのものがわざわざ来たくらいだからな」
マルクールがやれやれとし、シンが話す。
「聖女の娘であり、アルスラン将軍の娘でもあるミオと言う者もだ。犯してでもいいとも話していた」
「ひでぇ話」
「ああ」
「俺たちは乗り気じゃねえよな」
「ああ」
マルクールが微妙な顔をする手下たちを見る。
「乗り気じゃない?」
「聖女葵に大恩がある。あとはそこにいる異界人でもあるタイシ中佐殿だな」
タイシが頷き、シンが話す。
「海の魔物を退治してくれたおかげで俺たちの住む場所の海がまた元通りになったからだ」
「ああ。魔物はクラーケンのさらに大型の亜種だった。よく食い荒らしてたもんで胃の腐敗臭が酷かったのを覚えている。あと、陸地も雨さえ降れば上がってきていたから島にいた魔獣や人の多くが犠牲になっていた」
「聞いたことありますね。確か5年前でしたよね?」
「そうだ」
「そのさらに3年ほど前に現れたやつだ。こちらも近づいてきた時は陸地から応戦し追い払ってはまた追い払い続けた。その亜種のクラーケンをそちらにいる中佐殿が軍を率いて退治した。俺たち海に生きるものとしても感謝でしかなかった。やつによって親族や友も殺され餌食にされたからな」
部下達が頷いて行き、シンが話す。
「だから、今回のアストレイ王には反対している。あれが俺たちに何かしたわけではなければどのような相手か何も教えず、金の価値だけ話して行く。俺たちは使い捨ての道具じゃない」
扉が開きミオが耳まで真っ赤になりふらつきながら出るとアンジュが後に続く。
「おーいお嬢さん」
「この子なーんもしんないのね」
ミオが2人の元へとくるとぎこちなく頭を下げる。
「そ、その、さっきは、聞いて、も、申し訳」
「いや謝る必要ないからな」
「そうそう。わかってくれたらそれでいいからさ」
「は、はひ」
「ああ。ところでなんで俺たちの方向見ないんだ?」
ミオがぎこちなくし、マルクールがアンジュを見る。
「おい。そこ」
「そこって言っても教えろと言われたから教えたまでだよ。適当にここにいる奴らの透視して見せたりしてね」
シン含めた手下たちに衝撃が走るとマルクールが固まり、タイシが頭を抱えミオがさらに顔を真っ赤にし震え始める。
「お嬢!あんた何てことしてんですか!?」す
「そうですよなんつうことをしてくれんです!」
「うっさいわねピーチクパーチク。船の上でも丸裸で洗う奴らが今更何言ってんだい」
「だからってこんな何も知らねえ子にっ」
「そうだ!」
「こっちだって恥ずかしいって事あんですよ!」
周りがそうだと声を上げ、アンジュが気おされシンが項垂れながらため息をする。
「え、そ、わ、たし、が、な、ん」
「だあ!うっさい!!ていうかあんた達が私に頼むのが悪い!!」
「そこまでしろとは話してねえし透視使ってみせるのもどうかと思う」
「…ミオ」
ミオがビクッと跳ねタイシが話す。
「……飾りだ」
「いや若さん無理がある」
「……」
「後まさか俺らのも」
「いやあんたら妨害魔法かけてだから無理だった」
「あーそれ俺だ」
「若さん…」
「手前らだけずりいぞこらあ!」
「何そんな魔法かけてんだよ!」
「それをそっくりそのままお前らのお嬢に言えっ」
周りが騒がしくなり始めた途端扉がすぐ乱暴に開けられる。
「いたぞ!!」
別の海賊達が声を上げ、アンジュがげっと声を出しミオがビクッと大きく体を震わせ海賊、男達を見てぞわあとする。タイシがハッとしミオが目を隠す。
「来ないでえええええええ!!!」
ミオがかっと光ると周りが固まりタイシがすぐにミオを掴んだ途端光が膨らんだ。
そして小屋が吹き飛び手下達も弾き出され地面を転がりアンジュ、マルクール、シンもまた弾き出され建物にあたり止まるとそのまま気絶した。
サイモンが緊急を知らせる石が光ったのを見る。そしてエリスもまた見ると商人達を振り向く。
「ユナをお願いします」
「はい」
「マルクールがやられたみたいですね。応答なしです。タイシ殿はかろうじて。ただ何かあったようです」
「はい」
「ミオは?」
ユナが不安な面持ちをしサイモンが話す。
「タイシ殿と一緒のようですが援助が必要のようです。急ぎましょう」
「ええ。なら、ユナをお願いします」
「はい」
「緊急で悪いがギルドの応援が来るまでこっちのリーダーも頼む」
ギルドの傭兵達が話すとサイモンが頷き、エリスがはいと返事を返した。
ーあの女、ミオの目に細工したな…。
タイシがぐったりとするミオに目隠しをすると背負い静かに建物から建物へと術を使い壁に溶け込むように入り移動をする。
ー言わなきゃ良かった…。はあ。
「ん…」
「起きたなら落ち着いて聞け」
タイシが小声で話すとミオが震える。
「俺だ。タイシだ。今お前に目隠しさせて背負って運んでいる。目隠しされている意味はわかるな?」
「…」
ミオがこくっと頷きタイシがああと返事を返す。
「今移動しているから静かにしろ。あとその布は魔力を阻害する奴だ。俺の服の一部だ」
「…その」
「上着だからな」
ミオがこくこくとうなずくとタイシが大きくため息し顔をしかめ背負い直し歩く。
「流石にこの状態でここにいるのはまずい。サイモンさん達に応援を頼んだ」
「は、い。あの、その、マルクールさんは…」
「多分捕まったな。でも心配はいらない。後で助け出す。ただ今は街の外にどうにかして出るぞ」
「その、はい」
「ああ」
ミオが頷き戸惑う。
「その、タイシさん」
「なんだ?」
「濡れてますか?何か冷たい…」
「あー、水被ったからな。悪い」
ーミオの力のせいか。回復が遅いしできねえ。
タイシのズボンに血が滲み始めるとタイシが冷や汗をかきながら進みミオがわずかに戸惑うが何かを潜り抜ける感覚を感じるとまた質問しタイシがその質問に答えつつ次の建物へと抜けた。
マルクールが縄で縛られ、アンジュがむすっとしながら他の海賊と言い争っていた。
ーなあにが起こったのかさっぱりだ…。多分お嬢さんの力の暴走だとは思うけどなあ。はあ。
「とにかく!こいつは私らが捕まえたんだ!」
「俺らだ!この一族は天候を読むのに優れているからな!」
「いちいち言わなくても知ってるよ!だから私らのだって言ってんだよ!!」
ぎゃあぎゃあと喚き散らすとマルクールがシンへと話す。
「これはあれか。お天気予報士として雇うってやつ?」
「ああ。いうことをきけば雇用だ。聞かなければ聞かせるだけだ」
「はあ」
ー中佐殿と聖女の娘が見つからない。
シンが念話で話すとマルクールがやれやれとする。
ーあの女の部下さんだから心得ありか。
ーああ。
ー若さんだから、上手いこと連れてここ離れてんだろ。いなかったならそうに違いない。
ー転移魔法は使わないのか?
ー使ったところは見た事ない。ま、俺が見た事ないってだけだ。
どんと爆発し煙が上がるとアンジュと揉めていた男がハッとしアンジュが黒煙を見るとその男がアンジュへと銃を向ける。
「ちょいと」
「向こうも決裂だ」
「まちな。よくみなよ。様子が変だよ」
ぬっと二頭の頭を持つ大蛇が姿を見せるとアンジュの手下達がゾッとしシンが驚愕しマルクールがげっと声を出す。
「あ、あすくれぴおす」
「違うっ。あれはヤンガルの人間キメラだ。悪魔と融合した厄介なやつだ。それと食ってんなありゃ」
マルクールが口を動かす蛇を見る。
「蛇はあんな食い方しねえ。丸呑みだ」
「あ、ああ」
「あれが、話に聞いた…」
「おい。街の漁師や他のは?」
「洞窟の中にいるよ」
蛇が動き出すと手下たちがおののきアンジュが声を上げる。
「あんたらシャキッとしな!そして私のいうことを聞け!」
「へ、へい」
「こ、っちにきてねえか」
家がこちらへと向け倒れ始めると男が青ざめ他が徐々に後退る。そして、1人が逃げると連鎖的に逃げ出す。
「まちなって行ってんだ!!」
アンジュが声を張り上げるとアンジュ達の手下が止まり震える。
「で、でも」
「人間つったからね。なら先に逃げたのを追う。こい」
手下たちが頷き戻り震えていく。
「いい判断だと思うな。何せ、犯罪者どもがキメラになっている」
「ああ」
倒れる家がさらに近づくも横を通り過ぎ笑い声が響く中巨大な影が通り過ぎ逃げるもの達を追って離れる。アンジュが冷や汗を流し手下達が抱き合ったりとしながら震え上がる。
「他にいる可能性が高い」
「ちっ。今のうちに船に行くよ。いそげ!あとあんたも来い」
「いやなんでえっ。ちょっおい」
「運びな」
手下達がマルクールを肩にかつぎ海へと向かいマルクールがおろせえと声を上げた。
ーちょっと、休む。
タイシがミオを下ろし、その隣に腰を下ろす。ミオが不安な面持ちをしタイシが軽く息を弾ませ血の流れる腹を抑える。
「タイシさん……」
「外が、うるさくなってきている」
悲鳴が響くとミオが震え戸惑い、タイシが話す。
「何か、あるみたいだな」
「は、はい」
タイシが頷くと横に滑りながら倒れる。
「悲鳴と、音……。何か大きな音がする。タイシさん」
ミオがそう呼びかけるも応答がなく、ミオが手を横へと向け慌てて探るとタイシに触れその体に触る。「タイシさん。タイシさん。どうしたんですか?タイシさんっ」
ミオが声を上げながら気絶したタイシを揺らす。
「タイシさんっ。タイシさんっ。たい」
ミオの口が塞がれるとミオが震える。
「ミオ」
「エ、エリス、さん」
エリスがはいと返事を返しサイモンがタイシの腹部の怪我を見て直ぐに薬草を使い止血を施す。エリスがタイシの血で濡れたミオの服を見る。
「無理されたようです」
「その、怪我を」
「はい。あと、外であの人間キメラが海賊達を襲っています」
「え」
「ただ。その仲間と思われる海賊達もいるようです」
「はい」
「じゃあ、そのキメラを使ってまで上の方を決めているという事ですか…」
「そうなりますね。あと、行きましょう。洞窟に街の住人達がいたのはエリス殿が確認していただきました」
「ええ。それでここにくるのが遅くなってしまったのです。そちらに一旦避難しましょう」
ミオが小さく頷きサイモンがタイシを背負いすぐに建物を出た。
船の上からアンジュが捕食するキメラを見て舌打ちし、マルクールが顔をしかめながら離れていく港であり陸地を見る。
「バルトーラの奴らだね。厄介なの持ってきやがって」
「あれならば分かりはしますね。ヤンガルとも通じてましたし」
「ああ。仕方ない。私らのアジトに戻るよ。急ぎな」
周りが頷きマルクールが俺は〜と声を上げるもぺしっとアンジュに叩かれた。
漁師やその家族たちがやってきたサイモン達を見て安堵する。
「良かった」
「怪我人がいます」
「その女の子ひどい怪我じゃ」
「いえ。血を浴びているだけです。着替えをどこかの家からすみませんが持ってきました」
「ああ」
エリスがミオを下ろしその目の布に触れる。
ーミオ。このままでいましょう。あと、何か魔術を目にかけられているのですね。
ミオが頷くように項垂れる。そしてサイモンがタイシを下ろすと周りがタイシを見てどよめく。
「ティーチさんじゃねえか」
「ご存知ですか?」
「ああ。海の魔物もだが海賊達の取り締まりもしてくれてたんだ」
「ええ」
「あのバカ王が追い出してくれたおかげでこっちは大変だ」
「あっちだって恩人のくせに何してんだかな」
「腹を怪我したんだな」
「はい。いつもならすぐに治癒を使えるのですがどうも跳ね返されるのです」
サイモンが治療道具を取りすぐにタイシに麻酔をかけ消毒液を傷口にかける。
「まだ出血してますから縫います。灯はありますか?」
「ある」
「おい。灯りをこっちに持ってこい」
周りがあかりを回しサイモンの手元に置かれたりするとサイモンがその灯でタイシの腹の傷を塗って行く。ミオが苦しく話す。
「私の、せいで」
「それは違います。それより服を着替えますよ」
エリスが見えないように壁を作って欲しいと周りに願うと女達が動き壁を作った。そして、ミオが着替えサイモンが治療を終えると小さく唸るタイシを見て話しかける。
「タイシ殿」
タイシが目を覚ます。
「ミオは…」
「おります」
「タイシさん。私のせいで」
「あれは、違う。本当…」
タイシがはあと息を吐き出し、エリスが話す。
「タイシさん。ミオの両目は何をされたのです?」
「……」
「と、とく、こと、出来ない、ですか…」
ミオがぎこちなく告げ、タイシが息をゆっくりと吐く。
「目隠しは…」
「目隠しなんですね。今もされております。目を見ると何かいけないのですか?」
「見るとというか…、本人が、見えてしまうんです」
「え?」
「ど、どうにかしてください……」
ミオが俯き、タイシが顔を顰める。
「透視の術で。あちらも、器用なことしてくれたんです。服だけすかして、裸体が見える状態になってるんです」
「…えと、なぜ?」
「異性について、まだ知らないことがあるからで、まあ、それで、俺たちからは…だから、海賊の女と言うか…。それに」
サイモンがはあと思わず声を出し、エリスが顔を真っ赤にし項垂れるミオを見てやれやれとする。
「そういう事ですね。ミオ。服だけが透けて人はすけませんか?」
「は、い」
「では少し布を外して状態を見ます。まっすぐ私の目だけ見てください。まっすぐですよ」
ミオが頷きエリスが灯りをそばにと近くの女にいい顔を近づけミオの布を少しずらし目を見て行く。
「まあだそんな年いってない娘さんだろあの子」
「だよなあ…」
「ティーチさん。あんたも教えにくいって気持ちはわかるけど相手は海賊なんだから。教えてくれなんて言って女の子渡しちゃいけないよ。同じ女でも何されるかわからないんだからね」
「気をつけます……」
「ああ」
年配のおばさんがやれやれとし、サイモンが布を元の位置に戻し目を隠したエリスへと話しかける。
「どうですか?」
「はい。両目とも違う術のようです。こちらで解くには人が大勢おりますし時間がかかりますので難しいです」
「そうですか」
「魔導局に…。ちょっと、高いですけど」
「え?」
「俺の、荷物入れに。腰の小さなバッグです」
「ええ」
サイモンがタイシのバッグの中に手を入れ札を出す。
「一枚、200万です」
「ぼったくりですか?」
「まあ、相手の冗談ですけど。あと、ハリーです」
「ああ。あの少年ですね」
「はい。力込めれば使えます」
「分かりました」
サイモンが魔力を注ぐと札が光る。そして札が伸び扉が作られると周りが驚き扉が開かれハリーが出る。
「200まーん、と言いたいとこだけどなんでそんなぼろぼろのどうしてこんな状況?」
「ここの、人たちの、避難を頼みたい…。あと、ミオの両目」
タイシが腕に力を込めるとサイモンが支える。
「まだ起きないほうがいい」
「術の無効化」
ハリーがタイシに触れへえと声を出すとミオを見る。
「アルスラン将軍と同じか」
「え?」
「ミオだよ。ただまだうまく制御できてないね。なんで暴走させたの突然」
「それは俺がお前に説明する…」
タイシが腹に手を当て光を放つ。
「避難所を開けて欲しい。ここにいるのはハイゼンの港町の人たちだ。海賊にここに追いやられて今は戻れない。海賊の仲間に死徒がいて他の敵視している海賊達を襲っている」
「げっ…」
「港町はほぼ押しつぶされている」
「なんだって」
「じゃあ、あの大きな音は建物とか壊された音なのか…」
「こうしちゃいられねえっ。俺の家っ。船がっ」
「俺も」
タイシが結界を貼り阻め、ハリーがよっと杖を岩壁に向け投影する。そして二つ頭の巨大な蛇が口から涎を流しながらぼりぼりと音を立てるように口を動かしていた。周りが悲鳴やざわめきへと変わり結界により足止めされた男達が冷や汗を流す。
「こいつは人を食べます」
「最近わかったのは捕食されたのがほぼ人って事だよ。こっちで死骸を調べて分かったことだからね」
「こ、んな」
丸い光が扉から現れハリーの横へとくる。
『状況は分かった。ハリー。港町のもの達をこちらに連れてこい。安全の確保とある程度住めるようになるまでは避難させよう』
「わかったじゃなくて、分かりました。準備できたら教えてください」
『ああ』
光がうなずき姿を消しハリーがここから魔導局の避難所へと案内すると港町の住人達へと伝えた。
港町ー。
建物が破壊され血に染まる中、大きな船へと海賊達が盗んだ荷物を運び乗せていた。その甲板に髭を生やし額から左頬まで長い傷のある男と3人の首に囲まれそのうちの1人の頭を撫でる少年がいた。
「その首どうするんだ?」
「どうってー、あんたが話たから残してやったろ?元副キャプテンどのたちのくーび」
少年が軽く抱え上げにたりとし男が汗を滲ませゾッとする。
「今俺腹一杯すぎて満足だからしばらく飯いらねえ」
「…ああ」
「ああ。だから、最後の副キャプテンがいるアジトにつくまでは我慢できると思うよ。ま、どれだけ日数かかるかにもなるけどさ」
「場所はわかる。そして嵐が来なければ2日で着く」
「ん。いいよ」
男が頷き少年が楽しみだなあと首を置き海を眺めた。
魔導局ー
ミオの目を女性の魔術師が解呪を行う。そして、タイシがベッドに寝かせられ苦々しい顔をさせながらハリーが作った増血剤をサイモンの前で飲んでいく。
「それ相当苦いからねー。でも効果抜群だからしっかり飲み干してね」
「う…」
「ミオ様はどうですか?」
「多分そろそろ終わると思いますよ。でもミオもまた可哀想だね。男の何を見せるために素っ裸になるような透視の術を目にかけられたから」
「そ、れは、俺が、本当に、悪い…」
「はいはい。本人にも謝ってね」
タイシが頷き空になった器を渡し、口直しの酸っぱい飴を舐める。
「無効化とあの時もうされましたよね?」
「はい。そうですよ。アルスラン将軍も同じ力を持っているんです。将軍は言えば勇者候補として選ばれていた元孤児で教会が育ててたんですよ」
「あー、ではあちらの枢機卿か。イーロンの」
サイモンが語り、ハリーがそうそうと頷く。
「その通りです。そして、その稀有な力。相手に無効化の力を掛ける力が持っていることがわかって最初は使えないなーとなったんですけど」
「当時のわしの友が彼に使い方を教えたんじゃ」
オーガンが中へと入るとその後ろをユナを抱いたエリスとやや俯くミオが来る。
「あ、ミオ終わった?もう見えない?」
「はっ、はい…」
「ミオ。俺が悪かった」
ミオが頭を大きく横へと振りオーガンが話す。
「その海賊の娘はよく学んでいる」
「魔術をですか?」
「ああ。だから不思議でな。誰が教えたのかとな。まあそれは後でお前達が追う予定であろう?マルクールが捕まって連れていかれたようだからな」
「はい」
「そうだ。サイモンさん。ハイルさんは?」
エリスが気まずくし、サイモンが苦笑する。
「その、一応いました。ただ操られているのか本人の意思なのか不明なので…。エリス殿もわからないとの事でした」
「はい。俺はもうギルドを辞める。やめてマジュカ様の手下になるとか…。術をかけられてるようにも思えますがあのキメラが出てすぐに逃げましたので判断がつきませんでした」
「その、一応、と、いいますか。術中にあるという事で助けましょう。妻子の方もいますから」
「はい」
「そうなんですね」
タイシが頷き、ハリーが話す。
「そのマジュカってのは?女ですか?」
「はい」
「露出が激しい方でしたし鞭持ってました。あと、キメラが出ても特に騒ぎもせずにいましたから仲間なんでしょうね」
エリスが頷き、オーガンがあごを撫でる。
「マジュカだな。あとで特徴を詳しく教えて欲しい。調べておこう」
「分かりました」
「ああ。えーところでわしは最初なーにを話しながら来たかな?」
「ボケてきたねー」
「まあだぼけてはおらんわい。で?」
ハリーがはいはいと頷く。
「アンジュに教えた術者のこと」
「ああそうじゃった。わしも知ってあるわしの友じゃ。悪いやつではない。そしていくのならば、わしからの手紙も届けて欲しい」
「仲良いの?」
「ああ。ただ、その娘が生まれてから付きっきりでなあ。あと、主人が病に伏せたと風邪から聞いてな。よりつきっきりになって会えぬ時間がなくなってなあ。だから手紙を渡してもらいたい」
「鳥便使えばいいのに」
「海賊という事で飛ばせないんじゃ。だからあやつが来てくれてたんじゃ」
「ふーん」
「ま、そういうことでそなたらの事なども書いておこう。そしてハリー。そなたもついていけ。あれはお主がまあだよちよち歩きの時に会わせてからはおうておらぬからな。みせにいけ」
「別いいけどキメラがやだなあ。絶対きそう」
「それも見越して道具を渡しておく。奴らに対抗できる新作のやつじゃ」
ハリーが目をきらりとさせ興奮する。
「いいの?」
「ああ。だがまだ試作品だからな。使うなら気をつけるんじゃぞ」
「わかった」
「ああ」
「なら、マルクール殿とハイル殿の救出と相手に手紙を渡すで、その海賊の方はどうします?」
「放置していいです。あと、俺とミオの母に恩があるとかで手を出す事はしませんでしたから」
ミオがこくこくと頷きオーガンが話す。
「ああ。タイシは誰も彼も困らせていた海の魔物を退治したからだ。そして、葵について、あれはまだ腹に入っていた娘の母を救ったからになる」
「私の母が?」
「ああ。死にかけていた母子共に助けたそうでな。ただ、わしとしては少し納得せんところもある」
「え?」
「物を交換する際それと同等のものを渡してそこでお互い納得しあった等価交換というものが生まれて成立する。そして、友から聞いた話では本当に死にかけていた母子を葵は力を使って死に近づいていた所を呼び戻したと聞いた。回復ではなく呼び戻した。其方は以前魂が見えたと聞いたな」
ミオがうなずき、オーガンが話す。
「ああ。それは葵も同じ。そして、呼び戻したその時の力。対価は何を犠牲にしたのか。何を払ったのか」
ミオが胸を痛め、オーガンが話す。
「わしはそこが引っかかるところでな。そして葵は優しかった。だからそこ危ないとも思えることもあった。だからのミオ。其方は諦める事は苦しくても諦めよ。そなたの母が生かした命ならばその母よりも長く生きねばならぬ。よいか」
「は、はい」
オーガンが深く頷きミオが表情を曇らせやや俯いた。
孤島ー。
ーおー。
両手を縛られたマルクールが森の中に隠されるように佇む大屋敷を見上げる。そして、各所に手下専用の家もありその手下達の家族であろう女や子供たちが和気藹々とその孤島で生活していた。
「ここが海賊のアジトかあ。想像してた洞窟暮らしとかと違えや」
「その想像していることが一般的だ」
シンが話、マルクールが告げる。
「一応、領主だからか?」
「ああ。あと、どこの国だと思う?」
「アストレイじゃないのは確か。あと、考えられるとして海の国カナンかー、イーロンか、ヤンガル」
「ヤンガルだ。ただ、ここは忘れさられた領土でおそらく今逃げている王たちも知らないだろう」
「なら、随分前からここを国の領地にしているわけか?いつから?」
「200年前と聞く。今の領主である旦那様で4代目だ。そして、ここにいる領民は当時のヤンガルの王に命じられてきた罪人達の子孫でな。初代領主とその当時の王は今のアストレイのように仲が悪かったそうだ」
「つまり、領主が出来すぎて国民が領主を推していた。それに嫉妬した王がここに流刑同然に追いやったわけか」
「その通りだ」
屋敷から執事が使用人とともにくる。
「執事いるんだな」
「ああ。あと、使用人やメイドもいる」
「お待たせいたしました。シン。まずはこの方の縄を解きなさい」
「しかしお嬢が」
「旦那様が命じました。そしてお嬢様は今」
執事がこほんと咳をする。
「話をしております」
「分かりました」
「話ってなんだ?」
「言えば、説教だな」
執事が頷き、マルクールが自由になった手を振る。
「どうも。で、なんで説教なのかはあの海賊ヤーク達といたからか」
「それもあるが他もだな」
「はい。あと中へどうぞ。そして後ほど旦那様がお話をいたしたいとの事でした」
「ああ、ええ」
執事が頷きこちらにと手を屋敷へと向け案内しマルクールとシンが続いた。
ー今度からこうしよう。
怪我が治り服に着替えたタイシがしゅんとするミオを前にサイモン達がいる中話す。
「俺もサイモンさんも答えきれそうにない事については、エリスさんにお願いする。だからその場ですぐには答えれないから後で落ち着いたりしたら聞くように」
「はい」
「ふふ。そして、私がここでは答えられないと話したらその時は2人になった時に教えます。そして、私がいる時の質問は私にまず問いかけてください。私がいなかった場合は質問の内容に応じてタイシさん達に質問をされてください」
「はい」
「はい。今回、まあ、失敗した件についてはこちらは答えきれません。なのでその他の質問事項は良ければエリス殿にまずお尋ね下さい。エリス殿でも答えられない場合は、行く先には必ず図書館など本を読む箇所が多くありますのでそこで自分でお調べください」
「わ、分かりました」
「ええ」
「後魔導局頼ってもいいよ。こっちはみんな気軽に答える人多いし人生経験豊富な人達も多いからね」
ハリーが答え、ミオがこくこくと頷く。
「うん。なら、質問に関しての問題は以上。とりあえず今後お互い注意する事だね」
「はい…」
「ああ。俺も軽く考えてたから悪かった」
「い、いえ。こちらもです」
ミオがぺこっと頭を下げ、ハリーがうんうんとうなずく。
「そうしたら行こっか」
ハリーがリュックを背負いこっちだよと扉へと向かう。そして扉を通り孤島の近くの無人島へと到着する。ユナが目を輝かせ白い砂浜と海を見て行く。
「海!うーみ!」
「ええ」
「綺麗ですね」
「港町はそれどころじゃなかったからな」
「ですね」
ミオが頷き周りを見て大小ある島を見渡す。
「天候は穏やかですね」
「でももうちょっと風が欲しかったなあ」
ハリーがうーんと声を出し紙を広げ周りを見渡す。そして目印の岩場へとくると杖でその岩を叩く。すると岩が歪み形が変わり船となると突如動き海へと勝手に着水する。
「おー」
「魔術船か」
「そう。爺ちゃんとこれから行くじいちゃんの友達が使ってた渡し船。その島だけ航行するように作られてるそうだから。あと、帆船だからさ。風がないと速度があまり出ないんだ」
「いいんじゃないですか?ミオ様たちは初めてですし船酔いなさるかもしれませんからね」
「ええ」
ミオがすっとエリスを見る。
「…船酔いと言うのは」
「ええ。船の揺れで気分が悪くなるんです」
「そうだよ。風邪引いた時とか気持ち悪くなるじゃん。あと、吐いたりとかさ。あの感じが突然猛烈にくるわけ」
「はい」
「船で揺れて気分が?」
ミオが不思議そうにしハリーが話す。
「ま、乗ってみてなった時はなった時からって事で。なら乗ろう」
ハリーが率先し船に乗るとサイモン達もまた乗船する。そしてハリーが杖で船に吊された石に触れると石が光船がゆっくりと動き海岸から離れ海を進む。ユナが嬉々とし船の上で立つもエリスが座っていなさいとまたお座りさせる。そしてミオが透明な青の海の色とその下で泳ぐ魚達を興奮しながら見下ろした。その後、目的地の波止場に辿り着く前にその場所に先ほどの執事が立っていた。




