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運命のミオ  作者: 鎌月
11/64

マーリス6

ー鉄臭。

タイシが城内の井戸から水を汲み早速頭から水を浴びガルダの血を流す。その後ろにマルクルがタオルと新たなシャツとズボンを腕に乗せたっていた。

「あー、臭いが酷い」

「あのガルダ自体腐った肉の集まりにもなってましたからね。あれがガルダの正体なのですか?」

「いや。多分失敗作か、ガルダの三体目を作ろうとした半端かもしれないな」

タイシが腕の匂いを嗅ぎはあとため息をする。

「無理だな」

「香水で誤魔化します?」

「余計に悪化しかねないから自然に任せるしかない」

タイシが手を向けるとマルクルがタオルを渡しタイシが顔などを拭う。そこに、鼻を抑えた蘭丸がくる。

「ふさあ」

「匂いが取れないんだ。何かいいの持ってないか?」

「あー、へえなあ」

家の中に影が見えるとタイシが指差し控えていた兵士が向かう。そして、扉を開けた途端町娘たちが震えながら抱き合っていた。

「まだいたのか」

「地下に隠れてたんだろ」

蘭丸がやれやれとしながら向かう。

「おい。他には?」

1人が頭を振り、服を着たタイシが来る。

「親や兄弟。親戚は?」

「あ、あんた達が殺した!」

そばかすの女が声を上げると蘭丸が話す。

「戦だから恨みっこなしだろ?」

「すまない」

蘭丸がため息をしタイシが足をつけ深く頭を下げると町娘たちが僅かに驚き戸惑いそばかすの女が口をつぐむ。

「教えてくれたら見つける。ただ良ければここにはもう人はいない」

「ど、こに」

「ここの住人達は避難したか捕虜になった。捕虜になったものは兵士たちが多い」

「…」

「避難をするならば、ヤンガル国の避難地域に送る。もしくは難民キャンプだ」

「…どっちもこの国の?」

「ああ」

娘達が複雑そうにしそばかすの娘が話す。

「なら、やだ。私たちは奴隷よ。行ったところで扱いは酷いから。それに、さっきあんた達が殺したと言っても、仲間が死んだのはあんた達のせいじゃないかもしれないから」

女達が頷きそばかすの女が話す。

「捕虜、に、できるならそっちがいい……」

「いや、出来るならって」

「わかった。なら協力して欲しい」

蘭丸がため息をしタイシが話す。

「俺たちはまだこの国のことを、隠された道も知らない。知っているなら教えて欲しい。その代わりしばらくの生活の面倒は見る。その後について、俺の知人の修道院に預ける」

「教会に?」

「ああ。そうとも言う。あと戦争孤児たちを育てている場所だ。信頼はできる」

女達が目を合わせそばかすの女が頷く。

「わかった。なら、お願い。後私はここの貴族の相手もしてきたことがあるからわかるところは教える」

「ああ。なら、さっそくいけるか?早く終わらせたいからな」

「ええ」

タイシが立ち上がり女達もお互い手を借りあい貸し合いながら立ち上がった。


ガルダと繋がり痩せこけた少年が力無く目を開ける。

ーそのこの、ぐあい。

ー少しですが、あ、目が。聞こえるかな?

ーわかるか?

少年が目を細め看護師達を見るも再び目を閉じ眠ると看護師がまだ見たいですと頭を振り医師が頷き答えた。


ーそこ。あとそこも。

ーあの部屋もそう。

次々と隠れていた貴族たちが見つけられ捕縛されると蘭丸が暴れ声を上げながら連行される逃げ遅れた家族達を見ていきタイシがその後ろから気持ち良さげな顔をさせたそばかすの女を連れ出てくる。

「出てくる出てくるだけどよくまたわかるな」

「ふん。いつか酷い目見せようと思って寝てる時にあちこち見て回ったのよ。ああでも泥棒はしてないわ。一緒になりたくないから」

「ああ」

「いたいた」

箒になったミーアが上から現れタイシの前にくると鼻と口を手で覆う。

「タイシちゃん。ひどい匂いね。あのガルダ?」

「はあ。そうですよ」

「ええ。あと、アルスラン様がお呼びよ。その子は?」

そばかすの女がどぎまきとし、タイシが話す。

「この国の奴隷となった人です。名前もありません。そして、隠れている貴族たちの隠れていそうな場所を教えてくれます」

「え、ええ」

「ふうん」

ミーアがまじまじと見る。

「わかったわ。ならこの、貧乳ちゃん使えるのね」

「な…」

「ミーアさん」

「誰が貧乳!?」

タイシがやれやれとし、ミーアがくすりと笑い顔を真っ赤にするそばかすの娘へと話す。

「あらなあに?当たってるでしょ貧乳ちゃん」

「何か用があってきたんでしょ?」

タイシが話し、ミーアが告げる。

「ええ。きん」

家が突如吹き飛び兵士の1人が悲鳴をあげ上へと跳ね飛ばされる。ミーア達が振り向いた途端兵士目掛け巨大なミミズの牙を持った口が向かうが横に跳ね除け切り飛ばされる。ミーアがもうと声を出し術を使い兵士を受け止める。そしてタイシが倒した巨大ミミズが開けた大穴を見下ろす。

「た、たすかり、ました」

「いい。まだ敵のペットがいるな」

そばかすの女が青ざめ震え、ミーアがやれやれとする。

「タイシちゃん。今みたいなのがヤンガルのキャンプ地と避難地を襲ったのよ」

「早くいってください」

「言ったしみたじゃない。キャンプ地と避難地に逃げた半分の難民が犠牲よ。こっちも兵士が8人犠牲になったわ。あとそうそう。ヤンガルの王様がうまーく逃げてね。今追ってるところ」

「はあ」

「……はは」

タイシがそばかすの女を見ると女が座り込み上を見上げる。

「やっぱこの国最悪じゃん……」

ミーアがやれやれとしタイシがミーアへとミミズ退治しに行きますと伝えるとミーアがええと頷いた。


そして再びタイシが今度は湯をかぶると顔をしかめながら石鹸で体を洗いマルクールが今度は服を持ち話す。

「しっかし最後のゲロッぺ浴びるなんざついてませんでしたね若さん」

「気をつけてたんだがどうしようにも浴びないとマルクルが間に合わない状況だったからな…。マルクルは?」

「ええ。足の方はちゃんと繋がってて治療可能だそうです。ただ、しばらくは動かないで安静との事でした」

「わかった。あー匂いが混ざりに混ざってきつい」

「ですよねー。こっちまでまだ匂いますもん」

「はあ。もう一度洗うか……」

「そうした方がいいですよ」

「ああ」

タイシが泡を洗い流しながら大きくため息をついた。


アーバインが救護室で落ち着き眠るマルクルのそばについていたが、マルクールがその場へと来ると振り向く。

「若はどうした?」

「いやー、もうあのモンスターやらガルダやらの腐った臭いがどうしても取れないんで魔術の局長さん達のところに行きました。ステラさんがついてってます」

「むう。そうか。若のおかげで息子が助かったからな」

「その代わりゲロ思いっきり被りましたけどね。なんか臭い消しのとかありませんかね」

「むう…流石に聞かんなあ。そこは局長殿達に任せるしかない」

「ですよね。後どうですその息子は」

「ああ。麻酔で今眠っている。後少し遅かったら足を切断していたそうだがなんとかなった。後は残るがこれで済んだならいい」

「確かに。しかし、若さんもまた反応が早い。そして一瞬の移動には驚きましたよ。あれも術だとは思いますけど中々出来ないことですよね」

「そうだ。その通り。そして、今回相手にしたワーム達も本来ならギルドであればAランクモンスターになる。若は容易く倒していたがわしらからしてみれば相手をするのも難しい」

「巨大な割には素早いやつでしたからね。それに、地面に潜って出てくるまでの音もあまり聞こえないですし」

「ああ。若の話では奴らは群れをなすことはないらしい。完全な人外によるものと聞いた」

「ええ。あと、キメラでしたね。ヤンガルの方からきた魔獣の売人達が逃した魔獣。見た目は本来の魔獣そっくりですけど全く違うものだったとか」

「ああ。なので、そのワーム達も魔導局が調べるとのことだ。おそらくキメラの可能性は高いと若も話していた」

「ええ」

アーバインが頷きマルクールがしばらくアーバインと話すがアーバインに言われ先に休むと告げるとその場を離れ去った。


ーう、わああ。

ハリーがタイシにふれ鼻を近づけ匂いを嗅ぐ。それを遠くから防臭マスクをしたステラが見ていた。

「…お前は平気か?」

「これくらい別にー。術師はすごい臭いの薬草扱うことが多いからね。あと、ガルダの未完成体の腐った肉とワームの唾液と胃液のゲロだね。火傷は?」

「中和させて軽減させた。今はもうない」

「わかった。なら臭い消しの薬湯作るね」

「ああ。すぐできるか?」

「出来るよー。でも急ぎの料金は上乗せするから」

「ああ。それでいい」

ハリーがオッケーと答え部屋を出て薬草室へと向かう。そして、ハリーに代わり本を持った老人が入ろうとしたがうっと声を出し鼻をつまみステラの隣で止まる。

「むう、なんと言う悪臭」

「わざとかガーランド?」

ガーランドがぱっと手を離しほほっと笑いながら中へと入る。

「ま、じゃが常人には確かにキツイな。ここまで来る少しのところからもわしのような年寄りからでも臭ったぞ」

「うわ…、本当ですか最悪」

「ほほ。仕方がない。人助けのための犠牲だ。後今ハリーが臭い消しの調合をしにいったのならしばらくの我慢だな」

「はい…」

「ああ。それと、先に話しておこうかと思うてな。あちらにも結果は送ったし」

「送ったワーム達の死体ですか?」

「ああ。あとは、分かるだけの人キメラが誰なのかの鑑定もだ。ほれ」

「ありがとうございます」

「ガーランド。人型キメラだが罪人以外誰がいたか?」

「あーわかっているのは3人。何もわからないものはいた。ただ今もまだ調査中だからな」

「わかった」

「ギルドに手配されていたのもいますね。騙されたかもしれない」

「そうか」

「ええ。あと、これ見る限り30から上の男連中と、女だと40から上だけ。その下はいないですね」

「ああ。おそらく奴隷として、商品として流されたかもしれない。罪人でもあるからな」

「ええ」

「あと、マーラック。奴もいたか」

「いました」

ガーランドがやれやれとし、ステラが話す。

「ちょうどお前がギルドにいた時だったなガーランド」

「ほほ。懐かしい。そして、マーラック。奴はギルド長を2人殺しその周りの護衛達も殺した。あれを捕まえたのはわしとその当時のわしやギルド長とエスランカーがいたメンバーを含めた9人だったな。奴もエスランカーだったから苦労したのを覚えておる」

「ガーランドさんが?」

「そうだ」

「若返ってたらしいぞ」

「なぬ!?なぜ!?」

ガーランドがすぐさまステラを振り向き突っ込むとハリーがツボを持ちくる。

「キメラ化の影響だって。タイシ出来たよ。隣行こう」

「ああ。助かる。後さすが早いな」

「ふふん。そりゃあ僕だからね」

ハリーが嬉々としながら答えタイシと共に出る。

「あれはおだて上手だなあ」

「元の性格で本人はそんなふうには思ってない」

「ああ。しかし、キメラ化に若返りとは。おそらく悪魔の力もあってだろうな」

「ああ。悪魔を召喚した死体を使っての術のようだからな」

「うむ。言えば禁術だからの。そういえば、捕まえたオラクルの連中は?」

「拷問の後処刑だろう」

「ま、そうなるだろうか。禁術を使う連中だ。だが、処刑する前に顔見ることはできるか?」

「私ではなくタイシに頼んだほうが早いかもしれない」

「わかった。もしかしたら、知っているものがいるかもしれんからな」

ガーランドが告げ、ステラがそうかと返事を返した。


ー若。

「ようやく……」

アーバインが一度こほんと咳き込むとタイシが呆れハリーが含み笑いガーランドが話す。

「ま、わしらは強烈な臭いの薬草を扱ったりすることもあるから慣れておるが主らはなれておらぬからな」

「いや、まあ…」

「みんなに避けられてたんだ」

「…まあ、しばらく。仕方ない」

ハリーが頷き、ガーランドが話す。

「だな。悪臭でより具合を悪くしては困るしな。さて、なら、先にいいか?」

「はい」

「何をされるのです?」

「オラクルの捕虜たちとの面会だそうだ」

「ああ。ま、何か力になればと思ってな。アルスラン将軍の許可を今から受けようと思う」

アーバインがはいと返事を返しタイシがならまたいってくると告げるとアーバインがお気をつけてと答えた。


薄暗いヤンガルの地下牢をガーランドがタイシ、そしてアルスランや他の兵士たちを連れて歩いていた。

「なんとも言えん死の匂いばかりだ。ここでも多くの死人がいたようだな」

「ああ。一つの部屋に多くの骨が積み重なっていた」

「そうか」

拷問部屋の前へと来ると見張りの兵士が扉を開けアルスランたちを通す。そこでは全裸となった魔術師達が拷問を行う執行官たちの手により拷問具を使った拷問を行われていた。タイシがいたたまれない表情をしアルスランの前に教会から派遣された執行官が来ると頭を下げる。

「このような場所に何かがようですか?」

「囚人達の顔を魔導局のものが確認するとのことだ」

「ああ」

執行官が頭をあげガーランドを見る。

「同じ魔術師ですからね」

「そうだな。後早速そこ」

ガーランドが頭に万力を装着させられ拷問を受けていた年の行った男を杖で示す。

「止めろ」

「はっ」

拷問官が手を止め、ガーランドが息をつく。

「アレフ」

その声を聞きアレフがガーランドへと視線を向けその口から唾液を流しながら声を上げる。

「お、おお。ガーランド、どのお」

「修行の旅に出ると言って出たお前がなぜオラクルに?」

「だ、だまされ、たのです。助けて、ください」

「ガーランド爺…。元弟子?」

ハリーがこそっと尋ね、ガーランドが頭を振る。

「教え子だ。20年前に出てそれっきりになる。ここにいる連中はガルダの召喚に携わったと聞いた。あと」

ガーランドがタイシの腕を掴み前に出す。

「この者をどうする気だったのだアレフ。知っていることを話せ。話したくれたらわしが恩情を計らう」

アレフが唾を呑み込み頷く。

「その、異界人を、捉えるために」

「なぜ?」

「私が聞いたのは、その異界人は元はハズレだったと。しかし本当は、隠れた祝福を持っていた」

「あー、ギフト持ちの異界人か。まあ確かにタイシそうだよね」

「と言ってもな…」

タイシが複雑そうにし、アレフが告げる。

「その異界人を利用すれば、多くの運が回ってくると、き」

アレフが止まり突如顔が膨らみ頭が爆発する。

「アレフ!」

ガーランドが声をあげ、ハリーがゾッとする。

「口止めの術式か」

「バカめ…」

ガーランドが悲しげな視線を向けタイシが話す。

「他の術者達も」

「おそらくな」

「ひきっ」

ぱんと音を立て別の術者の頭が破裂すると執行官が口を閉ざさせろと声を上げるが次から次へと魔術師達の頭が破裂していった。


「わかった途端の連鎖反応でみんなおっ死んだのかよ」

蘭丸がやれやれとし、ハリーが顔をしかめ、タイシが水を飲みつつ話す。

「そうだ。ハリー。水だけでも飲んでおけ」

「分かった…」

「お前もついて行ったのが悪かったな」

「別に興味があってついて行ったわけじゃないんだけどさ…」

「流れいくまま抜け出せずだったからな」

「そう。その通り。タイシは?平気?」

「平気となるとそうでもない。ただ俺の場合あの拷問の方が苦手だな」

「えーそう?」

「ま、苦手は人それぞれさ」

「ああ」

ハリーがそうかなあとつぶやくそこにガーランドがステラと共に入る。

「ガーランド爺」

「ああ。あと死体達は魔導局に持って帰って調べることになった」

「うわあ」

「お前も手伝えよ」

「えぇ」

ハリーが嫌な声を出しタイシが話す。

「アレフ意外に知っているものはいましたか?」

「んー、まあ1人。魔導局の追われ者で手配犯がおった。わしと同期のやつでなあ。禁術である悪魔召喚の生贄を使う儀式を使用した。犠牲になったのは奴を慕っていた弟弟子だ。なんと言おうか。報われんし、あの時の悲鳴がまだ耳に残り続けておる。やれやれだ」

ガーランドが頭を撫でステラが話す。

「ハリー。戻るぞ」

「はあ。わかりましたよ。あーあー。やだなあ」

「文句を言うな」

ハリーが言いたくなるよとブツクサいいながらガーランド、ステラとともにその場をさる。

「さて、なら俺はマルクルたちのところに行く」

「おー。そいじゃこっちはあのワームの穴調査の様子見てくるわ」

タイシがああと返事を返し蘭丸が椅子から降りぐうと伸びをした。


ー日本食がいい。

目を覚ました少年がむすうとしながらそっぽ向いていた。そこに困り果てた看護師と医師がいたが兵士がその場へと来る。

「タイシ様がいらっしゃいます」

「ああ」

「タイシ?日本人?」

「日本人かは…。ただ見た目は君と同じかな」

そこにタイシが来ると少年が目を丸くする。

「あ、おっさん達が話してた兄ちゃんだ」

「どこのおっさん達だ?」

「俺と姉ちゃんに酷いことしたやつ」

「姉もいるわけか?後酷いと言うとどこで?」

タイシが座り少年が話す。

「オラクルとか言う奴ら。姉ちゃんは血の繋がりのない姉ちゃんだ」

「日本の孤児院か施設にいたのか?」

「ああ」

「やけに冷静というか。よく答えられるな。普通なら怖がるか嫌がるか」

「別に。慣れっこ。慣れっこというか、まだ殴られたり蹴られたり。おっさん達もだけど俺が暮らしてた家と比べたらまだまし。でも飯は日本食。和食食べたい」

「何がいい?」

少年が考える。

「…カレー。あんまり辛くないの」

「わかった。ただすぐには作れないし、体調もまだお前は万全じゃないから体調が良くなったら作る。いいか?」

「まあ、わかった」

「ああ。後名前は?それから向こうの施設はなんて名前の施設だった?」

「後藤正樹。施設はどんぐりの家だ」

「そこか。俺も少し世話になった時あった場所だ」

「まじ?」

「ああ。ただ、その後また家に戻ったけど、また出たな。家を」

「施設には戻らなかったのか?」

「なかったな」

「へえ」

「その同じ施設の妹と一緒にここにきたわけか?」

「ああ。でも姉ちゃんは聖女候補だからって連れてからてわからなくなったんだ。名前は立花桜」

「…うわマジか」

タイシが複雑そうにする。

「知ってる?」

「ああ。同じ頃に預けられたから知っている。となると、卒園して遊びに来てたのか」

「そう。あと、なんか姉ちゃん元気なくてさ。それで園長先生が一緒に裏山で遊んでおいでと言われてからここ」

「ああ…。なら、お前は巻き添えか」

「それ他の奴らにも言われた」

正樹が鼻を鳴らす。

「なあ。俺少し腹減った」

「わかった。ただここには米がないからパンがゆでいいか?」

「なんか不味そう」

「不味くない。あと作って持ってくるから」

「にいちゃん作れるのか?」

「ああ」

「すげえ」

「どうもだ」

タイシが正樹の頭に手を乗せ離し立ち上がり部屋を出る。正樹が寂しくしため息をし医師たちがやや安堵した。


しばらくて、

正樹がタイシのパンがゆを食べ、タイシが食べる正樹の横でボードを手にし書類を読みサインしていた。

「なあ。にいちゃんはここでお偉いさんなんだろ?勇者?」

「いや。違う。ただこの世界にもあるにはある職業だな。勇者と名乗ったやつに会ったことあるのか?」

「実際はないけど魔術師のおっさん達が勇者の行動はって話してたな。あと、ランカスターって人。その人については怖がってたし、なんか嫌がってたな」

「そいつらにとって天敵だからだ」

「そっか」

「ああ」

「…なあ。もう元のところには帰れないんだろ?施設とか」

「そうだな」

「そっか…まあ、俺は家族いないから…。でも、ダチとか向こうにいるから寂しい」

タイシが手を止め、正樹が表情を曇らせる。

「にいちゃんは?施設に戻らなかったってことは引き取り手いたからだろ?」

「ああ。唯一家族と思った。思ってくれた祖父が居た」

「いいな。俺じいちゃん達からも嫌われてたしさ」

「悪いがなんでそこまで?」

「ああ。カッコウの子供って言われてた。托卵の子って。母さんは違うって何度も何度も言ったのに親父が全否定して托卵の子。俺の子じゃねえって殴ったり蹴ったり。そんでじいちゃん達からは他のいとこと違って何ももらえない。近づいたら近づくな言われて。その後、母さんが家の中で自殺してさ。それからころっだ。母さんの親類が俺と親父の父子関係のDNA調べたら実の親子だと分かった。そんで、親父達が今度は引き取る言ったけど母さんの従姉妹になるおばさん達がさ。金目当て。引き取り拒否。後今まで俺にむけた暴力とかの証拠を母さんが従兄弟たちに送ってたんだ。それを使って親父達を訴えて親父は逮捕された。その後は、まあ、急だったから施設に引き取られた。それでおばさん達のうちの1人が後一年したら娘が成人して社会人になるからその時引き取るっていってくれたんだ」

「ああ。ところで、どうしてそのおばさん達は今になってじゃないが」

「ああ。海外にいたんだよ。おばさん達2人とも海外に嫁いでたんだ」

「へえ。珍しいな」

「な?で、母さんのじいちゃんたちは死んでたから頼れなくて。で、おばさん達も海外で難しかったから」

「ああ」

「それで、一年後にカナダのおばさんのとこに行くことになってたけど…」

正樹がはあああと長い息をつく。

「あのクソ親父。そうだ」

「まさかじゃないが施設に侵入したのか?」

「した。して、止めようとした姉ちゃんが殴られて。それからここ。そんなクソ親父は知らねえ。姉ちゃんが心配」

「そうか」

「というか、あのクソ親父が死んでたらいい。俺あいつが怖いし、母さんを殺して姉ちゃんを殴った」

正樹が布団のシーツを強く掴む。

「あいつが怖い。でも憎い。でも、会いたくない」

正樹が項垂れる。

「なら、会わないようにするしかない。あと、立花はなんとか探すが…あいつが聖女、か」

「いや、いい姉ちゃんだから。変わってるけど」

「ああ。変わってるのは知っているし、扱い方わかるのか。というか、うまくあつかえるかあの変態女子を」

タイシが複雑そうにし、正樹がさあと答えた。


ーアストレイの圧勝。ヤンガル国、王逃亡。残されたものの判断によりアストレイに下り傘下に入る

知らせを受けたナターシャがわくわくし嬉々とする。そしてミオが僅かにミオが安堵すると配られた記事をじっと読んでいく。


ーちぇー。

ランカスターが木の上の枝に寝転がりひねくれていた。そしてその下に黒髪をお団子にした女がストローを持ち口に咥えふくとシャボン玉がふわふわと浮かぶ。

「サクラ。お前の予言通り逃げられた」

「でもまた会うわよ。しかしタイシ君がこの世界で活躍するなんてびっくり」

「んー、向こうじゃなんだったんだ?」

「ええ。下の子達もだけど上の人たちからも信頼されてたお世話係」

「ふーん」

「あいつらもバカねー」

サクラが再びシャボン玉を吹く。

「人の中を見ずに人の外だけ見て決めるからこーなんのよ。それで今更連れ戻せときた」

「バカがすることだ」

「でもランカスターもじゃない。遊んでまんまと逃げられた」

ランカスターがけっと吐き捨てサクラがストローと原液が入った瓶を袋に入れ胸元に入れると立ち上がる。

「あいつらはどこに逃げた?」

「東よ。早速場所取りで殺してるわ。動物を飼って暮らしているところで、丸いドーム型の布の家が点在する草原地帯」

「サーランド国だな」

「赤っ恥のランカスター」

ランカスターが苛立ち笑みを浮かべマナが子龍を肩に乗せやってくる。

「誰が赤っ恥だ」

「あなたよ」

「きき」

子竜がマナから離れサクラの胸元に飛び込み頭を擦るとサクラが抱きしめ頭を撫でる。

「サーランドに行く」

「ああ」

「また何かお困りごとがあれば後一回はいいわ。助けてくれたお礼」

「はいはい」

ランカスターが木から落ち着地しそのまま背を向け走る。そして後ろからぬっとラドンが現れる。

『茶髪の小僧か』

「ああ」

「また次はどこの獲物?魔術師?」

サクラが物怖じせずラドンが持ってきたバラバラの死体を見る。

『ああ』

「噂のオラクルだな」

「なら料理前に待って。見るから」

桜が頭に手を当て光を放つ。

「だめ。雑魚。ねえ私達の食べ分の肉は?」

ラドンが鼻を鳴らしくいと顎を後ろに向けるとサクラが背中を見て吊るされた鹿を見る目を輝かせる。

「いいわね」

『さっさと作れ』

「わかったわ。でも解体はいつも通りお願い。重労働だもの」

『わかった』

「大変な目にあった…」

ふらつくマーラックがその場にくるとサクラが話す。

「くたびれてシワがまた戻ってますよマーラックさん」

マーラックが木に腕を当て体を預け大きく息を吐き出し、マナが楽しく笑む。

「タイシにやられたな」

「ええ。その通り。おかげで体は穴だらけ。腹も減って」

「なら今からご飯ですよ。ラドンが材料は持ってきたから」

『お前の食い扶持はお前で獲ってこい』

「そんなこと言わないでくれ…。本当今は血と肉に飢えて仕方がない」

ラドンが鼻を鳴らし、サクラが告げる。

「でも大変ですね。望んでもないのにその体になって食べられるのが人肉とは」

「はあ」

「ラドン。足くらい分けてやれ。次はこいつがその分も狩る」

『ちっ』

「なら決まり。お先に」

「サクラ。鹿ならあの油で揚げたものがいい」

「いいわよ。粉あったかしら」

サクラたちが行きラドンが後に続くようについていき、マーラックもふらつきながら森の中へと姿を消した。


ー師匠達のところか…。

正装の軍服を着たタイシが呆れながらマナの手紙の後に書かれたさくら自身で書いたとされるサクラの名前と元気で暮らして料理してますとあった。

「…と言うことはラドン。あいつのシェフは今サクラか…」

「ヤンッ。俺まだ歩きも出来ないからまて!」

正樹の声が響き部屋の中ではしゃぐヤンが止まると正樹が車椅子に座りただ車輪を回しながら前へと進む。

「正樹」

「なに?」

「桜だが俺の師匠の元だ。相当な安全地帯にいるから平気だ」

「そっか。なら良かった」

正樹が安堵しタイシがやれやれとしながら頷く。

「あと桜に似合ったところだから好きなように過ごせる」

「変人の集まりな訳?」

「ああそうだ。俺は、半年我慢して出た」

「ふーん」

「正樹。正樹はパーティ出ないの?」

「俺は関係ないからターニャと留守番しとく。暇になったら部屋にいるから来ていい」

「わかった」

正樹が頷きタイシが話す。

「悪いな。まだ体休めないといけないのに」

「歩けないくらいだし、ターニャもいるから平気。後、にいちゃんのほうが大変じゃん」

「慣れた」

「若。時間です」

「ああ」

タイシが迎えにきたアーバインと共にその場を去りヤンもまた後についていく。正樹が手を振り見送った。


ーもうすぐか。

ミオがやや寂しく窓から外を眺める。そして、屋敷の廊下を見る。

ー半年だけど最初の方は、色々あってあっという間だったな。

ミオが物思いにふけながら息をつく。

ーお母さんは父と暮らしていた時どうだったのかな。

「ミオ」

ナターシャがその場にくるとミオが振り向く。

「どうかしたの?」

「明日なので」

「ああええそうね」

「寂しいですし、今日一緒に寝ていいですか?」

ミオがしょんぼりとしナターシャが子犬かとミオのしょんぼりする姿を見てキュンとすると仕方ないからいいわよと告げた途端、ミオが目を輝かせナターシャがそのミオを見て抱きしめたいと疼くもグッと抑えた。


ーご子息もご無事で何よりでしたな。

祝いの場でアーバインが他のもの達と話す中後ろでマルクルが椅子に座り同期のもの達と話していた。そこに横入りするようにヤンが来るとマルクルがヤンと来たタイシを見て立ちあがろうとするもタイシが手で制しマルクルを座らせたままにした。

「本当にあの時はありがとうございました」

「いや」

タイシがマルクルの隣に立ち話していく。

「こっちももう少し視野を広げておけばよかった」「いえ。あの場では難しいですし、歩けるのでよかったです。しかしあれについてはもう懲り懲りです。あのワームの大群について。臭いも相当でしたし」

「ワームは餌を食ったあと消化してしばらく体内に収めて口から吐き出すからな。あの匂いは全部食った腐敗臭だ」

「その一部にならなくてよかったですが、そう考えるとあれだけの匂い。相当量食べたということですよね?ヤンガルの国民達を含めたものを食べる前に」

「ああ。もしかしたら処刑にも使われていたかもしれない。何頭かに罪人の証のとけきっていない器具があったそうだからな」

「ええ。しかし、ヤンガル。あちらも何を考えているのか」

「というより逃走中の王を含めた王室達とオラクル達だ」

「ええ。あと、話に聞いた方の片割れは?」

マルクルがこそっと話す。

「逃げた。親類のところの可能性が大だ。もう一方は引き渡して無事だ」

「はい」

「ああ」

ざわめきと共に場がわずかに鎮まると皆が一斉に頭を下げる。そして会場の中央をアルスランを含めたもの達が通り歩いていた。

「なら」

「ええ」

「どこいくの?」

「ヤン。こっちに」

ヤンが止まりおとなしくマルクルの隣に来る。そしてヤンの前で今度は音楽が鳴り響くと王と王妃が皇太子たちを連れ壇上へと立つ。

「なに?」

「労いと表彰だ。今回はどうだろうか?」

「今回って?」

ヤンが振り向きマルクルがヤンを膝に座らせる。

ータイシ殿だ。未だにまだ武勲を頂いていない。つまり、戦地での活躍ぶりをこの場の者達に報告していない。

ーえ?なんで?頑張ったよ凄く。

ー王達は異界人が嫌いなんだ。

ー…そっか。なら、今まで頑張ってきたのは全部無かったことになってるの?

ーああ。だが、唯一アルスランドの含めた周りは評価されてくれている。今の地位にいるのも周りの厚意等によるものになる。ただ、今回タイシ殿は戦地で多く尽力されたからな。偽ガルダのこともだが、魔術師達の隠れ家を暴いたこと。ほか、我々下の助けを行い避難民を助けた。

ーうん。

ーもちろんヤンも。

ー僕も?

ーああ。ただ、まだあの場は早いが、アルスラン様達は活躍された者について歳は関係なく人種も関係なく評価されてくれる。ヤンはもう少し大きくなったらその評価に値するものを与えられる。それまでは自分の出来ることをし自分を鍛えていけ。人や弱いもの達を守ることができる力を持っているからな。

ヤンがじんとし頷き今度は嬉々とするがびくっと震えると汗を滲ませ王たちを見る。

ーどうした?

ー…あの王様怖い。憎んでるのか、なんか、ええと。

ヤンがしどろもどろとする。

ータイシお兄ちゃんじゃなくてアルスランおじさん…が特にかな。でも恐れてる感じもするし、うーん。

ーあまり読まないほうがいい。感じ取らず無視をしておけ。

ヤンが頷きマルクルが頷き王達を見る。

ーまあ、恨まれているのはなんとなくはわかる気もしなくはない。

ーなんで?

ー後で蘭丸殿に尋ねたらいい。あの方がわかる。

ヤンが頷きアルスラン達が戦地での成果を王の口から受けつつ頭や声に出し答えた。そして長い話の中、ヤンがうつらうつらと初めマルクルがヤンを支えながら見ていたがむすっとするアーバインが隣にくる。

「また何もない」

「ですね。ただ今回は周りがいかがなものかと思っておられるはず」

「ああ。我々も含めた国民も不満を持っているからな」

マルクルが頷くとマルクールが肉を食べつつくる。

「お前はみっともない」

「いいじゃないですか」

「余からは終わりだ。苦労であった」

マルクールがやれやれとする。

「陛下」

髭を丁寧に整えた男が軽く頭を下げる。

「なんだ?」

「申し訳ございませぬ。タイシ中佐の事について。此度の戦ではタイシ中佐とその部下達の活躍が大きく、わずか2日で論破したのもまたしかり。そして、ヤンガルがわが国周辺もですが我が友好国に化け物達を送ったことを即」

「それは中佐が行ったわけではない。あの鳥はダンガン。魔術師たちはミーアと余は聞いておる」

ーいやいやえー。

「相当嫌われてますね」

マルクールがざわつく中アーバインへと話すとアーバインがゆっくりと頷く。

「話は終わりだ」

「陛下」

「私は中佐の指示に従い納めただけですよ」

王が視線をミーアへと向けるとミーアが小さく笑む。

「陛下」

「陛下。こちらも手伝いをしたのみ。ガルダとガルダの体内からガルダを操るものを仕留めたのはタイシになります」

ダンガンが告げる。

「そして四大魔獣の一体と呼ばれたガルダが製造された魔獣と言うことも分かったこともです」

「はい」

王が鼻を鳴らす。

「今回の人型キメラについても。重要な情報を」

「その中佐は今お前が話した四大魔獣の一体と手を組んでいる」

王がタイシを指差す。

「その男こそ余は危険とみなしておる。いつか、アストレイ。我が国へとアスクレピオスが襲撃してくるやもしれぬとな。なのになぜその男がここにいる?皆はそう思わぬか?その赤き目はアスクレピオスと同じ目。なればその目からアスクレピオスが常に我々を見て隙を狙っていると。国を壊し人を丸呑みにしその猛毒で全ての土地を葬り去ってきた巨大で醜い蛇の化け物」

周りがよりざわめくとアーバインが拳を強く握り震わせ、マルクルが奥歯を噛み締め睨みつける。

「国滅ぼしたっけか?」

マルクールが顎を撫で首を傾げるも体を軽く傾け眠ったヤンを見て気楽な坊ちゃんと告げる。

「そのアスクレピオスの使い魔を連れて投獄しろ。余の前に2度と姿を見せるな」

兵士たちが動きタイシを囲もうとするもすっとアルスランが王に近づくと場が静まる。

「アルスラン」

「アスクレピオスは今我が息子を通じてこのアストレイの為に協力をしております」

アルスランが止まる。

「そして過去にアスクレピオスによる国滅ぼしは一度もございません。むしろ、ガルダこそ多く聞きます。我らが死んだ多くの戦友の中にはおよそ2千の数がガルダの突如の襲撃により命を落としている。それも戦場というわけではなく、演習後のみなか疲れた隙を狙っての襲撃。今回のガルダがオラクル共により作られた魔獣と判明した今、我らが敵はオラクルとみなすのが正しい。そして、アスクレピオスはその我らに力を貸している。それは今後のアストレイにも重要である力と思われます。そして、我が息子は息子の部下意外にも多数のもの達の人命を救いながら戦場をかけた。その報告は私と左大臣やほかが申し上げた。今回の戦場による兵士の犠牲が少なかったのは息子が自ら戦地で動き、その指示によるものです。我々もまた指示を致しますが直接の指示に関してはその時その場にいたもの達でしかわかりません」

王の手が震え始め、アルスランが話す。

「陛下。息子は以前より国のために、陛下のためにと身を粉にして尽くしております。それはこの周りもまた知っており評価しているのです。それは私もまたその1人。それを」

「黙れ!!」

怒鳴り声が響くとヤンがハッとし目を覚ますとマルクルの手を掴む。

「余はその異界人の事など何も評価などしておらん!むしろ危険人物であり今尚危険であると認識している!そのものは危険分子だ!すぐにでも捕まえ処刑せねばならん!!」

周りが大きくざわつくとアーバインが血管を浮かせ、震えるマルクルの手を握るヤンが狼狽える。そしてミーアが小さく舌打ちをしダンガンが冷めた目でみていく。そして、最初に発言した髭の男が声を上げる。

「陛下っ。撤回を!」

「ならん!!その異界人の部下共もだ!!異界人と同様この場にふさわしくない汚れたもの達だ!!さっさと」

砂塵が現れると周りが悲鳴と驚きの声とが上がる。そしてヤンが手の紋章を光らせるマルクールを見てワタワタとする。

ーあのじじい。がーがーがーと。俺1人ですむなっ。

マルクールの視線が突如代わり床が近づきその場に倒れる。そして砂塵が静まり消えるとマルクールが汗を滲ませ抑えたタイシへと視線を向ける。

「まだ処刑だけはどうかご勘弁をお願いしたい所存であります。そして、私の部下との事でしたが、実際はアルスラン将軍。我が養父となる方の直属の部隊です。私は代理で指揮を取らせていただけに過ぎません」

王が手を震わせ顔を赤くさせ、タイシがじっと見る。

「私はすぐにこのものと共にここを出ます。そして、処刑の代わりに私とこの者の、アストレイからの国外追放を願います」

「なっ」

「若っ」

マルクル、アーバインが思わず声をあげタイシが続ける。

「確かにアスクレピオスが私を通じて見ているのは事実。なれば、即刻このものと共に私を追放して下さい。アストレイ王」

タイシが強く宣言する。マルクールがじっと見ていき視線をなんとか王へと向ける。王が奥歯を噛み締め息を吸い吐き出すとタイシを冷めた目で睨みつける。

「2度と余の国と余のめの前に姿を見せるな。2人とも即刻この場より!余の前から失せろ!」

ー馬鹿な父上め。痴呆が始まって仕方がない。

ヤンがすぐに片方にレンズをかけた皇太子へと視線を向ける。皇太子が顔を背け視線を今度は僅かに離れた位置にいるダリスへと向ける。そして、タイシが頭を下げマルクールを連れ出る。アーバインが口をつぐみ、マルクルが悔しく歯を噛み締める。そして、肉を食べながら蘭丸がやれやれとみていき、ステラが息をつく。

ーやったな。あの王。

ーああ。これでますます愚王と言われっぞ。あと、タイシのしてきた仕事が俺らに回ってくる。

ーそれより飯が食えないのが辛い。

ーあああああ。

蘭丸ががくっと頭を下げステラがはあと息を吐き出しアルスランへと視線を向ける。

ーみろ。将軍もお怒りだ。

ー当たり前で初めて見るな。あと、これで内情がガラリと変わるぞ。

ーああ。タイシの味方はとてつもなく多いからな。

ーだな。

蘭丸が肉を食べ終えるとやれやれとしていった。


ーあー。

「すんませんまじで…」

マルクールがしょんぼりとしながら夜道を歩き、隣に並び歩くタイシが話す。

「気にしなくていい。あの王は俺とアルスランさんのこと相当毛嫌いしているからな。だけど、アルスランさんに叶わないから俺に当たってるだけだ」

「いや。はあ。しかし、あの場であそこまでいうもんですかね」

「周りが自分の考えを全て否定したからかっとなり過ぎたんだろう。まあとにかく、国外追放はアストレイとアストレイの領地になっている国含めてになるからな」

「あー」

「だが処刑は回避できた。俺はまだ生きたいし、やりたいこともある」

「やりたいことってのはなんですか?」

「まあ、自分の先がどうなるか知ることか。未来は見えないから見えない未来に何が待っているかを俺は知りたい」

「…はあ」

「俺たちの荷物はアルスランさんが届けてくれる。取り敢えず行く先はマーリス。そしてまた旅だ」

「へ?」

「アルスランさんの娘のミオが多くのことを知りたいと話していた」

「ああ。あー、あの女の子…。俺嫌い言われたんですけど」

「それは嫌がることを話したからだろ」

「まあ…」

「とりあえず、アストレイについて俺の仕事はないから、あるとして、アルスランさんからの頼み事。そのミオが世界を知る旅の手助けをする事をしていく。俺も学べることがあるからな」

マルクールが頷き、タイシが話す。

「マルクールは?」

「俺はと、言っても、なあ」

「また1人旅か?」

マルクールが顔を顰めるも子龍が2頭上を飛び超え目の前に着地する。そしてラダンとミーアが降りる。

「あれからどうなりました?」

「散々。パーティは中止よもちろん」

「ああ。アルスラン将軍がお怒りになられ謹慎となった」

「え?まじ?」

マルクールが思わず声に出し、ミーアがやれやれとする。

「まじよ。だから私達も同じ。ま、でも期間はまだ決まってないしパーティも終わったし、アルスラン様命でこっちに来たわ」

「ああ。あの王なのでさっさと国から出て国外の屋敷でまず休ませて待たせておいてくれとの事だ」

「わかりました。でも明日の昼はマーリスに行く予定です」

「それには間に合わせると思うわよ。それとタイシちゃんの屋敷にある荷物はダンガン様の国の外におられる親類の方が預かることになったわ」

「助かります」

「ていうか、まあ、みんな国外ですね」

「だって、あの王。ネチネチぐちぐちだもの」

「ああ。もし近くに置いておけばまたうるさく言われる。どうあれ、国の長である立場上我々は弱く従うしかない」

「そお。生まれ持っての超贅沢階級。ならいきましょう」

「はい」

タイシが返事を返しマルクールを乗せ子龍に乗ると空を飛ぶ。

「でもよかったわー」

「何が?」

「マルクールちゃんが魔法使ってくれたでしょ?あれだけで事が収まったから」

「へ?」

「ええ」

マルクールがタイシを振り向きタイシが話す。

「あそこでアーバインたちが殺気だち始めてたし、俺の近くだとアルスランさんが剣に手をかけたからな。もし見えていたら不味かった」

「……あ、そうすか」

「ああ」

「俺1人ならってねえ。ヤンちゃんが教えてくれたわー」

マルクールがぎこちなくしミーアがくすりと笑う。

「謹慎となったとはいえ、あの場でアルスラン様が剣を抜かれなかったのでよかった」

「ええ。そう。抜いていたら叛逆行為と見なされるのよ。面倒な国」

「はあ…」

「とにかく、あれだけで済んだのはマルクールのおかげ」

「ああ」

マルクールが複雑な面持ちをする。そして国の外へと出て隣国へと入ると今度は白い大きな屋敷と出迎えるもの達の前で降りる。

「えー、でか」

「ここは別荘でたまに来たりしたな」

「アルスラン様はお休みの日ならここでいつも過ごすのよ」

「ええ」

「お疲れ様でした。大変でしたな」

老執事が頭を下げタイシが話す。

「また遅くにすみません」

「いいえ。後一通りお話はお聞きしましたので中に。お部屋のご準備をいたしております」

「ありがとうございます」

「なら私たちはまた向こうに戻るわね。多分またあした」

「ああ」

「はい。ありがとうございました」

ミーアがいいえとだけつげラダンが操る子龍が空を飛びその場を去った。


マナがタイシが作ったのだろうハンモックに寝ながらのんびりと過ごし、サクラが人肉を香辛料などを合わせた大きな壺に漬け込みもう一つの小さなツボには自分たち用の鶏肉を漬け込んで行く。だが、人の気配を感じると顔をあげアスクレピオスを見る。

「どちら様ですか?」

「アスクレピオスか。半世紀振りだな」

「ん?」

「ああ。以前このようなものはなかった気がするが?」

「弟子が作った。あちらの世界にある外の寝床。なかなかいい心地だ」

マナがのんびりと話、桜が桶で手を洗う。

「タイシ君のお知り合いでもあるんですね」

「ああ。アストレイの事だろう?」

「それは別段」

アスクレピオスがマナに近づく。

「そちらなら知ってるはず。オラクルだ」

「今までどうでもいいと言っていたくせに。まあいい。弟子も世話になっているし、一応もしかしたらの未来の相手になるかもしれないからな」

マナが楽しく話しアスクレピオスが告げる。

「まあだ相手はその気にならないから攻めていく」

「あはは。まあ好きにしたらいい。あと、アストレイ王とオラクルは繋がりは持っていないが、多分持つ可能性は高い」

「教会の中にもいるからな」

「ああ」

アスクレピオスが頷き、マナが話す。

「あの王と弟子と比べるとやはり弟子の方が私から見ても勝っている。だからこそ今のうちに潰しにくるだろうな」

「はっ。あれが簡単に潰せる相手ではない」

「もちろん。私が教えても来ている」

アスクレピオスが離れ背を向け去っていく。

「まあた、綺麗な女性ですね」

「あれも苦労人でな。そして、初めて恋に落ちたのではないのか?」

「え?それもっと聞いたみたいな」

「ふふ。また会った時に心情を聞いたらいい」

「そうします。後今日の昼はパンとスープと魚。こっちは夜のお楽しみ」

「わかった」

桜がはいと返事を返しマナが気持ちよくそのまま揺られていった。


ー己。己…。

「アルスラン」

隠し部屋の中でフードにマントを羽織った王が怒りを抑えつつ黒装束の男。そして、魔人の腕をさするリリーを前に話す。

「奴の子を殺せ」

リリーが手を止め、男が話す。

「それは、異界人の方で?」

「できうるならばその異界人の小僧もだ」

ー無理難題を…。

リリーが拳を握り、男が話す。

「陛下。まずは謝罪を。殺す事は我々には不可能です。ですが、生け捕りは致しましょう。しかし、準備が必要です」

「1年待つ」

「十分です」

「ああ。とらえたすぐさましらせて余に見せろ。その後あのアルスランの目の前に見せつけてやる」

王が背を向け部屋を出ると男が息をつき、リリーが再び腕をさする。

「アストレイ王はなぜ嫌いなのにそばに置いているの?」

「使える人材であり、恐れているからだ。いつか自分の首を刺しに来るかも知れないからとな。ならば、自分の手元においていたほうがいいとのお考えだろう」

「弱虫というわけね」

男が無言で小さく頷きリリーが話す。

「上にまず話すんでしょう?で?すぐには動かないのよね?」

「ああ。すぐには動かない」

「分かった」

一度ノックが響くとリリーが手を離しノックされた扉へと行きその扉を開け中へと入る。男がやれやれとし軽く息を吐く。

ーまた面倒な事だ。致し方がないな。

男が王が出ていった扉を開け外へと出ていく。そして、別の扉を開け違う部屋へと入ったエリスが目の前の目を赤くさせた全身が黒に覆われた魔人へと近づき魔人がリリーに手を向け、リリーの手を掴み引き寄せ抱きしめる。

ー本当、何考えてんのかわけわかんない……。なんなのかしらねこの魔人となった人物は。

リリーが何も言わずにその魔人に抱かれながら目を閉じた。


片眼鏡の皇太子もまたハードにマントを羽織り夜の街を側近兼護衛と共に2人で足早に歩いていた。そして、教会の裏口へと入り中へとハリスが通し案内をする。その後、ダリスがいる部屋へと来る。

「夜遅くにご苦労様だったな」

「ご苦労しないといけないと思いましたから。お話についてまた一度考えてくれましたか?兄さんは?」

ダリスが水を飲み、皇太子がマントを従者兼護衛に預け目の前に座る。

「実の父だ」

「ですが知っての通り見ての通りですよ。あれの時代は終わりです。そして、早速兄さんにしつこく嫌がらせをする枢機卿の暗部に依頼を行いましたから。ただし、生け捕りとの事」

「お前の影はよく働く」

「それが仕事ですから」

「…チャールズ。私は今でも」

「いいえ」

「はあ。なら後押しをするのでお前がなれば」

「いいえ」

ダリスがやや苛立ち、チャールズが話す。

「私はその器ではありませんしあくまで皇太子という身分。私は私生児です。なれば、王に限りなく近いのは兄さんです。あの兄達も使えませんし、常にタイシに頼ってばかりいましたから。タイシもお人好しのところはありましたが実力は確か」

ダリスが息をつく。

「処刑を自ら退き追放を選んだな」

「ええ。ただ、タイシにとっては都合が良かったはずでしょう」

「忙しすぎるからな」

「はい」

「…チャーチル。アルスラン殿の娘について知っているか?」

「確かミオとか。もうわかりましたか?」

「ああ。親子で間違いはない。彼女と彼の方は血縁者だ。なので今後アルスラン殿に媚を売りにくるものはいるが娘はそのミオ殿1人のみだ」

「はい」

「ああ。そして、ミオ殿からも言われた。真正面からな。私が王になれば婚約者の更にその先までついて行くと。ならなければそこまでという約束で婚約者としてなってもいいとだ」

「……少し、驚きました」

「私はお前や周りからも言われてきているから、腹が立った。だが、そのあとか」

「え?」

「なんと言ったと思う?」

チャールズが眉を寄せる。

「なんと、と言いますと…。兄さん以外に相応しいとか」

「違う」

「…では、なんと?」

「素晴らしいからとの事だ」

チャールズが目を丸くし、ダリスが淡々と話す。

「私自身が小さな世界から大きな世界までその場にいてその場で見てきているからとの事だ。敵もいるがそれ以上に親しきものが多い。アルスラン殿からは王になれと言われたことはないが、話すその言葉はと同じだった。親子だと思ったよ」

チャールズが頷き、ダリスが話す。

「チャールズ。その件は保留にする。今後決めるのは彼女との関わりで決める」

「アルスラン将軍の娘と?」

「ああ。その通りだ」

「なら、こちらも微力ではありますがお力添えをします。その娘に」

「好きにしたらいい」

チャールズがはいと返事を返し立ち上がり進歩はしたと思いつつ部屋を出る。

「サイモン」

「はい」

天井から暗部の服を着たサイモンが静かに降りる。

「お前を通じて会う約束をする。早速だが次の行く先が決まったら教えて欲しい」

「はい」

「ああ。あと、タイシ殿に先ほどの暗部の追手を含め私からの言葉を伝えて欲しい」

サイモンがはいと返事を返しダリスが話した。


昼ー。

ミオが旅の支度をしていくと傍に居たナターシャが寂しくみていた。そして支度を終えた後ナターシャがミオを抱きしめミオがナターシャを抱きしめる。


「マーリス国にももうアストレイであった騒ぎが届いてましたよ」

子竜にのり迎えにきたエリスが屋敷の前で待っていたタイシとマルクールへと話すとマルクールが話す。

「またお早い」

「魔導局とアストレイの術師達が作る広告便は深夜のうちであれば朝には間に合いますから。少し高いですが私も気になったことがあれば買って読んでおります」

「へえ。俺はあんまりそう言ったの興味なかったから知らなかったな。若さんは知ってんでしょ?」

「ああ。あとまんま載せてるし、俺の今までの戦果とかも事細かく載せなくてもいいのになあ」

タイシがエリスから渡された記事を読んでいくも執事がまた別の記事を持ってくる。

「こちらも速報で配られたそうです」

「なんでこれだけのことでそこまで騒ぐ必要があるんだ」

「ふふ」

「いやありますあります」

タイシがやれやれとし次の記事と見ていく。

「タイシ様。間も無く旦那様がお越しになられます」

「ええ」

「謹慎ですよね?平気なんですか?」

「わかったところで何もできないのがあの王ですよ」

ちくりと執事が棘のある言葉を話すとタイシがやれやれとしながら生地を畳み執事に渡す。

「アストレイが荒れるな」

「でしょうな」

「ええ」

タイシがアストレイの方角からくる子竜を見る。そして子竜たちが降り立つとアルスラン、ラダン、ダンガンが降りる。

「よお。よく眠れたか」

「はい。記事ですけどそのまま書かれてましたよ」

「あそこにいたからな」

アルスランがタイシの前にくる。

「すまんな。何も出来ず」

タイシが手を振る。

「いえ。ちゃんと言うことは言ってくれましたから。あと、まだ色々残してます」

「ああ。残ったものとでふりわける」

「はい」

「ヤン坊があいてえと泣きまくってたぞ」

「あー」

「王もあそこまでなるともう」

「また次代の王が決まる。それまでの間だ。そして、面倒ではあるがその王の命を受けたもの達が必ず来る」

タイシが頷き、アルスランが話す。

「気をつけろ」

「わかってます。あと、頼まれていたミオの旅の同伴を続けます」

「ああ」

「ミオ殿にも手が来るはずだ」

ラダンが話し、ダンガンがやれやれとする。

「ああ。だが、味方もいるのも忘れるな。それでも注意しろ」

「そちらも。国内だとおそらくより動きにくい状態になるはずです」

「まあな」

「ちっ。あの愚王」

ラダンが舌打ちしダンガンがやれやれとすると。

「お話を遮り申し訳ございません。アルスラン将軍にお尋ねしたいです」

アルスランがエリスを振り向きエリスが話す。

「ミオの保護者をしておりますエリスと申します。なぜ、あの王の元に?アストレイ王は30年前より使えない王と言われており、国も小さかった。自身が国を作るためにその国に身を置いたわけではないのならなぜかと疑問に思います。なぜですか?」

タイシがアルスランを振り向きアルスランが話す。

「私は私自身王の器と言われてきた。だが、私は王の器とは思わなかった。なので、支えるものとしてその使えない王の元へと来た」

「では、今後は?今の王とあなたは対立が激しいと思われます」

「次代の王の為に残る。そして、アストレイを中心になしたいことがある」

「それはなんですか?」

「世界を知る事。まだ知られていないことがこの世界には多く存在する。だが、イーロンについては別だ。あれは全くの別世界であり、この世界では危険な国と判断した」

「行き過ぎた国の発展」

「いいや。違う世界とを無理やり結んだ。この世界はこの世界でなければならない。葵が話していた。葵の世界とこの世界は別次元であり世界の秩序を乱せば崩壊すると。現にイーロンがあり続けたため魔獣が増え瘴気が増え我々でさえ手こずる魔獣達が作られ現れた。それはエルフ族であるそちらでもわかるはず。あった頃となかった頃の違いが」

エリスが目を閉じ頷くと再び目を開ける。

「あります。イーロンが無くなりしばらく魔獣は増えましたが今は落ち着きました。そして、私の村の近くに突如として現れた大地の傷。そこから溢れていた瘴気が消えたのです」

「ああ」

「お聞きしたい。葵様は聖女と呼ばれておりました。そして、その娘であるミオ。なぜ今になっても狙われるのです?聖女の娘として」

「葵自身特別な力を持っていた。瘴気を感じ取り、浄化する力を。だがそれは他の聖女でも可能な事」

「はい」

「ああ。だが葵はそれと予知夢と予言だ」

「予言…」

タイシが小さく唸る。

「ならミオがその予言を受け継いでたらまずいですね。予言の確率はどうだったんです?」

「8割だ」

「中々」

アルスランが頷き、タイシが告げる。

「たまに、核心をいくことを話します。注意していたほうが良さそうです」

エリスが頷きアルスランが話す。

「そうしてくれたら助かる。そして、あこぎな連中はその予言の力を狙っている。予知夢についてもそうだが一番はその予言。言葉だ」

「はい。日頃からもミオには注意しておきます。エリスさんはあとは何かありますか?」

「いいえ」

「なら行きましょう」

エリスがはいと返事を返す。

「じゃあ行きます」

「ああ」

「気をつけてな」

ラダン、ダンガンが答えアルスランが頷く。

「何かあればすぐに知らせろ。出来ることはしよう」

「ありがとうございます」

「いや。こちらも力不足だったからな」

タイシが軽く息をつきアルスランへと近づき抱きしめる。執事が驚きアルスランが和らいで行く。

「1人で背負わないでください。体には気をつけて」

「ああ」

タイシが頷き離れるとエリスが連れてきたギルドの子竜に向かう。

「なら、行ってきます。父さん」

アルスランがふっと笑う。

「ああ。行ってこい」

タイシが笑みを浮かべ頷き答えると子竜にのる。そしてエリスとマルクールものると子龍が空を飛びその場をさる。執事が浮かんだ涙を軽く拭いアルスランがタイシ達の乗せた子龍の影が目の前から消えるまで見届けた。


マルクールがうーんと声を出す。

「俺初めて将軍の笑ったところ見たなあ」

「そうですか」

「ああ。あと若さーん」

隣で1人で子竜になりながら耳まで真っ赤にしその後ろ首に顔を埋めるタイシを振り向聞こえを上げる。

「なに恥ずかしがってんですかー。後嫌がってますよ」

エリスがふふっと笑いタイシがさらに埋めると子龍が鬱陶しく首を振ってみせた。


マーリス。

先に到着したサイモンがタイシ達を待っている間にユナを抱いたミオと話していた。そこはヴィクトール侯爵の客間でミオが不安な面持ちをし話を聞いたヴィクトールが告げる。

「魔導局の記事の通りか」

「はい。流石にあの場でのあの発言と差別は批判が大きいと分かっていたはず」

「だが、実行された。アストレイ国内もだが、タイシ殿が所属するギルド。そして、認めたもの達からも何かしらの報復がありそうだ」

「ええ。早速ギルドがアストレイの王室専門の護衛を退かせました。王室のみです」

「なら、国外に出られる時は危険がますのではないですか?」

「増します。エスランクも護衛としておりますし。あとは、王の嫉妬と怒りによって狙われることになりました。お二人が」

ミオが複雑そうにしヴィクトールが息をつく。

「迷惑な話だ」

ノックが響く。

「旦那様。お越しになられました」

「わかった。なら行こうか」

「はい」

「はい。ユナ。行こう」

「うん」

ユナがミオから降りると今度はミオと手を繋ぎ部屋を出て外へと出る。そこに眼鏡をかけたタイシ、マルクール、エリスがいた。

「おや?そこの方は確か元盗人」

「悪かったって…。後もう昔のことだろう」

「一緒に同行します」

サイモンがやれやれとする。

「まあ、便利なお天気予報士ですしね」

「はいはい」

マルクールがうんざりとしヴィクトールに遅れナターシャが籠を持ち慌ててくる。

「このままもう国から出るのか?」

「はい。追っ手もいつ来るかわかりませんし」

「ああ」

タイシが頷きドギマギとするナターシャを振り向く。

「ナターシャ」

「は、はい」

「俺が動けなかった時。俺が暴走した時に止めてくれたと聞いた」

「あ、えと…」

「ありがとう」

ナターシャが心臓を跳ねさせ微笑むタイシをみて顔を赤くさせ下を向き頭を振ると震えながら籠をあげる。

「こ、これ。よかったら。この国の、その、保存食です」

ヴィクトールが息をつきタイシがありがたくと籠ごと受け取る。そして、ミオがナターシャの元へと来るとしどろもどろとしながらその手を握りナターシャがミオを見て口をつぐみ抱きしめるとミオもまたナターシャを抱きしめ涙ぐんだ。


アルスランが部屋の中で茶をゆっくりと飲む。その隣に見張りの兵が常に立ち続けていたがその兵達も複雑な面持ちをしていた。

「すまんな。面倒ごとに巻き込んで」

「い、いえ」

「その、お気にせず…」

アルスランが息をつき窓から外の風景を眺めていった。

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