安息という名の欺瞞
何とか、警察の簡単な聴取を終え、オレは家に帰った。そして、老人の死体もあの犬も警察によってどこかに運ばれていったようだ。
「パパおかえりなさい。何だか今日、顔色悪いね」
「ただいま。今日はちょっと仕事が忙しくて」
「何だか今日のパパ変な臭いするよ。お魚屋さんの臭い」
「そうかな。じゃあ、先にお風呂入るね」
オレは風呂に入ったが、後味の悪い手紙が頭から離れない。あの犬はどうなるのだろうか?殺されてしまうのか?オレが引き取ると言えば助かるのだろうか?そんなことを考えると、気持ちが悪くなり、オレはまた排水溝で吐いてしまった。吐いて、吐いて、記憶まで吐き出せたらなとそのときはひたすら願った。
風呂から上がると、リビングにあるガラスのテーブルの上に缶ビールが置いてあった。
「パパ。これ飲んで、元気出して」
オレは黒いソファーにもたれながらビールを飲む。
「バカヤロー」
唐突にオレは叫んだ。
「パパ。どうしたの」
不思議そうな顔で愛海はオレを見つめる。愛海はいつかオレを置いて、誰か知らない男と結婚するだろう。もしかしたら、オレも孤独死する日が来るかもしれない。だけど、オレの心の支えは愛海に他ならない。愛海が可愛いから、愛海の笑顔を見たいから、愛海を守りたいから、オレは今を生きている。これは老人が犬の聡子に描いていた感情と同じなのかもしれない。
「パパは大丈夫だよ。それより、愛海は将来どんな仕事に就きたいの」
「パパのお嫁さんに決まってるじゃん。パパと結婚したい」
「本当?パパも愛海とこのままずっと一緒にいれたらいいな」
オレは愛海を強く抱きしめた。
純文学とは何か?
そんな問いかけをこの作品で実験してみました。
今後の創作活動のために感想など気軽にお待ちしております。




