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しゅくだい

  風はまだ冷たく、冬の余韻が残る三月。


 三年生を送る会を終え、残すは卒業式だけとなった生徒達。教室内に飾り付けられた手づくりのポスターや、思い出の写真を眺め思いを巡らせていた。

 

 その姿をじっと眺める一人の男。

 三年四組の担任教師である奥田賢治は、全員が一通り目を通す頃を見計らって教壇に立つチャンスをうかがっている。

 

 ──あと一人、見終わったらいくぞ。


 前担任の思わぬ病気によって、九月から急遽、臨時担任に指名された。

 人前で話すのが好きでないという性格の為もあって、生徒との距離は上手く取れていないが、そつなくこなしたはずだと思う。


 ──よし、いまだ!

  

 右足に力を入れて前に進み、一気に教壇に立つと、クラス全員を呼び寄せ唐突に話しを切り出した。


 「えー、突然ですが、旅立つ君達に“最後の宿題”があります」


 教室中がざわめき、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした生徒達の視線が、奥田に向けて一点に集まっていくのが分かる。

 

 元々、生徒思いの先生ではないし、今回のことで余計に嫌われるかも知れないと感じた。

 なにせ卒業間近の、こんな時期に宿題を出す先生なんて聞いたこともないと大半の生徒たちは怪訝な表情をして、お調子者の生徒に至っては、立ち上がりブーイングをしている。

 

 ──予想以上に悪い反応だ。


 このままでは話も、ろくに聞いてもらえないと判断した奥田は、その場を取り繕うよう言葉を付け加えた。

 

 「悪い悪い、言葉足らずだったね。心配しないでいい。これは答え合わせも、回収もしない宿題だから」と精一杯の笑顔で答えた。


 ざわつく教室内、生徒達は顔を見合わせ、微妙な表情を交わし首をひねると、一斉に奥田に向かって質問を投げつける。

  

「それって、してもしなくてもいいって事ですか?」

 

「そうだね。話を聞くだけでいい」

 

「でも宿題なら答え合わせしなきゃ、意味ないじゃん」

 

「んー、そうなんだけど、この宿題の答えは、人それぞれで決まってないからね」

 

「先生も答え知らないってこと?」

 

「君達の答えは分からないけど、先生の答えは見つけられたよ」

 

「ふーん、まあ、なんだかよく分からないけどさ、聞くだけならいいか」


「そうだな、先生さっさと話しちゃってよ」

 

先程の態度とは打って変わり、おとなしく席に着き笑い合う生徒達を見て、賢治は現金なものだと思った。


 ──しかし、だからこそ伝える意味がある。


 「急に自分語りをされ戸惑うかもしれないが、幼少期の話を交えて、聞いてもらおうと思う」

 

 そういうと奥田は、軽く咳払いをすると話し始めた。

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